JP3923436B2 - センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 - Google Patents
センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3923436B2 JP3923436B2 JP2003033761A JP2003033761A JP3923436B2 JP 3923436 B2 JP3923436 B2 JP 3923436B2 JP 2003033761 A JP2003033761 A JP 2003033761A JP 2003033761 A JP2003033761 A JP 2003033761A JP 3923436 B2 JP3923436 B2 JP 3923436B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sensor chip
- sensor
- measurement light
- substrate
- light
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N21/00—Investigating or analysing materials by the use of optical means, i.e. using sub-millimetre waves, infrared, visible or ultraviolet light
- G01N21/17—Systems in which incident light is modified in accordance with the properties of the material investigated
- G01N21/55—Specular reflectivity
- G01N21/552—Attenuated total reflection
- G01N21/553—Attenuated total reflection and using surface plasmons
- G01N21/554—Attenuated total reflection and using surface plasmons detecting the surface plasmon resonance of nanostructured metals, e.g. localised surface plasmon resonance
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Nanotechnology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Immunology (AREA)
- Pathology (AREA)
- Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は局在プラズモン共鳴を応用したセンサおよび、それに使用されるセンサチップ並びにその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、誘電体や半導体等の表面に金属微粒子が層状に固定されてなる微細構造体をセンサチップとして用い、局在プラズモン共鳴を応用して試料の屈折率等を測定するセンサが知られている。このセンサは基本的に、上記センサチップの金属微粒子の部分に測定光を照射する手段と、この層状の金属微粒子を経た(つまりそこを透過、あるいはそこで反射した)測定光の強度を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0003】
上記のセンサにおいて、層状の金属微粒子の部分に測定光を照射すると、ある特定の波長において局在プラズモン共鳴が生じ、それによって測定光の散乱や吸収が著しく増大する。そこで、層状の金属微粒子を経た測定光の強度を検出するようにしておけば、その検出光強度が急激に減衰することを観察して、局在プラズモン共鳴の発生を確認することができる。
【0004】
このとき局在プラズモン共鳴が生じる光波長、並びに測定光の散乱や吸収の程度は、金属微粒子の周囲に存在する媒質の屈折率に依存する。つまり、この屈折率が大であるほど共鳴ピーク波長は長波長側にシフトし、また測定光の散乱や吸収は増大する。したがって、層状の金属微粒子の周囲に試料を配した状態で該金属微粒子の部分に測定光を照射し、そのときこの部分を経た測定光の強度を検出することにより、試料の屈折率や、それに対応する試料の物性等を測定することができる。
【0005】
その場合、測定光として白色光を用い、金属微粒子の部分を経た光を分光検出して上記共鳴ピーク波長のシフトを検出するようにしてもよいし、あるいは測定光として単色光を用い、上記共鳴ピーク波長のシフトや、測定光の散乱、吸収の変化に伴う光強度の変化を検出するようにしてもよい。
【0006】
また、層状の金属微粒子を経た測定光を検出する上では、光検出器を金属微粒子に対し測定光照射側と反対側に配置して、金属微粒子を透過した光を検出してもよいし、あるいは光検出器を金属微粒子に対し測定光照射側と同じ側に配置して、金属微粒子で反射した光を検出してもよい。なお後者のようにする場合、層状の金属微粒子を固定する基体を光反射性の材料から形成しておけば、金属微粒子を透過した測定光がその基体で反射するので、この透過光も一緒に検出することができる。
【0007】
また、センサチップの金属微粒子の周囲に特定物質と結合するセンシング媒体を固定しておくと、該センシング媒体と特定物質との結合の有無に応じて、金属微粒子の周囲部分の屈折率が変化する。そこで、金属微粒子の周囲に上記センシング媒体を固定した状態で該金属微粒子の部分に測定光を照射し、そのとき該部分を経た測定光の強度を検出することにより、該特定物質とセンシング媒体との結合の有無を検出することも可能である。なお、このような特定物質とセンシング媒体との組合せとしては、例えば各種抗原と抗体等が挙げられる。
【0008】
従来、この局在プラズモン共鳴を応用したセンサに使用されるセンサチップとしては、例えば前記特許文献1に示されているように、基体の表面部分に金属コロイド単層膜を形成してなるものが知られている。また、非特許文献1および2に示されるように、一表面に複数の微細孔が形成された層状の陽極酸化アルミナと、この陽極酸化アルミナの微細孔内に充填された金属微粒子とからなる微細構造体も、上記センサに適用可能である。なお、このように複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナそのものについては、特許文献2や非特許文献3にも記載がある。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−356587号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平11−200090号公報
【0011】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied Phys ics)、1978年、第49巻、第5号、p.2929
【0012】
【非特許文献2】
ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied Phys ics)、1980年、第51巻、第1号、p.754
【0013】
【非特許文献3】
益田秀樹、「陽極酸化アルミナにもとづく高規則性メタルナノホールアレー」、固体物理、1996年、第31巻、第5号、p.493
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上に挙げた一表面に複数の微細孔が形成された層状の陽極酸化アルミナ等の基体と、この基体の微細孔内に充填された金属微粒子とを備えてなるセンサチップも、金属微粒子の周囲に特定物質と結合するセンシング媒体を固定しておいて、該センシング媒体と特定物質との結合の有無を検出するために使用することが可能である。
【0015】
しかし、そのように構成した従来のセンサチップを用いて、センシング媒体と特定物質との結合状態を検出する際には、その結合の有無によるセンサ出力信号の変化(つまり、前述した共鳴ピーク波長のシフトや、測定光の散乱、吸収の変化に伴う光強度の変化)が微弱で、またその変化が認められるまでに長時間を要するという問題が認められる。
【0016】
本発明は上記の事情に鑑みて、センシング媒体と特定物質との結合状態を高感度、短時間で検出することができる、局在プラズモン共鳴を応用したセンサを提供することを目的とする。
【0017】
また本発明は、そのようなセンサを実現できるセンサチップ並びにその作製方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によるセンサチップは、前述したように一表面に複数の微細孔が形成された層状の基体と、この基体の微細孔内に充填された金属微粒子とを備えてなり、
前記金属微粒子の部分に測定光を照射して、該部分を透過、あるいは該部分で反射した測定光の強度を検出するセンサに用いられるセンサチップにおいて、
前記複数の微細孔が、均一な径のものとされ、
均一の外径を有する金属微粒子の少なくとも一部が、前記一表面よりも基体の外側に露出していることを特徴とするものである。
【0019】
なお上記の基体としては、陽極酸化アルミナを好適に用いることができる。あるいは、この基体として、複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナをマスクに用いたエッチング加工により微細孔を形成してなるものも用いることもできる。
【0020】
また本発明によるセンサチップにおいては、上記金属微粒子の半分以上が、層状の基体の一表面よりも外側に露出していることが望ましい。また本発明によるセンサチップにおいて、上記金属微粒子の直径は、200nm以下であることが望ましい。
【0021】
一方、本発明によるセンサは、上に説明した本発明のセンサチップを用いるものであって、センサチップの金属微粒子の部分に測定光を照射する手段と、この金属微粒子の部分を透過、あるいは該部分で反射した測定光の強度を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0022】
なお上記の構成においては、測定光を照射する手段として白色光を発するものが用いられる一方、光検出手段として、測定光の強度を分光検出するものが用いられることが望ましい。
【0023】
【発明の効果】
本発明者の研究によると、従来技術における前述の問題は、以下の点に起因していることが判明した。
【0024】
すなわち、従来のセンサチップにおいては、陽極酸化アルミナ等の基体の微細孔内に金属微粒子が緊密に(つまり微細孔周壁との間に間隙を持たない状態で)充填されているため、センシング媒体は金属微粒子の微細孔入口側を向いている表面部分のみに固定され、その固定量は極めて微少なものとなっている。そこで、該センシング媒体と特定物質との結合による金属微粒子周囲の屈折率変化が小さく、大きなセンサ出力信号の変化を得ることができないのである。
【0025】
また金属微粒子は、基体の深い微細孔の底部に固定されているので、センシング媒体は微細孔の奥深い位置に存在することになる。そのため特定物質は、微細孔内をその底部近くまで拡散して行かなければセンシング媒体と結合することができず、この特定物質の拡散に時間がかかるので、センサ出力信号の変化が認められるまでに長時間を要するのである。
【0026】
本発明のセンサチップにおいては、新しく得られた以上の知見に基づいて、金属微粒子を層状の基体の一表面よりも外側に露出させているので、この金属微粒子の側面部分等にもセンシング媒体が固定され得る。そこで、センシング媒体の固定量が多くなり、それと特定物質との結合による金属微粒子周囲の屈折率変化を大きくして、大きなセンサ出力信号の変化を得ることが可能になる。それにより、本発明のセンサチップによれば高精度の分析が実現される。
【0027】
また、センシング媒体が固定される金属微粒子が上記のような状態に配置されていれば、特定物質は、微細孔内をその底部近くまで拡散して行かなくてもセンシング媒体と結合し得るので、この結合によるセンサ出力信号の変化が短時間内に認められるようになり、試料分析の能率が向上する。
【0028】
なお先に述べた陽極酸化アルミナは、アルミニウムを酸性電解液中で陽極酸化することにより、該アルミニウムの表面に多孔性酸化被膜として形成されるものである。この陽極酸化アルミナは、直径数nm〜数百nm程度の極めて微細な孔が、互いに独立してその表面に対して略垂直な方向に延びる状態に形成され、またそれらの微細孔は略等間隔に形成されるという特徴を有するものである。そしてその微細孔の径や深さや間隔は、陽極酸化の条件を制御することにより、比較的自由に設定可能となっている(前記非特許文献3参照)。本発明のセンサチップを作製する際には、金属微粒子の一部を基体の一表面の外側に露出させるために、基体の微細孔の深さを正確に制御する必要があるので、上述のような特徴を有する陽極酸化アルミナは、この基体を構成する材料として極めて好適なものとなる。
【0029】
なお上記の陽極酸化アルミナは、アルミニウムの表面に被膜として形成された状態でそのまま用いられてもよいし、あるいはアルミニウムの表面から一旦剥離された後、その状態または別の基板の上に固定した状態で用いられてもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるセンサチップ10の側面形状を概略的に示すものである。図示されるように本実施形態のセンサチップ10は、アルミニウム基板11の上に形成された層状の基体としての陽極酸化アルミナ12と、この陽極酸化アルミナ12の一表面(図中の上表面)12bに多数形成された微細孔12aの中に充填された金(Au)の微粒子13とからなるものである。
【0032】
このセンサチップ10において、微細孔12aの底部に充填される金微粒子13の直径は200nm程度、より好ましくは例えば数nm〜100nm程度とされる。そして微細孔12aの深さは金微粒子13の半径未満とされ、それにより金微粒子13の半分以上は、陽極酸化アルミナ12の上記一表面12bよりも外側に露出することになる。
【0033】
ここで、上記構成のセンサチップ10を作製する方法の一例を説明する。まず、表面部分に陽極酸化アルミナ12の皮膜が形成されたアルミニウム基板11を用意し、この陽極酸化アルミナ12に対して、微細孔12aが形成されている一表面側から金を蒸着する。この処理により、陽極酸化アルミナ12の微細孔12a内に金微粒子13が充填されて、本実施の形態のセンサチップ10が完成する。
【0034】
なお金微粒子13の代わりに、その他の金属、例えば銀等からなる金属微粒子を形成するようにしてもよい。しかし金は、本発明のセンサチップを形成する上で、以下の点から特に好ましい材料であると言える。すなわち、金は展性および延性に富む材料であるので、比較的低い温度下でも良好な蒸着が可能になる。また金は耐食性も高いので、センサチップ10を後述するセンサに適用した際には、安定した特性のセンサが実現され、またセンサの製造時および使用時の取扱いも容易化される。
【0035】
また金属微粒子が露出した本発明のセンサチップは、上述のような作製方法に限らず、蒸着やスパッタ、メッキ法等によって陽極酸化アルミナの微細孔内に金や銀等の金属を充填し、次いで陽極酸化アルミナの表面に付着した金属を綿棒等で拭取り除去して、上記微細孔内に金属の孤立粒子を形成し、さらにリン酸(例えば6wt%)とクロム酸(例えば1.8wt%)との混合液でアルミナ層をエッチングすることにより作製することも可能である。
【0036】
次に、アルミニウム基板11に層状の陽極酸化アルミナ12を形成する方法について説明する。そのような方法としてはいくつかの方法が挙げられるが、基本的には、アルミニウム基板11を酸性電解液中で陽極酸化処理する際に、酸化被膜の生成と、生成された酸化被膜の溶解とを同時に進行させる方法が適用される。この方法によれば、陽極酸化の開始初期にアルミニウム基板11の上に形成された酸化被膜の表面に、酸による溶解作用で、微小なピット(小孔)がランダムに発生する。そして、陽極酸化の進行とともに、この中のいくつかのピットが優先的に成長して、略等間隔に配列するようになる。酸化被膜において一旦ピットが形成された部分では、他の部分と比較してより高い電場が加わるので、その部分の溶解がより促進される。その結果、層状の陽極酸化アルミナ12においては、その成長とともに選択的に溶解されて微細孔12aが形成される一方、溶解されないで微細孔12aを取り囲むように残る部分が形成される。
【0037】
以上のようにして得られる陽極酸化アルミナ12においては、多数の微細孔12aが規則的に配列して形成される。これらの微細孔12aは、陽極酸化アルミナ12の表面に対して略垂直方向に延び、そして互いに略同一の断面形状で、底部が閉じられた空間となる。
【0038】
なお、特開2001−9800号並びに特開2001−138300号には、上記微細孔の形成位置を制御する方法が開示されている。これらの方法では、例えばアルミニウムに集束イオンビームを照射する等により、所望の位置に溶解開始点を形成する。この処理の後に前述のような陽極酸化処理を行うことにより、所望の位置に微細孔12aを形成することができる。また、上記集束イオンビームを照射する際に、その照射量、ビーム径、照射エネルギー等の条件を制御することにより、溶解開始点の凹み形状や組成を変えることができるので、最終的に形成される微細孔12aの直径も自在に制御可能となる。
【0039】
また、微細孔12aの配列を特に高密度化させる方法として、例えばシュウ酸を用いる方法がある。すなわち、陽極酸化用の電解液としてシュウ酸を用い、40V程度の定電圧下で陽極酸化処理を行うことにより、微細孔12aが規則的に配列して高密度に形成されるようになる。この微細孔12aの配列の規則化は、陽極酸化時間の経過に伴って進行するので、長時間陽極酸化処理することにより、高度に規則化して高密度に配置された微細孔12aを形成することができる。
【0040】
以上のようにして微細孔12aの直径、間隔、深さを比較的自由に制御できるので、金微粒子13を任意の均一サイズに形成でき、またそれらを規則的に配置可能となる。その結果、センサチップ10を後述のセンサに適用した際には、その感度を高め、またその感度を安定化することができる。
【0041】
次に、本発明によるセンサの実施形態について説明する。図2は、上記センサチップ10を用いたバイオセンサの一例を示す側面図であり、また図3は本センサにおけるセンサチップ10の部分を拡大して示すものである。図示の通りこのセンサは、センサチップ10を底部に固定して上面には透明窓22が形成された容器20と、この容器20内のセンサチップ10に向けて測定光23を斜め照射する白色光源24と、センサチップ10で反射した測定光23を分光検出する分光検出器25と、分光検出の結果を表示する表示手段26とから構成されたものである。
【0042】
なおセンサチップ10の露出した金微粒子13の部分には、センサに使用する前に予めセンシング媒体としての抗体31(図3においてY印で表示)が固定される。このセンサチップ10は、容器20内において、金微粒子13が充填された陽極酸化アルミナ12の部分が上側を向く状態に配置される。そしてこの容器20内には、上記陽極酸化アルミナ12に接触するようにして、分析対象の検体溶液30が供給される。
【0043】
センサチップ10に対して透明窓22越しに白色光である測定光23を照射すると、該測定光23は金微粒子13(図1、3参照)において反射し、この反射した測定光23が、分光検出器25によって分光検出される。またこの場合、測定光23は金微粒子13が存在する陽極酸化アルミナ12の部分を透過し、アルミニウム基板11において上向きに反射する。ここで反射した測定光23も、分光検出器25によって分光検出される。
【0044】
こうして検出される反射光の分光強度特性は、基本的に図4に示すようなものとなる。つまり、陽極酸化アルミナ12の金微粒子13の部分に測定光23が照射されたとき、ある特定の波長λLPの光に関しては局在プラズモン共鳴によって測定光の散乱や吸収が特異的に増大する。そこで、この波長λLPの光については、反射光強度が著しく低くなる。
【0045】
このとき検体溶液30内に、上記抗体31と特異的に結合する特定の抗原が含まれていると、図3に示すようにその抗原32が、センサチップ30の抗体31と結合する。こうして抗体31に抗原32が結合すると、センサチップ30の金微粒子13の周囲部分の屈折率が変化するので、分光検出器25によって検出される測定光23の吸収、散乱スペクトル特性が変化する。例えばこの変化は、抗体31と抗原32との結合前は図4に破線で示すように共鳴ピーク波長がλLP1であったものが、結合後は同図に実線で示す通り共鳴ピーク波長がλLP2に変わるように、共鳴ピーク波長のシフトとして現れる。そこで、分光検出器25によって検体溶液30の供給前、後の測定光23の吸収、散乱スペクトル特性を検出し、その検出結果を表示手段26に表示させれば、表示された共鳴ピーク波長の変化から抗体31と抗原32との結合の有無、つまり検体溶液30の中に抗原32が存在するか否かを調べることができる。
【0046】
このセンサに用いられているセンサチップ10は、金微粒子13が陽極酸化アルミナ12の一表面12bよりも外側に露出しているので、深い微細孔の底部に金属微粒子を固定する場合と異なって、金微粒子13の側面部分等にも抗体31を固定することができる。そこで、抗体31の固定量が多くなり、それと抗原32との結合による金微粒子13周囲の屈折率変化を大きくして、大きなセンサ出力信号の変化を得ることが可能になる。それにより、高精度の分析が実現される。
【0047】
また、抗体31が固定される金微粒子13が上記のような状態に配置されていれば、深い微細孔の底部に金属微粒子を固定する場合と異なって、抗原32は、微細孔内をその底部近くまで拡散して行かなくても抗体31と結合し得るので、この結合によるセンサ出力信号の変化が短時間内に認められるようになり、試料分析の能率化が達成される。
【0048】
なお図4に示すような特性は、予め経験あるいは実験に基づいて求めておくことができる。
【0049】
上記の実施形態では、反射した白色光である測定光23を分光検出して共鳴ピーク波長λLPを検出するようにしているが、測定光として単色光を用い、上記共鳴ピーク波長λLPのシフトや、測定光23の散乱、吸収の変化に伴う光強度の変化を検出しても、抗体31と抗原32との結合を検出可能である。
【0050】
なお、より具体的に、上記抗体31と抗原32との組合せとしては、例えばビオチンとストレプトアビジンとの組合せ等が挙げられる。その場合、ビオチンのセンサチップ10への固定をより強固にするために、陽極酸化アルミナ12の表面を、自己組織化単分子膜で修飾することが望ましい。その種の自己組織化単分子膜に関しては、例えば文献 Colin D.Bain and George M.Whitesides、“Modeling Organic Surfaces with Self-Assembled Monolayers”「Angewandte Chemie International Edition in English」1989年、第28巻、第4号、p.506-512に詳しい記載がなされている。
【0051】
次に図5を参照して、本発明の別の実施形態によるセンサチップ40について説明する。このセンサチップ40は、図1に示したセンサチップ10と比べると、金微粒子13の表面の一部だけが陽極酸化アルミナ12の一表面12bから外に露出している点が基本的に異なるものである。なおこの図5において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0052】
以上のように構成されたセンサチップ40においても、金微粒子13が陽極酸化アルミナ12の一表面12bよりも外側に露出していることにより、図1のセンサチップ10と同様に、高精度の分析および試料分析の能率向上を実現することができる。
【0053】
次に図6を参照して、本発明のさらに別の実施の形態によるセンサチップ50について説明する。このセンサチップ50は、図1に示したセンサチップ10と比べると、陽極酸化アルミナ12がより厚く形成され、該陽極酸化アルミナ12がアルミニウム基板11(図1参照)から剥離された状態で用いられている点が基本的に異なるものである。なお、このように陽極酸化アルミナ12の部分単体でセンサチップ50を構成する他、その部分を剛性の高い別の透明部材に固定してセンサチップを構成してもよい。
【0054】
このセンサチップ50は、図7に示すバイオセンサを構成するために用いられ得る。このバイオセンサは、その他に容器20、白色光源24および分光検出器25を設けて構成されている。本実施形態において容器20には、相対面する部分にそれぞれ透明窓22が形成されている。また白色光源24は、白色光である測定光23が一方の透明窓22から容器20内に進入する向きに配置され、分光検出器25は容器20内を通過して他方の透明窓22から出射した測定光23を受光する向きに配置されている。またセンサチップ50は、容器20内の測定光23の光路に入り込む位置に配されている。
【0055】
上記のセンサにおいて、容器20内には測定対象の検体溶液30が供給される。そして容器20内を進行する測定光23は、検体溶液30に接しているセンサチップ50の金微粒子13の部分を透過し、分光検出器25によって検出される。したがってこのセンサにおいても、図2に示したセンサと同様にして、抗体31と抗原32との結合を検出することができる。そして、本実施形態のセンサチップ50においても、金微粒子13が陽極酸化アルミナ12の一表面12bよりも外側に露出していることにより、高精度の分析および試料分析の能率向上を実現することができる。
【0056】
次に図8を参照して、本発明のさらに別の実施形態によるセンサチップ60について説明する。このセンサチップ60は、図6に示したセンサチップ50と比べると、金微粒子13の表面の一部だけが陽極酸化アルミナ12の一表面12bから外に露出している点が基本的に異なるものである。
【0057】
以上のように構成されたセンサチップ60も、図7に示した透過型のセンサを構成するために用いることができる。そしてこのセンサチップ60においても、金微粒子13が陽極酸化アルミナ12の一表面12bよりも外側に露出していることにより、図6のセンサチップ50と同様に、高精度の分析および試料分析の能率向上を実現できる。
【0058】
なお、上記図6や図8に示したセンサチップ50、60を作製する上で、陽極酸化アルミナ12の部分だけを残してアルミニウム基板を除去するためには、例えばジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、1998年、第37巻、pp.L1090-1092に記載があるように、HgCl2飽和溶液や、さらには硫酸などの酸でアルミニウム基板をエッチングする等の方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるセンサチップを示す概略側面図
【図2】本発明の一実施形態によるセンサを示す側面図
【図3】図1のセンサチップの試料分析時の状態を示す概略側面図
【図4】図3のセンサにおいて検出される測定光の分光強度特性を示すグラフ
【図5】本発明の別の実施形態によるセンサチップを示す概略側面図
【図6】本発明のさらに別の実施形態によるセンサチップを示す概略側面図
【図7】本発明の別の実施形態によるセンサを示す概略側面図
【図8】本発明のさらに別の実施形態によるセンサチップを示す概略側面図
【符号の説明】
10、40、50、60 センサチップ
11 アルミニウム基板
12 陽極酸化アルミナ
12a 陽極酸化アルミナの微細孔
12b 陽極酸化アルミナの一表面
13 金微粒子
20 容器
21 液体試料
22 透明窓
23 測定光
24 白色光源
25 分光検出器
26 表示手段
30 検体溶液
31 抗体
32 抗原
Claims (7)
- 一表面に複数の微細孔が形成された層状の基体と、
この基体の前記微細孔内に充填された金属微粒子とを備えてなり、
前記金属微粒子の部分に測定光を照射して、該部分を透過、あるいは該部分で反射した測定光の強度を検出するセンサに用いられるセンサチップにおいて、
前記複数の微細孔が、均一な径のものとされ、
均一の外径を有する金属微粒子の少なくとも一部が、前記一表面よりも基体の外側に露出していることを特徴とするセンサチップ。 - 前記基体が陽極酸化アルミナであることを特徴する請求項1記載のセンサチップ。
- 前記金属微粒子の各々の半分以上が、前記一表面よりも基体の外側に露出していることを特徴とする請求項1または2記載のセンサチップ。
- 前記金属微粒子の直径が、200nm以下であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のセンサチップ。
- 請求項1から4いずれか1項記載のセンサチップを作製する方法において、
前記基体を、複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナをマスクに用いたエッチング加工により形成することを特徴するセンサチップの作製方法。 - 請求項1から5いずれか1項記載のセンサチップを用いたセンサであって、
前記センサチップの前記金属微粒子の部分に測定光を照射する手段と、
前記金属微粒子の部分を透過、あるいは該部分で反射した前記測定光の強度を検出する光検出手段とを備えてなるセンサ。 - 前記測定光を照射する手段が、測定光として白色光を発するものであり、
前記光検出手段が、前記測定光の強度を分光検出するものであることを特徴とする請求項6記載のセンサ。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003033761A JP3923436B2 (ja) | 2003-02-12 | 2003-02-12 | センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 |
EP04001681A EP1445601A3 (en) | 2003-01-30 | 2004-01-27 | Localized surface plasmon sensor chips, processes for producing the same, and sensors using the same |
US10/766,018 US20040183176A1 (en) | 2003-01-30 | 2004-01-29 | Sensor chip, process for producing the same, and sensor using the same |
US11/638,573 US7501649B2 (en) | 2003-01-30 | 2006-12-14 | Sensor including porous body with metal particles loaded in the pores of the body and measuring apparatus using the same |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003033761A JP3923436B2 (ja) | 2003-02-12 | 2003-02-12 | センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004245639A JP2004245639A (ja) | 2004-09-02 |
JP3923436B2 true JP3923436B2 (ja) | 2007-05-30 |
Family
ID=33019648
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003033761A Expired - Fee Related JP3923436B2 (ja) | 2003-01-30 | 2003-02-12 | センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3923436B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005078415A1 (ja) * | 2004-02-13 | 2005-08-25 | Omron Corporation | 表面プラズモン共鳴センサー |
JP5167486B2 (ja) * | 2005-06-09 | 2013-03-21 | 国立大学法人東京農工大学 | 反射率変化型センサ、光学式測定装置、反射率変化型センサの製造方法、並びに反射率変化型センサ用自己組織化微粒子単層膜、自己組織化微粒子単層膜及びこれら単層膜の製造方法 |
JP2009265062A (ja) * | 2008-04-30 | 2009-11-12 | Yasuro Niitome | 分析用チップとその製造方法およびその分析方法 |
JP5026359B2 (ja) * | 2008-07-04 | 2012-09-12 | 株式会社日立ハイテクノロジーズ | 核酸分析デバイス、核酸分析装置及び核酸分析方法 |
JP5614278B2 (ja) * | 2010-12-24 | 2014-10-29 | セイコーエプソン株式会社 | センサーチップ、センサーチップの製造方法、検出装置 |
JP2014160021A (ja) * | 2013-02-20 | 2014-09-04 | Nsk Ltd | 標的物質捕捉装置およびそれを備えた標的物質検出装置 |
-
2003
- 2003-02-12 JP JP2003033761A patent/JP3923436B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004245639A (ja) | 2004-09-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7501649B2 (en) | Sensor including porous body with metal particles loaded in the pores of the body and measuring apparatus using the same | |
JP4245931B2 (ja) | 微細構造体およびその作製方法並びにセンサ | |
Dahlin | Sensing applications based on plasmonic nanopores: The hole story | |
Leonardi et al. | Biosensing platforms based on silicon nanostructures: A critical review | |
KR101879794B1 (ko) | 나노구조를 가지는 표면 플라스몬 공명(spr) 센서 장치 | |
JP3897703B2 (ja) | センサ装置およびそれを用いた検査方法 | |
US8107071B2 (en) | Method for detecting molecular analysis light, and apparatus and sample plate for use with the same | |
JP4109205B2 (ja) | 被検体検出方法 | |
JP2003268592A (ja) | 構造体及び構造体の製造方法並びにこれを用いたセンサ | |
JP4840588B2 (ja) | 分析用チップ及びその製造方法、分析装置並びに分析方法 | |
JP2011201769A (ja) | 表面増強ラマン散乱の研究用の基板 | |
JP2008002943A (ja) | センサ、センシング装置、及びセンシング方法 | |
JP3957199B2 (ja) | センサチップおよびセンサチップの製造方法並びにそのセンサチップを用いたセンサ | |
Watanabe et al. | Label-free and spectral-analysis-free detection of neuropsychiatric disease biomarkers using an ion-sensitive GaInAsP nanolaser biosensor | |
EP1484599A1 (en) | An optical biosensor | |
JP3923436B2 (ja) | センサチップおよびそれを用いたセンサ並びにセンサチップの作製方法 | |
Yang et al. | Rapid and sensitive detection of cardiac markers using plasmonic gold nanostar-engineered microfiber Bragg grating biosensor | |
Heydaryan et al. | Nanopore/Nanocavity-Based Structures as Surface-Enhanced Raman Spectroscopy (SERS) Platforms | |
WO2015146036A1 (ja) | 増強ラマン分光装置 | |
JP4054718B2 (ja) | センサ装置 | |
JP2006078438A (ja) | センサおよびそのセンサを用いる試料分析方法並びにそのセンサに用いられるセンサチップおよびその製造方法 | |
JP2005171306A (ja) | 金属微粒子層の作製方法 | |
JP5527096B2 (ja) | 電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置、および、測定部材の評価方法および測定部材の評価装置、ならびに、アナライトの検出方法およびアナライトの検出装置 | |
JP2010185738A (ja) | 被検物質濃度計測方法及び本方法を用いた被検物質濃度計測装置 | |
JP2007024869A (ja) | マルチチャンネルセンサ、センシング装置、及びセンシング方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050209 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060712 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060725 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060921 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061128 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20061205 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070123 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070220 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070221 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100302 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110302 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110302 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120302 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120302 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130302 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130302 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140302 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |