JP3919843B2 - 建材及び器物用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材及び器物用アルミニウム合金板の製造方法であり、より詳しくはこの合金板を連続鋳造圧延法によって製造する場合、この連続鋳造条件の改良により、最終的に陽極酸化処理が施される建材及び器物用アルミニウム合金板としての使用を可能とする製造方法に関するものである。
なお、本明細書において「アルミニウム合金」なる語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金いずれも含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
一般に建材及び器物用アルミニウム合金板の製造方法としては、アルミニウム合金溶湯を半連続鋳造法により鋳造したスラブを均質化熱処理後、熱間圧延及び冷間圧延(必要に応じて焼鈍)を施すか若しくはアルミニウム合金溶湯を可動鋳型(図4に示す水冷したドラム4、5又は図5に示す水冷したベルト8、9)間に連続的に供給して、板厚30mm以下の鋳造板とし、その後これを冷間圧延(必要に応じその前、中、後に焼鈍を行う場合もある)して、所定の寸法の板材( 例えば板厚1〜3mm)とした後、建材の場合は防食、表面硬化、着色等を目的として陽極酸化処理(皮膜厚20μm前後)を施し、又器物の場合は成形加工(深絞り、張出加工等)し、さらに陽極酸化処理(皮膜厚20μm前後)を施して製品とするのが一般的である。
【0003】
しかしながら、建材及び器物用アルミニウム合金板は、上記工程により板にした後、前記のごとく最終的に陽極酸化処理が施されるため、板の金属組織の均一性が表面品質に大きく影響を及ぼす。すなわち金属組織にばらつきがあると陽極酸化処理後の外観が帯状あるいは斑状に不均一となり不良となる。
【0004】
この金属組織のばらつきを引き起こす原因の一つとして、鋳造組織の不均一が挙げられる。
例えば半連続鋳造法により鋳造されたスラブの鋳造組織は、一般に鋳肌から内部に移るに従いチル層、粗大セル層、微細セル層と組織が変化する。ここでチル層と粗大セル層を併せた部分は一般に額縁と呼ばれ不安定な金属組織となり表面品質に悪影響を及ぼすため、面削により削り落とすことが一般的である。
この方法によるアルミニウム合金板の製造は、このように面削したスラブを均質化熱処理および熱間圧延し、続いて冷間圧延(必要により焼鈍)して、所定の板としている。
【0005】
また連続鋳造圧延法は、鋳塊の均質化熱処理および熱間圧延工程が省略され、歩留りおよびエネルギー効率の向上等において非常に有効な方法であるとともに、溶湯の冷却速度を早くすることができるため合金成分が強制固溶され易く、かつ、第2相粒子が微細になり易いので、一般に強度の優れたアルミニウム合金板が得られるメリットがある。
【0006】
しかしながら、この連続鋳造圧延法は、その製造の基本原理から供給される溶湯に対し鋳型が連続的に移動するため、鋳造時の溶湯と可動鋳型の接触が不安定である。このために溶湯の凝固速度にばらつきを生じ易くこれが原因で鋳造組織が不均一となるという問題がある。この鋳造板の表面欠陥の代表的な例として一般に「リップルマーク」若しくは「レベルライン」と呼ばれているものがある。これは鋳造コイルの長手方向において数mmピッチで周期的に鋳造組織が変動するため生ずるものと考えられ周期的な表面欠陥として現れる。また可動鋳型に塗布する離型剤等のばらつきによるものとも考えられるアットランダムな表面欠陥として現れる場合もある。本明細書においては、鋳造板のこれらの表面欠陥を総称してリップルマークということとする。
この鋳造板の表面欠陥の存在する部分は、鋳造板の鋳造組織も不均一であり、これによって製造された最終製品(圧延板)においても陽極酸化処理後の外観が不均一となり不良となる。この鋳造組織の不均一な部分を半連続鋳造法同様面削により落とすことは、板厚が30mm以下程度で薄く工程的にも困難であり、また通常この組織変動は板厚内部でも数mmの深さ若しくは場合によっては板厚中心部まで影響しているため、歩留まりを考えると現実的な方法ではない。
【0007】
このように連続鋳造圧延法は、半連続鋳造法に比べ生産効率および特性の面からは魅力ある方法であるが、鋳造組織の不均一が生じこの部分を除去することも困難であるため、陽極酸化処理を施す建材及び器物用アルミニウム板への適用ができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することであり、具体的には建材及び器物用アルミニウム合金板の連続鋳造圧延法による製造において、この合金板の製造に適した均一で微細な鋳造組織を有する鋳造板を得るための鋳造条件を見出し、陽極酸化処理を施す建材及び器物用アルミニウム合金板として使用可能な製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の連続鋳造圧延法による製造方法であり、アルミニウム合金溶湯を可動鋳型間に供給して厚さ30mm以下の鋳造板に連続鋳造し、これを冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍し、さらに最終冷間圧延や最終焼鈍を行う製造方法において、前記鋳造板に連続鋳造する際、まず可動鋳型の表面に離型剤を塗布し、続いてその塗布した離型剤を、当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するワイパーまたは前記可動鋳型の移動に合わせて回転しかつ当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するロール状のワイパーで均一にしながら、連続鋳造することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2の発明は、建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の連続鋳造圧延法による製造方法であり、アルミニウム合金溶湯を可動鋳型間に供給して厚さ30mm以下の鋳造板に連続鋳造し、これを冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍し、さらに最終冷間圧延や最終焼鈍を行う製造方法において、前記鋳造板に連続鋳造する際、まず可動鋳型の表面を回転ブラシで清浄にした後、当該可動鋳型の表面に離型剤を塗布し、続いてその塗布した離型剤を、当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するワイパーまたは前記可動鋳型の移動に合わせて回転しかつ当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するロール状のワイパーで均一にしながら、連続鋳造することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下詳細に説明する。
本発明の各構成要件のうち、まず建材及び器物用アルミニウム合金について説明する。
本発明における建材用アルミニウム合金としては、純AL系のJIS1050合金(Al分が99.50wt%以上で、Fe0.40wt%以下、Si0.25wt%以下、Cu0.05wt%以下)、JIS1100合金(Al分が99.00wt%以上で、Fe+Si0.95wt%以下、Cu0.1wt%)、JIS1200合金(Al分が99.00wt%以上で、Fe+Si1.00wt%以下、Cu0.05wt%以下)等、Al合金系のJIS5005合金(Al−0.8wt%Mg合金)等である。
また、器物用アルミニウム合金としては、前記の純AL系のJIS1050合金、1100合金、1200合金等、Al合金系のJIS3003合金(Al−1.2wt%Mn−0.15wt%Cu合金)等であるが、本発明は建材及び器物用の他の純AL系、Al合金系のいずれの材料にも適用でき、これに限定されるものではない。
【0012】
次に、鋳造以降の製造条件について説明する。
本発明ではアルミニウム合金を鋳造するにあたり、溶湯から直接板厚30mm以下の鋳造板に鋳造する連続鋳造圧延法を用いる。ここで板厚を30mm以下とした理由として、前にも述べたように連続鋳造圧延法では溶湯の冷却速度を早くすることができるため合金成分が強制固溶され易く、かつ、第2相粒子が微細になり易いためこれにより材料特性として各種メリットが得られるが、板厚が30mmを越えると強制固溶に十分な冷却速度が得られず、金属間化合物が粗大化するので好ましくない。また、板厚があまり厚いと下工程での圧延回数が多くなり経済的でない。したがって板厚は薄ければ薄いほど良いが、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下が良い。
【0013】
なお、ここで対象としている連続鋳造圧延法における連続鋳造は、図4に示す双ドラム4、5を用いたハンター法、3C 法、図5に示す双ベルト8、9を用いたヘズレー法等が挙げられるが、本発明ではこれらのうちの特定の方法に何ら限定されるものではない。
【0014】
本発明の連続鋳造について、図1〜図5を用いて説明する。
図1は、双ドラム4、5による可動鋳型表面に、まず離型剤塗布装置20により離型剤21を塗布し、次にこれをワイパー30で均一にする様子を示す説明図である。
図2及び図3は、それぞれ双ドラム4、5及びローラ10〜13によって駆動させる双ベルト8、9による可動鋳型表面を、まず回転ブラシ40で清浄にし、次に離型剤塗布装置20により離型剤21を塗布し、続いてこれをワイパー30で均一にする様子を示す説明図である。
図4及び図5は、それぞれ双ドラム4、5及び双ベルト8、9による可動鋳型装置で連続鋳造板6を製造する一例を示す説明図である。
【0015】
まず所望の合金成分に調整されたアルミニウム合金溶湯3は、図示しない溶解保持炉からトラフを通じて一旦湯溜まり(通常ヘッドボックスなどと呼ばれている)1に溜められ、その後鋳造ノズル2を通って水冷された可動鋳型(ドラム4、5、ベルト8、9)へと導かれる。なお、6は鋳造板である。
溶湯ノズル2から出た溶湯3は、鋳型に接触し冷却固化されるが、本発明を行うに当たって、この時の溶湯と鋳型の濡れ性が重要であり、これが不均一であると鋳造組織変動を起こすことを見出した。
すなわち溶湯と鋳型の濡れ性が不均一の場合、溶湯と鋳型の接触状態が部分部分で異なってしまうためこれに準じて溶湯の凝固速度が異なり、これにより鋳造組織のばらつきが生じる。
【0016】
通常連続鋳造には、前記のごとく鋳造鋳型としてドラム、ベルトおよびブロック等の連続して鋳造することを可能にした可動鋳型が用いられており、これらの鋳型にはアルミニウムもしくはアルミニウム合金との焼き付き防止のために離型剤が塗布される。この離型剤にはカーボンを主原料とした溶液が一般的に用いられているが、この塗布方法としては遠隔から鋳型に対しスプレー等を用いて塗布する方法がとられている。
【0017】
しかしこの方法では鋳型に塗布された離型剤は、マクロ的には均一であるとしても、ミクロ的にみるとスプレーで霧状になった離型剤の粒子がランダムに配列しているにすぎず、鋳型表面には離型剤が付着している部分と付着していない部分が生じることとなる。
このような鋳型表面のミクロ的な違いでも溶湯と鋳型の濡れ性を不均一にし、前述の理由により鋳造組織が変動する。
また、鋳造後の鋳型表面には、アルミ粉、離型剤等が不均一に残っており、これらも鋳型表面の濡れ性を不均一にする原因となる。
【0018】
そこで、請求項1の本発明では、これを解決するために、可動鋳型に対し、直接接触させたワイパー30を使用し、このワイパー30を左右に揺動させる。
図1に示すように、ワイパー30は、離型剤塗布装置20例えばスプレー装置等により鋳型に離型剤21を塗布した後に用い、これを鋳型表面に接触させて左右に揺動させることにより塗布後の離型剤21が均一に伸ばされ、濡れ性が均一な鋳型表面となすことができる。また、このワイパーは鋳型に接触しているために、離型剤を均一に伸ばすとともに鋳型表面に付着した異物も同時に除去することができ、常に均一な鋳型表面を得ることができる。
なお、図1の離型剤塗布装置20は、一例としてスプレー装置でスプレーにより塗布する様子を示したが、これに限定されるものではなく、鋳型表面に接触させた空隙を有する部材(例えば、ネル状の布等に離型剤を含浸させたもの)で塗布してもよい。
【0019】
前述のようにワイパー30を鋳型の移動に対し左右に揺動させることは、濡れ性を均一にするために有効である。
ワイパーの材質には、耐熱ゴム等の熱および摩擦に強いものを使用すればよいが、ネル状の布等液体を含浸させることができるものを使用すると、余分に塗布された離型剤をこの部分で吸い取ることができるとともに、この部分へ外部から離型剤を供給することでワイパーにより離型剤を直接塗布することも可能となり、上記スプレーでの離型剤塗布よりもより均一な塗布が可能となる。
さらに、前記ワイパーをロール状にして鋳型の移動に併せ回転させると、摩擦による鋳型表面のいたみ軽減の上からさらに好ましい。この時鋳型の移動とロールの回転に相対速度をつけることで、これらの間に摩擦を生じさせることは、離型剤をより均一に伸ばすために有効な方法である。
【0020】
また、請求項2の本発明では、図2、3に示すように、まず回転ブラシ40で鋳型表面に付着した異物を除去して鋳型表面を清浄にした後、離型剤塗布装置20(例えばスプレー等)で離型剤21を塗布し、その塗布した離型剤21を前述のように構成されたワイパー30で均一にしながら、連続鋳造するものである。
異物の付着は、鋳型表面の濡れ性を不均一にすることは前述の通りであるが、本発明ではこれを回転ブラシ40により除去することで均一な濡れ性の鋳型表面を達成することができる。
ブラシ材質は、スチールワイヤー、ステンレスワイヤー、ナイロン等の鋳型表面にキズを付けることなく異物のみを落とすものを用いれば何ら問題なく本発明の効果を得ることができる。
なお、この回転ブラシ40と同時に前述のようなワイパー30を用いることは、鋳型表面の濡れ性を均一にし、ひいては均一微細な鋳造組織を得るためにはより効果のある方法である。
【0021】
なお、鋳造速度、鋳型の冷却温度および鋳型ギャップ等のその他の鋳造条件は、目的とする製品サイズ、特性および設備能力等を考慮して設定すればよく、本発明では何ら規定するものではない。
【0022】
上記のように鋳造された鋳造板6は、必要に応じてその直後で圧延が行われるか若しくはそのままコイルに巻取られる。さらにその後冷間圧延により所望のサイズまで圧延(必要に応じてその前、中、後において1 〜数回の焼鈍を行う)されて、建材及び器物用アルミニウム合金板とし、建材については更に陽極酸化処理を施し、また器物については成形加工(深絞り、張出加工等)を行った後、更に陽極酸化処理を施し製品とされる。
【0023】
建材及び器物用アルミニウム合金板は、前記のごとく最終的には陽極酸化処理されるが、その場合に鋳造板、更にその圧延板表面に前述のリップルマーク(この部分は金属組織が不均一である)が発生すると、前記の表面処理で均一な表面が得られないが、前述のごとく製造した本発明に係る建材及び器物用アルミニウム合金板は、後に記す実施例でも明らかなごとく、均一な表面が得られ建材および器物として充分に使用できるものである。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
表1に示した建材用アルミニウム合金(1050、1100、1200、5005)溶湯を本発明例、比較例及び従来例として図1、図2に示す双ドラム4、5を用いたハンター法によりそれぞれ板厚7mmおよび10mmの鋳造板6とした。
なおこれらの鋳造を行うにあたり、離型剤塗布装置20(スプレー装置)での離型剤塗布、ワイパー30、回転ブラシ40を表1に示すように組み合わせ、本発明例、比較例、従来例とした。
なお、上記以外の鋳造条件は以下のとおりである。
・離型剤 :微粉カーボンを水に溶いた溶液
・鋳造板の板幅:1300mm
・溶湯温度 :700℃
・鋳造速度 :1000mm/min.
・冷却速度 :300〜700℃/sec.
これら鋳造板6を表1に示した条件で、冷間圧延および中間焼鈍を行い、さらに冷間圧延を施して厚さ2mmの建材用アルミニウム合金板を製造した。
なお表1中、装置の組み合わせ1ブラシ、2スプレー、3ワイパーは、可動鋳型表面をこの順序で処理し、可動鋳型に溶湯を供給することを意味している。
【0025】
【表1】
【0026】
このように得られた板について、以下に示す処理条件で陽極酸化処理し、厚さ20μmの酸化皮膜を形成した。
〔陽極酸化処理条件〕
前処理 : 50℃の5%NaOH溶液中に1分間浸漬後、室温の30%HNO3 溶液中に1分間浸漬して水洗
↓
陽極酸化: 20℃の15%H2 SO4 溶液中で電流密度1.3A/dm2 で処理を行い、厚さ20μmの皮膜を形成
↓
水 洗 : 水道水で15分
↓
封 孔 : 沸騰した純水中に15分間浸漬
↓
乾 燥 : 熱風乾燥
【0027】
このようにして出来たサンプルについて、以下の方法で外観の均一性を評価した。
なお、リップルマークの有無、鋳造組織の均一性は鋳造板について、以下の要領で評価した。
【0028】
評価方法は、以下の通りである。
(1)鋳造板についてのリップルマークの有無
鋳造板の表面状態を目視にて観察した。
(2)鋳造組織の均一性
鋳造板の表面および長手方向断面について、研磨後エッチングし、鋳造組織の均一性を顕微鏡で観察し、均一性が優れているもの◎、良好なもの○、やや劣っているもの△、劣っているもの×として判定を行った。
(3)圧延板の陽極酸化処理後の外観の均一性
外観を目視により観察し、処理後の外観の均一性が優れているもの◎、良好なもの○、やや劣っているもの△、劣っているもの×として判定を行った。
これらの試験結果を表2に記した。
【0029】
【表2】
【0030】
表1、表2から明らかなように、本発明範囲の条件で製造したアルミニウム合金鋳造板は、表面および組織欠陥がなく、またこの鋳造板から製造された建材用アルミニウム合金板は、陽極酸化処理後の外観の均一性に優れており、建材用アルミニウム合金板として使用可能であることが確認された。
【0031】
(実施例2)
表3に示した器物用アルミニウム合金(1050、1100、3003)溶湯を本発明例、比較例及び従来例として図1、図2に示す双ドラム4、5を用いたハンター法によりそれぞれ板厚7mmおよび10mmの鋳造板6とした。
なおこれらの鋳造を行うにあたり、離型剤塗布装置20(スプレー装置)での離型剤塗布、ワイパー30、回転ブラシ40を表3に示すように組み合わせ、本発明例、比較例、従来例とした。
なお、上記以外の鋳造条件は、実施例1と同様である。
これら鋳造板6を表3に示した条件で、冷間圧延および一部中間焼鈍を行い、さらに冷間圧延を施して厚さ3mmの器物用アルミニウム合金板を製造した。
なお表3中、装置の組み合わせ1ブラシ、2スプレー、3ワイパーは、可動鋳型表面をこの順序で処理し、可動鋳型に溶湯を供給することを意味している。
【0032】
【表3】
【0033】
これらの板について、400℃で10時間の最終焼鈍を行った後、深絞り加工を行って、深さ10mm、直径200mmの鍋状とし、更に実施例1と同様の条件で陽極酸化処理を行い厚さ20μmの皮膜を形成した。
このようにして得られた器物の外観を実施例1と同様な基準で評価し、その結果を表4に記した。
なお、リップルマークの有無、鋳造組織の均一性についても、鋳造板について実施例1と同様な基準で評価し、その結果を表4に記した。
【0034】
【表4】
【0035】
表3、表4から明らかなように、本発明範囲の条件で製造したアルミニウム合金鋳造板は、表面および組織欠陥がなく、またこの鋳造板から製造された器物用アルミニウム合金板は、陽極酸化処理後の外観の均一性に優れており、器物用アルミニウム合金板として使用可能であることが確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな如く、本発明によれば、建材及び器物用アルミニウム合金板を連続鋳造圧延法で製造しても、この合金板の製造に適した均一で微細な鋳造組織を有する鋳造板を得ることが出来、従ってこの圧延板は陽極酸化処理を施しても均一な表面が得られ、建材及び器物用アルミニウム合金板としての使用を可能とするもので、工業上顕著な効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】双ドラムによる可動鋳型表面に離型剤を塗布し、これをワイパーで均一にする様子を示す説明図である。
【図2】双ドラムによる可動鋳型表面を回転ブラシで清浄にした後、離型剤を塗布し、これをワイパーで均一にする様子を示す説明図である。
【図3】双ベルトによる可動鋳型表面を回転ブラシで清浄にした後、離型剤を塗布し、これをワイパーで均一にする様子を示す説明図である。
【図4】双ドラムによる可動鋳型装置(ハンター法)で連続鋳造板を製造する一例を示す説明図である。
【図5】双ベルトによる可動鋳型装置(ヘズレー法)で連続鋳造板を製造する一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 湯溜まり(ヘッドボックス)
2 鋳造ノズル
3 溶湯
4、5 ドラム(可動鋳型)
6 鋳造板
8、9 ベルト(可動鋳型)
10〜13 ローラ
20 離型剤塗布装置(一例としてスプレー装置)
21 離型剤
30 ワイパー装置
40 回転ブラシ
Claims (2)
- 建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の連続鋳造圧延法による製造方法であり、アルミニウム合金溶湯を可動鋳型間に供給して厚さ30mm以下の鋳造板に連続鋳造し、これを冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍し、さらに最終冷間圧延や最終焼鈍を行う製造方法において、前記鋳造板に連続鋳造する際、まず可動鋳型の表面に離型剤を塗布し、続いてその塗布した離型剤を、当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するワイパーまたは前記可動鋳型の移動に合わせて回転しかつ当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するロール状のワイパーで均一にしながら、連続鋳造することを特徴とする建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の製造方法。
- 建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の連続鋳造圧延法による製造方法であり、アルミニウム合金溶湯を可動鋳型間に供給して厚さ30mm以下の鋳造板に連続鋳造し、これを冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍し、さらに最終冷間圧延や最終焼鈍を行う製造方法において、前記鋳造板に連続鋳造する際、まず可動鋳型の表面を回転ブラシで清浄にした後、当該可動鋳型の表面に離型剤を塗布し、続いてその塗布した離型剤を、当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するワイパーまたは前記可動鋳型の移動に合わせて回転しかつ当該可動鋳型の移動に対し左右に揺動するロール状のワイパーで均一にしながら、連続鋳造することを特徴とする建材及び器物用(ただし「箔地用」を除く。)アルミニウム合金板の製造方法。
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