JP3929453B2 - まくら木 - Google Patents

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Description

本発明は制振性を備えたまくら木に係り、更に詳細には、列車の通過に伴って生じる振動をまくら木自身で減衰させる機能を備えたものに関する。
従来の鉄道用軌道における騒音の発生要因の一つとして、まくら木を支承する路床や桁材(鋼桁)の共振現象が挙げられる。例えば、レールやタイプレートとまくら木の上面との間、あるいは、まくら木の底面と路床や橋梁の鋼桁との間に隙間やガタがあると、列車の通過に伴って、レールとまくら木の衝突やまくら木が路床や鋼桁と衝突して打撃音(振動)を生じる。これらの振動は、まくら木から路床や鋼桁に伝搬されて共振を生じ、騒音を拡大させる要因となる。
従来の鉄道用軌道の騒音対策としては、一般に、加振部であるまくら木と支承部である路床や鋼桁との間に弾性材を配置した構造が採用されている。
特許文献1に開示されたまくら木の防振装置は、まくら木と路床や鋼桁との間に弾性材を配して列車荷重を弾性支承し、レールとまくら木との間で生じる衝突や、まくら木と路床や鋼桁との間で生じる衝突を緩衝して、路床や鋼桁の共振要因となるまくら木の振動を小さくするものである。また、弾性材を配することにより、まくら木に加わる荷重を分散しつつ1本当たりのまくら木への荷重を低減させ、これによって、路床や鋼桁の共振要因となるまくら木の振動を小さくするものである。
特開2001−172901号公報
ところが、前記特許文献1に開示された防振装置は、列車の通過に伴う大きな荷重を、ゴムやウレタンエラストマーなどの軟質弾性材を介して支承することから、劣化し易い弾性材を定期的に交換しなければならず、レールを持ち上げながらの交換作業を強いられるものであった。また、列車の通過に伴う横圧などで弾性材がずれないように、専用の位置ずれ防止器材に弾性材を収容した構造を用いたり、弾性材を取り付けるための特殊な工法が採用されるため、コストが嵩むものであった。
本来、橋梁まくら木のように、鋼桁によってまくら木の両端部を支承する構造や、無道床軌道のまくら木のように、路床上の凹凸部によってまくら木の両端部を支承する構造では、まくら木自体が列車荷重を弾性的に支承する機能を有する。しかしながら、まくら木の弾性力によって充分な騒音の抑制効果を発揮するものは開発されておらず、まくら木の弾性力を活かせないままに別に弾性材を設けることが極めて不経済であった。
このように、騒音を抑えるために鉄道会社は多大な労力や費用を費やさざるを得ず、制振性を備えつつ保守性に優れたまくら木の開発が待たれていた。
本発明は前記事情に鑑みて提案されるもので、まくら木の底面に弾性材などを配置することなく、まくら木自身で良好な制振性を発現する制振まくら木を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために提案される請求項1に記載の発明は、まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填して一体化したものである。
尚、以下の説明では、まくら木の長手方向の曲げモーメントによってまくら木の内部に発生する応力を曲げ応力と呼び、まくら木に印加される剪断力によってまくら木の内部に発生する応力を剪断応力と呼ぶものとする。
ここで、列車の荷重がまくら木に印加されると、まくら木の内部に曲げ応力や剪断応力が生じてまくら木が歪みを生じる。まくら木が歪むと振動が生じ、発生した振動はまくら木を支承する路床や橋梁の鋼桁へ伝搬され、特定の周波数で共振が生じて大きな騒音となる。
本発明によれば、まくら木の内部または表面に、任意の形状の孔や穴、溝などで形成される空洞部が設けられる。空洞部を設けただけでは、まくら木に荷重が印加されると、まくら木に加わる曲げ応力や剪断応力によって空洞部に歪みが発生して振動を生じ、発生した振動はそのまままくら木を支承する路床や鋼桁へ伝搬されて共振の要因となる。
しかし、本発明によれば、空洞部に粘性体が充填され、当該粘性体は空洞部の内壁面に一体化されている。これにより、内壁面が歪んで振動が発生すると、振動エネルギーが粘性体で制動されて熱エネルギーに変換され、振動は急激に減衰する。従って、まくら木に加わる荷重に伴って生じる振動をまくら木自身で減衰させることができ、まくら木を支承する路床や鋼桁へ伝搬する振動が低減して、共振に伴う騒音の発生が抑制される。
空洞部は、まくら木の素材に応じた応力の許容範囲内において、まくら木の内部または表面の適宜の部位に設けることが可能である。
また、本発明は、通常の木材で製された木まくら木や合成木材で製された合成まくら木、あるいは、コンクリートまくら木(Prestressed Concrete まくら木)のいずれに適用しても騒音の抑制効果を発現する。
請求項1に記載のまくら木は、空洞部に粘性体を充填する構成を採用したものであるが、次の請求項2の構成によっても振動の減衰効果が得られる。
則ち、請求項2に記載の発明は、まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着させて一体化したものである。
本発明によれば、空洞部の内壁の一部または全部に適宜の厚さで粘性体を密着させて一体化する。従って、請求項1に記載のまくら木と同様に、荷重の印加によって空洞部の内壁面が歪んで振動が生じても、振動エネルギーが内壁に密着させて一体化した粘性体で制動されて熱エネルギーに変換され、振動が急速に減衰する。これにより、まくら木に加わる荷重に伴って生じる振動をまくら木自身で減衰させることができ、まくら木を支承する路床や鋼桁へ伝搬する振動が低減して、共振に伴う騒音の発生が抑制される。
本発明では、空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着させるが、その内部は空洞であっても良く、粘性体とは異なる部材や物質が挿入されていても良い。粘性体とは異なる部材を空洞部に挿入する構成例としては、粘性体を内壁に密着させるための補助部材を挿入する例が挙げられる。
例えば、空洞部の内壁に沿った形状の薄板(補助部材)の一面に粘性体を付着させ、当該薄板を空洞部に挿入して内壁に押圧することにより、粘性体を内壁に密着させる構成を採ることができる。この例では、空洞部の内壁に粘性体と薄板(補助部材)が密着した構成となる。
また、例えば、表面に粘性体を付着させたチューブ(補助部材)を空洞部に挿入し、チューブ内に空気を圧送して膨らませることにより、粘性体を内壁に密着させる構成を採ることができる。この例では、空洞部の内壁に粘性体とチューブ(補助部材)が密着した構成となる。このような、薄板やチューブなどの補助部材を用いることにより、空洞部の内壁に粘性体を容易に密着させることができ、しかも、補助部材を挿入することによって振動の減衰効果が低下することもない。
また、前記請求項1の発明と同様に、本発明においても空洞部は、まくら木の素材に応じた応力の許容範囲内において、まくら木の内部または表面の適宜の部位に設けることが可能である。また、本発明も、木まくら木、合成木材で製された合成まくら木、あるいは、コンクリートまくら木のいずれにも適用することが可能である。
空洞部は、まくら木への荷重の印加に伴ってまくら木に発生する応力の大きい部位に設けられる構成でもよい。
ここで、印加荷重に伴う応力が大きい部位に空洞部を設けると、応力が小さい部位に空洞部を設ける場合に比べて、空洞部の内壁に生じる歪みが大きい。従って、この空洞部の内部に粘性体を充填したり、あるいは、空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の内壁面が大きく歪んで大きな振動が発生しても、振動エネルギーを粘性体で制動して熱エネルギーに変換することにより、振動を急速に減衰させることができる。則ち、応力に伴う歪みの発生の大きい部位に粘性体を充填または密着させた空洞部を設けることにより、振動の減衰効果を増大させることができ、まくら木の支承構造への振動の伝搬が一層低減されて共振に伴う騒音の発生が防止される。
請求項4又は5に記載の発明では、空洞部は、レールまたはタイプレートが固定される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部へ向かう部位にかけて、まくら木の高さ方向の略中央部に設けられる構成とされている。
本発明は、荷重の印加に伴って生じる剪断応力の大きい部位を具体的に特定したものである。
ここで、鋼桁によってまくら木の両端部が支持される橋梁まくら木や、路床上の凹凸形の支持部によってまくら木の両端部が支持される無道床軌道のまくら木では、まくら木にレール(またはタイプレート)が固定される部位に対して、まくら木が鋼桁や支持部で支承される部位は、まくら木の長手両端部側に位置する。
このため、列車の通過時には、レール(またはタイプレート)の固定部位から長手両端部にかかる部位に大きな剪断応力が生じる。従って、この部位に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填し、あるいは、内壁に粘性体を密着させることにより、荷重の印加時において空洞部の内壁に生じる大きな歪みに伴う振動を効果的に減衰させることが可能となる。
請求項1または2に記載の発明は、前記空洞部は、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられる構成とされている。
ここで、加重の印加に伴って応力の発生する部位に粘性体を充填あるいは密着させた空洞部を設けて制振することができる。則ち、レールと支承構造である路床や桁材(鋼桁)との間で生じる振動をまくら木で減衰させることによって支承構造の振動を低減させることができる。
ところで、列車通過のような動的な荷重印加に伴って生じる振動を考察する場合、前記したレールと支承構造との間で生じる振動の他に、レールからまくら木に印加される振動エネルギーによって当該まくら木で振動が増幅される共振の発生に対して考慮する必要がある。
まくら木の共振は、まくら木全体を支承するバラスト道床などでは殆ど問題とならない。しかし、まくら木を2点で支承する橋梁軌道や無道床軌道においては、まくら木の共振に伴う振動エネルギーの増大が無視できないものとなる。則ち、まくら木を2点で支承する橋梁軌道などは、まくら木に印加される振動によって、桁材に支承される部位から長手両端部側が共振して振動エネルギーが増幅され、まくら木の両端部が翼のようにばたつきを生じることが考えられる。このため、まくら木から桁材へ大きな振動エネルギーが伝搬されて騒音が拡大される虞が生じる。従って、特に橋梁軌道などにおける騒音低減を図る際は、まくら木における共振の発生を抑制することが有効な対策となる。
本発明によれば、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて空洞部を設け、当該空洞部に粘性体が充填され、あるいは、当該空洞部に粘性体が密着される。従って、桁材に支承される部位から長手両端部側が共振しようとしても、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて効果的に減衰され、共振の発生が抑制される。これにより、まくら木における共振の発生を効果的に抑制して桁材(鋼桁)への大きな振動の伝搬を抑え、騒音の発生を防止することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のまくら木において、空洞部は、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成される構成とされている。
本発明は、請求項1または2におけるまくら木において、空洞部の形状を具体的に示したものである。
ここで、請求項1に記載したまくら木のように、橋梁軌道や無道床軌道に敷設する場合、レールの固定部から長手両端部にかけて大きな剪断応力が生じる。則ち、荷重印加時に空洞部に剪断応力が集中して、内壁面が剪断方向に大きく変形する。一方、まくら木の高さ方向の略中央部は、曲げ応力の向きが変わる部位でもある。則ち空洞部の上下面に注目すると、一方の面は縮み他方の面は伸びる。
ここで、まくら木に発生する応力は、曲げ応力の方が剪断応力よりもはるかに高い。しかし、通常の角柱形状の橋梁まくら木や無道床軌道のまくら木では、曲げ応力に対する余裕度は大きく、剪断応力に対する余裕度が一般に少なくなる。
本発明によれば、レール(またはタイプレート)の固定部位から長手両端部にかけてスリット状の開口でなる空洞部を設けることにより、まくら木の両端部近傍を上梁と下梁に隔てた構造である。従って、空洞部による高さ方向の欠落部分が少なく、空洞部を設けない場合に比べて剪断応力の許容度の低下が少なくなり、設計の自由度が向上する。
一方、請求項2に記載したまくら木のように、橋梁軌道や無道床軌道に敷設する場合、加重の印加に伴って応力が生じない部位に空洞部が設けられる。
従って、本発明によれば、まくら木の共振を効果的に抑制しつつ、耐荷重強度の低下を抑えたまくら木とすることが可能である。
本発明を請求項5のまくら木に適用する場合、前記したように、空洞部は応力の生じない部位に設けられる。従って、空洞部は、まくら木の長手両端部側を開放しない貫通孔としても良く、長手両端部側を開放した切り欠き形状としても良い。
本発明において、空洞部のまくら木の長手方向における端部内壁に沿って補強部材を装着した構成を採るのが良い。本発明のまくら木では、まくら木の高さ方向の中央部に空洞部を設けるので、空洞部を設けない場合に比べて剪断応力に対する強度低下は少ない。しかし、空洞部のまくら木の長手方向における端部では、剪断応力が集中して挫屈や破断を生じ易い。特に、合成木材で製されたまくら木では、剪断応力の許容上限値が低く、空洞部の端部が損傷し易い。
空洞部におけるまくら木の長手方向の端部内壁に沿って補強部材を装着する構成を採ることにより、角や曲面で形成される空洞部の端部に集中する剪断応力を補強部材によって分散させることができ、剪断応力による局部的な損傷を効果的に防止することが可能となる。
補強部材は、空洞部におけるまくら木の長手方向の端部内壁に沿って全長に渡って設けても良く、端部内壁の一部に設けても良い。端部内壁の全長に渡って補強部材を設けることにより、空洞部の端部に集中する応力を効果的に分散させて、応力に対する許容度を増大させることが可能である。
また、空洞部の端部に補強部材を装着した後に、空洞部の内部に粘性体を充填する構成を採ることができる。また、空洞部の端部に補強部材を装着した後に、補強部材が装着された部位以外の空洞部の内壁に粘性体を密着させる構成や、空洞部の内壁と補強部材の双方に粘性体を密着させる構成とすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のまくら木において、空洞部は、まくら木の表面に設けた溝または穴の少なくともいずれかで形成される。
前記したように、まくら木の素材に応じた応力の許容範囲内において、まくら木の内部または表面の適宜の部位に空洞部を設けることが可能である。
本発明によれば、まくら木の上面または底面または長手両側面または短手両側面の少なくともいずれかの面に、溝や穴で形成される空洞部が設けられる。従って、当該空洞部の内部に粘性体を充填したり、あるいは、当該空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴う振動を効果的に減衰させることが可能となる
例えば、まくら木にレール(タイプレート)が固定される上面部位に対して、まくら木を支承する底面部位がまくら木の長手両端部に近接する構造では、荷重の印加時に、まくら木の上面側に大きな圧縮応力、底面側に大きな引張応力が生じる。このような大きな圧縮応力や引っ張り応力が生じる部位に、穴や溝で形成される空洞部を設けて粘性体を充填したり、粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴って発生する振動を効果的に減衰させることが可能となる。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のまくら木において、空洞部は、まくら木を高さ方向または幅方向へ貫通する少なくともいずれかの貫通孔で形成される。
前記したように、まくら木の素材に応じた応力の許容範囲内において、まくら木の内部または表面の適宜の部位に空洞部を設けることが可能である。
本発明によれば、まくら木を高さ方向や幅方向へ貫通する空洞部が設けられる。従って、当該空洞部の内部に粘性体を充填したり、あるいは、当該空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴って発生する振動を効果的に減衰させることが可能となる
例えば、前記の発明で述べたように、列車の通過時には、まくら木のレール(またはタイプレート)の固定部位から長手両端部にかけて大きな曲げ応力や剪断応力が生じるので、当該部位にまくら木の高さ方向や幅方向へ貫通する空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填し、あるいは、当該空洞部の内壁に粘性体を密着させることにより、空洞部の歪みに伴って生じる振動を急激に減衰させることができ、騒音の発生を効果的に防止することが可能となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のまくら木において、粘性体の有する損失係数tanδが0.1以上である構成とされている。
前記したように、空洞部に粘性体を充填した構成、あるいは、空洞部の内壁に粘性体を密着させた構成では、いずれも、空洞部の内壁に粘性体が密着して一体化することにより、粘性体の有する粘性によって内壁の歪みに伴う振動を抑制する。従って、振動の減衰効果は粘性体の物性に依存する。
粘性体は、単一の物質または分散性の物質として粘性を発現する物質であり、粘性を表す指標、則ち、動的粘弾性を示す損失係数tanδが大きいほど、振動に対して大きな減衰効果が得られる。
粘性体の損失係数tanδが0.1未満のときは、粘性が少なく、粘性体を設けることによる振動の減衰効果が発現しない。振動の減衰効果の面から、粘性体の損失係数tanδは0.1以上が良く、粘性体の損失係数tanδは1以上が最適である。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のまくら木において、粘性体は、ポリオールとイソシアネートを混合し硬化させて得られるゲル材である。
粘性体を単一の物質で構成する場合、ゲル材が用いられる。
ここに、本発明においてゲルとは、架橋性の高分子材料において、架橋間の分子が軟質なポリマー構造をもつものを指す。例えば、軟質ウレタン、ポリオレフィンなど分岐の少ない直鎖型のポリマーがゲルに該当する。一方、同じ直鎖型でもポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどはゲルに該当しない。
一般に、軟質なポリマーであるかどうかの判断は、主鎖の重合単位に炭素数2以上のアルキレン基が含まれるかどうかによってなされる。例えば、エチレンやプロピレンが主鎖に含まれていれば、軟質なポリマーとなる可能性が高い。一方、ベンゼン環のような共役環が含まれていると、その可能性は低くなる。
また、これらのゲルは、それぞれのポリマーに相溶性の高い不揮発性の液状物質とともに用いられても良く、これによって粘性が向上する。例えば、軟質ウレタンであれば液体ポリオール、ポリオレフインであればオイルなどが組み合わせて用いられる。
特に、粘性体にポリオールとイソシアネートを混合し硬化させて得られるゲル材を用いることにより、損失係数tanδが大きく、耐候性、耐薬品性にも優れ、粘性体として最適である。
粘性体は、単一の物質に限らず、マトリックスとなる物質中に任意の形状の鉱物、無機物、金属、複合材等の物質が分散することにより粘性を発現する分散性の物質であっても良い。例えば、ベアリング、砂、フライアッシュ、アエロジル、鉄粉、マイカ、ガラス繊維、粘土鉱物などが分散材として用いられる。また、分散材は極微小なものであっても良く、例えば粘土鉱物のように、顕微鏡を用いなければ形状が確認できないようなものでも良い。
尚、防振材として広く用いられるゴムやウレタンエラストマーなどの軟質弾性材も上記した架橋性の高分子材料に該当するが、安価に入手できるものは粘性が不足しており、粘性体としては不適当である。仮に、合成段階で直鎖型のポリマー成分を多くしたり、不揮発性の液状物質と組み合わせたりすれば、弾性材としては機能しなくとも、ゲルに相当する粘性が発現する。また、例外的にポリノルボルネン等の極めて分子量の高い直鎖型のポリマーの中には、ゴムでありながら粘性の高いものも存在する。これらは高価であるが、本発明における粘性体として用いることが可能である
また、粘性体を分散性の物質と複合して用いる場合、マトリックスとなる物質がゲルであれば振動の抑制効果は大きいが、必ずしもゲルである必要はない。これは分散性の物質自身に損失係数tanδを引き上げる効果があるためである。
例えば、マイカのような板状結晶をもつ粒子は、マトリックス中に分散すると0.1以上のtanδを発現すると言われており、大きな減衰効果が期待できる。従って、仮にゴムやウレタンエラストマーのような軟質な弾性材であっても、これらの物質を分散できれば、大きな減衰効果が得られる可能性がある。通常は分散性を考慮して、マトリックスに不揮発性の液状物質またはゲルが用いられる。
本発明のまくら木によれば、まくら木に加わる荷重によって生じる振動をまくら木自体で効果的に減衰させることができ、まくら木を支承する部位への振動の伝搬が低減されて、共振に伴う騒音の増大を効果的に防止することが可能となる。また、粘性体の耐久性が高いので、頻繁にメンテナンスする必要がなく、保守に要する手間やコストを大幅に削減することが可能となる。
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のまくら木に採用する空洞部を削設したまくら木を示す斜視図である。図2(a)は、図1に示すまくら木に補強部材を装着する手順を示す斜視図、同図(b)は(a)のまくら木の空洞部に粘性体を充填した状態を示す斜視図である。図3は、本実施形態のまくら木を示す正面図である。図4は、図3に示すまくら木を橋梁まくら木として敷設した例を示す斜視図である。図5は、図3に示すまくら木の振動試験の構成を示す説明図である。図6は、図3に示すまくら木および従来のまくら木の振動試験の結果を示すグラフである。図7(a)は、図3に示すまくら木に別の補強部材を装着する手順を示す斜視図、同図(b)は(a)のまくら木に粘性体を充填した状態を示す斜視図である。図8は、変形実施形態のまくら木を示す斜視図である。図9は、図8のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。図10は、変形実施形態のまくら木を示す斜視図である。図11は、図10のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。図12(a)は、別の変形実施形態のまくら木を示す斜視図、同図(b)は(a)の部分拡大図である。図13は、図12のまくら木の変形例を示す部分拡大図である。
本実施形態の制振まくら木1の構造を、製造過程を追いつつ以下に順次説明する。まず、図1の様に、通常サイズのまくら木10に空洞部11を削設する。空洞部11は、まくら木10にタイプレートTが固定される部位の近傍からまくら木の長手両端部側にかかる部位であって、まくら木10の高さ方向の略中央部に、上面10aおよび底面10cに略平行に、まくら木10の幅方向へ貫通するスリット状の開口(空洞部)11を設けて形成される。
則ち、空洞部11は、図1および図2(a)に示すよう、まくら木10の長手両端部近傍に設けられた幅の狭い平面状の空間である。空洞部11のまくら木10の長手方向における端部11a,11aの内壁は、まくら木10の幅方向全長に渡って半円状に削設されている。
次いで、図2(a)の様に、空洞部11の両端部11a,11aの内壁に沿って補強部材12を装着する。補強部材12は、金属薄板を空洞部11の端部11aの内壁の曲率に合わせて湾曲させた部材で、まくら木10の幅と略等しい長さを有する。補強部材12は、空洞部11の左右の端部11aの内壁に沿って圧入して装着される。
空洞部11に補強部材12を装着した後、図2(b)の様に、空洞部11の内部に粘性体13を充填する。これにより、粘性体13は空洞部11の内壁面に密着してまくら木10と一体化される。以上の製造手順により、制振まくら木1が完成する。尚、粘性体13の組成および充填方法については後述する。
このようにして製された制振まくら木1は、図3の様に、まくら木10の上面10aのタイプレートTが固定される位置から、まくら木10の長手両端部にかかる部位に空洞部11が設けられ、当該空洞部11の両端部11aの内壁に沿って補強部材12が装着されると共に、空洞部11の内部に粘性体13が充填されて一体化された構造を有する。
本実施形態の制振まくら木1は、例えば、図4の様に橋梁用まくら木として使用される。則ち、まくら木10の上面10aにはタイプレートTを介してレールRが固定され、タイプレートTが固定される部位よりもまくら木10の長手両端部側の底面10cは、橋梁のI型鋼桁15,15で支承されるように敷設される。
従って、図3に示すように、まくら木10は列車の通過に際してタイプレートTを介して列車からの荷重F1を受けると共に、I型鋼桁15から支承力F2を受ける。則ち、まくら木10には、荷重F1および支承力F2によって長手方向の大きな曲げ応力が生じると共に、荷重F1および支承力F2の印加される近傍において大きな剪断応力が生じる。
このように、本実施形態の制振まくら木1では、大きな曲げ応力および剪断応力が生じる部位に空洞部11を設けるので、まくら木10へ荷重が印加されると空洞部11には大きな歪みが生じ、歪みの発生に伴って振動が生じる。しかし、空洞部11の内壁に粘性体13が密着して一体化しているので、発生した振動エネルギーは粘性体13で制動されて熱エネルギーに変換され、振動は急速に減衰を受ける。則ち、列車の通過に伴って制振まくら木1に振動が発生しても、制振まくら木1自体によって振動を減衰させるので、制振まくら木1から鋼桁15へ伝搬される振動が低減する。これにより、持続した振動がI型鋼桁15へ伝搬され、共振によって騒音が増大することを防止することが可能となる。
本発明者らは、本実施形態の制振まくら木1の制振効果を検証するために、図5に示す制振まくら木1を試作した。
試作例の制振まくら木1は、ガラス繊維で強化された硬質ウレタン樹脂発泡体を素材とする合成木材(商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製、比重0.74)を採用し、この合成木材を長さL(1400mm)、幅W(200mm) 、高さH(140mm) のサイズに切り出したまくら木10を使用した。
このまくら木10に空洞部11を削設した。空洞部11は、幅W1(350mm) 、高さH1(16mm)、奥行きD1(200mm) であり、まくら木10の長手両端部から長さd1(175mm) の部位から長手中央部に渡る部位であって高さ方向の中央部に、上面10aおよび底面10cに平行になるように、まくら木10を幅方向へ貫通して削設した。空洞部11の幅方向の両端部11a,11aの内壁は、高さH1の半分(6mm) の半径のアールを持たせた。
続いて、前記図2(a)に示した手順で、空洞部11の両端部11aに補強部材12を装着した。補強部材12は、長さ(200mm) の金属版を短手方向へ湾曲させた部材であり、空洞部11の両端部11aの内周壁に沿うように、外周壁のアールを半径6mmに形成した部材である。
続いて、空洞部11に粘性体13を充填した。粘性体13は、下記に示す処方の2種類の液体を混合して得られるウレタンゲルを用いた。則ち、ポリオールとイソシアネートを混合して空洞部11に注入し、空洞部11の両側に蓋をして数日間熟成させることにより、反応硬化したウレタンゲルが空洞部11の内部に充填された。これにより、空洞部11の内壁にウレタンゲルが密着して一体化された粘性体13が形成されて試作の制振まくら木1が完成した。このときの粘性体(ウレタンゲル)13の損失係数tanδは略1であった。
(粘性体の処方例)
住化バイエルウレタン社製ポリオール(品名:STP-00EC07)・・・92重量部
住化バイエルウレタン社製イソシアネート(品名:ST-0397 ) ・・8重量部
試作した制振まくら木1の制振効果を確認するために振動試験を行った。振動試験に際しては、制振まくら木1に用いたまくら木10と同一素材、同一外形を有し、空洞部11を設けないまくら木を比較例として用意した。
振動試験は、図5の様に、試作例(制振まくら木1)および比較例の各々について、まくら木10の長手両端部をI型鋼桁15で支承した状態で上面10aに鋼球Kを落下させ、そのときのI型鋼桁15で観測される振動レベルを比較することにより行った。
振動試験に用いたI型鋼桁15は、フランジ15aの幅W2(175mm) 、ウエブ15bの高さH2(500mm) 、長さL2(500mm) であり、まくら木10をI型鋼桁15と直交させ、ウエブ15bの厚さ中心がまくら木10の長手両端部から長さD2(262.5mm) の部位に位置するようにしてまくら木10を支承した。
鋼球Kは直径が50mmであり、まくら木10の長手端部から長さD3(437.5mm) の上面10aの幅方向中央部に、高さD4(100mm) から落下させた。また、I型鋼桁15の振動観測は、ウエブ15bの高さ方向中央部に振動測定器(不図示)のセンサーヘッドMを配置して行った。比較例についても、同様の配置によって振動試験を行った。
振動試験の結果を、横軸に振動の周波数[Hz]、縦軸に振動レベル[dB]を取って図6のグラフに示す。図6の比較例の試験結果から分かるように、鋼球Kの落下衝撃により、I型鋼桁15のウエブ15bには、1KHz近傍を中心に300〜3KHzに渡る周波数帯域において共振に伴う強い振動が励起されることが分かる。一方、この周波数帯域において、試作例の制振まくら木1は比較例に対して最大15dBの振動抑制効果を発現していることが分かる。
このように、本実施例の制振まくら木1によれば、まくら木10に空洞部11を設け、当該空洞部11に粘性体13を充填することにより、まくら木10の歪みに伴う振動をまくら木10自体で効果的に減衰させることが可能である。これにより、共振を誘発し易いI型鋼桁15などで支承する橋梁まくら木として使用した場合であっても、まくら木10からI型鋼桁15への振動の伝搬が低減され、共振に伴う騒音の発生を効果的に抑制することが可能となる。
また、粘性体としてウレタンゲル材を用いることにより、ゴムなどの軟質弾性材に比べて弾性劣化を生じることがなく、耐久性を著しく向上させることができる。更に、空洞部11に粘性体13を充填した構造であるので、まくら木と支承部材との間に軟質弾性材を挟む構造のように、弾性材が押圧を受けて横ずれすることがない。従って、弾性材の横ずれ防止用の専用器材や特殊な工法を採用する必要がなく、通常のまくら木を敷設する場合と同様に極めて容易に敷設を行うことが可能となる。
これにより、制振性を確保しつつ、従来のまくら木のような弾性材の交換のための多大な労力や費用が不要となる。また、空洞部11に補強部材12を装着するので、まくら木10に生じる応力に対する強度を確保することができ、荷重に対して充分な強度を有する制振まくら木1とすることができる。
ところで、前記実施形態で述べた制振まくら木1(図3参照)では、空洞部11の内部に粘性体13を充填した構造を採用したが、空洞部11の内壁に粘性体13を密着させて一体化した構成としても振動の減衰効果を発現させることが可能である。
空洞部11の内壁に粘性体13を密着させる方法としては、例えば、金属薄板の一面に前記したポリオールとイソシアネートを混合したものを塗布して適度のゲル状に硬化させ、この状態で金属薄板を空洞部11の内部に挿入して内壁に押圧する。これにより、金属薄板に塗布されたウレタンゲルが空洞部11の内壁に密着して一体化した状態で硬化する。この手順で製する場合は、金属薄板が空洞部11の内部にウレタンゲルによって固着したままの状態となるが、振動の減衰効果に影響を及ぼすことはない。
また、空洞部11の内壁に粘性体13を密着させる別の方法としては、例えば、伸縮チューブの外壁に前記したポリオールとイソシアネートを混合したものを塗布して適度のゲル状に硬化させ、この状態でチューブを空洞部11の内部に挿入する。そして、チューブに空気を圧送して膨らませることにより、チューブに塗布されたウレタンゲルを空洞部11の内壁に密着させて一体化した状態で硬化させる方法を採ることもできる。
ところで、まくら木10に荷重が印加されると、空洞部11の両端部11aに曲げ応力や剪断応力が集中し、特に、両端部11aのまくら木10の側面10bに近接した部位(両端部11aの内壁の端部)では応力の集中に伴って挫屈や破断が生じ易い。
従って、空洞部11の両端部11aの内壁の端部以外の部位における応力の許容値に余裕がある場合は、前記図2に示した補強部材12に代えて、図7に示す補強部材14を用いることも可能である。図7に示す補強部材14は、空洞部11の両端部11aの内周壁に沿って湾曲した挿入部14aと、挿入部14aの端部を外側に折り返したフランジ部14bを有した金属部材であり、空洞部11の両端部11aに沿って挿入部14aを挿入し、フランジ部14bをまくら木10の両側面10b,10bに当接させて装着する構成とされている。このように補強部材14を装着することにより、空洞部11の両端部11aの内壁の端部に集中する応力を分散して挫屈や破断を効果的に防止することが可能となる。
ここで、前記実施形態(実施例)で示した制振まくら木1は、まくら木10の荷重印加部位から支承部位に渡る部分に空洞部11を設けることにより、空洞部11に生じる歪みに伴う振動を粘性体13で制動して減衰させるものであった。
ところで、まくら木10に荷重が印加されたときに大きな応力が生じる部位は、前記制振まくら木1において空洞部11を設けた部位以外にも分布する。これら大きな応力が生じる部位に空洞部を設けて粘性体を充填しても、前記制振まくら木1と同様に優れた制振効果を発現させることが可能である。
以下に、前記実施形態で示した制振まくら木1とは異なる部位に空洞部を設けた制振まくら木の実施形態を順次説明する。
図8は、まくら木10の上面10aの長手中央部に、円柱形の空洞部20を複数配列し、当該空洞部20の内部に粘性体13を充填した構造の制振まくら木2を示したものである。
制振まくら木2は、タイプレートTが固定されるまくら木10の上面10aの部位に下方へ向けて荷重F1が印加され、まくら木10の底面10cの支承部位に上方へ向けてF2の支承力が加わる。このため、まくら木10の長手中央部が下方へ湾曲し、湾曲に伴って上面10aには圧縮応力が生じ、底面10cには引っ張り応力が生じる。
従って、図8の様に、圧縮応力の発生するまくら木10の上面10aの長手中央部に円柱形の空洞部20を複数配列することにより、荷重の印加に伴って空洞部20に曲げ応力による大きな歪みが発生する。この空洞部20の内部に、前記制振まくら木1で採用した粘性体13を充填し、粘性体13を空洞部20の内壁に密着させて一体化させている。これにより、空洞部20の歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることが可能となり、前記制振まくら木1と同様に、支承構造への振動の伝搬が低減されて共振に伴う騒音の発生を効果的に防止することが可能となる。
また、図9の拡大図に示す様に、上面10aの空洞部20に加えて、引っ張り応力が発生するまくら木10の底面10cの中央部に、上面10aに設けたものと同一の円柱形の空洞部20を対峙させて配列し、当該空洞部20の内部に粘性体13を充填した構造としても良い。この構造によれば、上面10aに加えて、底面10cに設けた空洞部20の歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることが可能となり、支承構造へ伝搬される振動が一層低減し、共振に伴う騒音の発生を効果的に防止することが可能となる。
尚、まくら木10への荷重の印加に伴って内部に発生する応力が、まくら木10を構成する素材の応力の許容範囲内である条件を満たせば、空洞部20をまくら木10の適宜の部位に設けることが可能である。
図10は、まくら木10の上面10aの長手中央部に、長手方向へ向けて溝状の空洞部30を平行に削設し、当該空洞部30の内部に粘性体13を充填した構造の制振まくら木3を示したものである。則ち、前記図9に示した制振まくら木2の空洞部20に代えて、溝状の空洞部30を削設した構造である。
本実施形態の制振まくら木3においても、タイプレートTを介してまくら木10の上面10aに印加される荷重F1と、まくら木10の底面10cに加わる支承力F2により、まくら木10の上面10aには圧縮応力が生じ、底面10cには引っ張り応力が生じる。
従って、圧縮応力の発生するまくら木10の上面10aの中央部に長手方向へ向けて溝状の空洞部30を平行に配列することにより、荷重の印加に伴って空洞部30に応力による大きな歪みが発生する。制振まくら木3では、空洞部30の内部に粘性体13を充填し、粘性体13を空洞部30の内壁に密着させて一体化する。これにより、空洞部30の歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることが可能となり、前記制振まくら木2と同様に、支承構造へ伝搬される振動が低減し、共振に伴う騒音の発生を防止することが可能となる。
また、図11の拡大図に示す様に、引っ張り応力が発生するまくら木10の底面10cの中央部に、上面10aに設けたものと同一の溝状の空洞部30を対峙させて配列し、当該空洞部30の内部に粘性体13を充填した構造としても良い。この構造によれば、上面10aに加えて、底面10cに設けた空洞部30の歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることができ、支承構造へ伝搬される振動を一層低減することができる。これにより、支承構造における共振に伴う騒音の発生を一層防止することが可能となる。
尚、本実施形態においても、まくら木10への荷重の印加に伴って発生する応力が、まくら木10を構成する素材の応力の許容範囲内である条件を満たせば、空洞部30をまくら木10の適宜の部位に設けることが可能である。
図12(a),(b)は、まくら木10の上面10aの長手両端部近傍に、高さ方向へ向けて円形の貫通孔で成る空洞部40を複数設け、当該空洞部40の内部に粘性体13を充填した構造の制振まくら木4を示したものである。
本実施形態の制振まくら木4は、前記実施形態で示した制振まくら木1(図3参照)におけるスリット状の空洞部11に代えて、円形の貫通孔で成る空洞部40を複数配列した構造である。
円形の貫通孔で成る空洞部40を複数配列することにより、荷重の印加に伴って空洞部40に応力による大きな歪みが発生する。制振まくら木4では、空洞部40の内部に粘性体13を充填し、粘性体13を空洞部30の内壁に密着させて一体化させている。これにより、空洞部40の歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることが可能となり、前記制振まくら木1と同様に、支承構造へ伝搬される振動が低減されて共振に伴う騒音の発生を効果的に防止することが可能となる。
また、図13の拡大図に示す様に、大きな応力が発生するまくら木10の長手両端部近傍に、幅方向へ貫通する円形の貫通孔で成る空洞部41を複数配列し、、当該空洞部41の内部に粘性体13を充填した構造としても良い。この構造によっても、まくら木10の長手両端部近傍の応力によって空洞部41に生じる歪みに伴う振動を粘性体13で速やかに減衰させることができ、支承構造への振動の伝搬を低減することができる。これにより、支承構造における共振に伴う騒音の発生を一層防止することが可能となる。
本実施形態においても、まくら木10への荷重の印加に伴って発生する応力が、まくら木10を構成する素材の応力の許容範囲内である条件を満たせば、空洞部40,41をまくら木10の適宜の部位に設けることが可能である。
次に、前記実施形態で説明した制振まくら木1〜4とは異なり、加重印加による応力の発生しない部位に空洞部を設けた制振まくら木の実施形態を説明する。
図14は制振まくら木5を示す斜視図、図15は図14に示す制振まくら木5で実施する振動試験の構成を示す説明図である。
本実施形態の制振まくら木5は、図14の様に、まくら木10の長手両端部に空洞部50を設け、当該空洞部50の内部に粘性体13を充填した構造である。空洞部50は、まくら木10の長手両端部から長手中央方向へ延びるスリット状の切り欠きであり、まくら木10の高さ方向の略中央部に、上面10aおよび底面10cに略平行に、まくら木10の幅方向全長に渡って切り欠いて形成される。空洞部50の端部50aとまくら木10の長手端部との長さ、則ち、空洞部50の幅は、後述する様に、空洞部50の端部50aとI型鋼桁15のフランジ15aの外方側端部とを一致させる形状としている。
本発明者らは、本実施形態の制振まくら木5の制振効果を検証するために、図15に示す制振まくら木5を試作した。試作例の制振まくら木5は、前記した制振まくら木1(図5参照)と同様に、合成木材(商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製、比重0.74)を採用し、この合成木材を長さL(1400mm)、幅W(200mm) 、高さH(140mm) のサイズに切り出したまくら木10を使用した。
このまくら木10に空洞部50を削設した。空洞部50は、幅W3(175mm) 、高さH3(20mm)、奥行きD1(200mm) であり、まくら木10の高さ方向の略中央部に長手両端部から長手中央部に渡る部位を、上面10aおよび底面10cに平行になるように切り欠いて形成した。
そして、空洞部50に粘性体13を充填した。粘性体13は、前記した制振まくら木1に用いたものと同一である。この粘性体13を空洞部50に注入し、空洞部50の周囲に蓋をして数日間熟成させることにより、反応硬化したウレタンゲルが空洞部50の内部に充填された。これにより、空洞部11の内壁にウレタンゲルが密着して一体化された粘性体13が形成されて試作の制振まくら木5が完成した。このときの粘性体(ウレタンゲル)13の損失係数tanδは略1であった。
試作した制振まくら木5の制振効果を確認するために振動試験を行った。振動試験に際しては、制振まくら木5に用いたまくら木10と同一素材、同一外形を有し、空洞部11を設けないまくら木を比較例として用意した。
振動試験に用いたI型鋼桁15は、図15の様に、フランジ15aの外方側端部が制振まくら木5の空洞部50の端部50aと一致させるように配置した。
振動試験は、図15の様に、試作例(制振まくら木5)および比較例の各々について、まくら木10の長手両端部をI型鋼桁15で支承した状態で上面10aに鋼球Kを落下させ、そのときのI型鋼桁15で観測される振動レベルを比較することにより行った。尚、振動試験に用いたI型鋼桁15の形状および鋼球Kの形状、落下位置は前記図5に示した振動試験と同一であるので、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
試験の結果、比較例のまくら木に対して本実施形態の制振まくら木5は、前記実施形態の制振まくら木1と同様に、300〜3KHzに渡る周波数帯域において制振効果が発現することが分かった。これは、まくら木10に振動が伝搬した場合でも、空洞部50の内部に設けた粘性体13によって、まくら木10の長手両端部が翼のようにばたついて共振することが防止されるためと考えられる。
このように、本実施形態の制振まくら木5によれば、まくら木10の長手両端部にスリット状の空洞部50を設けて粘性体13を充填するだけの極めて簡単な構造によって、耐荷重強度を低下させることなく、まくら木10自体の共振を効果的に抑制することができる。従って、制振まくら木5を橋梁軌道や無道床軌道に採用することにより、支承構造である鋼桁15などへ伝搬される振動エネルギーを低減することができ、結果として鋼桁15の共振を抑えて騒音の発生を効果的に防止することが可能となる。
尚、前記図15に示した振動試験では、I型鋼桁15のフランジ15aの外方側端部と空洞部50の内方側端部とを一致させる構成としたが、双方の端部をオーバーラップさせる構成とすることも可能である。この場合、I型鋼桁15のフランジ15aの外方側端部と空洞部50の内方側端部とがオーバーラップする長さを50mm以下とすることにより、制振効果を維持しつつ空洞部50の内方側端部における挫屈や亀裂の発生を防止することが可能である。
また、本実施形態の制振まくら木5は、空洞部50の内方側端部を断面がコ字状に形成したが、適宜のアールを持たせた形状とすることも可能である。また、空洞部50の内方側端部に、前記図2,図7に示した補強部材を装着しても良い。
以上、本発明の実施形態に係る制振まくら木1〜5を説明したが、本発明は前記実施形態に示した構造に限定されるものではなく、まくら木10の内部や表面の適宜の部位に粘性体を充填した空洞部を設けた構造を採ることが可能である。また、前記実施形態に示した制振まくら木1〜5に設けた空洞部を組み合わせた構成とすることも可能である。
更に、本発明は、合成木材で製されたまくら木のみならず、通常の木材で製されたまくら木やコンクリートまくら木に適用することも可能である。
また、前記実施形態では、制振まくら木を橋梁まくら木として用いる場合を例に挙げて説明したが、路床上の凹凸の支承部に両端部を支承される無道床まくら木に適用する場合にも同様の制振効果を奏する。
本発明の実施形態に係るまくら木に用いる空洞部を削設したまくら木の製造過程を示す斜視図である。 (a)は、図1に示すまくら木の空洞部に補強部材を装着する手順を示す斜視図、(b)は(a)に示す空洞部に粘性体を充填した状態を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係るまくら木の正面図である。 図3に示すまくら木を橋梁まくら木として用いる場合の敷設例を示す斜視図である。 図3に示すまくら木に対して実施する振動試験の構成を示す正面図である。 図3に示すまくら木の試作例と従来のまくら木(比較例)との振動試験の結果を示すグラフである。 (a),(b)は、補強部材の変形例の構造および装着手順を示す斜視図である。 本発明の別の実施形態に係るまくら木を示す斜視図である。 図8に示すまくら木の変形例を示す部分拡大図である。 本発明の別の実施形態に係るまくら木を示す斜視図である。 図10に示すまくら木の変形例を示す部分拡大図である。 (a)は、本発明の更に別の実施形態に係るまくら木を示す斜視図、(b)は(a)の部分拡大図である。 図12に示すまくら木の変形例を示す部分拡大図である。 本発明の別の実施形態に係るまくら木を示す斜視図である。 図14に示すまくら木に対して実施する振動試験の構成を示す正面図である。
符号の説明
1,2,3,4,5 制振まくら木
10 まくら木
11,20,30,40,41 空洞部
12,14 補強部材
13 粘性体

Claims (9)

  1. まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填して一体化させるものであり、前記空洞部は、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられることを特徴とするまくら木。
  2. まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着させて一体化させるものであり、前記空洞部は、桁材によってまくら木が支承される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられることを特徴とするまくら木。
  3. 前記空洞部は、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のまくら木。
  4. まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部に粘性体を充填して一体化させるものであり、前記空洞部は、レールまたはタイプレートが固定される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられるものであって、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とするまくら木。
  5. まくら木の内部または表面に空洞部を設け、当該空洞部の内壁の一部または全部に粘性体を密着て一体化させるものであり、前記空洞部は、レールまたはタイプレートが固定される部位の近傍からまくら木の長手方向両端部側にかけて設けられるものであって、まくら木の高さ方向の略中央部に、まくら木の上面および底面に略平行に幅方向全長に渡るスリット状の開口または切り欠きで形成されることを特徴とするまくら木。
  6. 前記空洞部は、まくら木の表面に設けた溝または穴の少なくともいずれかで形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のまくら木。
  7. 前記空洞部は、まくら木を高さ方向または幅方向へ貫通する少なくともいずれかの貫通孔で形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のまくら木。
  8. 前記粘性体の有する損失係数tanδが0.1以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のまくら木。
  9. 前記粘性体は、ポリオールとイソシアネートを混合して得られるゲル材であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のまくら木。
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