JP3929453B2 - まくら木 - Google Patents
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Description
このように、騒音を抑えるために鉄道会社は多大な労力や費用を費やさざるを得ず、制振性を備えつつ保守性に優れたまくら木の開発が待たれていた。
ここで、列車の荷重がまくら木に印加されると、まくら木の内部に曲げ応力や剪断応力が生じてまくら木が歪みを生じる。まくら木が歪むと振動が生じ、発生した振動はまくら木を支承する路床や橋梁の鋼桁へ伝搬され、特定の周波数で共振が生じて大きな騒音となる。
また、本発明は、通常の木材で製された木まくら木や合成木材で製された合成まくら木、あるいは、コンクリートまくら木(Prestressed Concrete まくら木)のいずれに適用しても騒音の抑制効果を発現する。
則ち、請求項2に記載の発明は、まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着させて一体化したものである。
また、例えば、表面に粘性体を付着させたチューブ(補助部材)を空洞部に挿入し、チューブ内に空気を圧送して膨らませることにより、粘性体を内壁に密着させる構成を採ることができる。この例では、空洞部の内壁に粘性体とチューブ(補助部材)が密着した構成となる。このような、薄板やチューブなどの補助部材を用いることにより、空洞部の内壁に粘性体を容易に密着させることができ、しかも、補助部材を挿入することによって振動の減衰効果が低下することもない。
ここで、鋼桁によってまくら木の両端部が支持される橋梁まくら木や、路床上の凹凸形の支持部によってまくら木の両端部が支持される無道床軌道のまくら木では、まくら木にレール(またはタイプレート)が固定される部位に対して、まくら木が鋼桁や支持部で支承される部位は、まくら木の長手両端部側に位置する。
ここで、請求項1に記載したまくら木のように、橋梁軌道や無道床軌道に敷設する場合、レールの固定部から長手両端部にかけて大きな剪断応力が生じる。則ち、荷重印加時に空洞部に剪断応力が集中して、内壁面が剪断方向に大きく変形する。一方、まくら木の高さ方向の略中央部は、曲げ応力の向きが変わる部位でもある。則ち空洞部の上下面に注目すると、一方の面は縮み他方の面は伸びる。
本発明によれば、レール(またはタイプレート)の固定部位から長手両端部にかけてスリット状の開口でなる空洞部を設けることにより、まくら木の両端部近傍を上梁と下梁に隔てた構造である。従って、空洞部による高さ方向の欠落部分が少なく、空洞部を設けない場合に比べて剪断応力の許容度の低下が少なくなり、設計の自由度が向上する。
従って、本発明によれば、まくら木の共振を効果的に抑制しつつ、耐荷重強度の低下を抑えたまくら木とすることが可能である。
本発明を請求項5のまくら木に適用する場合、前記したように、空洞部は応力の生じない部位に設けられる。従って、空洞部は、まくら木の長手両端部側を開放しない貫通孔としても良く、長手両端部側を開放した切り欠き形状としても良い。
また、空洞部の端部に補強部材を装着した後に、空洞部の内部に粘性体を充填する構成を採ることができる。また、空洞部の端部に補強部材を装着した後に、補強部材が装着された部位以外の空洞部の内壁に粘性体を密着させる構成や、空洞部の内壁と補強部材の双方に粘性体を密着させる構成とすることができる。
本発明によれば、まくら木の上面または底面または長手両側面または短手両側面の少なくともいずれかの面に、溝や穴で形成される空洞部が設けられる。従って、当該空洞部の内部に粘性体を充填したり、あるいは、当該空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴う振動を効果的に減衰させることが可能となる
本発明によれば、まくら木を高さ方向や幅方向へ貫通する空洞部が設けられる。従って、当該空洞部の内部に粘性体を充填したり、あるいは、当該空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴って発生する振動を効果的に減衰させることが可能となる
粘性体は、単一の物質または分散性の物質として粘性を発現する物質であり、粘性を表す指標、則ち、動的粘弾性を示す損失係数tanδが大きいほど、振動に対して大きな減衰効果が得られる。
粘性体の損失係数tanδが0.1未満のときは、粘性が少なく、粘性体を設けることによる振動の減衰効果が発現しない。振動の減衰効果の面から、粘性体の損失係数tanδは0.1以上が良く、粘性体の損失係数tanδは1以上が最適である。
ここに、本発明においてゲルとは、架橋性の高分子材料において、架橋間の分子が軟質なポリマー構造をもつものを指す。例えば、軟質ウレタン、ポリオレフィンなど分岐の少ない直鎖型のポリマーがゲルに該当する。一方、同じ直鎖型でもポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどはゲルに該当しない。
一般に、軟質なポリマーであるかどうかの判断は、主鎖の重合単位に炭素数2以上のアルキレン基が含まれるかどうかによってなされる。例えば、エチレンやプロピレンが主鎖に含まれていれば、軟質なポリマーとなる可能性が高い。一方、ベンゼン環のような共役環が含まれていると、その可能性は低くなる。
特に、粘性体にポリオールとイソシアネートを混合し硬化させて得られるゲル材を用いることにより、損失係数tanδが大きく、耐候性、耐薬品性にも優れ、粘性体として最適である。
例えば、マイカのような板状結晶をもつ粒子は、マトリックス中に分散すると0.1以上のtanδを発現すると言われており、大きな減衰効果が期待できる。従って、仮にゴムやウレタンエラストマーのような軟質な弾性材であっても、これらの物質を分散できれば、大きな減衰効果が得られる可能性がある。通常は分散性を考慮して、マトリックスに不揮発性の液状物質またはゲルが用いられる。
図1は、本実施形態のまくら木に採用する空洞部を削設したまくら木を示す斜視図である。図2(a)は、図1に示すまくら木に補強部材を装着する手順を示す斜視図、同図(b)は(a)のまくら木の空洞部に粘性体を充填した状態を示す斜視図である。図3は、本実施形態のまくら木を示す正面図である。図4は、図3に示すまくら木を橋梁まくら木として敷設した例を示す斜視図である。図5は、図3に示すまくら木の振動試験の構成を示す説明図である。図6は、図3に示すまくら木および従来のまくら木の振動試験の結果を示すグラフである。図7(a)は、図3に示すまくら木に別の補強部材を装着する手順を示す斜視図、同図(b)は(a)のまくら木に粘性体を充填した状態を示す斜視図である。図8は、変形実施形態のまくら木を示す斜視図である。図9は、図8のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。図10は、変形実施形態のまくら木を示す斜視図である。図11は、図10のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。図12(a)は、別の変形実施形態のまくら木を示す斜視図、同図(b)は(a)の部分拡大図である。図13は、図12のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。
従って、図3に示すように、まくら木10は列車の通過に際してタイプレートTを介して列車からの荷重F1を受けると共に、I型鋼桁15から支承力F2を受ける。則ち、まくら木10には、荷重F1および支承力F2によって長手方向の大きな曲げ応力が生じると共に、荷重F1および支承力F2の印加される近傍において大きな剪断応力が生じる。
試作例の制振まくら木1は、ガラス繊維で強化された硬質ウレタン樹脂発泡体を素材とする合成木材(商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製、比重0.74)を採用し、この合成木材を長さL(1400mm)、幅W(200mm) 、高さH(140mm) のサイズに切り出したまくら木10を使用した。
住化バイエルウレタン社製ポリオール(品名:STP-00EC07)・・・92重量部
住化バイエルウレタン社製イソシアネート(品名:ST-0397 ) ・・8重量部
振動試験は、図5の様に、試作例(制振まくら木1)および比較例の各々について、まくら木10の長手両端部をI型鋼桁15で支承した状態で上面10aに鋼球Kを落下させ、そのときのI型鋼桁15で観測される振動レベルを比較することにより行った。
鋼球Kは直径が50mmであり、まくら木10の長手端部から長さD3(437.5mm) の上面10aの幅方向中央部に、高さD4(100mm) から落下させた。また、I型鋼桁15の振動観測は、ウエブ15bの高さ方向中央部に振動測定器(不図示)のセンサーヘッドMを配置して行った。比較例についても、同様の配置によって振動試験を行った。
これにより、制振性を確保しつつ、従来のまくら木のような弾性材の交換のための多大な労力や費用が不要となる。また、空洞部11に補強部材12を装着するので、まくら木10に生じる応力に対する強度を確保することができ、荷重に対して充分な強度を有する制振まくら木1とすることができる。
従って、空洞部11の両端部11aの内壁の端部以外の部位における応力の許容値に余裕がある場合は、前記図2に示した補強部材12に代えて、図7に示す補強部材14を用いることも可能である。図7に示す補強部材14は、空洞部11の両端部11aの内周壁に沿って湾曲した挿入部14aと、挿入部14aの端部を外側に折り返したフランジ部14bを有した金属部材であり、空洞部11の両端部11aに沿って挿入部14aを挿入し、フランジ部14bをまくら木10の両側面10b,10bに当接させて装着する構成とされている。このように補強部材14を装着することにより、空洞部11の両端部11aの内壁の端部に集中する応力を分散して挫屈や破断を効果的に防止することが可能となる。
ところで、まくら木10に荷重が印加されたときに大きな応力が生じる部位は、前記制振まくら木1において空洞部11を設けた部位以外にも分布する。これら大きな応力が生じる部位に空洞部を設けて粘性体を充填しても、前記制振まくら木1と同様に優れた制振効果を発現させることが可能である。
以下に、前記実施形態で示した制振まくら木1とは異なる部位に空洞部を設けた制振まくら木の実施形態を順次説明する。
制振まくら木2は、タイプレートTが固定されるまくら木10の上面10aの部位に下方へ向けて荷重F1が印加され、まくら木10の底面10cの支承部位に上方へ向けてF2の支承力が加わる。このため、まくら木10の長手中央部が下方へ湾曲し、湾曲に伴って上面10aには圧縮応力が生じ、底面10cには引っ張り応力が生じる。
尚、まくら木10への荷重の印加に伴って内部に発生する応力が、まくら木10を構成する素材の応力の許容範囲内である条件を満たせば、空洞部20をまくら木10の適宜の部位に設けることが可能である。
本実施形態の制振まくら木3においても、タイプレートTを介してまくら木10の上面10aに印加される荷重F1と、まくら木10の底面10cに加わる支承力F2により、まくら木10の上面10aには圧縮応力が生じ、底面10cには引っ張り応力が生じる。
尚、本実施形態においても、まくら木10への荷重の印加に伴って発生する応力が、まくら木10を構成する素材の応力の許容範囲内である条件を満たせば、空洞部30をまくら木10の適宜の部位に設けることが可能である。
本実施形態の制振まくら木4は、前記実施形態で示した制振まくら木1(図3参照)におけるスリット状の空洞部11に代えて、円形の貫通孔で成る空洞部40を複数配列した構造である。
図14は制振まくら木5を示す斜視図、図15は図14に示す制振まくら木5で実施する振動試験の構成を示す説明図である。
振動試験に用いたI型鋼桁15は、図15の様に、フランジ15aの外方側端部が制振まくら木5の空洞部50の端部50aと一致させるように配置した。
振動試験は、図15の様に、試作例(制振まくら木5)および比較例の各々について、まくら木10の長手両端部をI型鋼桁15で支承した状態で上面10aに鋼球Kを落下させ、そのときのI型鋼桁15で観測される振動レベルを比較することにより行った。尚、振動試験に用いたI型鋼桁15の形状および鋼球Kの形状、落下位置は前記図5に示した振動試験と同一であるので、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
また、前記実施形態では、制振まくら木を橋梁まくら木として用いる場合を例に挙げて説明したが、路床上の凹凸の支承部に両端部を支承される無道床まくら木に適用する場合にも同様の制振効果を奏する。
10 まくら木
11,20,30,40,41 空洞部
12,14 補強部材
13 粘性体
Claims (9)
- まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填して一体化させるものであり、前記空洞部は、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられることを特徴とするまくら木。
- まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着させて一体化させるものであり、前記空洞部は、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられることを特徴とするまくら木。
- 前記空洞部は、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のまくら木。
- まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填して一体化させるものであり、前記空洞部は、レールまたはタイプレートが固定される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられるものであって、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とするまくら木。
- まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着て一体化させるものであり、前記空洞部は、レールまたはタイプレートが固定される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられるものであって、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とするまくら木。
- 前記空洞部は、まくら木の表面に設けた溝または穴の少なくともいずれかで形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のまくら木。
- 前記空洞部は、まくら木を高さ方向または幅方向へ貫通する少なくともいずれかの貫通孔で形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のまくら木。
- 前記粘性体の有する損失係数tanδが0.1以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のまくら木。
- 前記粘性体は、ポリオールとイソシアネートを混合して得られるゲル材であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のまくら木。
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