JP3926326B2 - 突起付き鋼管の製造方法および突起付き鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、肉盛溶接を用いる突起付き鋼管の製造方法および突起付き鋼管に関する。
土木あるいは建築分野において、鋼管にコンクリートを充填したり、鋼管をコンクリートの内部に埋め込む合成構造が建築用柱や基礎杭などに用いられている。これらの鋼管とコンクリートとの合成構造においては、鋼管とコンクリートとの付着力を高めるために、鋼管の表面に突起を設けることが行われている。
鋼管の表面に突起を形成する方法の一つとして、肉盛溶接が従来から用いられている。例えば、コンクリート充填鋼管柱に用いる突起付き鋼管を製造する方法として、円形鋼管の内面の柱梁仕口部相当箇所に、炭酸ガスシールドアーク溶接やMIG溶接等によりスパイラル状に肉盛溶接ビードを形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、形成する肉盛溶接ビードは、立ち上がり角度が45°程度で、高さが1.5〜2.5mm、幅が3.0〜5.0mmとされる。
また、同じく、コンクリート充填鋼管柱の製造方法として、高さの高い突起を形成するために、炭酸ガスシールド溶接等により台形断面または山形断面の螺旋状の肉盛溶接突起を形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、目標とする突起形状寸法は、高さが5〜6mm、底幅が8〜15mm、天端幅(台形断面の場合)が4〜10mm、突起間隔が高さの5〜15倍であることが記載されている。
また、管路を構成する鋳鉄管体の外面に係止部となる帯状の周突起を設ける場合などのように、パイプ外面に帯状の周突起を肉盛溶接で連続的に設ける際に、内部に冷却部を有する銅または黒鉛製の壁板部材を用い、この壁板部材の直角面とパイプ外面をすみ肉溶接するようにして肉盛溶接し、片側面がパイプ外面と直角を成す肉盛溶接部を形成することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平8−10943号公報 特開平8−158538号公報 実公昭58−36469号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法で、下向きで肉盛溶接すると、図4に示すように、溶融金属に作用する重力により溶融金属が広がってしまい、形成される突起(肉盛溶接ビード)の高さと幅の関係が自ずから制限される。突起の高さを高くするために溶接入熱を多くして溶融金属量を増すことも考えられるが、高さが高くなると同時に幅方向にも広がり、溶接金属量が増えて経済的でないばかりか、鋼管の母材に与える熱影響が大きくなり、材質の劣化が起こる可能性がある。特許文献2には、高さが高い肉盛溶接突起を形成することが記載されているが、同文献に記載の溶接条件で肉盛溶接しても、図4に示すような扁平な山形断面の肉盛溶接突起しか得られない。
また、特許文献3に記載の方法は、片側面が垂直の周突起を形成する方法であり、高さが高い突起を得るためには溶接時間がかかる上に、大量の溶接金属を必要とする。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたもので、肉盛溶接を用いて高さが高い突起を容易にかつ経済的に形成することができる突起付き鋼管の製造方法および突起付き鋼管を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の突起付き鋼管の製造方法は、鋼管の内面または外面に肉盛溶接により突起を形成して突起付き鋼管を製造する方法であって、鋼管の内面または外面に一対の当て板を間隔をおいて配置し、これらの当て板および溶接トーチを鋼管の内面または外面に対し相対移動させつつ、これらの当て板間に肉盛溶接することを特徴とする。
また、請求項2に記載の突起付き鋼管の製造方法は、請求項1に記載の発明において、高さが6mm以上、幅が5mm以上、側部と鋼管の内面または外面とのなす角度が60〜90°で、側部に直線部を有し、上部が曲線となる断面形状の突起を形成することを特徴とする。
また、請求項3に記載の突起付き鋼管は、鋼管の内面または外面に肉盛溶接により突起が形成されているコンクリートとの合成構造用の突起付き鋼管であって、高さが6mm以上、幅が5mm以上、側部と鋼管の内面または外面とのなす角度が60〜90°で、側部に直線部を有し、上部が曲線となる山形の断面形状であって、かつ前記鋼管の周方向または螺旋状に形成された突起を有することを特徴とする。
請求項1に記載の突起付き鋼管の製造方法によれば、高さが高い突起を容易に形成することができる。
請求項2に記載の突起付き鋼管の製造方法によれば、1回の溶接により、側部に直線部を有し、上部が曲線となる断面形状の高さが高い突起を容易に、かつ溶接金属量も最小限として経済的に形成することができる。
請求項3に記載の突起付き鋼管によれば、例えば内面突起付き鋼管にコンクリートを充填してコンクリート充填鋼管とすると、突起高さが高いので、突起の間隔を少なくしても鋼管とコンクリートとの十分な付着力を得ることができる。本発明のように突起高さを6mm以上とすることにより、突起間隔を大きくすることができるので、突起の条数(突起が螺旋状の場合は巻き数)を減らすことができ、突起形成に要する工数もコストも大きく低減することができる。また、基礎用の場所打ち鋼管コンクリート杭などの場合には、突起高さが高いので、コンクリート打設の際に、ベントナイトなどの孔壁安定液の付着力に対する影響を軽減することができる。外面突起付き鋼管についても同様の効果を得ることができる。
また、鋼管の内面または外面と突起の側部とのなす角度が小さすぎると、コンクリートが滑ってしまい、また90°以上では溶接終了後に当て板を取り外すことが困難となるが、本発明のようにこの角度を60〜90°とするとこれらの問題が生じない。
また、突起の断面形状が全体に円弧状の場合は、コンクリートが滑る可能性があり、また突起の断面形状が台形状のように上部が直線の場合は、側面と上面との交差部に応力集中が起こりやすく付着力を低下させる可能性があるが、本発明のように、側部に直線部を有し、上部が曲線となる断面形状の突起にすると、これらの問題を回避できる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態に係る突起付き鋼管の製造方法を示す図であって、図1は側断面図、図2は要部の拡大斜視図である。
これらの図に示すように、鋼管の内面に突起を周方向に形成するには、まず、鋼管1を横向きに置き、この鋼管1の内面のうちの下側の位置に、一対の当て板2、2を配置する。この当て板2には、通常水冷銅板(水冷式銅板)が用いられるが、セラミック製のものなども用いることができる。この当て板2の底面は鋼管1の内面に沿った円弧状に形成されている。一対の当て板2、2は、鋼管1の内面に間隔をおいて平行に配置される。
次に、鋼管1の外側に位置する溶接装置3のブーム4を鋼管1内に挿入し、ブーム4の先端部に設けられた溶接トーチ5の溶接ワイヤ6を、これらの一対の当て板2、2の間に挿入する。そして、鋼管1を周方向に回転させながら、鋼管1の内面と当て板2、2とにより形成された空間内でアークを発生させ下向きの肉盛溶接を行う。当て板2、2は、ブーム4等に支持されている。溶接には、炭酸ガスアーク溶接、MAG溶接あるいはMIG溶接等のガスメタルアーク溶接などを適宜用いることができる。
肉盛溶接する空間を形成する当て板2の側面は、断面形状の側部に直線部を有する突起を形成するために、平面に仕上げることが必要である。鋼管1の内面に形成する突起の側面と鋼管1の内面との成す角度(立ち上がり角度)が所定の鋭角を形成するようにするために、当て板2の側面に所定の角度をつけることもできる。この当て板2の側面の角度が90°を超えると、溶接終了後に当て板2を取り外すことが困難となるので、例えば、60〜90°程度に設定される。
当て板2の高さは、形成する突起の高さ以上の高さが必要であるが、あまり高いと当て板の費用が余分に掛かり、また溶接アークが見えにくくなり、作業性が悪くなるので、適当な高さにするのが好ましい。
当て板2、2の間隔は、狭すぎると溶接アークによる損傷を生じるので、5mm程度以上とする必要があるが、広すぎると余分な溶接材料が必要となり、経済性が低くなるので、あまり広すぎる事は好ましくない。鋼管1の内面に形成される突起の幅は、これらの当て板2、2の間隔とほぼ等しいものとなる。
鋼管1の内面に連続した突起を得るために、鋼管1を回転させるなどして、鋼管1の内面と溶接トーチ5および一対の当て板2、2とを相対的に移動させる必要があるが、このとき当て板2、2の長さが短いと、溶融金属が横(当て板2の長さ方向)の開口部から流出する。一方、当て板2、2が長すぎると、溶融金属が凝固して形成された突起の側面と当て板2との摩擦力が大きくなり、安定した移動が困難になるとともに、鋼管1内面と当て板2との密着性を保つことが困難になるので、適当な長さにする必要がある。当て板2の長さは、通常25mm程度以上、120mm程度以下が必要であり、作業性を考慮すると100mm程度以下が好ましく、80mm程度以下がさらに好ましい。
突起高さを高くするために、多層盛により突起を形成する方法もあるが、溶接作業時間が掛かること、当て板2、2の位置を既存の突起の位置に正確に合わせるための時間が余分に必要なこと、および当て板2、2の側面と既存の突起の側面との摩擦力が大きく、作業性が悪くなることから、1回の溶接で必要な突起高さを得ることが好ましい。このためには、溶接電流を350〜600A、溶接電圧を27〜45V、溶接速度を20〜100cm/minにして溶接することが好ましい。
薄い肉厚の鋼管に突起を形成する場合には、溶け落ちを防ぐためや熱変形を少なくするために、出来るだけ浅い溶け込みにすることが好ましい。このためには溶接電圧を上げる、溶接トーチ5の角度を後退角にする、登り坂溶接とする、あるいはコールドワイヤを用いるなどの方法がある。
また、溶接金属量を増やし突起高さを高くするためには、コールドワイヤ法やホットワイヤ法が有効である
この突起付き鋼管の製造方法により、鋼管1の内面に、図3に示すような高さの高い突起T、すなわち幅Bが5mm以上、高さHが6mm以上、鋼管1の内面と突起Tの側面の成す角度(立ち上がり角度)αが60〜90°で両側の側部に直線部を有しかつ上面が曲面の山形断面の突起Tを、1回の溶接により、周方向に容易に形成することができる。
この突起Tを鋼管1の内面に形成するには、まず、高さが形成する突起Tの高さより少し高く、長さが25〜80mm、側面が鋼管1の内面との成す角度が60〜90°になるように設定されているとともに、側面が平面またはほぼ平面で、底面が鋼管1の内面に沿った円弧状に形成された水冷銅板からなる一対の当て板2、2を、鋼管1の内面のうちの下側の位置に、間隔をおいて平行に置く。この当て板2、2の間隔は、突起Tの幅に応じて決定すれば良いが、必要に応じて熱収縮代を考慮してやや広めになるようにしても良い。
次に、鋼管1を周方向に回転させながら、鋼管1の内面と当て板2、2とにより形成された空間内で、溶接電流を350〜600A、溶接電圧を27〜45V、溶接速度を20〜100cm/minにして、下向きの炭酸ガスアーク溶接により肉盛溶接を行う。
このようにして突起Tが内面に形成された突起付き鋼管にコンクリートを充填してコンクリート充填鋼管杭とすると、突起高さが高いので、突起の間隔を少なくしても鋼管とコンクリートとの十分な付着力を得ることができる。現状用いられている突起付き鋼管の突起間隔は40mm程度であるが、本発明のように突起高さを6mm以上とすることにより突起間隔を大きくすることができ、良好な応力伝達領域にある突起間隔と高さの比10〜20にして、突起間隔を90mm以上とすることも可能となる。突起間隔を大きくすることができるので、突起の条数(突起が螺旋状の場合は巻き数)を減らすことができ、突起形成に要する工数もコストも大きく低減することができる。また、突起高さが高いので、コンクリート打設の際のベントナイトなどの孔壁安定液の付着力に対する影響を軽減することができる。
また、鋼管1内面と突起Tの側面のなす角度αが小さすぎると、コンクリートが滑ってしまい、また90°以上では溶接終了後に当て板2、2を取り外すことが困難となるが、この角度αを60〜90°とするとこれらの問題を回避できる。
また、突起の断面形状が全体に円弧状の場合は、コンクリートが滑る可能性がある。また、突起の断面形状が台形状のように上部が直線の場合は、側面と上面との交差部に応力集中が起こりやすく付着力を低下させる可能性がある。突起Tでは、断面の側部に直線部を有する形状で、上部を曲線としたので、これらの問題が生じない。
なお、上述の実施の形態では、当て板2、2および溶接トーチ5を鋼管1の内面に対して相対移動させるために、鋼管1を回転させたが、これに代えて、鋼管1を回転させないで、当て板2、2および溶接トーチ5を移動させるようにしてもよい。
また、鋼管1の内面に螺旋の突起を形成したい場合には、鋼管1を回転させながら、鋼管1を鋼管1の軸線方向に移動させても良いし、あるいは鋼管1を回転させながら、当て板2、2および溶接トーチ5を鋼管1の軸線方向に移動させても良い。
また、一度に複数の突起を形成したい場合は、複数の溶接トーチ5および各溶接トーチ5の両側に配置された当て板2、2を用いれば良い。
また、突起は連続的にも断続的にも形成することができる。
また、本発明は、鋼管の外側に突起を形成する場合にも適用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、長さが60mm、高さが10mm、幅が20mmの水冷銅板からなる当て板2、2を内径が782mmの鋼管1の内面のうちの下側の位置に、8mmの間隔をおいて平行に置いた。
次に、鋼管1を周方向に回転させながら、鋼管1の内面と当て板2、2とにより形成された空間内で、溶接電流を430A、溶接電圧を31V、溶接速度を40cm/min、溶接ワイヤ径1.6mm、コールドワイヤ径1.6mmで、下向きの炭酸ガスアーク溶接により肉盛溶接を行い、突起高さHが約9mm、幅Bが約8mm、立ち上がり角度αが約90°の側面が平坦かつ上面が曲面の幅に比べて高さの高い山形断面の突起Tを、1回の溶接で、周方向に容易に形成することができた。
本発明の実施の形態に係る突起付き鋼管の製造方法を示す側断面図である。 図1の要部の拡大斜視図である。 本発明の実施の形態に係る突起の断面図である。 従来の突起付き鋼管の製造方法の場合の突起の断面図である。
符号の説明
1 鋼管
2 当て板
3 溶接装置
4 ブーム
5 溶接トーチ
6 溶接ワイヤ
T 突起
B 突起の幅
H 突起の高さ
α 突起の側面と鋼管の内面とのなす角度(立ち上がり角度)

Claims (3)

  1. 鋼管の内面または外面に肉盛溶接により突起を形成して突起付き鋼管を製造する方法であって、
    鋼管の内面または外面に一対の当て板を間隔をおいて配置し、これらの当て板および溶接トーチを鋼管の内面または外面に対し相対移動させつつ、これらの当て板間に肉盛溶接することを特徴とする突起付き鋼管の製造方法。
  2. 高さが6mm以上、幅が5mm以上、側部と鋼管の内面または外面とのなす角度が60〜90°で、側部に直線部を有し、上部が曲線となる断面形状の突起を形成することを特徴とする請求項1に記載の突起付き鋼管の製造方法。
  3. 鋼管の内面または外面に肉盛溶接により突起が形成されているコンクリートとの合成構造用の突起付き鋼管であって、
    高さが6mm以上、幅が5mm以上、側部と鋼管の内面または外面とのなす角度が60〜90°で、側部に直線部を有し、上部が曲線となる山形の断面形状であって、かつ前記鋼管の周方向または螺旋状に形成された突起を有することを特徴とする突起付き鋼管。
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