JP3922754B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランデル型鉄心の隣合う爪状磁極間に磁石が配設された車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ランデル型鉄心に界磁巻線を巻装して界磁回転子とする交流発電機がある。この交流発電機では、ランデル型鉄心の周方向に隣合う爪状磁極間に永久磁石を配設し、その隣合う爪状磁極間の漏洩磁束を減らして発電に寄与する有効磁束を増量させることにより出力向上を図る技術が提案されている(例えば、特開昭61−85045号公報、特開平5−56616号公報参照)。また、この磁石併用型の回転子では、図8に示す様に、爪状磁極100の側面外周部に鍔部110を設けることにより、高速回転時の遠心力によって永久磁石120が外側へ飛び出すのを防止する対策もなされている(特開平7−123664号公報参照)。なお、鍔部110は、爪状磁極100の長手方向(図8の上下方向)全体に渡って根元側から先端側まで略同一幅に設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、回転子が高速回転すると、爪状磁極100が遠心力の作用で根元部を支点として外径側へ拡がることが知られている。この時、爪状磁極100に鍔部110を有する磁石併用型回転子では、永久磁石120の重量が鍔部110を通じて爪状磁極100に加味された状態で遠心力が加わる。その結果、永久磁石120を併用しない回転子と比べると、爪状磁極100に加わる遠心力が増大して爪状磁極100の拡がりが大きくなるため、永久磁石120を併用しない回転子と同等の高速回転性を得ることは困難であった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、爪状磁極の耐遠心力を向上させて高速回転に耐え得る回転子を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の手段によれば、磁石の外周面に当接する鍔部の面積が、爪状磁極の先端側より根元側の方が大きく設けられている。遠心力により爪状磁極が根元部を支点として外径側へ拡がる場合、先端側より根元側の方が拡がり量が小さいため、爪状磁極の拡がりに伴って、磁石は主に鍔部の根元側で保持されることになる。即ち、遠心力により爪状磁極が拡がると、磁石の重量を殆ど爪状磁極の根元側鍔部で受けることになるため、根元側の鍔部に対して先端側の鍔部の面積を相対的に小さくすることが可能である。これにより、爪状磁極の根元側に比べ遠心力により生じるモーメント荷重に大きな影響を与え、且つ拡がり量も大きい先端側の重量を根元側の重量と比較して相対的に低減できることから、爪状磁極の耐遠心力が向上する。
【0005】
請求項2の手段によれば、鍔部は、爪状磁極の軸方向中心位置から根元側の範囲のみに形成されている。形状が複雑で、且つ磁石との当接面に高精度な平面度が要求される鍔部を爪状磁極の根元側のみに形成するため、爪状磁極を形成するための型構造を簡素化できる。その結果、型寿命を向上できるとともに、大幅な生産性向上、及びコストダウンが可能となる。
また、爪状磁極の先端側に鍔部を形成しないことで爪状磁極の先端側重量を低減できるため、爪状磁極の耐遠心力が向上する。更に、爪状磁極の根元側に比べて剛性が低い先端側に鍔部を形成しないことにより、高速回転時に生じる鍔部のびびりによる磁気音が大幅に低下する。
【0006】
請求項3の手段によれば、鍔部は、爪状磁極の先端側から根元側へ向かって次第に面積が大きくなる略三角形状に設けられている。これにより、鍔部を含む爪状磁極のスキュー角度を大きくできるため、固定子への磁束脈動が小さくなって磁気音を大幅に低下することが可能となる。
【0007】
請求項4の手段によれば、磁石を保持して鍔部と磁石との間に介在される磁石保持器を有する。これにより、爪状磁極の根元側鍔部のみで磁石を保持する構造(磁石の対角線上の略2か所で固定する構造)を採った場合でも、磁石の欠け等に対する配慮が少なくて済む。また、磁石が直接鍔部に当接する場合に比べて、鍔部と磁石との互いの当接面の平面度を高精度化する必要が無いため、生産性向上及びコストダウンが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の車両用交流発電機を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は爪状磁極の展開平面図である。
車両用交流発電機は、図2に示す様に、電機子として働く固定子1と、界磁として働く回転子2とを具備する。
固定子1は、図示しないハウジングの内周に固定された電機子鉄心3と、この電機子鉄心3に巻線された電機子巻線4とで構成される。
電機子鉄心3は、例えば、円環状の薄い鋼板を複数枚重ね合わせて形成され、内周側に多数のスロット(図示しない)が設けられている。
電機子巻線4は、例えば3個の独立したコイルをY結線またはΔ結線して電機子鉄心3の各スロットに挿入され、回転子2との相対回転運動によって各コイルに交流電圧が発生する。
【0009】
回転子2は、回転軸5と、この回転軸5に固定された一対のランデル型鉄心6(以下鉄心6と略す)と、この鉄心6に巻線された界磁巻線7と、鉄心6に具備された複数の永久磁石8等より構成されている。
回転軸5は、ハウジングに固定された軸受(図示しない)を介して回転自在に支持され、エンジンの回転動力が伝達されて回転する。
鉄心6は、図3に示す様に、回転軸5の外周に嵌合する円筒状のボス部6Aと、このボス部6Aの外周から径方向外側へ拡大する側板部6Bと、この側板部6Bの外周部から軸方向へ向かって延びる複数の爪状磁極6Cとを有する。各鉄心6は、互いの爪状磁極6Cが噛み合う様に軸方向に対向して組付けられている。
【0010】
また、爪状磁極6Cの側面外周部には、回転時に永久磁石8が遠心方向へ飛び出すのを防止するための鍔部6aが設けられている。この鍔部6aは、爪状磁極6Cの長手方向(図1の上下方向)全体に渡って周方向へ(隣合う爪状磁極6C側へ)突出して設けられている。但し、鍔部6aの平面形状は、爪状磁極6Cの根元から先端へ向かって次第に小さくなる略三角形状に設けられている。言い換えれば、永久磁石8の外周面に当接する鍔部6aの内周面の面積は、爪状磁極6Cの根元から先端へ向かって次第に小さくなっている。
従って、爪状磁極6Cの鍔部6aを含む略三角形の外周側表面に対して、永久磁石8は爪状磁極6Cの根元側で先端側より深く外周側表面の両斜辺から入り込んでいる。
【0011】
界磁巻線7は、ボビン9を介して各鉄心6のボス部6Aの外周に巻線されている。この界磁巻線7は、図示しないリード線を通じて回転軸5の端部に設けられたスリップリング10に接続され、そのスリップリング10の外周面に摺接するブラシ(図示しない)を通じて車載バッテリから励磁電流が供給される。界磁巻線7に励磁電流が流れると、一方の鉄心6の各爪状磁極6Cが全てS極となり、他方の鉄心6の各爪状磁極6Cが全てN極となる。
【0012】
永久磁石8は、隣合う爪状磁極6C同士の対向する側面間に配設され、爪状磁極6Cと対向する側面がその爪状磁極6Cと同極となる様(つまり、隣合う爪状磁極6C間の磁束の漏洩を減少する向き)に着磁されている。なお、永久磁石8として、汎用性に優れたフェライト焼結磁石や、焼結磁石に比べて比重の小さい樹脂磁石、あるいは希土類磁石等を使用することができる。
各鉄心6の軸方向端面には、遠心式の冷却ファン11が溶接等により固定され、鉄心6と一体に回転することで冷却風を発生する。
【0013】
次に、本実施例の作用及び効果を説明する。
エンジンの回転動力が伝達されて回転子2が高速回転すると、遠心力の作用により鉄心6の各爪状磁極6Cが根元部を支点として径方向外側へ拡がる。この時、爪状磁極6Cは、軸方向の中心位置(爪状磁極6Cの長手方向の長さLの半分の位置)を境として先端側より根元側の方が拡がり量が小さいため、爪状磁極6Cの拡がりに伴って永久磁石8は主に根元側の鍔部6aで保持されることになる。即ち、遠心力により爪状磁極6Cが拡がると、永久磁石8の重量を殆ど爪状磁極6Cの根元側鍔部6aで受けることになるため、爪状磁極6Cの根元側鍔部6aの面積S1 に対して先端側鍔部6aの面積S2 を相対的に小さくすることが可能である。本実施例では、図1に示す様に、鍔部6aの形状を爪状磁極6Cの根元から先端へ向かって次第に小さくなる略三角形状に形成している。
【0014】
これにより、図8に示す従来の爪状磁極100と比較して、先端側鍔部6aの面積S2 が減少することで、遠心力により生じるモーメント荷重に大きな影響を与える爪状磁極6Cの先端側重量を低減できる。その結果、爪状磁極6Cの耐遠心力が向上して、永久磁石8を併用しない回転子と同等の高速回転性を得ることが可能となる。
また、本実施例では、鍔部6aが略三角形状に形成されているため、鍔部6aを含む爪状磁極6Cのスキュー角度(図1参照)を従来より大きくできる。その結果、固定子1への磁束脈動が小さくなって、磁気音を大幅に低下することが可能となる。
【0015】
(第2実施例)
図4は爪状磁極6Cの展開平面図である。
本実施例は、爪状磁極6Cの先端側鍔部6aの面積を更に小さくした一例を示すもので、爪状磁極6Cの先端部両側には鍔部6aが形成されていない。この場合、爪状磁極6Cの先端側重量をより低減できるため、爪状磁極6Cの耐遠心力が更に向上する。
【0016】
(第3実施例)
図5は爪状磁極6Cの展開平面図である。
本実施例は、爪状磁極6Cの軸方向中心位置より根元側のみ(図5のL/2の範囲内)に鍔部6aを形成した一例を示すものである。この場合、形状が複雑で、且つ永久磁石8との当接面に高精度な平面度が要求される鍔部6aを爪状磁極6Cの根元側のみに形成するため、爪状磁極6Cを形成するための型構造を簡素化できる。その結果、型寿命を向上できるとともに、大幅な生産性向上、及びコストダウンが可能となる。
また、爪状磁極6Cの先端側に鍔部6aを形成しないことで爪状磁極6Cの先端側重量を低減できるため、爪状磁極6Cの耐遠心力が向上する。更に、爪状磁極6Cの根元側に比べて剛性が低い先端側に鍔部6aを形成しないことにより、高速回転時に生じる鍔部6aのびびりによる磁気音が大幅に低下する。
【0017】
(第4実施例)
図6は磁石保持器12の斜視図である。
本実施例は、図6に示す様な磁石保持器12により永久磁石8を保持する一例を示すものである。
磁石保持器12は、樹脂等の非磁性体により形成され、複数の永久磁石8の各々を保持する複数の保持部12Aと、この複数の保持部12Aを環状に連結する連結部12Bとから成る。本実施例では、爪状磁極6Cの鍔部6aと永久磁石8との間に保持部12Aが介在される(図7参照)ため、爪状磁極6Cの根元側鍔部6aのみで永久磁石8を保持する構造(永久磁石8の対角線上の略2か所で固定する構造)を採った場合でも、永久磁石8の欠け等に対する配慮が少なくて済む。また、永久磁石8が直接鍔部6aに当接する場合に比べて、鍔部6aと永久磁石8との互いの当接面の平面度を高精度化する必要が無いため、生産性向上及びコストダウンが可能となる。
【0018】
(変形例)
なお、以上に述べた実施例では、本発明の磁石として永久磁石8を用いたが、これを電磁石としても良い。
また、鍔部6aは爪状磁極6Cを一体成形する他に、爪状磁極6Cに鍔部6aを溶接等により接合しても良い。
更に、以上に述べた実施例では、磁石は永久磁石8と磁石保持器12とが一体とされて爪状磁極6Cの鍔部6aにより固定されるが、同様の鍔部6aに保持板を溶接等により接合し、この保持板に磁石を接着等により接合して保持させても良い。かかる構成においても、磁石の遠心方向への移動を規制する鍔部6aを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】爪状磁極の展開平面図である(第1実施例)。
【図2】固定子と回転子の半断面図である。
【図3】鉄心の断面図である。
【図4】爪状磁極の展開平面図である(第2実施例)。
【図5】爪状磁極の展開平面図である(第3実施例)。
【図6】磁石保持器の斜視図である(第4実施例)。
【図7】爪状磁極の断面図である(第4実施例)。
【図8】爪状磁極の展開平面図である(従来技術)。
【符号の説明】
2 回転子
6 ランデル型鉄心
6C 爪状磁極
6a 鍔部
8 永久磁石
12 磁石保持器
Claims (4)
- 複数の爪状磁極を有するランデル型鉄心と、
隣合う前記爪状磁極同士の側面間に配設され、その隣合う前記爪状磁極間の漏洩磁束を減少する極性の磁石と、
前記爪状磁極の側面外周部に前記磁石の遠心方向への移動を規制する鍔部とを有する回転子を備えた車両用交流発電機において、
前記磁石の外周面に当接する前記鍔部の面積が、前記爪状磁極の先端側より根元側の方が大きく設けられていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 前記鍔部は、前記爪状磁極の軸方向中心位置から根元側の範囲のみに形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用交流発電機。
- 前記鍔部は、前記爪状磁極の先端側から根元側へ向かって次第に面積が大きくなる略三角形状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用交流発電機。
- 前記磁石を保持して前記鍔部と前記磁石との間に介在される磁石保持器を有することを特徴とする請求項1〜3記載の何れかの車両用交流発電機。
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