JP3921526B2 - 結露防止材として有効な多孔質材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結露防止材として有用な多孔質材料、その製造方法及び結露防止材に関するものであり、更に詳しくは、天然鉱物であるカオリン系鉱物から、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を持つ、細孔分布が精密に制御された、所定の相対湿度の領域において優れた吸放湿特性を有する、結露防止材として有用なムライト系多孔質材料を製造する方法、その多孔質材料及びその用途に関するものである。
本発明は、床下調湿や押入等の結露防止に適した相対湿度60%から90%で吸放湿し、住宅の床下や押入等を適度な湿度に保つことができる結露防止材を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、我国の住宅建築様式においては、例えば、床下は、周囲をコンクリート側壁などで覆って、一辺が肩幅程度の矩形の出入口を空けただけのものが多く、風通しが不良なために多湿になりがちであり、木材腐朽菌の繁殖や湿気を好む白アリによる被害の原因となっている。そのため、従来から建築物床下の腐蝕を防止したり、生活の快適化、衛生化を図るために適した湿度環境を提供する試みが種々行なわれてきた。例えば、木炭、天然軽石などの調湿剤を床下地盤に直接撒いて、床下空間の湿度を低減する方法が古くから行なわれていた。しかし、この方法では、これらの材料の吸湿能力には限界があり、その効果も充分ではない。
【0003】
また、最近では、調湿材料として、珪藻土、アロフェン、セピオライト、鹿沼土などの無機系の粘土鉱物や、炭、シリカゲルなどが一般に使われている。しかしながら、無機系の粘土鉱物を調湿材料とした場合、一般に、吸湿能力はあるが、放湿能力が劣っているため、長期間の使用に対して充分な調湿能力を持ち合わせておらず、更に、得られる調湿材の産地により水蒸気の吸着量も大きく異なる。また、調湿材が水蒸気を急激に吸着及び脱着する湿度範囲もその産地により異なり、所望の湿度範囲で吸放湿する材料の選定が困難である。調湿材を、特に、床下の調湿に用いようとする場合、高湿度下での吸放湿が重要であるが、天然鉱物や炭などは、吸湿・放湿曲線の立上がりが相対湿度50%から60%にあり、床下調湿に適した相対湿度60%から90%、特に好ましい相対湿度80%付近では、常に飽和している状態となり、必ずしも最適な調湿材料といえるものではない。
【0004】
また、シリカゲルは、一度吸湿すると、加熱しない限り水分を放出しないので、床下の調湿材料としては不適当である。また、木材の腐れの原因となる腐朽菌の育成条件は、相対湿度80%以上であるため、床下調湿材としては、相対湿度80%付近において充分な吸湿力を求められる。一方、調湿能力を長期間維持するためには、相対湿度が低下した時、好ましくは相対湿度60%前後の時に、水蒸気を放出し、調湿能力が回復するものでなければならない。
【0005】
また、近年では、省エネ性を高めるため、住宅の高気密・高断熱化が進み、押入等の換気が不十分な場所においては、結露が生じやすく、その対策のため、塩化カルシウム等の乾燥剤が使用されることが多い。しかし、潮解性塩類は、繰り返し利用が困難であり、相対湿度が低下した時、好ましくは相対湿度60%前後の時に、水蒸気を放出し、調湿能力が回復する材料が押入等の結露防止用にも求められていた。このような調湿機能を有する天然材料として、稚内層珪質頁岩が報告されており(セラミックス協会学術論文誌,109巻,p.457−460,2001年)、床下調湿材として市販されているが、産出地が限られており、安定供給の面で難点がある。
【0006】
相対湿度80%付近で充分な調湿能力が期待できる多孔質材料の製造技術として、γ―アルミナ多孔体の製造方法がある(特開平7−267632)。この種の方法によれば、通常、2nmから4nm付近に細孔径の揃った鋭いピークを示し、10nmから数十nm付近にもピークを示し、平均孔径は3nmから6nm程度のγ−アルミナ多孔体を得ることができるが、この種の材料は、高湿度域である相対湿度90〜95%において毛管凝縮により水蒸気を吸収することが期待される半径4〜10nmの細孔が少ないため、結露防止材としては好ましくない。また、γ―アルミナ微粒子を連結している非晶質シリカを完全に溶解してしまうと、細孔構造が崩壊してしまう欠点があるため、多孔質材料の製造方法としては難点がある。
【0007】
このように、従来、種々の調湿材料が知られているが、現状では各種の問題点があって充分に満足いくものはなく、また、床下調湿に適した相対湿度で充分に吸放湿し、手軽に調湿効果が長時間に亘って有効に発揮できる調湿材料として有望な稚内層珪質頁岩は、安定供給の面で難点があるため、当該技術分野においては、新たな調湿材料の開発が要望されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解決することが可能な新しい調湿材料を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、カオリン系鉱物から得られる細孔分布が精密に制御された特定のムライト系多孔質材料を使用することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、床下調湿や押入等の結露防止に適した相対湿度60%から90%、特に好ましい相対湿度80%付近で吸湿力を有しながら、相対湿度60%付近においては放湿し、住宅の床下や押入等を適度な湿度に長期間に亘って保つことができる結露防止材を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示す、細孔半径1nmから10nm付近の細孔分布を有するムライト系多孔質材料及びその用途を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料からなる結露防止材を製造する方法であって、
(a)カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製する、
(b)上記熱処理物から非晶質シリカを溶出させる、
(c)上記(a)〜(b)により、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を持つムライト系多孔質材料を調製する、
ことを特徴とするムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
(2)上記カオリン鉱物を加熱する温度が1050〜1400℃である、前記(1)記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
(3)上記熱処理物をアルカリ又はフッ酸により処理して非晶質シリカを溶出させる、前記(1)記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
(4)上記熱処理物に対し、アルカリ又はフッ酸溶液を1から5モル/リットルの濃度で用いて処理する、前記(3)記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
(5)多孔質材料が、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示す、前記(1)記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
(6)特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料からなる結露防止材であって、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなることを特徴とする結露防止材。
(7)細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、相対湿度80%以上の領域で、全水蒸気吸着量の25%相当以上の水蒸気吸着量を有する、前記(6)記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材。
(8)前記(6)に記載の、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなる結露防止材を構成要素として含むことを特徴とする結露防止材。
(9)床下又は室内を調湿するための結露防止材である、前記(8)記載の結露防止材。
(10)前記(6)に記載の、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなる結露防止材を用いて所定の空間を調湿することを特徴とする当該空間の結露防止方法。
(11)上記ムライト系多孔質材料からなる結露防止材を用いて床下又は室内を調湿することを特徴とする、前記(10)記載の結露防止方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明者は、相対湿度50〜70%の環境を自律的に維持する材料として、γ−アルミナ系多孔質材料の研究を行った際、熱処理温度条件をムライトが生成する温度域にした場合、細孔半径1〜10nmのブロードな細孔分布を有する多孔質材料が得られる可能性を見出したが、その後、更に、床下調湿や押入等の結露防止に適した相対湿度60%から90%、特に好ましい相対湿度80%付近で吸湿能力を有し、住宅の床下や押入等を適度な湿度に長期間に亘って保つことができる結露防止材について鋭意研究を重ねた結果、カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製し、次いで、得られた熱処理物をアルカリ又はフッ酸にて処理して非晶質シリカを溶出させることにより得られる多孔質材料が、ある限られた温度領域で処理した場合においてのみ、細孔半径1nmから10nm付近のブロードな細孔分布を有し、相対湿度変動に応じて吸放湿を繰り返すことで、調湿能力が長期間持続する結露防止材として使用できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、結露防止材として有用な特定の細孔分布を有する多孔質材料を製造する方法であって、(1)カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製する、(2)上記熱処理物から非晶質シリカを溶出させる、(3)上記(1)〜(2)により、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を持つムライト系多孔質材料を調製する、ことを特徴とするムライト系多孔質材料の製造方法、そのムライト系多孔質材料、及び結露防止材等を提供するものである。
本発明のムライト系多孔質材料の製造方法について説明すると、本発明の方法では、カオリン系鉱物の相分離とアルカリ又はフッ酸による処理が行われる。即ち、本発明においては、まず、カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製する。
【0012】
カオリン系鉱物は、一般式:nSiO2 ・Al2 O3 ・mH2 Oで表わされるが、このようなカオリン系鉱物としては、具体的には、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アロフェン、イモゴライト等が挙げられる。本発明では、原料として、これらのカオリン系鉱物が使用されるが、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。なお、カオリナイトは、化学式:2SiO2 ・Al2 O3 ・2H2 Oで表わされる粘土鉱物であり、その粒子形状は、1μm程度の大きさの六角板状であり、結晶構造は、Al(O,OH)6 八面体層とSiO2 四面体層とが1:1でサンドイッチした層構造となっている。このカオリナイトの結晶を構成している層間に水分子が一層入り、数〜10μm程度の管状結晶となったものがハロイサイトである。
【0013】
このカオリン系鉱物を加熱すると、カオリン系鉱物→メタカオリン→スピネル(γ- アルミナ)+非晶質シリカ→ムライト+非晶質シリカ→ムライト+クリストバライトへと相変化する。このように、カオリン系鉱物をムライト相と非晶質シリカとに相分離させるには、通常、1050℃から1400℃、好ましくは1100℃から1200℃の温度で、100時間以下、好ましくは1から24時間程度加熱すればよい。しかし、本発明においては、結露防止材として好適な細孔分布を有するムライト系多孔質材料を調製するために、カオリン系鉱物に応じて、1050〜1400℃の温度範囲、より好ましくは1100〜1200℃、最も好適には1100℃前後の温度領域にて熱処理を行い、細孔分布を精密に制御して、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造の材料を調製する必要がある。
【0014】
この場合、カオリン系鉱物は、天然鉱物であるため、産地等によりその最適な熱処理条件が異なることは言うまでもない。例えば、カオリン系鉱物として、ジョージア産カオリナイトを用いる場合には、1100℃程度の温度で、1から24時間程度保持して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製することが好ましい。このように、本発明では、結露防止材として好適な特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料を調製するために、カオリン系鉱物の産地等に応じて、その熱処理条件を最適化して、好適な温度領域で熱処理を行うことが重要であるが、それらは、使用するカオリン系鉱物の性状に応じて適宜設定すればよい。
なお、本発明においては、上記加熱温度に昇温させる際には、通常、5から30℃/分程度の速度で昇温させ、また、上記加熱温度で上記時間保持した後、降温させる際には、5から50℃/分程度の速度で降温させることが望ましい。
【0015】
次に、本発明におけるアルカリ又はフッ酸による処理について説明すると、本発明においては、上記のようにして得られた熱処理物をアルカリ又はフッ酸にて処理してムライト系多孔質材料を製造する。このように、上記熱処理物を、アルカリ又はフッ酸にて処理すると、熱処理物中の非晶質シリカが選択的にアルカリ又はフッ酸にてその表面から内部に向かって溶解され、当該熱処理物は、多孔質化される。このようにして得られたムライト系多孔質材料には、非晶質シリカが残存している場合もある。
【0016】
上記熱処理物を、アルカリ又はフッ酸にて処理する際には、用いられるカオリン系鉱物の種類、アルカリの濃度と種類、あるいはフッ酸の濃度等にもよるが、例えば、熱処理物1g当りアルカリとして濃度1から5モル/リットル程度のKOH溶液を用いる場合には、通常、200℃以下、好ましくは25℃から200℃、更に好ましくは50℃から90℃の温度で、通常、100時間以下保持することが望ましい。
【0017】
例えば、カオリン系鉱物として、ジョージア産カオリナイトを用いて調製される熱処理物では、好適には、90℃の温度で、24時間程度アルカリ処理することが望ましい。アルカリ又はフッ酸にて処理する場合、熱処理物に対し、その溶液量は多いほど溶脱処理の面では有利であるが、処理量の面では、溶液量は少ないほど好ましい。好適には、例えば、熱処理物1に対し、アルカリ又はフッ酸溶液は1から5程度が望ましい。
【0018】
熱処理物に対し、アルカリ又はフッ酸が不足した時には、非晶質シリカの溶脱が不十分に終わる場合もある。その場合、上記アルカリ又はフッ酸処理を繰り返し行うことにより非晶質シリカの除去を行うことができることは言うまでもない。
【0019】
上記のように、カオリン系鉱物の熱処理物を、アルカリ又はフッ酸にて処理すると非晶質シリカは溶出されて細孔が形成され、より高い比表面積と大きな全細孔容積とを有するムライト系多孔質材料が得られる。本発明においては、上記アルカリとして、好適には、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が使用されるが、これらに制限されるものではない。上記方法により、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示し、また、相対湿度80%以上の領域で、全水蒸気吸着量の25%相当以上の水蒸気吸着量を有する、ムライト系多孔質材料を製造することができる。本発明では、このようにして、カオリン系鉱物の相分離とアルカリ又はフッ酸による処理の処理条件を最適化することにより、細孔分布が精密に制御された、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有しているムライト系多孔質材料が調製される。
【0020】
こうして得られた特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料は、床下等の調湿には、そのまま散布して用いることが可能であり、また、押入等の結露防止に用いるには、例えば、通気性を有する容器等に充填して使用することが可能である。また、当該多孔質材料を繊維等に漉き込み、紙製又は布製シート形状にて使用することも可能である。また、上記多孔質材料は、その調湿性能等を妨げないような適宜の工夫を付加することで、例えば、内装建材等の原料に利用できることは言うまでもない。
【0021】
【作用】
本発明は、カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製すること、及び当該熱処理物をアルカリ又はフッ酸により処理して非晶質シリカを溶出させること、それにより、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造からなるムライト系多孔質材料を製造すること、を特徴とするものであり、これらの製造工程における処理条件を最適化することにより、原料として、天然鉱物であるカオリン系鉱物を使用したにもかかわらず、細孔分布が精密に制御された、所定の相対湿度の領域において優れた吸放湿特性を有する、結露防止材として有用な多孔質材料を製造することを可能とするものである。即ち、本発明は、上記方法により、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示す、ムライト系多孔質材料からなる結露防止材を製造し、提供することを可能とするものである。本発明のムライト系多孔質材料では、後記する実施例に示されるように、その吸着・脱着等温線から、例えば、相対湿度70〜90%の範囲では9.7mass%であり、相対湿度60%において、相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気の大部分を放湿することが示された。
【0022】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものでない。
実施例1
(1)ムライト系多孔質材料の製造
原料として、中国産カオリン系鉱物(陜西省楡林地区産Coal-Kaolin )を用いた。この原料を乳鉢で解砕した後、70mesh(φ212μm)のふるい下を1100℃で24時間保持し、仮焼した。仮焼後の試料は、再び粉砕した後、試料3gに対し、15mlの1N KOH溶液中で90℃、24時間処理し、アルカリ可溶成分を溶脱させた。溶解処理後、試料をろ過により回収し、最初は1NKOH溶液で、その後、蒸留水で5回洗浄した。試料は、110℃に設定した恒温槽で乾燥させた。乾燥後、再び乳鉢により解砕し、70meshのふるい下をムライト系多孔質試料とした。
【0023】
(2)測定方法
比表面積は、105℃で加熱・真空脱気処理した試料を用いて、窒素ガスを用いたBET法により、比表面積自動測定装置(Sorptomatic 1900,Calro Erba社)で測定した。細孔径分布は、比表面積自動測定装置で測定した窒素吸着等温線をCranston-Inkley 法により解析して求めた。水蒸気吸着量は、測定温度(25℃)にて真空脱気処理した試料を用いて、吸着平衡測定装置(EAM−01,JTトーシ(株))で、相対湿度10〜95%の範囲で測定した。
【0024】
(3)結果
得られたムライト系多孔質試料の比表面積は、53.5m2 /g、細孔容積は、0.130ml/gであった。また、その細孔径分布を図1に示す。細孔半径1.5〜10nmの範囲にブロードな細孔分布を有することが判る。また、その吸着・脱着等温線を図2に示す。吸着等温線の立ち上がりは約70%付近であった。相対湿度60〜90%の範囲での吸湿量に着目すると、9.5mass%であったが、相対湿度70〜90%の範囲では7.9mass%であった。脱着等温線からは相対湿度約60%において、相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気の大部分を放湿することが示された。
【0025】
比較例1
(1)試料の製造
原料として、実施例1と同様に、中国産カオリン系鉱物(陜西省楡林地区産Coal-Kaolin )を用いた。この原料を乳鉢で解砕した後、70mesh(φ212μm)のふるい下を1000℃で24時間保持し、仮焼した。仮焼後の試料は、再び粉砕した後、試料3gに対し、15mlの1N KOH溶液中で90℃、24時間処理し、アルカリ可溶成分を溶脱させた。溶解処理後、試料をろ過により回収し、最初は1N KOH溶液で、その後、蒸留水で5回洗浄した。試料は、110℃に設定した恒温槽で乾燥させた。乾燥後、再び乳鉢により解砕し、70meshのふるい下をγ−アルミナ系多孔質試料とした。
【0026】
(2)測定方法
比表面積は、105℃で加熱・真空脱気処理した試料を用いて、窒素ガスを用いたBET法により、比表面積自動測定装置(Sorptomatic 1900,Calro Erba社)で測定した。細孔径分布は、比表面積自動測定装置で測定した窒素吸着等温線をCranston-Inkley 法により解析して求めた。水蒸気吸着量は、測定温度(25℃)にて真空脱気処理した試料を用いて、吸着平衡測定装置(EAM−01,JTトーシ(株))で、相対湿度10〜95%の範囲で測定した。
【0027】
(3)結果
得られた試料の比表面積は、70.7m2 /g、細孔容積は、0.113ml/gであった。また、その細孔径分布を図1に示す。細孔半径1.5〜4nmの範囲にシャープな細孔分布を有することが判る。また、その吸着・脱着等温線を図2に示す。吸着等温線の立ち上がりは約60%付近であった。相対湿度60〜90%の範囲での吸湿量に着目すると、6.8mass%であったが、相対湿度70〜90%の範囲では2.8mass%であった。脱着等温線からは相対湿度約60%では相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気において吸着していた水蒸気の約45%を放湿するに止まることが示された。
【0028】
実施例2
(1)試料の製造
原料として、アメリカ産カオリン系鉱物(ジョージア産カオリナイト)を用いた。この原料を乳鉢で解砕した後、70mesh(φ212μm)のふるい下を1100℃で24時間保持し、仮焼した。仮焼後の試料は、再び粉砕した後、試料3gに対し、15mlの3N KOH溶液中で90℃、24時間処理し、アルカリ可溶成分を溶脱させた。溶解処理後、試料をろ過により回収し、最初は1NKOH溶液で、その後、蒸留水で5回洗浄した。試料は、110℃に設定した恒温槽で乾燥させた。乾燥後、再び乳鉢により解砕し、70meshのふるい下をムライト系多孔質試料とした。
【0029】
(2)測定方法
比表面積は、105℃で加熱・真空脱気処理した試料を用いて、窒素ガスを用いたBET法により、比表面積自動測定装置(Sorptomatic 1990,FISONS Instruments社) で測定した。細孔径分布は、比表面積自動測定装置で測定した窒素吸着等温線をDolimore & Heal法により解析して求めた。水蒸気吸着量は、測定温度(25℃)にて真空脱気処理した試料を用いて、吸着平衡測定装置(EAM−01,JTトーシ(株))で、相対湿度10〜95%の範囲で測定した。
【0030】
(3)結果
得られたムライト系多孔質試料の比表面積は、79.7m2 /g、細孔容積は、0.202ml/gであった。また、その細孔径分布を図3に示す。細孔半径1〜10nmの範囲にブロードな細孔分布を有することが判る。また、その吸着・脱着等温線を図4に示す。吸着等温線の立ち上がりは約65%付近であった。相対湿度60〜90%の範囲での吸湿量に着目すると、11.2mass%であったが、相対湿度70〜90%の範囲では9.7mass%であった。脱着等温線からは相対湿度約60%において、相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気の大部分を放湿することが示された。
【0031】
比較例2
(1)試料の製造
原料として、実施例2と同様に、アメリカ産カオリン系鉱物(ジョージア産カオリナイト) を用いた。この原料を乳鉢で解砕した後、70mesh(φ212μm)のふるい下を1050℃、1150℃、1200℃で24時間保持し、仮焼した。仮焼後の試料は、再び粉砕した後、試料3gに対し、15mlの3NKOH溶液中で90℃、24時間処理し、アルカリ可溶成分を溶脱させた。溶解処理後、試料をろ過により回収し、最初は1N KOH溶液で、その後、蒸留水で5回洗浄した。試料は、110℃に設定した恒温槽で乾燥させた。乾燥後、再び乳鉢により解砕し、70meshのふるい下を比較試料とした。
【0032】
(2)測定方法
比表面積は、105℃で加熱・真空脱気処理した試料を用いて、窒素ガスを用いたBET法により、比表面積自動測定装置(Sorptomatic 1990,FISONS Instruments社)で測定した。細孔径分布は、比表面積自動測定装置で測定した窒素吸着等温線をDolimore & Heal 法により解析して求めた。水蒸気吸着量は、測定温度(25℃)にて真空脱気処理した試料を用いて、吸着平衡測定装置(EAM−01,JTトーシ(株))で、相対湿度10〜95%の範囲で測定した。
【0033】
(3)結果
1050℃処理品の比表面積は、108.3m2 /g、細孔容積は、0.242ml/gであった。また、1150℃処理品の比表面積は、34.2m2 /g、細孔容積は0.219ml/gであった。また、1200℃処理品の比表面積は、28.7m2 /g、細孔容積は、0.172ml/gであった。それらの細孔径分布を図3に示す。1150℃以上に仮焼して処理したものは、細孔半径1〜5nm付近の細孔が減少していた。それらの吸着・脱着等温線を図4に示す。1050℃処理品の吸着等温線の立ち上がりは約60%付近であった。相対湿度60〜90%の範囲での吸湿量に着目すると、11.1mass%であったが、相対湿度70〜90%の範囲では6.0mass%であった。脱着等温線からは相対湿度約60%では相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気において吸着していた水蒸気の約70%を放湿するに止まることが示された。1150℃処理品の吸着等温線の立ち上がりは約85%付近であった。相対湿度60〜90%の範囲での吸湿量に着目すると、2.5mass%であったが、相対湿度70〜90%の範囲では2.1mass%であった。脱着等温線からは相対湿度約60%では相対湿度60〜90%の範囲で吸着していた水蒸気において吸着していた水蒸気の大部分を放湿したが、実施例2との比較で明らかなように吸着能力は低下していた。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、1)天然鉱物のカオリン系鉱物を用いて、細孔分布が精密に制御された、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、結露防止材として有用なムライト系多孔質材料を製造し、提供することができる、2)床下調湿に適した相対湿度60%から90%、特に好ましい相対湿度80%付近で充分に吸湿能力を有し、住宅の床下を適度な湿度に長期間に亘って保つことができる床下調湿材が提供される、3)これを用いることによって、住宅の床下を適度な湿度に保ち、床下に用いられている木材の腐敗や、カビやダニの発生や繁殖を防ぐことができ、それによって、住宅の長寿命化、生活の快適化、衛生化を図ることができる、4)ムライト系多孔質材料は、安定なセラミック系材料であり、木炭等の様な可燃性材料とは異なるため、防火性の面からも安全な床下調湿材を提供できる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1及び比較例1の細孔分布を示す。
【図2】本発明の実施例1及び比較例1の水蒸気吸着・脱着等温線を示す。
【図3】本発明の実施例2及び比較例2の細孔分布を示す。
【図4】本発明の実施例2及び比較例3の水蒸気吸着・脱着等温線を示す。
Claims (11)
- 特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料からなる結露防止材を製造する方法であって、
(1)カオリン系鉱物を加熱して、ムライト相と非晶質シリカとに相分離された熱処理物を調製する、
(2)上記熱処理物から非晶質シリカを溶出させる、
(3)上記(1)〜(2)により、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を持つムライト系多孔質材料を調製する、
ことを特徴とするムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。 - 上記カオリン鉱物を加熱する温度が1050〜1400℃である、請求項1記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
- 上記熱処理物をアルカリ又はフッ酸により処理して非晶質シリカを溶出させる、請求項1記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
- 上記熱処理物に対し、アルカリ又はフッ酸溶液を1から5モル/リットルの濃度で用いて処理する、請求項3記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
- 多孔質材料が、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示す、請求項1記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材の製造方法。
- 特定の細孔分布を有するムライト系多孔質材料からなる結露防止材であって、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなることを特徴とする結露防止材。
- 細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、相対湿度80%以上の領域で、全水蒸気吸着量の25%相当以上の水蒸気吸着量を有する、請求項6記載のムライト系多孔質材料からなる結露防止材。
- 請求項6に記載の、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなる結露防止材を構成要素として含むことを特徴とする結露防止材。
- 床下又は室内を調湿するための結露防止材である、請求項8記載の結露防止材。
- 請求項6に記載の、細孔半径1nmから10nmの範囲にブロードな細孔分布を有する多孔質構造を有し、ケルビンの毛管凝縮理論に基づき、相対湿度60%から95%の領域で水蒸気吸着量の増加を示すムライト系多孔質材料からなる結露防止材を用いて所定の空間を調湿することを特徴とする当該空間の結露防止方法。
- 上記ムライト系多孔質材料からなる結露防止材を用いて床下又は室内を調湿することを特徴とする、請求項10記載の結露防止方法。
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