JP3932760B2 - 壁付照明器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、住宅の廊下空間の安全性と快適性を高める目的で設置される壁付照明器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、住宅の廊下の主照明としては、図15(a)、(b)に示すような天井直付け照明器具20、21あるいは図15(c)、(d)に示すように天井埋め込み照明器具22、23が用いられることが多かった。また、現存する壁付照明器具は、主として住宅内の居間や商業施設の装飾用のものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、住宅の廊下の主照明として、天井直付けあるいは天井埋め込み照明器具を用いた場合、安全な歩行に必要とされる床面照度や、快適に歩行できる明るさ感を得ることはできるものの、電球の交換に代表される器具の手入れは高所作業となり、作業に危険が伴うという欠点がある。特に、高齢者や体に不自由がある人にとっては、脚立に登って行なう作業はことさら危険である。国連の定義するところの高齢社会に突入した日本においては、高齢者にとって安全で快適な環境を提供することは重要である。
【0004】
また、現存する壁付照明器具は、主として住宅内の居間や商業施設の装飾用のものであり、住宅内空間の主照明として安全性・快適性の面から検討されていない。そのため、住宅の廊下空間に主照明として設置すると、不快グレアや減能グレアを生じる場合がある。
【0005】
特に高齢者は、若齢者に比べ同じ輝度のグレア光源に対して不快グレアを感じやすく、減能グレアを生じやすい。一方でグレアを低減しようとすると、歩行に必要な床面照度や快適に歩行できる明るさ感を低減させ、結果的に快適でない照明となりやすいという問題がある。
【0006】
この発明は、上記の課題を考慮して、住宅内の廊下空間において、高齢者でも安全に器具の手入れができ、かつ安全な歩行に必要とされる床面照度が得られ、快適に歩行できる明るさ感やグレアレスを実現する壁付照明器具を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の壁付照明器具は、廊下空間の手の届く範囲に設置する壁付照明器具において、光源と、前記光源よりも器具の取付壁側に位置する反射板と、前記光源および前記反射板よりも器具の対向壁側に位置して前記光源を覆う透過性部材とを備え、
前記反射板は、上方向あるいは下方向から見たときに、前記取付壁からの距離が前記光源に対向する部分において最も大きく、前記光源から離れるほど小さくなる形状をなし、
前記透過性部材の上下方向の幅は、前記反射板の上下方向の幅よりも小さいものである。
【0008】
請求項1記載の壁付照明器具によれば、このような照明器具を使用することにより、廊下空間の明るさ感を高めるとともに廊下歩行時のまぶしさを軽減して、歩行時の安全性を確保し、快適性を高め、満足した光環境を実現することができる。また器具が薄型化されるので器具との衝突事故の危険を軽減するとともに電球交換などの器具の手入れも安全に行なえる。
【0009】
請求項2記載の壁付照明器具は、請求項1において、前記透過性部材の上下方向の幅が、中心で小さく、周辺部で大きいものである。
【0010】
請求項2記載の壁付照明器具によれば、請求項1と同様な効果のほか、器具正面付近の明るさを確保し、かつ歩行者が器具側方から見た際のまぶしさを軽減することで、廊下空間の快適性を高めることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態を図1から図7により説明する。まず、住宅の廊下を模した実験空間に壁付照明器具を設置して、照明評価実験を行なった。実験の詳細は以下の通りである。すなわち、長さ5.5(m)、幅0.95(m)、高さ2.5(m)の廊下空間内の、高さ1.8(m)の位置に壁付照明器具を2.7(m)間隔で2個設置した。壁付照明器具の種類は、既製品および既製品を改造した器具を用い、合計8種類である。器具の水平方向の設置位置を2水準設定し、計24条件の照明空間を設定した。実験に用いた壁付照明器具17〜19を図6に示す。
【0027】
各々の条件に対して若齢被験者5名により、21種類の形容詞対による空間印象評価、及び明るさ感評価、グレア評価、歩行性評価を行なった。順応空間は、居間を想定した200(lx)で照明された空間と、就寝前の寝室を想定した20(lx)で照明された空間の2水準とした。
【0028】
図7は、明るさ感、グレア、歩行性の各評価値(因子得点)と、空間印象のうちの「好ましさ」との関係を示したものである。横軸の明るさ感、グレア、歩行性については4が最高評価値である。この図から、「好ましさ」で高評価を得ているのは、明るさ感、グレア、歩行性の評定値がすべて4付近の高評価を得た条件であることが分かる。このような高評価を得た条件の壁付照明器具を1灯のみ点灯した場合の、室内各面及び器具自体の照度や輝度を測定した結果、以下のような傾向があることが分かった。
【0029】
すなわち、床面照度(器具正面・廊下の中心線上)が60(lx)以上、器具自体の最高輝度が3500(cd/m2 )以下、突き当たりの壁の中央・器具高さでの鉛直面照度が90(lx)以上、天井面の照度が70(lx)以上、器具の対向壁面の照度が100(lx)以上、器具取り付け壁のうち器具近傍部分の輝度が700(cd/m2 )以上である。
【0030】
そこで、住宅内の廊下空間において、高齢者でも安全にメンテナンスができ、かつ安全な歩行に必要とされる床面照度が得られ、快適に歩行できる明るさ感やグレアレスを実現する壁付照明器具を以下の構成とした。
【0031】
なお、器具の性能の特定はすべて、図1および図2に示すような、長さ約2.2(m)以上、幅約1(m)、高さ約2・5(m)の標準的な廊下空間の、突き当たりの壁から約0.9(m)、高さ約1.8(m)の壁面7に照明器具1を設置した場合の照度等の数値を用いて行なっている。
【0032】
(1)廊下空間の手の届く範囲に設置する壁付照明器具において、図1および図2に示すように、床面中心線2上でかつ照明器具1の正面である点の床面照度が60(lx)以上で、かつ床面中心線2上で器具正面の点3からの距離が0.9(m)の点での床面照度が40(lx)以上で、かつ床面中心線2上で器具正面の点からの距離が1.3(m)の点での床面照度が30(lx)またはそれ以上となるような配光である。このような配光の壁付照明器具を2.7(m)間隔で設置すれば、床面をほぼ均一に60(lx)で照明することができ、歩行者の床面に対する視認性を確保し、結果的に廊下空間の安全性を高めることができる。
【0033】
(2)図2(a)に示すように、廊下歩行時の通常の姿勢で視野に入る部位の最高輝度が約3500(cd/m2 )以下、特に約3000(cd/m2 )以下であることにより、歩行者のまぶしさを軽減することができ、結果的に廊下空間の安全性及び快適性を高める。
【0034】
または図2(b)に示すように、廊下歩行時の通常の姿勢で視野に入る部位の最高輝度が約1500(cd/m2 )以上でかつ約2000(cd/m2 )以下であってもよい。
【0035】
(3)図3に示すように、突き当たりの壁4の、廊下幅の中央かつ照明器具1と同じ高さにおける鉛直面照度が90(lx)以上となるような配光であることにより、照明器具1を廊下の側壁面に設置した場合に廊下の突き当たりの壁4の壁面の明るさを確保し、廊下空間の明るさ感を高め、結果的に廊下空間の快適性を高める。
【0036】
(4)図4に示すように、照明器具1の正面上方向の天井面5の、廊下幅中央位置における下向き水平面照度が70(lx)以上、特に140(lx)以上となるような配光であることにより、天井面の明るさを確保し、廊下空間の明るさ感を高め、結果的に廊下空間の快適性を高める。
【0037】
(5)図5(a)に示すように、照明器具1の対向壁面6の、照明器具1と同じ高さの位置6aにおける鉛直面照度が100(lx)以上、とくに140(lx)以上となるような配光であることにより、器具と対向する壁面の明るさを確保し、廊下空間の明るさ感を高め、結果的に廊下空間の快適性を高める。
【0038】
(6)図5(b)に示すように、反射率80%の壁面7に設置した時に、照明器具1を設置した壁面7の、照明器具1の近傍での最高輝度が700(cd/m2 )以上となるような配光であることにより、廊下空間の明るさ感を高め、結果的に廊下空間の快適性を高める。
【0039】
さらに、上記の実施の形態を実現する壁付照明器具1として、以下に示す構成の壁付照明器具を発明した。
【0040】
(7)すなわち、図8(a)に示すように、上あるいは下方向から見たときに、取付壁12の壁面7からの距離が照明器具1の光源11付近が最も大きく、光源11から離れるほど小さくなる形状の反射板10を、光源11よりも取付壁12側に有することで、側方の広い範囲に光を効率的に反射し、さらに、光源11及び反射板10よりも照明器具1の対向壁側に、透過性部材13を有することで、まぶしさを軽減しかつ光を広い範囲に拡散する。実施の形態では反射板10が横断面山形であり、透過性部材13が横断面略半円筒形である。
【0041】
(8)図8(b)に示すように、透過性部材13の上下方向の幅が、反射板10の上下方向の幅よりも小さいことにより、光源11からの光を反射して適度な輝度となっている反射板10が歩行者の視界に入り、明るさ感を高め、結果的に廊下空間の快適性を高める。
【0042】
(9)図9に示すように図8(a)に示す構造において、透過性部材13の上下方向の幅が中心付近で小さく、周辺部で大きく形成してあり、これにより、照明器具1の対向壁側の上下斜め方向への光15の発散を増加させ、器具正面付近の明るさを確保し、かつ歩行者が器具側方から見た際のまぶしさを軽減することで、結果的に廊下空間の快適性を高める。図10はその姿図である。
【0043】
図9および図10の器具をさらに詳細に説明すると、光源11として、器具1の中央部に60Wミニクリプトン球を有する。また上あるいは下方向から見たときに、取付壁12からの距離が光源11の付近が最も大きく、光源11から離れるほど小さくなる形状で、かつ図に示すようなR(曲面)を有する反射板10を用いることで、側方の広い範囲に光を効率的に反射する。光源11及び反射板10よりも器具の対向壁側には、透過率25%のアクリル乳白セード(13)を有し、まぶしさを軽減しかつ光を広い範囲に拡散する。アクリル乳白セード(13)の上下方向の幅は、反射板10の上下方向の幅よりも小さいことにより、光源11からの光を反射して適度な輝度となっている反射板10が歩行者の視界に入り、明るさ感を高める。さらに、アクリル乳白セード13の上下方向の幅が、中心付近で小さく、周辺部で大きいことにより、器具の対向壁側の上下斜め方向への光の発散を増加させ、器具正面付近の明るさを確保し、かつ歩行者が器具側方から見た際のまぶしさを軽減する。
【0044】
図11から図13は別の実施の形態である。図11に示す器具1は、反射板16で形成した器具本体の中央に光源11として60Wミニクリプトン球を設けている。その外側に、水平断面が光源11を中心とした半径50〜70(mm)の略半円状である筒型の透過性部材13であるアクリル乳白セードを有する。このセードは透過率が25%、厚さが3(mm)である。上下面は開放されている。この構造により、側方あるいは正面から観察される器具の輝度は最大で約3000(cd/m2 )となり、所要の光環境を得ることが出来る。
【0045】
図12に示す器具1は、基本的な構成は図11に示す器具と同じであり、共通部分に同一符号を付している。光源11は器具中央に60Wミニクリプトン球を用いており、その外側に、水平断面が光源11を中心とした半径50〜70(mm)の略半円状である筒型の透過性部材13であるアクリル乳白セードを有する。このセードはその輝度が3000(cd/m2 )でほぼ均一になるように、セードの厚みが上下方向に不均一になっており、上下端付近では2(mm)と薄く、中央付近では3(mm)と厚くなっており、したがって透過率は上下端付近で相対的に大きく50%、中央付近で小さく25%となっている、上下面は開放されている。この構造により、側方あるいは正面から観察される器具の輝度は上端から下端まで約3000(cd/m2 )でほぼ均一となり、講求項7に示す所要の光環境を得ることができる。
【0046】
図13に示す器具は、筒型で不透過セード25であり、かつ上面開放型の壁付照明器具である。光源11は器具中央に60Wミニクリプトン球を設けており、その外側に、水平断面が光源を中心とした半径60(mm)の円状の筒型の不透過性の材質を用いたセード25を有する。さらに下面には、透過率85%のすりガラス部材26を有する。従来の器具は、図13(d)に示すように背の低い人が器具に近づき斜め下から器具をみると器具内面の反射がまぶしいという問題点があったが、このすりガラス部材26により、従来まぶしかった部分の輝度を約3500(cd/m2 )まで低下させ、その問題点を解決しており、請求項7に示す所要の光環境を得ることができる。27は壁取付部材である。
【0047】
図14(a)、(b)に示す器具は、筒型で不透過のセード25であり、かつ上下面解放型の壁付照明器具であり、基本的に図13の器具と共通しており、共通部分に同一符号を付している。光源11は器具中央に60Wミニクリプト球を用いており、その外側に、水平断面が光源11を中心とした半径60(mm)の筒型のセード25を有する。このセード25は、不透過性の材質で、上下幅が取付壁12側よりも通路側で大きくなっており、側方から観察すると器具下面は水平面を基準として約35度の傾斜α(tanα>2/3)を有する。従来の器具は、背の低い人が斜め下から器具をみると図13(c)に示すように器具内面の反射がまぶしいという問題点があったが、例えば壁面7の高さ1800mmの位置の壁取付部材27に取付けられた器具1から450mmの廊下中央に立った身長1450mmの人でも、このセード25の形状により、従来まぶしかった部分が歩行者から見えないようになり、まぶしさを軽減でき、その問題点を解決しており、所要の光環境を得ることが出来る。
【0048】
【発明の効果】
請求項1記載の壁付照明器具によれば、このような照明器具を使用することにより、廊下空間の明るさ感を高めるとともに廊下歩行時のまぶしさを軽減して、歩行時の安全性を確保し、快適性を高め、満足した光環境を実現することができる。また器具が薄型化されるので器具との衝突事故の危険を軽減するとともに電球交換などの器具の手入れも安全に行なえる。
【0049】
請求項2記載の壁付照明器具によれば、請求項1と同様な効果のほか、器具正面付近の明るさを確保し、かつ歩行者が器具側方から見た際のまぶしさを軽減することで、廊下空間の快適性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態の廊下の平面図である。
【図2】その断面図である。
【図3】突き当たり壁の照度を説明する平面図である。
【図4】天井面の照度を説明する断面図である。
【図5】(a)は器具の対向壁面の照度を説明する平面図、(b)は照明器具近傍の最高輝度を説明する断面図である。
【図6】実験に用いた照明器具の斜視図である。
【図7】明るさ感、グレア、歩行性の各評価値の因子得点と好ましさの関係を示す関係図である。
【図8】別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図9】さらに別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【図10】その姿図であり、(a)は正面側からみた斜視図、(b)は側面側からみた斜視図である。
【図11】さらに別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図12】さらに別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図13】さらに別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は従来例のまぶしさを示す説明図である。
【図14】さらに別の実施の形態の照明器具を示し、(a)は側面図、(b)はその拡大図である。
【図15】従来例の照明器具の斜視図である。
【符号の説明】
1 照明器具
2 床面中心線
4 突き当たりの壁
6 対向壁面
7 壁面
10 反射板
11 光源
13 透過性部材
15 光線
Claims (2)
- 廊下空間の手の届く範囲に設置する壁付照明器具において、光源と、前記光源よりも器具の取付壁側に位置する反射板と、前記光源および前記反射板よりも器具の対向壁側に位置して前記光源を覆う透過性部材とを備え、
前記反射板は、上方向あるいは下方向から見たときに、前記取付壁からの距離が前記光源に対向する部分において最も大きく、前記光源から離れるほど小さくなる形状をなし、
前記透過性部材の上下方向の幅は、前記反射板の上下方向の幅よりも小さい壁付照明器具。 - 前記透過性部材の上下方向の幅が、中心で小さく、周辺部で大きい請求項1記載の壁付照明器具。
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