JP3928230B2 - 冷凍機用の回転機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍機用の回転機械に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物超電導物質を用いた、例えばモータ、送電ケーブル、超電導電力貯蔵設備等の高温超電導機器は、絶対温度で20k〜80kに冷却する必要がある。
【0003】
而して、前述の高温超電導機器の冷却には冷凍機が使用されており、斯かる冷凍機としては、窒素ガスを作動媒体としたN2液化冷凍機、ヘリウムを用いたレシプロ型のスターリング冷凍機、ギフォードマクマフォンサイクルが用いられた小型の冷凍機、等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の各冷凍機のうちN2液化型冷凍機の場合、冷却温度が70k程度までなら使用可能であるが、冷却温度が約64kよりも低温になった場合には、液化窒素が固化し、使用できない。
【0005】
又、冷凍機がレシプロ型のスターリング冷凍機の場合、ピストンの往復動のために摺動する部品の数が多く、従って部品の摩耗等によりメンテナンスの周期が短くなる。
【0006】
更にギフォードマクマホンサイクルを用いた冷凍機の場合は、2段階でヘリウムガスを膨張して20kまで温度を低下させることができるが、出力が小さいうえ、レシプロ型であるため振動もある。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、冷却媒体が固化することがく、且つメンテナンスの周期を長くすることができ、しかも大きい出力を得ることができ、振動の少い冷凍機用の回転機械を提供することを目的としてなしたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
コンプレッサとタービンとを備え、
コンプレッサは、
ガス軸受又は磁気軸受といったオイルフリー構造の軸受により回転可能に支持されてモータにより駆動し得るようにした軸の一端部に取付けられると共に、回転によりガスを加圧するようにした遠心式の1段の翼を備え、
タービンは、
前記軸の他端部に取付けられると共に、コンプレッサから送出されて冷却され導入されたガスの膨張による仕事で、前記モータの補助動力として前記コンプレッサの翼を回転駆動させ得るようにした遠心式の複数の翼を備え、
コンプレッサで圧縮されて後、タービンからのガスにより冷却されてタービンに導入され、タービンで膨張して仕事をすると共に温度が低下しタービンから送出されたガスは、冷却対象物体を64K以下の温度に冷却し、且つ、コンプレッサからのガスを冷却した後、コンプレッサに循環し得るよう構成された冷凍機用の回転機械であって、
前記ガスは、タービンにおける膨張による温度低下において前記ガスに固化が生じないよう、ヘリウムと、ヘリウムよりも分子量が大きく且つ少なくとも大気中で不活性であるネオンとの混合ガスとした
ことを特徴とする冷凍機用の回転機械にかかるものである。
【0010】
従って、本発明では、冷却温度に応じた混合ガスを選択することにより冷却媒体が固化することによる運転不能が生じることなく、又摺動部品が少なくてメンテナンスの周期の長期化を図ることができ、更に大きな出力を得ることができしかも振動が生じず、更に冷凍機の小型化を図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1〜4は本発明の実施の形態の一例を示し、図中、1は、上部にコンプレッサ2を、又下部にタービン3を夫々備えると共にコンプレッサ2とタービン3との間にモータ4を備えた冷凍機である。
【0013】
モータ4のケーシング5内には、上下部に設けたジャーナル軸受6並に下部に設けたジャーナル軸受6よりも上部に設けたスラスト軸受7を介して竪軸8が回転可能に収納されており、ジャーナル軸受6としては、ガス軸受又は磁気軸受が使用されている。
【0014】
竪軸8の上下方向中間部には、ロータ9が固設されていると共に、ケーシング5には、内周がロータ9の外周に対して所定の間隔を有するステータ10が、ロータ9を同心状に内嵌するよう、収納されている。而して、ステータ10に三相交流を給電することで、電磁作用によりロータ9を介して竪軸8が回転し得るようになっている。
【0015】
モータ4のケーシング5の上部には、コンプレッサ2のケーシング11が設置されていると共に、竪軸8のケーシング11内へ突出した上端部分には、複数の遠心式の翼12が1段だけ取付けられている。而して、ケーシング11の上部入口11aからケーシング11内へ導入されたガス13は翼12により加圧されて圧縮比2程度に圧縮され、ケーシング11の側部出口11bからケーシング11外へ送出されるようになっている。
【0016】
モータ4のケーシング5の下部には、タービン3のケーシング14が設置されていると共に、竪軸8のケーシング14内に突出した下端部分には、複数の遠心式の翼15が取付けられている。而して、ケーシング14の側部入口14aからケーシング14内へ導入されたガス13は翼15の部分で仕事をして翼15延いては竪軸8を回転させ、膨張して下部出口14bからケーシング14外へ送出されるようになっている。
【0017】
コンプレッサ2におけるケーシング11の側部出口11bには、管路16が接続されていると共に管路16の中途部にはガス13の流れ方向上流側から下流側へ向けて順次クーラ17、熱交換器18が接続されており、管路16の先端はタービン3におけるケーシング14の側部入口14aに接続されている。
【0018】
タービン3におけるケーシング14の下部出口14bには、管路19が接続されていると共に管路19の中途部には、ガス13の流れ方向上流側から下流側へ向けて順次冷却対象物体20、熱交換器18が接続されている。而して、熱交換器18では管路16側を流れるガス13と管路19側を流れるガス13とは対向流となっている。
【0019】
なお、図中、4aはモータ4を冷却するために供給する冷却流体21の側部入口である。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に使用するガス13について詳述する。
【0021】
ガス13は、ヘリウムと、ヘリウムよりも分子量が大きく且つ少なくとも大気中で不活性であるガスとの混合ガスを使用する。
【0022】
斯かるガスの例としては、例えばヘリウム、ネオンといった希ガス類がある。
【0023】
このように、ヘリウムに上述したごとき他のガスを混合するのは次の理由による。すなわち、ヘリウムは分子量が4程度で非常に軽いため、純粋のヘリウムを翼12が1段のコンプレッサ2で圧縮比2程度に圧縮するには、ヘリウムの音速が略1000m/sec.であることからすると翼12の周速を800〜1000m/sec.といった高速としなければならず、従って翼12を始めその周辺の機器を構成する部品の材料が周速に耐えることができない。
【0024】
又、翼12や他の機器が翼12の周速に耐えることができるようにするには、コンプレッサ2の翼12を4〜5段の多段にする必要があるが、翼12を複数段にすると装置が大型化してしまう。
【0025】
更に純粋のヘリウムを用いた場合には、熱伝導率が大きいため、熱交換器はコンパクトとなり、酸化物超電導物質を用いた高温超電導機器の冷却を十分に行なうことができるが、上述のガスのうちヘリウム以外のガスの場合には、熱伝導率が低いため熱交換器が大きくなる。
【0026】
しかし、上述のガスのうち、ヘリウム以外のガスはヘリウムよりも分子量が大きいため、圧縮性は良好であり、少い翼段数のコンプレッサ2により約2程度の圧縮比のガスを得ることができる(例えば入口側10atmなら出口側20atm)。
【0027】
そこで、ヘリウムに上述のガスのうちいずれかのガスを混合して混合ガスとすれば、見掛けの分子量が大きく且つ熱伝導率の比較的高い少なくとも空気中で不活性であるガスを得ることができる。
【0028】
そこで、本実施の形態例では、ヘリウムに前述のヘリウム、ネオン等のガスを混合した混合ガスを使用するのである。
【0029】
図2には、ヘリウムのモル混合比と分子量との関係が図示されており、図3にはヘリウムのモル混合比と熱伝導率との関係が図示されている。
【0030】
斯かるグラフから、ヘリウムのモル混合比を徐々に減少させてアルゴン或いは窒素の混合比を徐々に増加させると、混合ガスの分子量は徐々に増大し、熱伝導率は徐々に減少することが分る。
【0031】
従って、ヘリウムに上述の各ガスを適宜混合して混合ガスを製造することにより、圧縮性が良好で熱伝導率が高いガスが得られる。
【0032】
そこで、本実施の形態例においては、斯かる混合ガスがガス13として適用されることになる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0034】
本発明の実施の形態においては、運転時モータ4が駆動されて竪軸8が回転し、竪軸8の回転によりコンプレッサ2の翼12、タービン3の翼15が回転している。
【0035】
而して、本発明の実施の形態においては、管路19から上部入口11aを通りコンプレッサ2のケーシング11内へ導入されたガス13は、1段の翼12により圧縮比2程度に圧縮され、ケーシング11の側部出口11bから管路16へ送出され、クーラ17で冷却されて熱交換器18へ導入される。
【0036】
管路16から熱交換器18へ導入されたガス13は管路19から熱交換器18へ導入されたガス13により冷却されて、管路16から側部入口14aを通りタービン3のケーシング14内へ送給され、膨張により翼15にエネルギを与えて仕事をすると共に所定の温度まで急激に温度が低下する。この際、タービン3の翼15を介して竪軸8に与えられたエネルギはモータ4の補助動力としてコンプレッサ2の駆動に使用される。
【0037】
タービン3で温度が低下したガス13はケーシング14の下部出口14bから管路19へ送出され、管路19から冷却対象物体20へ送給され、冷却対象物体20を冷却して自らは温度がある程度上昇し、管路19から熱交換器18へ送給され、管路16から熱交換器18へ送給されるガス13を冷却し、自らは更に温度上昇して管路19を通り、再びコンプレッサ2におけるケーシング11の上部入口11aからケーシング11内へ導入されて圧縮比2程度に圧縮され、以後は再び前述のごとき循環を繰返す。
【0038】
斯かる運転を行う際のS−T線図は図4に示され、図中、符号a、b、c、d、eは図1の冷凍機1及び各機器の系統の付された符号a、b、c、d、eに対応しており、そのときの温度は図4の縦軸に示された温度となる。
【0039】
本発明の実施の形態例における冷凍機1では、ヘリウムと、ヘリウムよりも分子量が大きく且つ少なくとも大気中で不活性のガスとを混合したガス13を使用し、冷却温度に合せて固化しないガスを選択して混入するため、冷却対象物体20を約20k程度に冷却する場合にも冷却媒体に固化が生じることがなく運転が可能となり、又遠心式であり、ガス軸受又は磁気軸受を用いたオイルフリー構造であるため摺動部品の数が少なく、従ってメンテナンスの周期が長くなり、更には出力を大きく取ることができて振動も少なく装置としての信頼性が向上し、更に又1段で必要な圧縮比を得ることができて冷凍機1自体を小型にすることができる。
【0040】
なお、本発明は上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0041】
【発明の効果】
本発明の冷凍機用の回転機械によれば、
I)冷却媒体が固化することがなく、従って冷却媒体の固化による運転不能が生じることがない、
II)メンテナンスの周期を長く取ることができる、
III)出力を大きくすることができ、また振動が生じることもない、
IV)1段でガスを所定の圧縮比となるよう圧縮できるため、冷凍機用の回転機械の小型化を図ることができる、
等、種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の冷凍機用の回転機械に適用する冷凍機の縦断面図に、ガスの循環系統を加えた概要図である。
【図2】 ヘリウムのモル混合比と分子量の関係を示すグラフである。
【図3】 ヘリウムのモル混合比と熱伝導率の関係を示すグラフである。
【図4】 本発明の冷凍機用の回転機械に適用する冷凍機を用いた場合のS−T線図である。
【符号の説明】
1 冷凍機
2 コンプレッサ
3 タービン
4 モータ
6 ジャーナル軸受(ガス軸受又は磁気軸受)(オイルフリー構造の軸受)
8 竪軸(軸)
12 翼
15 翼
13 ガス
20 冷却対象物体
Claims (1)
- コンプレッサとタービンとを備え、
コンプレッサは、
ガス軸受又は磁気軸受といったオイルフリー構造の軸受により回転可能に支持されてモータにより駆動し得るようにした軸の一端部に取付けられると共に、回転によりガスを加圧するようにした遠心式の1段の翼を備え、
タービンは、
前記軸の他端部に取付けられると共に、コンプレッサから送出されて冷却され導入されたガスの膨張による仕事で、前記モータの補助動力として前記コンプレッサの翼を回転駆動させ得るようにした遠心式の複数の翼を備え、
コンプレッサで圧縮されて後、タービンからのガスにより冷却されてタービンに導入され、タービンで膨張して仕事をすると共に温度が低下しタービンから送出されたガスは、冷却対象物体を64K以下の温度に冷却し、且つ、コンプレッサからのガスを冷却した後、コンプレッサに循環し得るよう構成された冷凍機用の回転機械であって、
前記ガスは、タービンでの膨張による温度低下において前記ガスに固化が生じないよう、ヘリウムと、ヘリウムよりも分子量が大きく且つ少なくとも大気中で不活性であるネオンとの混合ガスとした
ことを特徴とする冷凍機用の回転機械。
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JP33036097A Expired - Lifetime JP3928230B2 (ja) | 1997-12-01 | 1997-12-01 | 冷凍機用の回転機械 |
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-
1997
- 1997-12-01 JP JP33036097A patent/JP3928230B2/ja not_active Expired - Lifetime
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