JP3923658B2 - アルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法及びプリント配線板用基板 - Google Patents
アルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法及びプリント配線板用基板 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム系プリント配線板用基板に有機樹脂系接着剤を用いて絶縁部材を接着する際に、接着後に200℃以上の高温にさらされても劣化することなく強固な接着力を付与するアルミニウム系プリント配線用基板の表面処理方法と、強固な接着力を有するアルミニウム系プリント配線板用基板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来プリント配線板は、フェノール、エポキシおよびポリイミドなどの有機樹脂系絶縁板上に銅箔を貼着し、それをエッチングして配線路を形成して、さらにこれに電子部品を取り付けて機器を構成するものが多かった。しかし近年では、電子機器の軽薄短小化ニーズとともにこれらとトレードオフ関係にある高性能化、高集積化されたプリント配線板の多層化、高密度実装化がますます進展してきている。このため、プリント配線板自体の放熱が重視され、伝熱性の低い有機樹脂系絶縁板に代わって、アルミニウム系金属材料をベースとした基板が使用されるようになってきた。
【0003】
このようなプリント配線板は、アルミニウム系金属材料により形成された板材や箔にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等からなる絶縁樹脂層を介して銅箔等の金属箔を貼着させることにより製造されている。しかし、このようなアルミニウム系金属材料と樹脂層とは一般に接着力が低く、とりわけ電子機器製造工程で不可欠な加熱工程において剥離が起こる危険性があるので、以前より多くの改善が行われてきた。
【0004】
一般に、アルミニウム系金属材料と有機樹脂系部材とを強固に接着するため、アルミニウム系金属材料側に施される表面処理方法としては、前記材料表面に凹凸を形成して接着剤とのアンカー効果を期待する機械的方法と、前記材料と有機樹脂系接着剤の両方に良好な化学吸着性を有するような表面処理皮膜層を形成する化学的方法の2種類がある。
【0005】
前者の機械的方法としてはウエットホーニングのようないわゆる砂目処理があるが、外観が変化し表面の粗度が大きくなり、いわゆるアルミニウム表面の意匠性を維持することが困難である欠点がある。これは片面仕様のプリント配線板においては、アルミニウム系金属材料素地面に、前記表面自体の意匠性を求められる場合があり、機械的な方法で粗面化する方法では、アルミニウム系金属材料の意匠性が得られないためである。また特公昭55−12754号公報に開示されているように、アルミニウム系金属材料をアルカリ溶液に接触させてエッチング処理を行い表面に凹凸を形成する方法や、特公昭63−44059号公報に開示されているような酸性溶液中にて陽極酸化処理を行い多孔性の酸化皮膜を形成する方法などが提案されている。しかし、エッチング処理による凹凸形成法は、長時間の処理が必要で生産性に劣るだけでなく、均一なエッチングが行われ難く、必ずしも意図した凹凸を得るのが困難であり、エッチング後にアルミニウム系金属材料中の不純物から生成される残渣、いわゆるスマットが残り、特に半田耐熱性の劣る場合が多い。
【0006】
また、陽極酸化処理による凹凸形成法では、やはり長時間の処理を必要とするだけでなく、陽極酸化皮膜の硬度が高く柔軟性が劣るため、その後の折り曲げ、打ち抜き等の工程でひび割れ等のトラブルを生じることがある。しかも、陽極酸化皮膜自体は伝熱性が劣るため、本来の放熱性を阻害するというデメリットも有する。
【0007】
一方、アルミニウム系金属材料表面に接着性の優れる皮膜層を形成する化学的方法としては、アルミニウムを陽極酸化して、5〜100μmの耐食性皮膜をつけるアルマイト処理があるが、コストが高いという欠点がある。またクロメート処理として、フッ素系のエッチング剤を含有する6価クロムの酸性水溶液に接触させる方法があり、その方法を用いると、表面にクロム酸クロメート(6価クロムと3価クロムの水和酸化物)やりん酸クロメート(3価クロムのりん酸塩)皮膜が形成される。これらの方法は、アルミニウム系金属材料表面に接着性と耐食性を付与することができるので、塗装下地処理として多用されている。
【0008】
しかし、クロメート皮膜は水和酸化物皮膜なので、加熱により皮膜中の酸素と水素が水分として離脱し、耐熱性に劣るという欠点を有する。特に高温になればなるほど多量の水分が離脱し、皮膜の体積が収縮することにより皮膜に割れが起こって接着力を失う結果となる。
【0009】
従って、プリント配線板に電子部品が実装される際に行われる半田リフローなどの加熱工程に十分耐えられ、外観が無色であり、かつ耐熱接着性を付与することが可能なアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法およびアルミニウム系プリント配線板用基板は未だ得られていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれら従来技術が抱える問題点を解決するためになされたもので、アルミニウム系プリント配線板用基板に有機樹脂系接着剤を用いて絶縁部材を接着した後に、外観が無色でかつ優れた耐熱接着性を付与することが可能なアルミニウム系プリント配線板用基板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板を、硫酸イオンを含有するクロム酸酸性水溶液中にて陰極電解処理することにより得られる、微細で緻密な金属クロム粒子を有し、さらにクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が極く薄く表面全体を覆うアルミニウム系プリント配線板用基板は外観が無色で、かつ極くめて良好な耐熱接着性を有することを新たに見い出したのである。
【0012】
すなわち、第一の発明はアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線用基板表面を、少なくとも6価クロムイオンと硫酸イオンとを含有するpH0〜1.8の酸性水溶液中に接触させ、陰極電解処理することを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法を提供する。
【0013】
また、前記酸性水溶液中には、さらにフッ素化合物が含有されることが好ましい。
【0014】
次に、第二の発明はアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板の表面上に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、104〜106個/mm2の割合で存在し、かつ前記金属クロム微粒子を含みクロムに換算して30mg/m2以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が該基板全体を覆っていることを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板を提供する。
【0015】
以下、本発明の構成について具体的に説明する。
本発明のアルミニウム系プリント配線板用基板に用いられるアルミニウム系金属材料は、純アルミニウムをはじめとする、アルミニウムを50重量%以上含有するアルミニウム基合金である。
【0016】
まず、第一の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法について説明する。
第一の発明で用いる硫酸−クロム酸系酸性電解水溶液を構成する6価クロムイオンおよび硫酸イオンの供給源については特に限定されない。
【0017】
すなわち、6価クロムイオンとしては、無水クロム酸、重クロム酸及びクロム酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩から任意に1種または2種以上を選択して使用することができる。さらに、6価クロムイオンの濃度上限はその溶解度限以下ならば特に限定されないが、高濃度とすると、薬剤コストおよび廃水処理コストの点で経済的に不利であり、30g/L程度あることが好ましい。また、6価クロムイオン濃度の下限は、陰極電解処理(後述する金属クロム粒子の析出)の効率を考慮すると2g/Lとするのが好ましい。従って6価クロムイオンとしては、2〜30g/Lとするのが好ましい。より好ましくは5〜20g/Lである。
【0018】
次に硫酸イオンは、硫酸および硫酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。硫酸イオン濃度は、0.02〜4.00g/Lの範囲であることが好ましい。より好ましくは0.1〜3.0g/Lである。これらの範囲外の場合は、陰極電解処理の効率が低下するので好ましくはない。
【0019】
また、前記水溶液のpHの上限も重要である。pHが0未満の場合は陰極電解処理の効率が低下し、長時間の処理が必要になるなど工業的に不利となる。pHが1.8を超えると電解処理すなわち金属クロム粒子の析出が全く行われなくなるので好ましくない。なおpHを下げる場合は苛性アルカリまたはアンモニア水を濃度に関係なく用いることができるが、下げる場合は硫酸またはクロム酸でしかできないので、それらの濃度があまり高くなりすぎないように注意しなければならない。
【0020】
さらに前記水溶液中に、フッ素化合物が添加されているのが好ましい。このときのフッ素化合物としては、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、チタンフッ化水素酸およびジルコニウムフッ化水素酸、さらにはこれらのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩などから選ばれる1種または2種以上が使用可能である。フッ素化合物の濃度範囲はフッ素換算で10〜500ppmであることが好ましい。この範囲のフッ素濃度とすることにより後述の金属クロム粒子の粒径と存在頻度を制御することができ、高濃度であればあるほど該金属クロム粒子は微細となり、高頻度に析出する。すなわち、フッ素濃度が10ppm未満ではその効果が見られず、500ppmを超えるとその効果が飽和してしまう。本発明における耐熱接着性は、金属クロム粒子がより微細で高頻度に存在するほど良好となるが、これとフッ素濃度との関係は使用するアルミニウム系金属材料の種類に大きく依存するので、実際のフッ素濃度は対象とする材料に応じて適時選択すべきである。
【0021】
第一の発明である陰極電解処理は、対象となるアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板表面をアルカリ脱脂剤等で清浄にした後、前記水溶液中に接触させ、アルミニウム系プリント配線板用基板が陰極となるようにして行う。通常、水溶液との接触は浸漬で行うのが好ましい。またこのときの温度は40℃以上であることが好ましい。温度が40℃未満の場合は後述のクロメート層が異常に厚くなることがあるので避けるべきである。また、温度上限は特に限定されないが、エネルギーコストや環境への影響を考慮すると50℃程度とするのが好ましい。従って40〜50℃で陰極電解するのが好ましい。
【0022】
また陰極電解時の電流密度は特に限定されないが、0.1〜20A/dm2の範囲であることが好ましい。本発明における通電電気量は析出される全クロム(金属クロム粒子とクロメート層)量から30〜120クーロン/dm2の範囲であることが好ましい。通電電気量が60クーロン/dm2の設定では、電流密度が、0.1A/dm2のとき通電時間が600秒間、20A/dm2のとき3秒間となり、このような場合には耐熱接着性も悪くなるので、設備や生産性に応じて現実的な処理時間となるように電流密度を設定すべきである。
【0023】
第一の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理においては、前記の方法で陰極電解を行い、通電停止後に対象部材を処理液より取り出し、十分水洗し乾燥すれば終了する。ところで、陰極電解に伴い電解処理液中には3価のクロムイオンが蓄積することがあるが、特に問題とはならない。ただし、3価のクロムの生成に伴いpHが上昇するので、pH管理には十分に注意すべきである。
【0024】
次に、第二の発明である耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板について述べる。基本的にはアルミニウムを加工して得られるプリント配線板であって、第一の発明を用いて陰極電解することにより、該表面に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、104〜106個/mm2の割合で存在し、かつクロムに換算して30mg/m2以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層を有するものである。図1に第二の発明であるアルミニウム系金属材料表面のSEM像の一例を示すが、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)、XPS(X線光電子分光)およびAES(オージェ電子分光)等の分析結果から想定した該表面の概念図を図2に示す。
【0025】
図1及び図2に示すように、第二の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面は微細な金属クロム粒子と、それを含む材料表面全体を覆う3価クロムの水和酸化物(クロメート)層で構成されている。該金属クロム粒子はアルミニウム系金属材料表面の電気化学的に活性な部分に優先的に形成されると考えられるので、この粒径や析出頻度は素材であるアルミニウム系金属材料の表面状態に大きく依存する。従って、無色外観で吸湿する環境にさらされた後にも良好な耐熱接着性を得るためには、これらの状況が限定されなければならない。
【0026】
すなわち、金属クロム粒子の粒径は0.1〜15.0μmであり、その存在する頻度が104〜106個/mm2であることが必要である。前記金属のクロム粒子の粒径が0.1μm未満では十分な接着性が得られないし、また15.0μmを越える場合は特に急激な温度上昇・下降などの熱衝撃に弱くなる。さらに、前記金属クロム粒子の存在する頻度が104個/mm2未満である場合は、十分な接着効果が得られないし、106個/mm2を越える場合は前記と同様熱衝撃に弱くなる。
【0027】
さらに前記金属クロム微粒子を含み、アルミニウム系プリント配線板用基板表面全体を覆う、クロム水和酸化物からなるクロメート被覆層はクロムに換算して30mg/m2以下でなければならない。また付着量が30mg/m2を越えると外観が着色し、かつ従来技術の項目で説明した通常の反応型クロメートの場合と同様、昇温による水分の離脱が激しくなり耐熱接着性に悪影響を及ぼすのである。すなわち、この量はできるだけ少ない方が良く、下限は特に限定されない。これは金属クロム電析メカニズムから、数分子層のクロメート層は必ず残存するため、全くゼロにすることは現実的に不可能なためである。
【0028】
以上説明したように、第二の発明のアルミニウム系プリント配線板用基板表面には6価のクロムが全く含まれない。但し、第一の発明の方法が終了した後の水洗が不十分であると、水溶液中に含まれる6価クロムがコンタミとして残存することがある。これは、目的とする耐熱接着性には特に悪影響を及ぼさないが、環境汚染の原因となる可能性があるので、十分な水洗を行うべきである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共にあげてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0030】
〔評価用試料の作製〕
60℃に加熱した日本パーカライジング製アルカリ脱脂剤ファインクリーナー315の2%水溶液に3分間浸漬し、水洗して表面を清浄にしたJISA1050材(70×150×0.8mm)に、下記に(表1参照)示す各種表面処理を施した後、さらにこれらをφ45mmの円盤状に打ち抜いて評価用試料を作製した。
【0031】
実施例1
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0032】
実施例2
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度0.5A/dm2で120秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0033】
実施例3
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0034】
実施例4
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に15℃に温度調整したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0035】
実施例5
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を2.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0036】
比較例1
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの陰極電解水溶液中にて、前記試料を電流密度0.1A/dm2で600秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0037】
比較例2
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を5.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度20A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0038】
比較例3
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に5℃に温度調整したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解後、通電したまま引き出して十分に水洗し乾燥した。
【0039】
比較例4
日本パーカライジング製アルカリエッチング剤パーコアルマエッチ391(登録商標)の2%水溶液を70℃に加温し、前記試料を30秒間浸漬し水洗した後、スマット除去のために常温の5%硝酸水溶液中に30秒間浸漬して、十分に水洗乾燥した。
【0040】
比較例5
温度40℃に加温した日本パーカライジング製反応型クロメート剤アルクロム3703(登録商標)の1%水溶液中に、前記試料を120秒間浸漬して反応型クロメート皮膜を形成した。
【0041】
〔試験方法〕
1.外観判定
実施例1〜5、比較例1〜5の各試料の表面を目視にて着色の程度、および表面の光沢の変化を判定した。判定基準は以下の通りとした。
◎:無色でありかつ表面の光沢が変化していない。
○:無色であるが表面の光沢が変化している。
△:僅かに着色がある。
×:着色が有るか又は表面が粗面化されて光沢が変化している。
【0042】
2.耐熱接着性
実施例1〜5、比較例1〜5の各試料をベースとした銅張積層板を、300℃に加熱した半田浴上にアルミニウム面側を下面にして浮かべ、銅箔面がブリスター状に膨れて剥離に至るまでの時間を測定した。試験は30分まで行った。
【0043】
3.吸湿環境後の耐熱接着性
次に、前記実施例1〜5、比較例1〜5の各試料の片面に、φ45mm、厚さ35μmの電解銅箔に電気絶縁用のエポキシ樹脂を塗布後乾燥させて用意したエポキシ樹脂付き銅箔を重ね、40kgf/cm2の圧力で、温度180℃にて60分間加熱加圧硬化させ、厚さ100μmのエポキシ絶縁樹脂層を有するアルミニウムをベースとした銅張積層板を作製した。
温度50℃、湿度98%に調整した恒温高湿槽中に、前記にて作製した各銅張積層板試料を入れ24時間放置した。その後この試料を取り出し表面の水分を十分に拭き取り1時間以上室内に放置した後、前記耐熱接着性と同様の試験方法で評価した。
【0044】
4.金属クロム粒子径、および析出頻度判定
本発明の方法および実施例1〜4の陰極電解処理を施した試料を、別途SEM写真(×1000)撮影し、そのSEM像より金属クロム粒子の粒径と析出頻度を測定した。
【0045】
5.クロメート層付着量測定
本発明の方法および実施例1〜4の陰極電解処理を施した試料を、蛍光X線分析装置を用いて試験片表面に存在する総クロム付着量を測定し、さらに同一試験片を無水クロム酸300g/L、98%硫酸3g/Lを含有する水溶液に50℃にて5分間浸漬し、クロメート皮膜を除去後、同様に蛍光X線分析を行って、これらの差から求めた。
【0046】
実施例1〜5、比較例1〜5及び表1の試験結果より次のことが言える。
▲1▼本発明の方法を用いて作製した実施例1〜5の試料は外観も無色であり、かつ表面の外観変化もほとんど認められず、吸湿環境にさらした後も、きわめて良好な耐熱接着性が得られることがわかる。
▲2▼これに対して、本発明以外の方法(比較例4及び5)では全く耐熱接着性が得られない。
▲3▼陰極電解および調整した水溶液の条件が異なる場合には、析出する金属クロム粒子が粗大で析出頻度が低かったり(比較例1)、析出頻度が高すぎたり(比較例2)、クロメート皮膜量が多すぎたり(比較例3)すると、十分な耐熱接着性が得られないことがわかる。
【0047】
【発明の効果】
このように、本発明の方法により製造されたアルミニウム系プリント配線板用基板は有機樹脂系接着剤を用いて接着されることによりきわめて良好な耐熱接着性を発揮することから、高集積化および高密度実装化にも十分対応可能な放熱特性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板を提供することができる。
【0048】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム系金属材料表面のSEM像(×1000)を示す図である。
【図2】本発明のアルミニウム系金属材料の表面断面概念図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム系プリント配線板用基板に有機樹脂系接着剤を用いて絶縁部材を接着する際に、接着後に200℃以上の高温にさらされても劣化することなく強固な接着力を付与するアルミニウム系プリント配線用基板の表面処理方法と、強固な接着力を有するアルミニウム系プリント配線板用基板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来プリント配線板は、フェノール、エポキシおよびポリイミドなどの有機樹脂系絶縁板上に銅箔を貼着し、それをエッチングして配線路を形成して、さらにこれに電子部品を取り付けて機器を構成するものが多かった。しかし近年では、電子機器の軽薄短小化ニーズとともにこれらとトレードオフ関係にある高性能化、高集積化されたプリント配線板の多層化、高密度実装化がますます進展してきている。このため、プリント配線板自体の放熱が重視され、伝熱性の低い有機樹脂系絶縁板に代わって、アルミニウム系金属材料をベースとした基板が使用されるようになってきた。
【0003】
このようなプリント配線板は、アルミニウム系金属材料により形成された板材や箔にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等からなる絶縁樹脂層を介して銅箔等の金属箔を貼着させることにより製造されている。しかし、このようなアルミニウム系金属材料と樹脂層とは一般に接着力が低く、とりわけ電子機器製造工程で不可欠な加熱工程において剥離が起こる危険性があるので、以前より多くの改善が行われてきた。
【0004】
一般に、アルミニウム系金属材料と有機樹脂系部材とを強固に接着するため、アルミニウム系金属材料側に施される表面処理方法としては、前記材料表面に凹凸を形成して接着剤とのアンカー効果を期待する機械的方法と、前記材料と有機樹脂系接着剤の両方に良好な化学吸着性を有するような表面処理皮膜層を形成する化学的方法の2種類がある。
【0005】
前者の機械的方法としてはウエットホーニングのようないわゆる砂目処理があるが、外観が変化し表面の粗度が大きくなり、いわゆるアルミニウム表面の意匠性を維持することが困難である欠点がある。これは片面仕様のプリント配線板においては、アルミニウム系金属材料素地面に、前記表面自体の意匠性を求められる場合があり、機械的な方法で粗面化する方法では、アルミニウム系金属材料の意匠性が得られないためである。また特公昭55−12754号公報に開示されているように、アルミニウム系金属材料をアルカリ溶液に接触させてエッチング処理を行い表面に凹凸を形成する方法や、特公昭63−44059号公報に開示されているような酸性溶液中にて陽極酸化処理を行い多孔性の酸化皮膜を形成する方法などが提案されている。しかし、エッチング処理による凹凸形成法は、長時間の処理が必要で生産性に劣るだけでなく、均一なエッチングが行われ難く、必ずしも意図した凹凸を得るのが困難であり、エッチング後にアルミニウム系金属材料中の不純物から生成される残渣、いわゆるスマットが残り、特に半田耐熱性の劣る場合が多い。
【0006】
また、陽極酸化処理による凹凸形成法では、やはり長時間の処理を必要とするだけでなく、陽極酸化皮膜の硬度が高く柔軟性が劣るため、その後の折り曲げ、打ち抜き等の工程でひび割れ等のトラブルを生じることがある。しかも、陽極酸化皮膜自体は伝熱性が劣るため、本来の放熱性を阻害するというデメリットも有する。
【0007】
一方、アルミニウム系金属材料表面に接着性の優れる皮膜層を形成する化学的方法としては、アルミニウムを陽極酸化して、5〜100μmの耐食性皮膜をつけるアルマイト処理があるが、コストが高いという欠点がある。またクロメート処理として、フッ素系のエッチング剤を含有する6価クロムの酸性水溶液に接触させる方法があり、その方法を用いると、表面にクロム酸クロメート(6価クロムと3価クロムの水和酸化物)やりん酸クロメート(3価クロムのりん酸塩)皮膜が形成される。これらの方法は、アルミニウム系金属材料表面に接着性と耐食性を付与することができるので、塗装下地処理として多用されている。
【0008】
しかし、クロメート皮膜は水和酸化物皮膜なので、加熱により皮膜中の酸素と水素が水分として離脱し、耐熱性に劣るという欠点を有する。特に高温になればなるほど多量の水分が離脱し、皮膜の体積が収縮することにより皮膜に割れが起こって接着力を失う結果となる。
【0009】
従って、プリント配線板に電子部品が実装される際に行われる半田リフローなどの加熱工程に十分耐えられ、外観が無色であり、かつ耐熱接着性を付与することが可能なアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法およびアルミニウム系プリント配線板用基板は未だ得られていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれら従来技術が抱える問題点を解決するためになされたもので、アルミニウム系プリント配線板用基板に有機樹脂系接着剤を用いて絶縁部材を接着した後に、外観が無色でかつ優れた耐熱接着性を付与することが可能なアルミニウム系プリント配線板用基板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板を、硫酸イオンを含有するクロム酸酸性水溶液中にて陰極電解処理することにより得られる、微細で緻密な金属クロム粒子を有し、さらにクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が極く薄く表面全体を覆うアルミニウム系プリント配線板用基板は外観が無色で、かつ極くめて良好な耐熱接着性を有することを新たに見い出したのである。
【0012】
すなわち、第一の発明はアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線用基板表面を、少なくとも6価クロムイオンと硫酸イオンとを含有するpH0〜1.8の酸性水溶液中に接触させ、陰極電解処理することを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法を提供する。
【0013】
また、前記酸性水溶液中には、さらにフッ素化合物が含有されることが好ましい。
【0014】
次に、第二の発明はアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板の表面上に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、104〜106個/mm2の割合で存在し、かつ前記金属クロム微粒子を含みクロムに換算して30mg/m2以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が該基板全体を覆っていることを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板を提供する。
【0015】
以下、本発明の構成について具体的に説明する。
本発明のアルミニウム系プリント配線板用基板に用いられるアルミニウム系金属材料は、純アルミニウムをはじめとする、アルミニウムを50重量%以上含有するアルミニウム基合金である。
【0016】
まず、第一の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法について説明する。
第一の発明で用いる硫酸−クロム酸系酸性電解水溶液を構成する6価クロムイオンおよび硫酸イオンの供給源については特に限定されない。
【0017】
すなわち、6価クロムイオンとしては、無水クロム酸、重クロム酸及びクロム酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩から任意に1種または2種以上を選択して使用することができる。さらに、6価クロムイオンの濃度上限はその溶解度限以下ならば特に限定されないが、高濃度とすると、薬剤コストおよび廃水処理コストの点で経済的に不利であり、30g/L程度あることが好ましい。また、6価クロムイオン濃度の下限は、陰極電解処理(後述する金属クロム粒子の析出)の効率を考慮すると2g/Lとするのが好ましい。従って6価クロムイオンとしては、2〜30g/Lとするのが好ましい。より好ましくは5〜20g/Lである。
【0018】
次に硫酸イオンは、硫酸および硫酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。硫酸イオン濃度は、0.02〜4.00g/Lの範囲であることが好ましい。より好ましくは0.1〜3.0g/Lである。これらの範囲外の場合は、陰極電解処理の効率が低下するので好ましくはない。
【0019】
また、前記水溶液のpHの上限も重要である。pHが0未満の場合は陰極電解処理の効率が低下し、長時間の処理が必要になるなど工業的に不利となる。pHが1.8を超えると電解処理すなわち金属クロム粒子の析出が全く行われなくなるので好ましくない。なおpHを下げる場合は苛性アルカリまたはアンモニア水を濃度に関係なく用いることができるが、下げる場合は硫酸またはクロム酸でしかできないので、それらの濃度があまり高くなりすぎないように注意しなければならない。
【0020】
さらに前記水溶液中に、フッ素化合物が添加されているのが好ましい。このときのフッ素化合物としては、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、チタンフッ化水素酸およびジルコニウムフッ化水素酸、さらにはこれらのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩などから選ばれる1種または2種以上が使用可能である。フッ素化合物の濃度範囲はフッ素換算で10〜500ppmであることが好ましい。この範囲のフッ素濃度とすることにより後述の金属クロム粒子の粒径と存在頻度を制御することができ、高濃度であればあるほど該金属クロム粒子は微細となり、高頻度に析出する。すなわち、フッ素濃度が10ppm未満ではその効果が見られず、500ppmを超えるとその効果が飽和してしまう。本発明における耐熱接着性は、金属クロム粒子がより微細で高頻度に存在するほど良好となるが、これとフッ素濃度との関係は使用するアルミニウム系金属材料の種類に大きく依存するので、実際のフッ素濃度は対象とする材料に応じて適時選択すべきである。
【0021】
第一の発明である陰極電解処理は、対象となるアルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板表面をアルカリ脱脂剤等で清浄にした後、前記水溶液中に接触させ、アルミニウム系プリント配線板用基板が陰極となるようにして行う。通常、水溶液との接触は浸漬で行うのが好ましい。またこのときの温度は40℃以上であることが好ましい。温度が40℃未満の場合は後述のクロメート層が異常に厚くなることがあるので避けるべきである。また、温度上限は特に限定されないが、エネルギーコストや環境への影響を考慮すると50℃程度とするのが好ましい。従って40〜50℃で陰極電解するのが好ましい。
【0022】
また陰極電解時の電流密度は特に限定されないが、0.1〜20A/dm2の範囲であることが好ましい。本発明における通電電気量は析出される全クロム(金属クロム粒子とクロメート層)量から30〜120クーロン/dm2の範囲であることが好ましい。通電電気量が60クーロン/dm2の設定では、電流密度が、0.1A/dm2のとき通電時間が600秒間、20A/dm2のとき3秒間となり、このような場合には耐熱接着性も悪くなるので、設備や生産性に応じて現実的な処理時間となるように電流密度を設定すべきである。
【0023】
第一の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理においては、前記の方法で陰極電解を行い、通電停止後に対象部材を処理液より取り出し、十分水洗し乾燥すれば終了する。ところで、陰極電解に伴い電解処理液中には3価のクロムイオンが蓄積することがあるが、特に問題とはならない。ただし、3価のクロムの生成に伴いpHが上昇するので、pH管理には十分に注意すべきである。
【0024】
次に、第二の発明である耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板について述べる。基本的にはアルミニウムを加工して得られるプリント配線板であって、第一の発明を用いて陰極電解することにより、該表面に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、104〜106個/mm2の割合で存在し、かつクロムに換算して30mg/m2以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層を有するものである。図1に第二の発明であるアルミニウム系金属材料表面のSEM像の一例を示すが、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)、XPS(X線光電子分光)およびAES(オージェ電子分光)等の分析結果から想定した該表面の概念図を図2に示す。
【0025】
図1及び図2に示すように、第二の発明であるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面は微細な金属クロム粒子と、それを含む材料表面全体を覆う3価クロムの水和酸化物(クロメート)層で構成されている。該金属クロム粒子はアルミニウム系金属材料表面の電気化学的に活性な部分に優先的に形成されると考えられるので、この粒径や析出頻度は素材であるアルミニウム系金属材料の表面状態に大きく依存する。従って、無色外観で吸湿する環境にさらされた後にも良好な耐熱接着性を得るためには、これらの状況が限定されなければならない。
【0026】
すなわち、金属クロム粒子の粒径は0.1〜15.0μmであり、その存在する頻度が104〜106個/mm2であることが必要である。前記金属のクロム粒子の粒径が0.1μm未満では十分な接着性が得られないし、また15.0μmを越える場合は特に急激な温度上昇・下降などの熱衝撃に弱くなる。さらに、前記金属クロム粒子の存在する頻度が104個/mm2未満である場合は、十分な接着効果が得られないし、106個/mm2を越える場合は前記と同様熱衝撃に弱くなる。
【0027】
さらに前記金属クロム微粒子を含み、アルミニウム系プリント配線板用基板表面全体を覆う、クロム水和酸化物からなるクロメート被覆層はクロムに換算して30mg/m2以下でなければならない。また付着量が30mg/m2を越えると外観が着色し、かつ従来技術の項目で説明した通常の反応型クロメートの場合と同様、昇温による水分の離脱が激しくなり耐熱接着性に悪影響を及ぼすのである。すなわち、この量はできるだけ少ない方が良く、下限は特に限定されない。これは金属クロム電析メカニズムから、数分子層のクロメート層は必ず残存するため、全くゼロにすることは現実的に不可能なためである。
【0028】
以上説明したように、第二の発明のアルミニウム系プリント配線板用基板表面には6価のクロムが全く含まれない。但し、第一の発明の方法が終了した後の水洗が不十分であると、水溶液中に含まれる6価クロムがコンタミとして残存することがある。これは、目的とする耐熱接着性には特に悪影響を及ぼさないが、環境汚染の原因となる可能性があるので、十分な水洗を行うべきである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共にあげてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0030】
〔評価用試料の作製〕
60℃に加熱した日本パーカライジング製アルカリ脱脂剤ファインクリーナー315の2%水溶液に3分間浸漬し、水洗して表面を清浄にしたJISA1050材(70×150×0.8mm)に、下記に(表1参照)示す各種表面処理を施した後、さらにこれらをφ45mmの円盤状に打ち抜いて評価用試料を作製した。
【0031】
実施例1
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0032】
実施例2
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度0.5A/dm2で120秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0033】
実施例3
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0034】
実施例4
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に15℃に温度調整したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0035】
実施例5
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を2.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0036】
比較例1
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの陰極電解水溶液中にて、前記試料を電流密度0.1A/dm2で600秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0037】
比較例2
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を5.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に45℃に加温したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度20A/dm2で30秒間陰極電解し、十分に水洗し乾燥した。
【0038】
比較例3
無水クロム酸を40g/L、98%硫酸を0.4g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸を1.0g/Lとなるように溶解した水溶液を用意し、これに28%アンモニア水を投入してpHを0.8に調整して陰極電解用水溶液を作製した。次に5℃に温度調整したこの水溶液中にて、前記試料を電流密度3A/dm2で30秒間陰極電解後、通電したまま引き出して十分に水洗し乾燥した。
【0039】
比較例4
日本パーカライジング製アルカリエッチング剤パーコアルマエッチ391(登録商標)の2%水溶液を70℃に加温し、前記試料を30秒間浸漬し水洗した後、スマット除去のために常温の5%硝酸水溶液中に30秒間浸漬して、十分に水洗乾燥した。
【0040】
比較例5
温度40℃に加温した日本パーカライジング製反応型クロメート剤アルクロム3703(登録商標)の1%水溶液中に、前記試料を120秒間浸漬して反応型クロメート皮膜を形成した。
【0041】
〔試験方法〕
1.外観判定
実施例1〜5、比較例1〜5の各試料の表面を目視にて着色の程度、および表面の光沢の変化を判定した。判定基準は以下の通りとした。
◎:無色でありかつ表面の光沢が変化していない。
○:無色であるが表面の光沢が変化している。
△:僅かに着色がある。
×:着色が有るか又は表面が粗面化されて光沢が変化している。
【0042】
2.耐熱接着性
実施例1〜5、比較例1〜5の各試料をベースとした銅張積層板を、300℃に加熱した半田浴上にアルミニウム面側を下面にして浮かべ、銅箔面がブリスター状に膨れて剥離に至るまでの時間を測定した。試験は30分まで行った。
【0043】
3.吸湿環境後の耐熱接着性
次に、前記実施例1〜5、比較例1〜5の各試料の片面に、φ45mm、厚さ35μmの電解銅箔に電気絶縁用のエポキシ樹脂を塗布後乾燥させて用意したエポキシ樹脂付き銅箔を重ね、40kgf/cm2の圧力で、温度180℃にて60分間加熱加圧硬化させ、厚さ100μmのエポキシ絶縁樹脂層を有するアルミニウムをベースとした銅張積層板を作製した。
温度50℃、湿度98%に調整した恒温高湿槽中に、前記にて作製した各銅張積層板試料を入れ24時間放置した。その後この試料を取り出し表面の水分を十分に拭き取り1時間以上室内に放置した後、前記耐熱接着性と同様の試験方法で評価した。
【0044】
4.金属クロム粒子径、および析出頻度判定
本発明の方法および実施例1〜4の陰極電解処理を施した試料を、別途SEM写真(×1000)撮影し、そのSEM像より金属クロム粒子の粒径と析出頻度を測定した。
【0045】
5.クロメート層付着量測定
本発明の方法および実施例1〜4の陰極電解処理を施した試料を、蛍光X線分析装置を用いて試験片表面に存在する総クロム付着量を測定し、さらに同一試験片を無水クロム酸300g/L、98%硫酸3g/Lを含有する水溶液に50℃にて5分間浸漬し、クロメート皮膜を除去後、同様に蛍光X線分析を行って、これらの差から求めた。
【0046】
実施例1〜5、比較例1〜5及び表1の試験結果より次のことが言える。
▲1▼本発明の方法を用いて作製した実施例1〜5の試料は外観も無色であり、かつ表面の外観変化もほとんど認められず、吸湿環境にさらした後も、きわめて良好な耐熱接着性が得られることがわかる。
▲2▼これに対して、本発明以外の方法(比較例4及び5)では全く耐熱接着性が得られない。
▲3▼陰極電解および調整した水溶液の条件が異なる場合には、析出する金属クロム粒子が粗大で析出頻度が低かったり(比較例1)、析出頻度が高すぎたり(比較例2)、クロメート皮膜量が多すぎたり(比較例3)すると、十分な耐熱接着性が得られないことがわかる。
【0047】
【発明の効果】
このように、本発明の方法により製造されたアルミニウム系プリント配線板用基板は有機樹脂系接着剤を用いて接着されることによりきわめて良好な耐熱接着性を発揮することから、高集積化および高密度実装化にも十分対応可能な放熱特性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板を提供することができる。
【0048】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム系金属材料表面のSEM像(×1000)を示す図である。
【図2】本発明のアルミニウム系金属材料の表面断面概念図である。
Claims (3)
- アルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板表面を、少なくとも6価クロムイオンと硫酸イオンとを含有するpH0〜1.8の酸性水溶液中に接触させ、陰極電解処理し、該基板の表面上に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、10 4 〜10 6 個/mm 2 の割合で存在し、かつ前記金属クロム微粒子を含みクロムに換算して30mg/m 2 以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が該基板全体を覆うことを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法。
- 前記酸性水溶液中に、さらにフッ素化合物を含有するものである、請求項1記載の耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板の表面処理方法。
- アルミニウム系金属材料を加工して得られるプリント配線板用基板表面が陰極電解処理され、該基板の表面上に粒径0.1〜15.0μmの金属クロム微粒子が、104〜106個/mm2の割合で存在し、かつ前記金属クロム微粒子を含みクロムに換算して30mg/m2以下のクロム水和酸化物からなるクロメート被覆層が該基板全体を覆っていることを特徴とする、耐熱接着性に優れるアルミニウム系プリント配線板用基板。
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