JP3924857B2 - フォトレジスト組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠紫外線(エキシマレーザー等を含む)、電子線、X線または放射光のような高エネルギーの放射線によって作用するリソグラフィーなどに適したフォトレジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロンのパターン形成が要求されるようになっている。特にエキシマレーザーリソグラフィーは、64M DRAMおよび256M DRAMの製造を可能とすることから、注目されている。かかるエキシマレーザーリソグラフィープロセスに適したレジストとして、酸触媒および化学増幅効果を利用した、いわゆる化学増幅型レジストが提案されている。化学増幅型レジストは、放射線の照射部で酸発生剤から発生した酸を触媒とする反応により、照射部のアルカリ現像液に対する溶解性を変化させるものであり、これによってポジ型またはネガ型のフォトレジストが得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
化学増幅型レジストは、放射線照射部で発生した酸が、その後の熱処理(post exposure bake:以下、PEBと略す)によって拡散し、照射部の現像液に対する溶解性を変化させるための触媒として作用するものであるが、このような化学増幅型レジストには、環境の影響を受けやすいという欠点がある。例えば、放射線照射からPEBまでの放置時間によって性能が変化することが知られており、これはタイム・ディレイ(time delay)効果と呼ばれている。タイム・ディレイ効果は、解像度を低下させるとともに、レジスト膜表面にアルカリ現像液への難溶化層を発生させ、現像後のパターンをT字状にして寸法の再現性を損ねることになる。タイム・ディレイ効果の原因は、環境雰囲気中に微量存在するアミン類などにより、レジスト中で発生した酸が失活するためといわれている。
【0004】
このようなタイム・ディレイ効果を抑制するため、すなわちタイム・ディレイ効果耐性(以下、TDE耐性という)を向上させるために、化学増幅型ポジ型レジストにクェンチャーとして含窒素化合物を添加することが知られている。これによってTDE耐性はそれなりに向上するが、従来から知られているクェンチャーとしての含窒素化合物を用いた場合、TDE耐性の向上や解像力に限界があった。
【0005】
本発明は、感度、解像度、耐熱性、残膜率、塗布性、プロファイルなどの諸性能に優れ、特にTDE耐性に優れた、化学増幅型のポジ型フォトレジスト組成物を提供することを目的とする。本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、クェンチャーとして特定の化合物を用いることにより、優れた性能を有するポジ型フォトレジスト組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、アルカリに対して不溶性または難溶性の状態から、酸の作用でアルカリ可溶性となる樹脂(A)、酸発生剤(B)および、脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物(C)の各成分を含有してなるポジ型フォトレジスト組成物を提供するものである。脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物(C)を含有させることにより、特に、解像度、プロファイルおよびTDE耐性が向上する。また、上記の三成分に加えて、酸化還元電位が1.7 eV 以下である電子供与体(D)を含有することも有効である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。フォトレジスト組成物の主体となる樹脂(A)は、それ自体ではアルカリに対して不溶性または難溶性であるが、酸の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものである。例えば、フェノール骨格を有するアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基の少なくとも一部を、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持ち、酸に対しては不安定な基で保護した樹脂が用いられる。
【0008】
ベースとなるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリイソプロペニルフェノール樹脂、ビニルフェノールとスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートまたはメチルアクリレートとの共重合体、イソプロペニルフェノールとスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートまたはメチルアクリレートとの共重合体などが挙げられる。ビニルフェノールおよびイソプロペニルフェノールにおける水酸基とビニル基またはイソプロペニル基との位置関係は特に限定されないが、一般にはp−ビニルフェノールまたはp−イソプロペニルフェノールが好ましい。これらの樹脂は、透明性を向上させるために水素添加されていてもよい。また、アルカリに可溶である範囲において、上記樹脂のフェノール核にアルキル基やアルコキシ基などが導入されていてもよい。これらのアルカリ可溶性樹脂のなかでも、ポリビニルフェノール系樹脂、すなわちビニルフェノールの単独重合体またはビニルフェノールと他の単量体との共重合体が好ましく用いられる。
【0009】
アルカリ可溶性樹脂に導入される、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持つが、酸に対して不安定な基は、公知の各種保護基であることができる。例えば、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、テトラヒドロ−2−ピラニル基、テトラヒドロ−2−フリル基、メトキシメチル基、1−エトキシエチル基などが挙げられ、これらの基がフェノール性水酸基の水素に置換することになる。これらの保護基のなかでも、本発明においては特に、1−エトキシエチル基が好ましい。フェノール骨格を有するアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基にこれらの保護基を導入する場合、アルカリ可溶性樹脂中のフェノール性水酸基のうち、保護基で置換されたものの割合(保護基導入率)は、一般には10〜50%の範囲にあるのが好ましい。
【0010】
本発明においては特に、樹脂(A)の全部または一部として、前記したポリビニルフェノール系樹脂のフェノール性水酸基が、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持ち、酸に対しては不安定な基で部分的に保護された樹脂を用いるのが好ましい。なかでも好ましいものは、ポリビニルフェノール系樹脂のフェノール性水酸基が1−エトキシエチル基で部分的に保護された樹脂である。
【0011】
フォトレジスト組成物を構成する酸発生剤(B)は、その物質自体に、またはその物質を含むレジスト組成物に、放射線を照射することによって、酸を発生する各種の化合物であることができ、もちろん、2種以上の化合物の混合物として用いることもできる。例えば、オニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物、ジスルホン系化合物、オルトキノンジアジド化合物、スルホン酸系化合物などが挙げられる。本発明においては、酸発生剤として、ジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物、スルホン酸系化合物などが好ましく用いられる。
【0012】
酸発生剤となるジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物には、例えば、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタンなどが包含される。
【0013】
また、酸発生剤となるスルホン酸系化合物としては、アルキルスルホン酸のエステル、ハロアルキルスルホン酸のエステル、アリールスルホン酸のエステル、カンファースルホン酸のエステルなどを挙げることができる。これらのエステルを構成するアルコール成分としては、ピロガロール、2−または4−ニトロベンジルアルコール、2,6−ジニトロベンジルアルコール、N−ヒドロキシイミド化合物、オキシム系化合物などが挙げられる。スルホン酸系化合物のなかでは、N−ヒドロキシイミド化合物の各種スルホン酸エステルが好ましい。スルホン酸系化合物には、例えば、N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(メチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(エチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、α−(p−トリルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル(次式の構造を有する)
【0014】
Figure 0003924857
【0015】
などが包含される。
【0016】
以上の樹脂(A)および酸発生剤(B)に加えて、本発明のフォトレジスト組成物は、クェンチャーとして、脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物(C)を含有する。ここでいう脂肪族性水酸基とは、脂肪族炭素に結合した水酸基を意味し、いわゆるアルコール性水酸基と同義である。この3級アミン化合物(C)は、基板上に形成されたレジスト膜のプリベーク後もこのレジスト膜中に残存して効果を発揮するためには、プリベークの温度で蒸発しないものであるのが好ましく、一般には150℃以上の沸点を有するものが用いられる。
【0017】
3級アミン化合物(C)は、3級窒素原子を有し、かつ水酸基が脂肪族炭素に結合したものであればよく、他に芳香族基などを含有してもよいのはもちろんである。かかる脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物は、具体的には例えば、次の一般式(I)で示されるものであることができる。
【0018】
Figure 0003924857
【0019】
式中、Xは2価の脂肪族基を表し、R1 およびR2 は互いに独立に、1価の脂肪族基または芳香族基を表すが、R1 とR2 とが一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、またR1 とX中の炭素原子とが一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよい。
【0020】
上記一般式(I)において、Xで表される2価の脂肪族基としては、典型的には例えば、炭素数1〜6程度のアルキレンを挙げることができ、これにさらに水酸基などの置換基が結合していてもよい。また、R1 およびR2 で表される1価の脂肪族基としては、典型的には例えば、炭素数1〜6程度のアルキルを挙げることができ、これにさらに水酸基などの置換基が結合していてもよい。R1 およびR2 で表される1価の芳香族基としては、典型的には例えば、フェニルを挙げることができ、これにさらにアルキルなどの置換基が結合していてもよい。R1 とR2 とで環を形成する場合、またはR1 とX中の炭素原子とで環を形成する場合、それらが結合する窒素原子を含む環は、ピロリジン環のような5員環や、ピペリジン環およびモルフォリン環のような6員環などであることができ、これらの環には、アルキルやヒドロキシアルキルなどの置換基が結合していてもよい。また、この説明から明らかなように、R1 とR2 またはR1 とX中の炭素原子とが結合して環を形成する場合、この環には、X、R1 およびR2 が結合する窒素原子のほか、環原子として第2のヘテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、イオウ原子などが存在してもよい。
【0021】
脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物(C)のより具体的な例は、N,N−ジ置換アミノアルカノール、N−置換ジアルカノールアミン、N,N−ジ置換アミノアルカンジオール、トリアルカノールアミン、脂肪族性水酸基を有し、3級窒素原子を環原子とする複素環化合物などである。ここでいう3級窒素原子を環原子とする複素環化合物には、N−置換ピロリジン化合物、N−置換ピペリジン化合物、N−置換モルフォリン化合物などが包含される。本発明に用いられる3級アミン化合物(C)として、具体的には例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0022】
2−(N−メチルアニリノ)エタノール、
2−(N−エチルアニリノ)エタノール、
N−フェニルジエタノールアミン、
N−フェニルジイソプロパノールアミン、
2−ジエチルアミノエタノール、
1−ジエチルアミノ−2−プロパノール、
3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、
3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、
1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、
3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、
3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、
2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、
3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノール、
4−ジメチルアミノ−1−ブタノール、
トリイソプロパノールアミン、
1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、
1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、
N−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリン、
1−(2−ヒドロキシエチル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、
2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジンなど。
【0023】
これらのなかでも、N−フェニルジエタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−N−エチルアニリノエタノール、トリイソプロパノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリンなどが好ましく用いられる。
【0024】
本発明のポジ型フォトレジスト組成物は、以上説明した樹脂(A)、酸発生剤(B)および3級アミン化合物(C)を必須に含有するものであるが、もちろん他の成分を含有することもできる。好ましく用いられる追加の成分としては、電子供与体(D)が挙げられ、この電子供与体は、酸化還元電位が1.7 eV 以下であるものが好ましい。電子供与体としては、例えば、縮合多環系芳香族化合物、複素多環系芳香族化合物などが挙げられる。好ましく用いられる電子供与体は、例えば、2−ヒドロキシカルバゾール、β−ナフトール、4−メトキシナフトール、インドール酢酸などである。これらの電子供与体は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。電子移動によって起こる酸発生剤の分解反応は、ある種の組成において、電子供与体の存在により促進されることがある。
【0025】
ポジ型フォトレジスト組成物の好ましい組成比は、この組成物中の全固形分重量を基準に、樹脂(A)が20〜98重量%、より好ましくは75〜98重量%の範囲、酸発生剤(B)が0.05〜20重量%の範囲、3級アミン化合物(C)が0.001〜10重量%の範囲である。また電子供与体(D)を用いる場合は、組成物中の全固形分重量を基準に、0.001〜10重量%の範囲で存在させるのが好ましい。本発明のフォトレジスト組成物は、必要に応じてさらに、溶解抑止剤、増感剤、染料、接着性改良剤など、この分野で慣用されている各種の添加物を含有することもできる。
【0026】
このポジ型フォトレジスト組成物は通常、全固形分濃度が10〜50重量%となるように、上記各成分を溶剤に混合してレジスト溶液が調製され、シリコンウェハなどの基体上に塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解するものであればよく、この分野で通常用いられているものであることができる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールモノまたはジエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチルおよびピルビン酸エチルのようなエステル類、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、キシレンのような芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
基体上に塗布されたレジスト膜からは、その後通常、プリベーク、パターニング露光、PEB、アルカリ現像液による現像の各工程を経て、ポジ型パターンが形成される。アルカリ現像には、この分野で用いられている各種のアルカリ性水溶液を用いることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【0028】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中にある部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0029】
参考例1(樹脂の保護化)
窒素置換された500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量(Mw)8,400 、多分散度(Mw/Mn)1.19のポリ(p−ビニルフェノール)〔日本曹達(株)製の“VP-5000” 〕25g(p−ビニルフェノール単位として208ミリモル)およびp−トルエンスルホン酸0.024g(0.125ミリモル)を入れ、1,4−ジオキサン250gに溶解した。この溶液にエチルビニルエーテル9.0g(125ミリモル)を滴下し、その後25℃で5時間反応させた。この反応溶液をイオン交換水1500mlに滴下し、次に濾別して、白色のウェットケーキを得た。このウェットケーキを再度1,4−ジオキサン200gに溶解し、次にイオン交換水1500mlに滴下し、濾別した。得られたウェットケーキを600gのイオン交換水中で攪拌して洗浄し、濾過してウェットケーキを取り出し、さらにこのイオン交換水による洗浄操作を2度繰り返した。得られた白色のウェットケーキを減圧乾燥して、ポリ(p−ビニルフェノール)の水酸基が部分的に1−エトキシエチルエーテル化された樹脂を得た。この樹脂を 1H−NMRで分析したところ、水酸基の40%が1−エトキシエチル基で保護されていた。この樹脂の重量平均分子量は 12,300 、多分散度は1.23であった。
【0030】
参考例2(同上)
参考例1の“VP-5000” に代えて、重量平均分子量 23,900 、多分散度1.12のポリ(p−ビニルフェノール)〔日本曹達(株)製の“VP-15000”〕を同量用い、p−トルエンスルホン酸の量を0.021g(0.109ミリモル)、およびエチルビニルエーテルの量を7.88g(109ミリモル)に変えた以外は、参考例1と同様の操作を行い、ポリ(p−ビニルフェノール)の水酸基が部分的に1−エトキシエチルエーテル化された樹脂を得た。この樹脂を 1H−NMRで分析したところ、水酸基の35%が1−エトキシエチル基で保護されていた。この樹脂の重量平均分子量は 31,200 、多分散度は1.17であった。
【0031】
実施例1
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、およびN−フェニルジエタノールアミン0.012部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。
【0032】
常法により洗浄したシリコンウェハに、スピンコーターを用いて、上記レジスト液を乾燥後の膜厚が0.7μm となるように塗布した。次いでこのシリコンウェハを、ホットプレート上にて90℃で90秒間プリベークした。プリベーク後の塗膜を、パターンを有するクロムマスクを介して、248nmの露光波長を有するKrFエキシマレーザーステッパー〔(株)ニコン製の“NSR-1755 EX8A”、NA=O.45〕を用い、露光量を段階的に変化させて露光処理した。露光後のウェハを直ちに、またはアミン濃度2〜3ppb のクリーンルーム内で30分間放置後に、ホットプレート上にて100℃で90秒間加熱してPEBを行い、露光部の脱保護基反応を行った。これをテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38重量%水溶液で現像して、ポジ型パターンを得た。
【0033】
形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、28mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、28mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0034】
実施例2
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、 N−フェニルジエタノールアミン0.025部、および電子供与体としての2−ヒドロキシカルバゾール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、30mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。 また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、30mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0035】
実施例3
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド0.5部、同じく酸発生剤としてのN−(エチルスルホニルオキシ)スクシンイミド0.1部、N−フェニルジエタノールアミン0.018部、および電子供与体としての2−ヒドロキシカルバゾール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、22mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。 また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、22mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0036】
実施例4
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド0.5部、同じく酸発生剤としてのN−(エチルスルホニルオキシ)スクシンイミド0.1部、 N−フェニルジエタノールアミン0.018部、および電子供与体としての4−メトキシ−1−ナフトール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、26mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、26mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0037】
実施例5
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、および2−ジエチルアミノエタノール0.1部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、33mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、33mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0038】
実施例6
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、および1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン0.1部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過してレジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、26mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、26mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0039】
実施例7
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、およびN−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリン0.025部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、35mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、35mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0040】
実施例8
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、および2−N−エチルアニリノエタノール0.01部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、30mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また、露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、30mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0041】
実施例9
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、2−N−エチルアニリノエタノール0.03部、および電子供与体としての2−ヒドロキシカルバゾール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、35mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、35mJ/cm2 の露光量で0.22μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0042】
実施例10
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン0.5部およびN−フェニルジエタノールアミン0.015部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、35mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、35mJ/cm2 の露光量で0.23μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0043】
実施例11
参考例2で合成した樹脂13.5部、 酸発生剤としてのビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン0.5部、およびトリイソプロパノールアミン0.01部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、24mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、24mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0044】
実施例12
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン0.5部、トリイソプロパノールアミン0.01部、および電子供与体としての2−ヒドロキシカルバゾール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。 このレジスト液を用いて実施例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した。露光後直ちにPEBを行った試料は、35mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。また露光後30分間放置してからPEBを行った試料も同様に、35mJ/cm2 の露光量で0.24μm の微細パターンをプロファイルよく解像していた。
【0045】
比較例1
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、およびN−シクロヘキシルエタノールアミン0.1部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて、実施例1と同様の方法でシリコンウェハへの塗布、プリベークおよびパターニング露光を行った。露光後すぐに、ホットプレート上にて100℃で90秒間のPEBを行い、次いで実施例1と同様の方法で現像した。形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した結果、20mJ/cm2 の露光量で0.30μm までのパターンしか解像することができなかった。
【0046】
比較例2
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、 およびN,N−ジメチルアニリン0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて比較例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した結果、25mJ/cm2 の露光量で0.30μm までのパターンしか解像することができなかった。
【0047】
比較例3
参考例1で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのN−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド1.0部、および6−アミノ−1−ヘキサノール0.2部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート65部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて比較例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した結果、25mJ/cm2 の露光量で0.30μm までのパターンしか解像することができなかった。
【0048】
比較例4
参考例2で合成した樹脂13.5部、酸発生剤としてのビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン0.5部、およびN,N−ジメチルベンジルアミン0.03部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70部に溶解した。この溶液を孔径0.1μm のフッ素樹脂製フィルタで濾過して、レジスト液を調製した。このレジスト液を用いて比較例1と同様の操作を行い、形成されたパターンを電子顕微鏡で観察した結果、40mJ/cm2 の露光量で0.23μm のパターンを解像していたものの、膜減りが著しく、プロファイルは不良であった。
【0049】
以上の実施例1〜12および比較例1〜4で用いた組成、ならびにその試験結果を、表1にまとめて示す。なお、表1では、各成分を次の記号で表示した。
【0050】
(A)樹脂
A1:参考例1で合成した樹脂
A2:参考例2で合成した樹脂
【0051】
(B)酸発生剤
B1:N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド
B2:N−(エチルスルホニルオキシ)スクシンイミド
B3:ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン
【0052】
(C)アミン化合物
C1:N−フェニルジエタノールアミン
C2:2−ジエチルアミノエタノール
C3:1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン
C4:N−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリン
C5:2−N−エチルアニリノエタノール
C6:トリイソプロパノールアミン
CA:N−シクロヘキシルエタノールアミン
CB:N,N−ジメチルアニリン
CC:6−アミノ−1−ヘキサノール
CD:N,N−ジメチルベンジルアミン
【0053】
(D)電子供与体
D1:2−ヒドロキシカルバゾール
D2:4−メトキシ−1−ナフトール
【0054】
【表1】
Figure 0003924857
【0055】
【発明の効果】
本発明により脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物を添加したフォトレジスト組成物は、環境による影響を受けにくく、遠紫外線(エキシマレーザーを含む)光源、電子線、X線および放射光のような高エネルギー放射線の露光領域において、他のアミン化合物を用いた場合に比べ、優れた解像性を示し、また高感度で良好なプロファイルを与える。したがって、これらの各性能のバランスにおいて優れており、この組成物を用いることにより、高精度で微細なフォトレジストパターンを形成することができる。

Claims (9)

  1. アルカリに対して不溶性または難溶性の状態から、酸の作用でアルカリ可溶性となる樹脂(A)、酸発生剤(B)および、脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物であって、N,N−ジ置換アミノアルカノール、N−置換ジアルカノールアミンおよびN,N−ジ置換アミノアルカンジオールから選ばれる3級アミン化合物(C)を含有することを特徴とするポジ型フォトレジスト組成物。
  2. アルカリに対して不溶性または難溶性の状態から、酸の作用でアルカリ可溶性となる樹脂(A)、酸発生剤(B)および、脂肪族性水酸基を有する3級アミン化合物であって、3級窒素原子を環原子とする複素環化合物である3級アミン化合物(C)を含有することを特徴とするポジ型フォトレジスト組成物。
  3. 樹脂(A)が、ポリビニルフェノール系樹脂のフェノール性水酸基を、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持ち、酸に対しては不安定な基で部分的に保護した樹脂を含有する請求項1または2に記載の組成物。
  4. 酸発生剤(B)がジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 酸発生剤(B)がスルホン酸系化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  6. 3級アミン化合物(C)が、N−置換ピロリジン化合物、N−置換ピペリジン化合物およびN−置換モルフォリン化合物から選ばれる請求項記載の組成物。
  7. 組成物中の全固形分重量を基準に、樹脂(A)を20〜98重量%、酸発生剤(B)を0.5〜20重量%、および3級アミン化合物(C)を0.01〜10重量%含有する請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  8. さらに、酸化還元電位が1.7eV以下である電子供与体(D)を含有する請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  9. 組成物中の全固形分重量を基準に、電子供与体(D)を0.01〜10重量%含有する請求項記載の組成物。
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