JP3924226B2 - 金属製密閉容器の乾燥方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器本体の内部を密閉する蓋体を備えた金属製密閉容器の乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製のシール部材で容器本体と蓋体との間を密閉する金属製密閉容器は、密閉性が極めて高いため、長期間に渡って内容物を外界と遮蔽して保管する容器として適している。代表されるものに、原子力発電所で使用される燃料を輸送保管するための燃料輸送用キャスクがある。この燃料輸送用キャスクは、放射線を外界に対して遮蔽した状態で燃料を輸送することができるように造られており、放射性物質である燃料を輸送・運搬する際に使用される。また、このような燃料輸送用キャスクには、燃料を輸送した状態のまま長期的に保管する機能を有する場合もある。
【0003】
特に、原子力発電所で使用された後の使用済の核燃料は、強い放射線を長期間に渡って放出し続けるため、長期間に渡る厳重な管理と保管とを必要とする。したがって、このような使用済燃料を収納する燃料輸送用キャスクは、長期間に渡る保管においても密閉性が低下しないように造る必要がある。
【0004】
また、使用済燃料などの高濃度放射性物質から放射されるα線や中性子線などの一部の放射線は、水分子と衝突させて錯乱させることで減衰するため、水による遮蔽が可能である。したがって、原子力発電所で燃料を取り替える場合や、燃料再処理施設で燃料を出し入れする場合など、燃料輸送用キャスクの開閉及び燃料の出し入れは、純水を貯水したピット内で行われる。
【0005】
この燃料輸送用キャスクは、燃料集合体を格子配列して収納可能に造られた容器本体と、任意な燃料集合体を出し入れできるように開口された容器本体の開口部を覆う蓋体を備えている。蓋体は、多くの場合一次蓋及び二次蓋として2つが用いられることが一般的であり、それぞれ容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、それぞれ環状の金属製のシール部材を挟んでボルト等の固定手段で取り付けられる。
【0006】
使用済みの燃料集合体を入れるときは、一次蓋と二次蓋とを取り外して開口部を上にした状態の燃料輸送用キャスクを、使用済燃料が一次保管されている純水が張られたピット、いわゆる使用済燃料ピットに降ろす。このピットには、燃料集合体を燃料輸送用キャスクに入れるために吊り上げても、その燃料集合体が水面より露出しない水深まで純水が張られている。燃料集合体を入れた後、ピット内で一次蓋を取り付けてピット外に搬出する。
【0007】
燃料輸送用キャスクの中には、燃料集合体とともに純水が封入されているので、その純水を一次蓋に設けられた専用の穴からポンプなどの排水装置を挿入して排水する。また、燃料集合体の表面などの狭隘部には若干の水分が残留するため、さらに真空ポンプを用いて真空排気することで乾燥させる、いわゆる真空乾燥を行う。さらに、二次蓋を取り付けた後、一次蓋と二次蓋との間を同じく真空乾燥することで、残留水分の除去が行われている。
【0008】
このような真空乾燥を行う上で、図5の断面図に示すように、一次蓋10等の蓋体と容器本体2との間に位置する金属製のシール部材30は、ピット内で純水に浸るために同様に水分が付着することが常である。シール部材30、及びシール部材30が設置されるような狭隘な溝部に水分が残留した場合、入り込んだ水分が時間の経過とともに金属製密閉容器1の内部で蒸発し、内部の別な場所で凝縮して水滴となる可能性がある。
【0009】
そして、水滴となり得る残留水分が凝縮と蒸発を長期に渡って繰り返すと、水分中に含まれる僅かな不純物を濃縮し、腐食の原因となることがある。特に、シール部材30が取り付けられている周辺部は形状が複雑であるため、水分が残留する可能性が高い。金属製のシール部材30が腐食しないようにするために、金属製密閉容器1の中の水分量が許容される残留水分量以下になったことが確認できるまで真空乾燥を長時間継続する必要がある。その結果、作業計画が大幅に狂う可能性がある。
【0010】
このことを解決すべく、シール部材30が嵌め込まれる環状の溝部と一次蓋10の外壁面(紙面において上面側。)とを連通させる連通孔13を設ける構成が既に開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、この構成において該連通孔13に真空ポンプなど接続すれば、径方向2つのシール面を有するシール部材30の内部に残留する水分を真空引きによって除去することが可能であると記載されている。なお、符号12は、上述した容器本体2内の水分を主として抜き取るための貫通孔(一般に「ベント・ドレン孔」と呼ばれる。)であり、容器本体2の内部に直接連通するように設けられている。
【0011】
また、容器本体2内の底部に溜まる残留水に対してヘリウムガスを供給し、このヘリウムガスを使用済燃料の熱によって加熱した状態で循環させて残留水を除去する方法が示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特願2001−072792号公報(第21−22段落、第2図)
【特許文献2】
特開2002−156488号公報(第14−24段落、第1図)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の構成においては、シール部材30が設置されるような細部及びシール部材30に付着した水分の除去をシール部材30の直上に開口する連通孔13から真空引きによって行う方法であるため、密閉空間とされた径方向2つのシール面を有するシール部材30の内部を真空引きすることは可能であっても、シール部材30の径方向内側と外側とについて真空引きを行うことは困難である。
【0014】
なぜなら、シール部材30によって容器本体2と外界との密閉がなされる構造であるので、シール部材30の径方向内側(紙面左側)及び外側(紙面右側)がこの内部と完全に遮蔽されており、シール部材30の内部に対して行われた真空引きの作用がこれ以外の空間に行き届かないからである。
【0015】
また、例えば、連通孔13の開口部をシール部材30の径方向内側及び外側に達するように形成し備える場合であっても、径方向外側については、この部分が外界と遮蔽されていないために真空引きが困難であり、また、径方向内側については、この部分が容器本体2の内部空間と遮蔽されていないために多大な真空引きが必要となり同様に困難である。
【0016】
さらに、真空引きによる乾燥工程を実施すると、水分の沸点が下がって昇華しやすい状態となるが、真空による温度低下によって水分が固化する可能性が高く、単に真空引きを実施することのみでは、確実に水分を除去することが困難である。
【0017】
さらに、特許文献2においては、加熱して乾燥する対象が容器本体2の内部であり、このような乾燥方法ではシール部材30及びこの周辺の水分除去が困難である。また、容器本体2内に供給するヘリウムガスを高温とする熱源が使用済燃料であるため、シール部材30の近傍にてガスが高温状態とはなりにくく、シール部材30及びこの周辺の水分除去は困難である。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、金属製密閉容器に備わるシール部材の腐食を防止するため、該シール部材及びこの周辺に残留する水分等を容易に且つ確実に排出することを可能とした金属製密閉容器の乾燥方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第1参考例としての金属製密閉容器は、核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器であって、前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも2つ以上の第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第3貫通孔であり、前記各貫通孔は、前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に前記シール部材又はその周辺に残留した水分を除去するために用いられることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、金属製密閉容器の外部と、金属製のシール部材の直上及びシール部材の径方向における内側・外側の直近とが各貫通孔により連通した状態となり、例えば、これら各貫通孔が閉塞されていない状態で、且つ、ブロアや真空ポンプなどをこれら貫通孔に取り付けることで、これら各貫通孔から流体をパージしつつパージした流体を排出したり、各貫通孔から金属製密閉容器内の流体を排出したりすることも可能となる。なお、流体をパージする際には、温度を高めて供給することが望ましい。
【0021】
本発明の第2参考例としての金属製密閉容器は、核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器であって、前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも1つの第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも1つの第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも1つの第3貫通孔とされ、前記金属製のシール部材の近隣には、前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に該シール部材及びこの周辺を加熱する加熱手段が備えられることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、金属製密閉容器の外部と、金属製のシール部材の直上及びシール部材の径方向における内側・外側の直近とが各貫通孔により連通した状態となり、シール部材周辺に残留した流体が加熱手段によって加熱されて気化すると、これら各貫通孔が閉塞されていない状態であれば、流体は気体となって各貫通孔を導通して金属製密閉容器の外部に排出されることとなる。
なお、加熱手段が備わるシール部材の近隣とは、シール部材の径方向内側や外側やその内部であってもよいし、シール部材を挟み込む容器本体のフランジ部や、蓋体の外壁面であってもよい。すなわち、加熱手段から発せられる熱がシール部材にまで到達する位置であれば、この加熱手段の設置場所はいずれの場所であってもよい。
【0023】
請求項に記載の発明は、核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器の内部を乾燥させる乾燥方法であって、前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも2つ以上の第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第3貫通孔とされ、前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に前記第1貫通孔、第2貫通孔、及び第3貫通孔のそれぞれ少なくとも1つに対して高温ガスを供給することを特徴とする。
【0024】
このような乾燥方法により、金属製のシール部材及びこの周辺に残留した流体は高温ガスに直接接触するため、該流体は加熱されて気化しやすくなり、該流体が昇華によって気化することによれば、該流体は供給された高温ガスとともに高温ガスが供給される貫通孔以外の他の各貫通孔から外界に排出されることになる。なお、高温ガスとしては、例えば、窒素(N)やヘリウム(He)などの不活性ガスを用い、乾燥工程の安定性を図ることが望ましい。
【0025】
請求項に記載の発明は、核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器の内部を乾燥させる乾燥方法であって、前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも1つの第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも1つの第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも1つの第3貫通孔とされ、前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に前記金属製のシール部材の近隣に設けられた加熱手段にて該シール部材及びこの周辺を加熱することを特徴とする。
【0026】
このような乾燥方法により、金属製のシール部材及びこの周辺に残留した流体は加熱手段から発せられた熱によって加熱されて気化することになり、該流体が気化することによれば、該流体は各貫通孔を導通して容器本体の外部に排出されることになる。なお、高温ガスとしては、例えば、窒素(N)やヘリウム(He)などの不活性ガスを用い、乾燥工程の安定性を図ることが望ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態の金属製密閉容器について、特に原子力発電所の使用済燃料(内容物)を専用の場所まで搬送し、そのままの状態で長期間に渡って保管する使用済燃料の輸送及び保管用の金属製キャスクを例に挙げて、図面を参照して説明する。
【0028】
図1に示す金属製キャスク1は、底板6と一体に設けられた縦型円筒形状の容器本体2と、この上方に向けて開口する容器本体2の開口部を密閉する一次蓋10及び二次蓋11とをそれぞれ容器本体2を密閉する蓋体として備えて構成されている。
容器本体2の内部であるキャビティには使用済燃料を収納するための格子状のバスケット9が備えられており、バスケット9を収容する容器本体2の軸中心から外側に向かって順に、金属製の本体胴3、中性子遮蔽体をなすレジン層4、そして、容器本体2の外板が配置された複合体として容器本体2が構成されている。このような複数層の遮蔽構造によって使用済燃料から放射されるα線、γ線、中性子線などの放射線が吸収され、放射線が外界に漏れることが防止されている。
【0029】
また、容器本体2の一構成要素として、容器本体2の側面の上部及び下部にはそれぞれ容器本体2の中心に向かって対となるように配されたトラニオン7,8が備わり、金属製キャスク1の吊り上げ等による搬送を可能としている。また、容器本体2の下部には据付台5が備わり、保管場所での安定した固定が可能な構造とされている。
【0030】
一次蓋10及び二次蓋11は、本体胴3の上端部にボルト15などの固定手段によってそれぞれ段階的に固定される構成となっており、これらの蓋体には、使用済燃料が発電所から取り出されて一旦貯蔵されるピットの純水に浸かった際の水抜き及び乾燥用のベント・ドレン孔(図示せず)が設けられている。そして、このベント・ドレン孔に排水装置、さらには真空ポンプなどを接続することで、容器本体2内の水分を除去することが可能とされる。
【0031】
次に、図2を用いて、図1の符号Gの範囲に示される容器本体2の開口部付近の構成について詳しく説明する。
容器本体2、より特定するならば本体胴3の上端部には、一次蓋10を取り付けるためのフランジ部Fが形成されており、一次蓋10は、このフランジ部Fに金属ガスケット30(シール部材)を介して容器本体2側に取り付けられる。容器本体2の内部側に面する一次蓋10の内壁面W1(紙面において下方側の壁面)には、容器本体2の開口部に沿った環状の溝部Sが形成されており、この溝部Sに上述の金属ガスケット30が配置されることで、該金属ガスケット30の径方向のずれが回避される。
【0032】
金属ガスケット30は3つの層からなり、一次蓋10及び容器本体2と接する外被覆30aの部分がアルミニウムであり、その内側の内被覆30bの部分がインコネルであり、最内の輪状の部分がインコネルのコイルスプリング30cである。コイルスプリング30cは、容器本体2の径方向に2つ備わる構成とされ、これら両コイルスプリング30cは、外被覆30a及び内被覆30bによって覆われることで互いの位置関係が保たれている。
【0033】
そして、両コイルスプリング30cがこの径方向から潰される反発力によって溝部Sやフランジ部Fに内外の被覆30a,30bが押し付けられることになり、容器本体2内部の外界に対する密閉性が確保される。
なお、金属ガスケット30の材質や構造については、本発明に係る金属製キャスク1の仕様に適したものとして取り上げたものであって、これに限定解釈されるものではない。
【0034】
一次蓋10には、この外壁面W2から金属ガスケット30に向かって開口することで外界と溝部Sの空間とを連通させる複数の貫通孔10a,10b,10cが設けられている。これら各貫通孔10a,10b,10cは、金属ガスケット30の径方向内側(紙面において金属ガスケット30の断面左側。)に直近して開口する6つの第1貫通孔10aと、金属ガスケット30の直上に開口する6つの第2貫通孔10bと、金属ガスケット30の径方向外側(紙面において金属ガスケット30の右側。)に直近して開口する3つの第3貫通孔10cである。
【0035】
それぞれ貫通孔10a,10b,10cの個数が2つ以上とされていることについては後述するように、高温ガスの供給用と、このガスの排出用とに機能を区別するためであり、第3貫通孔10cの個数を少なくしている点については、フランジ部Fの右方から排出が可能であるからである。また、これら貫通孔10a,10b,10cの形成される位置については、金属ガスケット10の環状に沿って等間隔となる位置、あるいは、高温ガスの供給に対してこれを効果的に排出する位置に配されている。
【0036】
さて、このように構成された金属製キャスク1での乾燥方法について説明する。従来通りに排水装置にて容器本体2内の水分を吸引してその多くを除去した後、完全なる水分の除去を行うために真空乾燥の工程をさらに実施する。
この段階において、金属ガスケット30が設置される溝部Sには水分が残留しているので、第1貫通孔10a、第2貫通孔10b、及び第3貫通孔10cのそれぞれ1つの孔からブロアを用いて例えば100℃にまで加熱された窒素(N)ガス(高温ガス)を実線の矢印に示すようにパージ、すなわち金属ガスケット30に向けて供給する。
【0037】
これによって、それぞれの貫通孔10a,10b,10cからパージされた高温の窒素ガスは、金属ガスケット30の内側空間、内部空間、及び外側空間にそれぞれ達し、シール構造によって分割された各空間部分の水分に接して該水分を昇温させる。これによって、該水分は蒸発し水蒸気となって溝部Sの空間に充満する。なお、金属ガスケット30の幅方向上面にはねじ等による固定用の抜き孔(図示せず)が設けられているが、これと同様な場所に外被覆30a,及び内被覆30bを貫通する抜き孔30dが形成されることで、両コイルスプリング30cに挟まれた金属ガスケット30の内部空間に高温な窒素ガスがパージされる。
【0038】
そして、蒸発した水分、すなわち水蒸気は、高温な窒素ガスとともに排出可能とされる別の貫通孔(10a,10b,10c)や、外界と密閉とされていないフランジ部Fの隙間から外界に向かって排出されることになり、金属ガスケット30及びその周辺の水分が確実に除去されることとなる。
そして、各貫通孔10a,10b,10cがベント・ドレン孔とともに封止され、且つ、一次蓋10がボルトにて容器本体2に固定されることで、金属製キャスク1の密閉が完了する。
【0039】
以上説明した本実施形態における金属製キャスク1及びこの金属キャスク1の乾燥方法によれば、金属ガスケット30及びこの周辺に残留した水分を細部に渡って確実且つ迅速に除去することができる。これによって、金属ガスケット30の腐食を防止することができ、密閉構造を長期的に維持する信頼性の高い金属製キャスク1を実現することができる。
【0040】
なお、各貫通孔10a,10b,10cは、後の段階で封止する必要があるので、一次蓋10の外壁面W2側に開口する部分にねじ溝を設けて封止用のねじを螺合可能とする加工を施すことが望ましい。
また、金属ガスケット30の径方向外側に向かって外界に連通する第3貫通孔10cから高温な窒素ガスをパージし、パージした窒素ガスを排出する排出口としてフランジ部F又は一次蓋10の内壁面W1に、溝部Sの空間から外界に繋がる溝を設けることとしてもよい。
また、高温な窒素ガスを用いて金属ガスケットの乾燥を行う場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスを用いることであってもよい。
【0041】
また、本実施形態の変形例として、以下に説明する構成としてもよい。
図3に示される断面図は、図1の符号Gと同一な範囲を示した図であって、図2に説明した構成と異なる点について詳しく説明するものとし、同様な構成については同一符号を付してその説明を一部省略する。
【0042】
各貫通孔10a,10b,10cは、上記の実施形態に比較して必ずしも2つ以上形成される必要はなく、それぞれが1つずつ備わる場合であってもよいが、より迅速且つ確実に水分の除去を図るために各貫通孔10a,10b,10cは金属ガスケット30に沿って複数備わることが望ましいとされる。
【0043】
そして、容器本体2を構成する本体胴3の外側には、金属ガスケット30を取りまくようなヒ−タPが配された加熱手段20が備えられている。加熱手段20は、電力源21から供給された電力によってヒータPを発熱させることでフランジ部Fに対して加熱を行う。このことによって、溝部S、及びこの溝部Sに設置された金属ガスケット30は加熱されることになり、これらに付着して残留した水分は昇温して蒸発する。蒸発して水蒸気となった残留水分は各貫通孔10a,10b,10cからそれぞれ排出され、これによって溝部Sの空間内及び金属ガスケット30は乾燥状態となる。
【0044】
このような構成によれば、加熱手段20を用いて直接的に水分を除去することが可能となり、迅速且つ確実に水分除去を行って金属ガスケット30の腐食を回避することができるとともに、乾燥工程を容易に制御することが可能となる。
【0045】
また、上記に記載した変形例に加えて、図4に示すように加熱手段20のヒータPを金属ガスケット30が設置される溝部Sの空間内、すなわち、溝部Sの壁面や金属ガスケット30の内部となるフランジ部Fに直接配する構成としてもよい。
このような構成によれば、金属ガスケット30に対する加熱効率が向上し、より素早く水分を除去することが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した本発明の参考例としての金属製密閉容器及び本発明の金属製密閉容器の乾燥方法においては以下の効果を奏する。
本発明の第1参考例としての金属製密閉容器によれば、蓋体には、該蓋体の外壁面から金属製のシール部材の直上あるいは直近に連通する複数の貫通孔が形成されているので、ブロアや真空ポンプなどを用いてシール部材及びこの周辺に残留した水等の流体を細部に渡って迅速且つ確実に除去することができる。これによって、金属製のシール部材の腐食を防止することができ、密閉構造を長期的に維持する信頼性の高い金属製密閉容器を実現することができる。
【0047】
本発明の第2参考例としての金属製密閉容器によれば、蓋体には、該蓋体の外壁面から金属製のシール部材の直上あるいは直近に連通する複数の貫通孔が形成され、また、シール部材の近隣には加熱手段が備わるので、シール部材及びこの周辺に残留した水等の流体の気化を促し、腐食の原因となる流体を細部に渡って確実に除去することができる。これによって、金属製のシール部材の腐食を防止することができ、密閉構造を長期的に維持する信頼性の高い金属製密閉容器を実現することができる。
【0048】
請求項記載の金属製密閉容器の乾燥方法によれば、蓋体の外壁面から金属製のシール部材の直上あるいは直近に連通する第1貫通孔、第2貫通孔、及び第3貫通孔のそれぞれの少なくとも1つに対して高温ガスを供給することとしているので、シール部材に付着しうる流体を高温ガスとともに細部に渡って確実に除去することが可能となり、シール部材の腐食を防止することができる。
【0049】
請求項記載の発明によれば、加熱手段を用いてシール部材及びこの周辺を加熱することとしているので、シール部材及びこの周辺に残存する流体を気化させて第1貫通孔、第2貫通孔、及び第3貫通孔から外界に排出することができ、シール部材に付着しうる流体を細部に渡って確実に除去してシール部材の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における金属製密閉容器の一実施形態を示した金属製キャスクの構造を説明する部分断面斜視図である。
【図2】 図1の符号Gの部分の概略構成を説明する断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態における第1の変形例を示した断面図である。
【図4】 本発明の一実施形態における第2の変形例を示した断面図である。
【図5】 従来の金属製キャスクの一次蓋取り付け構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 金属製キャスク(金属製密閉容器)
2 容器本体
10 一次蓋(蓋体)
10a 第1貫通孔
10b 第2貫通孔
10c 第3貫通孔
20 加熱手段
30 金属ガスケット(金属製のシール部材)
30d 抜き孔
F フランジ部
S 溝部
P ヒータ(加熱手段)

Claims (2)

  1. 核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器の内部を乾燥させる乾燥方法であって、
    前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、
    前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも2つ以上の第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも2つ以上の第3貫通孔とされ、
    前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に前記第1貫通孔、第2貫通孔、及び第3貫通孔のそれぞれ少なくとも1つに対して高温ガスを供給することを特徴とする金属製密閉容器の乾燥方法。
  2. 核燃料等の内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を封止する蓋体と、該容器本体と該蓋体との間に位置して該容器本体内を密閉状態に保つ金属製のシール部材とを備えた金属製密閉容器の内部を乾燥させる乾燥方法であって、
    前記蓋体には、前記シール部材に面する内壁面と該内壁面に相対する外壁面とを連通する複数の貫通孔が形成されてなり、
    前記各貫通孔は、前記シール部材の径方向内側に直近して開口する少なくとも1つの第1貫通孔、前記シール部材の直上に開口する少なくとも1つの第2貫通孔、及び前記シール部材の径方向外側に直近して開口する少なくとも1つの第3貫通孔とされ、
    前記容器本体内の水分を吸引除去した後、真空乾燥の工程の際に前記金属製のシール部材の近隣に設けられた加熱手段にて該シール部材及びこの周辺を加熱することを特徴とする金属製密閉容器の乾燥方法。
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