JP3924447B2 - 縦型多気筒エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、縦型多気筒エンジンに関する。
【従来の技術】
従来、縦型多気筒エンジンの冷却装置として、本発明と同様、シリンダヘッド内にヘッドジャケットを設け、シリンダヘッドの吸気ポートと排気ポートの間にシリンダヘッドの幅方向に沿うポート間横断水路を形成し、シリンダヘッドの吸気分配手段側にヘッド吸気側水路を、排気合流手段側にヘッド排気側水路を、それぞれシリンダヘッドの長手方向に沿わせて形成し、このヘッド吸気側水路とヘッド排気側水路とをポート間横断水路で連通させたものがある。
従来、この種のエンジンでは、排気ポート側水路の天井面を吸気ポート側水路の天井面と同じ高さにしている。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、次の問題がある。
《問題》 エンジンの左右傾斜性能が低い。
排気ポート側水路の天井面を吸気ポート側水路の天井面と同じ高さにしているため、エンジンが左右に傾斜し、ヘッド排気側水路が高くなると、その天井壁下面にできるエア溜まりにより、排気ポート壁が冷却水から露出し、ここが冷却不足となる。このため、いわゆるエンジンの左右傾斜性能が低い。
本発明の課題は、上記問題点を解決できる、縦型多気筒エンジンの水冷装置を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の構成は、次の通りである。
図5に示すように、シリンダヘッド(18)内にヘッドジャケット(25)を設け、シリンダヘッド(18)の吸気ポート(19)と排気ポート(20)の間にシリンダヘッド(18)の幅方向に沿うポート間横断水路(21)を形成し、
シリンダヘッド(18)の吸気分配手段(22)側にヘッド吸気側水路(26)を、排気合流手段(23)側にヘッド排気側水路(27)を、それぞれシリンダヘッド(18)の長手方向に沿わせて形成し、このヘッド吸気側水路(26)とヘッド排気側水路(27)とをポート間横断水路(21)で連通させた、縦型多気筒エンジンにおいて、
図6(B)〜(E)に示すように、ヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)をヘッド吸気側水路(26)の天井壁下面(26a)よりも高くし、
図7に示すように、ポート間横断水路(21)を横断する冷却水がヘッド吸気側水路(26)からヘッド排気側水路(27)に向かうようにし、
図3に示すように、シリンダブロック ( 1 ) の一側壁にシリンダブロック ( 1 ) の長手方向に沿う脇水路 ( 3 ) を設け、シリンダブロック ( 1 ) 内にシリンダジャケット ( 4 ) を設け、ラジエータからの冷却水を脇水路 ( 3 ) を介してシリンダジャケット ( 4 ) に導入するようにするとともに、
隣接するシリンダ壁 ( 12 )( 12 ) 同士を連続させるに当たり、
図4に示すように、その連続壁 ( 16 ) にシリンダブロック ( 1 ) の幅方向に沿うシリンダ間横断水路 ( 17 ) を形成し、
図7に示すように、シリンダ間横断水路 ( 17 ) を横断した冷却水が、反転してポート間横断水路 ( 21 ) を横断するようにし、
図1に示すように、シリンダブロック ( 1 ) の左右両側壁 ( 1a ) の一方に、脇水路 ( 3 ) を上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 ) とともに配置するに当たり、
脇水路 ( 3 ) と上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 ) とをシリンダジャケット ( 4 ) とシリンダ壁 ( 12 ) とに沿って上下に並べ、上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 ) とを脇水路 ( 3 ) の上下に振り分け配置し、
上記動弁カム軸 ( 7 ) を脇水路 ( 3 ) の下方に配置し、上記二次回転バランサ軸 ( 6 ) を脇水路 ( 3 ) の上方に配置し、
シリンダブロック ( 6 ) の左右両側壁 ( 1a ) のうち、上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 ) とは反対側に、他の二次回転バランサ軸 ( 38 ) を配置し、
上記他の二次回転バランサ軸 ( 38 ) は動弁カム軸 ( 7 ) よりも低い位置に配置した、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。
【0004】
【発明の効果】
(請求項1の発明)
請求項1の発明は、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの左右傾斜性能が高い。
図6(B)〜(E)に示すように、ヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)をヘッド吸気側水路(26)の天井壁下面(26a)よりも高くしたため、シリンダヘッド(18)の幅方向を左右方向と見て、エンジンが左右に傾斜し、ヘッド排気側水路(27)が高くなり、その天井壁下面(27a)にエア溜まりができても、排気ポート(19)の天井壁が冷却水から露出しにくく、その冷却を確保することができる。このため、いわゆるエンジンの左右傾斜性能が高い。
【0005】
《効果》 エンジンの前後傾斜性能が高い。
図6(B)〜(E)に示すように、シリンダヘッド(18)の長手方向に沿うヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)を高くしているため、その長手方向を前後方向と見て、エンジンが前後に傾斜し、排気側水路(27)の前端部または後端部が高くなり、その天井壁下面(27a)の前端部または後端部にエア溜まりができても、前端部または後端部の排気ポート(19)の天井壁が冷却水から露出しにくく、その冷却を確保することができる。このため、いわゆるエンジンの前後傾斜性能が高い。
《効果》 吸気の充填効率が高い。
図7に示すように、ポート間横断水路(21)を通過する冷却水が、シリンダヘッド(18)一側の吸気分配手段(22)側から他側の排気合流手段(23)側に向かうようにしたため、排気熱が吸気分配手段(22)側に伝わりにくく、吸気の温度上昇を抑制することができる。このため、吸気の充填効率が高い。
【0006】
《効果》 シリンダボア間の連続壁の冷却性能が高い。
図3・図4に示すように、隣接するシリンダ壁(12)(12)同士を連続させるに当たり、その連続壁(16)にシリンダブロック(1)の幅方向に沿うシリンダ間横断水路(17)を形成したため、シリンダブロック(1)の幅方向を横方向と見て、脇水路出口(5)からシリンダジャケット(4)に横向きに流入した冷却水が、シリンダ間横断水路(17)に押し込まれる。このため、冷却水がシリンダ間横断水路(17)をスムーズに通過し、シリンダボア間の連続壁(16)の冷却性能が高い。
【0007】
《効果》 エンジン両側の暖機と冷却を均一化することができる。
図7に示すように、シリンダ間横断水路(17)を横断した冷却水が、反転してポート間横断水路(21)を横断するようにしたため、エンジン両側の暖機と冷却を均一化することができる。
《効果》 エンジンの横幅を小さくすることができる。
図1に示すように、脇水路 ( 3 ) と上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 ) とをシリンダジャケット ( 4 ) とシリンダ壁 ( 12 ) とに沿って上下に並べたため、これらを幅方向に並べて配置する場合に比べ、エンジンの幅寸法を小さくすることができる。
【0008】
(請求項2の発明)
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジン全体の暖機や冷却が均一化される。
図7に示すように、冷却水がシリンダブロック(1)内を横断し、シリンダヘッド(18)内を縦横にくまなく巡回するため、エンジン全体の暖機と冷却が均一化される。
【0009】
(請求項3の発明)
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 水路抵抗を小さくすることができる。
図2に示すように、調時伝動装置(8)をシリンダブロック(1)の長手方向一端部に配置し、その反対端のシリンダブロック端壁(9)に水ポンプ (10)を取り付け、図7に示すように、シリンダブロック(1)の長手方向のうち、水ポンプ(10)を取り付けた方を前として、脇水路(3)の前端に脇水路(3)の入口(11)を形成し、この脇水路(3)の入口(11)をシリンダブロック(1)の前端壁で開口し、この脇水路(3)の入口(11)を水ポンプ(10)の吐出口に臨ませたので、脇水路(3)の入口(11)を水ポンプ(10)の吐出口に連通させるに当たり、調時伝動装置(8)の脇を迂回することなく、直接に臨ませることができ、水路抵抗を小さくすることができる。
【0010】
(請求項4の発明)
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 各シリンダ壁の上下部分の暖機や冷却が均一化される。
図1に示すように、脇水路(3)の出口(5)をシリンダジャケット(4)の下部に臨ませたため、脇水路(3)の出口(5)から流出した冷却水は、シリンダジャケット(4)の下部を通過した後、シリンダジャケット(4)の上部に浮上し、各シリンダ壁(12)の上下部分の暖機や冷却が均一化される。このため、暖機運転中は、各シリンダ壁(12)の下寄り部分がその上寄り部分と同様に暖まり、ピストン(24)の焼き付きが起こりにくい。また、通常運転中は、各シリンダ壁(12)の上寄り部分と同様にその下寄り部分も十分に冷却され、その下寄り部分とピストンリングとの間に隙間ができにくく、ブローバイガスの漏れや燃焼室内へのオイル上がりが起こりにくい。
【0011】
【0012】
【0013】
(請求項5の発明)
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 全シリンダ壁の暖機や冷却が均一化される。
図3に示すように、全シリンダ壁(12)の脇を通過する脇水路(3)に複数の出口(5)を設け、これら複数の出口(5)を脇水路(3)の長手方向両端部と中間部とに配置したため、全シリンダ壁(12)に向けて冷却水が均等に分配され、全シリンダ壁(12)の暖機や冷却が均一化される。
【0014】
(請求項6の発明)
請求項6の発明は、請求項5の発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの横幅を小さくすることができる。
図3に示すように、脇水路(3)の隣り合う出口(5)(5)間の肉壁(13)内に動弁装置のタペットガイド孔(14)を設けたため、これらを幅方向に並べて配置する場合に比べ、エンジンの横幅を小さくすることができる。
【0015】
(請求項7の発明)
請求項7の発明は、請求項5または請求項6の発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 各シリンダ壁の前後部分の暖機と冷却が均一化される。
図3に示すように、脇水路(3)の各出口(5)をそれぞれ各シリンダ壁(12)の脇方向突出端面(15)に臨ませたため、シリンダブロック(1)の長手方向を前後方向と見て、脇水路(3)の各出口(5)からシリンダジャケット(4)に横向きに流入した冷却水が、各シリンダ壁(12)の脇方向突出端面(15)に当たって前後に均等に分流し、各シリンダ壁(12)の前後部分の暖機や冷却が均一化される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図7は本発明の実施形態を説明する図で、この実施形態では、水冷の縦型多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0017】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダブロック(1)の上部にシリンダヘッド(18)を組み付け、その上部にヘッドカバー(35)を組み付けている。シリンダブロック(1)の前端壁(9)には冷却ファン(2)を備えた水ポンプ(10)を取り付け、シリンダブロック(1)の後端部にはフライホイル(37)を配置している。図3に示すように、シリンダブロック(1)の右側壁にシリンダブロック(1)の前後方向に沿う脇水路(3)を設け、ラジエータからの冷却水を脇水路(3)を介してシリンダジャケット(4)に導入するようになっている。
【0018】
水ポンプ(10)と脇水路(3)との関係は、次の通りである。
図3に示すように、脇水路(3)の入口(11)を、シリンダブロック(1)の前端壁(9)にあけ、図7に示すように、脇水路(3)の入口(11)を水ポンプ(10)の吐出口に臨ませている。図2に示すように、シリンダブロック(1)の後端壁(36)とフライホイル(37)との間に調時伝動装置(8)を配置している。すなわち、調時伝動装置(8)をシリンダブロック(1)の長手方向一端部に配置し、その反対端のシリンダブロック端壁(9)に水ポンプ (10)を取り付け、シリンダブロック(1)の長手方向のうち、水ポンプ(10)を取り付けた方を前として、脇水路(3)の前端に脇水路(3)の入口(11)を形成し、この脇水路(3)の入口(11)をシリンダブロック(1)の前端壁で開口し、この脇水路(3)の入口(11)を水ポンプ(10)の吐出口に臨ませた。このように、シリンダブロック(1)の後端部に調時伝動装置(8)を配置したため、調時伝動ケース(8)に妨げられることなく、水ポンプ(10)を配置することができる。このため、水ポンプ(10)に取り付けた冷却ファン(2)の位置を低くすることもでき、エンジンを搭載する機種の制約を受けにくい。調時伝動装置(8)はタイミングギヤトレインである。
【0019】
脇水路等の配置は、次の通りである。
図1に示すように、シリンダブロック(1)の右側壁(1a)に、脇水路(3)を上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とともに配置するに当たり、脇水路(3)と上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とをシリンダジャケット(4)とシリンダ壁(12)とに沿って上下に並べ、この上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とを脇水路(3)の上下に振り分け配置している。このため、これらを幅方向に並べて配置する場合に比べ、エンジンの幅寸法を小さくすることができる。脇水路(3)の上方には二次回転バランサ軸(6)、脇水路(3)の下方には動弁カム軸(7)を配置している。シリンダブロック(3)の左側壁(1a)には他の二次回転バランサ軸(38)を配置している。この二次回転バランサ軸(38)は動弁カム軸(7)よりも低い位置に配置している。
【0020】
また、図3に示すように、脇水路(3)はシリンダブロック(1)の全長にわたって形成され、全シリンダ壁(12)の脇を通過する。この脇水路(3)には、複数の出口(5)を設け、この複数の出口(5)を脇水路(3)の両端部と中間部とに配置し、各出口(3)を各シリンダ壁(12)の脇方向突出端面(15)に臨ませている。このため、全シリンダ壁(12)に向けて冷却水が均等に分配され、全シリンダ壁(12)の暖機や冷却が均一化されるとともに、脇水路(3)の各出口(5)からシリンダジャケット(4)に横向きに流入した冷却水が、各シリンダ壁(12)の脇方向突出端面(15)に当たって前後に均等に分流し、各シリンダ壁(12)の前後部分の暖機や冷却が均一化される。また、脇水路(3)の隣り合う出口(5)(5)間の肉壁(13)内に動弁装置のタペットガイド孔(14)を設けている。このため、出口(5)とタペットガイド孔(14)とを幅方向に並べて配置する場合に比べ、エンジンの横幅を小さくすることができる。
【0021】
また、図1に示すように、脇水路(3)の出口(5)はシリンダジャケット(4)の下部に臨ませている。このため、脇水路(3)の出口(5)から流出した冷却水は、シリンダジャケット(4)の下部を通過した後、シリンダジャケット(4)の上部に浮上し、各シリンダ壁(12)の上下部分の暖機や冷却が均一化される。このため、暖機運転中は、各シリンダ壁(12)の下寄り部分がその上寄り部分と同様に暖まり、ピストン(24)の焼き付きが起こりにくい。また、通常運転中は、各シリンダ壁(12)の上寄り部分と同様にその下寄り部分も十分に冷却され、その下寄り部分とピストンリングとの間に隙間ができにくく、ブローバイガスの漏れや燃焼室内へのオイル上がりが起こりにくい。
【0022】
シリンダジャケット(4)の構成は、次の通りである。
図2〜図4に示すように、シリンダブロック(1)では、隣接するシリンダ壁(12)(12)同士を連続させている。この連続壁(16)にシリンダブロック(1)の幅方向に沿うシリンダ間横断水路(17)を形成している。このため、シリンダブロック(1)の幅方向を横方向と見て、脇水路(3)の出口(5)からシリンダジャケット(4)に横向きに流入した冷却水が、シリンダ間横断水路(17)に押し込まれる。このため、冷却水がシリンダ間横断水路(17)をスムーズに通過し、シリンダボア間の連続壁(16)の冷却性能が高い。
【0023】
ヘッドジャケット(25)の構成は、次の通りである。
図5・図6に示すように、シリンダヘッド(18)内にヘッドジャケット(25)を設け、シリンダヘッド(18)の吸気ポート(19)と排気ポート(20)の間にシリンダヘッド(18)の幅方向に沿うポート間横断水路(21)を形成し、シリンダヘッド(18)の吸気分配手段(22)側にヘッド吸気側水路(26)を、排気合流手段(23)側にヘッド排気側水路(27)を、それぞれシリンダヘッド(18)の長手方向に沿わせて形成し、このヘッド吸気側水路(26)とヘッド排気側水路(27)とをポート間横断水路(21)で連通させている。
【0024】
冷却水の流れは、次の通りである。
図7に示すように、脇水路(3)からシリンダジャケット(4)の右側に流入した冷却水の一部は、ヘッド排気側水路(27)に浮上し、残部は、シリンダ間横断水路(17)に流入する。シリンダヘッド(18)の右前隅角部(28)の右側面にヘッドジャケット(25)の出口(25a)をあけている。このため、シリンダ間横断水路(17)を脇水路(3)側から他側に向かって横断した冷却水が、ヘッド吸気側水路(26)に浮上し、浮上冷却水がこのヘッド吸気側水路(26)を前向きに通過しながら、複数のポート間横断水路(21)に分流し、分流冷却水が脇水路(3)側のヘッド排気側水路(27)で合流しながらこの水路(27)を前向きに通過し、両水路(26)(27)を前向きに通過した冷却水が合流してヘッドジャケット(25)の出口(25a)から流出する。このように、冷却水がシリンダブロック(1)内を横断し、シリンダヘッド(18)内を縦横にくまなく巡回するため、エンジン全体の暖機と冷却が均一化される。また、ポート間横断水路(21)を通過する冷却水が、シリンダヘッド(18)一側の吸気分配手段(22)側から他側の排気合流手段(23)側に向かうため、排気熱が吸気分配手段(22)側に伝わりにくく、吸気の温度上昇を抑制することができる。このため、吸気の充填効率が高い。尚、脇水路(3)をシリンダブロック(1)の左側に配置し、シリンダヘッド(18)の左側面にヘッドジャケット(25)の出口(25a)をあけた場合には、冷却水の流れは、上記の流れと対称になる。
【0025】
ヘッド排気側水路(27)の構成は、次の通りである。
図6(B)〜(E)に示すように、ヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)をヘッド吸気側水路(26)の天井壁下面(26a)よりも高くしている。このため、エンジンが左右に傾斜し、ヘッド排気側水路(27)が高くなり、その天井壁下面(27a)にエア溜まりができても、排気ポート(19)の天井壁が冷却水から露出しにくく、その冷却を確保することができる。このため、いわゆるエンジンの左右傾斜性能が高い。また、シリンダヘッド(18)の長手方向に沿うヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)を高くしているため、エンジンが前後に傾斜し、排気側水路(27)の前端部または後端部が高くなり、その天井壁下面(27a)の前端部または後端部にエア溜まりができても、前端部または後端部の排気ポート(19)の天井壁が冷却水から露出しにくく、その冷却を確保することができる。このため、いわゆるエンジンの前後傾斜性能が高い。
【0026】
他の水路等の構成は、次の通りである。
図2に示すように、水ポンプ(10)の入口水路(10a)をシリンダブロック(1)の前端壁(9)の壁肉内に形成している。図7に示すように、サーモスタットケース(32)から水ポンプ(10)に冷却水をバイパスするバイパス水路(29)と、水ポンプ(10)からヘッドジャケット(25)にエアを抜くエア抜き通路(31)を、いずれもシリンダブロック(1)の前端壁(9)の壁肉内とシリンダヘッド(18)の前端部(30)内とにわたって形成している。また、サーモスタットケース(32)をシリンダヘッド(18)の右側面に取り付け、このサーモスタットケース(32)に熱交換器(33)用の温水パイプ(34)を接続したものを用いている。このため、これらがシリンダブロック(1)の前端壁(9)から前方に張り出すおそれがなく、これらに邪魔されることなく、冷却ファン(2)をシリンダブロック(1)に接近させることができ、エンジンの全長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るエンジンの縦断正面図である。
【図2】 図1のエンジンの縦断側面図である。
【図3】 図1のエンジンのシリンダブロックの横断平面図で、シリンダ中心軸線(2)を境界とする左右部分を異なる位置で切断した図である。
【図4】 図3のシリンダブロックのIV−IV線断面図である。
【図5】 図1のエンジンのシリンダヘッドを説明する図で、図5(A)は横断平面図、図5(B)は図5(A)のB−B線断面図である。
【図6】 図5のシリンダヘッドを説明する図で、図6(A)は平面図、図6(B)は図6(A)のB−B線断面図、図6(C)は図6(A)のC−C線断面図、図6(D)は図6(A)のD−D線断面図、図6(E)は図6(A)のE−E線断面図である。
【図7】 図1のエンジンの冷却水の流れを示す模式斜視図である。
【符号の説明】
(1)‥シリンダブロック、(1a)‥左右両側壁、 (3)‥脇水路、(4)‥シリンダジャケット、(5)‥脇水路の出口、(6)‥二次回転バランサ軸、 (7)‥動弁カム軸、 (8)‥調時伝動装置、(9)‥シリンダブロック端壁、(10)‥水ポンプ、(11)‥脇水路の入口、(12)‥シリンダ壁、(13)‥肉壁、(14)‥タペットガイド孔、(15)‥脇方向突出端面、(16)‥連続壁、(17)‥シリンダ間横断水路、(18)‥シリンダヘッド、(19)‥吸気ポート、(20)‥排気ポート、(21)‥ポート間横断水路、(22)‥吸気分配手段、(23)‥排気合流手段、(25)‥ヘッドジャケット、(25a)‥ヘッドジャケットの出口、(26)‥ヘッド吸気側水路、(27)‥ヘッド排気側水路、(28)‥シリンダヘッドの前隅角部、(38)‥二次回転バランサ軸。
Claims (7)
- シリンダヘッド(18)内にヘッドジャケット(25)を設け、シリンダヘッド(18)の吸気ポート(19)と排気ポート(20)の間にシリンダヘッド(18)の幅方向に沿うポート間横断水路(21)を形成し、
シリンダヘッド(18)の吸気分配手段(22)側にヘッド吸気側水路(26)を、排気合流手段(23)側にヘッド排気側水路(27)を、それぞれシリンダヘッド(18)の長手方向に沿わせて形成し、このヘッド吸気側水路(26)とヘッド排気側水路(27)とをポート間横断水路(21)で連通させた、縦型多気筒エンジンにおいて、
ヘッド排気側水路(27)の天井壁下面(27a)をヘッド吸気側水路(26)の天井壁下面(26a)よりも高くし、
ポート間横断水路(21)を横断する冷却水がヘッド吸気側水路(26)からヘッド排気側水路(27)に向かうようにし、
シリンダブロック(1)の一側壁にシリンダブロック(1)の長手方向に沿う脇水路(3)を設け、シリンダブロック(1)内にシリンダジャケット(4)を設け、ラジエータからの冷却水を脇水路(3)を介してシリンダジャケット(4)に導入するようにするとともに、
隣接するシリンダ壁(12)(12)同士を連続させるに当たり、
その連続壁(16)にシリンダブロック(1)の幅方向に沿うシリンダ間横断水路(17)を形成し、
シリンダ間横断水路(17)を横断した冷却水が、反転してポート間横断水路(21)を横断するようにし、
シリンダブロック(1)の左右両側壁(1a)の一方に、脇水路(3)を上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とともに配置するに当たり、
脇水路(3)と上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とをシリンダジャケット(4)とシリンダ壁(12)とに沿って上下に並べ、上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とを脇水路(3)の上下に振り分け配置し、
上記動弁カム軸 ( 7 ) を脇水路 ( 3 ) の下方に配置し、上記二次回転バランサ軸 ( 6 ) を脇水路 ( 3 ) の上方に配置し、
シリンダブロック(6)の左右両側壁(1a)のうち、上下一対の二次回転バランサ軸 ( 6 ) と動弁カム軸 ( 7 )とは反対側に、他の二次回転バランサ軸(38)を配置し、
上記他の二次回転バランサ軸(38)は動弁カム軸(7)よりも低い位置に配置した、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項1に記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
シリンダヘッド(18)の長手方向を前後方向、その一方を前と見て、シリンダヘッド(18)の幅方向両側のうち、脇水路(3)のある側のシリンダヘッド(18)の前隅角部(28)にヘッドジャケット(25)の出口(25a)をあけ、
シリンダ間横断水路(17)を脇水路(3)側から他側に向かって横断した冷却水が、ヘッド吸気側水路(26)とヘッド排気側水路(27)のうち、脇水路(3)と反対側のヘッド吸気側水路(26)に浮上し、浮上冷却水がこのヘッド吸気側水路(26)を前向きに通過しながら、複数のポート間横断水路(21)に分流し、分流冷却水が脇水路(3)側のヘッド排気側水路(27)で合流しながらこのヘッド排気側水路(27)を前向きに通過し、両水路(26)(27)を前向きに通過した冷却水が合流してヘッドジャケット(25)の出口(25a)から流出するようにした、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項1または請求項2に記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
調時伝動装置(8)をシリンダブロック(1)の長手方向一端部に配置し、その反対端のシリンダブロック端壁(9)に水ポンプ (10)を取り付け、シリンダブロック(1)の長手方向のうち、水ポンプ(10)を取り付けた方を前として、脇水路(3)の前端に脇水路(3)の入口(11)を形成し、この脇水路(3)の入口(11)をシリンダブロック(1)の前端壁で開口し、この脇水路(3)の入口(11)を水ポンプ(10)の吐出口に臨ませた、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
脇水路(3)の出口(5)をシリンダジャケット(4)の下部に臨ませた、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
全シリンダ壁(12)の脇を通過する脇水路(3)に複数の出口(5)を設け、これら複数の出口(5)を脇水路(3)の長手方向両端部と中間部とに配置した、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項5に記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
脇水路(3)の隣り合う出口(5)(5)間の肉壁(13)内に動弁装置のタペットガイド孔(14)を設けた、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。 - 請求項5または請求項6のいずれかに記載した縦型多気筒エンジンにおいて、
脇水路(3)の各出口(5)をそれぞれ各シリンダ壁(12)の脇方向突出端面(15)に臨ませた、ことを特徴とする縦型多気筒エンジン。
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