JP3920401B2 - 改良された重合体臭素化法 - Google Patents
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Description
【本発明の分野】
本発明はイソオレフィン重合体の臭素化を行う改良法、およびこのような改良法によって得られる生成物に関する。
【0002】
【本発明の背景】
イソオレフィン重合体は多年に亙って公知であり、イソオレフィンおよび共役ジオレフィンの重合体、特にイソブチレンおよびイソプレンの重合体として市販されている。このような重合体は広範囲の所望の性質をもっているが、高度の不飽和性をもった重合体。例えば1個またはそれ以上の共役ジオレフィンを高い割合で含む重合体と一緒に加硫することは容易ではない。このような問題を克服するために、イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体、特にブチル重合体として知られているイソブチレン−イソプレンをハロゲン化する方法が行われて来た。このハロゲン化、特に塩素化または臭素化は、ブチル重合体の不活性有機溶媒溶液を一定量の塩素または臭素で処理することによって達成される。ハロゲン化により得られたブチル重合体はブチル重合体の固有の満足すべき性質をもっており、同時に高度の不飽和性をもった重合体と一緒に加硫することができる。
【0003】
ハロゲン化法はかなり非能率的であることは良く知られている。この非能率性の理由の一つは、重合体の中に導入される各塩素または臭素原子に対し、1分子の塩化水素または臭化水素が生じることである。他の理由はこの塩化水素または臭化水素の若干量が重合体に付加し、化学的に望ましくない基を生じることである。さらに他の理由としては、塩素または臭素の実際の利用効率は非常に低く、一般に約25〜約40重量%程度であることが挙げられる。
【0004】
【従来法の説明】
ブチル重合体の製造法は公知であり、イソオレフィン、好ましくはイソブチレン、および共役ジオレフィン、好ましくはイソプレンを不活性希釈剤、好ましくは塩化メチル中において、フリーデル・クラフツ触媒、好ましくは塩化アルミニウムを存在させ、温度約−80〜−120℃において反応させる。このようにして得られたブチル重合体は約95〜約99.5モル%のイソブチレンと約0.5〜約5モル%のイソプレンを含んでいる。このような重合体を有機溶媒に溶解し、約10〜約60℃において好ましくは塩素または臭素と、重合体中の二重結合1個当たり1個以下の結合塩素、または重合体中の二重結合1個当たり3個以下、好ましくは1個以下のの結合臭素を含むような重合体が得られるのに十分な時間の間反応させる。例えば米国特許第2 944 578号および同第3 011 996号参照。米国特許第3 018 275号には、ハロゲン化工程の間過酸化水素、過酸化ナトリウム、塩素酸ナトリウムまたは臭素酸ナトリウム、および次亜塩素酸ナトリウムから成る群から選ばれる材料を含む酸化剤を存在させ、該工程におけるハロゲン化剤の利用率を向上させるブチル重合体のハロゲン化法が記載されている。
【0005】
【本発明の総括】
本発明の目的は工程中における臭素の利用率を向上させることによりイソブチレン重合体を臭素化する改良法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的はこの改良法を使用することにより改良された臭素化ブチル重合体を提供することである。
【0007】
従って、本発明の一態様においては、溶媒中にC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を含む溶液をつくり、該溶液に臭素を加え、温度約10〜60℃において該臭素を該重合体と反応させ、臭素の量が該重合体中の共役ジオレフィン1モル当たり約0.30〜約1.0モルである臭素化されたイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体を分離するC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を臭素化する方法において、該溶媒は不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有炭化水素を該パラフィン炭化水素対該ハロゲン含有炭化水素の容積比が約90/10〜約10/90になるような割合で含む混合物であり、該ハロゲン含有炭化水素はモノ−、ジ−またはトリ−ハロゲン化C1〜C6パラフィン炭化水素またはハロゲン化芳香族炭化水素であることを特徴とする改良法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様に従えば、該不活性混合物は誘電定数が少なくとも約2.5であり、好ましくは約3.0以上である。
【0009】
本発明の他の態様に従えば、該不活性飽和パラフィン炭化水素および該不活性ハロゲン含有炭化水素は約90/10〜約50/50、好ましくは約90/10〜約70/30の割合で存在する。
【0010】
本発明の一態様においては、溶媒中にC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を含む溶液をつくり、該溶液に臭素を加え、温度約10〜60℃において該臭素を該重合体と反応させ、臭素の量が該重合体中の共役ジオレフィン1モル当たり約0.30〜約1.0モルである臭素化されたイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体を分離するC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を臭素化する方法において、該溶媒が不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有ジオレフィンを該パラフィン炭化水素対該ハロゲン含有炭化水素の容積比が約90/10〜約10/90になるような割合で含む混合物であり、該ハロゲン含有炭化水素は塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれる改良法が提供される。
【0011】
本発明の特定の態様においては、飽和パラフィン炭化水素対ハロゲン含有炭化水素の比は好ましくは約90/10〜約50/50、さらに好ましくは約90/10〜約70/30である。
【0012】
本発明の他の態様においては、溶媒はさらに最高20容積%の水を含んでいる。
【0013】
本発明の他の態様においては、溶媒がさらに最高20容積%の酸化剤水溶液を含んでいる方法が提供される。この酸化剤は水溶性であり、この工程中重合鎖を実質的に酸化することなく臭化水素を酸化して臭素にするのに適している。特定の態様においては、酸化剤は次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ナトリウム、塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、または他の適当な酸化剤から成る群から選ばれる酸素を含んだ酸化剤である。
【0014】
本発明の一態様においては、溶媒は最高20容積%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を含み、次亜塩素酸ナトリウムの量は加えた臭素のモル数の約200%に対応する量よりも少ない。
【0015】
本発明のさらに他の態様においては、臭素化された重合体が臭素化された重合体に関して約1〜約4重量%の臭素を含み、結合した臭素原子の約80%より少なくない量が該重合体の加硫に関与するのに適した形で存在し、もとのイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体中の1,4−イソプレン単位の約70%より少なくない量が該重合体の加硫に関与するのに適した形に変わっている上記方法で製造された改良された臭素化イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体が提供される。
【0016】
【本発明の詳細な説明】
イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体、及び該重合体の製造法は公知である。イソオレフィンはC4〜C6イソオレフィンから選ばれ、イソブチレンが好適なイソオレフィンである。共役ジオレフィンはC4〜C6イソオレフィンから選ばれ、イソプレンが好適なジオレフィンである。このような重合体はイソオレフィン約95〜約99.5モル%、好ましくはイソブチレン約97〜約99.5モル%、および共役ジオレフィン約0.5〜約5モル%、好ましくはイソプレン約0.5〜約3モル%から成っている。この重合体は不活性希釈剤、好ましくは塩化メチル中において、温度約−80℃〜約−120℃で、フリーデル・クラフツ触媒、好ましくは塩化アルミニウムを存在させ、イソオレフィンと共役ジオレフィンとを陽イオン重合させることにより製造される。
【0017】
従来法の臭素化法においては、重合体を不活性炭化水素溶媒、例えばペンタン、ヘキサンおよびヘプタンに溶解し、この溶液をハロゲン化反応器に供給する。ハロゲン化反応器は典型的には入口および出口ラインおよび撹拌機を備えた容器である。重合体の量および該重合体の二重結合含量に関連して調節された割合で臭素をまたハロゲン化反応器に供給する。反応器から出て来る材料を水酸化ナトリウムのようなアルカリ水溶液で処理し、ハロゲン化反応によって生じた臭化水素を中和し、残留臭素と反応させ、次いで高温の水および水蒸気と接触させて溶媒を除去し、水中に臭素化された重合体を含むスラリをつくり、これを通常の方法で処理して実質的に乾燥した重合体を得る。回収工程において臭素化された重合体に対する安定剤を加えることができる。
【0018】
このような従来法においては、重合体に導入される各臭素原子に対して1分子の臭化水素が生成し、少量の臭化水素が重合体に付加し、実際に重合体に混入されるよりも多くの臭素を使用する必要があるため、ハロゲン化工程における臭素の利用率は悪い。
【0019】
本発明においては、不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有炭化水素から成る混合物を重合体に対する溶媒として使用すると、ハロゲン化工程を著しく改善し得ることが見出された。該パラフィン炭化水素は従来法において使用されているものと同じであり、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれる。ハロゲン含有炭化水素は極性物質であり、モノ−、ジ-またはトリ−ハロゲン化されたC1〜C6炭化水素、またはハロゲン化芳香族炭化水素である。好ましくはハロゲン含有炭化水素は塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれる。該パラフィン炭化水素対ハロゲン含有炭化水素の容積比は約90〜10部対約10〜90部である。この容積比はパラフィン炭化水素対ハロゲン含有炭化水素として好ましくは約90/10〜約50/50であり、さらに好ましくは約90/10〜約70/30である。溶媒はまた全溶媒に関し最高約20容積%、好ましくは約3〜約15容積%の水を含んでいることができる。さらに溶媒は全溶媒に関し最高約20容積%、好ましくは約3〜約15容積%の酸化剤水溶液、例えば次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ナトリウム、塩素酸または臭素酸ナトリウムから成る群から選ばれる酸素を含んだ酸化剤水溶液を含んでいることができる。この酸化剤は水溶性であり、工程中において重合鎖を実質的に酸化することなく臭化水素を酸化して臭素にするのに適している。重合体の酸化を防ぐかまたはこれを最小限度に抑制するためには、次亜塩素酸ナトリウムのような弱い酸化剤を低濃度で使用することが好適である。 好ましくは酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムの水溶液から成り、次亜塩素酸ナトリウムの量は工程に加えた臭素のモル数の約200%以下、好ましくは約100〜約140%に相当する量である。
【0020】
このような混合物を重合体に対する溶媒として使用すると、重合体中に混入されて該重合体の加硫に関与する化学構造をつくる臭素の量が増加する。本発明方法において一定の反応時間の間に工程に供給された臭素の約85モル%が重合体中に導入されて重合体の加硫に関与する化学構造をつくることが見出された。これとは対照的に従来法においては、僅かに約60〜70モル%の臭素が導入されるに過ぎない。溶媒がパラフィン炭化水素とハロゲン含有炭化水素とから成る場合、所望の化学構造をつくるのに利用される臭素の利用率の改善は容積比90/10において明白であり、80/20でもっと多くなり、最高約50/10、最高約40/60、および最高約10/90においても多くなる。溶媒がパラフィン炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および水から成る場合、所望の化学構造をつくるのに利用される臭素の利用率の改善は幾分大きい。これは反応で生じる臭化水素が好適にも水溶性であり、臭化水素が付加された構造をつくるのに容易に使用されることがないためであると思われる。溶媒がパラフィン炭化水素、ハロゲン含有炭化水素および次亜塩素酸ナトリウム水溶液から成る場合、所望の化学構造をつくるのに利用される臭素の割合の改善はかなり大きく、工程に供給された臭素の最高約190モル%になることもできる。このことは反応中に生じた臭化水素が次亜塩素酸ナトリウムによって酸化されて臭素になり、これがさらに重合体と反応し得るからであると考えられる。
【0021】
本発明の範囲を限定するつもりはないが、臭素利用率の改善は、不活性炭化水素溶媒中で製造されたイソオレフィン−共役ジオレフィンの溶液に、選ばれたハロゲン含有炭化水素を加えることにより反応媒質の誘電定数を増加させることによって達成されると考えられる。ハロゲン含有炭化水素の誘電定数は、改善された臭素利用率を得るために溶媒を選択し、該混合物中のハロゲン含有炭化水素の量を決定する指標として使用できものと思われる。下記表Aに若干のハロゲン含有炭化水素およびヘキサンの誘電定数を掲げた。この理論によると、すべてのハロゲン含有炭化水素が本発明方法に適しているとは言えないことがこの表から明らかである。例えば四塩化炭素の誘電定数はヘキサンよりも僅かに大きいだけであり、従って該混合物の組成の如何に拘らず僅かな改善が期待できるだけである。他方、塩化メチレンは高い誘電定数をもっているため、これを少量加えると、反応混合物の誘電定数は十分に増加する。例えば、約30%の四塩化炭素を加えても誘電定数は1.85から僅かに1.96に増加するに過ぎない。同じ量の塩化メチレンを加えると、誘電定数が3.82の混合物が得られるであろう。混合物の誘電定数は下記式を用いることにより容易に計算される:
εmixt = ε1*Φ1 + ε2*Φ2
ここでεmixt、ε1およびε2はそれぞれ混合物および二つの成分の誘電定数であり、Φ1およびΦ2は成分1および2の容積分率である。
【0022】
表A − 数種の溶媒の誘電定数
ハロゲン化された溶媒 45℃における誘電定数
ヘキサン 1.85
四塩化炭素 2.19
クロロフォルム 4.38
ブロモベンゼン 5.11
クロロベンゼン 5.30
塩化n−ブチル 6.42
ブロモエタン 8.16
塩化メチレン 8.23
塩化メチル 8.64
ジクロロエタン 9.17
実験#2の結果から、著しい改善を得るためには誘電定数を約2.5に増加させれば十分であると推定できる。しかしεmixt=3.1である実験#3で示されるように、誘電定数が約3以上の混合物では予想外の結果が得られる。
【0023】
このような発見は、工程に供給される臭素の量を減少させることができ、臭素化された重合体と共に臭素化反応器を出る過剰の量の臭素を減少させ、従ってそれと反応させるのに必要なアルカリ水溶液の量を減少させることができ、重合体中で化学的に結合される臭素の量を以後の加硫工程においてより効率的に使用でき、重合体の不飽和度(結合した共役ジオレフィンの量)を減少させることができることを意味する。何故ならば臭素が十分に利用されるようになると、従来法に比べ重合体中の不飽和結合が一層効果的に臭素化されるからである。
【0024】
臭素化された重合体中における所望の化学構造はエキソ臭化アリル構造、エンド臭化アリル構造、および再配列されたエキソ臭化アリル構造を含んでいる。これらのすべての場合において臭素原子は炭素−炭素二重結合をもつアリル型の配置にある炭素原子に結合して存在している(即ちC=C−CBrとして)。ここでエキソおよびエンドは通常の意味をもっている。これらの場合臭素原子は化学的に非常に活性であり、後で行われる加硫工程に関与する。これとは対照的に臭化水素が炭素−炭素二重結合に付加する場合には、この配置にある臭素原子は後での加硫工程において化学的な活性は遥かに少ない。これらの種々の化学構造の量は500MHzのHNMRにより容易に極めて高い精度で決定することができる。エキソ臭化アリル構造は主要な構造であり、通常所望の化学構造の約75〜約85%をなしている。従って全主要構造はエキソ臭化アリル、エンド臭化アリルおよび再配列した臭化アリルの全部を意味し、本発明の生成物では、結合した臭素原子の約80%より少なくない量が後で活性的に加硫工程に関与するこのような配置をとっている。本発明方法を用いれば、結合した1,4−イソプレン単位の多くがこの主要構造に変化する。本発明方法では70%以上で最高90%またはそれ以上がこの主要構造に変化するが、従来法では約50〜約60%がこのような変化をするに過ぎない。結合した1,4−イソプレン単位の割合として表した全主要構造が明らかにこの効果を示している。
【0025】
臭素化工程は約10〜約60℃、好ましくは約20〜約50℃の温度で行われ、反応時間は約1〜約10分、好ましくは約1〜約5分であることができる。ハロゲン化反応器の中の圧力は約0.8〜約10バールであることができる。
【0026】
ハロゲン化工程から回収された臭素化された重合体は典型的にはムーニイ粘度(125℃におけるML 1+8)で表して約25〜約55の分子量をもっている。ブロモブチル重合体のような臭素化された重合体は、重合体の炭化水素含量に関し約0.5〜約3モル%、最も好ましくは約1〜約2モル%のイソプレン、および約97〜約99.5モル%、最も好ましくは約98〜約99モル%のイソブチレンを含み、ブロモブチル重合体に関し約1〜4重量%、好ましくは約1.5〜約3重量%の臭素原子を含んでいる。さらに本発明の生成物は重合体の加硫に関与するのに適した形の結合した臭素原子を約80%より少なくない量で含んでいる。従来法の生成物では、炭素−炭素二重結合に臭化水素分子が付加する結果として結合した臭素の量は少なく、加硫工程において臭素原子は実質的に不活性である飽和基が生じる。本発明の生成物においては、炭素−炭素二重結合に臭化水素分子が付加する結果として重合体中に存在する結合した臭素の量は従来法よりも減少している。臭素化された重合体の構造組成を決定する方法は500MHzのHNMRで分析する方法である。イソブチレン−イソプレン重合体においては、1,4−配置で結合したイソプレンはHNMRで約5.1ppmで共鳴する。臭素化されたイソブチレン−イソプレン重合体においては、エキソ臭化アリル構造に対応する約5.4、5.05および4.35ppm、エンド臭化アリル構造に対応する約5.6ppm、および再配置エキソ臭化アリル構造に対応する約4.08および4.10ppmに共鳴が観測される。臭化水素化された構造は物質収支から計算される。また本発明方法の生成物においては、臭素原子と反応した(加硫工程で活性がある不飽和臭素含有基をつくるために)炭素−炭素二重結合の割合は、従来法の生成物の場合よりも遥かに高い。従って本発明方法の生成物は加硫工程に関与するのに適した形の結合した臭素原子を高い割合で含んでいる。
【0027】
臭素化された重合体は加硫を行うのに使用される。重合体の加硫は公知である。カーボンブラックは当業界において加硫物を補強するものとして良く知られており、配合工程中重合体に加えられる。炭化水素の伸展油も配合工程に使用される公知の材料である。一般にカーボンブラックはファーナス・カーボンブラックおよびチャンネル・カーボンブラックから選ばれ、重合体100重量部当たり約20〜約90重量部の量で使用することができる。炭化水素伸展油はパラフィン油、ナフテン油および芳香族油から、好ましくはパラフィン油およびナフテン油から選ばれ、重合体100重量部当たり約5〜約40重量部の量で使用される。本発明方法と共に使用される加硫システムはブロモブチル重合体と共に使用される当業界に公知のものであり、一般に金属酸化物、少なくとも1種の硫黄をベースにした促進剤、および随時元素状の硫黄を含んでいる。適当な金属酸化物は酸化亜鉛であり、重合体100重量部当たり約1〜約7重量部の量で使用される。適当な硫黄をベースにした促進剤は硫化チウラム、チオカーバメート、チアジル化合物およびベンゾチアジル化合物から選ぶことができる。このような促進剤の量は重合体100重量部当たり約0.3〜約3重量部である。元素状の硫黄は重合体100重量部当たり最高2重量部の量で存在することができる。種々の安定剤、酸化防止剤、粘着化剤等を配合工程で加えることができる。配合自身はゴム混練機または内部混合機を使用する通常の方法により、一または二段階で温度をコントロールして約80℃以下に保ち、一般に硬化活性成分を最後に添加して行われる。このようにして生じた配合物を次に成形し、約150〜約200℃の温度において約5〜約60分加熱することにより加硫する。
【0028】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0029】
実施例 1
1.75モル%のイソプレンを含むイソブチレン−イソプレン重合体20gを270mlの純ヘキサンまたは純ヘキサン/純ジクロロメタン混合物に溶解し、これを撹拌機および2個の試薬添加口を備えた0.5Lのガラス製反応器に移す。ヘキサン10ml中に0.3gの純臭素を含む注射器を該添加口の一つに取り付ける。他の添加口には水酸化ナトリウム6.4重量%水溶液10mlを含む注射器を取り付ける。温度は約23℃であった。反応混合物を光から保護し、重合体または溶媒が光による臭素化が誘起されるのを防いだ。撹拌機を始動させ、撹拌機を作動させながら臭素溶液を添加し、所望の反応時間の終わり(2分)に水酸化ナトリウム溶液を加えて反応を停止させる。さらに2分後撹拌機を停め、ヘキサン中に重合体の安定剤を含む溶液を少量加える。中性になるまでこの溶液を蒸溜水で洗滌し、重合体安定剤のヘキサン溶液をさらに少量加え、回転蒸発器中において大部分の溶媒を除去し、次いで真空炉中で最終的に乾燥して臭素化された重合体を回収した。
【0030】
詳細点を表1に掲げる。この結果を調べると、ジクロロメタンが溶媒の20容積%に達すると、エキソ構造、臭素含量および主要構造が実質的に最大になり、未反応のイソプレンおよび臭化水素化された構造は実質的に最低になることが飽きえあかに示される。これらのデータは500MHzのHNMRスペクトルによる分析から得たが、臭素含量だけは酸素燃焼法によって決定した。HNMRスペクトルは1,4−結合イソプレン連鎖による約5.1ppmの共鳴ピークが著しく減少し、エキソ構造に対する約5.4、5.05および4.35ppmのピークが著しく増加していることを示している。全臭素含量の割合としての全主要構造は重合体加硫に関与するのに適した形の結合した臭素原子の量の目安になる。
【0031】
実施例 2
溶媒としてヘキサン−ジクロロメタン混合物を用いて二つの異なったイソブチレン−イソプレン重合体の試料を本発明方法により臭素化した。臭素化および分析データに対しては実施例1記載の方法を用いた。100重量部の重合体を60重量部のファーナス・ブラック(N660)、4重量部の粘着化用樹脂(ペンタリン(Pentalyn) A)、7重量部のパラフィン油(サンパー(SUNPAR)2280)、1重量部のステアリン酸、1.3重量部の硫化メルカプトベンゾチウラム(Vulkacit DM/C)、0.5重量部の硫黄および3重量部の酸化亜鉛と混合して重合体の配合を行い、この配合混合物を成形してシートにし、加熱して加硫した。臭素化、臭素化された重合体の特性および加硫物の性質に関する詳細を表IIに掲げる。実質的に完全にイソプレンが利用され、また臭化水素化された構造が少ないことがこの表に明らかに示されている。
【0032】
実施例 3
塩化メチルを塩素含有炭化水素として使用した。詳細を表IIIに示す。実施例1の方法を使用したが、臭素化反応の温度はやはり約23℃であった。
【0033】
実施例 4
実施例1記載のような装着を行った0.5Lのガラス製反応器に、溶媒270ml中にブチル重合体(イソプレン1.77モル%を含むイソブチレン−イソプレン重合体)20gの溶液を加えた。使用した溶媒を表IVに示した。撹拌機を作動させながら重合体溶液を45℃に加熱し、次いで水または次亜塩素酸水溶液18mlを加え、溶液中に十分に分散させた。これに臭素0.18mlを加え、混合物の撹拌を継続した。2分の反応時間の後、水酸化ナトリウムの6%水溶液20mlを加えて反応を停め、実施例1記載の方法で臭素化された重合体を回収した。
【0034】
500MHzのHNMRで重合体を分析した結果を表IVに示す。実験#10は溶媒としてヘキサンと水だけを使用したから対照例である。この結果において生成物の性質の改善は明白である。
【0035】
実施例 5
実施例4記載の重合体および方法を用いたが、溶媒はヘキサンと四塩化炭素と(それぞれ190mlおよび80ml)、および実験#13に対しては水18ml、実験#14に対しては次亜塩素酸ナトリウム水溶液(18ml)の混合物であった。本実施例は対照例であり、表Vのデータに示されるようなハロゲン含有炭化水素の代わりに四塩化炭素を用いた場合には、本発明の改善は得られないことを示している。
【0036】
定義
ハロゲン化された溶媒に関連した不活性という言葉は、臭素化条件下において臭素との反応に対し不活性であることを意味する。
【0037】
上記実施例は勿論本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神または添付特許請求の範囲を逸脱することなく本発明の種々の変形を行うことができる。
【0038】
本発明の主な特徴及び態様は次の通りである。
1. 溶媒中にC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を含む溶液をつくり、該溶液に臭素を加え、温度約10〜60℃において該臭素を該重合体と反応させ、臭素の量が該重合体中の共役ジオレフィン1モル当たり約0.30〜約1.0モルである臭素化されたイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体を分離するC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を臭素化する方法において、該溶媒は不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有炭化水素を該パラフィン炭化水素対該ハロゲン含有炭化水素の容積比が約90/10〜約10/90になるような割合で含む混合物であり、該ハロゲン含有炭化水素はモノ−、ジ−またはトリ−ハロゲン化C1〜C6パラフィン炭化水素またはハロゲン化芳香族炭化水素であることを特徴とする改良法。
【0039】
2.該不活性飽和パラフィン炭化水素および該不活性ハロゲン含有炭化水素は約90/10〜約40/60、好ましくは約90/10〜約50/50、さらに好ましくは約90/10〜約70/30の割合で存在する請求項1記載の方法。
【0040】
3.該混合物の誘電定数は少なくとも約2.5である請求項1または2記載の方法。
【0041】
4.該混合物の誘電定数は少なくとも約3.0である請求項1または2記載の方法。
【0042】
5.該溶媒はさらに最高20容積%の水を含んでいる請求項1、2、3または4記載の方法。
【0043】
6.溶媒はさらに、工程中重合鎖を実質的に酸化することなく臭化水素を酸化して臭素にするのに適した水溶性の酸化剤の水溶液を最高20容積%含んでいる請求項1、2、3または4記載の方法。
【0044】
7.溶媒はさらに次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ナトリウム、塩素酸ナトリウムまたは臭素酸ナトリウムから成る群から選ばれる酸素を含んだ酸化剤を最高20容積%含んでいる請求項1、2、3または4記載の方法。
【0045】
8.溶媒は最高20容積%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を含み、次亜塩素酸ナトリウムの量は加えた臭素のモル数の約200%に対応する量よりも少ない請求項1、2、3または4記載の方法。
【0046】
9.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体である請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法。
【0047】
10.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含み、イソプレンを約0.5〜約3モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体であり、溶媒はペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれるパラフィン炭化水素と塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれるハロゲン含有炭化水素を約90/10〜約40/60、好ましくは約90/10〜約50/50、さらに好ましくは約90/10〜約70/30の容積比で含む混合物であり、反応は温度約20〜約50℃、反応時間約1〜5分で行われる請求項9記載の方法。
【0048】
11.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含み、イソプレンを約0.5〜約3モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体であり、溶媒はペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれるパラフィン炭化水素と塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれるハロゲン含有炭化水素を約90/10〜約40/60、好ましくは約90/10〜約50/50、さらに好ましくは約90/10〜約70/30の容積比で含む混合物、および溶媒の約3〜約15容積%をなす水から成る混合物であり、反応は温度約20〜約50℃、反応時間約1〜5分で行われる請求項9記載の方法。
【0049】
12.溶媒中にC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を含む溶液をつくり、該溶液に臭素を加え、温度約10〜60℃において該臭素を該重合体と反応させ、臭素の量が該重合体中の共役ジオレフィン1モル当たり約0.30〜約1.0モルである臭素化されたイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体を分離するC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を臭素化する方法において、該溶媒が不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有ジオレフィンを該パラフィン炭化水素対該ハロゲン含有炭化水素の容積比が約90/10〜約10/90になるような割合で含む混合物であり、該ハロゲン含有炭化水素は塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれる改良法。
【0050】
13.該不活性飽和パラフィン炭化水素および該不活性ハロゲン含有炭化水素は約90/10〜約40/60、好ましくは約90/10〜約50/50、さらに好ましくは約90/10〜約70/30の割合で存在する請求項12記載の方法。
【0051】
14.該溶媒はさらに最高20容積%の水を含んでいる請求項12または13記載の方法。
【0052】
15.溶媒は最高20容積%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を含み、次亜塩素酸ナトリウムの量は加えた臭素のモル数の約200%に対応する量よりも少ない請求項12または13記載の方法。
【0053】
16.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含み、イソプレンを約0.5〜約3モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体であり、溶媒はペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれるパラフィン炭化水素と塩化メチル、塩化エチルおよび塩化n−ブチルから成る群から選ばれるハロゲン含有炭化水素を約90/10〜約50/50、好ましくは約90/10〜約70/30の容積比で含む混合物であり、反応は温度約20〜約50℃、反応時間約1〜5分で行われる請求項12または13記載の方法。
【0054】
17.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含み、イソプレンを約0.5〜約3モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体であり、溶媒はペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれるパラフィン炭化水素と塩化メチル、塩化エチルおよび塩化n−ブチルから成る群から選ばれるハロゲン含有炭化水素を約90/10〜約50/50、好ましくは約90/10〜約70/30の容積比で含む混合物、および溶媒の約3〜約15容積%をなす水から成る混合物であり、反応は温度約20〜約50℃、反応時間約1〜5分で行われる請求項12または13記載の方法。
【0055】
18.該イソオレフィン−共役ジオレフィン重合体はイソブチレンを約97〜約99.5モル%含み、イソプレンを約0.5〜約3モル%含むイソブチレン−イソプレン重合体であり、溶媒はペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから成る群から選ばれるパラフィン炭化水素と塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエタン、塩化n−ブチルおよびモノクロロベンゼンから成る群から選ばれるハロゲン含有炭化水素を約90/10〜約50/50、好ましくは約90/10〜約70/30の容積比で含む混合物、および用ないの約3〜約15容積%をなす次亜塩素酸ナトリウム水溶液から成る混合物であり、反応は温度約20〜約50℃、反応時間約1〜5分で行われる請求項15記載の方法。
【0056】
19.請求項15記載の方法の生成物。
【0057】
20.臭素化されたイソブチレン−イソプレン重合体は臭素化された重合体に関し約1〜約4重量%の臭素を含み、結合した臭素の80%より少なくない量の臭素が該重合体の加硫に関与するのに適した形で存在し、もとのイソブチレン−イソプレン重合体の1,4−イソプレン単位の約70%より少なくない量が臭素化された重合体中において該重合体の加硫に関与するのに適した形に変化している請求項16記載の方法の生成物。
【0058】
21.臭素化されたイソブチレン−イソプレン重合体は臭素化された重合体に関し約1〜約4重量%の臭素を含み、結合した臭素の80%より少なくない量の臭素が該重合体の加硫に関与するのに適した形で存在し、もとのイソブチレン−イソプレン重合体の1,4−イソプレン単位の約70%より少なくない量が臭素化された重合体中において該重合体の加硫に関与するのに適した形に変化している請求項18記載の方法の生成物。
【0059】
22.臭素化されたイソブチレン−イソプレン重合体は臭素化された重合体に関し約1〜約4重量%の臭素を含み、結合した臭素の80%より少なくない量の臭素が該重合体の加硫に関与するのに適した形で存在し、もとのイソブチレン−イソプレン重合体の1,4−イソプレン単位の約70%より少なくない量が臭素化された重合体中において該重合体の加硫に関与するのに適した形に変化している請求項19記載の方法の生成物。
【0060】
23.請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載の方法の生成物。
【0061】
24.臭素化されたイソブチレン−イソプレン重合体は臭素化された重合体に関し約1〜約4重量%の臭素を含み、結合した臭素の80%より少なくない量の臭素が該重合体の加硫に関与するのに適した形で存在し、もとのイソブチレン−イソプレン重合体の1,4−イソプレン単位の70%少なくない量が臭素化された重合体中において該重合体の加硫に関与するのに適した形に変化している請求項10または11記載の方法の生成物。
Claims (1)
- 溶媒中にC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を含む溶液をつくり、該溶液に臭素を加え、温度 10〜60℃において該臭素を該重合体と反応させ、臭素の量が該重合体中の共役ジオレフィン1モル当たり 0.30〜 1.0モルである臭素化されたイソオレフィン−共役ジオレフィン重合体を分離するC4〜C6イソオレフィン−C4〜C6共役ジオレフィン重合体を臭素化する方法において、該溶媒は不活性飽和パラフィン炭化水素および不活性ハロゲン含有炭化水素を該パラフィン炭化水素対該ハロゲン含有炭化水素の容積比が 90/10〜 10/90になるような割合で含み少なくとも 2.5 の誘電定数を有する混合物であり、該ハロゲン含有炭化水素はモノ−、ジ−またはトリ−ハロゲン化C1〜C6パラフィン炭化水素またはハロゲン化芳香族炭化水素であることを特徴とする改良法。
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