JP3919844B2 - エポキシコハク酸誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なエポキシコハク酸誘導体およびそれを用いた骨疾患の治療薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
骨組織は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返しており、このバランスの上に骨の構造および量が保持されている。しかし、骨吸収が優位な状態になると骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症、骨ページェット病などの骨疾患を発症する。
【0003】
破骨細胞による骨吸収は、ミネラルの溶解(脱灰)と骨基質の分解のステップに分けることができ、骨基質の分解はリソソーム酵素により起こると考えられている。最近の研究では、リソソーム酵素の中で中心的に働いているものはシステインプロテアーゼであるカテプシンLや、カテプシンL類似の酵素であるといわれている(掛川、勝沼、Molecular Medicine, 30(10), 1310-1318(1993) および手塚ほか、J. Biol. Chem., 269, 1106-1109(1994))。また、システインプロテアーゼ阻害剤が骨吸収を抑制することが報告されている(J.M. Delaisse ほか、 Biochem. Biophys., Res. Commun., 125, 441-447(1984))。そこで、カテプシンLをはじめとするシステインプロテアーゼを阻害する化合物は、骨粗鬆症などの骨疾患の治療に有望であると考えられている。
【0004】
例えば、いくつかのエポキシコハク酸誘導体を骨疾患の治療に用いることが既に提案されている(特開昭63−284127号、特開平2−218610号各公報)。しかしながら、システインプロテアーゼ阻害剤を臨床的に使用した例はなく、その研究は緒に就いたばかりである。
特公昭61−55509号公報は、チオール基がその活性の発現に関与する蛋白分解酵素の阻害剤として、エポキシコハク酸誘導体(エポキシスクシナム酸化合物)を開示している。しかしながら、オキシラン環に結合しているN−置換カルバモイル基の窒素原子に隣接する炭素原子が分岐している化合物、、例えば、ジフェニルメチルカルバモイル、(3−メチル−1−フェニルブチル)カルバモイル等は開示されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症、骨ページェット病等の骨疾患の予防または治療に有用な化合物および薬剤を提供することである。
本発明の目的はまた、カテプシンL活性の異常亢進を伴なう骨関節炎やリウマチ性関節炎の治療に有用な化合物および薬剤を提供することにもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題の解決のために鋭意研究した結果、下記式(以後、式(I)ということもある)で表わされる右側のアミドの置換基が分岐していることを特徴的構成とするエポキシコハク酸誘導体またはその塩が、前記の特公昭61−55509号公報に開示されているエポキシコハク酸誘導体と比べて更に強力な骨吸収抑制作用を示し、骨疾患の予防または治療に有用であることを見出し発明を完成した。なお、特公昭61−55509号公報記載の化合物の作用は、後述する実施例の比較実験における比較化合物XおよびYの作用で代表される。
【0007】
【化3】
【0008】
(式(I)において、R1 は、水素原子、炭素原子数が1〜30のアルキル基、炭素原子数が6〜40のアリール基、または炭素原子数が7〜40のアラルキル基であり;R2 およびR3 は、それぞれ独立に、炭素原子数が6〜40のアリール基、炭素原子数が7〜20のアラルキル基または炭素原子数が3〜10のアルキル基であり;Xは、−O−、または−NR4 −であり;R4 は、水素原子、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が7〜20のアラルキル基である。)
【0009】
【発明の実施の形態】
式(I)で表わされるエポキシコハク酸誘導体について説明する。
【0010】
【化4】
【0011】
式(I)において、R1 は、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、なかでも水素原子、アルキル基またはアラルキル基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基またはアラルキル基は、いずれも置換基(例、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリール基)を有していてもよい。
アルキル基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、1乃至30であることが好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。アルキル基は鎖状構造のものでも、あるい環状構造を有するものでもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。
アリール基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、6乃至40であることが好ましく、6乃至30であることがさらに好ましく、6乃至20であることが最も好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
アラルキル基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、7乃至40であることが好ましく、7乃至30であることがさらに好ましく、7乃至20であることが最も好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチルおよびジフェニルメチルが含まれる。
【0012】
式(I)において、R2 及びR3 は、それぞれ独立に、アリール基、アラルキル基または炭素原子数が3乃至10のアルキル基である。これらのアルキル基、アリール基またはアラルキル基は、いずれも置換基(例、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリール基)を有していてもよい。
アリール基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、6乃至40であることが好ましく、6乃至30であることがさらに好ましく、6乃至20であることが最も好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
アルキル基の炭素原子数(3乃至10)は、置換基を含めた総炭素原子数を意味する。アルキル基の炭素原子数は、3乃至6であることが好ましい。アルキル基は鎖状であってもよく、環状構造を有してよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。
アラルキル基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、7乃至20であることが好ましく、7乃至15であることがさらに好ましく、7乃至10であることが最も好ましい。アラルキル基の例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。
【0013】
式(I)において、Xは、−O−または−NR4 −である。そしてR4 は、水素原子、アルキル基またはアラルキル基であり、水素原子およびアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。これらのアルキル基およびアラルキル基は、前記のものと同様な置換基を有してもよい。
R4 のアルキルの炭素原子数(置換基を有する場合、置換基を含めた総炭素原子数)は、1乃至10であることが好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。鎖状アルキルが好ましい。鎖状アルキルは分岐を有していてもよい。
R4 のアラルキル基の炭素原子数(置換基を有する場合には、置換基を含めた総炭素原子数)は、7乃至20であることが好ましく、7乃至15であることがさらに好ましく、7乃至10であることが最も好ましい。このアラルキル基の例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。
【0014】
前記式(I)に示すオキシラン環の二つの炭素は、共に不斉炭素原子である。式(I)は、オキシラン環に結合した二つのカルボニル基がトランス型であることを示す。すなわち、本発明のエポキシコハク酸誘導体は、下記の(T1)または(T2)に示される光学異性体のいずれかのもの、あるいはこれらの混合物である。
【0015】
【化5】
【0016】
本発明のエポキシコハク酸誘導体の具体例を、下記第1表に示す。第1表におけるR1 、R2 、R3 およびXは、式(I)に示す各基に相当する。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明のエポキシコハク酸誘導体は、塩として用いてもよい。R1 が水素原子でXが−O−の場合は、オキシラン環のカルボニルと共にカルボキシル基を形成し、これが塩基と塩を形成してもよい。塩基のカチオンの例としては、アルカリ金属イオン(例、ナトリウム、カリウム)およびアルカリ土類金属イオン(例、カルシウム)を挙げることができる。
本発明のエポキシコハク酸誘導体は、特公昭61−55509号公報および特開昭52−31024号各公報に記載の合成方法に類似する方法、あるいは後述する実施例1〜10に記載の合成方法およびそれに類似する方法に従い、容易に合成することができる。
【0019】
次に本発明のエポキシコハク酸誘導体の薬理作用について説明する。
本発明のエポキシコハク酸誘導体は、チオールプロテアーゼ阻害作用を有する化合物である。チオールプロテアーゼには、カテプシンLやBあるいはカルパインが含まれる。従って、本発明のエポキシコハク酸誘導体およびその生理学的に許容できる塩は、これらのプロテアーゼが関与する疾患に対して、薬理作用が期待できる。
カテプシンLが関与する疾患には、従来の技術で述べたように、骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症や骨ページェット病のような骨疾患が含まれる。従って、本発明のエポキシコハク酸誘導体およびその生理学的に許容できる塩は、これらの骨疾患の予防薬あるいは治療薬として有用である。
【0020】
カテプシンLが関節軟骨を構成するコラーゲンのII型、IX型およびXI型を中性領域で分解することが報告されている(FEBS Lett. 269, 189-193(1990))。従って、本発明のエポキシコハク酸誘導体およびその生理学的に許容できる塩は、カテプシンL活性の異常亢進を伴う骨疾患である骨関節炎症あるいはリウマチ性関節炎に対しても有効であることが期待できる(特開平5−178757号公報参照)。
本発明のエポキシコハク酸誘導体はカテプシンB阻害剤としても優れた作用を示す。
すなわち、カテプシンBなどの、カテプシンL以外のチオールプロテアーゼが関与する疾患としては、筋ジストロフィーや筋萎縮症(カテプシンB、カルパインが関与)、アルツハイマー病(カルパインが関与)、神経細胞の脱髄によって起こるとされる疾患、例えば多発性硬化症や末端神経のニューロパシー(カルパインが関与)、白内障(カルパインが関与)、アレルギー疾患(チオールプロテアーゼが関与)、劇症肝炎(カルパインが関与)、乳癌、前立腺癌や前立腺肥大症(カルパインが関与)、癌の増殖や転移(カテプシンB、カルパインが関与)あるいは血小板の凝集(カルパインが関与)がある(特開平6−239835号参照)ところから、本発明のエポキシコハク酸誘導体は、これらの疾患の治療剤および予防薬として有効であると考えられる。
【0021】
本発明のエポキシコハク酸誘導体およびその生理学的に許容できる塩は、以上の疾患の予防薬あるいは治療薬としても有用であることが期待できる。特に、骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症や骨ページェット病のような骨疾患の予防または治療薬として有用である。
本発明のエポキシコハク酸誘導体の投与方法は、経口投与でも非経口投与でもよい。経口投与剤の剤型としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤およびシロップ剤が挙げられる。非経口投与の方法としては、粘膜投与、体表投与、血管投与および組織内投与がある。粘膜投与の場合は、点眼剤、吸入剤、噴霧剤あるいは座剤として使用する。体表投与の場合は、軟膏剤として使用する。血管投与および組織内投与の場合は、注射剤として使用する。
上記経口投与剤の製造は、通常の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、色素や希釈剤を用いて行なうことができる。賦形剤としては、ブドウ糖や乳糖が一般に使用される。崩壊剤の例には、澱粉およびカルボキシメチルセルロースカルシウムが含まれる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクが挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンおよびポリビニルアルコールが用いられる。
非経口投与製剤も通常の方法で製造できる。例えば、注射剤の場合、通常の注射用蒸留水、生理食塩水あるいはリンゲル液を用いればよい。
本発明のエポキシコハク酸誘導体の投与量は、通常成人において、注射剤で一日0.01乃至100mg、経口投与で一日0.1乃至1gである。もちろん、投与量は、年齢、人種、症状などに応じて増減する。
【0022】
【実施例】
実施例1
(2S,3S)−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボン酸エチル(化合物例2)
(2S,3S)−3−エトキシカルボニルオキシラン−2−カルボン酸(8.01g,50.0ミリモル) の酢酸エチル(120mL)溶液にN−ヒドロキシコハク酸イミド(5.76g,50.0ミリモル) 、続いて氷冷下にN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(10.3g,50.0ミリモル) を加えた。5℃で1時間攪拌した後、アミノジフェニルメタン(9.17g,50.0ミリモル) の酢酸エチル(30mL)溶液を滴下し、5℃で1時間、室温で1時間攪拌した。N,N’−ジシクロヘキシルウレア(DC-Urea )を濾別し、濾液を1N塩酸、飽和重曹水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残留物を酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶して、標題化合物を白色結晶として得た(1.25g,収率77%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
1.32(3H,t,J=7Hz)
3.51(1H,d,J=2Hz)
3.77(1H,d,J=2Hz)
4.2〜4.3(2H,m)
6.22(1H,d,J=8Hz)
6.67(1H,d,J=8Hz)
7.1〜7.4(10H,m)
【0023】
実施例2
(2S,3S)−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボン酸(化合物例1)
実施例1で得た(2S,3S)−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボン酸エチル(5.50g,16.9ミリモル) をエタノール(300mL)に溶解させ、氷冷下にて0.5N水酸化ナトリウム/エタノール溶液(40.4mL,20.2ミリモル)を加え、室温で3時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、水(300mL)を加えた後、エーテル(100×2)で洗浄した。水層に2N塩酸を加えてpHを1〜2とし、酢酸エチル(100×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し白色結晶性粉末として標題化合物を得た(4.76g,収率95%)
1H NMR(400MHz,CD3 OD)δ
3.57(1H,d,J=2Hz)
3.71(1H,d,J=2Hz)
6.23(1H,s)
7.2〜7.4(10H,m)
【0024】
実施例3
(2S,3S)−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボン酸ナトリウム(化合物例1のナトリウム塩)
実施例2で得た化合物(100mg,0.336ミリモル) を酢酸エチル(10mL) に溶解し、炭酸水素ナトリウム(28.2mg,0.336ミリモル) の水(10mL) 溶液を加え、激しく振盪した。水層を分取し、減圧下で濃縮乾固して、標題化合物を白色粉末として得た(106mg,収率99%)
1H NMR(400MHz,D2 O)δ
3.47(1H,d,J=2Hz)
3.63(1H,d,J=2Hz)
6.15(1H,s)
7.3〜7.5(10H,m)
IR(KBr)cm-1:
3412,3219,3064,3030,1670,1632,1552,1495,1454,1448,1398,1317,1285,1248,1093,1086,1051,1030,1007,960,899,862,783,758,742,698,677,642,602,571,482
【0025】
実施例4
(2S,3S)−N−エチル−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボキサミド(化合物例12)
(2S,3S)−3−ジフェニルメチルカルバモイルオキシラン−2−カルボン酸(1.86.05ミリモル) とN−ヒドロキシコハク酸イミド(696mg,6.05ミリモル) の塩化メチレン(10mL) 溶液に、氷冷下N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.25g,6.05ミリモル)の塩化メチレン(7mL) 溶液を加えた。室温30分攪拌した後、エチルアミン塩酸塩(493mg,6.05ミリモル) とトリエチルアミン(0.84mL,6.05ミリモル) の塩化メチレン(7mL) 溶液を氷冷下で加えた。5℃で一晩攪拌後、溶媒を減圧留去して、酢酸エチル(10mL)を加え、N,N’−ジシクロヘキシルウレア(DC-Urea )を濾別した。溶液を、水、0.5N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=1/0〜50/1)を用いて精製し、白色結晶性粉末として標題化合物を得た(928mg,収率47%)。
m.p.:190.0〜195.0(分解)
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
1.14(3H,t)
3.30(2H,dq)
3.51(1H,d)
3.55(1H,d)
5.95(1H,br.s)
6.22(1H,d,J=8Hz)
6.59(1H,br.d,J=8Hz)
7.1〜7.4(10H,m)
IR(KBr)cm-1:
3290,3088,3064,3030,2980,2933,2773,1653,1551,1495,1452,1446,1371,1354,1279,1240,1153,1092,1053,1030,999,960,891,864,862,847,808,754,696,648,598,871,836,478
【0026】
実施例5
(2S,3S)−3−[[4−メチル−1−(3−メチルブチル)ペンチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸エチル(化合物例10)
(2S,3S)−3−エトキシカルボニルオキシラン−2−カルボン酸カリウム(1.98g,10.0ミリモル) をベンゼン(40mL)に懸濁させ、ベンゼン(13mL)を常圧で留去して水分除去した。室温まで冷却した後、攪拌下に塩化チオニル(0.88mL,12.0ミリモル) を滴下し、2.5時間加熱還流し、出発物質の酸クロリド溶液を得た。
4−メチル−1−(3−メチルブチル)ペンチルアミン(2.06g,12.0ミリモル) とトリエチルアミン(1.67mL,12.0ミリモル) を乾燥ベンゼン(10mL)に溶解させて氷冷下、先の酸クロリド溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。水(30mL)を加え、有機層を分取し、10%クエン酸水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製して黄色油状物として標題化合物を得た(1.40g,収率45%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
0.8〜1.0(12H,m)
1.1〜1.4(6H,m)
1.32(3H,t,J=7Hz)
1.4〜1.6(4H,m)
3.42(1H,d,J=2Hz)
3.68(1H,d,J=2Hz)
3.83(1H,m)
4.2〜4.3(2H,m)
5.78(1H,d,J=9Hz)
【0027】
実施例6
(2S,3S)−3−[[4−メチル−1−(3−メチルブチル)ペンチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸(化合物例9)
実施例5で得た化合物(1.40g,4.47ミリモル) 及び0.5N水酸化カリウム/エタノール溶液(10.7mL,5.35モル)を用いて、実施例2と同様に反応及び処理を行なって、淡黄色アモルファス体として標題化合物を得た(1.15g,収率90%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
0.8〜0.9(12H,m)
1.0〜1.4(6H,m)
1.4〜1.6(4H,m)
3.46(1H,d,J=2Hz)
3.78(1H,d,J=2Hz)
3.84(1H,m)
6.12(1H,d,J=9Hz)
【0028】
実施例7
(2S,3S)−3−[[4−メチル−1−(3−メチルブチル)ペンチル]カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸ナトリウム(化合物例9のナトリウム塩)
実施例6で得た化合物(111mg,0.389ミリモル) 及び炭酸水素ナトリウム(32.7mg,0.389ミリモル) を用いて、実施例3と同様に反応及び処理して、淡黄色粉末として標題化合物を得た(収率75%)。
1H NMR(400MHz,D2 O)δ
0.8〜1.0(12H,m)
1.1〜1.3(4H,m)
1.4〜1.7(6H,m)
3.42(1H,s)
3.51(1H,s)
3.75(1H,m)
IR(KBr)cm-1:
3417,3253,3093,2954,2870,1660,1560,1468,1435,1398,1367,1317,1255,1223,1171,962,895,852,795,744,712,679,482
【0029】
実施例8
(2R,3R)−3−[(3−メチル−1−フェニルブチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸エチル(化合物例21)
(2R,3R)−3−エトキシカルボニルオキシラン−2−カルボン酸カリウム(3.97g,20.0ミリモル) 、塩化チオニル(2.86g,24.0ミリモル) 、3−メチル−1−フェニルブチルアミン(4.25g,26.0ミリモル) 及びトリエチルアミン(2.63g,26.0ミリモル) を用いて、実施例5と同様に反応及び処理を行なって、無色粘稠油状物として標題化合物を得た(5.86g,収率96%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
0.92(1.5H,d,J=7Hz)
0.93(1.5H,d,J=7Hz)
0.94(1.5H,d,J=7Hz)
0.95(1.5H,d,J=7Hz)
1.25(1.5H,t,J=7Hz)
1.31(1.5H,t,J=7Hz)
1.4〜1.7(3H,m)
3.33(0.5H,d,J=2Hz)
3.47(0.5H,d,J=2Hz)
3.65(0.5H,d,J=2Hz)
3.68(0.5H,d,J=2Hz)
4.2〜4.3(2H,m)
5.02(1H,m)
6.21(1H,brd,J=8Hz)
7.2〜7.4(5H,m)
【0030】
実施例9
(2R,3R)−3−[(3−メチル−1−フェニルブチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸(化合物例19)
実施例8で得た化合物(2.13g,6.98ミリモル) 及び0.5N水酸化カルウム/エタノール溶液(18mL,9.0ミリモル) を用いて、実施例2と同様に反応及び処理を行なって、白色アモルファス体として、標題化合物を得た(1.78g,収率92%)
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
0.8〜1.0(6H,m)
1.4〜1.8(3H,m)
3.34(0.5H,d,J=2Hz)
3.47(0.5H,d,J=7Hz)
3.67(0.5H,d,J=2Hz)
3.71(0.5H,d,J=2Hz)
5.00(1H,dt,J=8,8Hz)
6.63(0.5H,d,J=Hz)
6.66(0.5H,d,J=8Hz)
7.1〜7.4(5H,m)
8.19(1H,brs)
【0031】
実施例10
(2R,3R)−3−[(3−メチル−1−フェニルブチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸ナトリウム(化合物例19のナトリウム塩)
実施例9で得た化合物(1.70g,6.18ミリモル) 及び炭酸水素ナトリウム(515mg,6.13ミリモル) を用いて、実施例3と同様に反応及び処理して、微黄色粉末として標題化合物を得た(1.76g,収率96%)。
1H NMR(400MHz,D2 O)δ
0.9〜1.0(6H,m)
1.5〜1.8(3H,m)
3.41(1H,m)
3.55(1H,m)
4.93(1H,m)
7.3〜7.5(5H,m)
【0032】
実施例11
(2S,3S)−3−[(α−ベンジルフェネチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸エチル
(2S,3S)−3−エトキシカルボニルオキシラン−2−カルボン酸(1.01g,6.31ミリモル)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(726mg,6.31ミリモル)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.30g,6.31ミリモル)、およびα−ベンジルフェネチルアミン(1.43g,6.31ミリモル)を用いて、実施例1と同様に反応と処理とを行ない、得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=50/1)で精製することにより、淡黄色油状物として標題化合物を得た(2.22g,定量的収率)。
1H NMR(400MHz,CDCl3 )δ
1.30(3H,t,J=7Hz)
2.65(1H,dd,J=9,14Hz)
2.86(2H,d,J=7Hz)
2.87(1H,d,J=2Hz)
2.92(1H,dd,J=6,14Hz)
3.51(1H,d,J=2Hz)
4.2〜4.3(2H,m)
4.42(1H,m)
5.78(1H,br.d,J=9Hz)
7.1〜7.3(10H,m)
【0033】
実施例12
(2S,3S)−3−[(α−ベンジルフェネチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸
上記の実施例11で得た化合物(2.22g,6.28ミリモル)および0.5N水酸化カリウム/エタノール溶液(15.1mL,7.55ミリモル)とを用いて、実施例2と同様に反応と処理とを行ない、白色アモルファス体として標題化合物を得た(1.78g,収率87%)。
1H NMR(400MHz,D2 O)δ
2.6〜2.8(2H,m)
2.89(1H,s)
3.0〜3.1(2H,m)
3.22(1H,s)
4.33(1H,m)
7.2〜7.4(10H,m)
【0034】
実施例13
(2S,3S)−3−[(α−ベンジルフェネチル)カルバモイル]オキシラン−2−カルボン酸のナトリウム塩
上記の実施例12で得た化合物(1.78g,5.47ミリモル)および炭酸水素ナトリウム(460mg,5.47ミリモル)とを用いて、実施例3と同様に反応と処理とを行ない、白色粉末として標題化合物を得た(1.77g,収率93%)。
1H NMR(400MHz,D2 O)δ
2.7〜2.8(2H,m)
2.90(1H,d,J=2Hz)
3.0〜3.1(2H,m)
3.23(1H,d,J=2Hz)
4.34(1H,m)
7.2〜7.4(10H,m)
IR(KBr)cm-1:
3398,3246,3089,3026,2956,2927,2860,1668,1626,1566,1497,1454,1396,1311,1259,1215,1119,1084,1028,982,957,897,864,847,798,746,698,677,607,519,492
【0035】
実施例14
骨吸収抑制作用
生後6〜7日齢のICRマウスから頭蓋冠を無菌的に採取し、結合組織を取り除いた後、頭蓋冠を正中線に沿って半分に切断した。一対の骨あたり1mLの培養液(modified BGjbメディウム、5%非働化ウシ胎児血清を含有)中で24時間前培養(5%CO2 、37℃)を行なった。前培養後に、骨の一片ずつを種々の濃度の被検化合物を含む上記培養液0.5mLに入れ、副甲状腺ホルモン(PTH)3×10-7Mの存在下にて72時間培養した。また、被検化合物及びPTH非存在下で培養したものをコントロールとした。
培養終了後、72時間の間に培養上清中に遊離したカルシウム量、および骨中(6N塩酸1mLにて溶解)のカルシウム量をオルトクレゾールフタレインコンプレキソン(OCPC)法を用いて測定した。
まず、カルシウム遊離率(%)を次式に従って求めた。
【0036】
【数1】
遊離率(%)=[培養液中に遊離されたCa量]/[培養液中に遊離されたCa量+骨中のCa量]×100
【0037】
次に、被検化合物による骨吸収抑制率(%)を次式に従って求めた。
【0038】
【数2】
抑制率(%)=[1−(PTH、薬物存在下での遊離率−コントロ−ルの遊離率)/(PTH存在下での遊離率−コントロールの遊離率)]×100
【0039】
上記のそれぞれの結果は、後に示す第2表にまとめて示す。
【0040】
実施例15
カテプシンL阻害作用
(1)ラット肝臓リソソーム分画の調製
ウイスター系雄性ラットを脱血致死させ、門脈より氷冷した生理食塩水を注入して還流後、肝臓を摘出した。以下の操作は4℃で行なった。はさみで細切後、5gを量りとり、9倍量の0.25Mスクロース液を加えてホモジナイズ(ポッター型テフロンホモジナイザー)した。ホモジネートを800×gで10分間遠心分離して得た上清を、さらに12000×gで20分間遠心分離した。得られた沈澱に0.25Mスクロース液25mLを加えてホモジナイズした後、12000×gで20分間遠心分離した。得られた沈澱に0.25Mスクロース液10mLを加えてホモジナイズしたものをリソソーム分画とした。次いで、この分画を0.33%トリトンX−100を含む0.25Mスクロース液で希釈してカテプシンL活性の測定に供した。
(2)カテプシンL活性の測定
340mM酢酸ナトリウム、60mM酢酸、4mMEDTA及び8mMジチオスレイトールを含む溶液(pH:5.5)0.25mLに、リソソーム分画0.1mL、被検化合物溶液5μLおよび蒸留水0.545mLを加えて30℃で15分間プレインキュベートした後、基質として50μMカルボベンゾキシ−L−フェニルアラニル−L−アルギニン−4−メチルクマリル−7−アミド(Z-Phe-Arg-MCA) 溶液0.1mLを加えて反応を開始した。30℃で20分間反応させた後、100mMモノクロル酢酸ナトリウム、30mM酢酸ナトリウムおよび70mM酢酸を含む溶液(pH:4.3)1mLを加えて反応を停止させた。最終溶液の蛍光強度を励起波長380nm、蛍光波長460nmで測定した。
なお、Z-Phe-Arg-MCA は、リソソーム分画に含まれるカテプシンBによっても分解されるため、カテプシンB特異的阻害剤であるCA−074[村田他、FEBS Lett. 280, 307-310(1991) ]を反応溶液に10-7M添加してカテプシンBを完全に阻害した条件下で測定を行なった。
以上の実施例14および15の結果を下記第2表に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
以上のように、本発明のエポキシコハク酸誘導体は、特公昭61−55509号公報記載の比較化合物XおよびY(同公報14頁の実施例61および62)に比べ、骨吸収抑制作用が優れていることが明らかになった。
【0045】
実施例16
カテプシンB阻害作用
352mMのKH2 PO4 、48mMのNa2 HPO4 、5.32mMのEDTA・2Naおよび10mMのL−システインを含む溶液(pH6.0)0.25mLにリソソーム分画0.1mL、被検薬物5μLおよび蒸留水0.545mLを加えて、30℃で15分間プレインキュベ−ションした後、基質として、50μMのカルボベンゾキシ−L−アルギニン−L−アルギニン−4−メチルクマリル−7−アミド(Z-Arg-Arg-MCA)溶液0.1mLを加えて反応を開始させた。30℃で20分間反応させた後、その反応液に100mMのモノクロル酢酸ナトリウム、30mMの酢酸ナトリウム及び70mMの酢酸を含む水溶液(pH4.3)1mLを加えて、反応を停止させた。最終容量の蛍光強度を励起波長380nm、蛍光波長460nmで測定した。その結果を下記の第3表に記す。
【0046】
【表3】
【0047】
以上の結果から、本発明のエポキシコハク酸誘導体がカテプシンL阻害作用に加えて、カテプシンB阻害作用を有することが分る。
Claims (2)
- 下記式で表わされるエポキシコハク酸誘導体またはその生理学的に許容できる塩からなる、骨粗鬆症、悪性高カルシウム血症、骨ページェット病、骨関節炎、及びリウマチ性関節炎からなる群より選ばれる骨疾患の治療薬。
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