JP3930111B2 - ウェアインジケータ付ブレーキ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明に係るウェアインジケータ付ブレーキ素子は、ドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリ、或はディスクブレーキ用のパッドとして、自動車の制動に使用するドラムブレーキ、或はディスクブレーキに組み込んだ状態で使用する。そして、使用に伴なってブレーキライニングが摩耗した場合に、ブレーキ素子の交換を促す為の警報器に信号を出す。尚、本明細書でブレーキ素子とは、ブレーキシューアッセンブリとパッドとを総称したものを表す。逆に言えば、本明細書でブレーキシューアッセンブリとは、ドラムブレーキ用のブレーキ素子を指し、パッドとは、ディスクブレーキ用のブレーキ素子を指す。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車の制動を行なうドラムブレーキには、図14に示す様なブレーキシューアッセンブリ1を組み込んでいる。このブレーキシューアッセンブリ1は、ブレーキシュー2の外周面にブレーキライニング3を添着固定して成る。このうちのブレーキシュー2は、鋼板等、十分な剛性を有する金属板により大略三日月状に形成したウェブ4の外周縁に、やはり必要とする剛性を有する金属板を円弧状に曲げ形成した裏金5の幅方向中間部を連結固定して成る。ドラムブレーキは、上述の様なブレーキシューアッセンブリ1を1対、車輪と共に回転する有底円筒状のドラム6(後述する図17参照)の直径方向内側に配置する事により構成する。制動時には上記1対のブレーキシューアッセンブリ1を、図示しないホイルシリンダへの圧油の送り込みにより、上記ドラム6の直径方向外方に変位させて、上記ブレーキライニング3の外周面を上記ドラム6の内周面に押圧し、これら両周面同士の間に作用する摩擦力に基づき、制動力を発揮させる。
【0003】
上述の様なブレーキシューアッセンブリ1を構成するブレーキライニング3は、制動の繰り返しにより次第に摩耗する。従って、或る程度摩耗が進んだ場合に、新しいブレーキシューアッセンブリ1と交換しなければならない。ところが、上記ブレーキライニング3の厚さを外部から目視して判定する事は不可能である為、ウェアインジケータと呼ばれるセンサをブレーキシューアッセンブリ1に装着し、上記ブレーキライニング3が許容限度にまで摩耗した場合に、上記ウェアインジケータからの信号に基づいて運転席に設けた警報器から、ブレーキシューアッセンブリ1の交換を促す旨の指令を出す様にしている。
【0004】
図15は、この様な目的を達する為に考えられた、実開平5−47562号公報に記載されたウェアインジケータ付パッドの1例を示している。パッド7を構成する裏金5aの端部で、ブレーキライニング3aの周縁から突出した部分には、上記裏金5aの表裏面を貫通する状態で取付孔8を形成し、この取付孔8の内側に金属製の保持筒9を装着している。この保持筒9の中間部内周面には段部10を、端縁部には略J字形の係止切り欠き11を、それぞれ形成している。ウェアインジケータ12は、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂等、上記ブレーキライニング3aよりも摩耗し易い材料製のホルダ13中に、検出部である導線14を埋設する事により構成している。又、このウェアインジケータ12の基端部側面には、上記係止切り欠き11内に進入自在な、係止ピン15を突設している。
【0005】
上述の様なウェアインジケータ12を裏金5aに装着する場合には、先ず、上記取付孔8に装着した保持筒9の内側に圧縮ばね16を挿入した後、この保持筒9内に上記ウェアインジケータ12を、裏金5aの裏面側から挿入する。そして、このウェアインジケータ12の外周面に形成された段部17と上記保持筒9の段部10との間で、上記圧縮ばね16を圧縮しつつ、上記係止ピン15を係止切り欠き11の奥にまで進入させる。図15に示す様に、係止ピン15を係止切り欠き11の奥にまで進入させた状態では、上記圧縮ばね16の弾力により、この係止ピン15が係止切り欠き11から抜け出る事がなくなって、上記ウェアインジケータ12が裏金5aに、しっかりと支持される。この様にウェアインジケータ12を裏金5aに支持した状態で上記導線14の先端部は、上記ブレーキライニング3aの摩耗許容限度面Xに位置する。
【0006】
制動の繰り返しに伴なって上記ブレーキライニング3aが摩耗し、その厚さ寸法が小さくなると、先ずホルダ13の先端部がディスク18との摩擦によって摩耗する。そして、更に摩耗が進むと、このホルダ13中に埋設された導線14の先端部とディスク18の側面とが擦れ合って、この導線14が、その先端部で破断する。導線14が破断した事は、図示しない検出回路により検出し、この検出回路が運転席に設けた警報器に信号を送って、この警報器により前記パッド7の交換を促す旨の指令を出す。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の図15に示した様な構造も含め、従来から知られているウェアインジケータ付ブレーキ素子は、次の様な点を改良する事が望まれている。先ず第一に、摩耗許容限度面の位置、言い換えれば、ブレーキ素子の交換を促す為の警報を発する状態でのブレーキライニングの残量を変える場合にも、特に面倒な加工を施す事なく、部品の共用化を図れる事が望まれている。これに対して、図15に示した構造で、部品の共用化を図りつつ上記摩耗許容限度面の位置を変える為には、裏金5aの片面で保持筒9を装着すべき取付孔8の周囲部分に凹部を形成したり、或は図16に示す様にスペーサ41を重ね合わせる事が考えられる。この様な方法により、凹部の深さ分、或はスペーサ41の厚さ分だけ、上記摩耗許容限度面の位置を変える事ができる。但し、この様な方法で上記摩耗許容限度面の位置を変えても、凹部の形成作業が面倒であったり、或は余分なスペーサ41を追加する事でコストが嵩む為、部品共用化によるメリットが相当に失われてしまう。
【0008】
又、図15に示した様なウェアインジケータ付パッドは、元々ディスクブレーキ用に開発されたものである為、ドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリのブレーキライニングの摩耗検知には不適な構造である。この理由に就いて、図17により説明する。ブレーキシューアッセンブリ1にウェアインジケータ12aを装着するには、裏金5の一部でウェブ4から外れた部分に装着する必要がある。一方、ドラムブレーキを組み立てた状態でブレーキシューアッセンブリ1は、ドラム6とバックプレート19との間に設置される。このうちのバックプレート19の一部で裏金5よりも内径側(図17の右側)に存在し、ウェブ4に対向する部分は、このウェブ4に向け突出している為、このウェブ4と上記バックプレート19との間の空間は狭く、上記ウェアインジケータ12aを装着するには不適である。一方、上記ドラム6を構成する底板部20の一部で上記ウェブ4と対向する部分には、このドラム6にホイールを固定する為のボルトの頭部21が存在する。この為、上記ウェアインジケータ12aの裏金5の内周面からの突出量が大きくなると、このウェアインジケータ12aと上記頭部21とが干渉して、ドラムブレーキとして成り立たなくなる。図15に示した構造の場合には、上記突出量を小さく抑える事ができず、従ってドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリのブレーキライニングの摩耗検知には不適である。
【0009】
ウェアインジケータ付ブレーキパッドとしては、図15に示した様な構造の他にも、実公昭58−42665号公報、実公平8−1307号公報に記載されたものが知られている。但し、これら各公報に記載されたウェアインジケータ付ブレーキパッドも部品の共通化を図りつつ前記摩耗許容限度面を変える事に就いての考慮はなされていない。又、ブレーキパッドからウェアインジケータを取り外す作業が困難で、点検・整備等の為、ブレーキパッドとウェアインジケータとを分離する必要が生じた場合にも、これに対応する事が困難である。
【0010】
本発明はこの様な事情に鑑みて、特に面倒な加工を施す事なく、摩耗許容限度面の位置を変える場合にも部品の共用化を図れる様にし、更に、裏金からの突出量を少なく抑える事ができ、しかもウェアインジケータの分離を容易に行なえるウェアインジケータ付ブレーキ素子を提供すべく発明したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のウェアインジケータ付ブレーキ素子は、従来から知られているウェアインジケータ付ブレーキ素子と同様に、裏金と、この裏金の表面に添着されたブレーキライニングと、上記裏金の表裏面を貫通する状態で形成された取付孔と、上記ブレーキライニングよりも摩耗し易い材料製のホルダ中に検出部を埋設して成るウェアインジケータとを備える。そして、このウェアインジケータを、上記取付孔に挿通すると共に、上記検出部の先端部を上記ブレーキライニングの摩耗許容限度面に位置させた状態で上記裏金に支持している。
【0012】
特に、本発明のウェアインジケータ付ブレーキ素子に於いては、上記ホルダの先半部を構成する挿入部の外径を、この挿入部の中間部に段部を形成する事により、先端寄り部分で細く基端寄り部分で太くし、上記ホルダの基半部を構成する主部の外径を、上記挿入部よりも大径とし、この主部の外周面と上記挿入部の外周面とを段差面により連続させると共に、上記ブレーキライニングの一部で上記取付孔に整合する部分に、この取付孔と同心の挿入孔を形成している。そして、この挿入孔の内径を上記ホルダの挿入部の外径との関連で上記摩耗許容限度面の位置に合わせて調整する事により、上記ホルダを上記裏金の裏面側から上記取付孔及び挿入孔に挿入し、上記段部と段差面とのうちの一方を上記挿入孔の開口周縁部に当接させた状態で、上記検出部の先端部を、所望とする上記ブレーキライニングの摩耗許容限度面に位置させる。
【0013】
更に、上記取付孔の内側に円筒状の保持筒を固定する。そして、この保持筒の内周面に、この内周面からの突出量を増大させる方向の弾力を有し、自由状態でブレーキライニングの側に向かう程上記突出量が大きくなる方向に傾斜した爪片を設ける。又、上記ホルダの中間部に、直径方向外方に突出する突き当て部を設け、上記ホルダの基端部に、インナースリーブを外嵌する。このインナースリーブは、直径を弾性的に拡縮自在な筒状で、基端部に直径方向外方に突出する係止部を有する。更に、上記インナースリーブに、直径を弾性的に拡縮自在で外周面を上記爪片の先端部と係合自在としたアウタースリーブを外嵌する。そして、上記インナースリーブにより上記ホルダの基端部を抱持し、上記アウタースリーブにより上記インナースリーブを抱持し、上記アウタースリーブを上記突き当て部と係止部との間で軸方向両側から挟持し、上記アウタースリーブの外周面と上記爪片との係合に基づいて上記アウタースリーブが上記保持筒から抜け出るのを防止する事により、上記ホルダを裏金に対して支持固定する。
【0014】
【作用】
上述の様に構成する本発明のウェアインジケータ付ブレーキ素子により制動を行なう際の作用、並びにブレーキライニングが許容限度まで摩耗した場合に警報を出す場合の作用は、前述した従来のウェアインジケータ付ブレーキ素子と同様である。
【0015】
特に、本発明のウェアインジケータ付ブレーキ素子の場合、ブレーキライニングに形成する挿入孔の内径を変えるのみで、特に構成各部材に特別な加工を施したり、別部材を付加する事なく、上記ブレーキライニングの摩耗許容限度面の位置を調節できる。従って、摩耗許容限度面の位置が異なる複数種類のウェアインジケータ付ブレーキ素子の製造コストの低減を有効に図れる。
【0016】
更に、ウェアインジケータの裏金からの突出量を小さく抑え、しかもこのウェアインジケータを上記裏金から取り外す作業を容易に行なえる様にできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1〜13は、本発明の実施の形態の1例を示している。ブレーキシューアッセンブリ1は、ウェブ4と共にブレーキシュー2を構成する裏金5の外周面に、ブレーキライニング3をリベット22により添着固定して成る。上記裏金5の一部には取付孔8aを、この裏金5の表裏面(内外両周面)を貫通する状態で形成している。又、上記ブレーキライニング3の一部で上記取付孔8aに整合する部分に、挿入孔23を形成している。この挿入孔23は、上記取付孔8aと同心で、この取付孔8aよりも小径である。そして、これら取付孔8a及び挿入孔23の内側部分に、図1、2、3、6、7に示す様なウェアインジケータ12bを装着している。このウェアインジケータ12bの基本構造は、前述の図15に示した従来構造に使用するウェアインジケータ12と同様である。即ち、このウェアインジケータ12bは、上記ブレーキライニング3よりも摩耗し易い材料、好ましくは合成樹脂により造ったホルダ13a中に、導線14(図15参照)等の検出部を埋設して成る。本例のウェアインジケータ付ブレーキ素子は、上記ウェアインジケータ12bのホルダ13aを、上記取付孔8aに挿通すると共に、このホルダ13aの先端(図1〜3、6、11〜13の上端)寄り部分を上記挿入孔23内に挿入し、上記検出部の先端部を上記ブレーキライニング3の摩耗許容限度面Xに位置させた状態で、上記裏金5に支持している。
【0018】
上記ホルダ13aの先半部(図1〜3、6、11〜13の上半部)の外径は、先端寄り部分で細く、基端寄り部分で太くしている。即ち、上記ホルダ13aは、基半部(図1〜3、6、11〜13の下半部)を構成する比較的大径の主部24と、先半部を構成する比較的小径の挿入部25とを備える。上記検出部を構成する導線14は、この挿入部25内に埋設している。本例の場合には、この挿入部25の外径を、先端寄り部分で細く、基端寄り部分で太くしている。この為に本例の場合には、上記挿入部25の中間部に段部26を形成し、この段部26よりも先端寄り部分の外径を細く、この段部26よりも上記主部24寄り部分の外径を太くしている。
【0019】
一方、上記ブレーキライニング3に形成した挿入孔23の内径は、所望とする上記摩耗許容限度面Xの位置に応じて、上記ホルダ13aの挿入部25の外径との関連で調整している。即ち、上記摩耗許容限度面Xを裏金5の外周面に近い位置に設置する(ブレーキライニング3の摩耗許容極限厚さを小さくする)場合には、図1、3に示す様に、上記挿入孔23を比較的小径にする。より具体的にはこの挿入孔23の内径を、上記挿入部25の先端寄り部分の外径よりも大きく、基端寄り部分の外径よりも小さくする。この状態で上記ホルダ13aを上記裏金5の内周面側から上記取付孔8a及び挿入孔23に挿入すれば、上記ホルダ13aの先半部を構成する挿入部25の中間部に形成した段部26が、上記挿入孔23の開口周縁部に突き当たる。この状態で、上記裏金5の外周面から上記摩耗許容限度面Xまでの距離(ブレーキライニング3の摩耗許容極限厚さ)L1 は、前記主部24の外周面と上記挿入部25の外周面とを連続させる段差面42から上記摩耗許容限度面Xまでの距離L0 よりも、この段差面42から上記段部26までの距離△L分だけ小さくなる(L1 =L0 −△L)。尚、この様に上記裏金5の外周面から上記摩耗許容限度面Xまでの距離L1 を小さくした状態でも、この摩耗許容限度面Xが前記リベット22の頭部よりも上記ブレーキライニング3の外周面寄り(図1〜3、11〜13の上寄り)に存在する事は勿論である。
【0020】
これに対して、上記摩耗許容限度面Xを裏金5の外周面から比較的離れた位置に設置する(ブレーキライニング3の摩耗許容極限厚さを大きくする)場合には、図2に示す様に、上記挿入孔23を比較的大径にする。より具体的にはこの挿入孔23の内径を、上記挿入部25の基端寄り部分の外径よりも大きく、上記主部24の外径よりも小さくする。この状態で上記ホルダ13aを上記裏金5の内周面側から上記取付孔8a及び挿入孔23に挿入すれば、上記段差面42が、上記挿入孔23の開口周縁部に突き当たる。この状態で、上記裏金5の外周面から上記摩耗許容限度面Xまでの距離L2 は、上記段差面42から上記摩耗許容限度面Xまでの距離L0 と等しくなる(L2 =L0 )。
【0021】
上述の様にしてウェアインジケータ12bを装着したブレーキシューアッセンブリ1を組み込んだドラムブレーキにより繰り返し制動を行なった結果、上記ブレーキライニング3が許容限度まで摩耗すると、前記検出部を構成する導線14が破断し、警報を発する。この様にして警報を出す際の作用は、前述した従来のウェアインジケータ付ブレーキ素子と同様である。特に、本例の場合には、上記ブレーキライニング3の摩耗許容限度面Xの位置を調節する作業を、このブレーキライニング3に形成する挿入孔23の内径を変えるのみで、特に構成各部材に特別な加工を施す事なく行なえる。従って、上記摩耗許容限度面Xの位置が異なる複数種類のウェアインジケータ付ブレーキシューアッセンブリの製造コストの低減を有効に図れる。
【0022】
これに対して、前述の図15に示した従来構造により、上記ブレーキライニング3の摩耗許容限度面Xの位置を調節する為には、図16に示す様に、裏金5の裏面の一部で取付孔8bの開口周囲部分に形成する環状凹部27の深さを変える必要がある。この様な環状凹部27を形成する作業は面倒であり、上記摩耗許容限度面Xの位置を適正にする為、上記環状凹部27の深さを規制する事は、ウェアインジケータ付ブレーキシューアッセンブリの製造コストを増大させる原因となる。従って、図16に示した様な構造では、部品の共用化に基づくコスト削減効果が半減する。
【0023】
次に、上述の様にして摩耗許容限度面Xの位置を容易に調整できる構造に適用して、裏金5の内周面からの突出量を小さく抑えつつ、この裏金5に対する前記ウェアインジケータ12bの着脱作業を容易に行なえる構造に就いて説明する。上記裏金5にウェアインジケータ12bを取り付けるべく、前記取付孔8aの内側に、ステンレス鋼板等、弾性及び耐食性を有する金属板により円筒状に形成した、保持筒28を固定している。図示の例では、この保持筒28を上記取付孔8aにがたつきなく内嵌自在とすると共に、この保持筒28の先端部(図1〜3、5、11〜13の上端部)から直径方向外方に折れ曲がった複数(図示の例では4個)の鍔部29、29を形成している。そして、これら各鍔部29、29を、上記裏金5の外周面と前記ブレーキライニング3の内周面との間で挟持している。尚、図示の例では、これら両周面同士を密接させるべく、これら両周面と上記各鍔部29、29との干渉を防止する為の凹部30を、上記裏金5の外周面側に設けている。但し、この様な凹部30は、上記ブレーキライニング3の内周面側に設けても良い。上記凹部30をブレーキライニング3側に設ければ、このブレーキライニング3の形成時に上記凹部30を同時に形成できて、コスト低減を図れる。又、上記保持筒28の外周面複数個所に形成した弾性片40の先端を、上記取付孔8aの内周面に弾性的に突き当てている。
【0024】
又、上記保持筒28の内周面には、複数個(例えば2〜4個)の爪片31、31を、円周方向等間隔に突出形成している。これら各爪片31、31は、上記保持筒28を構成する弾性金属板の一部に形成した、この保持筒28の先端側(図1〜3、5、11〜13の上端側)が開口した長コ字形の切れ目の内側を、上記保持筒28の内周面側に少し折り曲げる事により形成している。この様に構成する上記各爪片31、31は、上記保持筒28の内周面からの突出量を増大させる方向(上記保持筒28の直径方向内方に向かう方向)の弾力を有し、自由状態でブレーキライニング3の側に向かう程(図1〜3、5、11〜13の上方に向かう程)上記突出量が大きくなる方向に傾斜している。
【0025】
一方、前記ホルダ13aの軸方向(図1〜3、6、11〜13の上下方向)中間部には、直径方向外方に突出する突き当て部として機能する、第二の段部32を形成している。即ち、前記主部24のうち、前記挿入部25寄り部分の外径をこの挿入部25から離れた部分の外径よりも大きくして、これら両部分同士の連結部に、上記第二の段部32を形成している。
【0026】
そして、上述の様なホルダ13aの一部で、上記第二の段部32よりも基端側(図1〜3、6、11〜13の下端側)部分には、インナースリーブ33を外嵌している。このインナースリーブ33は、ステンレス鋼板等、弾性及び耐食性を有する金属板により欠円筒状に形成して、直径を弾性的に拡縮自在である。又、このインナースリーブ33の基端縁部の直径方向反対側2個所位置には、それぞれ直径方向外方に突出する係止部34、34を設けている。
【0027】
更に、上記インナースリーブ33には、やはりステンレス鋼板等、弾性及び耐食性を有する金属板により欠円筒状に形成して、直径を弾性的に拡縮自在とした、アウタースリーブ35を外嵌している。このアウタースリーブ35の軸方向寸法は、上記インナースリーブ33の軸方向寸法よりも大きい。又、上記アウタースリーブ35の内外両周面には、それぞれローレット加工等により、軸方向に亙る凹凸を形成している。従って、上記アウタースリーブ35の内外両周面のうち、内周面は上記インナースリーブ33の外周面と摩擦係合し、外周面は前記各爪片31、31の先端縁と係合する。又、上記アウタースリーブ35は、自由状態で直径を縮める方向の弾力を有する。
【0028】
上述の様な構成各部材を使用して、前記ウェアインジケータ12bを前記裏金5に取り付け固定する作業は、次の様にして行なう。前記保持筒28は、ブレーキシューアッセンブリ1の製造時に、上記裏金5に固定しておく。取り付け固定作業の第一行程では、先ず、上記ウェアインジケータ12bを構成するホルダ13aを上記保持筒28内に、前記挿入部25を先にして挿入する。尚、この挿入作業を行なえる様にすべく、前記主部24の一部で前記爪片31、31に整合する部分には、これら各爪片31、31を通過自在な切り欠き36、36を、上記ホルダ13aの軸方向に亙って形成している。
【0029】
上述の様にして上記保持筒28内に上記ホルダ13aを挿入したならば、これら保持筒28の内周面とホルダ13aの外周面との間の円筒状空間37内に、前記インナースリーブ33と上記アウタースリーブ35とを押し込む。この押し込み作業に先立って、上記インナースリーブ33に上記アウタースリーブ35を外嵌しておき、これら両スリーブ33、35を上記円筒状空間37内に、同時に押し込む。尚、上記インナースリーブ33に上記アウタースリーブ35を外嵌する際には、このアウタースリーブ35の直径を弾性的に広げる。又、上記押し込み作業は、上記アウタースリーブ35の先端縁が前記第二の段部32に突き当たり、前記各係止部34、34が上記アウタースリーブ35の基端縁に突き当たるまで行なう。この状態にまで上記押し込み作業を行なうと、上記インナースリーブ33が上記ホルダ13aの基端部を抱持し、上記アウタースリーブ35が上記インナースリーブ33を抱持する。そして、上記アウタースリーブ35を上記第二の段部32と上記各係止部34、34との間で軸方向両側から挟持して、上記アウタースリーブ35が上記ホルダ13aに対して軸方向にずれ動く事を防止する。更に、上記アウタースリーブ35の外周面と上記各爪片31、31との係合に基づいて、上記アウタースリーブ35が上記保持筒28から抜け出るのを防止する。又、上記インナースリーブ33は、内外両周面と上記ホルダ13aの外周面及びアウタースリーブ35の内周面との間に作用する摩擦力により、しっかりと支持される。この結果、上記ホルダ13aを上記裏金5に対してしっかりと支持固定できる。尚、上記各周面同士の間に作用する摩擦力に基づく静止力は、ブレーキライニング3が摩耗した状態での制動時に、ブレーキドラムの内周面から上記ホルダ13aに加わるスラスト荷重よりも、十分に大きい。
【0030】
上述の様にして裏金5に対してホルダ13aを支持固定する構造によれば、この裏金5の内周面からウェアインジケータ12bの基端部(図1〜3、6、11〜13の下端部)並びにこのウェアインジケータ12bを支持固定する部材が突出する量を小さく抑える事ができる。即ち、上述の説明から明らかな様に、上記裏金5に固定した保持筒28の内側に上記ホルダ13aを固定する為の部材は、この保持筒28内に押し込むので、支持固定作業の完了時点でこれら各部材は、上記保持筒28から少ししか突出しない。従って、上述の様に、裏金5の内周面からウェアインジケータ12b並びにこのウェアインジケータ12bを支持固定する為の部材が突出する量を小さく抑える事ができる。これに対して、前述の図15に示した従来構造により、上記裏金5にウェアインジケータ12のホルダ13を装着すると、図16に示す様に、裏金5の内周面からのウェアインジケータ12の基端部の突出量が大きくなる。
【0031】
更に、上述の様な、本発明に係る裏金5に対してホルダ13aを支持固定する構造によれば、上記ウェアインジケータ12bを上記裏金5から取り外す作業を容易に行なえる。尚、この様にウェアインジケータ12bを上記裏金5から取り外す作業は、図11〜13に示す様にして行なう。先ず、図11〜12に示す様に前記インナースリーブ33を、前記各係止部34、34を手掛かりとして、前記円筒状空間37から図11の矢印α方向に引き抜く。上記インナースリーブ33の内外両周面には特に凹凸等の係止部は形成していない為、上記各係止部34、34に引き抜き方向の強い力を加える事により、比較的容易に引き抜ける。
【0032】
上記インナースリーブ33を上記円筒状空間37から引き抜くと、前記アウタースリーブ35の直径が弾性的に縮まり、このアウタースリーブ35の外周面に形成した凹凸と、前記各爪片31、31の先端縁との係合が外れる。そこで、前記ホルダ13aに形成した切り欠き36、36と上記各爪片31、31とを整合させた状態で上記ホルダ13aを前記保持筒28から引き抜けば、上記ウェアインジケータ12bを上記裏金5から分離できる。尚、上記各切り欠き36、36と上記各爪片31、31とを整合させつつ上記ホルダ13aを上記保持筒28から引き抜く作業は、上記ウェアインジケータ12bから導出したハーネス38を操作する事により、容易に行なえる。
【0033】
尚、上述の実施の形態は、本発明をドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリに適用した場合に就いて説明した。前述の説明の通り、本発明は、ドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリに適用した場合に、限られた空間にウェアインジケータを設置可能になると言った効果を十分に得られる。但し、本発明は、上述の様なドラムブレーキ用のブレーキシューアッセンブリに限らず、ディスクブレーキ用のパッドにも適用できる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用する為、ウェアインジケータ付ブレーキ素子のコスト低減と、ウェアインジケータ装着部分の小型化により、ウェアインジケータ付ブレーキ素子を組み込んだブレーキの設計の自由度向上とを図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の1例の実施状態の1例を表した、図14の拡大A−A断面に相当する図。
【図2】 本発明の実施の形態の1例の実施状態の別例を表した、図1と同様の図。
【図3】 図1のB部拡大図。
【図4】 保持筒を図1〜3の上方から見た図。
【図5】 図3のC部拡大図。
【図6】 ウェアインジケータのみを取り出して図1〜3と同方向から見た図。
【図7】 図6の上方から見た図。
【図8】 インナースリーブを図1〜3の上方から見た図。
【図9】 アウタースリーブを図1〜3の上方から見た図。
【図10】 図9のD−D断面図。
【図11】 ブレーキシューアッセンブリからウェアインジケータを取り外す作業の第一行程を示す断面図。
【図12】 同第二行程を示す断面図。
【図13】 同第三行程を示す断面図。
【図14】 ブレーキシューアッセンブリの略側面図。
【図15】 従来構造の1例を示す要部断面図。
【図16】 図15に示した従来構造を、スペーサにより摩耗許容限度面の位置を調整して取り付けた状態を示す、図1〜2と同様の図。
【図17】 ブレーキシューアッセンブリにウェアインジケータを装着する状態を、図14のA−A線方向で切断した状態で示す図。
【符号の説明】
1 ブレーキシューアッセンブリ
2 ブレーキシュー
3、3a ブレーキライニング
4 ウェブ
5、5a 裏金
6 ドラム
7 パッド
8、8a、8b 取付孔
9 保持筒
10 段部
11 係止切り欠き
12、12a、12b、12c ウェアインジケータ
13、13a、13b ホルダ
14 導線
15 係止ピン
16 圧縮ばね
17 段部
18 ディスク
19 バックプレート
20 底板部
21 頭部
22 リベット
23 挿入孔
24 主部
25 挿入部
26 段部
27 環状凹部
28 保持筒
29 鍔部
30 凹部
31 爪片
32 第二の段部
33 インナースリーブ
34 係止部
35 アウタースリーブ
36 切り欠き
37 円筒状空間
38 ハーネス
39 傾斜面
40 弾性片
41 スペーサ
42 段差面
Claims (1)
- 裏金と、この裏金の表面に添着されたブレーキライニングと、上記裏金の表裏面を貫通する状態で形成された取付孔と、上記ブレーキライニングよりも摩耗し易い材料製のホルダ中に検出部を埋設して成るウェアインジケータとを備え、このウェアインジケータを、上記取付孔に挿通すると共に、上記検出部の先端部を上記ブレーキライニングの摩耗許容限度面に位置させた状態で上記裏金に支持した、ウェアインジケータ付ブレーキ素子に於いて、上記ホルダの先半部を構成する挿入部の外径を、この挿入部の中間部に段部を形成する事により、先端寄り部分で細く基端寄り部分で太くし、上記ホルダの基半部を構成する主部の外径を、上記挿入部よりも大径とし、この主部の外周面と上記挿入部の外周面とを段差面により連続させると共に、上記ブレーキライニングの一部で上記取付孔に整合する部分に、この取付孔と同心の挿入孔を形成し、この挿入孔の内径を上記ホルダの挿入部の外径との関連で上記摩耗許容限度面の位置に合わせて調整する事により、上記ホルダを上記裏金の裏面側から上記取付孔及び挿入孔に挿入し、上記段部と段差面とのうちの一方を上記挿入孔の開口周縁部に当接させた状態で、上記検出部の先端部を、所望とする上記ブレーキライニングの摩耗許容限度面に位置させており、上記取付孔の内側に筒状の保持筒が固定されており、この保持筒の内周面に、この内周面からの突出量を増大させる方向の弾力を有し、自由状態で上記ブレーキライニングの側に向かう程上記突出量が大きくなる方向に傾斜した爪片が設けられており、上記ホルダの中間部に直径方向外方に突出する突き当て部が設けられており、このホルダの基端部に、直径を弾性的に拡縮自在な筒状で基端部に直径方向外方に突出する係止部を有する、インナースリーブが外嵌されており、このインナースリーブに、直径を弾性的に拡縮自在で外周面を上記爪片の先端部と係合自在としたアウタースリーブが外嵌されており、上記インナースリーブにより上記ホルダの基端部を抱持し、上記アウタースリーブによりこのインナースリーブを抱持し、このアウタースリーブを上記突き当て部と係止部との間で軸方向両側から挟持し、上記アウタースリーブの外周面と上記爪片との係合に基づいて上記アウタースリーブが上記保持筒から抜け出るのを防止する事により、上記ホルダを上記裏金に対して支持固定した事を特徴とするウェアインジケータ付ブレーキ素子。
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-
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- 1997-08-13 JP JP21863797A patent/JP3930111B2/ja not_active Expired - Fee Related
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EP2748484B1 (en) | 2011-08-26 | 2017-01-18 | Freni Brembo S.p.A. | Wear sensor |
EP2748484B2 (en) † | 2011-08-26 | 2019-11-13 | Freni Brembo S.p.A. | Wear sensor |
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