JP3923745B2 - 消音排水管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、躯体伝播音と呼ばれる排水時の騒音を防止することができる消音排水管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集合住宅等の多層階建物で採用される排水管システム等において、床スラブを貫通して設置される排水管に対しては、排水騒音が床スラブに伝搬して室内へ放射される、いわゆる躯体伝播音を防止する対策として、種々のものが提案されている。
例えば、排水管のまわりに板金製被覆材を設けるものとして、この被覆材の内面に、リング状をした耐火性弾性材と防振性弾性材とを管軸方向に沿って交互に配置し、これら各弾性材の内周面を管外面に当接させ、また被覆材の外面と床スラブに設けた貫通孔の内周面との周間にモルタルを充填するというものがある(特開平10−238663号公報等参照)。
【0003】
上記被覆材は、排水管よりも一回り径大な中空円錐台形を縦方向に半割りしたような形状の二部材を、互いに向き合わせて(排水管をその両側から抱き合わせるようにして)結合させる構造になっている。
この他にも、排水管の外周面と貫通孔の内周面との周間にロックウール等の耐火性振動吸収材を詰め込むというものや、テープ状に形成された耐火性振動吸収材を排水管まわりに巻回被着させ、この振動吸収材の外面と貫通孔の内周面との周間にモルタルを充填するというものがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来において採用されていた躯体伝播音の防止対策では、排水管まわりに、床スラブをその肉厚方向へ透過するような漏水を防止できないということがあった。
すなわち、半割り結合構造の被覆材を用いるものでは、その結合面に沿って縦方向の結合隙間が生じるものであり、また排水管の外周面と貫通孔の内周面との周間にロックウール等の耐火性振動吸収材を詰め込むものでは、このロックウール自体に透水性がある。
【0005】
従って、建築施工中や、各階層の住居で漏水事故が発生した場合等には、上記した結合隙間やロックウール自体を浸透する状態でその発生階から下層階へも水がまわってしまうという問題があった。
また、テープ状に形成された耐火性振動吸収材を排水管まわりに巻回被着させ、この振動吸収材の外面と貫通孔の内周面との周間にモルタルを詰めるというものでは、その施工が面倒であるということがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、床スラブをその肉厚方向に透過するような漏水を防止できるようにすると共に、容易に施工できるようにした消音排水管を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る消音排水管は、床スラブに設けられた貫通孔を貫通して配管設置される管本体と、この管本体において上記貫通孔内を通る部分の管外周面に外嵌されて貫通孔の内周面との周間を直接的又は間接的に充填する振動絶縁体と、この振動絶縁体の上部環状面を上記貫通孔内への没入レベルで全面的に覆蓋する防水リングとを有している。
【0007】
なお、振動絶縁体が貫通孔の内周面との周間を直接的又は間接的に充填するというのは、振動絶縁体の外周面と貫通孔の内周面との周間にモルタル等を充填してもよいし、充填しなくてもよいという意味である。
このように、振動絶縁体の上部環状面が防水リングによって覆われているため、床スラブ上で漏水が発生したとしても、この振動絶縁体を伝って床スラブをその肉厚方向へ透過するような漏水は防止されることになる。
勿論、躯体伝播音は振動絶縁体によって吸収乃至減衰され、床スラブ側への伝搬が抑制乃至解消される。
【0008】
振動絶縁体は耐火性を有したものとするのが好適であり、更に、この振動絶縁体には、その外周面全周に金属製外皮を被着させるのが好適とされる。
防水リングの内周面に、管外周面との間で閉塞空間を形成可能な凹凸を設けておくことができる。
このようにすることで、防水リングの振動吸収作用を一層、高めることができる。
防水リングはゴム製とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2は、本発明に係る消音排水管1の第1実施形態を示している。
この消音排水管1は、集合住宅等の多層階建物にあって、各階層ごとを区画する床スラブ2に設けられた貫通孔3を縦方向に貫通して配管設置される。
なお、本明細書において、この場合の床スラブ2とは、各階層を区画するものだけに限らず、それ以外にも、水平方向に設けられる建物躯体であって配管用に縦方向の貫通孔を有したもの全般を含めるものとする。
【0010】
本発明に係る消音排水管1は、例えば図例のような排水集合管を管本体5として、この管本体5に外嵌状に設けられる振動絶縁体6及び防水リング7とを有したものとなっている。
また、このうち振動絶縁体6には、その外周面全周に、金属製外皮8が被覆されたものとなっている。
なお、図例では、この消音排水管1が床スラブ2の貫通孔3を貫通する部分に対し、消音排水管1の外周面と貫通孔3の内周面との周間へモルタル9を充填したものとして示している。
【0011】
振動絶縁体6は、管本体5において貫通孔3内を通る部分の管外周面5aに対して嵌められる筒形状に形成されている。
図例の場合、管本体5の管外周面5aが下すぼみのテーパ管として形成されているので、この振動絶縁体6も、少なくとも筒内孔6aが下部ほど径小となるテーパ孔に形成されている。
従って、この振動絶縁体6は、筒内孔6aが管本体5の管外周面5aに対して面接触可能になっている。勿論、外皮8を介して、貫通孔3内のモルタル9に対しても面接触している。
【0012】
なお、この振動絶縁体6において、床スラブ2に対する上下方向の位置付けとしては、振動絶縁体6の上部環状面が床スラブ2の上面から貫通孔3内へ所定量没入するレベルとなり、また振動絶縁体6の下部環状面が床スラブ2の下面と同等かやや下方へ突き出す程度となるように設けられている。
このような振動絶縁体6は、例えばロックウール等の多孔質吸音材料によって形成されている。なお、ロックウールであれば、この振動絶縁体6自体、耐火性及び遮炎性をも有していることになる。
【0013】
金属製外皮8は、振動絶縁体6に耐火性を持たせるか又は耐火性を高めさせると共に、振動絶縁体6に防水性を持たせ、更に振動絶縁体6の保形性を強化する等の作用を奏するものである。
具体的な材質が特に限定されるものではないが、例えば重量面や成形性、及びコスト面等からすればアルミ系合金等を採用するのが好適である。
この外皮8を振動絶縁体6へ被着させるには、外皮8の塑性変形を利用する方法としたり、針金材等で巻き締める方法としたり、耐火性接着剤で貼り合わせる方法としたりすればよい。
【0014】
一方、防水リング7は、振動絶縁体6の上部環状面を全面的に覆蓋可能になっている。上記したように、振動絶縁体6は、その上部環状面が床スラブ2の貫通孔3内へ没入したレベルで設けられているので、この防水リング7は、その大半が貫通孔3内へ嵌め込まれるかたちとなる。
なお、このとき防水リング7の上端は、床スラブ2の上面より上方へ突き出させて、水返しができるようにするのが好適である。
この防水リング7は、管本体5における管外周面5aに対して隙間無く当接させることができるように、リング内径をこの管外周面5aの外径よりも僅か(直径で2mm程度)に径小にしておくのが好適である。
【0015】
これによって防水性が一層良好且つ確実となる。
図例では、管本体5に対して外周リブ10が設けられたものとしているため、この外周リブ10との干渉を避けるための内段部11を防水リング7の上部環状面側に設けている。しかし、管本体5に外周リブ10が設けられていない場合であれば、防水リング7に内段部11を設ける必要はない。
このような防水リング7は、ゴム製とすることができる。なお、難燃性や耐火性のゴムを採用することが好適であることは言うまでもない。また、なるべく弾性の豊富なものを選出するのが好適である。
【0016】
このような構成の消音排水管1は、工場出荷段階で既に消音排水管1として組み立てておけばよいものであり、また施工現場において組み立てるにしても、管本体5に対する振動絶縁体6及び防水リング7の装着が極めて簡単且つ迅速に行える。
これらの消音排水管1の組み立て時には、管本体5の管外周面5aと振動絶縁体6の内周面や防水リング7の内周面との間に、適宜接着剤を塗布するようにしてもよい。
【0017】
この消音排水管1であれば、床スラブ2の貫通孔3へ貫通状に配管設置して、そのまわりの貫通孔3の内周面との間にモルタル9を充填することにより、振動吸収性が得られ、また防水性が得られるものであり、従来の欠点を解消除去できるものである。
図3に示すように、振動絶縁体6は、縦方向に半割りさせた状態(又はそれ以上の分割数)として、管本体5への組み付けによって筒形状を呈するようにすることができる。
【0018】
このようにしても、防水リング7により、防水性は保たれることになる。
図4に示すように、防水リング7の内周面に凹部15や凸部16を交互に設けておき、管本体5の管外周面5との間で凹部15による閉塞空間が形成されるようにすることもできる。
このようにすることで、振動吸収性が高くなり、また防水リング7と管本体5との接触面積も小さくなり、好適である。
なお、図例において凹部15は円周溝としてあるが、周方向に分断されたものとすることも勿論可能である。
【0019】
ところで、本発明は、上記した実施形態以外に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。例えば、管本体5の形状等は何ら限定されるものではなく、直管等であってもよい。従って、管本体5の下部側の差口がストレートタイプとなっているような場合も当然に考えられ、この場合には、振動絶縁体6もストレートの円筒状に形成すればよいことになる。
【0020】
振動絶縁体6において、外皮8は省略することも可能である。
設置後の状態として、振動絶縁体6のまわりにモルタル9を充填することは必ずしも必要ではなく、振動絶縁体6又は外皮8の外周面を貫通孔3の内周面に直接的に当接させるような構造としてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る消音排水管では、管本体のまわりに振動絶縁体を外嵌状に設けると共に、この振動絶縁体の上部環状面に防水リングを覆蓋させるようにしているので、床スラブをその肉厚方向で透過するような漏水を防止できる。また、施工も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る消音排水管の第1実施形態を示した一部破砕側面図である。
【図2】 図1の消音排水管で採用している振動絶縁体及び防水リングの斜視図である。
【図3】 振動絶縁体の別実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】 防振リングの別実施形態を示す要部拡大断面図である。
Claims (5)
- 床スラブ(2)に設けられた貫通孔(3)を貫通して配管設置される管本体(5)と、該管本体(5)において上記貫通孔(3)内を通る部分の管外周面(5a)に外嵌されて貫通孔(3)の内周面との周間を直接的又は間接的に充填する振動絶縁体(6)と、該振動絶縁体(6)の上部環状面を上記貫通孔(3)内への没入レベルで全面的に覆蓋する防水リング(7)とを有していることを特徴とする消音排水管。
- 前記振動絶縁体(6)が耐火性を有していることを特徴とする請求項1記載の消音排水管。
- 前記振動絶縁体(6)には、その外周面全周に金属製外皮(8)が被着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の消音排水管。
- 前記防水リング(7)の内周面に、管外周面(5a)との間で閉塞空間を形成可能な凹凸(15,16)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の消音排水管。
- 前記防水リング(7)がゴム製であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の消音排水管。
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