JP3923360B2 - スロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はマイクロ波帯等の電波を用いて通信を行う通信システム又はレーダー等に用いられるスロットアレーアンテナ及びこのスロットアレーアンテナを複数用いたスロットアレーアンテナ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、マイクロ波帯等の電波を用いて通信を行う通信システム又はレーダー等においては、導波管にスロットを設けて、これら導波管(放射導波管)を複数本並べてアレーアンテナとした所謂導波管スロットアレーアンテナ(以下単にスロットアレーアンテナと呼ぶ)が用いられている。そして、このようなスロットアレーアンテナとして、例えば、特開平5−48323号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
図18は従来のスロットアレーアンテナを示す構成図である。図において、1aは第1の放射導波管、1bは第2の放射導波管であり、それぞれの幅広面の幅寸法がa、奥行き寸法がbの方形導波管である。図示のスロットアレーアンテナでは、放射導波管1a,1bが交互に互いに密着して導波管軸を平行にして合計8本配列している(放射導波管1a,1bは各々4本備えられている)。放射導波管1a,1bには比誘電率εrの誘電体が充填されており、幅寸法aは自由空間波長λ0の半分より小さい。つまり、a<λ0/2となっている。また、隣り合う放射導波管1a同士の間隔、及び、隣り合う放射導波管1bの間隔(つまり、放射導波管1a,1bの幅広面の幅寸法合計の長さ)をdxとすると、dx<λ0に規定される。
【0004】
第1の放射導波管1aにおいて、前述の幅寸法aで規定される幅広面(図中正面)には、配列間隔dyで複数の放射スロット(第1の放射スロット)2aが形成されている。そして、これら放射スロット2aは、第1の放射導波管1aの管軸から同一方向に(図示の例では左方向)にずれてその中心軸(長手方向に延びる軸)を同一にして配置されている。配列間隔dyは、概ね管内波長λgに等しく、各放射スロット2aはその長手方向が第1の放射導波管1aの管軸(導波管軸)と平行となっている。同様にして、第2の放射導波管1bにおいて、前述の幅寸法aで規定される幅広面(図中正面)には、配列間隔dyで複数の放射スロット(第2の放射スロット)2bが形成されている。そして、各放射スロット2bは、その長手方向が第2の放射導波管1bの管軸と直交している。つまり、放射スロット2bは、その長手方向が、放射導波管1bの管軸を含む平面のうち上記幅広面に直交する平面と上記幅広面との交線に直交する。
【0005】
図示のように、第1の放射導波管1aは、その両端部がショート板3aで塞がれており、ショート板3aによって短絡面が規定される。同様にして、第2の放射導波管1bはその両端部がショート板3bで塞がれており、ショート板3bによって短絡面が規定される。なお、ショート板3a,3bは同一の位置に位置づけられて、ショート板3a,3bによって同一平面が規定される。
【0006】
第1の放射導波管1aには第1の給電導波管4aから電波が給電され(与えられ)、第2の放射導波管1bには第2の給電導波管4bから電波が給電される。つまり、第1の給電導波管4aは、幅寸法aで規定される幅広面の他方(図中裏面)側に形成された給電スロット5aによって第1の放射導波管1aに接続され、第2の給電導波管4bは幅寸法aで規定される幅広面の他方(図中裏面)側に形成された給電スロット5bによって第2の放射導波管1bに接続される。なお、給電導波管4a,4bは、それぞれその終端が短絡板6a,6bによって短絡されている。
【0007】
次に動作について説明する。
いま、第1の給電導波管4aに入射した電波Aは、給電スロット5aを介して第1の放射導波管1aに給電される。給電スロット5aの配列間隔dxが第1の給電導波管4aの管内波長に一致するように第1の給電導波管4aの寸法を規定し、短絡板6aが給電スロット5aから距離dx/2離れて配置されていると、全ての電波Aは、第1の放射導波管1aの各々に給電される。そして、各放射導波管1aに給電された電波Aは、第1の放射導波管1aに形成された放射スロット2aから空間に放射される。図18において、放射スロット2aは紙面に対して垂直に配置されているので(導波管軸に平行に配置されているので)、空間に放射された電波Aは水平偏波となる。
【0008】
一方、第2の給電導波管4bに入射した電波Bは、給電スロット5bを介して第2の放射導波管1bに給電される。給電スロット5bの配列間隔はdxであり、給電スロット5bの配列間隔dxが第2の給電導波管4bの管内波長に一致するように、第2の給電導波管4bの寸法を規定し、短絡板6bが給電スロット5bから距離dx/2離れていると、電波Bは第2の放射導波管1bの全てに給電される。そして、第2の放射導波管1bの各々に給電された電波Bは、第2の放射導波管1bに形成された放射スロット2bから空間に放射される。図18において、放射スロット2bは、紙面に対して水平に配置されているので(導波管軸に直交して配置されているので)、放射スロット2bから空間に放射された電波Bは垂直偏波となる。
【0009】
ところで、上述のスロットアレーアンテナにおいては、放射スロット2aは所謂シャントスロットと呼ばれるスロットであり、等価回路的には放射導波管1aの等価回路に並列なコンダクタンスとして動作する。このため、上述のスロットアレーアンテナでは、ショート板3aからの距離がλg/4の奇数倍の位置に放射スロット2aを形成しないと(つまり、図中放射スロット2aの長手方向に直交する放射スロット2aの中心軸線をショート板3aからλg/4の奇数倍の位置に位置づけないと)、アンテナとして動作しないことになる。
【0010】
一方、放射スロット2bは所謂シリーズスロットと呼ばれるスロットであり、等価回路的には放射導波管1bの等価回路に直列なインピーダンスとして動作する。このため、上述のスロットアレーアンテナでは、ショート板3bからの距離がλg/2の整数倍の位置に放射スロット2bを形成しないと(つまり、図中放射スロット2bの長手方向に延びる放射スロット2bの中心軸線をショート板3bからλg/2の整数倍の位置に位置づけないと)、アンテナとして動作しないことになる。
【0011】
従って、第1の放射導波管1aに形成された放射スロット2aと第2の放射導波管1bに形成された放射スロット2bとは、必ずλg/4だけずれた位置に形成されることになって、図18に円で囲った部分で示すように、放射スロット2aの長手方向中心軸線と放射スロット2bの長手中心軸線とは交差せず、恰も放射スロット2aと放射スロット2bはL字状の配置されることとなる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来のスロットアレーアンテナは以上のように構成されているので、放射スロット2aと放射スロット2bは恰もL字状に配置されていることから、図19に示すように、放射スロット2a上の磁流Hと放射スロット2b上の磁流Vも、非対称なL字状の配置となってしまい、磁流Vと磁流Hの間に相互結合が生じる。このような相互結合は、放射スロット2aと放射スロット2bとの間のアイソレーションを低下させることになる。このため、直交偏波間のアイソレーションが低下するなどの課題があった。そして、相互結合による電波が直交偏波用の放射スロットから再放射して、交差偏波が増大するという課題もあった。
【0013】
ところで、従来のスロットアレーアンテナでは、前述のように、誘電体を放射導波管内に充填して、配列間隔dxを自由空間波長λ0より小さくし、これによって、所謂グレーティングローブが発生しないようにしている。しかしながら、グレーティングローブがアンテナ視野外に発生することは問題とならないことを考慮すると、例えば静止衛星搭載用アンテナ(スロットアレーアンテナ)のように、視野が約±9゜と極めて小さい範囲に限られる場合には、放射導波管内に誘電体を装荷(充填)する必要はない。
【0014】
一方、グレーティングローブは放射導波管の配列間隔dxで決定され、このグレーティングローブはdx方向においてsinθ=λ0/dxで規定される角度(発生角)θで発生する。このため、グレーティングローブの発生角θを大きくするためには、配列間隔dxを小さくして、カットオフ周波数に近い条件で使う必要が生じ、導波管の損失が増加してしまうなどの課題があった。
【0015】
加えて、従来のスロットアレーアンテナは、放射導波管1a,1bの幅寸法aが等しく、しかも、放射導波管1a,1bの内部に装荷された誘電体が同一の比誘電率εrを有している。このため、放射スロット2a,2bを同一の配列間隔dyで配列するには、放射導波管1a,1bが互いに等しい周波数で使用されるように設計しなければならない。これによって、例えば衛星通信のように直交偏波の使用に当たって送信と受信とでその周波数が異なる場合には、従来のスロットアレーアンテナを用いることができないという課題もある。
【0016】
さらに、従来のスロットアレーアンテナでは、誘電体装荷によって管内波長λgが自由空間波長λ0より小さくなる。一方、放射スロット2aは、その等価回路を純コンダクタンスにみせるため、スロット長をほぼλ0/2とする必要があるが、放射スロット2aの長さをλ0/2とすると、第1の放射導波管1aに形成された放射スロット2aの間隔(放射スロット2aの端部間の距離)が小さくなる。このため、放射スロット2a同士間の相互結合が大きくなってしまうという課題があった。
【0017】
また、従来のスロットアレーアンテナでは、誘電体装荷によって幅寸法aをλ0/2より小さくしている。一方、放射スロット2bはその等価回路を純抵抗にみせるため、スロット長をほぼλ0/2とする必要がある。ところが、放射スロット2bの長さをλ0/2とすると、第2の放射導波管1bに放射スロット2bを配列することができない、つまり、従来のスロットアレーアンテナでは、放射スロット2bのスロット長をほぼλ0/2とすると、スロットアレーアンテナ自体を構成できないという課題があった。
【0018】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、直交偏波間のアイソレーションを良好にするとともに交差偏波の発生を抑圧したスロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0019】
また、この発明は、導波管損失を少なくすることのであるスロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0020】
また、この発明は、直交偏波の使用周波数が異なる際にも使用することのできるスロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0021】
また、この発明は、シャントスロットである放射スロットのスロット長が自由空間波長λ0の2分の1より短い状態においても、シャントスロットである放射スロットが等価回路的に純コンダクタンスとなるスロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0022】
また、この発明は、シリーズスロットである放射スロットのスロット長が自由空間波長λ0より2分の1より短い状態においても放射スロットが等価回路的に純抵抗となり、シリーズスロットである放射スロットを第2の放射導波管上に配列できるようにしたスロットアレーアンテナ及びスロットアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と平行にその管内波長の間隔で形成した複数の第1の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第1の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡した第1の放射導波管と、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と直交してその管内波長の間隔で形成した複数の第2の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第2の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡した第2の放射導波管とを備え、前記第1及び前記第2の放射導波管を、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットと直交し、前記スロットを形成した幅広面が同一平面となるように交互に配列し、第1及び第2の放射導波管を、第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が第1の放射スロットの長手方向の中心を通るように配列したものである。
【0025】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅と、第2の放射導波管において第2の放射スロットが形成された幅広面の幅とが互いに異なることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、第1及び第2の放射導波管に誘電体を装荷したものである。
【0027】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、第1及び第2の放射導波管に装荷された各誘電体は、その比誘電率が互いに異なるものである。
【0028】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅を自由空間波長の1/2未満とすると共に、互いに隣接する前記第1及び第2の放射導波管の間隔を前記自由空間波長未満としたものである。
【0029】
この発明に係るスロットアレーアンテナは、第1の放射導波管内又は第2の放射導波管内に、第1の放射スロット又は第2の放射スロットにおける共振周波数を調整する共振周波数調整部材を装荷したものである。
【0030】
この発明に係るスロットアレーアンテナ装置は、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と平行にその管内波長の間隔で形成した複数の第1の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第1の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡した第1の放射導波管と、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と直交してその管内波長の間隔で形成した複数の第2の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第2の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡した第2の放射導波管とを備え、前記第1及び前記第2の放射導波管を、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットと直交し、前記スロットを形成した幅広面が同一平面となるように交互に配列するとともに、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットの長手方向の中心を通るように配列したスロットアレーアンテナを、第1及び第2のスロットアレーアンテナとして備え、前記第1及び前記第2のスロットアレーアンテナを、前記第1のスロットアレーアンテナを構成する前記第1の放射導波管の管軸と、前記第2のスロットアレーアンテナを構成する前記第2の放射導波管の管軸とが一致するように配列させたものである。
【0031】
この発明に係るスロットアレーアンテナ装置は、第1及び第2のスロットアレーアンテナをそれぞれ複数備え、前記第1及び前記第2のスロットアレーアンテナを管軸方向に交互に配列させたものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるスロットアレーアンテナの構成を示す斜視図であり、図2はこの発明の実施の形態1によるスロットアレーアンテナを正面から透視して示す図である。図において、11aは第1の放射導波管、11bは第2の放射導波管であり、それぞれの幅広面の幅寸法がa、奥行き寸法がbの方形導波管である。図示のスロットアレーアンテナでは、放射導波管11a,11bが交互に互いに密着して導波管軸を平行にして合計8本配列されている(放射導波管11a,11bは、各々4本備えられている)。なお、図1及び図2において、図18と同様に、幅寸法aは自由空間波長λ0の半分より小さい。つまり、a<λ0/2となっている。また、隣り合う放射導波管11a同士の間隔、及び、隣り合う放射導波管11bの間隔(つまり、放射導波管11a,11bの幅広面の幅寸法合計の長さ)をdxとし、dx<λ0とする。
【0033】
第1の放射導波管11aにおいて、前述の幅寸法aで規定される幅広面(図中正面)には、配列間隔dyで複数の放射スロット(第1の放射スロット)21aが形成されている。放射スロット21aは、放射導波管11aの管軸を含む平面のうち上記幅広面に直交する平面と上記幅広面との交線に対して同一方向にずれて配置されている。つまり、放射スロット21aは、図2中の放射導波管11aの幅広面の左側方向に管軸からずれて配置される。また、複数の放射スロット21aは管軸方向に沿ってそれぞれ配置される。配列間隔dyは、管内波長λgに等しく、各放射スロット21aはその長手方向が第1の放射導波管11aの管軸(導波管軸)と平行になっている。
【0034】
同様にして、第2の放射導波管11bにおいて、前述の幅寸法aで規定される幅広面(図中正面)には、配列間隔dyで複数の放射スロット(第2の放射スロット)21bが形成されている。そして、各放射スロット21bは、その長手方向が、放射導波管11bの管軸を含む平面のうち上記幅広面に直交する平面と上記幅広面との交線に直交する。この結果、図1及び図2に示すように、放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線は、放射スロット21aと直交することになる。これにより、放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線は、放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交する。
【0035】
図示のように、第1の放射導波管11aはその両端部がショート板31aで塞がれており、このショート板31aは第1の放射導波管11aの両端側(図1及び図2において最上側及び最下側)に位置する放射スロット21aの中心からdy/4(つまり、λg/4)離れた位置に配置される。そして、ショート板31aによって短絡面が規定される。同様にして、第2の放射導波管11bはその両端部がショート板31bで塞がれており、このショート板31bは第2の放射導波管11bの両端側(図1及び図2において最上側及び最下側)に位置する放射スロット21bの長手方向中心軸線からdy/2(つまり、λg/2)離れた位置に配置される。
【0036】
そして、ショート板31bによって短絡面が規定される。第1の放射導波管11aには第1の給電導波管41aから電波が給電され、第2の放射導波管11bには第2の給電導波管41bから電波が給電される。つまり、第1の給電導波管41aは、幅寸法aで規定される幅広面の他方(図中裏面)側に形成された給電スロット51aによって第1の放射導波管11aに接続される。また、第2の給電導波管41bは、幅寸法aで規定される幅広面の他方(図中裏面)側に形成された給電スロット51bによって第2の放射導波管11bに接続される。なお、給電導波管41a,41bは、それぞれその終端が短絡板61a,61bによって短絡されている。
【0037】
次に動作について説明する。
いま、第1の給電導波管41aに入射した電波Aは、給電スロット51aを介して第1の放射導波管11aに給電される。給電スロット51aの配列間隔dxが第1の給電導波管41aの管内波長に一致するように第1の給電導波管41aの寸法を規定し、短絡板61aが給電スロット51aから距離dx/2離れて配置されていると、給電導波管41aからの全ての電波Aが、第1の放射導波管11aの各々に給電される。そして、各放射導波管11aに給電された電波Aは、各放射導波管11aに形成された放射スロット21aから空間に放射される。図1及び図2において、放射スロット21aは、紙面に対して垂直に配置されているので(導波管軸に平行に配置されているので)、空間に放射された電波Aは水平偏波となる。
【0038】
一方、第2の給電導波管41bに入射した電波Bは、給電スロット51bを介して第2の放射導波管11bに給電される。給電スロット51bの配列間隔dxが第2の給電導波管41bの管内波長に一致するように第2の給電導波管41bの寸法を規定し、短絡板61bが給電スロット51bから距離dx/2離れて配置されていると、給電導波管41bからの全ての電波Bは、各放射導波管11bに給電される。そして、第2の放射導波管11bの各々に給電された電波Bは、第2の放射導波管11bに形成された放射スロット21bから空間に放射される。図1及び図2において、放射スロット21bは紙面に対して水平に配置されているので(導波管軸に直交して配置されているので)、空間に放射された電波Bは垂直偏波となる。
【0039】
ここで、図3を参照して、前述のように、放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線は、放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交する位置関係にあるから、放射スロット21b上の磁流V(の延長線)が放射スロット21a上の磁流Hとその中心で直交する位置関係となって、磁流Vに対して磁流Hは対称な位置関係に置かれたことになる。つまり、磁流Vから磁流Hの始点及び終点までの距離が等しくなり、磁流Vと磁流Hとの間には相互結合が生じない。このため、放射スロット21aと放射スロット21bとの間を電磁的にアイソレートされた状態とすることができる。さらに、磁流Vと磁流Hとの間に相互結合がないので、相互結合した電波が直交偏波の放射スロットから再放射されることがなく、良好な交差偏波特性を得ることができる。
【0040】
なお、放射導波管11a,11b、そして、給電導波管41a,41bの材質については,金属又は金属メッキを施した誘電体などとすればよく、いずれにしても、電気的に方形導波管として機能すれば、材質は問わない。
【0041】
図1及び図2に示す例において、第1の放射導波管11aに形成された放射スロット21aを、全て放射導波管11aの管軸に対して同一の方向(図2において、左方向)にずらして、その長手方向中心軸が同一となるように配置したが、ずらす方向は全ての放射スロット21aについて同一である必要はなく、逆方向にずらすようにしてもよい(例えば、管軸に対して図中右方向にずらすようにしてもよい)。いずれにしても、第2の放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線が第1の放射スロット21aの中心を通って第1の放射スロット21aと直交する位置関係とすればよく、放射スロット21aを管軸に対してずらす方向は問わない。
【0042】
ところで、第1の放射導波管11aの管軸と平行に配置される放射スロット21aの管軸からのずれ量が大きくなる程、放射される電波強度が強くなる。そして、ずらす方向を変えることによって、放射する電波の位相が180°反転する(つまり、逆位相となる)。このようにして、管軸に対してずらす方向を変えることによって放射される電波の位相が逆位相となるから、例えば給電スロットの配置関係に起因して、第1の放射導波管11aに給電された電波の位相が逆転するような際には、放射スロット21aをずらす方向を変えれば、電波の位相を再び同一の位相とすることができる。
【0043】
さらに、放射パターンを成形して所謂成形ビームを生成する際には、位相が反転した電波を放射する放射スロット21aが必要となるが、この際にも、放射スロット21aの管軸に対するずらす方向を放射特性に応じて決定すれば、所望の成形ビームを生成することができる(つまり、目的に応じて、放射スロット21aの管軸に対してずらす方向を各放射スロット21aについて適宜決定するようにしてもよく、ずらし量を各放射スロット21a毎に決定して、電波強度を変化させるようにしてもよい)。
【0044】
また、図1及び図2に示す例では、第2の放射導波管11bに形成された放射スロット21bは、第2の放射導波管11bの管軸上に放射スロット21bの中心が位置するように配置されているが、放射スロット21bの中心を管軸の左側又は右側にずらすようにしてもよい。いずれにしても、放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線が放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交する位置関係とすればよく、放射スロット21bの中心を管軸に対してずらしても何等問題はない。
【0045】
ところで、放射スロット21bの中心を管軸からずらした際には、そのずれ量が大きくなる程、放射される電波強度が弱くなる(つまり、ずらし量に応じて放射される電波強度を制御することができることになる)。そして、サイドローブの低減及び/又は上述の成形ビームの生成を行うために、アンテナ全体から空間に放射される電波のアンテナ開口面上の強度分布を変化させる際、放射スロット21bの中心を管軸からずらして電波強度を制御調整することなる(つまり、目的に応じて、放射スロット21bの管軸に対するずらし方向を、各放射スロット21aについて適宜決定するようにしてもよい)。
【0046】
なお、図1及び図2に示す例では、放射導波管11a,11bにはそれぞれ1つの給電スロット51a及び給電スロット51bから給電が行われているが、複数の第1の放射導波管11aを、管軸を同一として連結するとともに、複数の第2の放射導波管11bを、管軸を同一として連結し、各第1の放射導波管11a及び各第2の放射導波管11bに対してそれぞれ給電スロットから給電を行うようにしてもよい。この際においても、放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線が放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交する位置関係とされる。
【0047】
また、図1及び図2に示す例では、給電導波管41a,41bを用いてそれぞれ放射導波管11a,11bに給電を行う例について説明したが、給電導波管41a,41bの代わりに、例えば同軸プローブを用いるようにしてもよい。同軸プローブを用いる際には、放射導波管11a,11bの幅広面から同軸プローブの内導体を、放射導波管11a,11bに差し込み、電界結合によって給電を行う。さらに、放射導波管11a,11bの側壁又は短絡面から同軸プローブの内導体を放射導波管11a及び11bに差し込んで、この内導体を放射導波管内で、ループ状に曲げ、その先端を側壁又は短絡面にショートして、磁界結合によって給電を行うようしてもよい。
【0048】
以上のように、この実施の形態1によれば、第2の放射導波管11bに形成された放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線が第1の放射導波管11aに形成された放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交するので、直交偏波間のアイソレーションを良好にするとともに交差偏波の発生を抑圧することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態1では、放射導波管11aの幅広面にその管軸と平行に管内波長の間隔で第1の放射スロット21aを形成し、放射導波管11aの端部に位置する第1の放射スロット21aの中心から管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡しており、放射導波管11bの幅広面にその管軸と直交して管内波長の間隔で第2の放射スロット21bを形成し、放射導波管11bの端部に位置する第2の放射スロット21bの中心から管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡する例を示したが、上記管内波長、上記1/2管内波長、及び上記1/4管内波長としては、本発明の効果が得られる範囲内で規定されていればよい。
つまり、本発明の効果が得られる程度であれば、放射導波管11aの幅広面にその管軸と平行に概ね管内波長の間隔で第1の放射スロット21aを形成し、放射導波管11aの端部に位置する第1の放射スロット21aの中心から管軸方向に概ね1/4管内波長離れた位置で短絡してもよい。また、放射導波管11bの幅広面にその管軸と直交して概ね管内波長の間隔で第2の放射スロット21bを形成し、放射導波管11bの端部に位置する第2の放射スロット21bの中心から管軸方向に概ね1/2管内波長離れた位置で短絡してもよい。
このように、本発明は、上述したような放射導波管の管内波長の中心周波数で規定される位置関係のみでなく、上記管内波長として本発明の効果が得られる程度の周波数範囲で規定される位置関係での構成も含むものとする。これは、以降の実施の形態で述べる位置関係についても同様である。
【0050】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2によるスロットアレーアンテナの構成を示す図である。図において、放射導波管11aの幅広面の幅寸法がa1とされ、放射導波管11bの幅広面の幅寸法がa2とされている(つまり、放射導波管11a,11bは、それぞれの幅広めの幅寸法が異なっている)。図示の例では、a1<a2<λ0/2である。図1で説明したように、第2の放射導波管11bに形成された放射スロット21bの長手方向に延びる中心軸線は、第1の放射導波管11aに形成された放射スロット21aの中心を通って放射スロット21aと直交する位置関係にあり、放射スロット21a,21bの配列間隔はdyとされる(dy=λg)。なお、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。
【0051】
いま、第1の放射導波管11aについては、その使用周波数をf1、第2の放射導波管11bについては、その使用周波数をf2とすると、dy=λgとするためには、f1>f2となるように使用周波数が設定されることになる。つまり、図4に示すスロットアレーアンテナは、直交偏波でかつ,使用周波数が異なる通信に用いられることになる。
【0052】
以上のように、この実施の形態2によれば、放射導波管11a,11bの幅広面の幅寸法を異ならせて、しかも、放射スロット21a,21bの配列間隔dy=λgと規定したから、放射導波管11a,11bで使用する周波数を異ならせることができる。
【0053】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3によるスロットアレーアンテナの構成を示す図である。図において、放射導波管11a,11b内に比誘電率εr1の誘電体が装荷されており(なお、ここでは、給電導波管41a,41bにそれぞれ比誘電率εr3の誘電体が装荷されている)、放射導波管11a,11bの幅広面の幅寸法aがa<λ0/2(λ0:自由空間波長)に規定されるとともに、隣り合う第1の放射導波管11a同士(又は第2の放射導波管11b同士)の間隔dxがdx<λ0に規定される。なお、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。
【0054】
ところで、スロットアレーアンテナからアンテナ正面に主ビームが放射されているとすると、前述のように、dx>λgとされるから、グレーティングローブは主ビームから間隔λ0/dxに対応する角度に発生することになるが、上述のように、幅寸法をa<λ0/2に規定するとともに、間隔dxをdx<λ0に規定しているから、グレーティングローブの発生を防止することができることになる。
【0055】
さらに、放射導波管11a,11b内に比誘電率εr1の誘電体が装荷されているから、放射導波管内の波長が短くなって、必然的にアンテナを小型化できることになる。なお、給電導波管41a,41bにも誘電体を装荷すれば、さらに、アンテナを小型化できる。
【0056】
なお、放射導波管11a,11bに誘電体を装荷する際には、例えば図6(a)に示すように、第1の放射導波管11a(及び第2の放射導波管11b)の断面全てを満たすように誘電体11を装荷するようにしてもよいし、図6(b)及び(c)に示すように、第1の放射導波管11a(及び第2の放射導波管11b)の断面の一部分に誘電体11を装荷するようにしてもよい。いずれにしても、放射導波管11a及び11b内に誘電体を装荷すれば、放射導波管内の波長が短くなって、アンテナを小型化することができる。
【0057】
また、図7に示すように、図4で説明したスロットアレーアンテナにおいて、放射導波管11a,11bに比誘電率εr1の誘電体を装荷し、給電導波管41a,41bに比誘電率εr3の誘電体を装荷するようにしてもよい(放射導波管11a,11bにのみ誘電体を装荷するようにしてもよい)。このようにして、放射導波管及び/又は給電導波管に誘電体を装荷するようにすれば、アンテナ自体を小型化することができる。
【0058】
ところで、一般に、給電導波管41a,41bに形成される給電スロットは、給電導波管の管内波長の1/2の整数倍としなければならず、このため、εr1≠εr3とされる。一方、前述の配列間隔dxが給電導波管の管内波長の1/2の整数倍となる条件下では、εr1=εr3となる。
【0059】
この際、図8に示すように、第1の放射導波管11aには比誘電率εr1の誘電体を装荷し、第2の放射導波管11bには比誘電率εr2の誘電体を装荷するようにしてもよい。そして、第1の給電導波管41aには比誘電率εr3の誘電体を装荷し、第2の給電導波管41bには比誘電率εr4の誘電体を装荷する。ただし、εr1≠εr2、εr1≠εr4とされる。このようにして、アンテナ自体を小型化するとともに、放射導波管11a,11bの管内波長をさらに異ならせて、その使用周波数を変化させてもよい。
【0060】
さらに、図9に示すように、図5で説明したスロットアレーアンテナにおいて、第1の放射導波管11aに比誘電率εr1の誘電体を装荷し、第2の放射導波管11bに比誘電率εr2の誘電体を装荷するようにしてもよい。このようにすれば、放射導波管11a,11bの管内波長が異なる結果、その使用周波数を異ならせることができる。この際、給電導波管41a,41bにそれぞれ比誘電率εr3,εr4の誘電体を装荷するようにしてもよい。この際、εr1≠εr3、εr2≠εr4とされる。
【0061】
以上のように、この実施の形態3によれば、第1及び第2の放射導波管の幅寸法をλ0/2未満に規定すると共に、隣り合う第1の放射導波管(又は第2の放射導波管)の間隔をλ0未満に規定するので、グレーティングローブの発生を防止することができる。
【0062】
加えて、この実施の形態3によれば、第1及び第2の放射導波管内に誘電体を装荷するので、放射導波管内の波長が短くなってアンテナを小型化することができる。
【0063】
また、この実施の形態3によれば、第1及び第2の放射導波管内にそれぞれ比誘電率が異なる誘電体を装荷するので、その使用周波数を異ならせることができる。
【0064】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナにおける放射スロットを示す斜視図である。図において、第1の放射導波管11a内には2つの容量性アイリス(容量性部材)71a,71bが配置されており、これら容量性アイリス71a,71bはそれぞれ放射スロット21aの端部に位置づけられるように、第1の放射導波管11aの内壁面(図中内下壁面)に管軸に直交して配置されている。つまり、容量性アイリス71aは、放射スロット21aの上側端部に位置づけられ、容量性アイリス71bは放射スロット21aの下側端部に位置づけられている。このようにして、容量性アイリス71a,71bを配置すると、シャントスロットである放射スロット21aのスロット長が自由空間波長λ0の2分の1より短い状態においても、放射スロット21aが等価回路的に純コンダクタンスとなる。そして、容量性アイリス71a,71bによって放射スロット21aにおける共振周波数が調整されて、例えば放射スロット21aの長さがλ0/2よりも短い場合においても、放射スロット21aを共振させることができる。なお、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。
【0065】
図に示す例では、2つの容量性アイリス71a,71bを配置したが、1つ又は3つ以上の容量性アイリスを配置するようにしても、放射スロット21aと容量性アイリスとによるインピーダンス特性は変化するものの、放射スロット21aの長さがλ0/2よりも短い場合でも、放射スロット21aを共振させることができる。
【0066】
図11では、図10で説明した容量性アイリス71a,71bの代わりに、誘導性アイリス(誘導性部材)81aが用いられる。図示の例では、誘導性アイリス81aは放射スロット21aの略中央部を通って管軸に直交する方向に延びる線分の下側に配置されている。このようにして、誘導性アイリス81aを配置すると、誘導性アイリス81aによって放射スロット21aにおける共振周波数が調整されて、例えば放射スロット21aの長さがλ0/2よりも短い場合においても、放射スロット21aを共振させることができる。
【0067】
図12では、図11で説明した誘導性アイリス81aの代わりに、誘導性ポスト91a,91bが、放射スロット21aの略中央部を通って管軸に直交する方向に延びる線分の下側に配置されている。このような誘導性ポスト(誘導性部材)91a,91bを用いても、放射スロット21aにおける共振周波数を調整することができる。
【0068】
ところで、図13に示すように、第2の放射導波管11b内に容量性アイリス72aを配置するようにしてもよい。容量性アイリス72aは放射スロット21bに沿ってその下側に配置されている。このようにして、容量性アイリス72aを配置すると、シリーズスロットである放射スロット21bのスロット長が自由空間波長λ0より2分の1より短い状態においても、放射スロット21bが等価回路的に純抵抗となり、放射スロット21bを第2の放射導波管11b上に配列できることになる。そして、容量性アイリス72aによって放射スロット21bにおける共振周波数が調整されて、例えば放射スロット21bの長さがλ0/2よりも短い場合においても、放射スロット21bを共振させることができる。
【0069】
さらに、図14に示すように、容量性アイリス72aの代わりに、誘導性アイリス82a〜82dを用いるようにしてもよい。図示の例では、誘導性アイリスが放射スロット21bの両端部にそれぞれ2つずつ位置づけられて、合計4つの誘導性アイリス82a〜82dがその側壁に配置されている。このようにして、誘導性アイリス82a〜82dを配置すると、誘導性アイリス81a〜82dによって放射スロット21bにおける共振周波数が調整されて、例えば、放射スロット21bの長さがλ0/2よりも短い場合においても、放射スロット21bを共振させることができる。
【0070】
なお、図14においては、4つの誘導性アイリス82a〜82dを配置したが、放射スロット21bの一端部にのみ2つの誘導性アイリスを位置づけるようにしてもよい。この際においても、放射スロット21bの長さがλ0/2よりも短い場合でも、放射スロット21bを共振させることができる。
【0071】
さらに、図15に示すように、誘導性アイリス82a〜82dの代わりに、誘導性ポスト92a〜92dを用いるようにしてもよい。
【0072】
以上のように、この実施の形態4によれば、容量性アイリス(又は容量性ポスト)又は誘導性アイリス(又は誘導性ポスト)を放射導波管内に配置するので、放射スロットにおける共振周波数を調整することができる。
【0073】
実施の形態5.
図16はこの発明の実施の形態5によるスロットアレーアンテナ装置の構成を示す正面図である。ここでは、図1に示すスロットアレーアンテナを二つ用いてスロットアレーアンテナ装置が構成されている。つまり、図に示すスロットアレーアンテナ装置はスロットアレーアンテナ22,23を備えている。
【0074】
図に示すように、第1のスロットアレーアンテナ22は、その第1の放射導波管11aの管軸が第2のスロットアレーアンテナ23の第2の放射導波管11bの管軸と一致するように、第2のスロットアレーアンテナ23に隣接して管軸方向配列されている。なお、図に示すように、スロットアンテナ装置が3次元座標(座標軸X、Y、及びZ)の原点に位置するものとすると、空間の一点は極座標(θ,φ)で表される。
【0075】
図17は図1に示すスロットアレーアンテナ(つまり、第1又は第2のスロットアレーアンテナ22又は23)から空間に放射される電波の主ビーム及びグレーティングローブの発生方向を表すとともに、図16に示すスロットアレーアンテナ装置から空間に放射される電波の主ビーム及びグレーティングローブの発生方向を示す図である。
【0076】
図17において、Tx軸及びTy軸はそれぞれ図16中に示した角度θ,φに対してsinθcosφ成分及びsinθsinφ成分を表す。図17においては、上述したスロットアレーアンテナ22,23において、放射スロット21a及び放射スロット21bの配置条件から定まる主ローブ及びグレーティングローブの発生方向をTx−Ty平面上に表している。
【0077】
ここで、図16に示すように、スロットアレーアンテナ22,23において、放射導波管11a,11bの配列間隔をDx=dx/2(管軸間の間隔(X軸方向)をDx=dx/2)、スロットアレーアンテナ22,23の配列間隔(Y軸方向において、第1のスロットアレーアンテナ22の中心と第2のスロットアレーアンテナ23の中心との間隔)をDyとすると、前述したように、dx(互いに隣り合う放射導波管11a及び11bの間隔)>λg(管内波長)であるから、スロットアレーアンテナ22又は23からアンテナ正面(θ=0°)に主ビームが放射されている場合(つまり、スロットアレーアンテナからアンテナ正面(θ=0°)に主ビームが放射されている場合)、図17に示すように、主ビームからTx軸上の間隔λ0(自由空間波長)/(2Dx)に対応する角度(φ=0°,θ≦90°)でグレーティングローブが発生する(図17において白丸印で示す)。
【0078】
一方、図16に示すスロットアレーアンテナ装置では、前述のように、第1のスロットアレーアンテナ22の第1の放射導波管11aの管軸が第2のスロットアレーアンテナ23の第2の放射導波管11bの管軸と一致するように配置されているから、つまり、同一の偏波の放射導波管が恰もジグザグに配置されていることになるから、グレーティングローブの発生位置は、Tx軸上から±Ty方向にλ0/(2Dy)だけ離れた位置となる(図17において黒丸印で示す)。この結果、主ビームとグレーティングローブとの距離はスロットアレーアンテナ22又は23のみを用いた場合に比べて、図16に示すスロットアレーアンテナ装置の方が大きくなる。
【0079】
いま、グレーティングローブの発生角度をθgとすると,図17において、主ビームとグレーティングローブとの距離はsinθgで表され、図16に示すスロットアレーアンテナ装置では、スロットアレーアンテナ22又は23(つまり、図1に示すスロットアレーアンテナ)に比べて、グレーティングローブの発生角をより広角とできることがわかる。放射スロット21a又は21bの放射パターンは広角になる程、その放射量が小さくなり、図16に示すスロットアレーアンテナ装置では、グレーティングローブのレベルを図1に示すスロットアレーアンテナに比べて抑圧することができる。
【0080】
さらに、同一の発生角度θgでグレーティングローブを発生させるとすると、配列間隔Dx、つまり、放射導波管11a,11bの幅寸法aを大きくすることができることになり、その結果、導波管損失を小さくすることができる。
【0081】
なお、図16に示す例では、スロットアレーアンテナ22,23をY軸方向に配列した例を示したが、同様にして、複数の第1及び第2のスロットアレーアンテナを準備して、Y軸方向に第1及び第2のスロットアレーアンテナを交互に配置することにしてもよい。この際においても、図17で説明したように、グレーティングローブレベルの抑圧又は導波管損失の低減を行うことができる。
【0082】
また、スロットアレーアンテナ22,23として、上記実施の形態1〜4で説明したスロットアレーアンテナを用いるようにすればよい。
【0083】
以上のように、この実施の形態5によれば、第1及び第2のスロットアレーアンテナを用いて、第1のスロットアレーアンテナを構成する第1の放射導波管の管軸と第2のスロットアレーアンテナを構成する第2の放射導波管の管軸とを一致させるので、グレーティングローブの発生角を広角にすることができ、その結果、実質的にグレーティングローブを抑圧できる。また、グレーティングローブの発生角が同一であれば、導波管損失を少なくすることができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と平行にその管内波長の間隔で形成した複数の第1の放射スロットを有し、方形導波管の端部に位置する第1の放射スロットの中心から管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡した第1の放射導波管と、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と直交してその管内波長の間隔で形成した複数の第2の放射スロットを有し、方形導波管の端部に位置する第2の放射スロットの中心から管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡した第2の放射導波管とを備え、第1及び第2の放射導波管を、第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が第1の放射スロットと直交し、スロットを形成した幅広面が同一平面となるように交互に配列したので、第1及び第2の放射スロット間の相互結合がなくなって、直交偏波間のアイソレーションが良好となり、交差偏波の発生を抑圧することができるという効果がある。
【0085】
この発明によれば、第1及び第2の放射導波管を、第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が第1の放射スロットの長手方向の中心を通るように配列したので、さらに直交偏波間のアイソレーションが良好となるという効果がある。
【0086】
この発明によれば、第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅と、第2の放射導波管において第2の放射スロットが形成された幅広面の幅とが互いに異なるので、直交偏波において、その使用周波数が異なる際においても使用することができるという効果がある。
【0087】
この発明によれば、第1及び第2の放射導波管に誘電体を装荷するので、アンテナ自体を小形化することができるという効果がある。
【0088】
この発明によれば、第1及び第2の放射導波管に装荷された誘電体について、その比誘電率が互いに異なるように構成したので、アンテナ自体を小形化できるばかりでなく、直交偏波において、その使用周波数が異なる際においても使用できるという効果がある。
【0089】
この発明によれば、第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅を自由空間波長の1/2未満とすると共に、互いに隣接する第1及び第2の放射導波管の間隔を自由空間波長未満としたので、グレーティングローブの発生を防止できるという効果がある。
【0090】
この発明によれば、第1の放射導波管内に、第1の放射スロットにおける共振周波数を調整する共振周波数調整部材を装荷したので、シャントスロットである第1の放射スロットのスロット長が自由空間波長の2分の1より短い状態においても、第1の放射スロットを等価回路的に純コンダクタンスとすることができる。この結果、共振周波数を調整することできるという効果ある。
【0091】
この発明によれば、第2の放射導波管内に、第2の放射スロットにおける共振周波数を調整する共振周波数調整部材を装荷したので、シリーズスロットである第2の放射スロットのスロット長が自由空間波長の2分の1より短い状態においても、第2の放射スロットを等価回路的に純抵抗とすることができ、第2の放射スロットを第2の放射導波管上に配列して、共振周波数を調整することできるという効果ある。
【0092】
この発明によれば、第1及び第2のスロットアレーアンテナを用いて、第1のスロットアレーアンテナを構成する第1の放射導波管の管軸と第2のスロットアレーアンテナを構成する第2の放射導波管の管軸とを一致させて第1及び第2のスロットアレーアンテナを配列するので、グレーティングローブの発生角を広角にすることができ、その結果、実質的にグレーティングローブを抑圧することができるという効果がある。さらに、グレーティングローブの発生角が同一であれば、導波管損失を少なくすることができるという効果もある。
【0093】
この発明によれば、第1及び第2のスロットアレーアンテナをそれぞれ複数備えて、第1及び第2のスロットアレーアンテナを管軸方向に交互に配列するので、複数の第1及び第2のスロットアレーアンテナを備える際においても、グレーティングローブの発生を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるスロットアレーアンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】 図1に示すスロットアレーアンテナを一部透視して示す正面図である。
【図3】 図1に示すスロットアレーアンテナにおいて放射スロットに生じる磁流の関係を説明するための図である。
【図4】 この発明の実施の形態2によるスロットアレーアンテナの構成を示す斜視図である。
【図5】 この発明の実施の形態3によるスロットアレーアンテナの構成の一例を示す斜視図である。
【図6】 図5に示すスロットアレーアンテナにおける誘電体装荷を説明するための断面図であり、(a)は第1の例を示す断面図、(b)は第2の例を示す断面図、(c)は第3の例を示す断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態3によるスロットアレーアンテナの構成の他の例を示す斜視図である。
【図8】 この発明の実施の形態3によるスロットアレーアンテナの構成のさらに他の例を示す斜視図である。
【図9】 この発明の実施の形態3によるスロットアレーアンテナの構成のさらに他の例を示す斜視図である。
【図10】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる容量性アイリスの装荷の一例について示す斜視図である。
【図11】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる誘導性アイリスの装荷の一例について示す斜視図である。
【図12】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる誘導性ポストの装荷の一例について示す斜視図である。
【図13】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる容量性アイリスの装荷の他の例について示す斜視図である。
【図14】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる誘導性アイリスの装荷の他の例について示す斜視図である。
【図15】 この発明の実施の形態4によるスロットアレーアンテナで用いられる誘導性ポストの装荷の他の例について示す斜視図である。
【図16】 この発明の実施の形態5によるスロットアレーアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図17】 図16に示すスロットアレーアンテナ装置及び図1に示すスロットアレーアンテナに関してグレーティングローブを説明するための図である。
【図18】 従来のスロットアレーアンテナの構成を示す斜視図である。
【図19】 図18に示すスロットアレーアンテナにおいて放射スロットに生じる磁流の関係を説明するための図である。
【符号の説明】
11a,11b 放射導波管、21a,21b 放射スロット、31a,31b,ショート板(短絡面)、41a,41b 給電導波管、51a,51b 給電スロット、61a,61b ショート板(短絡面)、71a,71b,72a容量性アイリス、81a,82a〜81d 誘導性アイリス、91a,91b,92a〜92d 誘導性ポスト。
Claims (8)
- 方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と平行にその管内波長の間隔で形成した複数の第1の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第1の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡した第1の放射導波管と、
方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と直交してその管内波長の間隔で形成した複数の第2の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第2の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡した第2の放射導波管とを備え、
前記第1及び前記第2の放射導波管を、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットと直交し、前記スロットを形成した幅広面が同一平面となるように交互に配列するとともに、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットの長手方向の中心を通るように配列したことを特徴とするスロットアレーアンテナ。 - 第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅と、第2の放射導波管において第2の放射スロットが形成された幅広面の幅とが互いに異なることを特徴とする請求項1記載のスロットアレーアンテナ。
- 第1及び第2の放射導波管に誘電体を装荷したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットアレーアンテナ。
- 第1及び第2の放射導波管に装荷された各誘電体は、その比誘電率が互いに異なることを特徴とする請求項3記載のスロットアレーアンテナ。
- 第1の放射導波管において第1の放射スロットが形成された幅広面の幅を自由空間波長の1/2未満とすると共に、互いに隣接する前記第1及び第2の放射導波管の間隔を前記自由空間波長未満としたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のスロットアレーアンテナ。
- 第1の放射導波管内又は第2の放射導波管内に、第1の放射スロット又は第2の放射スロットにおける共振周波数を調整する共振周波数調整部材を装荷したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットアレーアンテナ。
- 方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と平行にその管内波長の間隔で形成した複数の第1の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第1の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/4管内波長離れた位置で短絡した第1の放射導波管と、方形導波管の幅広面に当該導波管の管軸と直交してその管内波長の間隔で形成した複数の第2の放射スロットを有し、前記方形導波管の端部に位置する前記第2の放射スロットの中心から前記管軸方向に1/2管内波長離れた位置で短絡した第2の放射導波管とを備え、前記第1及び前記第2の放射導波管を、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットと直交し、前記スロットを形成した幅広面が同一平面となるように交互に配列するとともに、前記第2の放射スロットの長手方向に沿った延長線が前記第1の放射スロットの長手方向の中心を通るように配列したスロットアレーアンテナを、第1及び第2のスロットアレーアンテナとして備え、
前記第1及び前記第2のスロットアレーアンテナを、前記第1のスロットアレーアンテナを構成する前記第1の放射導波管の管軸と、前記第2のスロットアレーアンテナを構成する前記第2の放射導波管の管軸とが一致するように配列させたスロットアレーアンテナ装置。 - 第1及び第2のスロットアレーアンテナをそれぞれ複数備え、前記第1及び前記第2のスロットアレーアンテナを管軸方向に交互に配列させたことを特徴とする請求項7記載のスロットアレーアンテナ装置。
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