JP3925274B2 - 収音装置及びステレオ演算方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばデジタルスチルカメラやVTR一体型ビデオカメラ装置に使用して好適な収音装置及びステレオ演算方法に関する。詳しくは、内蔵マイクロホンで収音された音声信号に対して演算回路を用いて有指向のステレオ音場信号を出力している場合に、例えば風雑音による障害の発生を低減させるようにするものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばデジタルスチルカメラやVTR一体型ビデオカメラ装置において、画像の撮影と共にステレオによる音声の収音を行うことが求められている。しかしながらこのような装置においては、小型の筐体に近接して2個のマイクロホンを設けるために、それだけでは良好なステレオ収音を行うことができない。そこで従来から、例えば図5に示すようなステレオ演算回路を用いて収音された音声信号の左右の指向性を強調する技術が提案されている。
【0003】
すなわち図5において、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホン51R、51Lから、それぞれ収音された音声信号が右チャンネル入力及び左チャンネル入力として供給される。これらの右チャンネル及び左チャンネルの音声信号がそれぞれ増幅器52R、52Lに供給されて信号レベルを最適化される。そしてこれら増幅器52R、52Lからの信号が、それぞれ演算器53R、53Lの加算端子に供給されると共に、一般的にローパスフィルタで形成される遅延器54R、54Lに供給される。
【0004】
従ってこれらの遅延器54R、54Lからは、それぞれ例えば第1及び第2の無指向性マイクロホン51R、51Lの間隔に応じて、その間を音波が伝達される時間に相当する時間遅延の施された音声信号の低域成分信号が取り出される。さらにこれらの時間遅延の施された音声信号の低域成分信号が、それぞれ減衰器55R、55Lに供給されて信号レベルを最適化されて、相互に演算器53R、53Lの減算端子に供給される。
【0005】
すなわち右チャンネルの減衰器55Rからの信号が左チャンネルの演算器53Lに供給され、左チャンネルの減衰器55Lからの信号が右チャンネルの演算器53Rに供給される。これにより演算器53R、53Lでは、互いのチャンネルの低域成分が減算されることによるマトリクス処理が行われ、低域周波数帯域においてステレオ音場の再現が行われる。つまりマイクロホン51R、51Lでの収音は図6のAのような無指向性であるものが、上述の回路を通すことにより、図6のBのような有指向性にされる。
【0006】
そしてこれらの演算器53R、53Lからの音声信号が、それぞれフィルタ回路で構成されるイコライザ56R、56Lに供給されて周波数特性が整えられ、これらのイコライザ56R、56Lを通じた音声信号が、出力端子57R、57Lからそれぞれ右チャンネル出力、左チャンネル出力として取り出される。なおこれらの出力音声信号は、図示しない音声信号回路に供給されて、記録や伝送等の以後の処理が行われるものである。
【0007】
このようにして、音声信号の低域周波数帯域において左右の指向性を強調するステレオ演算回路が形成される。なお、高域周波数帯域においてはマイクロホン51R、51Lの設置環境を工夫するなどの手法により左右の指向性を強調することができるものであり、これらを組み合わせることにより全周波数帯域に亙ってステレオ音場の再現が行われる。そしてこのような回路を用いることで、例えば小型の装置においてもステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上述のステレオ演算回路において、遅延器54R、54Lは、例えば第1及び第2の無指向性マイクロホン51R、51Lの間隔に依存する時間遅延を持ち、通常の音声信号は、この時間遅延に相当する位相差でマイクロホン51R、51Lで収音され、互いのチャンネルから減算されることでステレオ演算処理がなされるものである。ところが例えば風雑音成分は、マイクロホン51R、51Lにランダムな位相で収音されるために、却って雑音成分が強調されてしまう恐れがある。
【0009】
すなわち風雑音は、風圧がそのまま電気信号に変換されることによって生じるものであり、音波のように伝播されるものではないために、マイクロホン51R、51Lの間隔に依存する時間遅延と無関係なランダムな位相で生じるものである。このため上述のステレオ演算回路で、例えば演算器53R、53Lの入力がちょうど逆相となって互いのチャンネルの信号が加算されることになった場合には、雑音レベルが6dB悪化されることになる。
【0010】
さらにこのような風雑音の帯域は、通常後段のイコライザ56R、56Lで利得を上昇させる帯域であるために、音声信号に比較して風雑音は強調され易いものである。従って上述のステレオ演算回路で風雑音が強調されることは極めて不具合を生じる恐れがある。また、近年製品の小型化により、マイクロホン51R、51Lの間隔はさらに狭められ、イコライザ56R、56Lでの利得は増加の傾向にあるために、上述の問題はさらに顕著になっているものである。
【0011】
この出願はこのような点に鑑みて成されたものであって、解決しようとする問題点は、従来の装置では、ランダムな位相で生じる風雑音はステレオ演算回路で雑音成分が強調されてしまう恐れがあり、このように風雑音が強調されることは後段の回路等との関係で極めて不具合を生じる恐れがあり、また近年製品の小型化によりマイクロホンの間隔はさらに狭められているために、この傾向はさらに顕著になっているというものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このため本発明においては、例えば風雑音の発生を検出して自動でステレオ演算処理のパラメータを制御するようにしたものであって、これによれば、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消して、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
すなわち本発明の収音装置は、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンを有し、第1の無指向性マイクロホンからの第1の音声信号と第2の無指向性マイクロホンからの第2の音声信号とを用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算回路の設けられた収音装置であって、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段と、第2の加算手段からの信号を第1の音声信号から減算する第1の演算手段と、第1の加算手段からの信号を第2の音声信号から減算する第2の演算手段とを有し、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における第1及び第2の信号減衰手段のレベルを制御してなるものである。
【0014】
また、本発明の収音装置は、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンを有し、第1の無指向性マイクロホンからの第1の音声信号と第2の無指向性マイクロホンからの第2の音声信号とを用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算回路の設けられた収音装置であって、第1の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、第2の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第3及び第4の帯域分割手段と、第3及び第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第3及び第4の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第3及び第4の信号減衰手段を介して、第1の音声信号から減算する第1及び第2の演算手段と、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して、第2の音声信号から減算する第3及び第4の演算手段と、第1〜第4の演算手段からの分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1〜第4の利得制御手段を介して第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段とを有し、第1〜第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における第1〜第4の信号減衰手段及び第1〜第4の利得制御手段を制御してなるものである。
【0015】
さらに本発明のステレオ演算方法は、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンで収音された第1及び第2の音声信号を用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算方法であって、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して、第1及び第2の音声信号ごとに加算し、第1の音声信号の加算された信号を第2の音声信号から減算し、第2の音声信号の加算された信号を第1の音声信号から減算し、分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における音声信号のレベルを制御してなるものである。
【0016】
また、本発明のステレオ演算方法は、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンで収音された第1及び第2の音声信号を用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算方法であって、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、第1の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して第2の音声信号から減算し、第2の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して第1の音声信号から減算し、減算された各帯域の音声信号をそれぞれ利得制御して第1及び第2の音声信号ごとに加算し、分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における音声信号のレベル及び利得を制御してなるものである。
【0017】
以下、図面を参照して本発明を説明するに、図1は本発明の収音装置及びステレオ演算方法に適用されるステレオ演算回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1において、任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホン1R、1Lから、それぞれ収音された音声信号が右チャンネル入力及び左チャンネル入力として供給される。これらの右チャンネル及び左チャンネルの音声信号がそれぞれ増幅器2R、2Lに供給されて信号レベルを最適化される。そしてこれら増幅器2R、2Lからの信号が、それぞれ演算器3R、3Lの加算端子に供給されると共に、帯域分割手段4R、4L及び5R、5Lに供給される。
【0019】
ここで帯域分割手段4R、4Lでは、例えば風雑音に相当する帯域1の信号が抽出される。すなわち一般的なビデオカメラ装置における風雑音信号の周波数特性は、例えば図2に示すように約1kHz程度から低周波数になるに従って1/F特性(Fは周波数)でレベルが増加するものであるが、使用するマイクユニットの特性や、アナログ回路のカプリングコンデンサなどの影響で極低周波数はレベルが減少するため、約200Hz付近にピークを持った特性になっている。
【0020】
そこで上述の帯域分割手段4R、4L及び5R、5Lでは、例えば図3に示すような周波数特性で帯域分割が行われる。すなわち図3のAはバンドパスフィルタによる帯域分割の場合で、例えばバンドパスフィルタからなる帯域分割手段4R、4Lによりバンド1の信号が抽出され、帯域分割手段5R、5Lによりバンド2の信号が抽出される。ここでバンド1は、上述の約200Hz付近にピークを持った風雑音信号の周波数特性に合わせた帯域1に相当するものである。
【0021】
あるいは図3のBはローパスフィルタによる帯域分割の場合で、例えばローパスフィルタからなる帯域分割手段4R、4Lによりバンド1の信号が抽出され、帯域分割手段5R、5Lの出力から帯域分割手段4R、4Lの出力を減算することによりバンド2の信号が抽出される。なおこの場合もバンド1は、上述の約200Hz付近にピークを持った風雑音信号の周波数特性に合わせた帯域1に相当するものである。このようにして帯域分割が行われる。
【0022】
これらの帯域分割手段4R、4L及び5R、5Lで分割された各帯域の信号が、例えばマイクロホン1R、1Lの間隔に応じて、その間を音波が伝達される時間に相当する遅延時間を有する遅延器6R、6L及び7R、7Lに供給される。さらにこれらの時間遅延の施された音声信号が、それぞれ可変減衰器8R、8L及び減衰器9R、9Lに供給されてそれぞれ任意の信号レベルにされて、それぞれ加算器10R、10Lに供給され、左右のチャンネルごとに加算される。
【0023】
そしてこれらの加算器10R、10Lからの信号が、相互に演算器3R、3Lの減算端子に供給される。すなわち右チャンネルの加算器10Rからの信号が左チャンネルの演算器3Lに供給され、左チャンネルの加算器10Lからの信号が右チャンネルの演算器3Rに供給される。これにより演算器3R、3Lでは、互いのチャンネルの低域成分が減算されることによるマトリクス処理が行われ、低域周波数帯域においてステレオ音場の再現が行われる。
【0024】
さらにこれらの演算器3R、3Lからの音声信号が、それぞれフィルタ回路で構成されるイコライザ11R、11Lに供給されて周波数特性が整えられ、これらのイコライザ11R、11Lを通じた音声信号が、出力端子12R、12Lからそれぞれ右チャンネル出力、左チャンネル出力として取り出される。なおこれらの出力音声信号は、図示しない音声信号回路に供給されて、記録や伝送等の以後の処理が行われるものである。
【0025】
そしてこの回路において、さらに帯域分割手段4R、4Lで抽出された帯域1の信号が減算器13に供給されて、右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の帯域1の信号の差成分が出力される。この差成分がレベル検出手段14に供給されてその包絡線レベルが抽出され、この包絡線レベルの情報が係数生成手段15に供給されて、前記包絡線レベルに対応した制御係数が生成される。そしてこの制御係数に従って、上述の可変減衰器8R、8Lの減衰率が制御される。
【0026】
すなわちこの回路において、帯域分割手段4R、4Lで抽出された帯域1の右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の差成分である減算器13の出力信号には、非相関成分がほとんどを占める風雑音信号が抽出され、その包絡線レベルを抽出することによって風雑音のレベルが検出される。そして例えば風雑音のレベルが大きいときに減衰器8R、8Lの減衰率を多くし、風雑音のレベルが小さいときに減衰器8R、8Lの減衰率を少なくする制御が行われる。
【0027】
こうしてこの回路において、音声信号の左右の指向性を強調するステレオ演算回路が形成されると共に、例えば風雑音のレベルが大きいときに減衰器8R、8Lの減衰率が多くされて、演算器3R、3Lで減算される信号の量が少なくされる。これにより例えば風雑音のレベルが大きいときにはステレオ演算回路で形成されるステレオ効果が弱められ、若しくは止められて、上述の課題で述べたようなステレオ演算回路で風雑音が強調される不具合を解消することができる。
【0028】
従ってこの実施形態において、例えば風雑音の発生を検出して自動でステレオ演算処理のパラメータを制御するようにしたことによって、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消して、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができる。
【0029】
これによって、従来の装置では、ランダムな位相で生じる風雑音はステレオ演算回路で雑音成分が強調されてしまう恐れがあり、このように風雑音が強調されることは後段の回路等との関係で極めて不具合を生じる恐れがあり、また近年製品の小型化によりマイクロホンの間隔はさらに狭められているために、この傾向はさらに顕著になっていたものを、本発明の収音装置及びステレオ演算方法によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
【0030】
すなわち本発明の収音装置によれば、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段と、第2の加算手段からの信号を第1の音声信号から減算する第1の演算手段と、第1の加算手段からの信号を第2の音声信号から減算する第2の演算手段とを有し、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における第1及び第2の信号減衰手段のレベルを制御することにより、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消して、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0031】
また、本発明のステレオ演算方法によれば、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して、第1及び第2の音声信号ごとに加算し、第1の音声信号の加算された信号を第2の音声信号から減算し、第2の音声信号の加算された信号を第1の音声信号から減算し、分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における音声信号のレベルを制御することにより、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消して、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0032】
さらに図4を用いて、本発明の収音装置及びステレオ演算方法に適用されるステレオ演算回路の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明で上述の図1の実施形態と対応する部分には同一の符号を附して重複の説明を省略する。
【0033】
図4において、この実施形態では、例えば増幅器2R、2Lからの右チャンネル及び左チャンネルの音声信号が、帯域分割手段4R、4L及び5R、5Lのみに供給される。そしてこれらの帯域分割手段4R、4L及び5R、5Lからの信号がそれぞれ演算器30R、30L及び31R、31Lの加算端子に供給される。さらに可変減衰器8R、8L及び減衰器9R、9Lからの信号が、相互に演算器30R、30L及び31R、31Lの減算端子に供給される。
【0034】
すなわち帯域分割手段4Rからの信号が供給される演算器30Rには可変減衰器8Lからの信号が供給され、帯域分割手段4Lからの信号が供給される演算器30Lには可変減衰器8Rからの信号が供給される。また、帯域分割手段5Rからの信号が供給される演算器31Rには減衰器9Lからの信号が供給され、帯域分割手段5Lからの信号が供給される演算器31Lには可変減衰器9Rからの信号が供給される。
【0035】
さらにこれらの演算器30R、30L及び31R、31Lからの音声信号が、それぞれ可変利得器32R、32L及び利得器33R、33Lに供給されてそれぞれ任意の信号レベルにされる。そしてこれらの可変利得器32R、32L及び利得器33R、33Lからの信号がそれぞれ加算器34R、34Lに供給されて左右のチャンネルごとに加算され、加算された音声信号が出力端子12R、12Lからそれぞれ右チャンネル出力、左チャンネル出力として取り出される。
【0036】
また、上述の減算器13からの右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の帯域1の信号の差成分がレベル検出手段14に供給され、その包絡線レベルの情報が係数生成手段15に供給されて、前記包絡線レベルに対応した制御係数が生成される。そしてこの制御係数に従って、上述の可変減衰器8R、8Lの減衰率及び可変利得器32R、32Lの利得が制御される。
【0037】
これにより演算器30R、30L及び31R、31Lでは、互いのチャンネルの信号成分が減算されることによるマトリクス処理が行われ、ステレオ音場の再現が行われる。さらに減算器13の出力信号からは風雑音のレベルが検出され、この風雑音のレベルが大きいときに可変減衰器8R、8Lの減衰率を多くし、風雑音のレベルが小さいときに可変減衰器8R、8Lの減衰率を少なくする制御が行われる。
【0038】
それと共にこの回路においては、従来の信号出力部のイコライザに替えて可変利得器32R、32L及び利得器33R、33Lが設けられ、これらの回路で所望の周波数特性が得られるようにされると共に、この内の風雑音の成分が多く含まれる帯域1の信号の供給される可変利得器32R、32Lの利得が、例えば風雑音のレベルが大きいときに小さくされると共に、風雑音のレベルが小さいときに大きくする制御が行われる。
【0039】
こうしてこの回路において、音声信号の左右の指向性を強調するステレオ演算回路が形成される。さらに例えば風雑音のレベルが大きいときに減衰器8R、8Lの減衰率が多くされて、演算器3R、3Lで減算される信号の量が少なくされると共に、可変利得器32R、32Lの利得が小さくされて右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の帯域1の信号が減少される。
【0040】
これによりこの回路において、例えば風雑音のレベルが大きいときにはステレオ演算回路で形成されるステレオ効果が弱められ、若しくは止められて、ステレオ演算回路で風雑音が強調される不具合が解消されると共に、例えば風雑音のレベルが大きいときには風雑音の成分が多く含まれる帯域1の信号が減少されて、風雑音の影響がさらに減少される。
【0041】
従ってこの実施形態において、例えば風雑音の発生を検出して自動でステレオ演算処理のパラメータを制御するようにしたことによって、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消し、さらに例えば風雑音発生時には風雑音の成分が多く含まれる帯域の信号が減少されて、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができる。
【0042】
これによって、従来の装置では、ランダムな位相で生じる風雑音はステレオ演算回路で雑音成分が強調されてしまう恐れがあり、このように風雑音が強調されることは後段の回路等との関係で極めて不具合を生じる恐れがあり、また近年製品の小型化によりマイクロホンの間隔はさらに狭められているために、この傾向はさらに顕著になっていたものを、本発明の収音装置及びステレオ演算方法によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
【0043】
すなわち本発明の収音装置によれば、第1の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、第2の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第3及び第4の帯域分割手段と、第3及び第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第3及び第4の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第3及び第4の信号減衰手段を介して、第1の音声信号から減算する第1及び第2の演算手段と、第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して、第2の音声信号から減算する第3及び第4の演算手段と、第1〜第4の演算手段からの分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1〜第4の利得制御手段を介して第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段とを有し、第1〜第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における第1〜第4の信号減衰手段及び第1〜第4の利得制御手段を制御することにより、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消し、さらに例えば風雑音発生時には風雑音の成分が多く含まれる帯域の信号が減少されて、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0044】
また、本発明のステレオ演算方法によれば、第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、第1の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して第2の音声信号から減算し、第2の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して第1の音声信号から減算し、減算された各帯域の音声信号をそれぞれ利得制御して第1及び第2の音声信号ごとに加算し、分割された各帯域の音声信号の内の第1の音声信号からの所定帯域の信号と第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて所定帯域における音声信号のレベル及び利得を制御することにより、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消し、さらに例えば風雑音発生時には風雑音の成分が多く含まれる帯域の信号が減少されて、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0045】
なお、図4の実施形態においては、従来の信号出力部のイコライザに替えて可変利得器32R、32L及び利得器33R、33Lが設けられている。このため従来のイコライザでは、通常高次フィルタが用いられるために、これにより位相特性やSN比等が悪化する場合があったが、上述のような利得制御機能を用いる構成では、そのような特性の悪化等の生じる恐れがない。さらに例えば各帯域の利得を独立に変えられるようにすることで、レベルイコライザーとしての機能を持たせることもでき、最適の周波数特性を実現することができるようになる。
【0046】
また、上述の図1、図4の実施形態では、帯域分割を2分割にした形態について説明したが、帯域分割数はこれに限定されるものではなく、例えばさらに風雑音帯域を細かく分割して、それぞれの帯域を別々に減衰器及び利得器を制御するようにしてもよい。このようにすることでさらに聴感上で違和感の無い低減処理を可能にすることができる。
【0047】
さらに本願出願人は、先に風雑音を低減させた収音装置として特許第3186411号を提案しているが、この特許された発明では風雑音成分を適応処理にて抽出し、この抽出した風雑音成分を元の信号から減算することにより、風雑音を低減するものであり、本発明におけるステレオ効果を制御して風雑音を低減しているものとは、前提が全く異なるものである。
【0048】
なお本発明は、上述の説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく種々の変形が可能とされるものである。
【0049】
【発明の効果】
従って請求項1及び請求項3の発明によれば、例えば風雑音の発生を検出して自動でステレオ演算処理のパラメータを制御するようにしたことによって、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消して、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0050】
また、請求項2及び請求項4の発明によれば、例えば風雑音の発生を検出して自動でステレオ演算処理のパラメータを制御するようにしたことによって、例えば風雑音発生時にもステレオ演算処理のために風雑音成分が強調されてしまう恐れを解消し、さらに例えば風雑音発生時には風雑音の成分が多く含まれる帯域の信号が減少されて、特に小型の装置において近接して設けられたマイクロホンでも、常に良好なステレオ収音を可能にすることができるものである。
【0051】
これによって、従来の装置では、ランダムな位相で生じる風雑音はステレオ演算回路で雑音成分が強調されてしまう恐れがあり、このように風雑音が強調されることは後段の回路等との関係で極めて不具合を生じる恐れがあり、また近年製品の小型化によりマイクロホンの間隔はさらに狭められているために、この傾向はさらに顕著になっていたものを、本発明の収音装置及びステレオ演算方法によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の収音装置及びステレオ演算方法に適用されるステレオ演算回路の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】その説明のための図である。
【図3】その説明のための図である。
【図4】本発明の収音装置及びステレオ演算方法に適用されるステレオ演算回路の他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】従来のステレオ演算回路の構成を示すブロック図である。
【図6】その説明のための図である。
【符号の説明】
1R,1L…第1及び第2の無指向性マイクロホン、2R,2L…増幅器、3R,3L…演算器、4R,4L及び5R,5L…帯域分割手段、6R,6L及び7R,7L…遅延器、8R,8L…可変減衰器、9R,9L…減衰器、10R,10L…加算器、11R,11L…イコライザ、12R,12L…出力端子、13…減算器、14…レベル検出手段、15…係数生成手段、30R,30L及び31R,31L…演算器、32R,32L…可変利得器、33R,33L…利得器、34R,34L…加算器
Claims (4)
- 任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンを有し、前記第1の無指向性マイクロホンからの第1の音声信号と前記第2の無指向性マイクロホンからの第2の音声信号とを用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算回路の設けられた収音装置であって、
前記第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、
前記第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して前記第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段と、
前記第2の加算手段からの信号を前記第1の音声信号から減算する第1の演算手段と、
前記第1の加算手段からの信号を前記第2の音声信号から減算する第2の演算手段とを有し、
前記第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の前記第1の音声信号からの所定帯域の信号と前記第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて前記所定帯域における前記第1及び第2の信号減衰手段のレベルを制御する
ことを特徴とする収音装置。 - 任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンを有し、前記第1の無指向性マイクロホンからの第1の音声信号と前記第2の無指向性マイクロホンからの第2の音声信号とを用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算回路の設けられた収音装置であって、
前記第1の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第1及び第2の帯域分割手段と、
前記第2の音声信号の音声帯域を複数の帯域に分割する第3及び第4の帯域分割手段と、
前記第3及び第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第3及び第4の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第3及び第4の信号減衰手段を介して、前記第1の音声信号から減算する第1及び第2の演算手段と、
前記第1及び第2の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させる第1及び第2の遅延手段及び各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定する第1及び第2の信号減衰手段を介して、前記第2の音声信号から減算する第3及び第4の演算手段と、
前記第1〜第4の演算手段からの前記分割された各帯域の音声信号をそれぞれ第1〜第4の利得制御手段を介して前記第1及び第2の音声信号ごとに加算する第1及び第2の加算手段とを有し、
前記第1〜第4の帯域分割手段で分割された各帯域の音声信号の内の前記第1の音声信号からの所定帯域の信号と前記第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて前記所定帯域における前記第1〜第4の信号減衰手段及び前記第1〜第4の利得制御手段を制御する
ことを特徴とする収音装置。 - 任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンで収音された第1及び第2の音声信号を用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算方法であって、
前記第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、
前記分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して、前記第1及び第2の音声信号ごとに加算し、
前記第1の音声信号の加算された信号を前記第2の音声信号から減算し、
前記第2の音声信号の加算された信号を前記第1の音声信号から減算し、
前記分割された各帯域の音声信号の内の前記第1の音声信号からの所定帯域の信号と前記第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて前記所定帯域における前記音声信号のレベルを制御する
ことを特徴とするステレオ演算方法。 - 任意の間隔で配置された第1及び第2の無指向性マイクロホンで収音された第1及び第2の音声信号を用いて有指向のステレオ音場信号を出力するステレオ演算方法であって、
前記第1及び第2の音声信号の音声帯域をそれぞれ複数の帯域に分割し、
前記第1の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して前記第2の音声信号から減算し、
前記第2の音声信号から分割された各帯域の音声信号をそれぞれ前記第1及び第2の無指向性マイクロホンの間隔に応じて時間遅延させると共に、各帯域の音声信号のレベルをそれぞれに設定して前記第1の音声信号から減算し、
前記減算された各帯域の音声信号をそれぞれ利得制御して前記第1及び第2の音声信号ごとに加算し、
前記分割された各帯域の音声信号の内の前記第1の音声信号からの所定帯域の信号と前記第2の音声信号からの所定帯域の信号との差成分を検波したレベルに応じた制御信号にて前記所定帯域における前記音声信号のレベル及び前記利得を制御する
ことを特徴とするステレオ演算方法。
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