JP3934492B2 - プーリ装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリ装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来からプーリ装置として、例えば自動車エンジンにおいて、クランクシャフトに装着されるギヤとカムシャフトに装着されるギヤとに巻きかけられるタイミングベルトのテンションを調整するテンションプーリや、前記タイミングベルトの各ギヤに対する巻きかけ径、つまりベルト巻き角を調整するアイドラプーリがある。この他、エンジンに付設される補機（オルターネータ、クーラーコンプレッサーなど）を駆動するためのベルトに対するテンション調整用のプーリなど、いろいろある。
【０００３】
これらの各種のプーリ装置のうち、例えば、上記テンションプーリは、例えば自動車エンジンのシリンダブロックに対して位置変更可能に取り付けられるブラケットと、このブラケットに非回転状態で取り付けられる支軸と、この支軸に転がり軸受を介して回転自在に外装されかつ外周面がベルトに押し付けられるプーリとを含む構成になっている。
【０００４】
なお、上記支軸とプーリは、転がり軸受の内・外輪と別体物とされる場合や、一体物とされる場合がある。また、ブラケットは、全体の形状が偏平な金属板からなる。
【０００５】
このテンションプーリは、プーリの中心をベルトに対して遠近変位させるようにブラケットを例えば揺動させることで、ベルトのテンションを調整するようになっている。なお、一度、ベルトに対するプーリの中心の位置を決定すると、ブラケットを固定することにより、プーリを不動とする。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
上記テンションプーリでは、転がり軸受の転動体の通過振動や、プーリに押し付けられるベルトのテンション変動に伴う振動などが発生するが、これらの振動によりブラケットが振動させられる。この振動の周波数がブラケット固有の共振点に近づいたとき、全体の形状が扁平な板状であるブラケットが共振し、大きな騒音が発生するようになる。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明のプーリ装置は、設置対象面に直に接触するよう非回転状態で取り付けられる支軸と、この支軸に回転自在に外装されかつ外周面がベルトに押し付けられる軸受付きプーリと、前記支軸に直に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットと前記設置対象面との間に挟まれるとともに前記支軸の外周に外嵌されるリング状の振動減衰部材とを含み、前記ブラケットは、前記支軸が軸方向一方側に突出するよう貫通する状態で圧入嵌合される貫通孔と、前記貫通孔から離れた位置に設けられて前記設置対象面に対して突片用ボルトにより止着される突片とを有する板からなり、前記支軸は、前記設置対象面に対して圧接される状態で、かつ前記ブラケットが前記設置対象面に対して所定の対向隙間を介して浮く状態にされるものであり、前記突片は、その軸方向他方側の面に前記突片用ボルトの頭部の座面が接触する状態で、軸方向一方側の面が前記設置対象面に間隔を有して対向している。
【０００８】
ここで、設置対象面とは、自動車エンジンのシリンダブロックが挙げられる他、それのみに限定されるものではなく、プーリ装置を固定する対象物であればそのすべてが適用される。また、前記ブラケットの移動には、ブラケットの揺動があるが、この移動は、揺動に限定されるものではなく、ベルトにテンションを付与するように移動する態様のすべてが含まれる。
【０００９】
また、軸受付きプーリの軸受は、転がり軸受とすることができる。その際、転がり軸受の内輪を支軸と一体にすることができ、また、外輪をプーリと一体にすることができる。
【００１０】
この構成では、いろいろな要因によるブラケットの共振を振動減衰部材が吸収、減衰することになり、プーリ装置からの騒音発生を防止または抑制できるようになる。
【００１２】
また、前記支軸は、その中心に挿通される支軸用ボルトで前記設置対象面に対して取り付けられるものとすることができる。
【００１３】
また、前記振動減衰部材が、弾性材とされ、この振動減衰部材としての弾性材が、前記ブラケットと前記設置対象面との間に圧縮された状態で介装されるようにできる。
【００１４】
この場合、弾性材からなる振動減衰部材を設置対象面とブラケットとの間で圧縮させて弾性変形させている。これにより、振動減衰部材は、その弾性復元力で設置対象面とブラケットとを互いに突っ張ることとなり、ブラケットと支軸との嵌合部分における支持剛性が向上する。その結果、ブラケットの共振が抑えられ、騒音の発生が防止または抑制される。したがって、プーリ装置の静音化が達成される。
【００１５】
【発明の実施の形態】
図１から図３に、本発明の一実施形態を示している。ここでは、本発明のプーリ装置をテンションプーリとした場合を例に挙げている。
【００１６】
テンションプーリ１４は、自動車のエンジンバルブなどを駆動するタイミングベルト１２のテンションを調整するために、シリンダブロック３４に取り付けられている。
【００１７】
テンションプーリ１４は、ブラケット２２と、転がり軸受２０と、プーリ２１とを備える。
【００１８】
ブラケット２２は、偏平な金属板からなり、タイミングベルト１２に与えるテンションを調整できるようテンションプーリ１４を動作させるものである。ブラケット２２は、円盤状の胴体２２ａと、この胴体２２ａから径方向外側に延びる突片としての揺動支点部２２ｂと、この揺動支点部２２ｂに対してほぼ９０度離れて胴体２２ａから径方向外側に延びる揺動部２２ｃとから構成されている。胴体２２ａは、中心に嵌合穴２２ｄが形成されており、この嵌合穴２２ｄの周縁から軸方向一端側に延びる円筒部２２ｇが形成されている。なお、揺動支点部２２ｂは、先端部にボルト挿通穴２２ｅを有しており、揺動部２２ｃは、先端部にバネ係止穴２２ｆを有している。
【００１９】
転がり軸受２０は、内輪２４と、この内輪２４に対して径方向外側に配置される外輪２６と、前記内・外輪２４，２６間に介装される複数の玉２８と、各玉を保持する冠型保持器３０と、内・外輪２４，２６間の軸方向両側に設けられるシール３２とを含む。
【００２０】
内輪２４は、プーリ２１の回転を支持するための支軸としての役割を兼ねており、軸方向一端側２４ａが有底とされる一方、軸方向他端側２４ｂが開口された円筒体に構成されている。内輪２４は、その底部にテンションプーリ１４の揺動方向（図中矢印方向）に沿う部分円弧状のボルト挿通穴２４ｃが設けられている。内輪２４の底部寄りの外周面には周方向の軌道溝２４ｅが形成されている。
【００２１】
外輪２６は、内輪２４の径方向外側に同心に設けられており、かつ、内輪２４の外周面に形成された前記軌道溝２４ｅと径方向で対向する内周面には周方向の軌道溝２６ａが形成されている。
【００２２】
複数の玉２８は、転動体として、それぞれ、内・外輪２４，２６それぞれの軌道溝２４ｅ，２６ａ間に周方向に介装され、内・外輪２４，２６間に介装された保持器３０により保持されている。
【００２３】
シール３２は、外輪２６に取り付けられており、かつ、詳細に図示していないが、内輪２４に対して接触または非接触とされて、転がり軸受２０内への異物侵入を防止している。
【００２４】
プーリ２１は、外輪２６の外周面に外嵌固定されるもので、転がり軸受のプーリ２１の外周面がタイミングベルト１２に押し付けられる。このプーリ２１は、外周面の円周数ヶ所にリブ２１ａが設けられており、このリブ２１ａがタイミングベルト１２に噛み合わされている。
【００２５】
そして、ブラケット２２の胴体２２ａの嵌合穴２２ｄに、転がり軸受２０の内輪２４を圧入して内輪２４をブラケット２２に対して貫通させた状態で取り付ける。この状態で、ブラケット２２の揺動支点部２２ｂをボルト１９を介してシリンダブロック３４に取り付け、また、転がり軸受２０の内輪２４をそのボルト挿通穴２４ｃを通すボルト１８によりシリンダブロック３４に取り付ける。このとき、内輪２４の軸方向他端側２４ｂがシリンダブロック３４に当接され、ブラケット２２がシリンダブロック３４から所要隙間ｂを隔てて浮いた状態とされる。
【００２６】
このような状態では、ボルト１８を緩めると、ブラケット２２が引張ばね１６により付勢されて、プーリ２１がタイミングベルト１２にテンションを付与する方向（図中矢印方向）に移動するようになる。そして、適度なテンションを付与する位置でボルト１８を締め付けることにより、プーリ２１の中心の位置を決定して、ブラケット２２およびプーリ２１をシリンダブロック３４に対して不動に固定する。
【００２７】
なお、この実施形態で例示するテンションプーリ１４は、上述したように、ブラケット２２をシリンダブロック３４から所要隙間ｂだけ浮かせた状態としているが、これは、以下の理由による。
【００２８】
すなわち、仮に、ブラケット２２をシリンダブロック３４から浮かせない構成とすると、転がり軸受２０の内輪２４のブラケット２２に対する圧入が万一、浅くなったとき、この内輪２４の固定側端面２４ｄがシリンダブロック３４の表面から離れた状態になってしまうことが懸念される。この状態のまま転がり軸受２０の内輪２４をシリンダブロック３４にボルト１８で固定していると、内輪２４がブラケット２２の嵌合穴２２ｄに深く入り込むおそれがあるので、ボルト１８の軸力が抜けることになりかねないのである。
【００２９】
本実施形態は、ブラケット２２と、シリンダブロック３４との所要隙間ｂに振動減衰部材としてのスペーサリング４０を介装させている。
【００３０】
具体的に、ブラケット２２から突出させた内輪２４の軸方向他端側２４ｂに対してスペーサリング４０を外嵌装着させた状態で、このスペーサリング４０をブラケット２２とシリンダブロック３４との間に挟むようにしている。なお、スペーサリング４０は、内輪２４の固定側端面２４ｄより所要長さａだけ突出する状態になっている。
【００３１】
そのため、テンションプーリ１４をボルト１８によりシリンダブロック３４に固定すると、スペーサリング４０は前記突出分ａだけ弾性的に圧縮されることになる。これにより、スペーサリング４０の弾性復元力でシリンダブロック３４とブラケット２２とを互いに突っ張ることとなり、ブラケット２２と内輪２４との支持部分における支持剛性が向上する。
【００３２】
このように、弾力を有するスペーサリング４０でブラケット２２の支持剛性を向上させているから、ブラケット２２自身が共振を起こしにくくなるうえ、転がり軸受装置２０による通過振動がブラケット２２に伝達しても、この振動をスペーサリング４０で減衰することができる。したがって、ブラケット２２の共振によるテンションプーリ１４の騒音の発生を防止または抑制できるので、自動車のエンジンの静音化を達成できるようになる。
【００３３】
特に、上記実施形態のように、シリンダブロック３４からブラケット２２を所要隙間ｂだけ浮かせた構造を前提とする場合には、転がり軸受２０の内輪２４を固定するボルト１８の軸力が抜ける心配もなく、それでいてブラケット２２の共振を抑えることができるため、非常に有利であり、好ましい。
【００３４】
なお、スペーサリング４０の材料および軸方向の圧縮寸法ａは、このスペーサリング４０の弾性復元力により転がり軸受２０の内輪２４上でブラケット２２が軸方向にずれ動かないように適宜設定するのが好ましい。
【００３５】
スペーサリング４０の好適な材料としては、振動吸収性に優れ、しかも転がり軸受２０の内輪２４とブラケット２２との嵌合部分の摩擦力よりも十分小さい荷重で容易に弾性変形する材料、例えば、ニトリルゴム（ＮＢＲ）、水素化ニトリルゴム（ＨＮＢＲ）、エラストマー、合成ゴムなどが挙げられる。
【００３６】
例えば、スペーサリング４０の材料をニトリルゴム（ＮＢＲ）とし、これにわずかな締め代を与えて試験を行った結果、スペーサリング４０を介在させない場合に比べて約２０ｄＢの騒音低減が認められ、また、ブラケット２２が転がり軸受２０の内輪２４との嵌合部分で軸方向に移動する現象も見られないことが判明している。
【００３７】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる種々な実施形態にも適用可能である。
【００３８】
（１）スペーサリング４０の内径は、転がり軸受２０の内輪２４の外径と同じでなくてもよい。
【００３９】
（２）スペーサリング４０は、胴体２２ａのシリンダブロック３４側の全体を一様に覆うようにしてもよい。こうした場合、制振効果がより向上して好ましい。他にもスペーサリング４０の形状はいろいろ考えられる。
【００４０】
（３）上記プーリ装置は、例えば自動車エンジンに備えるクランクシャフトプーリとカムシャフトプーリとに巻きかけられるタイミングベルトのテンションを調整するテンションプーリの他に、前記タイミングベルトの各ギヤに対する巻きかけ径、ベルト巻き角を調整するアイドラプーリとしても適用できる。
【００４１】
【発明の効果】
本発明のプーリ装置では、転がり軸受の転動体の通過振動などによるブラケットの共振を振動減衰部材により減衰または抑制することができるから、騒音の発生を防止または抑制できて、静粛性の向上に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態に係るプーリ装置を示す平面図
【図２】図１に示されるプーリ装置をシリンダブロックに固定する前の該プーリ装置を示す側面断面図
【図３】図２に示されるプーリ装置をシリンダブロックに固定した状態の該プーリ装置を示す側面断面図
【符号の説明】
１４ テンションプーリ
２０ 転がり軸受
２１ プーリ
２２ ブラケット
２４ 内輪
２６ 外輪
３４ シリンダブロック
４０ スペーサリング
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリ装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来からプーリ装置として、例えば自動車エンジンにおいて、クランクシャフトに装着されるギヤとカムシャフトに装着されるギヤとに巻きかけられるタイミングベルトのテンションを調整するテンションプーリや、前記タイミングベルトの各ギヤに対する巻きかけ径、つまりベルト巻き角を調整するアイドラプーリがある。この他、エンジンに付設される補機（オルターネータ、クーラーコンプレッサーなど）を駆動するためのベルトに対するテンション調整用のプーリなど、いろいろある。
【０００３】
これらの各種のプーリ装置のうち、例えば、上記テンションプーリは、例えば自動車エンジンのシリンダブロックに対して位置変更可能に取り付けられるブラケットと、このブラケットに非回転状態で取り付けられる支軸と、この支軸に転がり軸受を介して回転自在に外装されかつ外周面がベルトに押し付けられるプーリとを含む構成になっている。
【０００４】
なお、上記支軸とプーリは、転がり軸受の内・外輪と別体物とされる場合や、一体物とされる場合がある。また、ブラケットは、全体の形状が偏平な金属板からなる。
【０００５】
このテンションプーリは、プーリの中心をベルトに対して遠近変位させるようにブラケットを例えば揺動させることで、ベルトのテンションを調整するようになっている。なお、一度、ベルトに対するプーリの中心の位置を決定すると、ブラケットを固定することにより、プーリを不動とする。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
上記テンションプーリでは、転がり軸受の転動体の通過振動や、プーリに押し付けられるベルトのテンション変動に伴う振動などが発生するが、これらの振動によりブラケットが振動させられる。この振動の周波数がブラケット固有の共振点に近づいたとき、全体の形状が扁平な板状であるブラケットが共振し、大きな騒音が発生するようになる。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明のプーリ装置は、設置対象面に直に接触するよう非回転状態で取り付けられる支軸と、この支軸に回転自在に外装されかつ外周面がベルトに押し付けられる軸受付きプーリと、前記支軸に直に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットと前記設置対象面との間に挟まれるとともに前記支軸の外周に外嵌されるリング状の振動減衰部材とを含み、前記ブラケットは、前記支軸が軸方向一方側に突出するよう貫通する状態で圧入嵌合される貫通孔と、前記貫通孔から離れた位置に設けられて前記設置対象面に対して突片用ボルトにより止着される突片とを有する板からなり、前記支軸は、前記設置対象面に対して圧接される状態で、かつ前記ブラケットが前記設置対象面に対して所定の対向隙間を介して浮く状態にされるものであり、前記突片は、その軸方向他方側の面に前記突片用ボルトの頭部の座面が接触する状態で、軸方向一方側の面が前記設置対象面に間隔を有して対向している。
【０００８】
ここで、設置対象面とは、自動車エンジンのシリンダブロックが挙げられる他、それのみに限定されるものではなく、プーリ装置を固定する対象物であればそのすべてが適用される。また、前記ブラケットの移動には、ブラケットの揺動があるが、この移動は、揺動に限定されるものではなく、ベルトにテンションを付与するように移動する態様のすべてが含まれる。
【０００９】
また、軸受付きプーリの軸受は、転がり軸受とすることができる。その際、転がり軸受の内輪を支軸と一体にすることができ、また、外輪をプーリと一体にすることができる。
【００１０】
この構成では、いろいろな要因によるブラケットの共振を振動減衰部材が吸収、減衰することになり、プーリ装置からの騒音発生を防止または抑制できるようになる。
【００１２】
また、前記支軸は、その中心に挿通される支軸用ボルトで前記設置対象面に対して取り付けられるものとすることができる。
【００１３】
また、前記振動減衰部材が、弾性材とされ、この振動減衰部材としての弾性材が、前記ブラケットと前記設置対象面との間に圧縮された状態で介装されるようにできる。
【００１４】
この場合、弾性材からなる振動減衰部材を設置対象面とブラケットとの間で圧縮させて弾性変形させている。これにより、振動減衰部材は、その弾性復元力で設置対象面とブラケットとを互いに突っ張ることとなり、ブラケットと支軸との嵌合部分における支持剛性が向上する。その結果、ブラケットの共振が抑えられ、騒音の発生が防止または抑制される。したがって、プーリ装置の静音化が達成される。
【００１５】
【発明の実施の形態】
図１から図３に、本発明の一実施形態を示している。ここでは、本発明のプーリ装置をテンションプーリとした場合を例に挙げている。
【００１６】
テンションプーリ１４は、自動車のエンジンバルブなどを駆動するタイミングベルト１２のテンションを調整するために、シリンダブロック３４に取り付けられている。
【００１７】
テンションプーリ１４は、ブラケット２２と、転がり軸受２０と、プーリ２１とを備える。
【００１８】
ブラケット２２は、偏平な金属板からなり、タイミングベルト１２に与えるテンションを調整できるようテンションプーリ１４を動作させるものである。ブラケット２２は、円盤状の胴体２２ａと、この胴体２２ａから径方向外側に延びる突片としての揺動支点部２２ｂと、この揺動支点部２２ｂに対してほぼ９０度離れて胴体２２ａから径方向外側に延びる揺動部２２ｃとから構成されている。胴体２２ａは、中心に嵌合穴２２ｄが形成されており、この嵌合穴２２ｄの周縁から軸方向一端側に延びる円筒部２２ｇが形成されている。なお、揺動支点部２２ｂは、先端部にボルト挿通穴２２ｅを有しており、揺動部２２ｃは、先端部にバネ係止穴２２ｆを有している。
【００１９】
転がり軸受２０は、内輪２４と、この内輪２４に対して径方向外側に配置される外輪２６と、前記内・外輪２４，２６間に介装される複数の玉２８と、各玉を保持する冠型保持器３０と、内・外輪２４，２６間の軸方向両側に設けられるシール３２とを含む。
【００２０】
内輪２４は、プーリ２１の回転を支持するための支軸としての役割を兼ねており、軸方向一端側２４ａが有底とされる一方、軸方向他端側２４ｂが開口された円筒体に構成されている。内輪２４は、その底部にテンションプーリ１４の揺動方向（図中矢印方向）に沿う部分円弧状のボルト挿通穴２４ｃが設けられている。内輪２４の底部寄りの外周面には周方向の軌道溝２４ｅが形成されている。
【００２１】
外輪２６は、内輪２４の径方向外側に同心に設けられており、かつ、内輪２４の外周面に形成された前記軌道溝２４ｅと径方向で対向する内周面には周方向の軌道溝２６ａが形成されている。
【００２２】
複数の玉２８は、転動体として、それぞれ、内・外輪２４，２６それぞれの軌道溝２４ｅ，２６ａ間に周方向に介装され、内・外輪２４，２６間に介装された保持器３０により保持されている。
【００２３】
シール３２は、外輪２６に取り付けられており、かつ、詳細に図示していないが、内輪２４に対して接触または非接触とされて、転がり軸受２０内への異物侵入を防止している。
【００２４】
プーリ２１は、外輪２６の外周面に外嵌固定されるもので、転がり軸受のプーリ２１の外周面がタイミングベルト１２に押し付けられる。このプーリ２１は、外周面の円周数ヶ所にリブ２１ａが設けられており、このリブ２１ａがタイミングベルト１２に噛み合わされている。
【００２５】
そして、ブラケット２２の胴体２２ａの嵌合穴２２ｄに、転がり軸受２０の内輪２４を圧入して内輪２４をブラケット２２に対して貫通させた状態で取り付ける。この状態で、ブラケット２２の揺動支点部２２ｂをボルト１９を介してシリンダブロック３４に取り付け、また、転がり軸受２０の内輪２４をそのボルト挿通穴２４ｃを通すボルト１８によりシリンダブロック３４に取り付ける。このとき、内輪２４の軸方向他端側２４ｂがシリンダブロック３４に当接され、ブラケット２２がシリンダブロック３４から所要隙間ｂを隔てて浮いた状態とされる。
【００２６】
このような状態では、ボルト１８を緩めると、ブラケット２２が引張ばね１６により付勢されて、プーリ２１がタイミングベルト１２にテンションを付与する方向（図中矢印方向）に移動するようになる。そして、適度なテンションを付与する位置でボルト１８を締め付けることにより、プーリ２１の中心の位置を決定して、ブラケット２２およびプーリ２１をシリンダブロック３４に対して不動に固定する。
【００２７】
なお、この実施形態で例示するテンションプーリ１４は、上述したように、ブラケット２２をシリンダブロック３４から所要隙間ｂだけ浮かせた状態としているが、これは、以下の理由による。
【００２８】
すなわち、仮に、ブラケット２２をシリンダブロック３４から浮かせない構成とすると、転がり軸受２０の内輪２４のブラケット２２に対する圧入が万一、浅くなったとき、この内輪２４の固定側端面２４ｄがシリンダブロック３４の表面から離れた状態になってしまうことが懸念される。この状態のまま転がり軸受２０の内輪２４をシリンダブロック３４にボルト１８で固定していると、内輪２４がブラケット２２の嵌合穴２２ｄに深く入り込むおそれがあるので、ボルト１８の軸力が抜けることになりかねないのである。
【００２９】
本実施形態は、ブラケット２２と、シリンダブロック３４との所要隙間ｂに振動減衰部材としてのスペーサリング４０を介装させている。
【００３０】
具体的に、ブラケット２２から突出させた内輪２４の軸方向他端側２４ｂに対してスペーサリング４０を外嵌装着させた状態で、このスペーサリング４０をブラケット２２とシリンダブロック３４との間に挟むようにしている。なお、スペーサリング４０は、内輪２４の固定側端面２４ｄより所要長さａだけ突出する状態になっている。
【００３１】
そのため、テンションプーリ１４をボルト１８によりシリンダブロック３４に固定すると、スペーサリング４０は前記突出分ａだけ弾性的に圧縮されることになる。これにより、スペーサリング４０の弾性復元力でシリンダブロック３４とブラケット２２とを互いに突っ張ることとなり、ブラケット２２と内輪２４との支持部分における支持剛性が向上する。
【００３２】
このように、弾力を有するスペーサリング４０でブラケット２２の支持剛性を向上させているから、ブラケット２２自身が共振を起こしにくくなるうえ、転がり軸受装置２０による通過振動がブラケット２２に伝達しても、この振動をスペーサリング４０で減衰することができる。したがって、ブラケット２２の共振によるテンションプーリ１４の騒音の発生を防止または抑制できるので、自動車のエンジンの静音化を達成できるようになる。
【００３３】
特に、上記実施形態のように、シリンダブロック３４からブラケット２２を所要隙間ｂだけ浮かせた構造を前提とする場合には、転がり軸受２０の内輪２４を固定するボルト１８の軸力が抜ける心配もなく、それでいてブラケット２２の共振を抑えることができるため、非常に有利であり、好ましい。
【００３４】
なお、スペーサリング４０の材料および軸方向の圧縮寸法ａは、このスペーサリング４０の弾性復元力により転がり軸受２０の内輪２４上でブラケット２２が軸方向にずれ動かないように適宜設定するのが好ましい。
【００３５】
スペーサリング４０の好適な材料としては、振動吸収性に優れ、しかも転がり軸受２０の内輪２４とブラケット２２との嵌合部分の摩擦力よりも十分小さい荷重で容易に弾性変形する材料、例えば、ニトリルゴム（ＮＢＲ）、水素化ニトリルゴム（ＨＮＢＲ）、エラストマー、合成ゴムなどが挙げられる。
【００３６】
例えば、スペーサリング４０の材料をニトリルゴム（ＮＢＲ）とし、これにわずかな締め代を与えて試験を行った結果、スペーサリング４０を介在させない場合に比べて約２０ｄＢの騒音低減が認められ、また、ブラケット２２が転がり軸受２０の内輪２４との嵌合部分で軸方向に移動する現象も見られないことが判明している。
【００３７】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる種々な実施形態にも適用可能である。
【００３８】
（１）スペーサリング４０の内径は、転がり軸受２０の内輪２４の外径と同じでなくてもよい。
【００３９】
（２）スペーサリング４０は、胴体２２ａのシリンダブロック３４側の全体を一様に覆うようにしてもよい。こうした場合、制振効果がより向上して好ましい。他にもスペーサリング４０の形状はいろいろ考えられる。
【００４０】
（３）上記プーリ装置は、例えば自動車エンジンに備えるクランクシャフトプーリとカムシャフトプーリとに巻きかけられるタイミングベルトのテンションを調整するテンションプーリの他に、前記タイミングベルトの各ギヤに対する巻きかけ径、ベルト巻き角を調整するアイドラプーリとしても適用できる。
【００４１】
【発明の効果】
本発明のプーリ装置では、転がり軸受の転動体の通過振動などによるブラケットの共振を振動減衰部材により減衰または抑制することができるから、騒音の発生を防止または抑制できて、静粛性の向上に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態に係るプーリ装置を示す平面図
【図２】図１に示されるプーリ装置をシリンダブロックに固定する前の該プーリ装置を示す側面断面図
【図３】図２に示されるプーリ装置をシリンダブロックに固定した状態の該プーリ装置を示す側面断面図
【符号の説明】
１４ テンションプーリ
２０ 転がり軸受
２１ プーリ
２２ ブラケット
２４ 内輪
２６ 外輪
３４ シリンダブロック
４０ スペーサリング
Claims (3)
- 設置対象面に直に接触するよう非回転状態で取り付けられる支軸と、この支軸に回転自在に外装されかつ外周面がベルトに押し付けられる軸受付きプーリと、前記支軸に直に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットと前記設置対象面との間に挟まれるとともに前記支軸の外周に外嵌されるリング状の振動減衰部材とを含み、
前記ブラケットは、前記支軸が軸方向一方側に突出するよう貫通する状態で圧入嵌合される貫通孔と、前記貫通孔から離れた位置に設けられて前記設置対象面に対して突片用ボルトにより止着される突片とを有する板からなり、
前記支軸は、前記設置対象面に対して圧接される状態で、かつ前記ブラケットが前記設置対象面に対して所定の対向隙間を介して浮く状態にされるものであり、
前記突片は、その軸方向他方側の面に前記突片用ボルトの頭部の座面が接触する状態で、軸方向一方側の面が前記設置対象面に間隔を有して対向している
ことを特徴とするプーリ装置。 - 前記支軸は、その中心に挿通される支軸用ボルトで前記設置対象面に対して取り付けられるものであることを特徴とする請求項１に記載のプーリ装置。
- 前記振動減衰部材が、弾性材からなり、この振動減衰部材としての弾性材が、前記ブラケットと前記設置対象面との間に圧縮された状態で介装されていることを特徴とする請求項１または２に記載のプーリ装置。
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