JP3928698B2 - 透明のプラスチックフィルムが圧着された建材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価な基材でも高級感を与える自由で多様な木目模様が形成される、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば木質框組ドアは、図2に示すように、無垢材や集成材の削り出しによる縦框110,110、横框120,120よりなる框部材や鏡板130が組み立てられたうえ、多くは塗装されることによって製作されている。
【0003】
しかしながら、上記塗装には次の問題点がある。すなわち、
(ア)塗料の歩留まりが低い。
(イ)工程が長く、塗料の乾燥・硬化に時間を要する。
(ウ)塗膜厚さの均一性確保が困難である。
(エ)作業環境を汚染・悪化させる。
(オ)塗料の保存が困難である。
【0004】
他方、図4に示すように、高級感付与のために木目模様が表面に形成されるよう、安価な合板・LVL・MDF等の木質ボードよりなる基材Bの表裏面に、各種天然木がスライスされた突き板Tが二次貼りされたものが使用されているが、予め基材Bの端面に前記突き板Tと同材種よりなる形状加工部分が結合(幅剥ぎ)される必要があり、加工工数が嵩むという問題点がある。
【0005】
また、同様の狙いから、図示は省略するが、基材に対して、予め塗装仕上げされた天然木突き板のラッピングが実施されているが、その突き板が柔軟性に欠けるため、ラッピング時に割れを生じ易く、その割れの低減のためには裏打ち処理が必要であり、その処理によってコストが増大するという問題点がある。
【0006】
上述の塗装の問題点の解決のために、既に特開2000−202811公報に記載のものが本出願人によって提案されている。
その要旨は、図5に示すように、基材Bの表面のうち、保護の必要な部分に、接着剤を介して、基材Bの原形及び色・模様が外観にもそのまま表れるよう、透明のプラスチックフィルムF0が圧着されることよりなる。
【0007】
この提案の主眼は主として基材Bの保護にあって、基材として安価な合板・LVL・MDF等の木質ボードが用いられる場合、そのままでは、継目や木目や節や割れが透過して見えるため、例えば特開平11−77902号公報や特開2000−211091公報には、それらを覆い隠し、好みの木目模様が形成されるよう、予めその木目模様が印刷されたプラスチックフィルムのラッピングが実施されている。しかしながら、それによって得られたものには天然木特有のキラッと輝くような感じを与える「照り」や立体感を与える「深み」がなく、天然木に比較して著しく見劣りするという問題点がある。
【0008】
その改善のため、前記特開平11−77902号公報には、木目模様の印刷されたプラスチックフイルムが予めラミネートされた天然木突き板が基材へ貼着されることによって高級感が付与されることよりなる提案がなされているが、いずれにしても、近年の高級木材資源の不足から天然木突き板によっては、高級感があって、しかも多様な木目模様を持つ建材を安価に大量に製作することは次第に困難になりつつある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的とするところは、上記従来例の欠点を解消したところの、安価な基材でも自由で多様な木目模様が形成され、高級感を与える、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達するために、請求項1の発明の透明のプラスチックフィルムが圧着された建材は、基材の表面のうち、保護及び化粧が必要な部分に、接着剤を介して、基材の形状及び色・模様が浮き出るようなされたものであって、前記基材(B0)が木質集成材(B1)よりなる本体の表面の少なくとも大半に人工杢単板(B2)が貼られたものであり、且つ、その人工杢単板(B2)と前記基材(B0)の人工杢単板(B2)が貼られていない形状加工部分と同時に覆うように前記基材(B0)の略全面に圧着された一体の前記透明のプラスチックフィルム(F0)の裏面に予め木目模様(F1)が形成されており、前記人工杢単板(B2)の木目模様と、前記透明のプラスチックフィルム(F0)の裏面に形成された木目模様(F1)とを重ね合わせて、基材(B0)の表面のうち人工杢単板(B2)が貼られた部分の意匠性を向上させ、且つ、前記透明のプラスチックフィルム(F0)の裏面に形成された木目模様(F1)により、基材(B0)の表面のうち人工杢単板(B2)が貼られた部分のみならず、人工杢単板(B2)が貼られていない形状加工部分の意匠性までも向上させたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、透明とは、無色透明はもちろん、有色のもの、半透明等、部分的に透明のものも含まれる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記接着剤が、無溶剤接着剤又はホットメルト接着剤であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の構成に加えて、木質集成材(B1)よりなる本体が、平面のみならず、屈折面、曲面等の複雑な表面形状を有することを特徴とするものである。
【0014】
なお、上記の課題を解決するための手段に記載された括弧内の記号は図面及び後述する発明の実施の形態に記載された記号に対応するものである。
【0015】
請求項1の発明によれば、保護塗膜の施工に伴う、前述の種々の問題点が解決される。
また、基材を構成する集成材よりなる本体の少なくとも大半が、人工杢単板で覆われるため、継目や小さな節や割れや変色のある安価な集成材が、従来使用されなかったドア等意匠性が重視される分野にまで使用可能となり、そのうえ、人工杢単板は、高価な天然突き板に比較して材料上の制約が少なく、安価であって、意匠性の比較的低いもの(単なる粗い柾目)から高級感を有するもの(天然木が斜めに切断されたような放物線状の木目模様)まで自由で多様な木目模様を形成可能であるため、それの使用によって、高級木材資源の不足があっても、それに影響されることなく、意匠性が要求される建材が安価に得られる。
【0016】
そのうえ、透明のプラスチックフィルムによって上述の基材が保護されると共に、特に透明のプラスチックフィルムの裏面に自由で多様な木目模様が印刷等によって形成されているため、たとえ人工杢単板として意匠性が比較的低い、安価なものが使用されていても、その人工杢単板の木目模様が、透明のプラスチックフィルムの木目模様と調和し、堅牢であって、しかも照り・深みが増し、全体として高級無垢材のように意匠性に優れた建材が得られる。
【0017】
なお、形状加工部分では、貼り難さから、たとえ人工杢単板が貼られていなくても、透明のプラスチックフィルムの自由で多様な木目模様がその形状に調和し、あたかも基材にその木目模様が形成されているようにみえ、人工杢単板が貼られた部分とも一致し調和する。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の作用効果に加えて、接着剤が、無溶剤接着剤又はホットメルト接着剤であるため、有害又は危険な揮発性溶剤が皆無か、又は殆ど含まれず、溶剤による作業環境の汚染、火災の危険性は全くない。また貼付作業は1分以内に終了し、その間に、外観を損なう、ごみの付着や塗料のような垂れもない。
【0019】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明の作用効果に加えて、本体が全て安価な集成材よりなり、平面のみならず、屈折面、曲面等の複雑な表面形状を有する形状加工部分も含めて、高価な天然木無垢材が使用されず、基材が、本体に人工杢単板が貼着された大板の研削等の形状加工によって製作されるため、製作コストが著しく低減される。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る透明のプラスチックフィルムが圧着された建材について図面を参照して説明すると、図1はドアに適用された場合の図2のX−X断面図、図2はドアの斜視図、そして図3は図1の框部分の製作過程を示す斜視図である。
【0021】
ドアを例にして説明すると、前述のようにそのドアは、それぞれ1対の縦框10,10、横框20,20、及びそれらが組み立てられた框部材の中央に嵌め込まれた鏡板30よりなる。
【0022】
さらに詳細に説明すると、図1に示すように、基材B0は、縦框10及び鏡板30共に、木質集成材B1の表裏に人工杢単板B2が貼られた大板の裁断、形状加工によって製作されたものであって、縦框10の内周及び鏡板30の外周端縁は意匠性向上のため、それぞれ研削等によって形状加工されており、縦框10の形状加工部分の内周には鏡板30の外周端縁を嵌め込み可能な溝が形成されている。なお、前記形状加工部分及び端面には人工杢単板B2が欠落しているが、それは、後述するように、形状加工部分は形状加工によって人工杢単板B2が削ぎ落とされ、その後貼り難さもあってそのままになっていることや端面は元々人工杢単板B2が貼られていなかったことによる。
【0023】
さらに、縦框10及び鏡板30の基材B0の略全面には、その形状及び色・模様が浮き出るよう、透明なプラスチックフィルムF0が接着剤(図示省略)を介して圧着されている。しかも、その人工杢単板B2を覆うようにその人工杢単板B2の表面に圧着された、前記透明なプラスチックフィルムF0の裏面には、下地である人工杢単板B2の木目模様に調和した、自由で多様な木目模様F1が印刷等によって形成されている。なお、透明とは、無色透明はもちろん、有色のもの、半透明等、部分的に透明のものも含まれる。
【0024】
まず製作法について説明すると、いわゆる木片の寄せ集めである、大板の木質集成材B1に接着剤によって人工杢単板B2が貼られることによって、無垢の板に見える、一枚の大きな板が形成される。その大板の裁断、形状加工によって、前述のように端面や形状加工部分に人工杢単板B2が欠落した基材B0が形成される。
【0025】
ここで、人工杢単板B2の製作法について説明すると、種々の方法があって、その一例を原理的に示すと、図示は省略するが、未着色又は漂白された薄い木板と濃色に着色された薄い木板とが交互に数十枚も積層されたうえ、積層方向に垂直な方向にスライスされることによって製作される。以上の処理では、いわゆる柾目の人工杢単板しか製作されないが、積層形態如何によっては、幹が斜めに切断されたときに現われる放物線状の高級な木目模様のものも製作可能である。
【0026】
次いで、前記基材B0に、前述のように、予め裏面に自由で多様な木目模様F1が形成された透明のプラスチックフィルムF0が圧着される。
【0027】
圧着される透明(有色や部分的透明のものも含まれる)のプラスチックフィルムF0は、押し出し機等によって0.02〜2ミリの均一厚さに成形されたものが使用される。なお、2層構造のプラスチックフィルムが必要な場合は、予め別個に押し出された2枚のフィルムを貼り合わせられることよって製造される。また、プラスチックフィルムF0は、使用に先立って、貼り付けられる基材B0の表面の形に合わせて裁断される。
【0028】
なお、プラスチックフィルムF0の、基材B0の表面への圧着に先立って、刷毛・ローラ等により例えば無溶剤即乾接着剤(例えばポリウレタン接着剤等の無溶剤接着剤又はホットメルト接着剤)が塗られる(塗布量100〜180g/m2)。その厚さはプラスチックフィルムF0のそれに比較して無視出来る程度に薄く、垂れ等は全くない。なお、接着剤は基材B0の側に塗布されてもよい。
【0029】
基材B0の、表面へのプラスチックフィルムF0の圧着に当っては、それの接着剤側の面が重ね合わされ、基材B0の表面の凹凸に追従するよう、40〜120℃のロール又はへらにより圧着される。それによって凹凸を有する基材B0の表面は、凹凸が略そのまま浮き彫りされ、且つ模様が略そのまま透過するプラスチックフィルムF0の膜で覆われる。
【0030】
それによって、基材B0を構成する木質集成材B1の少なくとも大半が、人工杢単板B2で覆われるため、継目や小さな節や割れや変色のある安価な木質集成材B1が、従来使用されなかったドア等意匠性が重視される分野にまで使用可能となる。そのうえ、人工杢単板B2は、高価な天然突き板に比較して材料上の制約が少なく、安価であって、意匠性の比較的低いもの(単なる粗い柾目)から高級感を有するもの(天然木が斜めに切断されたような放射線状の高級な木目模様)まで自由で多様な木目模様を形成可能であるため、それの使用によって、高級木材資源の不足があっても、それに影響されることなく、意匠性が要求される建材が安価に得られる。
【0031】
そのうえ、特に透明のプラスチックフィルムF0の裏面に自由で多様な木目模様F1が印刷等によって形成されているため、たとえ人工杢単板として意匠性が比較的低い、安価なものが使用されていても、その人工杢単板B2の木目模様が、透明のプラスチックフィルムF0の自由で多様な木目模様と調和し、照り・深みが増し、全体として高級無垢材のように意匠性に優れた建材が得られる。
【0032】
なお、形状加工部分では、貼り難さから、たとえ人工杢単板B2が貼られていなくても、透明のプラスチックフィルムF0の自由で多様な木目模様F1がその形状に調和して、あたかも基材B0にその木目模様が形成されているようにみえ、人工杢単板B2が貼られた部分とも一致し調和する。
【0033】
その他、透明なプラスチックフィルムF0の無駄は殆どなく、その歩留まりは、塗料のそれと比較する必要もない程高く、塗料の飛散に伴うような作業環境の汚染のおそれも殆どない。また、接着剤として無溶剤接着剤を用いれば、接着剤に溶剤は全く含まれておらず、そのため溶剤による作業環境の汚染、火災の危険性は全くなく、保護具も必要ない。また貼付作業は1分以内に終了し、その間に、外観を損なう、ごみの付着や塗料のような垂れもない。しかも、工事に使用した器具の汚染もないため、後始末が楽であり、安全である。
【0034】
処理操作も、接着剤の密着性を増すための基材B0のサンディング、プラスチックフィルムF0の接着、圧着(冷却を含む)等の操作のみからなり、所用時間は数分以下であり、工程が著しく短縮される。なお、基材B0に基づく導管等の多数の小穴による、クレーター(アバタ状の凹凸)や艶ムラやばらつきも発生することがないため、その防止のために、「シーラー」の塗布や塗り重ね塗り等の作業が省略される。
【0035】
そのうえ切断された残りのプラスチックフィルムF0は、空気中に曝されても、高温でなければ、長期にわたって変質することはなく、格別の保存方法によらず、長期間保存可能であり、別の用途に再利用可能である。なお、プラスチックフィルムF0は塗膜よりも強靱であって、その建材表面を保護する機能は塗膜よりも優れている。
【0036】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、保護塗膜の施工に伴う、前述の種々の問題点が解決される。
また、継目や小さな節や割れや変色のある安価な集成材が、従来使用されなかったドア等意匠性が重視される分野にまで使用可能となり、そのうえ、高価な天然突き板に比較して材料上の制約が少なく、安価であって、意匠性の比較的低いもの(単なる粗い柾目)から高級感を有するもの(天然木が斜めに切断されたような放物線状の木目模様)まで自由で多様な木目模様を形成可能な人工杢単板の使用によって、高級木材資源の不足があっても、それに影響されることなく、意匠性が要求される建材が安価に得られる。
【0037】
そのうえ、たとえ人工杢単板として意匠性が比較的低い、安価なものが使用されていても、その人工杢単板の木目模様が、透明のプラスチックフィルムの木目模様と調和し、堅牢であって、しかも照り・深みが増し、全体として高級無垢材のように意匠性に優れた建材が得られる。
【0038】
なお、形状加工部分では、貼り難さからたとえ人工杢単板が貼られていなくても、透明のプラスチックフィルムの自由で多様な木目模様がその形状に調和し、あたかも基材にその木目模様が形成されているようにみえ、人工杢単板が貼られた部分とも一致し調和する。
【0039】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、有害又は危険な揮発性溶剤が皆無か、又は殆ど含まれず、溶剤による作業環境の汚染、火災の危険性は全くない。また貼付作業は1分以内に終了し、その間に、外観を損なう、ごみの付着や塗料のような垂れもない。
【0040】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明の効果に加えて、平面のみならず、屈折面、曲面等の複雑な表面形状を有する形状加工部分も含む、意匠性を強く要求されるドア等の製作コストが著しく低減される。しかも基材の必要部分は、一体の透明のプラスチックフィルムで覆われていて、水や有害ガスや紫外線が基材に到達せず、基材の劣化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例を示す図2のX−X断面図である。
【図2】ドアを示す断面図である。
【図3】本発明の建材が製作される過程を示す斜視図である。
【図4】従来例を示す図2のX−X断面図である。
【図5】別の従来例を示す図2のX−X断面図である。
【符号の説明】
10 縦框
20 横框
30 鏡板
110 縦框
120 横框
130 鏡板
210 縦框
220 横框
330 鏡板
B 基材
B0 基材
B1 集成材
B2 人工杢単板
F0 透明プラスチックフィルム
F1 木目模様
T 突き板

Claims (3)

  1. 基材の表面のうち、保護及び化粧が必要な部分に、接着剤を介して、基材の形状及び色・模様が浮き出るよう、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材であって、
    前記基材が、木質集成材よりなる本体の表面の少なくとも大半に人工杢単板が貼られたものであり、且つ、その人工杢単板と前記基材の人工杢単板が貼られていない形状加工部分とを同時に覆うように前記基材の略全面に圧着された一体の前記透明のプラスチックフィルムの裏面に木目模様が形成されており、前記人工杢単板の木目模様と、前記透明のプラスチックフィルムの裏面に形成された木目模様とを重ね合わせて、基材の表面のうち人工杢単板が貼られた部分の意匠性を向上させ、且つ、前記透明のプラスチックフィルムの裏面に形成された木目模様により、基材の表面のうち人工杢単板が貼られた部分のみならず、人工杢単板が貼られていない形状加工部分の意匠性までも向上させたことを特徴とする、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材。
  2. 前記接着剤が、無溶剤接着剤又はホットメルト接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材。
  3. 前記木質集成材よりなる本体が、平面のみならず、屈折面、曲面等の複雑な表面形状を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の、透明のプラスチックフィルムが圧着された建材。
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