JP3933399B2 - プリアンブルパターン識別方法及び周波数偏差検出方法並びにシンボルタイミング検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、受信機に関わり、特に受信信号に既知の信号パターンが含まれているか否かを識別する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
デジタル無線通信システムにおいて、送信機は、伝送する情報(2値信号のビット列)を一定のビット数で分割し、分割されたビット列を含む所定の構成がなされたフレームとし、そのフレーム毎に、例えば16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式のようなデジタル変調を行い、デジタル変調された信号として送信する。
送信をしていない状態から、送信機が初めて送信を開始するフレームを第1フレームという。以下第1フレームに続いて、第2フレーム、第3フレーム、‥‥‥と送信されていく。
【0003】
フレームには、受信機が受信し、受信したフレームを用いて、送信される信号に対する同期を行うために、プリアンブルと呼ばれる規定の固定ビットパターンが、定められた位置に、定められた長さで付加されている。
受信機は、送信機が送信した第1フレームの信号を受信する際に、第1フレーム内のプリアンブルを用いて、送信された信号に対して高速同期を行う。ここで、高速同期とは、全く同期が確立されていない状態から同期を行い、同期した情報を現フレームの復調(検波)動作に反映させる処理のことをいう。これに対し、通常同期とは、1つ前のフレームですでに同期が確立されており、現フレームと1つ前のフレームとの間での変動分に対する同期を低速で行い、同期した情報を次のフレームの復調動作に反映する処理のことをいう。
第1フレームは、同期バーストと呼ばれるフレームであり、このフレームにプリアンブルが含まれている。受信機は、例えば、この第1フレームの同期バーストを用いて高速同期を行い、第2フレーム以降では通常同期を行う必要がある。そこで、プリアンブルが含まれている同期バーストを受信しているか否かの判断を行うために、プリアンブルのパターンを識別する方法が考えられている。
このように、同期バーストのフレームは、普通、同期バーストは送信開始後、1フレーム〜数フレームが連続して送信される。例えば、後述する図16は、第1フレームと第2フレームとが同期バーストのフレームである。
【0004】
図14はSCPC(Single Channel Per Carrier)の標準規格であるARIB STD-T61による同期バーストフレームのフレーム構造を示す図である。更にまた、図15は通信チャネルフレームのフレーム構造を示す図である。
図14または図15において、LP+Rはリニアライザプリアンブル・ランプアップ部、Pbはプリアンブル部、RIは通信情報チャネル部、SWは同期ワードパターン部、PIはパラメータ情報チャネル部、Gはガードタイム部、Tchは通信チャネル部、UDは未定義部である。また、それぞれの記号の下に記した数値はそれぞれの領域のビット(bit)数を表す。プリアンブルは、例えば、全て“0”、または、“1,0,0,1”を繰り返すような固定パターンからなる。
【0005】
また、移動無線通信システムで送信を行う場合の送信パターンの一例を図16に示す、図16はARIB STD-T61に基づいた送信パターンである。SB0とSB1は同期バーストフレーム、TCH0,TCH1,TCH2,‥‥‥,TCHMは主データを載せた通信チャネルフレームである。ここでMは自然数である。
ARIB STD-T61では、送信を開始するときには、通信チャネルフレームの送信に先立ち、同期バーストフレームをm回(mは2以上の正整数)送信することになっており(通常は2回以上)、図16では、まず同期バーストフレームを2個送信し、次から送信チャネルフレームの送信を開始し、送信終了となるまで送信する。即ち、通話は2個の同期バーストとM個の通信チャネルで構成される。ただし、M個の通信チャネルは通話の長さにより変化する。
【0006】
プリアンブルパターン識別方法の説明に入る前に、図11を用いて受信機について簡単に説明する。図11は、従来の受信機の簡単な構成を示すブロック図である。
受信信号入力端子1101には、アンテナから受信した信号が入力され、高周波部回路1102に入力される。高周波部回路1102は、受信された信号である無線帯域の高周波の信号を、A/D変換器1103でサンプリング可能な低い周波数へ周波数変換してA/D変換器1103に与える。A/D変換器1103は、周波数変換された受信信号をサンプリング及び量子化してデジタル信号とし、乗算器1104-1と1104-2とに入力する。
【0007】
正弦波発生回路1106は、角周波数ωの正弦波cosωtを出力し、乗算器1104-1と移相器1105とに入力する。移相器1105は、正弦波cosωtの位相をπ/2(rad)だけ進ませて(-sinωtとし)乗算器1104-2へ入力する。乗算器1104-1は、A/D変換器1103の出力と正弦波発生回路1106の出力との積を演算し、ローパスフィルタ(LPF)1107-1へ入力し、乗算器1107-2はA/D変換器1103の出力と移相器1105の出力との積を演算し、ローパスフィルタ(LPF)1107-2へ入力する。
乗算器1104-1および1104-2の出力信号には不要な高周波成分を含んでいる。ローパスフィルタ1107-1は、乗算器1104-1の出力信号から高周波成分を除去し、ルートロールオフフィルタ1108-1へ入力する。同様に、ローパスフィルタ1107-2は、乗算器1104-2の出力信号から高周波成分を除去し、ルートロールオフフィルタ1108-2へ入力する。ルートロールオフフィルタは、ローパスフィルタ1107-1と1107-2のそれぞれの出力信号の帯域制限を行い、その出力をベースバンド信号出力端子1109-1および1109-2を介してそれぞれ出力する。
【0008】
ベースバンド信号出力端子1109-1を介して出力される信号をベースバンド信号の同相成分と呼び、1109-2を介して出力される信号をベースバンド信号の直交成分と呼ぶ。ベースバンド信号は、実数部を同相成分、虚数部を直交成分とする複素数の信号である。ここでは、ベースバンド信号の同相成分と直交成分をそれぞれ別の端子で表しているが、以下の説明では簡単のため1つの端子で表す。
【0009】
従来のプリアンブルパターン識別方法を、図2によって説明する。図2は、従来のプリアンブルパターン識別のための回路の構成を示すブロック図である。
図2において、受信したベースバンド信号が入力端子201に入力される。入力端子201に入力されるベースバンド信号は、1シンボル当たりNov回オーバーサンプリングされた複素数(実数部を同相成分(I)、虚数部を直交成分(Q)とする)のデジタル信号である。このオーバーサンプル数Novは2以上の整数である。
入力端子201より入力したベースバンド信号は、相関回路202に入力し、プリアンブルパターンとの相関r(n)を演算し、演算結果を振幅自乗値演算回路203に与える。振幅自乗値演算回路203は、相関r(n)の振幅の自乗値 |r(n)|2を演算し、短時間平均演算回路204に与える。短時間平均演算回路204は相関の自乗値|r(n)|2の短時間平均rave(n)を演算し判定器205に与える。判定器205は、短時間平均rave(n)を所定のしきい値と比較し、短時間平均rave(n)がしきい値を上回っていれば入力信号がプリアンブルであると判断し、プリアンブル識別出力端子206を介して“1”を出力する。ここで、nはサンプル番号で、正整数ある。
【0010】
入力端子201に、プリアンブルが入力される場合のベースバンド信号は、QPSK(Quaternary Phase Shift Keying)やQAMといった変調方式の場合には、図4に示すように、(I,Q)=(A,-A)と(I,Q)=(-A,A)をシンボル間隔で交互に繰り返す波形であり、変調方式がπ/4シフトQPSKの場合、図5に示すような8シンボル周期の波形である(ここで、Aは定数)。
図4は、変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のコンスタレーションおよび時間波形を示す図であり、図5は、変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブル信号のコンスタレーションおよび時間波形を示す図である。
図4と図5において、それぞれ、(a)は、横軸をベースバンド信号の同相成分(I)、縦軸を直交成分(Q)として、I-Q座標平面にプロットしたコンスタレーションである。また(b)は、横軸を時間、縦軸をベースバンド信号の同相成分(I)としてプロットした時間波形である。更に(c)は、横軸を時間、縦軸をベースバンド信号の直交成分(Q)としてプロットした時間波形である。また、図中の黒点はシンボルタイミングでのベースバンド信号の瞬時値である。
【0011】
図3は、図2で説明した相関回路202の構成を、より詳細に図示したブロック図である。図3の相関回路は、N-1個の1シンボル遅延回路302、N個の複素乗算器304とN-1個の複素加算器303で構成される。ここでNは相関演算を行うシンボル数で、2以上の正整数であり、N≧8が望ましい。
pは、プリアンブルパターン(複素数)で、π/4シフトQPSKの場合には、次の式(1)で表され、16QAMの場合には、式(2)で表される。また、p*はpの共役複素数であり、N個の乗算器304の該当するものに与えられる係数である。
【数1】
【数2】
【0012】
図6は、図2に示した従来のプリアンブルパターン識別のための回路の、短時間平均演算回路204の出力である短時間平均rave(n)の時間波形を示す図である。(a)は受信信号、(b)はフェージングなしの場合の短時間平均rave(n)、(c)はフェージング時での短時間平均rave(n)を表す。また、一点鎖線はしきい値である。
図6(a)に示すように、入力端子201に区間601でプリアンブル以外の信号が入力され、区間602でプリアンブルが入力され、区間603で再びプリアンブル以外の信号が入力される場合、短時間平均演算回路204の出力rave(n)は、フェージングなしの場合に図6(b)のようになり、フェージング時には図6(c)のようになる。
【0013】
短時間平均rave(n)は、相関回路202の段数Nと短時間平均演算回路204の時定数により遅延する。フェージングがない場合には、図6(b)に示すように、高い相関を示すので、識別漏れの確率と誤識別の確率を共に“0”にするしきい値の設定を容易に行うことができる。
しかし、フェージング時には、図6(c)に示すように、受信信号の振幅の落ち込みにより、プリアンブル入力時の相関が落ち込むため、識別漏れの確率を“0”に近づけようとしきい値を低く設定すると誤識別の確率が大きくなり、反対に誤識別の確率を“0”に近づけようとしきい値を高く設定すると識別漏れの確率が大きくなり、両方の確率を“0”にするしきい値を設定することが困難になる。
【0014】
また、プリアンブルの信号が持つ周波数成分は、シンボルレート(シンボル間隔の逆数)をfbとすると、変調方式がQPSKまたはQAMの場合には、-fb/2と+fb/2の2つの周波数成分であり、変調方式がπ/4シフトQPSKの場合には、-3fb/8と+fb/8の2つの周波数成分である。送信機と受信機との間には、周波数偏差Δfがあり、この周波数偏差Δfが大きくて、プリアンブルの片方の周波数成分が受信機のフィルタの帯域外へ外れる場合には、相関回路202に入力されるプリアンブルの片方の周波数成分が削られるため、周波数偏差Δfによる位相回転の補正を行ったとしても、相関による識別が難しくなる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術には、相関演算結果が受信信号の振幅変動に影響され、識別漏れの確率と誤識別の確率とが相反する傾向にあり、両方の確率を0に近づけるようなしきい値の設定が困難であり、しきい値による識別が難しい欠点があった。
また、送信機と受信機との間で、周波数偏差が大きい場合、プリアンブルの片方の周波数成分が受信機のフィルタの帯域外へ外れ、プリアンブルの2つの周波数成分の片方の成分が削られた場合の識別が困難であるという欠点があった。
本発明の目的は、上記のような欠点を除去し、受信信号の振幅変動に影響されず、送信機と受信機との間で、周波数偏差が大きい場合においても、プリアンブルの識別を容易に行うことができるプリアンブルパターン識別方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のプリアンブルパターン識別方法は、
(1) 受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2を求め、求めたそれぞれの周波数成分の電力和p1+p2と全周波数成分の電力pとの電力比(p1+p2)/pが所定のしきい値を超えていれば、受信したベースバンド信号がプリアンブルであると判断する。尚、以下の説明で、周波数のずれていない送信ベースバンドでのプリアンブルの周波数成分を、プリアンブル送信時の周波数成分と呼ぶ。
(2) 電力比(p1+p2)/pが所定のしきい値を超え、かつ2つの成分の周波数f1とf2の差の絶対値|f2-f1|が所定の値の範囲内であれば、受信したベースバンド信号がプリアンブルであると判断する。
(3) 抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2の電力比p1/p2を算出し、電力比p1/p2が規定値r1以上かつ規定値r2以下ならば2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断し、2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断した場合で、電力比(p1+p2)/pが所定のしきい値を超え、かつ周波数差の絶対値|f2-f1|が所定の値の範囲内であれば、受信したベースバンド信号がプリアンブルであると判断する。ただし、r1,r2は正の定数で、r1<1,r2>1とする。
【0017】
(4) また、本発明の周波数偏差検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出して、低い周波数成分の周波数をf1、高い周波数成分の周波数をf2とし、プリアンブル送信時の2成分の周波数のうち低い周波数成分の周波数をf10、高い周波数成分の周波数をf20とし、各成分の周波数偏差f1-f10, f2-f20の平均[(f1-f10)+(f2-f20)]/2を、送信機と受信機との周波数偏差とする。
(5) 更に、本発明の周波数偏差検出方法は、抽出した2成分のうちの一方の成分の周波数をf1'、プリアンブル送信時の2成分の周波数のうち低い周波数成分の周波数をf10、高い周波数成分の周波数をf20とし、f1'-f10またはf1'-f20を、送信機と受信機との周波数偏差とする。
(6) また、本発明の周波数偏差検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2の電力比p1/p2を算出し、電力比p1/p2が規定値r1以上かつ規定値r2以下ならば2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断して、2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断した場合には、各成分の周波数偏差f1-f10とf2-f20の平均[(f1-f10)+(f2-f20)]/2を、送信機と受信機との周波数偏差とし、電力比p1/p2が規定値r1未満の場合または規定値r2を超えている場合で、電力の大きい方の成分の周波数をf1'とし、f1'≧0であれば、2成分のうち周波数の低い成分のみが残っているものとし、f1'-f10を送信機と受信機との周波数偏差とし、電力比p1/p2が規定値r1未満の場合または規定値r2を超えている場合で、電力の大きい方の成分の周波数をf1'とし、f1'<0であれば、2成分のうち周波数の高い成分のみが残っているものとし、f1'-f20を送信機と受信機との周波数偏差とする。
【0018】
(7) 更に、本発明のシンボルタイミング検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの成分の位相φ1とφ2の差φ1-φ2よりシンボルタイミングを求める。
(8) また更に、本発明のシンボルタイミング検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2の電力比p1/p2を算出し、電力比p1/p2が規定値r1以上かつ規定値r2以下ならば2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断し、抽出したそれぞれの成分の位相φ1とφ2の位相差φ1-φ2よりシンボルタイミングを求める。
(9) また本発明のシンボルタイミング検出方法は、変調方式がQPSKまたはQAMであるベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから周波数成分を抽出し、抽出した2つの周波数f1とf2の成分のうち、低い周波数の成分の位相をφ1とし、高い周波数の成分の位相をφ2とし、シンボルレートをfbとし、t0=(φ1-φ2)/(2πfb)をシンボルタイミングt0とする。
(10) 更に本発明のシンボルタイミング検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2の電力比p1/p2を算出し、電力比p1/p2が規定値r1以上かつ規定値r2以下ならば2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断し、2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断した場合、抽出した2つの周波数f1とf2の成分のうち、低い周波数の成分の位相をφ1、高い周波数の成分の位相をφ2、シンボルレートをfbとし、t0=(φ1-φ2)/(2πfb)をシンボルタイミングとする。
(11) また、本発明のシンボルタイミング検出方法は、変調方式がπ/4シフトQPSKであるベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出した2つの周波数f1とf2の成分のうち、低い周波数の成分の位相をφ1、高い周波数の成分の位相をφ2、シンボルレートをfbとし、t0=(φ1-φ2-π/2)/(πfb)をシンボルタイミングとする。
(12) 更に、本発明のシンボルタイミング検出方法は、受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、求めた周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、抽出したそれぞれの周波数成分の電力p1とp2の電力比p1/p2を算出し、電力比p1/p2が規定値r1以上かつ規定値r2以下ならば2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断し、2つの周波数f1とf2の成分が残っていると判断した場合、抽出した2つの周波数f1とf2の成分のうち、低い周波数の成分の位相をφ1、高い周波数の成分の位相をφ2、シンボルレートをfbとし、t0=(φ1-φ2-π/2)/(πfb)をシンボルタイミングとする。
【0019】
(13) また更に、本発明のプリアンブル成分抽出方法は、受信信号を1シンボル当たりNov回(Novは2以上の整数)オーバーサンプリングしたベースバンド信号から、任意の連続したNwinサンプル(Nwinは2以上の整数)のベースバンド信号を抽出し、抽出したベースバンド信号に任意の窓関数を乗じ、任意の窓関数を乗じたベースバンド信号x(n) (n=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))のDFT(離散フーリエ変換: Discrete Fourier Transform)X(k)(k=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))を演算し(X(k)は複素数)、DFT出力X(k)(k=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))の全電力p=|X(0)|2+|X(1)|2+…+|X(Nwin-1)|2を算出し、DFT出力X(k)のうち、振幅の自乗値|X(k)|2が最大となるX(k)を検索してそのkをk11とし、X(k11)に隣接する成分から、|X(k11)|2の次に|X(k)|2が大きくなるX(k)を検索してそのkをk12とし、X(k11)とX(k12)の電力和p1=|X(k11)|2+|X(k12)|2を算出し、X(k11)の周辺を補間し、補間した部分のピークにおける周波数をf1、位相をφ1とし、変調方式により定められる自然数の定数をkdとし、X(k)(k=(k11-kd-1) mod Nwin,(k11-kd) mod Nwin,(k11-kd+1) mod Nwin,(k11+kd-1) mod Nwin,(k11+kd) mod Nwin,(k11+kd+1) mod Nwin)から|X(k)|2が最大となるX(k)を検索してそのkをk21とし、X(k21)に隣接する成分のうち、|X(k21)|2の次に|X(k)|2が大きくなるX(k)を検索してそのkをk22とし、X(k21)とX(k22)の電力和p2=|X(k21)|2+|X(k22)|2を算出し、X(k21)の周辺を補間し、補間した部分のピークにおける周波数をf2、位相をφ2とし、算出したf1, f2を比較し、f1>f2であれば、f1,φ1,p1を改めてf2,φ2,p2とし、f2,φ2,p2を改めてf1,φ1,p1とする。
【0020】
(14) 更にまた、本発明のプリアンブル成分抽出方法は、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)アルゴリズムを用いて、任意の窓関数を乗じたベースバンド信号x(n)(n=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))のDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)X(k)(k=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))を演算する。
以上において、また、周波数スペクトルから抽出する2つの周波数f1とf2の成分は、振幅が高い順に2つ抽出する
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態の説明に入る前に、プリアンブル信号の周波数スペクトルについて説明する。
最初に変調方式が、QPSKまたはQAMの場合を、図12と図7によって説明する。図12は、変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のマッピングとゼロ補間(0補間)を説明するための図であり、図7は、変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のDFT(離散フーリエ変換: Discrete Fourier Transform)出力を示す図である。
図12に示すように、シンボル毎に√2・A exp(-jπ/4)、√2・A exp(j3π/4)を交互にマッピングし、1シンボル当たり2回オーバーサンプリングしてゼロ補間したサンプル値x(0)〜x(15)のDFTを計算すると式(3)のようになり、周波数スペクトルは図7(a)に示すようになる。ここで、Aは図4と同じ値で、ωbはシンボルレートをfbとしωb=2πfbである。
【数3】
【0022】
送信機が送信する信号は、式(4)に示す伝達関数RR(ω)を持つルートロールオフフィルタで帯域制限され、受信機にも同じRR(ω)の特性のルートロールオフフィルタを持ち、このフィルタの出力信号を復調する。プリアンブルパターン識別では処理遅延を削減するため、受信機のルートロールオフフィルタ前段の信号を用いる。
【数4】
ここで、αをロールオフ率と呼び、0≦α≦1である。
【0023】
図7(b)は、図7(a)の信号を、式(4)に示す伝達関数RR(ω)を持つルートロールオフフィルタで帯域制限した周波数スペクトルであり、RR(ωb/2) = RR(-ωb/2) = 1/√2であるから、図7(b)の各成分は、式(5)のようになり、ω=±ωb/2の2つの周波数成分を持つ。
【数5】
従って、時間波形は、式(6)のようになる。
【数6】
【0024】
受信ベースバンド信号がシンボルタイミングより時間t0だけ遅れていて、送信機と受信機との周波数偏差をΔωとすると、式(7)のようになる。また、各成分の角周波数はω1=-ωb/2+Δω、ω2=ωb/2+Δω、ω1とω2各成分の位相φ1,φ2は式(8)のようになる。ここで、θ0は定数である。
【数7】
【数8】
【0025】
受信ベースバンド信号がプリアンブルの信号である場合の周波数スペクトルは、上記ω1とω2の成分のみであるから、周波数スペクトルの全電力をp、ω1成分の電力をp1、ω2成分の電力をp2とすると、2成分の電力和(p1+p2)が全電力pに近い値となることから、電力比(p1+p2)/pによりプリアンブルパターンの識別ができる。
また、式(8)より(φ1-φ2)を求めてθ0を消去すると、各成分の位相φ1とφ2からシンボルタイミングt0を求めることができる。
【数9】
【0026】
次に、変調方式がπ/4シフトQPSKの場合のプリアンブル周波数スペクトルについて、図13と図8によって説明する。図13は、変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブルの信号のマッピングとゼロ補間を説明するための図であり、図8は、変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブルの信号のDFT出力を示す図である。
図13に示すように、シンボル毎にA exp(j0)、A exp(-jπ/4)、A exp(jπ/2)、A exp(jπ/4)、A exp(jπ)、A exp(j3π/4)、A exp(-jπ/2)、A exp(-j3π/4)でマッピングし、1シンボル当たり2回オーバーサンプリングしてゼロ補間したサンプル値x(0)〜x(15)のDFTを計算すると式(10)のようになり、周波数スペクトルは図8(a)のようになる。ここで、Aは図5と同じ値である。
【数10】
【0027】
この場合も、変調方式がQPSKまたはQAMである場合と同様に、式(4)の伝達関数を持つルートロールオフフィルタで帯域制限された周波数スペクトルを考えると、周波数スペクトルは図8(b)〜(d)のようになる。この場合、ルートロールオフフィルタのロールオフ率αにより周波数スペクトルが変化する。
ロールオフ率αが0≦α≦1/4の場合は、図8(b)に示すように、角周波数が-3ωb/8とωb/8の2成分X(13)とX(1)のみが残り、これらの成分の振幅は変化しない。
【0028】
ロールオフ率αが1/4≦α≦3/4の場合は、図8(c)に示すように、角周波数がωb/8であるX(1)はそのまま残り、-3ωb/8,5ωb/8の成分はそれぞれ、式(11)のようになり、ロールオフ率α=0.5の場合はX'(13) = 0.924 X(13)、X'(5) = 0.383 X(5)となる。
【数11】
ロールオフ率αが3/4≦α≦1の場合は同図(d)に示すように、-7ωb/8、-3ωb/8、ωb/8、5ωb/8の4成分が残り、各成分はそれぞれ式(12)のようになる。
【数12】
ロールオフ率αは、通常、0.5 以下であることが殆どであるため、図8(b)及び図8(c)の場合のみ考えると、ロールオフ率α=0.5の場合プリアンブルの信号入力時は、-3ωb/8とωb/8の2成分の電力が全電力の92.7%以上[α=0.5の場合、(1+0.9242) / (1+0.9242+0.3832) = 0.927]を占めるため、-3ωb/8の成分の電力をp1とし、ωb/8の成分の電力をp2とし、周波数スペクトルの全電力pに対する比(p1+p2)/pによりプリアンブルパターン識別ができる。
【0029】
図8(b)及び図8(c)よりプリアンブルの信号の時間波形は、ロールオフ率αが0≦α≦1/4の場合には、式(13)のようになり、ロールオフ率αが1/4≦α≦3/4の場合には、式(14)のようになる。
【数13】
【数14】
更に、QPSKまたはQAMの場合と同様に、受信ベースバンド信号がシンボルタイミングより時間t0だけ遅れていて、送信機と受信機との間にΔωの周波数偏差がある場合の時間波形を求めると、ロールオフ率αが0≦α≦1/4の場合には式(15)のようになり、ロールオフ率αが1/4≦α≦3/4の場合には、式(16)のようになる。
【数15】
【数16】
【0030】
式(15)と(16)に示す-3ωb/8+Δω、ωb/8+Δωの各成分の位相φ1、φ2は、式(17)のようになる。ただし、θ0は定数である。
【数17】
従って、シンボルタイミングt0は数式(18)より求められる。
【数18】
【0031】
プリアンブル以外の信号、例えば、通信チャネルTchが受信された場合には、複数の周波数スペクトルが抽出されるが、その場合には、スペクトルの振幅が大きい順に2つ選択し、それらをp1とp2とする。そして、2成分の電力和(p1+p2)を求めると、全電力pに比べて小さな値となることから、電力比(p1+p2)/pが小さくなることによりプリアンブルパターンではないと判定することができる。
【0032】
次に、本発明の実施形態を、図1を用いて説明する。図1は、本発明のプリアンブルパターン識別、周波数偏差検出、及びシンボルタイミング検出を行なう回路構成の一実施例を示すブロック図である。
図1において、受信されたベースバンド信号が入力端子101に入力される。このベースバンド信号は、従来技術の場合と同様に、1シンボル当たりNov回オーバーサンプリングされた複素数のデジタル信号であり、Novは2以上の正整数である。
【0033】
入力端子101を介して入力したベースバンド信号は、サンプル毎にシフトレジスタ114に入力される。シフトレジスタ114の段数は、Nwinで、シフトレジスタ114内部のNwin個のレジスタをs(0),s(1),‥‥‥,s(Nwin-2),s(Nwin-1)とすると、入力端子101を介してベースバンド信号が入力されるたびに、s(Nwin-1),s(Nwin-2),‥‥‥,s(1)の内容が、それぞれ、s(Nwin-2),s(Nwin-3),‥‥‥,s(0)にシフトされ、入力端子101を介して入力されるベースバンド信号がs(Nwin-1)に入力される。シフトレジスタ114の内容s(0),s(1),‥‥‥,s(Nwin-2),s(Nwin-1)は、サンプル毎に、スイッチ113に与えられ、一定の時間間隔Nstep(サンプル)毎に1回、s(0),s(1),‥‥‥,s(Nwin-2),s(Nwin-1)が窓掛け回路102に入力される。(例えば、オーバーサンプル数Nov=2で、Nstep = 8、Nwin = 16である)。このように、スイッチ113は、Nstepサンプル周期に1回閉じていて、Nwinサンプルの信号をNstep間隔で取り出す。
スイッチ113から入力されたNwinサンプルの信号は、窓掛け回路102によって、窓(例えば、ハミング窓(Hamming Window))を掛けられ、FFT演算回路103に入力される。
【0034】
FFT演算回路103は、窓掛け回路102から入力されるNwinサンプルの信号のDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)を、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)アルゴリズムにより演算する。
図9は、Nov = 2、Nwin = 16の場合のFFT演算回路103の出力の一実施例で、送信機と受信機との間に周波数偏差がある場合のプリアンブル信号のDFT出力を示す図である。
図9は、角周波数ω1とω2の2つの周波数成分を持つプリアンブル信号が入力された場合のDFT出力であり、-3ωb/8の周波数成分であるX(13)と、5ωb/8の周波数成分であるX(5)がピークとなっている。しかし、DFT出力は、周波数が離散的であるため、実際のプリアンブルの成分ω1(ピーク903)とω2(ピーク904)は、それぞれ、X(12)とX(13)のポイント間とX(4)とX(5)のポイント間に存在する。従って、実際のピーク903を求めるには、例えば、ポイントX(12),X(13),X(14)間でデータ補間し、包絡線901を求めて行う。同様に、実際のピーク904を求めるには、例えば、ポイントX(4),X(5),X(6)間でデータ補間し、包絡線902を求めて行う。
【0035】
FFT演算回路103での演算結果(DFT出力)は、全電力算出回路104、及び、プリアンブル成分抽出回路105と106とに与えられる。
全電力算出回路104、及び、プリアンブル成分抽出回路105と106の処理は、図10に示すフローチャートの手順に従って、全電力算出およびプリアンブル成分の抽出を行う。図10は、本発明のDFT出力からプリアンブル成分を抽出する手順の一実施例を示すフローチャートである。
【0036】
図10において、ステップ1001では、FFT演算回路103の出力X(k)(k = 0,1,‥‥‥,(Nwin-1))から、|X(k)|2が最大となるものを検索し、検索された|X(k)|2が最大となるkをk11(k = k11)としてステップ1002に進む。ステップ1002では、m1とm2を算出し(m1 = (k11 - 1) mod Nwin,m2 = (k11 + 1) mod Nwin)、ステップ1003に進む。
ステップ1003では、算出されたm1とm2から、|X(m1)|2と|X(m2)|2を比較し、|X(m2)|2>|X(m1)|2であれば、ステップ1004に進み k12 = m2としステップ1006に進む。また、|X(m2)|2≦|X(m1)|2であれば、ステップ1005に進み k12 = m1とし、ステップ1006に進む。ステップ1006では、X(k11)とX(k12)の電力和p1(p1 = |X(k11)|2 + |X(k12)|2)を算出して、ステップ1007に進む。
受信したプリアンブルの実際のピークは、X(k11)とX(k12)の間に存在するため、ステップ1007では、X(m1)、X(k11)、X(m2)の3点でポイント間の補間を行い、補間を行った部分での実際のピークを検索し、その実際のピークでの周波数f1と周波数スペクトルの位相φ1を算出する。
【0037】
次にもう1つの成分を抽出する。kdはプリアンブルの2成分の周波数差|ω2-ω1|に相当するkの値である。変調方式がQPSKまたはQAMの場合には、|ω2-ω1| = ωbであるから、kd=Nwin/Nov、π/4シフトQPSKの場合には、|ω2-ω1|=ωb/2であるから、kd=Nwin/(2Nov)である。
ステップ1008では、m1=(k11-kd) mod Nwinとm2=(k11+kd) mod Nwinとを算出し、ステップ1009に進む。ステップ1009では、|X(k)|2 (k=(m1-1) mod Nwin,m1,(m1+1) mod Nwin)の最大値を検索し、第1の最大値をx1とし、その時のkをm1(k = m1)としステップ1010に進む。
ステップ1010では、また、|X(k)|2 (k=(m2-1) mod Nwin,m2,(m2+1) mod Nwin)の最大値を検索し、第2の最大値をx2とし、その時のkをm2(k = m2)とする。
【0038】
ステップ1011では、第1の最大値x1と第2の最大値x2とを比較し、第1の最大値x1が大きければ、ステップ1012で k21=m1を算出しステップ1014に進む。また、そうでなければ、ステップ1013で k21=m2を算出しステップ1014に進む。これにより、k21がもう1つの成分の番号となる。
ステップ1014では、m1=(k21-1) mod Nwinとm2=(k21+1) mod Nwinを算出し、ステップ1015に進む。ステップ1015では、|X(m1)|2と|X(m2)|2を比較する。|X(m1)|2より|X(m2)|2が大きい場合には、ステップ1016でk22=m2としてステップ1018に進む。また、そうでない場合には、ステップ1017でk22=m1としてステップ1018に進む。
ステップ1018では、X(k21)とX(k22)の電力和p2を算出し、ステップ1019に進む。
【0039】
受信したプリアンブルの実際のピークは、X(k21)とX(k22)の間に存在するため、ステップ1019において、X(m1)、X(k21)、X(m2)の3点でポイント間の補間を行い、補間を行った部分でのピークを検索し、そのピークでの周波数f2と周波数スペクトルの位相φ2を算出し、ステップ1020に進む。
最後に、ステップ1020では、FFT演算回路103の出力の全電力p = |X(0)|2+|X(1)|2+…+|X(Nwin-1)|2を算出する。
【0040】
ステップ1001〜1020の処理は、図9に示したFFT回路103の出力の場合には、ステップ1001でX(5)が選択され、k11=5、m1=4,m2=6で|X(4)|2と|X(6)|2を比較し(ステップ1003)、|X(4)|2が大きいためk12=4となり(ステップ1005)、p1=|X(5)|2+|X(4)|2が演算される(ステップ1006)。
受信したプリアンブルの実際のピークは,ω2の位置に存在するため、X(4)、X(5)、X(6)の3点の間で補間を行い(破線902)、補間した部分でのピークがω2で検出されるので、その周波数をf1=ω2/(2π)とする。また、ω2での補間値の位相をφ1とする(ステップ1007)。
【0041】
図9は、変調方式がQPSKまたはQAMの場合の一例であり、kd=Nwin/Nov=8であるから、m1=13, m2=13と同じ値であるため(ステップ1008)、ステップ1009とステップ1010において、|X(k)|2 (k=12,13,14)の最大値を検索し、x1=x2=|X(13)|2,m1=m2=13となり(ステップ1009,1010)、k21=m2=13がもう一つのピーク成分の番号となる(ステップ1013)。m1=12,m2=14として|X(12)|2と|X(14)|2を比較し(ステップ1015)、|X(12)|2が大きいためk22=m1=12となり(ステップ1017)、p2=|X(13)|2+|X(12)|2が演算される(ステップ1018)。
受信したプリアンブルの実際のピークは、ω1の位置に存在するため、X(12),X(13),X(14)の3点の間で補間を行い(破線901)、補間した部分でのピークがω1で検出されるので、その周波数をf2=ω1/(2π)とする。また、ω1での補間値の位相をφ2とする(ステップ1019)。
【0042】
図1のプリアンブルパターン識別回路107、周波数偏差検出回路108、及び、シンボルタイミング検出回路109は、図10のフローチャートの手順で算出した、DFT出力の全電力p、2つの周波数成分の周波数f1とf2、位相φ1とφ2、電力p1とp2とを用いて、プリアンブルパターン識別、周波数偏差検出、シンボルタイミング検出を行う。
【0043】
プリアンブルパターン識別回路107の処理は、全電力pに対する2成分の電力和 p1+p2の比γ=(p1+p2)/pを用い、更にプリアンブルの2成分が受信機のフィルタにより削られていいない場合は、2成分の周波数差 f12=|f2-f1|も用いる。入力端子101にプリアンブル信号が入力されていて、2成分ともに削られない場合は、全電力pは、2成分電力和 p1+p2と雑音電力との和であり(ただし、変調方式がπ/4シフトQPSKでロールオフ率αが1/4≦α≦1/2の場合はp1,p2と雑音以外に最大7.3%の成分の電力がpに含まれる)、2成分の内の片方の成分が削られる場合は、p1またはp2のいずれかが雑音電力となる。
従って、片方の成分が削られているか否かの判断は、p1とp2の比較により行う。例えば、p1とp2を比較し、片方が6dB以上低い値(比が4倍以上)ならば片方の成分が削られていると判断する。
【0044】
変調方式がQPSKまたはQAMの場合で、2成分とも削られていないと判断した場合には、γがしきい値rthを超え、かつf12がfb±f0(fbはシンボルレート、f0は規定値)の範囲内ならば受信信号がプリアンブル信号であると識別する。片方の成分が削られていると判断した場合は、γとしきい値rthの比較のみでプリアンブルパターン識別を行う。
変調方式がπ/4シフトQPSKの場合で、2成分とも削られていないと判断した場合には、γがしきい値rthを超え、かつf12がfb/2±f0の範囲内ならば受信信号がプリアンブル信号であると識別する。片方の成分が削られていると判断した場合は、γとしきい値rthの比較のみでプリアンブルパターン識別を行う。
しきい値rthと規定値f0は、例えばrth=0.8、f0=fb/8に設定する。
受信信号がプリアンブルであると識別した場合には、プリアンブルパターン識別出力端子110を介して“1”を出力し、識別できない場合には“0”を出力する。
【0045】
周波数偏差検出回路108の処理は、2成分の各々の周波数f1,f2と、プリアンブルの信号の送信ベースバンドでの周波数成分の各成分の周波数f10,f20(低い周波数の成分をf10、高い周波数の成分をf20とする)を用いて行う。2成分とも削られていない場合は両方の周波数を用いて式(19)により算出する。
【数19】
また、片方の成分が削られている場合は残っている成分の周波数をf1'とし、このf1'を用いて式(20)により算出する。ここで、f1'≧0の場合は周波数の高い成分が削られているものとして、f10との差をΔfとし、f1'<0の場合は周波数の低い成分が削られているものとして、f20との差をΔfとする。
【数20】
検出した周波数偏差Δfは、周波数偏差出力端子111を介して出力される。
【0046】
シンボルタイミング検出回路109の処理は、プリアンブルの2成分とも削られていないと判断した場合にのみ行い、2成分の位相φ1とφ2を用いて行う。
変調方式がQPSKまたはQAMの場合、式(9)よりシンボルタイミングfbt0は、式(21)のようになる。
【数21】
また、変調方式がπ/4シフトQPSKの場合には、式(18)よりシンボルタイミングfbt0は、式(22)のようになる。
【数22】
検出したシンボルタイミングfbt0は、シンボルタイミング出力端子112を介して出力される。
【0047】
以上の説明による本発明の実施形態では、入力端子101にプリアンブル以外の信号が入力された場合、全電力pは、2つの周波数スペクトル成分の電力p1とp2以外に信号成分の電力を含んでいるため、電力比γの値は小さくなる。
また、入力端子101にプリアンブルが入力された場合は、振幅が変動したとしても、p1+p2は振幅変動の影響を受けたプリアンブル成分の電力で、全電力pは、振幅変動の影響を受けたプリアンブル成分の電力と雑音電力の和であり、振幅の落ち込みによりp1+p2が小さくなる場合は、pも小さくなる。このため、雑音の影響を受けるものの、振幅変動は直接影響しない。従って、振幅変動の影響を受けないプリアンブルパターン識別が可能である。
【0048】
更に、送信機と受信機との周波数偏差により、プリアンブルの2つの周波数成分のうち片方の成分が、受信機のフィルタの帯域外へ外れたとしても、p1とp2の一方がプリアンブルの1成分の電力で、他が雑音電力であり、全電力pはプリアンブルの1成分の電力と雑音電力の和であるため、電力比γを用いてプリアンブルパターン識別を行うことが可能である。
また更に、抽出した2つの周波数成分の周波数より、送信機と受信機との周波数偏差を検出することができ、プリアンブルの2つの周波数成分が受信機のフィルタにより削られずに残っている場合は、抽出した2つの成分の位相よりシンボルタイミングを検出することも可能である。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、プリアンブルパターン識別に用いる電力比が、受信信号の振幅変動に影響せず、振幅変動の影響を受けないプリアンブルパターン識別が可能である。また、送信機と受信機との周波数偏差によりプリアンブルの2つの周波数成分のうち、片方の周波数成分が受信機のフィルタの帯域外へ外れて削られる場合においても、プリアンブルパターン識別が可能である。
更に、本発明によれば、送信機と受信機との周波数偏差の検出が可能で、プリアンブルの2つの周波数成分が残っている場合には、シンボルタイミング検出を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例のプリアンブルパターン識別および周波数偏差・シンボルタイミング検出のための回路構成を示すブロック図。
【図2】 従来のプリアンブルパターン識別のための回路構成を示すブロック図。
【図3】 従来のプリアンブルパターン識別で用いる相関回路の構成を示すブロック図。
【図4】 変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のコンスタレーションおよび時間波形を示す図。
【図5】 変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブル信号のコンスタレーションおよび時間波形を示す図。
【図6】 図2の回路での相関出力の自乗値の短時間平均の時間波形を示す図。
【図7】 変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のDFT出力を示す図。
【図8】 変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブル信号のDFT出力を示す図。
【図9】 本発明のFFT演算回路の出力の一実施例を示す図。
【図10】 本発明のDFT出力からプリアンブル成分を抽出する手順の一実施例を示すフローチャート。
【図11】 従来の受信機の簡単な構成を示すブロック図。
【図12】 変調方式がQPSKまたはQAMである場合のプリアンブル信号のマッピングとゼロ補間を説明するための図。
【図13】 変調方式がπ/4シフトQPSKである場合のプリアンブル信号のマッピングとゼロ補間を説明するための図。
【図14】 従来の同期バーストフレームのフレーム構造を示す図。
【図15】 従来の通信チャネルフレームのフレーム構造を示す図。
【図16】 従来のARIB STD-T61に基づく送信パターンを説明する図。
【符号の説明】
101:入力端子、 102:窓掛け回路、 103:FFT演算回路、 104:全電力算出回路、 105,106:プリアンブル成分抽出回路、 107:プリアンブルパターン識別回路、 108:周波数偏差検出回路、 109:シンボルタイミング検出回路、 110:プリアンブルパターン識別出力端子、 111:周波数偏差出力端子、 112:シンボルタイミング出力端子、 113:スイッチ、 114:シフトレジスタ、 201:入力端子、 202:相関回路、 203:振幅自乗値演算回路、 204:短時間平均演算回路、 205:判定器、 206:プリアンブル識別出力端子、 301:入力端子、 302:1シンボル遅延回路、 303:複素加算器、 304:複素乗算器、 305:相関出力端子、 601,603:プリアンブル以外の信号を受信する区間、 602:プリアンブルを受信する区間、 901:DFT出力のX(12),X(13),X(14)を補間した包絡線、 902:DFT出力のX(4),X(5),X(6)を補間した包絡線、 903,904:実際のピーク、 1101:受信信号入力端子、 1102:高周波部回路、 1103:A/D変換器、 1104:乗算器、 1105:移相器、 1106:正弦波発生回路、 1107:ローパスフィルタ、 1108:ルートロールオフフィルタ、 1109:ベースバンド信号出力端子。
Claims (4)
- 受信したベースバンド信号の周波数スペクトルを求め、該周波数スペクトルから2つの周波数f1とf2の成分を抽出し、該抽出されたそれぞれの周波数f1とf2の成分のそれぞれの電力p1とp2と全周波数成分の電力pを算出し、該それぞれの電力p1とp2の和と全周波数成分の電力pとの電力比(p1+p2)/pを算出し、算出された該電力比(p1+p2)/pが所定のしきい値を超えていれば、受信したベースバンド信号がプリアンブルの信号であると判断することを特徴とするプリアンブルパターン識別方法。
- 請求項1記載のプリアンブルパターン識別方法において、
前記周波数スペクトルから抽出する2つの周波数f1とf2の成分は、振幅が高い順に2つ抽出することを特徴とするプリアンブルパターン識別方法。 - 請求項1または請求項2のいずれかに記載のプリアンブルパターン識別方法において、
前記電力比が所定のしきい値を超えている場合に、前記2つの周波数f1とf2のの差の絶対値|f2-f1|を求め、
該差の絶対値|f2-f1|が所定の第1の値の範囲内にあれば、受信したベースバンド信号がプリアンブルの信号であると判断することを特徴とするプリアンブルパターン識別方法。 - 受信信号を1シンボル当たりNov回(Novは2以上の正整数)オーバーサンプリングしたベースバンド信号から、任意の連続したNwinサンプル(Nwinは2以上の正整数)のベースバンド信号を抽出し、該抽出したベースバンド信号に任意の窓関数を乗じ、該任意の窓関数を乗じたベースバンド信号x(n)(n=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))のDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)X(k) (k=0,1,‥‥‥、(Nwin-1))を演算し(X(k)は複素数)、該DFT出力X(k) (k=0,1,‥‥‥,(Nwin-1))の全電力p=|X(0)|2+|X(1)|2+…+|X(Nwin-1)|2を算出し、
該DFT出力X(k)のうち、振幅の自乗値|X(k)|2が最大となるX(k)を検索してそのkをk11とし、X(k11)に隣接する成分から、|X(k11)|2の次に|X(k)|2が大きくなるX(k)を検索してそのkをk12とし、X(k11)とX(k12)の電力和p1=|X(k11)|2+|X(k12)|2を算出し、X(k11)の周辺を補間し、該補間した部分のピークにおける周波数をf1、位相をφ1とし、
変調方式により定められる自然数の定数をkdとし、X(k) (k=(k11-kd-1) mod Nwin,(k11-kd) mod Nwin,(k11-kd+1) mod Nwin,(k11+kd-1) mod Nwin,(k11+kd) mod Nwin,(k11+kd+1) mod Nwin)から、|X(k)|2が最大となるX(k)を検索してそのkをk21とし、X(k21)に隣接する成分のうち、|X(k21)|2の次に|X(k)|2が大きくなるX(k)を検索してそのkをk22とし、X(k21)とX(k22)の電力和p2=|X(k21)|2+|X(k22)|2を算出し、X(k21)の周辺を補間し、該補間した部分のピークにおける周波数をf2、位相をφ2とし、
該算出したf1とf2を比較し、f1>f2であれば、f1,φ1,p1を改めてf2,φ2,p2とし、f2,φ2,p2を改めてf1,φ1,p1とすることを特徴とするプリアンブル成分抽出方法。
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