以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1から図3を参照して、本発明の基板装置の第1実施形態について説明する。ここに図1は、第1実施形態における基板上の段差を横切る配線部分を拡大して示す部分平面図であり、図2(a)は、図1のC−C’断面図であり、図2(b)は、図1のD−D’断面図であり、図3(a)は、この段差を横切る配線部分を示す部分斜視図である。また、図3(b)は、比較例として、段差を横切る配線部分を幅広に形成しない場合の図3(a)に対応する個所における部分斜視図である。
図1、図2及び図3(a)に示すように、本実施形態における基板装置は、基板10と、基板10上に層間絶縁膜12を介して配置された配線60と、配線60上に形成された層間絶縁膜7とを備える。
基板10の表面のうち領域AR1(図1及び図2(a)参照)には、配線60に対向する個所に溝80が設けられており、溝80内に配線60が部分的に埋め込まれることにより、この領域AR1における平坦化処理が施されている。即ち領域AR1は、平坦化された領域となる。他方、基板10の表面のうち領域AR2(図1及び図2(b)参照)には、配線60に対向する個所に溝80が設けられておらず、配線60の分だけ基板10の層間絶縁膜7(最上層)が凸状に盛り上がっている。即ち領域AR2は、平坦化されていない領域となる。従って、本実施形態の基板装置の用途に応じて、平坦化が要求される領域については、領域AR1のように平坦化処理を適宜施すと共に平坦化が要求されていない或いは不要である領域については、領域AR2のように平坦化処理を施さないことが可能となる。この際、平坦化処理のためには基本的に溝80を設けて配線60を埋め込めば良いので、通常の製造プロセスに対し、基板10に溝80を掘るフォトリソグラフィ及びエッチング工程を追加すれば足りる。このため、従来のCMP処理や有機平坦化膜を形成する技術と比較して、比較的簡単にしかも所望の領域についてのみ平坦化を行えるので大変便利である。
このように領域AR1と領域AR2における層間絶縁膜12の表面の高さは溝80の深さだけ相異なるため、例えば深さ500nm〜1000nm程度或いはそれ以上の溝80に起因して、基板10上の積層構造内部において配線60の下地面となる層間絶縁膜12上に比較的急峻な段差80aが生じている。そして、この段差80aを配線60が横切っている。
ここで本実施形態では特に、配線60は、段差80aを横切る部分が、主配線部分60n(図中、粗くハッチングされている)と比較して幅広な幅広部分60w(図中、濃くハッチングされている)として形成されている。このため、図3(b)に示すように幅広部分60wを形成することなく配線60’の幅を他の部分(図3(a)で示す主配線部分60n)における狭い幅のまま形成した比較例の場合と比較して、本実施形態の場合には、段差80aで配線60が断線する可能性は格段に低減されている。より具体的には、配線60は、例えば、Al膜等の金属膜や導電性のポリシリコン膜から形成されるが、このような配線60は、その製造プロセスにおいて、例えばスパッタリング、蒸着等による薄膜形成処理やフォトリソグラフィ、エッチング等によるパターンニング処理などを含むプレーナ技術を用いて形成される。このため、図3(b)に示した比較例のように、段差80aに対して配線60’の幅が狭ければ狭い程、この段差80a付近に配線60’を形成する薄膜の付き回りが悪くなり、断線し易くなるのである。そして、近時における配線ピッチの微細化を進めれば進める程、配線60’の幅に対する段差80aが相対的に大きくなるため、このような段差80aでの断線の問題は、深刻さを増すのである。
これに対して、図3(a)に示すように本実施形態では、配線60のうち段差80aを横切る部分が局所的に幅広部分60wとされているため、段差80a付近で配線60を形成する薄膜が物理的に途切れる可能性や極端に細って機械的強度が落ちる可能性、即ち段差80aで配線60が断線する可能性を格段に低減できるのである。
加えて本実施形態では、段差80aを横切る幅広部分60wを除く配線60の主配線部分60nは幅広に形成されていない。従って、平面レイアウトに関して、段差80aや幅広部分60wを、当該基板装置の性質上、配線ピッチを比較的広くとれる領域内に配置すると共に、段差80aや幅広部分60wから離れた領域内で主配線部分60nにおける配線ピッチを狭めることにより、当該基板装置における所望の領域で配線ピッチの微細化やこれに伴う電子素子の高密度化を図れる。
以上の結果、本実施形態によれば、配線ピッチの微細化を図りつつ配線60における配線不良を低減でき、当該基板装置の装置信頼性及び製造歩留まりが顕著に向上される。
以上説明した実施形態では、図1及び図3(a)に示したように、配線60が横切る段差80aの斜面には、テーパが設けられている。ここで幅広部分60wの下地面である。層間絶縁膜12に対する付き回りの良さは、テーパに応じて高まる。即ち、テーパ角が大きい程、平坦な下地面に対する付き回りが良くなる。例えば、図3(b)に示すようにテーパが無い場合や逆テーパの場合と比較すると、このような付き回りの良さは顕著であり、テーパ角の大きさに伴って、段差80aを横切る幅広部分60wの幅を狭くすることもできる。従って、このように段差80aにテーパを付けることは、幅広部分60wが占める基板上領域を小さくすることにより配線ピッチの微細化を進める上で有利である。
また、本実施形態では、幅広部分60wは、単一の導電層から形成されており、且つ主配線部分60nと一体形成されている。従って、幅広部分60nを形成するために特別なプロセスは必要とされておらず、例えば、配線60のパターンニングの際に、主配線部分60nと幅広部分60wとを同一工程で同時に形成できるので、本実施形態は、製造工程の複雑化や製造コストの上昇を招かない観点からも優れている。
更にまた、本実施形態では、基板10と配線60との間に介在する層間絶縁膜12を備えており、基板10に溝が掘られ、この上に形成された層間絶縁膜12に溝80が設けられる構成とされているが、層間絶縁膜12を介することなく基板10に掘られた溝内に配線60を配置して、平坦化処理を施すようにしてもよい。或いは、基板10に溝を掘ることなく、層間絶縁膜12に溝を掘って、この溝内に配線60を配置して、平坦化処理を施すようにしてもよい。更には、このような基板10に掘った溝と層間絶縁膜12に掘った溝とを組み合わせることで、所望の深さの溝を設けるようにしてもよい。いずれの場合にも、溝に起因した段差80aを横切る幅広部分60wを形成する限り、上述の如き本実施形態の効果は発揮される。
尚、基板10上で配線60の下方に、他の配線や素子の一部等の存在の有無により生じる段差は、本実施形態のように積極的に溝80を形成して平坦化処理を施す際に生じる段差80aと比較すれば概ね小さい。このため必要性は低いものの、このように溝80と無関係に生じる比較的小さな段差を横切る配線部分についても、本実施形態と同様に局所的に幅広に形成してもよい。このように構成すれば、配線の信頼性向上という本実施形態の効果が多少なりとも発揮される。この際、製造プロセスの複雑化や配線ピッチとのバランスを考慮して、比較的小さな段差による配線不良が重要視されるような場合に、適宜本実施形態の如き段差を横切る部分で配線60を局所的に幅広に形成するのが望ましい。
(第2実施形態)
次に、図4を参照して本発明の基板装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、層間絶縁膜上における配線と溝との相対的な大きさ及び相対的な位置関係を若干変更した各種変形例からなるもので、その他の構成については第1実施形態の場合と同様である。ここに、図4(a)〜(c)は、夫々このような各種変形例における基板上の段差を横切る配線部分を拡大して示す部分平面図である。
即ち図4(a)に示すように、層間絶縁膜12の上面において幅広部分60wの幅が溝80の幅よりも若干狭くても、主配線部分60nの幅よりも広い限り、段差80aでの断線防止効果は発揮される。
加えて、図4(b)に示すように、層間絶縁膜12の上面において幅広部分60wが、段差80aを境に低い側にある面上及び段差80aのテーパ付き斜面上に形成されていても(且つ段差80aを境に高い側にある面上には形成されていなくても)、幅広部分60wの幅が主配線部分60nの幅よりも広い限り、段差80aでの断線防止効果は発揮される。
或いは図4(c)に示すように、層間絶縁膜12の上面において幅広部分60wが、段差80aを境に高い側にある面上及び段差80aのテーパ付き斜面上に形成されていても(且つ段差80aを境に低い側にある面上には形成されていなくても)、幅広部分60wの幅が主配線部分60nの幅よりも広い限り、段差80aでの断線防止効果は発揮される。
このように、層間絶縁膜12の上面のうち段差80aを境に高い側にある面、段差80aを境に低い側にある面及び段差80aの斜面のうち少なくとも一つの面上で、配線60が局所的に幅広に形成されて幅広部分60wが形成されていれば、段差で配線60が断線する可能性を低減可能である。
(第3実施形態)
次に、図5を参照して本発明の基板装置の第3実施形態について説明する。ここに図5(a)及び(b)は夫々、第3実施形態における基板上の段差を横切る配線部分を拡大して示す部分平面図である。第3実施形態は、段差を境に高い側にある面上では配線が一の導電層から形成され、段差を境に低い側の面上では配線が他の導電層から形成され、配線が段差を横切る部分で2つの導電層が重なっている実施形態である。
即ち、先ず図5(a)に示すように、第3実施形態では、段差80aを境に高い側にある層間絶縁膜12の面上では、第1導電層601(図中、左下がりにハッチングされている)からなる配線部が形成され、段差80aを境に低い側にある層間絶縁膜12の面上では第2導電層602(図中、右下がりにハッチングされている)からなる配線部が形成され、これら第1導電層601及び第2導電層602から1本の配線60が構成されている。ここで特に、配線60の段差80aを横切る部分は、積層された2つの第1導電層601及び第2導電層602から冗長的に形成されており、第1配線部601の先端601aが幅広に形成されている。或いは、図5(b)に示すように、第1導電層601(図中、左下がりにハッチングされている)からなる配線の先端601aのみならず、第2導電層602(図中、右下がりにハッチングされている)からなる配線の先端602aも幅広に形成されていてもよい。尚、第1導電層601と第2導電層602とは、同一種類の導電性材料からなってもよいし或いは相異なる導電性材料からなってもよく、更に積層順序についてはどちらの導電層が上側にきてもよい。
従って、第3実施形態によれば、配線60は、段差80aを横切る部分で、積層された2つの導電層から冗長的に形成されており、しかもこの部分で第1導電層601からなる配線の先端601a及び第2導電層602からなる配線の先端602aのうち一方又は両方が幅広に形成されているので、基板10上の積層構造内部で配線60の下地面となる層間絶縁膜12上における段差80aで配線60が断線する可能性をより確実に低減することが可能となる。
(第4実施形態)
次に、図6を参照して本発明の基板装置の第4実施形態について説明する。ここに図6は、第4実施形態における基板上の段差を横切る配線部分を拡大して示す部分平面図である。
図6に示すように、第4実施形態では、配線60は、第1導電層603(図中、右下がりにハッチングされている)からなる一定幅の1本の主配線部分と島状の第2導電層604(図中、左下がりにハッチングされている)とから構成されている。第1導電層603は、段差80aを横切って層間絶縁膜12上に伸延しており、島状の第2導電層604は、配線60の段差を横切る部分において、この第1導電層603に重ねられており、且つ第1導電層603からなる配線部よりも幅広に形成されている。このように、配線60の段差80aを横切る部分は、積層された2つの第1導電層603及び第2導電層604から冗長的に形成されている。尚、第1導電層603と第2導電層604とは、同一種類の導電性材料からなってもよいし或いは相異なる導電性材料からなってもよく、更に積層順序についてはどちらの導電層が上側にきてもよい。
従って、第4実施形態によれば、配線60は、段差80aを横切る部分で、積層された2つの導電層から冗長的に形成されており、しかもこの部分で島状の第2導電層604が幅広に形成されているので、基板10上の積層構造内部で配線60の下地面となる層間絶縁膜12上における段差80aで配線60が断線する可能性をより確実に低減することが可能となる。
(第5実施形態)
次に、図7を参照して本発明の基板装置の第5実施形態について説明する。ここに図7(a)及び(b)は夫々、第5実施形態における基板上の段差を横切る配線部分を拡大して示す部分平面図である。第5実施形態は、配線が段差を横切る部分で、配線を構成する2つの導電層が絶縁膜を介して重ねられ且つコンタクトホールを介して電気接続される実施形態である。
即ち、先ず図7(a)に示すように、第5実施形態では、段差80aを境に高い側にある層間絶縁膜12の面上では、第1導電層605(図中、左下がりにハッチングされている)が形成され、段差80aを境に低い側にある層間絶縁膜12の面上では第2導電層606(図中、右下がりにハッチングされている)が形成され、これら第1導電層605及び第2導電層606から1本の配線60が構成されている。ここで特に、配線60の段差80aを横切る部分は、絶縁膜を介して積層された2つの第1導電層605及び第2導電層606から冗長的に形成されており、両者は、コンタクトホール62を介して電気的に接続されている。更に、第1導電層605からなる配線の先端605a及び第2導電層606からなる配線の先端606aは、幅広に形成されている。或いは、図7(b)に示すように、段差80aを横切る部分が幅広部分607aとされた第1導電層607(図中、右下がりにハッチングされている)と、島状の第2導電層608(図中、左下がりにハッチングされている)とが絶縁膜を介して積層され且つコンタクトホール62により電気的に接続されていてもよい。尚、第1導電層(605又は607)と第2導電層(606又は608)とは、同一種類の導電性材料からなってもよいし或いは相異なる導電性材料からなってもよく、更に積層順序についてはどちらの導電層が上側にきてもよい。
従って、第5実施形態によれば、配線60は、段差80aを横切る部分で、絶縁膜を介して積層された2つの導電層から冗長的に形成され且つコンタクトホール62で電気的に接続されており、しかもこの部分で配線60は幅広に形成されているので、段差80aで配線60が断線する可能性をより確実に低減することが可能となる。特に、絶縁膜が第1及び第2導電層間に介在されているので、上側の導電層を形成する工程が一般に容易となり、更に上側の導電層と下側の導電層とから、当該段差80a以外の基板上領域で、相互に独立した各種の配線を形成できる。
尚、以上説明した第1から第5実施形態における基板装置では、配線60以外に、各種電極や各種電子素子を溝80内に埋め込んでもよく、これにより各種電極や各種電子素子が備えらた高機能或いは多機能の基板装置における平坦化を図るようにしてもよい。
(第6実施形態)
次に図8から図12を参照して本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態は、上述した第1から第5実施形態の基板装置を一方の基板として用い、これと対向基板とを対向配置して、両者間に液晶等の電気光学物質を挟持してなる電気光学装置に係る実施形態である。
先ず図8から図10を参照して、本実施形態の電気光学装置の画像表示領域における構成についてその動作と共に説明する。ここに、図8は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図9は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図10は、図9のA−A’断面図である。尚、図10においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図8において、特に上述した第1から第5実施形態の基板装置をTFTアレイ基板側に適用してなる第6実施形態の電気光学装置においては、その画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aと当該画素電極9aを制御するためのTFT30とがマトリクス状に複数形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。電気光学物質は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される電気光学物質容量と並列に蓄積容量70を付加する。
図9において、特に上述した第1から第5実施形態の基板装置をTFTアレイ基板側に適用してなる第6実施形態の電気光学装置においては、TFTアレイ基板上に、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール5を介してポリシリコン膜等からなる半導体層1aのうち後述のソース領域に電気接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうち後述のドレイン領域に電気接続されている。また、半導体層1aのうちチャネル領域(図中右下がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中、上向き)に突出した突出部とを有する。また、図中太線で示した矩形の島状領域には夫々、各TFTの少なくともチャネル領域をTFTアレイ基板側から見て一画素毎に夫々覆う位置に、島状の第1遮光膜11aが設けられている。
次に図10の断面図に示すように、電気光学装置は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO膜(Indium Tin Oxide膜)などの透明導電性膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド膜などの有機膜からなる。他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。TFTアレイ基板10には、図10に示すように、各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。対向基板20には、更に図10に示すように、各画素の開口領域(即ち、画像表示領域内において実際に入射光が透過して表示に有効に寄与する領域)以外の領域に第2遮光膜23が設けられている。
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に液晶等の電気光学物質が封入され、電気光学物質層50が形成される。電気光学物質層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。電気光学物質層50は、例えば一種又は数種類のネマティック電気光学物質を混合した電気光学物質からなる。シール材は、TFT基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサが混入されている。
図9及び図10において本実施の形態では特に、データ線6a、走査線3a及び容量線3b並びにTFT30を含む図2中右上がりの斜線が引かれた網目状の領域においては、TFTアレイ基板10が凹状に窪んでおり、画像表示領域の平坦化用の溝が形成されている。TFTアレイ基板10にこのように溝が形成されているため、データ線6a、走査線3a及び容量線3b並びにTFT30の上方に位置する配向膜16の表面は、溝が形成された領域においてその深さに応じて平坦化される。
本実施の形態では特に、データ線6a、走査線3a及び容量線3b並びにTFT30が相重なるためこれらの各種配線やTFT30を構成する積層体が最も厚くなる領域を、その合計層厚に等しい深さだけ凹状に窪めて溝を形成しているので、この最も厚くなる領域は、ほぼ完全に平坦化される。
但し、どの領域における配向膜16の高さを開口領域における配向膜16の高さに合わせるかは任意であり、例えば図10中左側の蓄積容量70の上方における配向膜16の高さを合わせるようにしてもよし、TFT30から外れた走査線3aや容量線3bの上方における配向膜16の高さを合わせるようにしてもよい。更に、TFTアレイ基板10のどの領域に溝を設けるかも任意であり、例えばデータ線6aに対向する領域においてのみ溝を形成してもよいし、TFT30に対向する領域においてのみ溝を形成してもよい。どの場合にも、開口領域から外れた領域に対して若干なりとも溝を形成すれば、該溝の形成領域及び深さに応じた平坦化の効果が得られる。従って、このようにどの領域にどのような深さの溝を形成するかは、実際には要求される画素開口率(画素の開口領域の非開口領域に対する比率)、精細度、歩度まり等を勘案しての設計事項として定められる。
そして、本実施の形態の電気光学装置は、このように構成されているため、製造初期の段階でTFTアレイ基板10に対して溝を形成すれば、その後のポリシリコン膜、金属膜、層間絶縁膜等を形成するためのCVD工程、スパッタリング工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等の各種工程を、従来とほぼ又は全く同様に実行するだけで当該電気光学装置を製造できるので、大変有利である。
図10に示すように、画素スイッチング用TFT30に各々対向する位置においてTFTアレイ基板10と各画素スイッチング用TFT30との間には、一画素毎に島状に第1遮光膜11aが設けられている。第1遮光膜11aは、好ましくは不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo及びPbのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等から構成される。
更に、第1遮光膜11aと複数の画素スイッチング用TFT30との間には、第1層間絶縁膜12が設けられている。第1層間絶縁膜12は、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するために設けられるものである。更に、第1層間絶縁膜12は、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、画素スイッチング用TFT30のための下地膜としての機能をも有する。第1層間絶縁膜12は、例えば、NSG(ノンドープトシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などの高絶縁性ガラス又は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等からなる。
本実施の形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体層1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
図10において、画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。高濃度ドレイン領域1eには、複数の画素電極9aのうちの対応する一つが接続されている。本実施の形態では特にデータ線6aは、Al等の低抵抗な金属膜や金属シリサイド等の合金膜などの遮光性の薄膜から構成されている。また、走査線3a、ゲート絶縁膜2及び第1層間絶縁膜12の上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が各々形成された第2層間絶縁膜4が形成されている。更に、データ線6a及び第2層間絶縁膜4の上には、高濃度ドレイン領域1eへのコンタクトホール8が形成された第3層間絶縁膜7が形成されている。
画素スイッチング用TFT30は、好ましくは上述のようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を持ってよいし、走査線3aの一部であるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物イオンを打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また本実施の形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極をソース−ドレイン領域間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。
ここで、一般には、半導体層1aのチャネル領域1a’、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c等のポリシリコン層は、光が入射すると電流が発生してしまい画素スイッチング用TFT30のトランジスタ特性が変化するが、本実施の形態では、走査線3aを上側から覆うようにデータ線6aがAl等の遮光性の金属薄膜から形成されているので、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cへの入射光の入射を効果的に防ぐことが出来る。また、前述のように、画素スイッチング用TFT30の下側には、第1遮光膜11aが設けられているので、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cへの戻り光の入射を効果的に防ぐことが出来る。このような第1遮光膜11aは、複数の島状部分に分断されているが、ストライプ状、あるいはマトリクス状に形成してもよい。
尚、第1遮光膜11aの複数の島状部分は、定電位源又は容量部分に電気接続されてもよい。例えば、第1遮光膜11aは、定電位とされた容量線3bに夫々電気接続されてもよい。この場合、定電位源としては、当該電気光学装置を駆動するための周辺回路(例えば、走査線駆動回路、データ線駆動回路等)に供給される負電源、正電源等の定電位源、接地電源、対向電極21に供給される定電位源等が挙げられる。
以上図8から図10を参照して詳細に説明したように本実施形態の電気光学装置によれば、画像表示領域における平坦化が図られているため、段差に起因した電気光学物質のディスクリネーションが低減されていると同時に、画素開口率が高く明るい画像表示が可能となる。
そして特に本実施形態によれば、上述した第1から第5実施形態の基板装置をTFTアレイ基板側に適用しているので、このように画像表示領域における平坦化を図るべく溝内にデータ線6a、走査線3a、容量線3b等の配線などを埋め込む他方で、このような配線は、溝に起因した段差を横切る部分において局所的に幅広に形成されている(図1から図7参照)。例えば、画像表示領域内で溝内から溝外へと配線される際に段差を横切る部分や、溝を横断して配線される際に段差を横切る部分や、画像表示領域の周辺等において溝が途切れており配線が溝から外へ出る際に段差を横切る部分などにおいて、データ線6a、走査線3a、容量線3b等の配線は、局所的に幅広に形成されている。このため、平坦化用の溝に起因した段差付近でデータ線6a、走査線3a、容量線3b等の配線を形成する導電層が物理的に途切れる可能性や極端に細って機械的強度が落ちる可能性を格段に低減できるのである。
加えて本実施形態では、データ線6a、走査線3a、容量線3b等の配線は、段差を横切る幅広部分を除く部分は幅広に形成されていないので、配線ピッチ或いは画素ピッチの微細化を画像表示領域内で図りつつ、画像表示領域の周辺等において、配線ピッチを比較的広くとれる領域内に幅広部分を配置することが可能となる。これにより、高精細な画像表示を可能であり、しかも配線不良の低減により装置信頼性及び製造歩留まりが顕著に向上された電気光学装置を実現できる。
次に図11及び図12を参照して、以上のように構成された電気光学装置の全体構成を説明する。尚、図11は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た平面図であり、図12は、対向基板20を含めて示す図11のH−H’断面図である。
図11において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、例えば第2遮光膜23と同じ或いは異なる材料から成る額縁としての第3遮光膜53が設けられている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材106が設けられている。そして、図12に示すように、図11に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
図11及び図12に示した周辺回路の一例たるデータ線駆動回路101や走査線駆動回路104を構成するTFT等の電子素子に対向する領域におけるTFTアレイ基板10上には、画像表示領域に設けたような平坦化用の溝は、設けてもよいし、設けなくてもよい。このような周辺回路を構成する配線、電極、TFT等の電子素子などは、例えば画像表示領域内にあるデータ線6a、走査線3a、容量線3b等と同一のAl膜やポリシリコン膜からなる。この場合、これら各導電層の下地側に位置する第1遮光膜11aと同一膜も、周辺回路の構成要素として利用可能であり、例えば周辺回路を構成するTFTのチャネル領域の遮光用に第1遮光膜と同一膜を形成することも可能である。このような場合に、例えばTFT等の電子素子の形成領域における層間絶縁膜に溝を設けてしまうと、溝形成に伴い薄膜化される層間絶縁膜を介して対向配置される2つの導電層間の容量カップリングが増加して、係る導電層を構成要素とする電子素子の特性変化や劣化を招いてしまう場合、即ち、溝形成による弊害が周辺回路に発生してしまう場合がある。そこで、このような場合には、周辺領域には少なくとも部分的には溝を設けないように構成するのが好ましい。更に、このように溝を設けない平坦面上の方が、周辺回路のように複雑な平面レイアウトパターンを持つ回路を形成するには一般に都合がよい。しかるに、同一のTFTアレイ基板10上において、画像表示領域では溝を設け、周辺領域では溝を設けないように構成すると、溝が途切れる個所が基板面上の何処かに必ず存在し、よって溝内に埋め込まれる配線が溝に起因した段差を横切る部分が必ず発生することになる。従って、本実施形態の如く段差によって配線が断線する可能性を低減できる構成は、TFTアレイ基板10上に周辺回路(データ線駆動回路101、走査線駆動回路104等)を形成する際には非常に有効である。
以上図8から図12を参照して説明した電気光学装置の実施形態では、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(テープオートメイテッドボンディング基板)上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、本願発明をTFTアクティブマトリクス駆動方式以外の、TFDアクティブマトリクス方式、パッシブマトリクス駆動方式などいずれの方式の液晶装置に適用しても、画像表示領域においては平坦化処理を施しつつ、これに伴う段差に起因した配線不良が低減されており装置信頼性の高い電気光学装置を実現できる。更にまた、上述の第6実施形態の電気光学装置では、対向基板20の外面及びTFTアレイ基板10の外面には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
(電子機器)
次に、以上詳細に説明した実施形態における液晶装置を備えた電子機器の実施の形態について図13から図16を参照して説明する。
先ず図13に、液晶装置100及びその駆動回路1004を備えた電子機器の概略構成を示す。
図13において、電子機器は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008並びに電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置などのメモリ、画像信号を同調して出力する同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号などの表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、シリアル・パラレル変換回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKと共に駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。尚、液晶装置100を構成するTFTアレイ基板の上に、駆動回路1004を搭載してもよく、これに加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
次に図14から図16に、このように構成された電子機器の具体例を夫々示す。
図14において、電子機器の一例たる液晶プロジェクタ1100は、上述した駆動回路1004がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置100を含む液晶モジュールを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
図15において、電子機器の他の例たるマルチメディア対応のラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)1200は、上述した液晶装置100がトップカバーケース内に備えられており、更にCPU、メモリ、モデム等を収容すると共にキーボード1202が組み込まれた本体1204を備えている。
また図16に示すように、駆動回路1004や表示情報処理回路1002を搭載しない液晶装置100の場合には、駆動回路1004や表示情報処理回路1002を含むIC1324がポリイミドテープ1322上に実装されたTCP(Tape Carrier Package)1320に、TFTアレイ基板1の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して物理的且つ電気的に接続して、液晶装置100として、生産、販売、使用等することも可能である。
以上図14から図16を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、携帯電話、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが図13に示した電子機器の例として挙げられる。
本発明は、上述した各実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう基板装置やこれを備えた電気光学装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。