JP3922029B2 - 導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波路の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8(a)は従来の導波路の製造方法を示す概念図であり、図8(b)は図8(a)に示した導波路の8b−8b線断面図であり、図8(c)は図8(b)に示した導波路の8c−8c線断面における屈折率分布を示す図である。
【0003】
図8(c)において、横軸は屈折率を示し、縦軸は導波路の8c−8c線上の位置(幅方向の位置)を示す。
【0004】
屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含む透明体としてのガラスブロック1内に超短パルスレーザビーム2−1をレンズ3で集光、照射することにより(矢印2−2方向)、照射部を高屈折率な層すなわち、光伝播層4に改質することが行われている。
【0005】
この超短パルスレーザビーム2−1のパルス幅は200フェムト秒以下と狭くなっている。
【0006】
このような超短パルスレーザビーム2−2を200kHz程度の早い繰り返し周波数でガラスブロック1に照射しながら、ガラスブロック1を超短パルスレーザビーム2−1と直交する方向(矢印5方向)に移動させることにより、所望のパターンの光伝播層4が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の導波路の製造方法には以下のような問題がある。
【0008】
(1)超短パルスレーザビーム照射による高屈折率の光伝播層の形成は容易であるが、光伝播層を高屈折率化しようとすると、レーザビームを光伝播層に複数回集光、照射する重ね照射を行わなければならない。このため、光伝播層内の屈折率が不均一に乱れるという問題があった。これはレーザビームスポット径内のパワー密度分布の不均一性及びビームの揺らぎ、パルス幅の繰り返し周波数の低さ、被照射物としてのガラスブロックを移動させるステージの移動速度の不均一性等に起因しており、結局、光散乱損失の大きい導波路しか得られないことが分かった。
【0009】
(2)光伝播層の界面もレーザビームスポット径内のパワー密度分布のパワー密度分布の不均一性及びビームの揺らぎ、パルス幅の繰り返し周波数の低さ、ガラスブロックを移動させるステージの移動速度の不均一性等によって乱れ、光散乱損失の大きい導波路となり、実用的な導波路がまだ得られていない。
【0010】
(3)曲率半径の小さい曲線導波路を形成する場合、光散乱損失が大幅に増加し、従来の導波路で実現されているような低損失な分岐、合流、分波、合波等の光信号処理回路を得ることは難しい。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、低光散乱損失の導波路の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の導波路の製造方法は、少なくとも一種類の屈折率制御用添加物を含む透明体に超短パルスレーザビームを照射、集光させると共に超短パルスレーザビーム若しくは透明体を相対移動させることにより集光部の屈折率を透明体の屈折率より高くして光伝播層を形成する導波路の製造方法において、
上記超短パルスレーザビームの波長を700nmから900nmの範囲内とし、パルス幅を1000フェムト秒以下30フェムト秒以上とし、パルス繰り返し周波数を400kHz以下50kHz以上とすると共に、上記超短パルスレーザビームの第2高調波若しくは第3高調波の波長のレーザビームのパルス幅を1000フェムト秒以下30フェムト秒以上とし、パルス繰り返し周波数を400kHz以下10kHz以上として、超短パルスレーザビームの照射前、照射中若しくは照射後に、超短パルスレーザビームの第2高調波若しくは第3高調波の波長のレーザビームを超短パルスレーザビームの照射位置に照射するものである。
【0013】
請求項2に記載の導波路の製造方法は、請求項1に記載の構成に加え、透明体の材料として、屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含んだSiO2ガラス、ポリマ材料、強誘電体材料を用いるのが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の導波路の製造方法は、請求項1または2に記載の構成に加え、第2高調波若しくは上記第3高調波の波長のレーザビームのスポット径を超短パルスレーザビームのスポット径よりも小さくするのが好ましい。
【0015】
請求項4に記載の導波路の製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の構成に加え、光伝播層の屈折率分布を2段階形状に形成してもよい。
【0016】
請求項5に記載の導波路の製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載の構成に加え、透明体の光伝播層以外の領域にさらに他のレーザビームを照射、集光して多数の空孔を有するフォトニックバンドギャップ構造を形成してもよい。
【0017】
本発明によれば、屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含む透明体に超短パルスレーザビームを集光、照射する前、照射中若しくは照射した後に、超短パルスレーザビームより波長の短いレーザビームを光伝播層若しくは光伝播層が形成される領域内に集光、照射することにより、光伝播層内の屈折率制御用添加物が熱拡散するので、照射部、すなわち光伝播層の屈折率をさらに高めることができる。また、光伝播層の幅方向の屈折率分布の形状を変えることもできる。
【0018】
また、本発明によれば、屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含んだSiO2ガラス、ポリマ材料、強誘電体材料等種々の材料へ、より高屈折率の伝播層を形成することができる。特に、ポリイミド、ポリシラン等のポリマ材料のような融点の低い材料に対して、波長が700nmから900nmの範囲でパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、繰り返し周波数が400kHz以下50kHz以上の超短パルスレーザビームの照射前、照射中若しくは照射後に超短パルスレーザビームの第2高調波または第3高調波の短い波長のレーザビームの照射により、ポリマ材料の吸収波長(紫外域の波長)ピークに近い波長のレーザビームでパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、繰り返し周波数が400kHz以下10kHz以上の超短パルスレーザビームを集光、照射することになるので、より効率的に高屈折率化を図ることができる。また、その屈折率分布の制御も容易となる。
【0019】
さらに、本発明によれば、第2高調波または第3高調波のレーザビームスポット径を基本波の波長700nmから900nmのレーザビームスポット径に比して1/2または1/3(0.36μmから0.24μm)に小さくすることができるので、光伝播層内の照射部の屈折率を局所的に高めること、すなわち、2段階屈折率分布を形成することができる。この結果、光信号を効率よく光伝播層内に閉じ込めて低損失で伝播させることができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、光伝播層として、透明層内に直線パターン、曲線パターン、面状パターンあるいはそれらを含むパターンで二次元あるいは三次元に形成することが容易になるので、光信号を分岐したり合流したり、種々の波長の光信号を分波したり、合波したりする光信号処理回路をより小型化、低損失化させることができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、透明体の光伝播層となる領域の両側に、多数の空孔からなるフォトニックバンドギャップ構造を形成し、その領域に光伝播層を形成することでより低損失な光伝播層を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、透明体を基板上に少なくとも一層形成したり、光伝播層、あるいはフォトニックバンドギャップ構造を各層の少なくとも一層内に形成することが容易になるので、より高機能の光信号処理回路を得ることができる。
【0023】
さらに、本発明によれば、透明体を透明体よりも屈折率の低い材料で覆うことによって、より低損失な光信号処理回路を得ることができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、より高屈折率分布で、その屈折率分布の制御も容易で、光信号を効率よく閉じ込めることが可能な導波路を容易に高精度で得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0026】
図1(a)は本発明の導波路の製造方法の一実施の形態を示す概念図であり、図1(b)は図1(a)の矢印A方向の矢視図であり、図1(c)は図1(b)の1c−1c線断面図である。図1(c)において横軸は屈折率を示し、縦軸は導波路の1c−1c線上の(厚さ方向の)位置を示す。
【0027】
同図に示す製造方法は、屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含む透明体としてのガラスブロック10を所望速度で一定方向(矢印11方向)に移動させながら、そのガラスブロック10内(若しくは表面)に、移動方向と直交する方向から超短パルスレーザビームの波長λ1の基本波のレーザビーム12−1と、そのレーザビーム12−1の第2高調波(若しくは第3高調波)のレーザビーム13−1とを同時に集光、照射することによって、ガラスブロック10の屈折率より高い屈折率の光伝播層14を形成するものである。
【0028】
透明なガラスブロック10としては、SiO2ガラス、Ge、P、B、Ti、F、Al等の屈折率制御用添加物を少なくとも一種類添加したSiO2ガラス、ポリイミドやポリシラン等のポリマ材料等を用いる。
【0029】
この透明なガラスブロック10の内部(或いは表面)に波長が800nmでパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、その繰り返し周波数が300kHzの超短パルスレーザビーム(平行ビーム)12−1を波長フィルタ(波長λ1の光は透過し、波長λ2の光は反射する波長フィルタ)16を透過させてレンズ15に導き、このレンズ15で集光、照射して(矢印12−2)その集光部の屈折率が高くなるように光伝播層14を形成する。
【0030】
この超短パルスレーザビーム12−2のガラスブロック10への照射と同時に超短パルスレーザビーム12−1の基本波の第2高調波(波長400nm、或いは波長266nmの第3高調波)でパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、その繰り返し周波数が300kHz以下10kHz以上の超短パルスレーザビーム(平行ビーム)13−1を全反射ミラー17及び波長フィルタ16で反射させてレンズ15に導き、集光、照射することにより(矢印13−2)、光伝播層14内の屈折率を高めることができる。また、光伝播層14の幅方向の屈折率分布の形状を変えることもできる。
【0031】
図1(c)において、実線L1で示す曲線は基本波レーザビーム12−2の照射による高屈折率化の状態を示し、破線L2で示す曲線は第2高調波レーザビーム13−2の照射による高屈折率化の状態を示している。
【0032】
このような屈折率分布特性が得られるのは、表1に示すように、波長800nmのレーザビームのビームスポット径が0.72μmであるのに対して、波長400nmのレーザビームのビームスポット径が0.36μmとなり、波長266nmのレーザビームのビームスポット径を0.24μmとすることができるためである。
【0033】
【表1】
【0034】
また、第2高調波、或いは第3高調波のレーザビームについては、ガラスブロック10中に含まれているOH基による吸収ピーク(1390nmの第4高調波あるいは第5高調波による吸収ピーク)に近い波長になるため、ガラスブロック10中に波長0.24μm、0.36μmのレーザビームが効率よく吸収されて高屈折率化が図られる。またこれらの波長のレーザビームはポリマ材料の紫外線での吸収ピークにも近いため、ポリマ材料の高屈折率化が促進される。
【0035】
図2は本発明の導波路の製造方法の他の実施の形態を示す概念図である。
【0036】
同図に示す製造方法は、基本波の超短パルスレーザビーム12−1をレンズ15−1で集光してガラスブロック10に照射して得られた光伝播層14aに、第2高調波(或いは第3高調波)のレーザビーム13−1をレンズ15−2で集光して照射することにより、光伝播層14aをさらに高屈折率化した光伝播層14を形成する方法である。すなわち、超短パルスレーザビームの照射後に、超短パルスレーザビームの第2高調波(第3高調波)の波長のレーザビームを超短パルスレーザビームの照射位置に照射する方法である。
【0037】
このような方法であっても図1(a)〜(c)に示した製造方法と同様の効果が得られる。また、超短パルスレーザビームの照射前に、超短パルスレーザビームの第2高調波(第3高調波)の波長のレーザビームを超短パルスレーザビームの照射予定位置(光伝播層形成予定位置)に照射しても同様の効果が得られる。
【0038】
図3(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、図3(b)は図3(a)の側面図であり、図3(c)は図3(b)の3cd−3cd線断面における屈折率分布を示し、図3(d)は図3(b)の3cd−3cd線断面における屈折率分布の変形例を示す。図3(c)、(d)において横軸は屈折率を示し、縦軸は導波路の3cd−3cd線上の位置(厚さ方向の位置)を示す。
【0039】
この導波路は、基板19上に透明体からなる透明層10aを形成した構造を有する。超短パルスレーザビームの基本波を集光して透明層10aに照射して得られた光伝播層14aに、第2高調波(或いは第3高調波)のレーザビームを集光して照射することにより、光伝播層14aをさらに高屈折率化した光伝播層14を形成したものである。
【0040】
屈折率の異なる基板を用いることにより、図3(c)や図3(d)に示すような屈折率分布を得ることができる。図3(c)及び図3(d)に示す特性曲線のうち実線で示す部分L4、L6は超短パルスレーザビームの基本波の照射によるものであり、破線で示す部分L3、L5は第2高調波(第3高調波)の照射によるものである。
【0041】
ここで、基板19にはガラス(石英、多成分)、半導体(Si、GaAs、InP等)、強誘電体(LiTaO5、LiNbO3等)、磁性体(セラミックス、アルミナ等)、プラスチックス(アクリル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ等)等を用いることができる。
【0042】
図4(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した光信号処理回路の正面図であり、図4(b)は図4(a)の4b−4b線断面図であり、図4(c)は図4(b)の4c−4c線断面内の屈折率分布を示す図である。図4(c)において横軸は屈折率を示し、縦軸は光信号処理回路の4c−4c線上の位置(幅方向の位置)を示す。
【0043】
同図に示す光信号処理回路は、光方向性結合器であり、矢印20方向から入力した光信号を、矢印21、22方向にそれぞれ等分配した光信号を出力させるようにした光分岐回路として作用させる場合と、矢印20方向から入力した波長λ1、λ2の光信号を、矢印21方向には波長λ1の光信号を出力させ、矢印22方向には波長λ2の光信号を出力させるようにした光分波器として作用させる場合とに用いることができる。
【0044】
このような構造において、光伝播層14−1、14−2内の屈折率分布を2段型形状(図4(c))にしておくことにより、結合部の長さLを短くすることができる。また、低損失特性を保持したままで各曲線部14−1r、14−2rの曲率半径を小さくすることができる。この結果、小型の光信号処理回路を実現することができる。
【0045】
なお、これらの光信号処理回路の他に、Y分岐回路、リング共振器回路、X交差型光回路、T字型光回路、アレイ導波路格子グレーティング等、直線状、曲線状、面状光伝播層を組み合わせた種々の光信号処理回路を構成することができる。また、光伝播層の途中、あるいはその端面側に、半導体レーザ、受光素子、半導体光増幅素子、光変調素子等の能動光素子や、レンズ、フィルタ、屈折率の異なる媒質(例えば、液体、固体材料)等の受動光素子を挿入したハイブリット型光回路を構成してもよい。この場合に光伝播層と光素子との間に屈折率のミスマッチングが生じるが、本発明では、光伝播層の途中の屈折率を第2高調波或いは第3高調波のレーザビームによる集光、照射である程度の範囲の比屈折率差(0.数%〜3%)を調整できるので、ミスマッチングを最小限に抑えることができる。
【0046】
図5(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した光回路の側面図であり、図5(b)は図5(a)の5b−5b線断面図であり、図5(c)は図5(b)の5c−5c線断面内の屈折率分布を示す図である。図5(c)において、横軸は屈折率を示し、縦軸は光回路の5c−5c線上の位置(幅方向の位置)を示す。
【0047】
この光回路は、基板19上の透明体からなる透明層10a内に光伝播層14−1、14−2を形成すると共に、光伝播層14−1、14−2の両側の透明層10a内にフォトニックバンドギャップ構造を形成するように多数の空孔23を形成したものである(空孔23の間隔は図では縦方向と横方向とが異なっているが等しくてもよい。)。
【0048】
この光回路は、透明層10aの光伝播層14−1、14−2となる光伝播層領域を除く非光伝播層領域にフォトニックバンドギャップ構造が構成されるように多数の空孔23を所定の間隔で縦横に形成し、光伝播層領域に二つの異なる波長のレーザビームを集光、照射して2段型形状の屈折率分布(図5(c))を有する光伝播層14−1、14−2を形成することにより得られる。
【0049】
この光回路の光伝播層14−1、14−2に矢印24方向に入力された光信号はほぼ直角に折り曲げられて矢印25方向に出力するようになっている。
【0050】
空孔23はレーザビームのエネルギーを、光伝播層14−1、14−2を形成するためのエネルギーより高くすることにより形成することができる。空孔23の直径dは1μm以下であり、空孔23の間隔sも1μm以下に形成される。各空孔23の形状や位置のわずかな乱れが光伝播特性に影響を及ぼさないようにするためには、光伝播層14−1、14−2内の屈折率を高くしておくことが重要である(図5(c))。
【0051】
なお、同図に示す光回路の他に、Y分岐回路、T字型分岐回路、リング共振器回路、光方向性結合器等を構成してもよい。また、光回路に能動光素子等を実装してもよい。
【0052】
図6(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、図6(b)は図6(a)の側面図である。
【0053】
同図に示す導波路は、光伝播層14が形成された透明層10aを、透明層10aと同程度かそれより低い屈折率を有する低屈折率層26、27でサンドイッチ状に挟んだ構造の導波路である。
【0054】
光伝播層14は透明層10aの表面からわずかに厚さ方向内に形成されるので、透明層10aを低屈折率層26、27で覆うことにより、透明層10a及び光伝播層14が保護されるので、長期的に光特性を安定化させることができる。
【0055】
図7(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、図7(b)は図7(a)の側面図である。
【0056】
同図に示す導波路は、光伝播層14−1a、14−1b、14−1cが形成された複数(図では3層であるが限定されない。)の透明層10a−1、10a−2、10a−3を積層した構造の導波路である。
【0057】
このような導波路は、高集積化、多機能化の上で有効な構造である。なお、各層にまたがって光伝播層を三次元的に形成し、光信号の入力端と出力端との位置が各層10a−1〜10a−3のいずれに形成されていてもよい。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されない。
【0059】
まず、基本波のレーザビームを集光、照射する前に第2高調波或いは第3高調波のレーザビームを集光、照射してもよい。光伝播層は透明体の内部に複数本形成されていてもよい。
【0060】
本発明により得られる導波路は、光伝播層の形状が数μmから10μm程度の範囲、比屈折率差が0.数%から3%の範囲のシングルモード用導波路に好適であるが、マルチモード用導波路を形成する場合にはレーザビーム径をデフォーカスにするか、レンズ倍率を下げてビーム径を大きくするようにすればよい。なお、それ以上に比屈折率差の大きい導波路を製造するには、透明体内に屈折率制御用添加物を少なくとも2種類、それぞれ10モル%以上、好ましくは30モル%程度添加したものを用いればよい。また、図6(a)、(b)に示した導波路構造において、透明体の厚さをレーザビームの径の大きさ程度に薄くしておき、その上下に低比屈折率の層を形成すれば、合計の比屈折率差を大きくすることができる。さらに、上記実施の形態では透明体を移動させる場合で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、超短パルスレーザビーム及び第2高調波(
第3高調波)を移動させて光伝播層を形成するようにしてもよい。
【0061】
以上において、本発明によれば、
(1)波長の異なる二つのレーザビームをほぼ同時に、または先後して集光、照射することにより、光伝播層内の中央部の屈折率をさらに高くすることができ、光伝播層の幅方向の屈折率分布の形状を変えることもできる。
【0062】
(2)屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含んだSiO2ガラス、ポリマ材料、強誘電体材料等種々の材料へ、より高屈折率の光伝播層を形成することができる。特に、ポリマ材料のような融点の低い材料に対して波長が700nmから900nmの範囲でパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、その繰り返し周波数が400kHz以下50kHz以上の超短パルスレーザビームを集光、照射前、照射中或いは照射後に700nmから900nmの波長の第2高調波或いは第3高調波の、より短波長の波長、すなわち、ポリマ材料の吸収波長(紫外域の波長)ピークに近い波長のレーザビームでパルス幅が1000フェムト秒以下30フェムト秒以上、その路繰り返し周波数が400kHz以下50kHz以上の超短パルスレーザビームを集光、照射することで、より効率よく高屈折率化を図ることができ、またその屈折率分布の制御も容易となる。
【0063】
(3)超短パルスレーザビームの第2高調波または第3高調波のレーザビームスポット径をその基本波の波長700nmから900nmのレーザビームスポット径に比して1/2〜1/3(0.36μm〜0.24μm)に小さくすることができるので、光伝播層の中央部の屈折率を局所的に高める、すなわち、2段型屈折率分布を形成することができる。この結果、光信号を効率よく光伝播層内に閉じ込めて伝播させることができる。
【0064】
(4)光伝播層として、透明体内に直線パターン、曲線パターン、面状パターン(スラブ導波路パターン)、或いはそれらを含むパターンで二次元、或いは三次元に形成することが容易であり、光信号を低損失で、かつ、小型構造で分岐、合流したり、種々の波長の光信号を分波、合波したりする光信号処理回路を実現することができる。また、光伝播層の両側の透明体内に多数の空孔を所定の間隔を隔てて縦横に形成したフォトニックバンドギャップ構造を構成することにより、低損失で光閉じ込めのよい導波路が得られる。
【0065】
(5)透明体を基板上に少なくとも一層形成したり、光伝播層、或いはフォトニックバンドギャップ構造を各層の少なくとも一層内に形成したりすることが容易にできるので、より高機能の光信号処理回路を得ることができる。
【0066】
(6)透明体を透明体より屈折率の低い低屈折率層で覆うことにより、より低損失で長期的に安定した光信号処理回路を得ることができる。
【0067】
(7)より高屈折率で、屈折率分布の制御が容易で、光信号を効率よく閉じ込めることができる導波路を、容易に高精度で製造することができる。
【0068】
(8)光伝播層の特定の領域の屈折率を変えることができる。すなわち、光伝播層の途中に光パワー分布を狭めたり、拡げたりするモード変換部を形成することができる。この結果、光伝播層の途中に屈折率の異なる能動光素子や受動光素子を挿入した場合のモード整合をとることができる。また、曲率半径の小さい曲線導波路を構成する際のその曲線部での放射損失を低減するため、曲線部での屈折率を意図的に高くすることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、低光散乱損失の導波路の製造方法の実現を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の導波路の製造方法の一実施の形態を示す概念図であり、(b)は(a)の矢印A方向の矢視図であり、(c)は(b)の1c−1c線断面図である。
【図2】本発明の導波路の製造方法の他の実施の形態を示す概念図である。
【図3】(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は(b)の3cd−3cd線断面における屈折率分布を示し、(d)は(b)の3cd−3cd線断面における屈折率分布の変形例を示す。
【図4】(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した光信号処理回路の正面図であり、(b)は(a)の4b−4b線断面図であり、(c)は(b)の4c−4c線断面内の屈折率分布を示す図である。
【図5】(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した光回路の側面図であり、(b)は(a)の5b−5b線断面図であり、(c)は(b)の5c−5c線断面内の屈折率分布を示す図である。
【図6】(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図7】(a)は本発明の導波路の製造方法を適用した導波路の正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図8】(a)は従来の導波路の製造方法を示す概念図であり、(b)は(a)に示した導波路の8b−8b線断面図であり、(c)は(b)に示した導波路の8c−8c線断面における屈折率分布を示す図である。
【符号の説明】
10 透明体
12−1、12−2 超短パルスレーザビーム
13−1、13−2 レーザビーム
14 光伝播層
15 レンズ
16 波長フィルタ
17 全反射ミラー
Claims (5)
- 少なくとも一種類の屈折率制御用添加物を含む透明体に超短パルスレーザビームを照射、集光させると共に該超短パルスレーザビーム若しくは上記透明体を相対移動させることにより集光部の屈折率を上記透明体の屈折率より高くして光伝播層を形成する導波路の製造方法において、
上記超短パルスレーザビームの波長を700nmから900nmの範囲内とし、
パルス幅を1000フェムト秒以下30フェムト秒以上とし、パルス繰り返し周波数を400kHz以下50kHz以上とすると共に、
上記超短パルスレーザビームの第2高調波若しくは第3高調波の波長のレーザビームのパルス幅を1000フェムト秒以下30フェムト秒以上とし、パルス繰り返し周波数を400kHz以下10kHz以上として、
上記超短パルスレーザビームの照射前、照射中若しくは照射後に、
上記超短パルスレーザビームの第2高調波若しくは第3高調波の波長のレーザビームを上記超短パルスレーザビームの照射位置に照射することを特徴とする導波路の製造方法。 - 上記透明体の材料として、屈折率制御用添加物を少なくとも一種類含んだSiO2ガラス、ポリマ材料、強誘電体材料を用いる請求項1に記載の導波路の製造方法。
- 上記第2高調波若しくは上記第3高調波の波長のレーザビームのスポット径を上記超短パルスレーザビームのスポット径よりも小さくする請求項1または2に記載の導波路の製造方法。
- 上記光伝播層の屈折率分布を2段階形状に形成する請求項1から3のいずれかに記載の導波路の製造方法。
- 上記透明体内の光伝播層以外の領域にさらに他のレーザビームを照射、集光して多数の空孔を有するフォトニックバンドギャップ構造を形成する請求項1から4のいずれかに記載の導波路。
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