JP3932527B2 - 炎検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は炎検出装置に係り、さらに詳しくは炎に特有な波長の光(例えば、赤外線、紫外線等)を検出して火災時に発生する炎を検出する炎検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の炎検出装置として、例えば特公平6−61119号公報の発明(発明A)と特開2000−57456号公報(発明B)の2つの発明が知られている。上記発明Aにおける相互相関火災検知器は、第1の検出器と第2の検出器とを具備し、これらの2つの検出器からの出力の相互相関関数信号(相関値)と出力比とを火災判断に用いるようになっている。この発明Aの相互相関回路では、相互相関関数信号として上記2つの信号波形の同時刻のデータの乗算値の総和が用いられている。また、上記の発明Bの炎検出装置においては、検知素子の出力信号は、前置フィルタと増幅部とを介してマイクロプロセッサにより32Hzのサンプリング周波数でサンプリングされるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の発明Aは2つの検出器の出力信号を利用していて回路構成が簡単になるものの、相互相関関数信号が正規化されておらず採り得る最大値が判らないので、相互相関関数信号が大きければ2つの波形が似ていることが判っても、それがどれほど似ているかはわからないことになる。このため、さらに波形を微分する微分回路や2階微分回路を設けて、この出力から波形の位相を見て火災を判断している。一方、発明Bの炎検出装置は上述したように、マイクロプロセッサのサンプリング周波数として32Hzを使用している。
【0004】
したがって、発明Bにおいては標本化定理により、マイクロプロセッサ内に16Hz以上の周波数成分が入力されると折り返し雑音が発生してしまう。また、前置フィルタと増幅部とは通常一体となっており、ここにノイズが混入すると必ず増幅される。従って、前置フィルタと増幅部とに混入した商用電源周波数(50Hz、60Hz)のノイズが増幅された状態でマイクロプロセッサ内で折り返し雑音となり、炎判断に用いる炎のゆらぎ周波数付近に折り返し雑音となった商用電源周波数ノイズが重畳してしまう。このように従来の発明A,Bの装置は、いずれも上記のような問題点があった。
【0005】
本発明は上述のような従来装置の問題点を解消する為になされたもので、複数の光検出手段により検出される検出信号の波形相互間の類似度合いを示す「正規化相関値」と波形相互間の振幅比を示す「移動平均の比率値」の特性を利用して、検出部に取り込まれた光の誤報源を排除して高精度に炎を検出することが可能な炎検出装置を実現することを目的とするものである。また、商用電源周波数ノイズを排除して高精度に炎を検出することが可能な炎検出装置を実現することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炎に特有な波長の光を検出して火災時に発生する炎を検出する炎検出装置において、炎に特有な異なる波長の光を複数検出して各波長に応じた検出信号を出力する3つ以上複数の光検出手段と、複数の光検出手段により検出される各検出信号の波形相互間の正規化相関値および各検出信号の波形相互間の移動平均の比率値を算出する算出手段と、算出手段により算出された正規化相関値および移動平均の比率値がそれぞれ所定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎発生判別手段と、を備え、炎発生判別手段が、炎が発生したと判断したときには、さらに、正規化相関値と移動平均の比率値とを軸とする平面座標を形成し、各検出信号の波形相互間の正規化相関値および移動平均の比率値と、による各座標点を平面座標上にプロットし、算出手段は、各座標点間の距離を算出し、炎発生判別手段は、距離が一定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎検出装置を構成したものである。
また、上記において、炎発生判別手段は、一定の時間内において所定の割合以上、正規化相関値と移動平均の比率値および距離が所定の範囲内および一定の範囲内である場合に炎であると判断する炎検出装置を構成したものである。
また、上記において、炎発生判別手段は、正規化相関値と移動平均の比率値の重心と標準偏差とを用いて炎判断を行う炎検出装置を構成したものである。
また、上記において、複数の光検出手段は、炎に特有な4.4μm帯の波長の赤外線を検出する第1の赤外線検出手段を含む炎検出装置を構成したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般に、火災時に発生する炎には図4の実線の曲線Wfで示すように、CO2 ガスの共鳴放射による4.4μm帯付近に変曲点(ピーク値)を有する炎特有な波長の赤外線が放射されることが知られている。3波長式炎検出装置は同図の3つの点線帯で示すように、4.4μm帯を中心にした3.9μm帯と5.0μm帯とを検出対象としており、各波長帯の光(赤外線)をそれぞれ検出する光検出手段を備えている。また、2波長式には4.4μm帯と3.9μm帯または5.0μm帯の赤外線を検出する検出方式が採用されている。なお、図4の横軸と縦軸は波長と相対強度で、曲線Wsは太陽光、曲線WmhとWmlはそれぞれ高温物体と低温物体の黒体放射における発光スペクトル分布を示しており、そのピーク値は黒体の温度により決定される。
【0008】
一方、火災時の炎のように同一放射源から放射された赤外線の場合において、4.4μm帯の光を検出する光検出手段の検出信号と4.4μm帯以外の光を検出する検出手段の検出信号との2つの信号波形間の類似度は高い。また、曲線Wfにも示されたように、炎から放射された赤外線の場合に4.4μm帯の赤外線の相対強度は大きく、4.4μm帯以外の赤外線の相対強度は小さい。つまり、4.4μm帯の光検出手段により検出される検出信号の出力は大きく、4.4μm帯以外から検出される検出信号の出力は小さい。したがって、4.4μm帯以外の波形の出力振幅の4.4μmの波形に対する出力振幅の比率値(4.4μm帯以外から検出された波形の出力振幅/4.4μm帯から検出された波形の出力振幅)は小さく、所定の範囲内に限定されている。
【0009】
これに対して、曲線Wsや曲線Wmh,Wmlが示すように、炎以外の熱源やノイズ源等から放射された赤外線の比率値の範囲は炎とは全く異なる。そのため、4.4μm帯および4.4μm帯以外の光検出手段により検出される各検出信号の波形相互間の類似の度合い(正規化相関値γと呼ぶ)と、各検出信号の波形相互間の振幅比(移動平均の比率値βと呼ぶ)とを炎の判断に用いて、熱源やノイズ源の誤報源を排除した高精度の炎検出が可能になる。正規化相関値γは1〜−1の範囲の値に正規化されているので波形相互間の類似度が判断し易く、その値が1に近づくにつれて波形相互間の相関が高くなる。本発明は炎に特有な異なる波長の光を複数検出して、上記した各検出信号の波形相互間の類似度合いを示す正規化相関値γおよび各検出信号の波形相互間の振幅比を示す移動平均の比率値βを利用して火災時に発生する炎を高精度に判別することのできる炎検出装置を実現しようとするものである。炎の場合は、正規化相関値γおよび移動平均の比率値βがそれぞれ所定の範囲内であるので、これにより火災時に発生する炎を高精度に判別することができる。
【0010】
そして、後述するように、4.4μm帯の光検出手段と2つ以上の4.4μm帯以外の互いに異なる波長を選択して検出する光検出手段(例えば、3.9μm帯と5.0μm帯)とがある場合、4.4μm帯の光検出手段と3.9μm帯の光検出手段とによる正規化相関値γと移動平均の比率値βとを算出し、4.4μm帯の光検出手段と5.0μm帯の光検出手段とによる正規化相関値γと移動平均の比率値βとを算出し、正規化相関値γと移動平均の比率値βとを軸とする平面座標を形成した上で、それぞれの正規化相関値γと移動平均の比率値βとによる各座標点を平面座標上にプロットし、各座標点間の距離を算出すると、炎の場合は一定の範囲内であるので、この特性を炎判断に応用して高精度の炎の検出が可能な炎検出装置を実現した。
【0011】
なお、炎発生判別手段が、一定の時間内において所定の割合以上、前記正規化相関値γと前記移動平均の比率値βおよび前記距離が所定の範囲内および前記一定の範囲内である場合に炎であると判断するとより高精度の炎検出が可能になる。
また、炎発生判別手段が、前記正規化相関値γと前記移動平均の比率値βの重心と標準偏差とを用いて炎判断を行うと、さらに高精度の炎検出が可能になる。
【0012】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1の構成を示すブロック図、図2は実施の形態1の動作を示すフロー図である。実施の形態1では、本発明を3波長式の炎検出装置として説明がなされている。図1において、1は炎検出装置である。21〜23はA,B,Cの各検出部、31〜33は各検出部21〜23の出力を増幅するアンプ、41〜43はアンプ31〜33の出力ののうち後述する特定な周波数成分を除去するアンチエイリアスフィルタ(anti-alias-filter )、5はA/D変換器である。また、6は判断部、7は火災信号発生回路、8は汎用乗算器である。汎用乗算器8は、乗算に特化して高速に演算する回路で構成されている。汎用乗算器8にはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような積和演算器を用いても良く、数値演算プロセッサを用いて構成することもできる。
なお、検出部21〜23は、炎に特有な異なる波長の光を複数検出して各波長に応じた検出信号を出力する複数の光検出手段の例である。汎用乗算器8は、複数の光検出手段により検出される各検出信号の波形相互間の類似度合いを示す正規化相関値および各検出信号の波形相互間の振幅比を示す移動平均の比率値を算出する算出手段の例である。判断部6は、算出手段により算出された正規化相関値および移動平均の比率値がそれぞれ所定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎発生判別手段の例である。
【0013】
ここで、図2のフロー図の説明に先立って説明が重複するが一部の動作説明を加えて、本発明で用いられる移動平均αAn,αBn,αCnや正規化相関値γABn, γACn の算出式等について次に説明する。A〜Cの各検出部21〜23は特定な波長帯、例えばそれぞれ4.4μm、3.9μm、5.0μm帯の赤外線に感度を持つ。
アンプ31〜33は、検出部21〜23の検出信号にバイアス電圧を加えてプラス出力とし、さらに、検出信号のうち電気的に炎のちらつき周波数帯である4Hz以上の信号成分を選択し増幅する。
アンチエイリアスフィルタ41〜43は、サンプリングの前処理として、アンプ31〜33からの増幅信号のうちサンプリング周波数(この場合は、128Hz)の1/2以上の周波数成分を除去したアナログ信号を出力する。しかし、アンチエイリアスフィルタはアナログ回路であり高次のフィルタを高精度かつ安価に作成することは難しい。アンチエイリアスフィルタには、3次〜4次程度のローパスフィルタを用いるため、商用電源周波数ノイズ(50Hz、60Hz)が僅かに混在している。
【0014】
A/D変換器5は、アンチエイリアスフィルタ41〜43を通過したアナログ信号を120Hzを超え、また、2のべき乗である128Hzのサンプリング周波数でサンプリングして、デジタル信号に変換する。
判断部6は、図示しないプログラム、デジタルフィルタ、A/D変換器5からのデジタル信号等を一時格納しておくRAM、後述する炎判断値等を格納しているROM、およびこれらを制御するMPUを有する。プログラムにより、120Hzを超えるサンプリング周波数でデジタル信号が判断部6内に取り込まれ、RAMに一時格納される。この場合は、判断部6が演算し易いように、サンプリング周波数は2n(n=7)である128Hzに設定してある。また判断部6は、後述するデジタルフィルタにより、RAMに格納されたデジタル信号のうち電気的に炎のちらつき周波数帯である4〜30Hzの信号成分のみを抽出して、この抽出信号をRAMに一時格納する。ここで、サンプリング周波数は60Hzの2倍以上に設定してあるため、アンチエイリアスフィルタからのアナログ信号中に混在した商用電源周波数ノイズ(50Hz、60Hz)は折り返し雑音にはならずにデジタルフィルタで除去できる。また、この抽出信号にはバイアス電圧が含まれているため、この抽出信号からバイアス電圧を除算した計算用信号を算出して、判断部6のRAMに一時格納する。例えば、過去N回サンプリング分の抽出信号の平均値を抽出信号数N個で割算してバイアス電圧を算出し、この抽出信号から除算して、計算用信号を算出する。
【0015】
汎用乗算器8はデジタルフィルタの演算に用いられ、また判断部6のRAMに一時格納された所定数の計算用信号を用いて、正規化相関値γ、移動平均の比率値βを算出し、さらに正規化相関値γ、移動平均の比率値βから後述する2点間の距離L1等を算出し、判断部6のRAMに一時格納する。
そして判断部6は、RAMに格納された正規化相関値γ、移動平均の比率値β、および2点間の距離L1等を、ROMに格納された炎判断値等と比較して炎判断を行う。
火災信号発生回路7は、判断部6による炎の判断結果に基づき、火災信号を出力する。
【0016】
さらに、判断部6および汎用乗算器8の機能について以下に詳しく説明する。前述したデジタルフィルタは、商用電源周波数等のノイズの除去と炎のゆらぎを検出する為のバンドパスフィルタであり、トランスバーサルフィルタ(trans-versal-filter )等により実現される。他の構成を用いても良いがトランスバーサルフィルタは直線位相特性であり、少ない波形歪みで済むので、より効果が期待できる。
上記のトランスバーサルフィルタは、次式で与えられる。
ただし、wi :重み係数i=0〜N−1
x(t) :時刻tにおけるデジタル信号
Δt :サンプリング間隔
y(t) :出力結果(抽出信号)
【0017】
上記方法で得られた抽出信号を用いて算出された計算信号に基づいて、各波長帯の検出部21〜23の出力振幅として、一定間隔内(所定数)の計算信号の絶対値の移動平均αAn,αBn,αCn 、異なる波長同士の正規化相関値γABn,γACnをそれぞれ求める。また、絶対値の移動平均αAnに対する絶対値の移動平均αBn,αCnの比率値βABn(=αBn,/αAn),βACn(=αCn/αAn)も算出する。上記の演算にはすべて汎用乗算器8を用いので効率の良い演算が達成できる。
【0018】
炎についてはγABn,γACn,βABn(=αBn/αAn),βACn(=αCn/αAn)は、統計的に所定の範囲内に集中する。この所定の範囲は、所定数の正規化相関値γABn,γACn、比率値βABn,βACnの重心と標準偏差σにより、図3に示すように円形状の範囲として表すことができる。さらに、上記4変数を(βABn,γA Bn),(βACn,γACn)の座標として2点間の距離L1を求めると、一定の範囲内に集中する傾向がある(炎の場合)。従って、例えば炎と判断される条件(炎判断値)を正規化相関値γABn,γACnは0.8〜0.9、比率値βABn,βACnは0.1〜0.5、2点間の距離L1は0.2〜0.3として、上記条件が成立することで炎を検出したと判断部6で判断する。また、一定期間内に上記条件が成立した割合を算出し、それがある所定の割合以上である場合に炎を検出したと判断部6で判断するとより高精度となる。上記の方法は、汎用乗算器8を何通りにも使い回すことで効率良く構成でき、しかも高精度の火災検出が可能である。
【0019】
前述した正規化相関値、移動平均の比率値等は、以下に示す式で算出される。
時刻tnにおける3つの検出部21〜23の計算用信号をAn ,Bn ,Cn とすると、移動平均αAn,αBn,αCnは、それぞれ次の(1),(2),(3)式で与えられる。
【0020】
【数1】
【0021】
また、計算用信号An ,Bn ,Cn に対応する標準偏差をσAn,σBn,σCn とすると、:計算用信号An とBn ,Cn に対応する正規化相関値γABnとγACnは、次の(6)式と(7)式で表される。
【0022】
【数2】
【0023】
こうして判断部6のRAMに順次格納された比率値βABn,βACn、正規化相関値γABn,γACnを用いて、それぞれの標準偏差を次の(8)〜(11)式で示し、それぞれの重心、重心間の距離L2、2点間の距離L1を次の(12)〜(14)式で示される。
【0024】
【数3】
【0025】
引き続いて、図2のフロー図を参照して実施の形態1の動作を箇条書きして説明すれば、次の通りである。
こうして判断部6のRAMに順次格納された比率値βABn,βACn、正規化相関値γABn,γACnを用いて、それぞれの標準偏差を次の(8)〜(11)式で示し、それぞれの重心、重心間の距離L2、2点間の距離L1を次の(12)〜(14)式で示される。
【0026】
(S1) 検出部21〜23からA〜Cの各波長帯毎の赤外線量が電気信号に変換されて、取り込まれる。検出するA〜Cの各波長帯は、例えば4.4μmと3.9μmおよび5.0μmである。この検出信号はアンプ31〜33により、バイアス電圧を加えてプラス出力とされ、さらに、電気的に炎のちらつき周波数帯である4Hz以上の信号成分を選択し増幅される。
この増幅信号はアンチエイリアスフィルタ41〜43により、サンプリング周波数(この場合は、128Hz)の1/2以上の周波数成分を除去したアナログ信号とされる。この段階では、アンチエイリアスフィルタはアナログ回路であり、アナログ信号中には若干の商用電源周波数ノイズ(50Hz、60Hz)が混在している。
このアナログ信号はA/D変換器5により、デジタル信号に変換される。このとき、120Hzを超え、また、2のべき乗のサンプリング周波数、例えば128HzでA/D変換を行う。このサンプリングされたデジタル信号は、判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分のデジタル信号だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。
【0027】
(S2) 判断部6のRAMに格納されたデジタル信号は判断部6および汎用乗算器8で構成されるデジタルフィルタにより、所定の周波数成分、例えば電気的に炎のちらつき周波数帯である4〜30Hzの信号成分のみを抽出される。この抽出信号は判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分の抽出信号だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。ここで、サンプリング周波数は60Hzの2倍以上に設定してあるため、アンチエイリアスフィルタからのアナログ信号中に混在した商用電源周波数ノイズ(50Hz、60Hz)は折り返し雑音にはならずにデジタルフィルタで除去できる。
また、この抽出信号にはバイアス電圧が含まれているため、この抽出信号からバイアス電圧を除算した計算用信号を算出して、判断部6のRAMに格納する。例えば、過去N回サンプリング分の抽出信号の平均値を抽出信号数N個で割算してバイアス電圧を算出し、この抽出信号から除算して、計算用信号を算出する。この計算用信号は判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分の計算用信号だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。
【0028】
(S3) 汎用乗算器8は、判断部6のRAMに格納された計算用信号An ,Bn ,Cn により[数1]の(1)〜(3)式を用いて、移動平均αAn,αBn,αCnを算出する。この移動平均値は判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分の移動平均値だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。なお、移動平均αAn,αBn,αCnは、計算用信号An ,Bn ,Cn の振幅として信号出力の絶対値を時間軸上で移動平均した値である。
【0029】
(S4) 汎用乗算器8は、判断部6のRAMに格納された計算用信号An ,Bn ,Cn により[数2]の(6)〜(7)式を用いて、異なる波長間の正規化相関値γABn,γACnを算出する。この正規化相関値は判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分の正規化相関値だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。
【0030】
(S5) 汎用乗算器8は、判断部6のRAMに格納された移動平均αAn,αBn,αCnにより[数1]の(4)〜(5)式を用いて、移動平均αAnに対する移動平均αBn,αCnの比率値βABn,βACnを算出する。この移動平均の比率値は判断部6のRAMに順次格納されて所定の期間だけ保管される。例えば、過去64サンプリング分の比率値だけを格納し、所定の期間を超えたものは順次破棄される。
【0031】
(S6) 判断部6のRAMに格納された一定時間内(所定数)の移動平均αAnの重心(平均)を算出し、判断部6のRAMにこの重心値が格納され、判断部6のROMに格納された炎判断値(一定のあるレベル以上)である場合に(S7)以降の処理を行う。一定のあるレベルよりも小さい場合は(S1)以降の処理を繰り返す。
【0032】
(S7) 判断部6のRAMに格納された一定時間内(所定数)の移動平均の比率値βABn,βACnの重心(平均)を算出し、判断部6のRAMにこの重心値が格納され、この重心値が判断部6のROMに格納された炎判断値(ある範囲内、例えば0.1〜0.5の範囲内)である場合に(S8)へ進む。ある範囲外である場合は(S1)以降の処理を繰り返す。
【0033】
(S8) 汎用乗算器8は、判断部6のRAMに格納された比率値βABn,βACnにより[数3]の(8)〜(9)式を用いて、一定時間内(所定数)の比率値βABn,βACnの標準偏差σを算出し、判断部6のRAMにこの標準偏差値が格納され、判断部6のROMに格納された炎判断値(ある範囲内、例えば0.1〜0.2の範囲内)である場合に(S9)へ進む。ある範囲外である場合は(S1)以降の処理を繰り返す。
【0034】
(S9) 判断部6のRAMに格納された一定時間内(所定数)の正規化相関値γABn,γACnの重心(平均)を算出し、判断部6のRAMにこの重心値が格納され、判断部6のROMに格納された炎判断値(ある範囲内、例えば0.8〜0.9の範囲内)である場合に(S10)へ進む。ある範囲外である場合は(S1)以降の処理を繰り返す。
【0035】
(S10) 汎用乗算器8は、判断部6のRAMに格納された正規化相関値γABn,γACnにより[数3]の(10)〜(11)式を用いて、一定時間内(所定数)の正規化相関値γABn,γACnの標準偏差σを算出し、判断部6のRAMにこの標準偏差値が格納され、判断部6のROMに格納された炎判断値(ある範囲内、例えば0.1〜0.2の範囲内)である場合に(S11)へ進む。ある範囲外である場合は(S1)以降の処理を繰り返す。
【0036】
(S11) 汎用乗算器8は、(S7)と(S9)にて算出され判断部6のRAMに格納された比率値βABn,βACn、正規化相関値γABn,γACnの重心(平均)により[数3]の(13)式を用いて、「重心間の距離L2」を算出し、判断部6のRAMにこの「重心間の距離L2」が格納され、判断部6のROMに格納された炎判断値(一定の範囲内、例えば0.2〜0.3の範囲内)である場合に(S12)へ進む。一定の範囲外である場合は(S1)以降の処理を繰り返す。図3に示すように、「重心間の距離L2」は、比率値βと正規化相関値γをそれぞれ二次元平面上の直交する座標に見立て、4.4μm帯検出部Aと3.9μm帯検出部Bとの比率値βABnの重心、正規化相関値γABnの重心による座標点を上記平面座標上にプロットし、また4.4μm帯検出部Aと5.0μm帯検出部Cとの比率値βACnの重心、正規化相関値γACnの重心による座標点を上記平面座標上にプロットして、この座標点間の距離を算出したものである。
【0037】
(S12) (S6)〜(S11)の全ての炎判断値を満たしたことにより、火災を検出したとして、火災信号発生回路7により、火災信号を図示しない火災受信機へ送信する。
なお、前述した図2に示すフローチャートでは高精度に火災検出を行うため、移動平均αAn、正規化相関値γABn,γACn、比率値βABn,βACnの重心と標準偏差σとを用いて炎判断を行っている。また、「重心間の距離L2」を用いて炎判断を行っている。
しかしながら、より簡易に火災検出を行うため、(S8)と(S10)を除き、(S6)では移動平均αAnの重心に代えて移動平均αAn、(S7)では比率値βABn,βACnの重心に代えて比率値βABn,βACn、(S9)では正規化相関値γABn,γACnの重心に代えて正規化相関値γABn,γACn、(S11)では「重心間の距離L2」に代えて「2点間の距離L1」を用いて、(S6)、(S7)、(S9)、(S11)における各炎判断値を満たしたことにより、火災を検出したとしてもよい。また、その場合において、一定の時間内において所定の割合以上、例えばRAMに格納されたそれぞれの過去10データ中8データ以上が、(S6)、(S7)、(S9)、(S11)における各炎判断値を満たしたことにより、火災を検出したとしてもよい。
本実施の形態では、3波長式の炎検出装置として説明したが、2波長式への応用も可能である。例えば、検出部の検出波長帯は4.4μmと3.9μmとし、図2のフローチャートにおける(S11)を除いた(S6)〜(S10)における該当する炎判断値をそれぞれ満たした場合に、火災を検出したとすることができる。
また、本実施の形態では、検出部は炎に特有な波長の光として赤外線をとらえるものとして説明したが、この他、紫外線や可視光線を検出して炎検出装置を構成することも可能である。
【0038】
実施の形態2
光検出手段により検出される検出信号には、商用電源周波数ノイズが混入することがある。一般に、検出信号をサンプリングする場合にサンプリング周波数をAHzとすると、標本化定理によりA/2Hz以上の周波数成分が入力されると折り返し雑音が発生する。そのため、商用電源周波数である60Hzを折り返し雑音とせずに正しくサンプリングするためには、標本化定理により120Hzを越えるサンプリング周波数でサンプリングしなければならない。本発明の場合は、実施の形態1で示したように、商用電源周波数ノイズ(50Hz、60Hz)が折り返し雑音とならないように、サンプリング周波数は120Hz(60Hzの2倍)を超える周波数に設定し、かつ、判断部6が演算し易いように、サンプリング周波数は2のべき乗に設定する。例えば、128Hzのサンプリング周波数に設定する。これにより、炎判断に用いる炎のゆらぎ周波数付近に商用電源周波数ノイズが折り返し雑音とならないので、デジタルフィルタでこのノイズを除去することができ、高精度の炎検出が可能である。なお、A/D変換器5は光検出手段により検出される検出信号を120Hzを越えるサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段の例である。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、炎に特有な波長の光を検出して火災時に発生する炎を検出する炎検出装置において、炎に特有な異なる波長の光を複数検出して各波長に応じた検出信号を出力する3つ以上複数の光検出手段と、複数の光検出手段により検出される各検出信号の波形相互間の正規化相関値および各検出信号の波形相互間の移動平均の比率値を算出する算出手段と、算出手段により算出された正規化相関値および移動平均の比率値がそれぞれ所定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎発生判別手段と、を備え、炎発生判別手段が、炎が発生したと判断したときには、さらに、正規化相関値と移動平均の比率値とを軸とする平面座標を形成し、各検出信号の波形相互間の正規化相関値および移動平均の比率値と、による各座標点を平面座標上にプロットし、算出手段は、各座標点間の距離を算出し、炎発生判別手段は、距離が一定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎検出装置を構成した。
【0041】
また、上記において、炎発生判別手段は、一定の時間内において所定の割合以上、正規化相関値と移動平均の比率値および距離が所定の範囲内および一定の範囲内である場合に炎であると判断する炎検出装置を構成した。
また、上記において、炎発生判別手段は、正規化相関値と移動平均の比率値の重心と標準偏差とを用いて炎判断を行う炎検出装置を構成した。
【0042】
また、上記において、複数の光検出手段は、炎に特有な4.4μm帯の波長の赤外線を検出する第1の赤外線検出手段を含む炎検出装置を構成した。
【0043】
よって、本発明によれば、誤報源を排除すると共に、ノイズを除去して高精度に炎を検出することが可能な炎検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の動作を示すフロー図である。
【図3】移動平均の比率値と正規化相関値との平面座標系を示す説明図である。
【図4】様々な物体から放射される赤外線の発光スペクトル分布を示す波形図である。
【符号の説明】
1 炎検出装置
5 A/D変換器
6 判断部(炎発生判別手段)
7 火災信号発生回路
8 汎用乗算器(算出手段)
21 検出部A(光検出手段)
22 検出部B(光検出手段)
23 検出部C(光検出手段)
31,32,33 アンプ
41,42,43 アンチエイリアスフィルタ
Claims (4)
- 炎に特有な波長の光を検出して火災時に発生する炎を検出する炎検出装置において、
前記炎に特有な異なる波長の光を複数検出して各波長に応じた検出信号を出力する3つ以上複数の光検出手段と、
該複数の光検出手段により検出される各検出信号の波形相互間の正規化相関値および前記各検出信号の波形相互間の移動平均の比率値を算出する算出手段と、
該算出手段により算出された正規化相関値および移動平均の比率値がそれぞれ所定の範囲内のときに炎が発生したと判断する炎発生判別手段と、
を備え、
前記炎発生判別手段が、炎が発生したと判断したときには、
さらに、前記正規化相関値と前記移動平均の比率値とを軸とする平面座標を形成し、
前記各検出信号の波形相互間の前記正規化相関値および前記移動平均の比率値と、による各座標点を前記平面座標上にプロットし、
前記算出手段は、前記各座標点間の距離を算出し、
前記炎発生判別手段は、前記距離が一定の範囲内のときに炎が発生したと判断する
ことを特徴とする炎検出装置。 - 前記炎発生判別手段は、一定の時間内において所定の割合以上、前記正規化相関値と前記移動平均の比率値および前記距離が前記所定の範囲内および前記一定の範囲内である場合に炎であると判断することを特徴とする請求項1に記載の炎検出装置。
- 前記炎発生判別手段は、前記正規化相関値と前記移動平均の比率値の重心と標準偏差とを用いて炎判断を行うことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の炎検出装置。
- 前記複数の光検出手段は、前記炎に特有な4.4μm帯の波長の赤外線を検出する第1の赤外線検出手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炎検出装置。
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