JP3932496B2 - 骨軟骨移植のための装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、軟骨の欠陥を外科的に治療することに関するもので、さらに詳しくは、慢性の前側軟骨靱帯（ＡＣＬ）欠乏または隔離された関節の欠損をもつ膝（ひざがしら）における関節軟骨の自家移植の方法と装置とに関する。
【０００２】
【従来の技術】
慢性の前側軟骨靱帯（ＡＣＬ）の欠陥は、表面の傷及び亀裂から大きくて分厚い欠損に至る幅広い軟骨の損傷の起因となる。これらの障害は、また十字形のノーマルな膝（ひざがしら）における病状として発生する。
【０００３】
関節鏡検査を受けるように指示される膝の約５％が大腿部の関節丘の軟骨の欠損によるものとされている。しかしながら、治療は、難しく、多くの議論がある。早くから知られている方法においては、関節間軟骨の病変は、治療され、前記のＡＣＬは、復元されたが、軟骨障害は、治療できずに終わっており、この治療によって病変を広げ、最終的には、悪化した関節炎状態に至らしめてしまう。
【０００４】
軟骨の欠損を治療するための関節鏡検査による骨軟骨自家移植片移植（オートグラフト・トランスプランテーション）法がヴァルジミール・ボヴィックの手により開発され、慢性的なＡＣＬ欠損をもつ膝にテストされた。これについては、ここに参考文献として組み入れる「Ａｒｔｈｒｏｓｃｏｐｉｃ Ｏｓｔｅｏｃｈｏｎｄｒａｌ Ａｕｔｏｇｒａｆｔ ＴｒａｎｓｐｌａｎｔａｔｉｏｎＩｎ ＡＣＬ Ｒｅｃｏｎｓｔｒｕｃｔｉｏｎ」 （プレリミナリー・サージカル・スタディ；ニーサージェリー、スポーツ外傷学関節鏡検査法（１９６６）に報告されている。
【０００５】
さらなる関節の変質と骨関節症への移行とを防ぐための前記軟骨移植の手順は、移植に適した骨軟骨のコアを採取する複数のドナー・サイトを選び、ノッチプラスティ（ノッチ形成）に先立って、健全な軟骨でキャップすることを含んでいる。複数のドナー・サイトは、ノッチプラスティ領域の前外側と上位の領域にそって選ばれるか、または、溝末端（sulcus terminals)の上の荷重がかからない領域における大腿骨外側顆（lateral femoral condyle)のスペロラテラル（上位横側）および前外側の領域の上に選ばれる。複数のドナー・サイトにおいては、直径が10mm以上で長さが10mmから15mmの多数の移植に適した骨軟骨コアが筒体状の切断器具を用いて切り取られる。
【０００６】
大腿骨内側顆と外側顆との荷重を受ける領域に被移植（レシピアント、宿主）修復サイトが位置するのが一般的である。代表的には、直径が10mmよりも大きく、20mmまでに達する大きさの分厚い軟骨欠陥が治療のために選ばれる。修復サイトにおけるレシピアント（被移植）ソケット（Recipient sockets ）（骨軟骨の移植片を受移植のために受ける受け口）が準備され、ドナー・コアをレシピアント（被移植）ソケット（Recipient sockets ）へ移し、該ソケット内へ押し込む。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
前記した移植方法は、極めて困難な問題が付随する。例えば、骨軟骨を筒体状の切断器具から取り外すことが極めて困難である。さらに、ドナー・コアとレシピアント・ソケット(recipient sockets）のフォーメーションに改良が必要であり、特に、切り取り（採取）の間の深さ調節を容易にし、移植着生を容易にするための一段の改良が必要である。要するに、従来の移植方法には、移植手術を完璧に行うための移植術の器具ならびに技両についての改良が要求されており、この要求を満たすことが本発明の解決課題である。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この発明は、移植手術の器具およびシリーズになって構成されている薄い壁（厚さ0.5mm)の切断筒体を用いて骨軟骨の移植手術を行うプロトコルを提供することによって、従来の技術の欠点を解消しようとするものである。半軟骨骨をキャッピングするヒアリン軟骨からなる骨軟骨コアを好ましくは自原的にハーヴェスト（採取）する。長さが好ましくは10mm〜15mmである骨軟骨コアを欠陥部に作られたソケット内へ移植し、移植されたコアまたは多数の移植されたコアが押し込められる態様で受け入れられるようにする。この発明による移植手術は、切り開いた状態で行うか、または、関節鏡を使用して行うかのいずれかである。使用するプロトコルに関する決定は、例えば、軟骨の欠陥の位置、ジオメトリーおよび範囲または程度を、さらにはハーヴェスト・サイトをベースとする。
【０００９】
この発明の器具には、シリーズとして構成されているコア・グラフト・ハーヴェスター（軟骨コアの切り取り採取器具）が含まれる。この発明の前記ハーヴェスターには、先端のカッティングエッジと手許側端部に取り付けられた装着ハンドルとが含まれることが好ましい。各コア・グラフト・ハーヴェスターの内部には、カラー付きのピンがスライド自由に挿入、配置され、ハーヴェスト（切り取り採取）された骨軟骨コアが取り出しやすくなっている。このカラー付きのピンは、プランジャーとして作用し、コア・グラフト・ハーヴェスターの筒体のルーメン（内腔）からハーヴェスト（採取）されたコアを押し出すようにするもので、凹状の面をもっていることが好ましく、これによって、ハーヴェストされたコアのカーブした面と生体力学的によりよく接触できるようになっている。
【００１０】
前記ハーヴェスターには、好ましくは、二つのタイプがある：その一つは、ドナーの骨軟骨コアを得るためのドナー・グラフト・ハーヴェスターであり、その二は、レシピアント修復サイトにおいてレシピアント（被移植）ソケットを形成するためのレシピアント・サイト・ハーヴェスターである。前記ドナー・グラフト・ハーヴェスターの内径と前記レシピアント（被移植）サイト・ハーヴェスターの外径とが等しいことが好ましい。前記のものの外径は、前記の０．５ｍｍの壁厚に適応するように１ｍｍだけずれている。薄い壁によって骨と組織とを傷めない。
【００１１】
前記したハーヴェスターには、各種のサイズのものがある。適切な深さまでハーヴェストするのを助けるため、該器具には、複数の目盛りが設けられている。これらの目盛りは、ハーヴェスターの筒体の外側面に設けられており、これによって、ハーヴェストされたレシピアント・ソケット組織の面に対し目視でアライメントできるようになっている。前記筒体の側壁には、スロット状の窓があけられていて、前記ハーヴェスター筒体のルーメン内のハーヴェストされた骨軟骨コアを該窓から視認でき、例えば、前記コアの長さやジオメトリーを目視で確認したり、ハーヴェスター筒体挿入の挿入深さを目視で確認できるようになっている。
【００１２】
前記二つのタイプの軟骨のハーヴェスター（切り取り採取器具）は先端部における切断エッジの形状によって区別できる。ドナーである移植組織片（移植する軟骨片）を切り取り採取するためのドナー・グラフト・ハーヴェスターの筒体の先端部の周縁は、内側に向けて傾斜している形状、即ち、前記ハーヴェスターの外側面から内側面にむけて、中心軸に対し傾斜する斜面になっていることが好ましい。したがって、前記周縁は、前記のように、外側面の端縁が斜めになって内側面に交わるので、先鋭な切断エッジ（刃）として形成される。
【００１３】
他方、レシピアント・サイト（移植軟骨片を受け入る移植サイト）ハーヴェスターの先端部は、前記のドナー・グラフト・ハーヴェスターの先端部の形状とは逆になっているもので、レシピアント・サイト・ハーヴェスターの筒体の先端部の周縁は、外側面に向けて内側面が傾斜している形状、即ち、内側面が前記外側面にそうように先端に向け傾斜して徐々に肉厚を減らすよう、中心軸に対し傾斜する斜面になっていることが好ましい。したがって、前記周縁は、前記のように、内側面が斜めになって外側面に交わるので、先鋭な切断エッジ（刃）として形成される。
【００１４】
前記二つのタイプのハーヴェスターは、ドナー・グラフト・サイトとレシピアント・サイトとのサイズが正確に対応するように構成されている。ドナー・グラフト・サイトとレシピアント・サイトとのサイズが正確に一致していれば、レシピアント・サイトに移植軟骨片が適合しない問題や移植手術における移植軟骨片をうまく押し入れることができなかったり、移植手術が失敗に終わるというような問題を回避できる。
【００１５】
好ましい方法によれば、前記ドナー・グラフト・ハーヴェスターは、筒状のハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器内へ挿入、装着され、選ばれたヒアリン軟骨を採取するヒアリン軟骨ハーヴェスト・サイトに置かれる。このドナー・グラフト・ハーヴェスターは、関節軟骨面に対しぴったり当てられ、前記ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器の後端を例えば小槌で叩き、約１０mmから約１５mmの範囲で選ばれた深さまで押し込まれる。前記ハーヴェスターを予定の深さまで押し込めば、ついで前記ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器を捻じり、軽く揺れ動かして、骨軟骨コアを取り出すために海綿状ベースを壊すようにする。
【００１６】
レシピアント・サイトについては、前記したと同じような方法を用いてレシピアント・サイト・ハーヴェスターでレシピアント・サイトを準備する。また別に、ドリリングのような各種の技術を用いてレシピアント・ソケットを形成することができる。ドナー・コアをドナー・グラフト・ハーヴェスターから直にレシピアント・サイト内へ押し入れることが好ましい。
【００１７】
前記ドナー・グラフト・ハーヴェスターにより採取したドナー・コアをレシピアント・サイト（またはレシピアント・ソケット）内へ挿入するに当たり、これに先立って、ドナー・コアとレシピアント・サイト両者のサイズ合わせをグラフト・サイザーとアライメント・スティックとを用いて行う。レシピアント・サイトの深さは、アライメント・スティックを用いて計測する。グラフト骨軟骨コアが長すぎる場合、このコアの長さを調節するか、または、レシピアント・サイトの深さを調節するかして、グラフト骨軟骨コアの長さを満足できる移植が行われるように適切なものにする。
【００１８】
前記のドライバー／引き抜き器を用いて、カラー付きピンにより骨軟骨コアを前進させ、前記コアの先端を前記ハーヴェスター筒体の切断エッジの先端に一致させる。挿入深度をコントロールする手助けとして、前記カラー付きピンの先端が前記ハーヴェスターの切断エッジまで後１mmに達したとき、前記ピンの手許側端部が前記硬骨ハーヴェスターのハンドルの手許側端部に面一なるように、前記ピンの長さ寸法が定められている。したがって、目視観察することなしに前記軟骨／硬骨コアを適確に挿入でき、挿入しすぎの問題を防げるものである。
【００１９】
挿入後、骨軟骨コアを適正に挿入し、これを一様にするには、サイザー／タンプを用いて自動的に行う。移植される軟骨は、サイザー／タンプにより押されて、該軟骨の面は、軟骨移植を行うレシピアント・サイトを囲む健康な関節軟骨と面一にならされる。
【００２０】
以上記載した器具と技術は、ＡＣＬ欠陥膝に対する特定の自家移植アプリケーションについて述べたが、ＡＣＬがノーマルな膝以外の関節部の治療および臓器移植などにも適用される。更に、この発明の器具と技術は、骨軟骨切開手術、同種移植手術、硬骨移植、移植片の固定、骨コアのバイオプシイなどにも広く適用されるものである。
【００２１】
【発明の実施の形態】
図１と図２を参照すると、これらの図には、ドナー・グラフト（移植軟骨片）ハーヴェスター２が図示されている。図示のドナー移植ハーヴェスターには、筒状のハンドル６に続いて中空の筒体４が設けられている。
【００２２】
図示のドナー移植ハーヴェスターの筒体４の端部には、シャープなカッティングエッジ８が設けてある。このシャープなカッティングエッジは、前記筒体４の外面から内面に向けて傾斜する斜面１０が鋭利な刃になって構成されている。
【００２３】
前記ドナー・グラフト・ハーヴェスター２には、各種のサイズのものがあることが好ましい。したがって、中空の筒体４の内径の寸法としては、５，６，７，８，９ｍｍのものがある。前記ハーヴェスターの筒体４の壁の厚みは、０．５ｍｍである。このような薄い壁によって骨と組織とを傷めない。
【００２４】
図１に示すように、窓１１と深さ目盛り１２とがドナー・グラフト・ハーヴェスターの筒体４の側面に設けられており、移植手術執刀医がドナー・サイトにおける骨へ前記ハーヴェスターを挿入するときの手助けをすることができるようになっている。図示されてはいないが、前記各ハーヴェスターのチップに長さ方向のマーキングラインが設けられていて、レシピアント・ソケット内でのコア・アライメントが容易に行えるようになっている。
【００２５】
以下に述べるように、前記ドナー・グラフト・ハーヴェスターを完全に取り除く前に先立って、ドナー骨プラグの抜取りを関節鏡確認することが窓１１から透視することで行える。さらに、窓１１からの透視によって、ドナーコアと受体コアとの全体の長さを比較することができる。また窓１１により、前記カラーと筒体のレーザーマークを較正することにより前記コアの挿入深さを目視でコントロールすることができる。そしてまた、窓１１により前記筒体と前記骨軟骨コアとの間の面摩擦が増え、コアの抜き取りを特に１０ｍｍ以上の長さにわたり確実なものになる。
【００２６】
図３と図４とを参照すると、これらの図には、この発明によるレシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスター１４が示されている。このレシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスターには、棒状のハンドル１８に続いて中空の筒体１６が設けられている。このハーヴェスターには、筒体１６の先端部にシャープな切断エッジ（刃）２０が設けてある。このシャープなエッジ２０は、図４に示すように、筒体１６の先端部の縁部内面に形成されているもので、筒体１６の外面から内面へ向けて傾斜した斜面２２が鋭利な刃になって構成されている。
【００２７】
前記のレシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスターもまた各種のサイズのもので構成されている。したがって、中空の筒体１６の外径寸法としては、例えば、５，６，７，８，９ｍｍのものがあり、これらの寸法は、前記した関連するドナー移植ハーヴェスターの内径に対応する。前記ドナー移植ハーヴェスターと同様にレシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスターの筒体１６の壁も薄いものであり、窓２３と深さ目盛り２４も前記ハーヴェスター２と同様の要領、理由で前記筒体の側面に設けられている。
【００２８】
図５には、この発明によるカラー付きピン２６が示されている。ピン２６のハンドル３０の長さ方向の一方の端部にカラー２８が設けてある。カラー２８の端面３２は、以下に述べるようなサイザー（サイズを計るもの）／タンプ（タンピングするもの）と同様に、生体力学上すぐれている凹面になっていて、この凹面は、滑らかな面をしており、移植コアの軟骨面を傷めないようになっている。各種の寸法の前記器具類における遠位の端面における凹面の好ましい球面半径（曲率）を表Ｉ示す：
【００２９】

【００３０】
前記ハーヴェスターの内径に相当する適当なサイズのカラー２８をもつピン２６は、ドナー移植ハーヴェスターのハンドル６内に納められるか、または、レシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスターのハンドル１８内に納められた後、それぞれのハーヴェスターを選択したハーヴェストするサイトまたはドネーションするサイトへ挿入する。したがって、ピン２８の他端（カラー２８が設けられていない端部）からピン２８を中空の筒体４，１６内へ挿入し、カラー２８を該筒体イ内に納めてからドナー移植サイトまたはレシピアント（宿主）サイトにおけるコアをハーヴェストする。
【００３１】
前記ピン２６の手許側の端部は、前記ハーヴェスターの手許側の端部より長く伸びていて、その長く伸びる寸法は、前記筒体の長さに少なくとも等しい長さ寸法であって、カラー付きのピンのハンドルを操作してハーヴェストしたコアを押すことで、ハーヴェスターの筒体のルーメンからハーヴェストしたコアを簡単に取り出すことができるようになっている。この点については、この発明のハーヴェスターは、ここに参考文献として組み入れる米国特許第５，４２３，８２３号に記載のコアを抜き取るリーマーおよび米国特許第５，６０３７１６号に記載の骨ハーヴェスターに類似している。
【００３２】
図６には、この発明によるハーヴェスター・ドライバーまたは引き抜き器３４が図示されている。このハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器３４は、３つのセクション、即ち、チャックエンド３６、ハンドル３７およびインパクト端部３８から構成されている。前記ドライバー／引き抜き器３４の先端部にあるチャック３５は、前記ハーヴェスター２，１４の手許側の端部に連結、固着され、ピン２６の手許側の端部と連結する。着脱自由のハンドル３７により前記ドライバー／引き抜き器を操作する。
【００３３】
この発明の手順によれば、以下に詳しく述べるように、軽く叩かれる叩き端部３８を小槌で叩いて前記ドライバー／引き抜き器を選択したハーヴェストを行うサイトへ押し込む。前記インパクト端部３８とハンドル３７を外せば、以下に詳しく述べるようにカラー付きピン２６の手許側の端部が露出し、前記ハーヴェスト・筒体からハーヴェストされたコアを取り出すことができるようになる。さもなければまた、移植に先立って前記ドライバー／引き抜き器全体を前記ハーヴェスターから外すこともできる。
【００３４】
図７には、移植片（移植される軟骨片または軟骨組織）の寸法を計り、該移植片をならすサイザー／タンプ４０が示されている。このサイザー／タンプ４０のシャフト４４（伸直した長さ方向において同径の丸棒またはテーパー付き丸棒）の一方の端部にタンプヘッド４２が設けられている。シャフト４４の手許側の端部の側面には、平たくなっている面４６が三方に設けられていて、サイザー／タンプ４０の手許側の端部が前記ドライバー／引き抜き器３４にチャックされるようになっている。前記サイザー／タンプ４０の先端にあるタンプヘッド４２の端面がコアと接触する面であって、球面状の滑らかな凹面になっており、この点は、前記したカラー付きピン２６のカラー２８の端面３２と同様である。このサイザー／タンプ４０のタンプヘッド４２が前記したカラー付きピン２６のカラー２８と相違する点は、タンプヘッド４２がラッパ状に拡がっていて、そのテーパーつき側面がシャフト４４に連なっている点である。これに対し、カラー付きピン２６は、丸棒状になっていて、カラー２８の直径がハンドル３０よりも太くなっている。表ＩＩは、各種寸法をつ前記サイザー／タンプの端面の凹面の好ましい球面半径（曲率）を示す：
【００３５】

【００３６】
この発明の好ましい実施例による方法を図８から図１８を参照しながら記載する。
【００３７】
図８には、右膝関節５０の前側部分（ひざがしら部分）が略図的に示されている。大腿部関節顆（丘）５４における軟骨欠損または欠陥部５２を関節鏡検査により検査し、サイザー／タンプ４０で、その障害または病変の程度を査定する。このサイザー／タンプ４０のタンパヘッド４２は、強くて弾性のあるプラスチック（商標Ｄｅｌｒｉｎ) 製のもので、その直径が５，６，７，８または９mmのものがあり、それぞれ前記カッティング筒体・ハーヴェスターの直径と相関関係にある。
【００３８】
前記したサイザー／タンプ４０は、例えば、溝末端( ｓｕｌｃｕｓｔ−ｅｒｍｉｎａｌｉｓ) の上の、または、関節内ノッチの上外側縁部５７に近接した大腿骨外側顆の非関節縁部にそった領域５６におけるポテンシャルなハーヴェスト・サイト、例えばドナーサイト５５を評価するのにも使用できる。
【００３９】
シングルまたは多数の骨軟骨コアを移植すること、適当な骨軟骨コアの直径および関節鏡により手術するか、または、切開した状態で手術するかについての外科プランニングは、移植手術に先立って決めなければならない。シングルまたは多数のコア移植片は、ハーヴェスト・サイトがアクセスできるか否かの点および移植手術に適したドナー・サイトおよびレシピアント・サイトの凸状／凹状のサーフェース形状の関係に基づいて選択し、サイズを決めなければならない。
【００４０】
それぞれのカラー付きピン２６をもつ、各一つのドナー・ハーヴェスター２と各一つのレシピアント・ハーヴェスター１４の適切なシングル用筒体・ハーヴェスターのセットを欠陥ならびにハーヴェスト・サイトの測定に基づいて選択される。ドナー・筒体・ハーヴェスターは、レシピアント・筒体・ハーヴェスターよりも外径が１mm太いものが選ばれる。かくしてドナー・筒体の内径は、レシピアント・筒体の外径に等しく、レシピアント・サイト内にドナー・コアをぴったり押し込んで確実に固定できるようになる。筒体・ハーヴェスターのセットは、５mmと６mm、６mmと７mm、７mmと８mm、８mmと９mm又は９mmと１０mmのような寸法関係で構成されている。
【００４１】
図９に示すように、適当な直径のもので、"DONOR"とラベルされたドナー・グラフト・ハーヴェスター２を図６に示すハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器３４内に完全に挿入して装着し、先端をヒアリン軟骨ハーヴェスト・サイト５５に押し当てる。この際、挿入および／または膝関節の屈曲角度に十分注意を払い、密着させる前に関節軟骨に対し一様に平らに接するようにしなければならない（図１０参照）。前記ハーヴェスターを小槌５８で叩いて副軟骨骨内へ約15mmの深さに挿入する。この挿入の間は、ハーヴェスト（採取）しようとするコアを傷めないようにするために、前記ハーヴェスターが回転しないように気配りしなければならない。
【００４２】
関節鏡による手術の間は、スロットつきカニューレ（図示せず）を用いて、より大径の筒体・ハーヴェスターを関節内へ挿入しやすくすることもできる。挿入した後、スロットつきカニューレを筒体・ハーヴェスターのシャフトにそって引き戻し、スロットを介して取り外せば、関節内がよく視認でき、筒体・ハーヴェスターの動きもよくなり、さらに流体の膨張を助ける。
【００４３】
図１１に示すように、ドライバー／引く抜き器３４を好ましくは約９０°時計方向へ回転し、さらに約９０°反時計方向へ回転し、ついで上下に軽くゆさぶって、骨軟骨コアを取り除くために海綿ベース（組織）を壊す。これによってドナー・筒体・ハーヴェスター２の筒体内には、ハーヴェスト（採取）されたコアが捕捉され、該コアを取り出すために、ドナー・筒体・ハーヴェスター２をドナー・サイトから後退させる。
【００４４】
ハーヴェスト（採取）されたコアは、窓１１を介して目視でき、これによって前記ハーヴェスター内にコアをうまく捕捉できたか否かを確認することがでる。前記筒体・ハーヴェスターを前記のように回転し、引き抜く操作でもコアをうまく採取できなかった場合は、前記ハーヴェスターを深さ20mmまで再挿入し、前記したような回転と引き抜きを行う。
【００４５】
ドナー・コアが除去されれば、その長さとヒアリン軟骨の厚みとを図１２に示すように、ハーヴェスター内の窓１１を介して目視できる。目盛り付きアライメント・スティック５９を用いて、正確な測定値が得られるものであり、この点については後記する。引き抜き操作後、ドナー・筒体・ハーヴェスター２と採取されたコアとをドライバー／引き抜き器から取り出し、これらを安全で、無菌の保持領域に置く。
【００４６】
図１３に示すように、筒体・ハーヴェスターのセットから選んだ"RECIPIENT"とラベルされた適当な寸法の筒体・ハーヴェスター１４と、カラー付きピン２６とを筒体・ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器３４へ完全に挿入する。 欠陥部５２のサーフェースを取り替えるためにシングルのコア移植を行うものとされたときには、レシピアント・筒体・ハーヴェスター１４を欠陥部に当てがい、これを小槌５８で叩いて副軟骨骨内へ押し込む。ドナー・ハーヴェスターについて前記したように、挿入に当たっては、レシピアント・ハーヴェスターを回転しないように注意して挿入する。この挿入深度は、約13mm程度が好ましいものであって、これは、図１４に示すように、筒体１６の外側面に表示されたミリメーター基準のハーヴェスター挿入深度目盛り２４で分かるようになっている。
【００４７】
この場合にも当然なことながら、正しい挿入角度および膝屈曲角度を選んで、叩いて挿入する前に、前記筒体・ハーヴェスターを軟骨サーフェースに一様に平らに当てることに専念しなければならない。マルチプルのコア移植を行う場合には、前記筒体・ハーヴェスターを欠陥部に対し、そのの適切な１／４の範囲に当てがう。
【００４８】
また、ソケットを作り出す間、矢状縫合面および冠状縫合面の両者において、関節面に対し前記ハーヴェスターを９０°の角度に維持しようとする配慮は、フラッシュ移植にとり重要なことである。図１４を参照されたい。
【００４９】
解剖上の障害により、筒体・ハーヴェスターを９０°に配置してヒアリン軟骨にフラッシュさせるためにハーヴェスト操作を傾斜しながら行わなければならない場合には、各筒体・ハーヴェスターのチップにおける長さ方向の目盛りライン（図示せず）を回転させ、ドナー・コアをハーヴェストする間、先端の切断エッジを軟骨に正合させる必要がある。レシピアントをハーヴェストする操作は、ドナー・コアーのハーヴェスト操作のときに採用した角度にできる限り近似した角度で行わなければならない。この傾斜角度での操作の利点はは、ドナー・コア挿入の操作において、レシピアント・ソケットリムに対し長さ方向目盛りラインと先端の切断エッジを正合させることで傾斜したレシピアント・ソケットを囲む軟骨に傾斜したヒアリン軟骨ドナー・サーフェースを極めて接近させることが容易になる点である。
【００５０】
図１５に示すように、前記ハーヴェスターの挿入深度が十分なものになった後、前記のドナー・ハーヴェスターの操作と同様に、筒体・ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器３４を回転させ、緩やかに揺り動かして、前記筒体の先端で海綿骨質を破壊する。前記ドライバーを逆回転しながら引き抜くことで、前記ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器とコアとが簡単に引き抜かれ、レシピアント・ソケット６０がくりぬかれる。
【００５１】
前記ハーヴェスターおよび採取した骨軟骨コアを引き抜き出してから、前記ドナー・ハーヴェスターとレシピアント・ハーヴェスターとを並べてドナー・コアとレシピアント・コアとを直かに対比することができる。これら採取されたコアは、ドナー・ハーヴェスターとレシピアント・ハーヴェスターそれぞれにおける窓１１、２３を介して目視できる。これに応じて、ハーヴェスター自家移植ドナー・コアの長さを調節することができる。ドナー・コアの先端（挿入側）は、レシピアント・サイトへ挿入するに先立ち、スムーズにされていることが好ましい。
【００５２】
図１６に示すように、目盛り付きのアライメント・スティック５９（直径は適当な直径）を用いて、くりぬいたレシピアント・ソケット６０のくりぬき深さを計ることができる。関節鏡による移植手術を行う場合には、前記アライメント・スティック５９により、挿入ポータル（門）の位置に対してレシピアント・ソケットの角度を正しく合わせることもできる。さらに前記アライメント・スティックの利点としては、このスティックを用いて、ドナー・コアの長さに合致するようにレシピアント・ソケットの長さをこまかくチューニングすることができる。したがって、アライメント・スティック５９は、小槌５９で叩いて、所望の深さまで押し込む。
【００５３】
自家移植コアを挿入するに当たり、レシピアント・筒体・ハーヴェスター１５を直径が１mmだけ太いドナー・筒体・ハーヴェスター２とカラー付きピン（これらは、採取した自家移植コアをもつ）に代える。該ドナー・筒体・ハーヴェスターを筒体・ハーヴェスター・ドライバー／引き抜き器３４内に挿入して、これに取り付ける。
【００５４】
前記のようにドナー・グラフト・ハーヴェスター２を前記ドライバー／引き抜き器３４に再び装着した後、前記ドライバー／引き抜き器３４のキャップ３８（小槌で叩かれる部分）を外し、Ｔ形のハンドル基部３７を取り外す（図１７参照）。これによって、カラー付きピン２６の手許側の端部が顔を出し（図１８参照）、これを押して前記コアをレシピアント・ソケット６０内へ前進させる。
【００５５】
ハンドル３６の開放された端部に螺合されるステンレススチール製のピン位置決めキャップ６２が押し込みのための保護部材となり、前記カラー付きピンをアライメントし、骨コア挿入を機械的にコントロールする（図１８参照）。前記ピンの位置決めキャップは、Ｏリング状の鍔を備えていることが好ましく、ハンドルへ着脱自由に嵌めこまれるもので、該キャップの中央には、ピン２６が挿通される小さな孔が軸方向に貫通している。
【００５６】
図１９に示すように、ドナー・グラフト・ハーヴェスター２の先端をレシピアント・サイト６０内へ挿入する。レシピアント・サイトでは、前記ハーヴェスターは、斜面１０に案内され、該斜面によって、正しく安全にレシピアント・サイトに適合される。前記ハーヴェスター・筒体と膝屈曲角度との位置を安定させながら、小槌５０によりカラー付きピン２６の手許側の端部を軽く叩き、前記コアをレシピアント・ソケット６０内へ押し入れる。
【００５７】
前記コアが前進されると、図１９に示すように、前記コアは１mm盛り上がったままとなる。カラー付きピン２６を該ピンの端部が前記ピン位置決めキャップ６２の外面と一致するまで押し込む。このようにカラー付きピンを前記ピンの位置決めキャップの外面に一致するまで押し込むと、該ピンは、所定の長さ寸法になっているため、海綿骨質の前進により移植軟骨組織が１mmだけレシピアント・ソケットの外部に露出される。前記コアの挿入をコントロールするには、前記ハーヴェスターのサイドにある窓１１から前記コアとカラー付きピンの前進状態を目視することで行うこともできる。
【００５８】
前記コアの挿入が不完全であれば、軟骨面が沈んでいるために生ずるような前記コアをあまりにも奥まで押し進めることが避けられ、この際には前記コアを何回も引き戻し、周囲の関節軟骨にぴったり合わせる必要がある。挿入し過ぎも、上記したように、前記アライメント・スティックを用いてレシピアント・ソケットを準備することで避けられる。
【００５９】
次に図２１に示すように、サイザー／タンプ４０をドライバー／ハーヴェスター３４に装着し、前記コアを周囲のヒアリン軟骨と面一にする。この発明の方法の一つの実施例によれば、前記サイザー／タンプの直径は、前記コアの直径よりも少なくとも１mmだけ大径になっている。図２２に示すように、前記タンプが前記コアの直径よりも少なくとも１mmだけ大径になっているので、コアを挿入する際、周囲の関節軟骨の面に面一になるようにコアを挿入でき、コアが周囲の関節軟骨の面よりも落ち込んだ状態で挿入されない。
【００６０】
この発明の方法の別の実施例によれば、サイザー／タンプ４０は、コアのサイズを測定するのに使用されたものと同一のもので、骨軟骨コアと同じサイズのものである。前記タンプを使用するときは、前記コアに対しセンターがずれており、前記サイザー／タンプ４０のオーバーハングのエッジが周囲の軟骨領域に対面し、海綿骨質コアの過度の挿入を防ぐ。前記コアの面は、小槌５８で軽く叩くことで周囲の軟骨面と面一にされる。図２３には、完成された移植が示されている。
【００６１】
種々の直径をもつマルチプルのコアをハーヴェストし、欠陥部の特定の１／４の部分へ移植しなければならないとき、レシピアント・ソケットをさらに作る前に、それぞれのコア移植を完了しておかなければならない。図２４，図２５を参照のこと。これによって、レシピアント・トンネルの破壊が防げ、所望に応じて、すでに挿入したコアの隣にコアを次々配置することができる。
【００６２】
ハーヴェストした後は、ドナー・ソケット６４を通常開放したままにしておき、８週間から１２週間の内に海綿骨質及び繊維軟骨で埋める。また別な手段としては、欠陥部からハーヴェスト（採取）した海綿骨質をドナー・サイトに挿入し、サイザー／詰め具またはアライメント・スティックを用いてドナー・ソケット内へしっかりと詰め込み、海綿骨質を圧縮して確実に固着するようにしてもよい。
【００６３】
以上の実施例に関連して、この発明を詳細に説明したが、この発明は、上記の説明ならびに実施例のみに限定されるものではなく、種々の変形、モディフィケーションは、当業者にとり自明のことであるから、この発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載した事項によって判断されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターの一部を示す側面図である。
【図２】図１のドナー・グラフト・ハーヴェスターの一部切断側面図である。
【図３】この発明によるレシピアント・サイト・ハーヴェスターの一部を示す側面図である。
【図４】図３のレシピアント・サイト・ハーヴェスターの一部切断側面図である。
【図５】この発明によるカラー付きピンの側面図である。
【図６】この発明によるドライバー／引き抜き器の分解側面図である。
【図７】この発明によるグラフトのサイザー／タンプの側面図である。
【図８】この発明による軟骨欠陥のサイズを計測し、移植手術を行う準備段階の説明図である。
【図９】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターをドライバー／引き抜き器に装着して、小槌で叩きながらドナー・サイトに対して移植しようとする移植する軟骨片を採取する手術の状態を示す説明図である。
【図１０】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターを正しく位置決めする状態を示す説明図である。
【図１１】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターを用いて、移植する軟骨片を採取する状態を示す説明図である。
【図１２】この発明による軟骨コアの寸法を計る例を示す説明図である。
【図１３】この発明によるレシピアント・ソケット・ハーヴェスターでレシピアント・ソケットをくりぬこうとする例を示す説明図である。
【図１４】この発明によるレシピアント・ソケット・ハーヴェスターをレシピアント・ソケットの深さを計りながら、これを調節する例を示す説明図である。
【図１５】この発明によるレシピアント・ソケット。コアを引き抜き出す操作の例を示す説明図である。
【図１６】この発明によるレシピアント・ソケットのサイズを計り、該ソケットを準備する操作の例を示す説明図である。
【図１７】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターを装着したドライバー／引き抜き器にカラー付きピンを装着する準備を示す説明図である。
【図１８】この発明によるドナー・グラフト・ハーヴェスターを装着したドライバー／引き抜き器にカラー付きピンを装着する状態を示す説明図である。
【図１９】ドナー・コアを挿入する操作の説明図である。
【図２０】軟骨移植が行われる膝関節におけるドナー・サイトとレシピアント・ソケット（サイト）を示す説明図である。
【図２１】レシピアント・ソケット内にドナー・コアを最終的に移植する操作の説明図である。
【図２２】図２１の操作で最終的に移植されたドナー・コアを周囲の軟骨組織に馴染ませ、面一にする操作の説明図である。
【図２３】この発明による方法で軟骨移植が完了した状態の膝関節部を示す説明図である。
【図２４】この発明による方法で、いくつもの軟骨片を移植する例の説明図である。
【図２５】この発明による方法で、いくつもの軟骨片を移植する例の説明図である。
【符号の説明】
２ ドナー・グラフト（移植軟骨片）ハーヴェスター
４ 中空の筒体
６ 筒状のハンドル
８ カッティングエッジ
１０ 斜面１０
１１ 窓
１２ 深さ目盛り
１６ レシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスターの筒体
１８ レシピアント（宿主）サイト・ハーヴェスター棒状のハンドル
２０ 切断エッジ（刃）
２２ 斜面
２３ 窓
２４ 深さ目盛り
２６ カラー付きピン
２８ カラー
３２ カラーの端面３２
５２ 欠陥部
５０，５８，５９ 小槌
６０ レシピアント・ソケット

Claims (4)

1. 関節部に骨軟骨コアを移植するための装置であって、以下の構成を備える装置：
   切断筒体を回転させることなく軸方向に骨軟骨コアを切り取るための先端部に尖鋭な切断エッジ（刃）と、手許側の端部に、前記切断エッジによる切断後に円筒状骨軟骨コアを取り出すように当該切断筒体を捻るための筒状ハンドルと、内部に収納される切り取られた骨軟骨コアを視認するための側面に設けられる窓とを有する前記切断筒体；
   回転することなく前記切断筒体を骨内部へ押し込むために与えられる軸方向に叩く打撃を受けとめる、前記コアまたはソケット切断筒体の手許側端部に設けられる叩き端部；および
   前記コアまたはソケット切断筒体内にスライドさせて収納されるピンであって、このピンの先端部には、先端面がスムーズな面になっているカラーが取り付けられており、前記ピンの手許側の端部は、前記コアまたはソケット切断筒体の前記ハンドルにスライド挿入される構成になっているピン。
2. 関節部に骨軟骨コアを移植する装置であって、以下の構成を備える装置：
   先端部に尖鋭な切断エッジ（刃）、手許側の端部に筒状ハンドルおよび所定の内径を有している、前記コアを摘出するコア切断筒体；
   先端部に尖鋭な切断エッジ（刃）および手許側の端部に筒状ハンドルを有し、かつ前記コア切断筒体の内径と等しい外径を有する、前記コアを挿入するためのソケットをくりぬくソケット切断筒体；および
   前記各切断筒体内にスライドさせて収納されるピンであって、各ピンの先端部には、先端面がスムーズな面になっているカラーが取り付けられており、前記ピンの手許側端部は、前記各切断筒体の前記ハンドルにそれぞれスライド挿入される構成になっているピン。
3. 前記装置は、ルーメンを備え、該ルーメン内を目視できる窓が前記切断筒体の側面に設けられている請求項２の装置。
4. 前記切断筒体に着脱自由に取り付けられるドライバーを備えている請求項１または３の装置。

Images