JP3930928B2 - 建造物の反射障害軽減構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建造物のテレビゴースト障害等の電波反射障害防止対策のために、フェライトタイル等の磁気的電波吸収部材を有する電波吸収壁を外壁面に設けた建造物において、前記電波吸収壁では対応できない外壁面に露出する電波反射構造物の取付構造を工夫することで電波反射を防止し、電波吸収壁の効果を一層高めて建造物の電波反射障害問題の解決を図った建造物の反射障害軽減構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建造物の電波反射障害対策として例えば図7に示すような電波吸収壁が広く用いられている。この図7の電波吸収壁は、磁気的電波吸収部材としてのフェライトタイル(フェライト板)1の落下防止を兼ねた特殊足付き外装タイル(磁器タイル等)3をフェライトタイル1の前面に被せ、フェライトタイル1の背後に金属製反射メッシュ(電波反射体)をなす鉄筋4を配置し、フェライトタイル1背面側にコンクリート5を打設することでプレキャスト・カーテンウォール構造電波吸収壁を構成したものである。
【0003】
この図7の電波吸収壁は、現在、建造物の外壁にテレビゴースト対策として広く用いられており、この電波吸収壁を採用することにより、電波反射障害を大幅に軽減し得ることが明らかにされている。
【0004】
しかし、実際の建造物は、例えば電波吸収壁としての動作要件に無関係な窓枠の金属サッシ、ゴンドラレール等を有しており、従ってこれらの大きさ、外壁面全体に占める割合等により電波反射障害防止効果は大幅に異なる。その理由は、これら窓枠等の建造物外壁面に露出する電波反射構造物に対し有効な反射防止法が見あたらないことにある。従って、現状ではいかに優れた電波吸収特性の電波吸収壁を用いても、それだけでは建造物の電波反射を解決することは出来ない。このため、電波吸収壁では対応できない建造物の構造に起因する電波反射物の反射を是認して、それによる障害は別途CATV等の建造物側の電波反射障害防止対策以外の方策がとられている。建造物の窓枠等の電波反射物の構造によっては電波吸収壁採用の効果が期待できない場合も生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
建造物の窓枠等の導電性構造体は到来電波の電界と平行に配置された場合、一種のアンテナとして機能し、大きな電波反射体としての働きをする。図8、及び図8の円P内を拡大して示す図9及び図10は電波吸収壁としての2体の長方形電波吸収パネル10A,10B(それぞれ縦4000mm、横3150mm)を用い、それら2体の電波吸収パネル10A,10B間に100mmの空隙を設け、この空隙に電波吸収パネル10A,10Bに対して単独の(独立した)レール状金属反射物(窓枠の水平部分を模擬したものと考えることができる)11を到来電波の電界方向に平行に取り付けた構造を示す。但し、図9及び図10中において1はフェライトタイル、3はフェライトタイル前面を覆う外装材としての外装タイル、4は金属製反射メッシュ(電波反射体)をなす鉄筋、5はコンクリートである。
【0006】
図11は100mmの空隙を有する前記2体の電波吸収パネル10A,10B自体の電波吸収特性(曲線イ)と、図8乃至図10のように前記100mmの空隙にレール状金属反射物11を配置したときの電波吸収特性(曲線ロ)を、反射減衰量の周波数特性としてそれぞれ示す。100MHzで約20dB程度の優れた電波吸収特性が確保されている2体の電波吸収パネルに対し、その接合空隙にレール状金属反射物を装着することにより、15dB程度に特性劣化し、あたかも電波吸収パネルそれ自体が15dB程度の特性を持ったものと同じになる。
【0007】
従って、一般の構造物の電波反射対策の場合、到来電波の電界方向に平行な反射物、例えば金属棒、金属レール等への対策が最も重要とされており、これらの構造物に対し電波吸収体で覆うとか、金属以外の例えばガラス繊維入り強化プラスチック等の非導電性材料で置き換える等の方法が取られる。
【0008】
しかし、建造物の窓枠等は、その構造及び使用目的により、これら構造物の上を電波吸収体で覆う等の対策はできず、かつ非導電性材料で置き換え可能な新たな材料も現状では見あたらない。従って、窓枠、その他電波吸収体等で対策を施すことが不可能な建造物外壁面に存在する電波反射構造物の対策が大きな課題となっており、この解決が本発明の主体をなすものである。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、電波吸収壁では対応できない建造物外壁面に露出する電波反射構造物の取付構造を工夫して当該電波反射構造物に起因する電波反射を防止し、電波吸収壁の効果を一層高めて建造物の電波反射障害問題の解決を図った建造物の反射障害軽減構造を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、建造物の電波到来面となる外壁面に露出する電波反射構造物が到来電波の電界と平行な部分を有している建造物の反射障害軽減構造であって、
前記電波反射構造物を前記外壁面に露出させて、磁気的電波吸収部材を有する電波吸収壁を前記外壁面に設け、前記電波反射構造物の電界と平行な部分が前記磁気的電波吸収部材の背面と同一面上若しくは前記背面よりも電波到来方向からみて後方位置となるようにしたことを特徴としている。
本発明の建造物の反射障害軽減構造において、前記電波反射構造物が金属製窓枠又はゴンドラレールであってもよい。
【0012】
また、本発明の建造物の反射障害軽減構造において、前記電波反射構造物の到来電波の電界方向に平行な部分は、磁界方向の一方の側に前記電波吸収壁が設けられており、他方の側が電波透過面となっている構成としてもよい。
【0013】
磁気的電波吸収部材にフェライトタイルを用いた磁気的電波吸収体であるフェライト電波吸収体は、図12及び図13に示す如く、磁気的電波吸収部材、すなわちフェライトタイル1の背面を電波反射体となる金属板2で裏打ちした構造が基本形であり、フェライトタイル1は到来電波の磁界方向に連続に配置するが、電界方向には空隙を設けても電波吸収特性は十分保たれることが、理論的にも実験的にも明らかにされている(電子通信学会論文 '79/8 VOL・J61-B No.8、或いは特公昭55−49798号公報)。この理由は、一般に波長に比較して十分小さい空隙であれば、その空隙があっても電波的に一つの面として捉えることが出来るからである。
【0014】
従って、フェライト電波吸収体の設計条件であるフェライトの背面に同一電位を有する反射体が存在するならば、フェライト間にある程度空隙を設けても電波吸収体としての動作が期待できる。特に、フェライト電波吸収体においては磁気的電波吸収部材としてのフェライトに電波集束効果があり、電界方向に比較的大きな空隙が存在しても電波はフェライト部分に集束して電波吸収特性を劣化させることはない。他方、磁界方向は出来るだけ連続化が望まれる。その理由は、磁界方向の空隙の存在で磁気抵抗が大きくなり、かつ反磁界の発生により磁気特性が大幅に劣化するためである。この場合、当然のことであるが、フェライト電波吸収体を構成するために必要なフェライト背面の反射体は連続化が求められる。
【0015】
このような磁気的電波吸収部材であるフェライトの特徴に着目し、電波吸収壁を構成するフェライト電波吸収体が十分その特徴を発揮し得るならば、フェライト電波吸収体の基本設計条件として構成された反射体以外の、電波吸収壁から独立して単独で存在するが電波吸収壁に比較して十分小さい電波反射構造物であれば、例えば図4の金属製窓枠11のように、電波吸収壁10の端部等に位置し、片面は電波的に開放部分(電波透過面であるガラス面12)となる電波反射構造物でも、電波的に隠すことが可能ではないかとの発想で、その可能性を検討した。
【0016】
図5に示すように、厚さ7.3mmのフェライトタイル21の前面に厚さ14mmの外装タイル(花崗岩)23を配置し、フェライトタイル21の背後に厚さ12mmとなるようにコンクリート25を打設し、その背面に電波反射板(金属板)24を配置してなる幅600mm、長さ900mmの実用構造の電波吸収パネル20を試作し、その電波吸収パネル20の中央に到来電波の電界方向に平行な幅20mmの空隙26を形成し、その空隙部分にアルミサッシ相当の金属板を、電波吸収パネルの外装タイル(花崗岩)23前面と同一面上(位置a)、フェライトタイル21の前面と同一面上(位置b)、フェライトタイル21の背面と同一面上(位置c)、最後に電波反射板24の電波反射面と同一面上(位置d)に、パネル厚み方向の位置を変えてそれぞれ装着したときの電波吸収特性を測定した。その測定結果を図6に示す。
【0017】
図6の反射減衰量の周波数特性において、位置aの外装タイル23前面と同一面上に金属板が装着されたときに最も電波吸収特性に影響を及ぼし、金属板の反射の影響により見掛け上電波吸収パネルの電波吸収量は最良値に比較して約10dBも劣化する。同様に位置bの磁気的電波吸収部材であるフェライトタイル21の前面と同一面上に金属板を装着した場合も位置a程の特性劣化ではないが、それでも最良値に比較して約5dB程度は劣化することが確認できた。それに反し、磁気的電波吸収部材であるフェライトタイル21の背面と同一面乃至電波反射板24の電波反射面と同一面となる位置c,dに金属板を装着した場合は、多少中心周波数がずれているが電波吸収特性は本来の設計通りの35dB程度の優れた特性を示すことが確認された。なお、この程度の中心周波数のずれはフェライト電波吸収体の設計原理よりフェライトタイルの厚み制御で十分対応できる範囲である。
【0018】
この結果、磁気的電波吸収部材としてのフェライトの電波集束効果は、電界方向に平行な空隙に電波反射構造物が存在しても、その位置がフェライトの前面より後方位置、好ましくはフェライトの背面と同一面乃至これより後方位置とするならば、十分認められ、この効果を利用することにより、従来建造物の電波反射対策上大きな障害となっていた、窓枠等のそれ自体電波吸収体等で処理出来ない構造物を電波的に隠し、この構造物からの電波反射を抑えることの可能性を明らかにすることが出来た。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る建造物の反射障害軽減構造の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1は本発明に係る建造物の反射障害軽減構造の実施の形態であり、図2は本発明を適用する高層建造物の1例を示す。
【0021】
図2に示すような高層建造物30で、窓31が到来電波の電界方向に平行に連続的に並び、かつその面積も大きく、従ってその窓枠を構成するアルミサッシも電界方向に長く伸び、窓31以外の外壁面に電波吸収壁40を取り付けても過去の経験によりその効果が余り期待できない建造物に対し、図1の如き窓枠配置とする。すなわち、図1において、電波吸収壁40は磁気的電波吸収部材としてのフェライトタイル(フェライト板)41の落下防止を兼ねた外装タイル等の外装材43をフェライトタイル41の前面に被せ、フェライトタイル41の背後に金属製反射メッシュ(電波反射体)をなす鉄筋44を配置し、フェライトタイル41背面側にコンクリート45を打設してそれらを一体化してなるプレキャスト構造の電波吸収パネルであり、電波透過面となる窓ガラス51が取り付けられた窓枠がアルミサッシ50で構成されている。そして、アルミサッシ50の到来電波の電界方向に平行なアルミサッシ水平部50Aは電波反射体として働くが、少なくともこのアルミサッシ水平部50Aを電波吸収壁40の磁気的電波吸収部材としてのフェライトタイル41背面より多少後方に位置するように高層建造物の構造躯体に電波吸収壁40と共に取り付けている。
【0022】
これにより、窓枠の電波反射問題は解決され、電波吸収壁本来の特性が発揮され、建造物の反射障害を解決することができる。
【0023】
なお、この場合の電波吸収壁に窓枠を取り付けた構造体は、電波吸収壁40の上下両端に窓枠のアルミサッシ水平部50Aが取り付けられた状態となり、電波吸収特性の評価はこのような状態でタイムドメイン法を用いて行った。その結果をアルミサッシ無しの場合と比較して図3の反射減衰量の周波数特性のグラフで示す。図3の曲線ハは本発明の実施の形態に係る窓枠有りの場合、曲線ニは窓枠無しの場合をそれぞれ示している。但し、電波吸収壁40の縦方向寸法は4000mm、横方向寸法は3200mm、アルミサッシ水平部50Aの上下幅は100mmとした。
【0024】
この図3から、本発明の実施の形態によれば、窓枠無しの場合とほぼ同等の反射減衰量が得られていることがわかる。
【0025】
なお、アルミサッシ50は水平部だけでなく垂直部も有するが、テレビゴースト障害対策について言えば、テレビ放送の電波は水平偏波であり、アルミサッシ50の垂直部は電界に対し垂直となるため、電波反射体としての働きは少なく、とくに配慮は不要である。
【0026】
また、上記実施の形態では、到来電波に対して電波反射構造物となるアルミサッシ水平部50Aを電波吸収壁40の磁気的電波吸収部材としてのフェライトタイル41の背面よりも多少後方位置としたが、電波反射構造物が磁気的電波吸収部材の前面よりも電波到来方向からみて後方位置に配設してあれば電波吸収壁の特性劣化をある程度防止できることは前述した図5の説明から明らかである。
【0027】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の建造物の反射障害軽減構造によれば、窓枠が多いため、或いはゴンドラレール等により、電波吸収壁だけでは十分解決できなかった建造物の電波反射障害対策に新しい道を開き、今後の高層建造物の設計に寄与するところ大きいと考える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建造物の反射障害軽減構造の実施の形態を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を適用する高層建造物の1例を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態による反射障害軽減効果を窓枠無しの場合と比較して評価した反射減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図4】電波吸収壁を外壁面に有する建造物における連窓の窓枠構造の1例を示す正面図である。
【図5】電波吸収パネルの到来電波の電界方向に平行な空隙に配置された金属板の配置による反射特性に及ぼす影響を調べるための構造図である。
【図6】図5の電波吸収パネル厚み方向に位置を変えた金属板配置に対応した反射減衰量の周波数特性をそれぞれ示すグラフである。
【図7】特殊足付き外装タイルで固定する構造を持つ電波吸収壁の従来例を示す斜視図である。
【図8】電波吸収パネル間に当該電波吸収パネルから独立した金属反射物を配置した構造を示す正面図である。
【図9】図8の円P内を拡大して示す拡大正面図である。
【図10】同じく拡大側断面図である。
【図11】図8乃至図10の如く電波吸収パネル間に当該電波吸収パネルから独立した金属反射物を配置した構造と金属反射物が無い場合を比較した反射減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図12】磁界方向に連続で電界方向に不連続なフェライト配置とした電波吸収壁の基本となる従来例を示す正面図である。
【図13】同平断面図である。
【符号の説明】
1,21,41 フェライトタイル
2 金属板
3,23 外装タイル
4,44 鉄筋
5,25,45 コンクリート
10A,10B,20 電波吸収パネル
11 レール状金属反射物
24 電波反射板
30 高層建造物
31 窓
40 電波吸収壁
43 外装材
50 アルミサッシ
50A アルミサッシ水平部

Claims (3)

  1. 建造物の電波到来面となる外壁面に露出する電波反射構造物が到来電波の電界と平行な部分を有している建造物の反射障害軽減構造であって、
    前記電波反射構造物を前記外壁面に露出させて、磁気的電波吸収部材を有する電波吸収壁を前記外壁面に設け、前記電波反射構造物の電界と平行な部分が前記磁気的電波吸収部材の背面と同一面上若しくは前記背面よりも電波到来方向からみて後方位置となるようにしたことを特徴とする建造物の反射障害軽減構造。
  2. 前記電波反射構造物が金属製窓枠又はゴンドラレールである請求項1記載の建造物の反射障害軽減構造。
  3. 前記電波反射構造物の到来電波の電界方向に平行な部分は、磁界方向の一方の側に前記電波吸収壁が設けられており、他方の側が電波透過面となっている請求項1又は2記載の建造物の反射障害軽減構造。
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