JP3930618B2 - 成膜用組成物およびその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機無機の複合微粒子を含有し、光沢が高く、耐汚染性に優れた被膜を形成でき、安価で引火性や溶剤毒性等の問題がない成膜用組成物およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属素材;モルタル、スレート等の無機素材;プラスチック、木材、紙等の有機素材の表面に被膜を形成する等の目的で成膜性樹脂組成物が用いられている。この成膜性樹脂組成物は、主成分として成膜性樹脂を含み被膜形成性能を有するが、得られる被膜の硬度が低いので、硬度を要求される用途では、シリカ微粒子等の補強用無機充填剤をさらに添加して使用されている。しかしながら、シリカ微粒子等の従来の補強用無機充填剤は樹脂中に分散しにくいという欠点があり、膜性能や保存安定性等で問題があった。また、硬度を高めるためにシリカを多く配合すると、組成物の分散状態が変化し、シリカが凝集しやすくなる。このため、塗膜がつや消しの膜となり、光沢が低下し、外観を重要視する用途では問題であった。
【0003】
本発明者らは、無機微粒子に有機ポリマーが一体化してなる複合微粒子を先に開発していたので、前記シリカ微粒子等の従来の補強用無機充填剤に代わってこの複合微粒子をアクリルポリオールと多官能イソシアネートとを含む成膜性樹脂に配合した有機溶剤系の成膜用組成物を開発し、特許出願した(特開平7−178335号公報)。前記の複合微粒子は無機微粒子に一体化させた有機ポリマーが成膜性樹脂に対する親和性を持つため、無機微粒子の成膜性樹脂に対する分散性を大いに向上させることが出来た。そのため、前記特許出願にかかる成膜用組成物は、膜性能や安定性に極めて優れている。得られた被膜は耐候性にも優れ、耐汚染性も良くなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この成膜用組成物は、成膜性樹脂と複合微粒子とを、有機溶剤を多量に含む溶媒中に分散させたものであり、引火性や溶剤毒性等の問題があった。また、この成膜用組成物は、主に塗料、各種コーティング剤等の用途に用いられているが、上記成膜性樹脂は、硬化剤や溶剤等をさらに含むため、比較的高価であり、コストを重視する点からは、より安価なものが求められている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、光沢が高く、耐汚染性に優れた被膜を形成でき、しかも、安価で引火性や溶剤毒性等の問題がない成膜用組成物およびその用途を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、先に開発した成膜用組成物における樹脂成分として乳化重合によって得られた樹脂粒子を選択し、樹脂成分と複合微粒子を分散させる分散媒として水を用いることに着眼し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明にかかる成膜用組成物は、乳化重合によって得られた被膜形成用の樹脂粒子と、無機微粒子に有機ポリマーが一体化してなる複合微粒子であって、平均粒子径が5〜200nmであり、かつ、粒子径の変動係数が50%以下である複合微粒子と、水を必須成分とする溶媒とを含み、前記樹脂粒子および複合微粒子が前記溶媒中に分散してなる組成物である。
【0008】
前記樹脂粒子が、フルオロアルキル基および/またはシリコーン基を有していてもよい。
水溶性ポリマーをさらに含んでいてもよい。
本発明にかかる塗料は、上記成膜用組成物を必須成分として含む。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の成膜用組成物は、水を必須成分として含む溶媒中に樹脂粒子および複合微粒子を含有してなる組成物である。そこで、これらにつき、順次説明した後、成膜用組成物の構成について説明する。
〔樹脂粒子〕
本発明で用いられる樹脂粒子は、乳化重合によって得られる重合体の粒子である。この樹脂粒子は、被膜形成用に用いられる成分であり、比較的安価に得ることができる。
【0010】
樹脂粒子としては、パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基を有する樹脂粒子が、耐候性に優れるため、好ましい。
パーフルオロアルキル基としては、たとえば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。これらのうち、パーフルオロアルキル基が、パーフルオロメチル基および/またはパーフルオロエチル基であると、樹脂粒子への導入が容易である。パーフルオロアルキル基中のフッ素原子の一部が、本願発明の効果をそこなわない範囲で塩素原子等の他の原子で置換されたものであってもよい。
【0011】
シリコーン基としては、たとえば、ジメチルシリコーン基、ジフェニルシリコーン基、メチルフェニルシリコーン基、ジエチルシリコーン基、メチルエチルシリコーン基等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。これらのうち、シリコーン基が、ジメチルシリコーン基および/またはジフェニルシリコーン基であると、樹脂粒子への導入が容易である。
【0012】
パーフルオロアルキル基やシリコーン基の分子量については、特に限定はされないが、たとえば、200〜50,000であると好ましく、200〜10,000であるとさらに好ましい。
本発明で用いられる樹脂粒子は、たとえば、乳化剤およびラジカル重合開始剤の存在下、不飽和単量体を乳化重合して得られる。不飽和単量体としては、たとえば、アクリル系単量体、フッ素系単量体、シリコーン系単量体等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0013】
アクリル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸等のアクリル系カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルトリデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステル(たとえば、商品名プラクセルFM、ダイセル工業社製)、フタル酸とプロピレングリコールから得られるエステルジオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−スルホン酸エチルおよびその塩等のその他のアクリル系単量体等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0014】
フッ素系単量体としては、たとえば、上記パーフルオロアルキル基と重合性2重結合基とを有する単量体等を挙げることができる。
シリコーン系単量体としては、たとえば、上記シリコーン基と重合性2重結合基とを有する単量体等を挙げることができる。
パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基を有する樹脂粒子は、フッ素系単量体および/またはシリコーン系単量体を必須成分として含む不飽和単量体を乳化重合して製造してもよく、また、反応性官能基(a)を有し、乳化重合で得られた樹脂粒子と、パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基を有し、かつ、反応性官能基(a)と反応する反応性官能基(b)を有する化合物とを反応させて、製造してもよい。
【0015】
上記不飽和単量体とともに、その他単量体として、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等の芳香族系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルスルホン酸およびその塩等のビニル系単量体;酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル等のアリル系単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン等の脂肪族系単量体;マレイン酸ジエチル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のその他不飽和単量体等を併用して、乳化重合してもよい。
【0016】
乳化重合で用いられる乳化剤の一般的なものとしては、たとえば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高級アルキルナフタレンスルホン酸;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0017】
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと、脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0018】
高分子界面活性剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種類以上の共重合体;これらの重合体の構成単位である重合性単量体と、別の単量体との共重合体等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0019】
乳化重合で用いられる乳化剤としては、クラウンエーテル類等のいわゆる相間移動触媒を使用することもできる。
乳化重合で用いられる乳化剤として、以下に詳しく説明する反応性乳化剤を用いることによって、成膜時の水溶性物質を減らすことができ、被膜の耐水性が高まるため、好ましい。
【0020】
このような反応性乳化剤としては、以下に述べる末端アルキル基含有重合体および/またはその塩が特に好ましい。ここに、末端アルキル基含有重合体とは、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価200mgKOH/g以上の水溶性または水分散性を有し、末端にアルキル基を含有する重合体である。
【0021】
上記末端アルキル基含有重合体および/またはその塩を乳化剤として用いることにより、被膜は初期乾燥性に優れるとともに、耐候性や、光沢、鮮映性等に優れたものとなる。
上記末端アルキル基含有重合体は、乳化重合時における重合安定性、成膜組成物から得られる被膜の耐水性や耐溶剤性、強度等の性能を向上させるために、酸価が200mgKOH/g以上であり、且つ、水溶性または水分散性を有している必要がある。酸価が200mgKOH/g未満であると、乳化能力が十分ではなく、重合安定性が不良となり、凝集物が生成し、成膜組成物の貯蔵安定性が低い。
【0022】
末端アルキル基含有重合体の分子量については、特に限定はないが、好ましくは300〜7000、さらに好ましくは400〜4000である。分子量が上記範囲外にあると、乳化重合時の重合安定性が低下することがある。
末端アルキル基含有重合体の合成に用いられる不飽和カルボン酸は、分子内に、カルボキシル基および/またはその塩と重合性不飽和基とを有する化合物であれば、特に限定はない。不飽和カルボン酸としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の1価不飽和カルボン酸およびその塩;マレイン酸、フマル酸等の2価不飽和カルボン酸、そのエステルおよびその塩等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0023】
不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合させることにより、得られる末端アルキル基含有重合体には、カルボキシル基が導入され、親水性が付与される。カルボキシル基は、成膜組成物を硬化させる作用も発揮する。
上記単量体成分は、不飽和カルボン酸のみを含んでいてもよいが、不飽和カルボン酸以外の単量体を必要に応じて含んでいてもよい。この単量体は、上記不飽和カルボン酸と共重合可能な化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル形成反応により合成される(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル;(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等とのエステル形成反応により合成されるヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−スルホン酸エチルおよびその塩、ビニルスルホン酸およびその塩、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0024】
単量体成分中に含まれる、不飽和カルボン酸以外の単量体は、末端アルキル基含有重合体の酸価が200mgKOH/g未満とならない範囲で使用される。不飽和カルボン酸以外の単量体は、末端アルキル基含有重合体を用いて乳化して得られる樹脂粒子との相溶性を考慮して、その種類および使用量が決められる。
末端アルキル基含有重合体の合成に用いられるアルキルメルカプタンは、炭素数6〜18であれば、特に限定はなく、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。なお、炭素数5以下のアルキルメルカプタンでは、乳化重合時の重合安定性が低下し、成膜組成物の貯蔵安定性が低下する。
【0025】
アルキルメルカプタンは、分子量調整剤として作用し、重合体の末端にアルキル基を導入するために用いられる。このアルキルメルカプタンの存在下で重合することにより、末端アルキル基含有重合体の分子量を300〜7000の範囲に調整することができるとともに、末端アルキル基含有重合体に界面活性能を付与することができる。
【0026】
アルキルメルカプタンの使用量は、所望の末端アルキル基含有重合体の分子量に基づいて決められ、通常、単量体成分100重量部に対して、2〜300重量部である。
上記単量体成分の重合方法については、特に限定はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の従来公知の種々の重合方法を採用できる。
【0027】
末端アルキル基含有重合体は、油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いて製造してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量については特に限定はなく、末端アルキル基含有重合体を効率よく製造するためには、アルキルメルカプタン1モルに対してラジカル重合開始剤1モル以下が好ましく、0.1モル以下がさらに好ましい。上記重合反応は溶媒を用いて行っても良く、溶媒としては、上記単量体成分、アルキルメルカプタンおよびラジカル重合開始剤を溶解させることができ、重合反応を阻害しないものであれば、特に限定はない。
【0028】
末端アルキル基含有重合体を製造する際の反応温度については、特に限定はなく、50〜150℃が好ましい。また、反応時間は、上記単量体成分、アルキルメルカプタンおよびラジカル重合開始剤の種類等に応じて、適宜設定されるが、1〜8時間が好ましい。
末端アルキル基含有重合体は、十分な界面活性能を有しているが、乳化重合時に、末端アルキル基含有重合体中のカルボキシル基の一部または全部を中和剤で中和して用いると好ましい。カルボキシル基を中和しておくことによって、乳化重合時の重合安定性、および、成膜組成物の貯蔵安定性が高まる。
【0029】
上記中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0030】
末端アルキル基含有重合体および/またはその塩を、乳化重合の乳化剤として使用する場合には、樹脂粒子の原料である上記不飽和単量体が、官能基含有単量体をさらに含むことが好ましい。官能基含有単量体としては、末端アルキル基含有重合体中のカルボキシル基に対して反応性を有する官能基を有する単量体であれば、特に限定はなく、たとえば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体類;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基含有単量体類;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン含有単量体類等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0031】
不飽和単量体中の官能基含有単量体の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。官能基含有単量体の重量割合が0.5重量%未満であると、末端アルキル基含有重合体中のカルボキシル基が未反応の状態で残留し、樹脂粒子の架橋が十分に行われないおそれがあり、被膜の初期乾燥性、耐水性、耐溶剤性および強度等が劣ることがある。他方、官能基含有単量体の重量割合が40重量%を超えると、乳化重合時の重合安定性が低下し、成膜組成物の貯蔵安定性が低下する。
【0032】
乳化重合に用いられる反応性乳化剤としては、末端アルキル基含有重合体および/またはその塩以外に、アリル基、プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基等のラジカル重合性官能基を有するアニオン性またはノニオン性の重合性官能基含有乳化剤を用いることもできる。この重合性官能基含有乳化剤を用いることによって、成膜時の水溶性物質を減らすことができるので耐水性が高まる。アニオン性乳化剤の親水性基としては、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等が挙げられる。アニオン性乳化剤の疎水性基としては、炭素数6〜60のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アリール基等が挙げられる。
【0033】
重合性官能基含有乳化剤としては、たとえば、下記一般式(1)または一般式(2)の化合物を含む、商品名「エレミノールJS−2」(三洋化成社製)
【0034】
【化1】
Figure 0003930618
【0035】
【化2】
Figure 0003930618
【0036】
(但し、Raは水素原子またはメチル基、Rbは置換基を有してもよい炭化水素基またはオキシアルキレン基を有する有機基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n1は0以上の整数、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アミン塩または有機4級アンモニウム塩基である。);
下記一般式(3)または下記一般式(4)の化合物を含む、商品名「ラテムルS−180」(花王社製)
【0037】
【化3】
Figure 0003930618
【0038】
【化4】
Figure 0003930618
【0039】
(但し、Raは水素原子またはメチル基、Rcは置換基を有してもよい炭化水素基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n2は0〜100の整数、M2は1価または2価のカチオンである。);
下記一般式(5)の化合物を含む、商品名「アデカリアソープSE−10N」(旭電化工業社製)
【0040】
【化5】
Figure 0003930618
【0041】
(但し、Raは水素原子またはメチル基、Rdは炭素数8〜24の炭化水素基またはアシル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n2は0〜100の整数、m1は0〜50の整数、M3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アミン塩基である。);
下記一般式(6)の化合物を含む、商品名「アクアロンHS−10」(第一工業製薬社製)
【0042】
【化6】
Figure 0003930618
【0043】
(但し、Reは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、Rfは水素、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、Rgは水素またはプロペニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n3は1〜200の整数、M4はアルカリ金属、アンモニウムまたはアルカノールアミン残基である。);
下記一般式(7)の化合物を含む、商品名「Antox MS−60」(日本乳化剤社製)
【0044】
【化7】
Figure 0003930618
【0045】
(但し、Rh,Riは水素原子または炭素数1〜25のアルキル基、Rj,Rkは炭素数1〜25のアルキル基、ベンジル基またはスチレン基、m2は0〜2の整数、Raは水素原子またはメチル基、A2は炭素数2または3のアルキレン基、n4は1以上の整数、M5はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアミンカチオンである。);
下記一般式(8)の化合物を含む、商品名「RA−1120」(日本乳化剤社製)
【0046】
【化8】
Figure 0003930618
【0047】
(但し、Rlは炭化水素基、A2は炭素数2または3のアルキレン基、n4は1以上の整数、M5はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアミンカチオンである。);
;下記一般式(9)の化合物を含む、商品名「アデカリアソープNE−30」(旭電化工業社製)
【0048】
【化9】
Figure 0003930618
【0049】
(但し、Raは水素原子またはメチル基、Rdは炭素数8〜24の炭化水素基またはアシル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n2は0〜100の整数、m1は0〜50の整数である。);
下記一般式(10)の化合物を含む、商品名「アクアロンRN−50」、「アクアロンRN−30」および「アクアロンRN−20」(第一工業製薬社製)
【0050】
【化10】
Figure 0003930618
【0051】
(但し、Reは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、Rfは水素、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、Rgは水素またはプロペニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、n3は1〜200の整数である。);
下記一般式(11)の化合物を含む、商品名「RMA−506」(日本乳化剤社製)
【0052】
【化11】
Figure 0003930618
【0053】
(但し、Raは水素原子またはメチル基、Rlは炭化水素基、A2は炭素数2または3のアルキレン基、n2は0〜100の整数である。)
等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
乳化重合で用いられるラジカル重合開始剤としては、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;tert−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物;過酸化水素等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。なお、ラジカル重合開始剤の使用量については特に限定はない。ラジカル重合開始剤とともに、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0054】
不飽和単量体を乳化重合して、樹脂粒子を製造する方法については、特に限定はなく、たとえば、以下の(1)〜(3)に挙げる方法があり、これらの方法を折衷したものや、複雑に組み合わせたものでもよい。
(1) 不飽和単量体、乳化剤、および溶媒を反応容器に加えてプリエマルションを作製し、このプリエマルションにラジカル重合開始剤を添加して、乳化重合を行う一括重合方法。
【0055】
(2) あらかじめ、不飽和単量体と乳化剤とを混合してプリエマルションを作製し、このプリエマルションとラジカル重合開始剤とを、反応容器中の溶媒に滴下して、乳化重合を行うプリエマルション滴下法。
(3) 反応容器中に溶媒と乳化剤とを混合しておいて、不飽和単量体とラジカル重合開始剤とを滴下する不飽和単量体滴下法。
【0056】
樹脂粒子の製造は、いわゆるシード重合、コア・シェル重合、パワーフィード重合等の多段重合法等で行ってもよく、この場合は、粒子の異相構造化を行うことができる。
乳化重合を行うに当たっては、分子量調節を目的として、上記した成分以外に、n−ドデシルメルカプタン、ラウリルメチルメルカプタン等の連鎖移動剤とともに乳化重合してもよい。
【0057】
乳化重合温度については、通常、0〜100℃であり、好ましくは40〜95℃である。
乳化重合後に得られる樹脂粒子は、通常は、これを反応混合物から単離することなく、樹脂粒子を含む水分散体のまま取り扱われる。
〔複合微粒子〕
本発明で用いられる複合微粒子は、無機微粒子に有機ポリマーが一体化してなる微粒子であり、被膜の耐汚染性を向上させる作用を発揮し、被膜の光沢を損ないにくい。
【0058】
無機微粒子と有機ポリマーの一体化は、無機微粒子に有機ポリマーが固定されることで達成されても良く、後述するように、有機質部分と無機質部分を有する含珪素ポリマー(P)を加水分解・縮合することで無機微粒子を形成すると同時に有機ポリマーとの一体化を達成しても良い。前記において、固定とは、一時的な接着や付着を意味するのでなく、複合微粒子を溶剤で洗ったときに洗液中に有機ポリマーが検出されないことを意味し、この現象は、有機ポリマーと無機微粒子の間で化学結合が生成していることを強く示唆している。
【0059】
前記無機微粒子は、実質的に無機物からなる微粒子であれば良く、構成する元素の種類を問わないが、無機酸化物が好ましく用いられる。無機微粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕粒状等、任意である。
複合微粒子の平均粒子径は5〜200nmであり、好ましくは5〜100nmである。複合微粒子の平均粒子径が5nm未満であると、複合微粒子の表面エネルギーが高くなり、複合微粒子の凝集が起こりやすくなる。複合微粒子の平均粒子径が200nmを超えると、被膜の透明性が低下する。複合微粒子の粒子径の変動係数(粒子径分布)は、50%以下であり、30%以下が好ましい。複合微粒子の粒子径分布が広すぎると、すなわち、粒子径の変動係数が50%を超えると、被膜表面の凹凸が激しくなり、被膜の平滑性が失われるからである。
【0060】
前記無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。無機酸化物を構成する金属元素としては、たとえば、元素周期律表II〜VI族から選ばれる元素が好ましく、 III〜V族から選ばれる元素がさらに好ましい。その中でも、Si、Al、Ti、Zrから選ばれる元素が特に好ましい。金属元素がSiであるシリカ微粒子は、製造し易く、入手が容易であるので、最も好ましい無機微粒子である。無機酸化物は、その構造中に、有機基や水酸基を含有することがある。これらの基は、後述する原料となる金属化合物(G)に由来する各種の基が残留して含まれたりする。前記有機基とは、たとえば、置換されていてもよい炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。無機微粒子を構成する無機酸化物は、1種のみである必要はなく、2種以上であっても良い。
【0061】
無機微粒子はアルコキシ基を含有することが出来る。アルコキシ基の含有量は、好ましくは複合微粒子1g当たり0.01〜50mmolである。アルコキシ基は無機微粒子の骨格を構成する金属元素に結合したRm O基を示す。ここに、Rm は置換されていてもよいアルキル基であり、Rm O基が複数あるとき、Rm O基は同一であってもよく異なっていてもよい。Rm の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル等が挙げられる。アルコキシ基は、無機微粒子の有機媒体との親和性や有機媒体中での分散性を補足的に向上させる。
【0062】
前記有機ポリマーは、通常は、無機微粒子の表面に存在するが、その一部が無機微粒子の内部に包含されることがある。有機ポリマーの一部が無機微粒子の内部に包含されていると、無機微粒子に適度な柔軟性と靱性を付与することができる。無機微粒子内の有機ポリマーの有無は、たとえば、複合微粒子を500〜700℃で加熱して有機ポリマーを熱分解した後の無機微粒子の比表面積の測定値を、TEM等で測定される無機微粒子の直径より算出された比表面積の理論値と比較することにより、確認することができる。すなわち、無機微粒子内に有機ポリマーを包含している場合は、有機ポリマーの熱分解により無機微粒子内に多数の細孔が生じるため、熱分解後の無機微粒子の比表面積が、無機微粒子の直径から算出される比表面積の理論値よりもかなり大きい値となる。
【0063】
有機ポリマーは、無機微粒子の樹脂内での分散性や有機媒体との親和性の向上に寄与するほか、この有機ポリマー自体がバインダーやマトリックスとして寄与することもある。有機ポリマーの構造は、直鎖状、分枝状、架橋構造等、任意である。有機ポリマーを構成する樹脂の具体例としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体であり、これらをアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等であってもよい。これらのうち、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂等のアクリル単位を含む有機ポリマーは、塗膜形成能を有し、塗料等の被膜形成組成物用途に好適である。上記アクリル単位としては、たとえば、メチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位や、ポリエチレングリコール側鎖等の水酸基を有するアクリレート単位、ポリエチレングリコール側鎖等の水酸基を有するメタクリレート単位等の極性の高い側鎖を有する単位、を挙げることができ、これらの単位は被膜の光沢を損なうことなく、耐汚染性を向上させる。
【0064】
複合微粒子は、有機質部分と無機質部分を有するシロキサン化合物を用いて作製することがあることは前述した。このようなシロキサン化合物としては、有機鎖とポリシロキサン基から構成され、1分子当たり少なくとも1個のポリシロキサン基が結合しており、かつ、前記ポリシロキサン基中に少なくとも1個のSi−OR1 基を含有する構造を有する、後述の含珪素ポリマー(P)が好ましく挙げられる。この場合、有機ポリマーは含珪素ポリマー(P)の有機鎖に由来するものである。
【0065】
有機ポリマーは官能基を有するものであってもよい。官能基がパーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基であると、被膜の耐汚染性が向上するため好ましい。パーフルオロアルキル基の具体例としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基等が挙げられる。パーフルオロアルキル基が、パーフルオロメチル基およびパーフルオロエチル基のうちの少なくとも1種であると、有機ポリマーへの導入が容易であるため好ましい。パーフルオロアルキル基中のフッ素原子の一部は、本発明の効果をそこなわない範囲内で、塩素原子等の他の原子で置換されてもよい。パーフルオロアルキル基は、1種のみでもよく、2種以上が適宜組み合わされてもよい。シリコーン基の具体例としては、ジメチルシリコーン基、ジフェニルシリコーン基、メチルフェニルシリコーン基、ジエチルシリコーン基、メチルエチルシリコーン基等が挙げられる。シリコーン基が、ジメチルシリコーン基およびジフェニルシリコーン基のうちの少なくとも1種であると、有機ポリマーへの導入が容易であるため好ましい。シリコーン基は、1種のみでもよく、2種以上が適宜組み合わされてもよい。パーフルオロアルキル基およびシリコーン基の分子量は、特に限定されないが、有機ポリマーへの導入を容易とすると言う観点からは、50,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましい。有機ポリマーの主鎖とパーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基との結合形態は、特に限定されないが、これらの基と有機ポリマーの主鎖とが直接に結合したものの他に、エステル基(−COO−)またはエーテル基(−O−)等を介して結合したものでもよい。有機ポリマー中のパーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基の含有量は、特に限定されないが、全体重量の0.01〜50%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。含有量が0.01%未満であると、被膜形成時に複合微粒子の被膜表面への移行が起こりにくい。他方、50%を超えると、被膜表面から複合微粒子が抜け落ち、被膜の光沢および耐汚染性が低下する恐れがある。
【0066】
有機ポリマーの平均分子量は、特に限定されないが、有機溶剤に対する溶解性や複合微粒子の製造し易さ等を考慮すると、200,000以下であるのが好ましく、50,000以下であるのがさらに好ましい。
複合微粒子における無機微粒子と有機ポリマーの相互割合は、特に制限されないが、無機微粒子が有する硬度、耐熱性などの特性をより効果的に発揮させるためには無機微粒子の含有率をできるだけ高めるのが有利であり、このような観点から無機微粒子の含有率は50〜99.5重量%であることが好ましい。
【0067】
複合微粒子は任意の方法で製造することができるが、含珪素ポリマー(P)を使用する下記の製造方法はその好ましい一例である。
この好ましい製造方法は、有機鎖とポリシロキサン基から構成され、1分子中に少なくとも1個のSi−OR1 基(R1 は水素原子、および、置換されていても良いアルキル基、アシル基から選ばれる少なくとも一種の基であり、R1 が1分子中に複数ある場合、複数のR1 は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)を有する含珪素ポリマー(P)を、単独で、または加水分解可能な金属化合物(G)とともに、加水分解・縮合する方法である。含珪素ポリマー(P)と加水分解可能な金属化合物(G)の詳しい説明は後述する。
【0068】
上記加水分解・縮合の方法は、特に限定されないが、反応を容易に行えるという理由から、溶液中で行うのが好ましい。ここでいう溶液とは、有機溶剤および/または水を媒体とする液である。有機溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。これらの中でも、水と溶解可能なアルコール類、ケトン類、エーテル類を用いることが好ましい。
【0069】
上記の加水分解・縮合は無触媒でも行うことができるが、必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の1種または2種以上を用いることができる。酸性触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、アンモニア;トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基性触媒を用いると、加水分解・縮合によって得られる無機微粒子がより強固な骨格を有するようになるため、塩基性触媒は酸性触媒よりも好ましい。
【0070】
加水分解・縮合の際の原料組成は、特に限定されるものではないが、含珪素ポリマー(P)、金属化合物(G)、有機溶剤、水または触媒等よりなる原料組成物全量に対する各原料の配合割合は以下のごとくである。含珪素ポリマー(P)は、0.1〜80重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましい。金属化合物(G)は、0〜80重量%が好ましく、0〜50重量%がより好ましい。有機溶剤は、0〜99.9重量%が好ましく、20〜99重量%がより好ましい。触媒は、0〜20重量%が好ましく、0〜10重量%がより好ましい。加水分解・縮合に用いる水の量は、加水分解・縮合によって含珪素ポリマー(P)または含珪素ポリマー(P)と金属化合物(G)が粒子化するに足る量であれば、特に限定されないが、加水分解・縮合をより十分に行い、粒子の骨格をより強固にするには、水の量は多ければ多いほど良い。具体的には、加水分解・縮合する加水分解性基に対する水のモル比は、0.1以上であり、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上である。
【0071】
なお、複合微粒子とその製造方法の詳細は、特開平7−178335号および特願平8−147826号に記載されている。
含珪素ポリマー(P)において、有機鎖とポリシロキサン基はSi−C結合、Si−O−C結合等を介して化学結合しているが、この結合部位は、加水分解を受けにくいこと交換反応等の好ましくない反応をも受けにくいことの理由から、Si−C結合で構成されていることが好ましい。含珪素ポリマー(P)としては、有機溶剤や水に溶解するものであればその具体的構造は限定されておらず、たとえば、ポリシロキサン基が有機鎖にグラフトしたポリマー、ポリシロキサン基が有機鎖の片末端もしくは両末端に結合したポリマー、ポリシロキサン基をコアとしてこのコアに複数の有機鎖(複数の有機鎖は同じであってもよく、異なっていてもよい)が直鎖状もしくは分枝状に結合したポリマー等が挙げられる。ここで有機鎖とは、含珪素ポリマー(P)において、ポリシロキサン基以外の部分を指す。有機鎖中の主鎖は、炭素を主体とするものであり、主鎖結合にあずかる炭素原子が主鎖の50〜100モル%を占め、残部がN、O、S、Si、P等の元素からなるものが入手の容易さ等の理由で好ましい。
【0072】
有機鎖を構成する樹脂の具体例としては、複合微粒子を構成する有機ポリマーについて前述したものが挙げられる。
ポリシロキサン基とは、2個以上のSi原子がポリシロキサン結合(Si−O−Si結合)により直鎖状または分枝状に連結してなる基である。このポリシロキサン基の有するSi原子の個数は、特に限定されるわけではないが、前述したR1 O基を多く含有できる点で、ポリシロキサン基1個当たりの平均で、4個以上が好ましく、11個以上がさらに好ましい。Si−OR1 基中のR1 O基は、加水分解および/または縮合可能な官能基であって、含珪素ポリマー(P)1分子当たり平均5個以上あるのが好ましく、20個以上あるのがより好ましい。R1 O基の個数が多いほど、加水分解・縮合する反応点が増加し、より強固な骨格を有する無機微粒子が得られる。R1 に当たるアルキル基、アシル基の炭素数は、特に限定されないが、R1 O基の加水分解速度が速いという理由で、1〜5が好ましい。炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のアシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。置換されているアルキル基、アシル基としては、上記アルキル基、アシル基の有する水素原子の1個または2個以上が、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基;塩素、臭素等のハロゲン等で置換されてなる基が挙げられる。R1 としては、R1 O基の加水分解・縮合速度がさらに速くなるという理由から、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0073】
ポリシロキサン基を具体的に例示すると、ポリメチルメトキシシロキサン基、ポリエチルメトキシシロキサン基、ポリメチルエトキシシロキサン基、ポリエチルエトキシシロキサン基、ポリフェニルメトキシシロキサン基、ポリフェニルエトキシシロキサン基等が挙げられる。ポリシロキサン基中のすべてのSi原子は、有機鎖との結合かポリシロキサン結合(Si−O−Si結合)にあずかるほかはすべてR1 O基とのみ結合していることが好ましい。Si原子のイオン性がより高まり、その結果、R1 O基の加水分解・縮合速度がより速くなるとともに、含珪素ポリマー(P)中の反応点が増加し、より強固な骨格を有する微粒子が得られるからである。このようなポリシロキサン基を具体的に例示すると、ポリジメトキシシロキサン基、ポリジエトキシシロキサン基、ポリジiso−プロポキシシロキサン基、ポリn−ブトキシシロキサン基等が挙げられる。
【0074】
含珪素ポリマー(P)の平均分子量は、特に限定されないが、200,000以下であるのが好ましく、50,000以下であるのがさらに好ましい。分子量が高すぎると、有機溶剤に溶解しない場合があり好ましくない。
含珪素ポリマー(P)は公知の方法により製造できる。その例として下記の方法が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0075】
(1) 二重結合基やメルカプト基を有するシランカップリング剤の存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル(共)重合した後、得られた(共)重合体と後述するシラン化合物および/またはその誘導体を共加水分解・縮合してマクロポリマー(以下、重合性ポリシロキサンと略す)を得る方法。
(2) 上述のようにして得た重合性ポリシロキサンの存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル(共)重合する方法。
【0076】
(3) 二重結合基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等の反応性基を有するシランカップリング剤に、上記反応性基と反応する基を有するポリマーを反応させ、得られた反応物と後述するシラン化合物および/またはその誘導体を共加水分解・縮合する方法。
(4) 上記反応性基を有するシランカップリング剤とシラン化合物および/またはその誘導体を共加水分解・縮合した後、得られた反応物を、上記反応性基と反応する基を有するポリマーを反応させる方法。
【0077】
上記の4方法のうちでは方法(2)が好ましい。より容易に含珪素ポリマー(P)が得られるからである。
含珪素ポリマー(P)には、▲1▼パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基、および、▲2▼パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基を導入することができる官能基、のうちの少なくとも1つの基をさらに含んでいることができる。基▲1▼の具体例としては複合微粒子の有機ポリマーで説明した基を挙げることができる。基▲2▼の具体例としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、オキサゾリン基、アルデヒド基等の官能基を挙げることができる。含珪素ポリマー(P)が官能基▲2▼を含む場合は、この官能基と反応する基とパーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基とを含有する化合物を、上記(1)〜(4)の方法の実施過程で加水分解・縮合物と反応させることによって、パーフルオロアルキル基および/またはシリコーン基を含珪素ポリマー(P)に導入することができる。官能基▲2▼と反応する基は、官能基の種類によって異なるが、官能基が水酸基である場合にはオキサゾリン基、カルボキシル基およびエポキシ基であり、官能基がカルボキシル基である場合にはオキサゾリン基、水酸基、エポキシ基およびメルカプト基であり、官能基がエポキシ基である場合にはオキサゾリン基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基およびメルカプト基であり、官能基がアミノ基である場合にはオキサゾリン基、エポキシ基およびビニル基であり、官能基がビニル基である場合にはアミノ基であり、官能基がオキサゾリン基である場合にはエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基およびメルカプト基であり、官能基がメルカプト基である場合にはオキサゾリン基、エポキシ基、カルボキシル基およびエポキシ基である。
【0078】
シラン化合物の具体例としては、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラiso−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。これらの誘導体としては、これらの加水分解・縮合物等が挙げられる。上記のうちでは、アルコキシシラン化合物が原料として入手し易く好ましい。シラン化合物および/またはその誘導体がSi(OR24 およびその誘導体(R2 については後述する。)であると、加水分解・縮合速度が速く、より強固な骨格を有する複合微粒子を得させる。
【0079】
金属化合物(G)は、加水分解、さらに縮合することにより3次元的にネットワークを形成することができる。このような金属化合物(G)を具体的に例示すると、金属ハロゲン化物、硝酸金属塩、硫酸金属塩、金属アンモニウム塩、有機金属化合物、アルコキシ金属化合物またはこれらの誘導体等が挙げられる。金属化合物(G)は1種のみまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0080】
金属化合物(G)としては、金属元素が周期律表の III族、IV族、V族の各元素から選ばれることが好ましい。中でも、下記の一般式(12)
(R2O)mMR3 n-m (12)
(一般式(12)中、MはSi、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれる、少なくとも1種の金属元素、R2 は水素原子または置換されていても良いアルキル基、アシル基から選ばれる少なくとも一種の基、R3 は置換されていても良いアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる少なくとも1種の基、nは金属元素Mの価数、mは1〜nの整数、R2 および/またはR3 が1分子中に複数ある場合、複数のR2 および/またはR3 は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)で示される化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の金属化合物がより好ましい。前記R2 については、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アシル基としてはアセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。R2 としては水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。これはR2 O基の加水分解・縮合速度が速いという理由による。R3 については、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル等基が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル基等が挙げられる。置換されているアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基とは、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の有する水素原子の1個または2個以上が、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、エポキシ基、ハロゲン等の官能基等で置換された基を示す。一般式(12)で示される金属化合物(G)の具体例としては、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラiso−プロキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリiso−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラiso−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシロキシ)チタン、ジエキトシジブトキシチタン、iso−プロキシチタントリオクタレート、ジiso−プロポキシチタンジアクリレート、トリブトキシチタンステアレート、ジルコニウムアセテート、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラiso−プロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。一般式(12)で示される金属化合物(G)の誘導体の具体例としては、ジiso−プロポキシチタンジアセチルアセトネート、オキシチタンジアセチルアセトネート、ジブトキシチタンビストリエタノールアミネート、ジヒドロキシチタンジラクチート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブトキシド、トリエタノールアミンジルコニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。工業的に入手し易く、製造装置および最終製品の諸物性に悪影響を及ぼすハロゲン等を含んでいない等の理由から、一般式(12)においてMがSiであるシラン化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
〔成膜用組成物およびその用途〕
本発明の成膜用組成物は、上記樹脂粒子および複合微粒子と溶媒とを含み、複合微粒子と樹脂粒子とは、水を必須成分とする溶媒中に分散している。このため、成膜用組成物は引火性や溶剤毒性の問題が生じにくい。溶媒は、適宜、上記問題が生じない範囲で、複合微粒子の項で説明した有機溶剤等を含むものでもよい。
【0081】
成膜用組成物中の樹脂粒子および複合微粒子の配合比率(固形分比率)については、特に限定はないが、樹脂粒子/複合微粒子の重量比は、好ましくは99/1〜0.5/99.5、さらに好ましくは98/2〜90/10である。重量比が0.5/99.5未満であると、被膜の成膜性および光沢が低下することがある。他方、重量比が99/1を超えると、被膜の耐汚染性および表面硬度が低下するおそれがある。
【0082】
成膜用組成物中の溶媒の配合比率については、特に限定はないが、樹脂粒子と複合微粒子との合計量(固形分の合計量)100重量部に対して、好ましくは50〜2000重量部、さらに好ましくは100〜500重量部である。溶媒の配合比率が50重量部未満であると、粘度が高く、取扱いにくくなる。他方、溶媒の配合比率が2000重量部を超えると、成膜性が低下することがある。
【0083】
上記溶媒中の水の割合については、特に限定はないが、好ましくは、溶媒全体の50〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。水の配合割合が50重量%未満であると、引火性や溶剤毒性の問題が生じるおそれがある。
成膜用組成物は、成膜性を向上させるために、水溶性ポリマーをさらに含むものでもよい。水溶性ポリマーとしては、たとえば、前述のアクリル系カルボン酸および/または水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを必須として含む単量体成分を重合して得られるポリマーや、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の水溶性を有するポリマーを挙げることができる。
【0084】
水溶性ポリマーの分子量については、特に限定はないが、好ましくは1,000〜500,000であり、さらに好ましくは5,000〜100,000である。また、その水酸基価についても特に限定はないが、好ましくは5〜300であり、さらに好ましくは10〜200である。
成膜用組成物中の水溶性ポリマーの配合割合については、特に限定はないが、水溶性ポリマー/樹脂粒子の重量比は、好ましくは2以下、さらに好ましくは0.3以下である。重量比が2を超えると、被膜の耐水性が低下するおそれがある。
【0085】
成膜用組成物は、成膜性を向上させるために、成膜助剤をさらに含むものでもよい。成膜助剤を加えることにより、成膜用組成物が成膜することのできる最低温度、すなわち、最低成膜温度を低下させることができる。
成膜助剤としては、たとえば、ブチロセロソルブ(ユニオンカーバイド社製)、ブチルカルビトール(ユニオンカーバイド社製)、2,4,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール−イソブチレート(商品名:テキサノール、イーストマンケミカル社製)、2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール−モノイソブチレート(商品名:CS−12、チッソ社製)等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。
【0086】
成膜用組成物中の成膜助剤の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは、成膜用組成物全体の20重量%以下である。
成膜用組成物を実際に乾燥して被膜を得るための乾燥温度は、最低成膜温度よりも20℃以上高く設定するのが好ましく、均一かつ強靱な被膜が得られるようになる。最低成膜温度が乾燥温度よりも低く、その温度差が20℃未満であると、被膜は得られるが、強靱で十分な強度の被膜とはならないおそれがある。
【0087】
成膜用組成物の製造方法については特に限定はなく、たとえば、複合微粒子が分散してなる分散体と、乳化重合によって得られた樹脂粒子を含む水分散体とを混合する方法を挙げることができる。
本発明の成膜用組成物は、各種用途に使用することができ、たとえば、塗料として使用される。
【0088】
本発明にかかる塗料は、上記成膜用組成物を必須成分とする。塗料として用いられる樹脂粒子としては、アクリル系単量体を必須とする不飽和単量体を乳化重合して得られる粒子が好ましい。
本発明の塗料は、以下の1種以上の添加剤をさらに含むものでもよい。添加剤としては、特に制限はなく、たとえば、塗料用に一般に使用される、各種レベリング剤;黄鉛、モリブデートオレンジ、紺青、カドミウム系顔料、チタン白、複合酸化物顔料、透明酸化鉄、カーボンブラック、環式高級顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、染付顔料、顔料中間体等の顔料;顔料分散剤;紫外線吸収剤;抗酸化剤;粘性改質剤;耐光安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;充填剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防食剤;防錆剤;乳化剤;鋳型脱型剤;蛍光性増白剤;有機防炎剤;無機防炎剤;滴下防止剤;溶融流改質剤;静電防止剤を挙げることができる。上記の適当な添加剤は、カナダ国特許第1,190,038号明細書に例示されている。
【0089】
本発明の塗料は、たとえば、アルミニウム、ステンレス、トタン、ブリキ、鋼等の金属素材;コンクリート、モルタル、スレート、ガラス等の無機素材;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、木材、紙等の有機素材等の表面に被膜を形成することができ、建物の外装や内装用塗料、屋根用や床用塗料として好ましく用いられる。塗料の塗布は、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装等の常法によって行うことができる。
【0090】
本発明の塗料より得られる被膜は、必要に応じて、焼き付け乾燥が行われる。たとえば、室温〜300℃の範囲の温度で0.2分間以上加熱することにより被膜を形成するものであり、この被膜は透明で光沢のある優れた被膜である。さらに、塗料は、プレコート、ポストコートのいずれでも使用することができる。
本発明の塗料は、水性床光沢組成物として使用でき、床材の光沢を高め、床材の表面に傷がつきにくくすることができる。
【0091】
水性床光沢組成物は、以下の1種以上の添加剤をさらに含むものでもよい。添加剤としては、特に制限はなく、たとえば、フロアポリッシュ用に一般に使用される各種ワックス、アルカリ可溶性樹脂、湿潤剤、乳化剤、分散剤、多価金属化合物等を挙げることができる。
ワックスとしては、ミツワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の天然または合成のワックスを挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。これらのワックスは、通常、イオン性または非イオン性の乳化剤で乳化分散して使用され、被膜に加えられる衝撃を緩和し、傷の自己補修性を発揮させる作用がある。
【0092】
アルカリ可溶性樹脂は、レベリングを向上させ、剥離性を向上させる働きがある。アルカリ可溶性樹脂としては、スチレン−マレイン酸共重合体樹脂、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
湿潤剤、乳化剤および分散剤は、水性床光沢組成物の分散安定性や、使用時の組成物と床面との濡れ性を改良する働きがあり、たとえば、炭素数12〜18の高級脂肪酸のアルカリ金属塩およびアミン塩や、非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0093】
多価金属化合物は、架橋効果によって、耐ブラックヒールマーク性および耐スカッフ性等を向上させる作用がある。多価金属化合物としては、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の酸化物を、塩酸、炭酸、酢酸等の酸に溶解させて得られる化合物や、アルカリで中和した化合物等を挙げることができる。
【0094】
水性床光沢組成物中に含まれる各成分の配合割合については、特に限定はなく、水性床光沢組成物中、樹脂粒子30〜85重量%、複合微粒子30〜85重量%、ワックス2〜20重量%、アルカリ可溶性樹脂0〜30重量%、湿潤剤、乳化剤および分散剤0.01〜10重量%、多価金属化合物0.01〜10重量%、溶媒20〜70重量%であると好ましい。
【0095】
【実施例】
以下に、この発明の実施例を比較例と合わせて示すが実施例の説明に先立って、複合微粒子を含む複合微粒子分散体および乳化重合粒子を含む水分散体の製造例をその準備段階も含めて説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0096】
以下の準備段階、製造例、実施例、比較例において、「部」は「重量部」を示す。
−重合性ポリシロキサン(S−1)の合成−
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19g、メタノール30.0g、アンバーリスト15(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の陽イオン交換樹脂)5.0gを仕込み、この仕込物を、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を一旦、室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下に80℃まで2時間かけて昇温し、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。反応混合物を、さらに、圧力200mmHg、温度90℃で、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持し、反応をさらに進行させた。反応混合物を再び、室温まで冷却し、反応混合物からアンバーリスト15を濾別することによって、数平均分子量が1800の重合性ポリシロキサン(S−1)を得た。
【0097】
−含珪素ポリマー(P−1)の合成−
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管およびN2 ガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤としてメタノール520gを仕込み、N2 ガスを導入し、攪拌しながらフラスコ内温を65℃まで加熱した。ついで重合性ポリシロキサン(S−1)28g、メチルメタクリレート56g、アクリル酸182g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.4gを混合した溶液を滴下口より仕込物に2時間かけて滴下した。上記溶液を滴下後も、反応混合物を同温度で1時間攪拌続けた後、反応混合物に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.7gを30分おきに2回添加し、反応混合物をさらに2時間加熱して共重合を行い、数平均分子量が9,000の含珪素ポリマー(P−1)がメタノールに溶解した溶液を得た。得られた溶液に含まれる含珪素ポリマー(P−1)の固形分は35.0%であった。
【0098】
−含珪素ポリマー(P−2)〜(P−3)の合成−
上記含珪素ポリマー(P−1)の合成で、仕込み組成を表1に示す組成に変更した以外は同様に操作して、含珪素ポリマー(P−2)〜(P−3)がメタノールに溶解した溶液を得た。得られた溶液に含まれる含珪素ポリマー(P−2)〜(P−3)の数平均分子量および固形分を表1に示す。
【0099】
【表1】
Figure 0003930618
【0100】
上記のようにして得られた重合性ポリシロキサン(S−1)と含珪素ポリマー(P−1)〜(P−3)の数平均分子量は、下記の方法により分析した。
数平均分子量測定方法
重合性ポリシロキサンと含珪素ポリマーについてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の数平均分子量を下記条件において測定した。
【0101】
試料の調整:テトラヒドロフランを溶媒として使用し、重合性ポリシロキサン、または有機ポリマー(P)0.05gを1gのテトラヒドロフランに溶解して試料とした。
装置:東ソー株式会社製の高速GPC装置HLC−8020を用いた。
カラム:東ソー株式会社製のG3000H、G2000HおよびGMHXLを用いた。
【0102】
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製のTSK標準ポリスチレンを用いた。
測定条件:測定温度35℃、流量1ml/分で測定した。
−複合微粒子分散体(Z−1)の製造−
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イおよび滴下口ロ)、温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、メタノール290gを仕込み、内温を20℃に調整した。ついでこの仕込物を攪拌しながら、含珪素ポリマー(P−1)のメタノール溶液9g、テトラメトキシシラン18g、メタノール37gの混合液(原料液A)を滴下口イから、25%アンモニア水17g、メタノール17g、水56gの混合液(原料液B)を滴下口ロから、30分間かけて仕込物に滴下した。滴下後、反応混合物を同温度で2時間攪拌し、反応混合物に水150gを加えた後、フラスコ内温を100℃に調整し、反応混合物の固形分濃度が20%となるまで、アンモニア、メタノールおよび水を留去して、複合微粒子が水中に分散した複合微粒子分散体(Z−1)を得た。得られた分散体の複合微粒子濃度、複合微粒子中の無機物含有量、複合微粒子の平均粒子径と変動係数、複合微粒子中のアルコキシ基含有量、経時安定性を表2に示す。
【0103】
−複合微粒子分散体(Z−2)の製造−
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イおよび滴下口ロ)、温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン278g、メタノール69gを仕込み、内温を20℃に調整した。ついでこの仕込物を攪拌しながら、含珪素ポリマー(P−2)のメタノール溶液37g、テトラメトキシシラン71gの混合液(原料液A)を滴下口イから、25%アンモニア水74g、メタノール74g、水221gの混合液(原料液B)を滴下口ロから、1時間かけて仕込物に滴下した。滴下後、反応混合物を同温度で2時間攪拌し、反応混合物に水100gを加えた後、フラスコ内温を100℃に調整し、反応混合物の固形分濃度が20%となるまで、アンモニア、テトラヒドロフラン、メタノールおよび水を留去して、複合微粒子が水中に分散した複合微粒子分散体(Z−2)を得た。得られた分散体の複合微粒子濃度、複合微粒子中の無機物含有量、複合微粒子の平均粒子径と変動係数、複合微粒子中のアルコキシ基含有量、経時安定性を表2に示す。
【0104】
−複合微粒子分散体(Z−3)の製造−
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イおよび滴下口ロ)、温度計を備えた1リットルの四つ口フラスコに、25%アンモニア水168g、メタノール294gを仕込み、内温を20℃に調整した。ついでこの仕込物を攪拌しながら、含珪素ポリマー(P−3)のメタノール溶液40g、水100g、メタノール20gの混合液(原料液A)を滴下口イから、テトラメトキシシラン72g、メタノール145gの混合液(原料液B)を滴下口ロから、1時間かけて仕込物に滴下した。滴下後、反応混合物を同温度で2時間攪拌し、反応混合物に水100gを加えた後、フラスコ内温を100℃に調整し、反応混合物の固形分濃度が20%となるまで、アンモニア、メタノールおよび水を留去して、複合微粒子が水中に分散した複合微粒子分散体(Z−3)を得た。得られた分散体の複合微粒子濃度、複合微粒子中の無機物含有量、複合微粒子の平均粒子径と変動係数、複合微粒子中のアルコキシ基含有量、経時安定性を表2に示す。
【0105】
【表2】
Figure 0003930618
【0106】
上記で得られた複合微粒子分散体について、得られた分散体の複合微粒子濃度、複合微粒子中の無機物含有量、複合微粒子の平均粒子径と変動係数、複合微粒子中のアルコキシ基含有量、経時安定性は下記の方法で分析、評価した。
複合微粒子濃度
複合微粒子分散体を100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥し、下記の式より求めた。
【0107】
複合微粒子濃度(重量%)=100×D/W
(ここで、D:乾燥後の複合微粒子の重量(g)
W:乾燥前の複合微粒子分散体の重量(g))
複合微粒子中の無機物含有量
複合微粒子分散体を100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行い、灰分を複合微粒子中の無機物含有量とした。
平均粒子径および変動係数
動的光散乱測定法で、下記の装置を用いて、23℃で測定した。測定した平均粒子径は、体積平均粒子径である。
【0108】
装置:サブミクロン粒子径アナライザー(野崎産業株式会社製、NICOMPMODEL 370)
測定試料:複合微粒子濃度が0.1〜2.0重量%のテトラヒドロフランに分散させた複合微粒子分散体(複合微粒子中の有機ポリマーが、テトラヒドロフランに溶けない場合は有機ポリマーが溶解する溶媒に分散させた分散体)。
【0109】
変動係数:変動係数は、下式で求められる。
Figure 0003930618
複合微粒子中のアルコキシ基含有量
複合微粒子分散体を、100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥したもの5gを、アセトン50g、2N−NaOH水溶液50gの混合物に分散させ、室温で24時間攪拌した。その後、ガスクロマトグラフ装置で液中のアルコールを定量し、複合微粒子のアルコキシ基含有量を算出した。
経時安定性
得られた分散体をガードナー粘度チューブ中に密閉し、50℃で保存した。1ヶ月後、粒子の凝集、沈降や粘度の上昇が認められないものを○とした。
【0110】
−水分散体(B−1)の製造−
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのセパラブルフラスコに、純水65g、乳化剤として20%アクアロンHS−10(第一工業製薬社製)水溶液6.7gおよび20%アクアロンRN−20(第一工業製薬社製)水溶液3.3gを仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら、仕込物を攪拌し、75℃に昇温した。
【0111】
次に、この仕込み物に、2−エチルヘキシルアクリレート15g、グリシジルメタクリレート1g、アクリル酸1g、ヒドロキシエチルメタクリレート1g、スチレン15g、n−ブチルメタクリレート12g、メチルメタクリレート5gからなる重合性単量体成分(A)のうちの10%を添加した。残りの重合性単量体成分(A)に20%アクアロンHS−10水溶液3.3g、20%アクアロンRN−20水溶液1.7gおよび純水45gを加え、プリエマルション混合物(A)とした。続いて、5%過硫酸アンモニウム水溶液0.6gをフラスコに添加し、重合反応を開始した。その10分後から、プリエマルション混合物(A)および5%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを、フラスコ内温を75〜80℃の範囲に保持しながら80分間かけて反応混合物に滴下し、乳化重合させた。滴下終了後、反応混合物を30分間攪拌しながら熟成した。
【0112】
2−エチルヘキシルアクリレート14g、グリシジルメタクリレート1g、ヒドロキシエチルメタクリレート1g、スチレン14g、n−ブチルメタクリレート5g、メチルメタクリレート15gからなる重合性単量体成分(B)に、20%アクアロンHS−10水溶液5g、20%アクアロンRN−20水溶液2.5gおよび純水65gを加え、プリエマルション混合物(B)とした。プリエマルション混合物(B)、5%過硫酸アンモニウム水溶液3.0gおよび2.5炭酸水素ナトリウム水溶液2.4gを、100分間かけて、上記反応混合物に滴下した。滴下中はフラスコ内温を75〜80℃の範囲に保持して乳化重合させた。滴下終了後、反応混合物を1時間攪拌しながら、熟成し、40℃までフラスコ内温を下げ、さらに25%アンモニア水0.8gを反応混合物に加え、30分間攪拌して、固形分45%、粘度1220mPa・sの乳化重合粒子を含んだ水分散体(B−1)を得た。
【0113】
−水分散体(B−2)の製造−
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのセパラブルフラスコに、脱イオン水70g、乳化剤としてノニポール200(商品名:三洋化成工業社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)1.5gおよびニューポールPE−68(商品名:三洋化成工業社製、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコール−ポリオキシエチレングリコール・トリブロック共重合体)0.3gを仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、仕込物を65℃に昇温した。2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール5g、アクリル酸1g、メチルメタクリレート39g、n−ブチルメタクリレート25g、2−エチルヘキシルアクリレート30gからなる単量体成分100gと、3gのノニポール200と、0.8gのニューポールPE−68とを脱イオン水25gに添加したプリエマルション混合物を滴下ロートに予め入れておき、2時間かけて仕込物に滴下した。プリエマルション混合物の滴下中、5%過硫酸アンモニウム水溶液6gと5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3gとからなるレドックス系開始剤を分割して10分間毎に仕込物に添加した。滴下終了後、反応混合物を窒素気流下で攪拌しながら、65℃で1時間、反応混合物を熟成し、乳化重合反応を終了させた。得られた重合反応液を冷却し、25%アンモニア水0.5gを加えて、中和し、固形分50%、粘度1600mPa・sの乳化重合粒子を含んだ水分散体(B−2)を得た。
【0114】
−水分散体(B−3)の製造−
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール180gを仕込み、窒素ガス気流下攪拌しながら、81℃に昇温し、10分間還流させておいた。次いで、アクリル酸142g、アクリル酸ラウリルトリデシル16.6g、スチレン6.2g、n−ドデシルメルカプタン28g、メチルアルコール5.5gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.11gからなる混合物を滴下ロートに入れた。フラスコ内温を81℃に保持しながら、仕込物に3時間間かけて、上記混合物を滴下して重合反応を行った。滴下終了後、反応液を窒素ガス気流下で攪拌、還流させながら、1時間熟成した。反応液中の固形分は白色粉末状で、固形分含有量は50.6%であった。この固形分は、下記一般式に代表される構造を有した末端アルキル基含有重合体を有し、酸価474、数平均分子量1500であった。
【0115】
【化12】
Figure 0003930618
【0116】
(但し、Rn はC1225またはC1327であり、Ro はC65 である。)
次に、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコを別に用意し、このセパラブルフラスコに、純水70gと上記末端アルキル基含有重合体を含む反応液1.4gを仕込み、25%アンモニア水0.6gを添加して、この反応液を中和し、乳化剤液を得た。この乳化剤液に窒素ガス気流下で攪拌しながら65℃に緩やかに昇温した。シクロヘキシルメタクリレート40g、アクリル酸1g、メチルメタクリレート14g、tert−ブチルメタクリレート22.1g、2−エチルヘキシルアクリレート10g、グリシジルメタクリレート5gからなる単量体成分と、上記末端アルキル基含有重合体を含む反応液4.2gに25%アンモニア水1.8gを添加して中和した乳化剤液6gと、純水24.5gとを混合したプレエマルション混合物を、滴下ロートに入れた。フラスコ内温を65℃に保ちながら、プレエマルション混合物のうちの10%を、フラスコに滴下した。滴下後、5%2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩水溶液4gを反応混合物に添加し、窒素気流下、65℃で10分間攪拌した。その後、フラスコ内温を65〜70℃に保ちながら、残りのプレエマルション混合物を3時間かけて反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を窒素気流下で攪拌しながら、65〜70℃で1時間熟成した。乳化重合反応終了後、得られた反応液を冷却して、固形分50%、粘度1800mPa・sの乳化重合粒子を含んだ水分散体(B−3)を得た。
【0117】
−実施例1〜12および比較例1〜9−
上記で製造した複合微粒子分散体および水分散体を、表3および表4に示す配合で混合し、組成物(A1)〜(A12)および組成物(B1)〜(B9)を得た。
【0118】
【表3】
Figure 0003930618
【0119】
【表4】
Figure 0003930618
【0120】
ユーダブルE−11:日本触媒社製、ハルスハイブリッド樹脂エマルション、不揮発分50%。
アクリセットEMN210E:日本触媒社製、アクリル樹脂エマルション、不揮発分50%。
アロロン76:日本触媒社製、水分散型樹脂、不揮発分50%。
サンモールSW−131:三洋化成社製、シリコンエマルション、不揮発分31%。
比較分散体A:触媒化成社製、スノーテックスC、不揮発分30%。
比較分散体B:デュポン社製、ルドックスAM、不揮発分30%。
エポクロスWS300:日本触媒社製、水溶性樹脂。
【0121】
上記で得られた組成物(A1)〜(A12)および組成物(B1)〜(B9)を原料として、下記の配合で白塗料およびクリヤ塗料を調製し、評価した。
白塗料の調製および評価
上記で得られた組成物を用い、それぞれ、以下の配合で混合した。
Figure 0003930618
さらに、クレーブス単粘度計KU−1(ブルックフィールド社製)で測定した粘度が、80〜95(25℃)になるように、粘度調整剤(旭電化社製、アデカノールUH−420)を用いて粘度を調整して、それぞれ、白塗料(A1)〜(A12)および白塗料(B1)〜(B9)を調製した。得られた白塗料について、60度光沢、塗膜汚染性A、付着水乾燥性および塗膜汚染性B、塗膜汚染性Cを下記の方法により測定、評価した。結果を表5および表6に示す。なお、白塗料(B8)および(B9)は、粘度調整中に凝集し、評価できなかった。
【0122】
【表5】
Figure 0003930618
【0123】
【表6】
Figure 0003930618
【0124】
〔60度光沢〕
塗料を隙間150μmのB形フィルムアプリケーターを用いてガラス板上に塗工し、23℃、65%Rh条件下で7日間乾燥した。得られた被膜をJIS K5400の7.6に規定されている鏡面光沢度を測定角度60度で測定した。数値が大きいほど、光沢がよい。
【0125】
〔塗膜汚染性A〕
アルミニウム板上に塗料を乾燥膜厚約80μmとなるように塗布し、23℃、65%Rh条件下で7日間乾燥した。得られた被膜を0.05%カーボン水溶液に、攪拌しながら浸漬した後、水洗し、塗膜への汚れの付着の程度を観察し、下記評価基準で評価した。
【0126】
◎:付着なし ○:殆ど付着なし △:やや付着あり ×:付着あり
〔付着水乾燥性および塗膜汚染性B〕
アルミニウム板上に塗料を乾燥膜厚約80μmとなるように塗布し、23℃、65%Rh条件下で7日間乾燥した。得られた被膜を垂直面にたて、25℃で水道水を霧吹きでスプレーし、付着した水滴の乾燥度等を観察し、付着水乾燥性および塗膜汚染性Bを下記評価基準で評価した。
【0127】
付着水乾燥性
◎:30分以内に乾燥する。 ○:30〜60分間で乾燥する。
△:60〜120分間で乾燥する。 ×:120分以上で乾燥する。
塗膜汚染性B
◎:水滴跡がハッキリとわかる汚染あり。
【0128】
○:水滴跡がうっすらとわかる汚染あり。
△:うすい汚れがある。
×:汚れがない。
〔塗膜汚染性C〕
フレキシブルボード上に塗料を乾燥膜厚約80μmとなるように塗布し、23℃、65%Rh条件下で7日間乾燥した。得られた被膜を大阪府吹田市で南(30度)に向けて暴露し、JIS Z8730 にしたがって、初期の明度に対する3カ月後の被膜の明度の差(ΔL* 値)を、一体型分光式色差計(日本電子工業社製)を用いて測定した。一般に、ΔL* 値が0に近い程、被膜は汚れていないことを示す。塗膜汚染性Cを下記評価基準で評価した。
【0129】
◎:ΔL* ≦5
○:5<ΔL* ≦10
△:10<ΔL* ≦15
×:ΔL* >15
クリヤ塗料の調製および評価
上記で得られた組成物を用い、それぞれ、以下の配合で混合してクリア塗料(A1)〜(A12)およびクリヤ塗料(B1)〜(B9)を調製した。
【0130】
Figure 0003930618
下地塗料をフレキシブルボード上に塗布した後、さらに、上記クリア塗料を、それぞれ、乾燥膜厚約25μmとなるように塗り重ねた。塗布後のフレキシブルボードを、23℃、65%Rh条件下で7日間乾燥して被膜を硬化させ、クリア塗料(A1)〜(A12)およびクリヤ塗料(B1)〜(B9)について、上記60度光沢と、下記の方法による塗膜汚染性Dとを測定、評価した。結果を表7および表8に示す。なお、クリヤ塗料(B8)および(B9)は、被膜とならず、評価できなかった。
【0131】
【表7】
Figure 0003930618
【0132】
【表8】
Figure 0003930618
【0133】
〔塗膜汚染性C〕
得られた被膜を大阪府吹田市で南(30度)に向けて暴露し、JIS Z8730 にしたがって、初期の明度に対する3カ月後の被膜の明度の差(ΔL* 値)を、一体型分光式色差計(日本電子工業社製)を用いて測定した。一般に、ΔL* 値が0に近い程、被膜は汚れていないことを示す。塗膜汚染性Cを下記評価基準で評価した。
【0134】
◎:ΔL* ≦5
○:5<ΔL* ≦10
△:10≦ΔL* ≦15
×:ΔL* >15
【0135】
【発明の効果】
本発明にかかる成膜用組成物は、被膜形成性能を有し、光沢が高く、耐汚染性に優れた被膜を形成でき、しかも、安価で引火性や溶剤毒性等の問題が生じない。
本発明にかかる塗料は、上記成膜用組成物を必須とするため、光沢が高く、耐汚染性に優れた塗膜を形成できる。この塗料は、乳化重合で得られた樹脂粒子を含むため、安価で引火性や溶剤毒性等の問題が生じない。

Claims (4)

  1. 乳化重合によって得られた被膜形成用の樹脂粒子と、
    無機微粒子に有機ポリマーが一体化してなる複合微粒子であって、平均粒子径が5〜200nmであり、かつ、粒子径の変動係数が50%以下である複合微粒子と、
    水を必須成分とする溶媒とを含み、
    前記樹脂粒子および複合微粒子が前記溶媒中に分散してなる、成膜用組成物。
  2. 前記樹脂粒子が、フルオロアルキル基および/またはシリコーン基を有する、請求項1に記載の成膜用組成物。
  3. 水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1または2に記載の成膜用組成物。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載の成膜用組成物を必須成分として含む、塗料。
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