JP3919493B2 - プラスチック三次元回路素子及びその製造方法 - Google Patents

プラスチック三次元回路素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック三次元回路素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の電子工業分野での技術開発は目覚ましく、新機能を有する製品が続々と発表されている。これに伴い、電子機器の部品素材においても各種機能を有するものが開発され、近年、プラスチック構造体(部品)の表面や内部を高機能化する要求が高まってきている。このような高機能化の要求に対して、プラスチック構造体自身をポリマーアロイ化又は複合化する材料面での技術対応と、要求に合わせて機能部位を組み込んだり、構造の制御を行ったりする加工面での技術対応との2つの面での取り組みが行われている。例えば、プラスチック構造体の表面の高機能化・高性能化では、表面の化学的、電気的、光学的、物理的等の特性改良・改質を目的に、材料、加工両面から色々と技術的な取り組みがなされている。また、プラスチック構造体の内部(バルク)の高機能化・高性能化では、電気や光の伝導性、光の透過性又は遮断性、水分やガスの透過性又は遮断性、熱・光・応力等の外部刺激に対する応答性又は記憶性などの様々な特性の要求に対応して、材料・加工面の両面から種々の技術的な取り組みがなされている。
【0003】
そこで、例えば、プラスチック構造体の内部に回路を形成する場合には、ドリルやCO2レーザー等で、貫通する直孔を開け、内部に導電性ペーストを導入したり、穴にメッキを施したりすること等が行われている。しかし、このように、ドリルやCO2レーザー等では、直孔は形成することができるが、三次元的に屈曲・屈折した回路は形成できず、その場合、それぞれ直孔および溝を形成した複数の層を積層して回路を形成する必要があった。
【0004】
一方、レーザー光源に対する技術進歩は著しく、特に、パルスレーザーでは、ナノ秒(10-9秒)のオーダーのパルス幅から、ピコ秒(10-12秒)のオーダーのパルス幅へと超短パルス化が進んでおり、更に最近では、チタン・サファイア結晶などをレーザー媒質とするフェムト秒(10-15秒)のオーダーのパルス幅を有するパルスレーザーなども開発されてきている。パルス幅が10-12秒以下である(例えば、パルス幅がフェムト秒のオーダーである)超短パルスレーザー又はそのシステムは、通常のレーザーが持つ、指向性、空間的・時間的なコヒーレントなどの特徴を有するとともに、パルス幅が極めて狭いことから、同じ平均出力であっても、単位時間・単位空間当たりの電場強度が極めて高いという特徴を有している。そのため、この高い電場強度を利用して、超短パルスレーザーを物質中に照射して新たな構造(誘起構造)を形成させる試みが、無機ガラス材料を主な対象物として行われてきている。
【0005】
また、高分子材料であるアモルファス・プラスチック等は、無機ガラス材料と比較して、ガラス転移温度が低い。これは、無機ガラス材料が共有結合で三次元的に結合してアモルファス構造が形成されているのに対して、高分子材料は、一次元的に共有結合で繋がった高分子鎖が三次元的に絡み合ってアモルファス構造が形成されていることを反映した結果である。従って、無機ガラス材料に対しては、大きな照射エネルギーで照射しないと、誘起構造が形成されないが、高分子材料では、高いエネルギーの照射は材料の劣化を引き起こす虞があるので、高いエネルギーの照射は回避する必要がある。
【0006】
一方で、高分子材料は、熱伝導性が低いという特徴を有しており、蓄熱し易い傾向がある。すなわち、高分子材料は熱運動が無機ガラス材料に比べて容易に起こり、運動や反応に必要な熱量が少なくて済むので、無機ガラス材料に比べて、比較的低い照射エネルギーでも誘起構造が形成される可能性がある。しかし、パルス幅が10-12秒以下である(例えば、パルス幅がフェムト秒のオーダーである)超短パルスレーザーの単位時間・単位空間当たりの電場強度が極めて高いため、レーザーの照射による高分子材料の損傷が起こりやすいことにより、高分子材料の誘起構造の形成に必要な高分子材料の設計についての把握が困難であり、その結果として、高分子材料であるプラスチック構造体に関して、超短パルスレーザーの照射による誘起構造形成の検討は、現在まで、無機ガラス材料ほどには行われていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のプラスチック製の三次元回路素子(プラスチック三次元回路素子)では、三次元的に屈曲・屈折した回路を形成する際には、直孔及び溝が形成されている複数の層を積層する必要があるので、作製が困難であるだけでなく作業性が低かった。
【0008】
従って、本発明の目的は、三次元的に屈曲・屈折した回路を形成する場合であっても、容易に且つ優れた作業性で作製することができるプラスチック三次元回路素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザーの照射により、プラスチック構造体の内部における任意の部位に、導電性物質を含有させるための孔が形成されることにより作製されたプラスチック三次元回路素子及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザーを、プラスチック構造体の内部の部位に焦点を合わせて照射すると、プラスチック構造体の内部において、前記パルスレーザーにより照射された部位及びその周辺部が空洞部となって孔が形成され、しかも、この孔は三次元的に屈曲・屈折したものであっても容易に作製することができ、そして、該孔に導電性物質を含有させることにより、プラスチック三次元回路素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、パルス幅が10-12秒以下のレーザーの照射により、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上の光透過性を有するプラスチック構造体の内部に形成された三次元的に屈曲又は屈折している孔に、導電性物質が含有されていることにより回路が形成されていることを特徴とするプラスチック三次元回路素子を提供する。
【0011】
前記孔としては、パルス幅が10-12秒以下のレーザーをプラスチック構造体に1光束又は多光束干渉で照射することにより形成されていてもよい。
【0012】
本発明には、パルス幅が10-12秒以下のレーザーを、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上の光透過性を有するプラスチック構造体の内部に焦点を合わせて照射して三次元的に屈曲又は屈折している孔を形成した後、該孔に導電性物質を含有させて回路を形成することを特徴とするプラスチック三次元回路素子の製造方法も含まれる。該方法では、パルス幅が10-12秒以下のレーザーをプラスチック構造体の内部に1光束又は多光束干渉で照射することができる。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に、本発明を必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材については、同一の符号を付している場合がある。
【0014】
[プラスチック三次元回路素子]
図1は本発明のプラスチック三次元回路素子の一例を示す概略鳥瞰図である。図1において、1はプラスチック三次元回路素子、11はプラスチック構造体、1aはプラスチック三次元回路素子1又はプラスチック構造体11の上面、1bはプラスチック三次元回路素子1又はプラスチック構造体11の下面、2は孔、3は導電性物質、4は孔未形成部である。また、dは孔2の径又は幅を示す。
【0015】
図1に係るプラスチック三次元回路素子1は、略直方体であり、その上面1aは、X−Y平面に対して平行、又はZ軸に対して垂直となっている。プラスチック三次元回路素子1は、プラスチック構造体11に孔2が形成され、且つ該孔2に導電性物質3を含有させて形成されたものである。前記孔2は、プラスチック三次元回路素子1の上面1aから下面1bにかけて形成されている。具体的には、孔2は、プラスチック三次元回路素子1の上面1aから内部にZ軸と平行に形成されている直線状部位2aと、該直線状部位2aと連接し且つZ軸と平行な方向からX軸と平行な方向に屈曲又は屈折している曲線状部位2bと、該曲線状部位2bと連接し且つX軸と平行に形成されている直線状部位2cと、該直線状部位2cと連接し且つX軸と平行な方向からZ軸と平行な方向に屈曲又は屈折している曲線状部位2dと、該曲線状部位2dと連接し且つZ軸と平行に下面1bまで形成されている直線状部位2eとにより構成されている。該孔2は、プラスチック構造体11の内部における特定の部位に上面1aから下面1bにかけて形成された空洞部であり、積層等により形成されたものではない。
【0016】
このような孔2は、プラスチック構造体11の内部に、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスレーザーの焦点を合わせて、特定の方法により照射することにより形成することができる。例えば、超短パルスレーザーを、プラスチック構造体11に、一方の表面から他方の表面(例えば、下面1bから上面1a)にかけて焦点を移動させながら照射することにより、孔2を形成することができる。図1に係る孔2は、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスレーザーを用いて形成されている。すなわち、孔2は、超短パルスレーザーが照射された(レーザーの焦点が合わせられた)レーザー照射部である。なお、孔未形成部4は、超短パルスレーザーが照射されていない(レーザーの焦点が合わせられていない)レーザー未照射部であり、該レーザーの照射による影響を受けておらず孔が形成されていない部位であり、元の状態又は形態を保持している。
【0017】
孔2において、空洞部(孔)の大きさ(例えば、孔の径又は幅など)や形状(例えば、孔が形成されている長手方向の形状や、該長手方向に対する垂直な面の断面における断面形状など)としては特に制限されない。孔の径(又は幅)dとしては、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜30μm程度の範囲から選択することができる。
【0018】
孔2の長手方向の形状としては、直線状であってもよく、また屈曲又は屈折している形状であってもよく、さらには直線状と屈曲又は屈折している形状とが組み合わせられた形状であってもよい。該孔2の長手方向の長さも特に制限されない。
【0019】
また、孔2の断面形状のうち、孔が形成されている長手方向に対する垂直な面の断面における断面形状としては、例えば、略円形状、略多角形状(例えば、略四角形状など)であってもよい。前記略円形状としては、円形的な形状であればよく、例えば、真円形状、楕円形状などの円形状又はこれに類似する形状(卵型形状などの歪みのある楕円形状など)などが挙げられる。なお、略円形状における弧は波形状や鋸状などの凹凸状を有していてもよい。また、前記略多角形状としては、多角形的な形状であればよく、例えば、略四角形状、略六角形状、略八角形状などが挙げられる。前記略四角形状には、例えば、正方形状、長方形状、台形状、対向する辺がいずれも平行でない四角形状などの四角形状又はこれに類似する形状(歪みのある四角形状など)などが含まれる。なお、略多角形状における角は、角張っていても丸まっていてもよく、これらの複数の角はそれぞれ異なった形状を有していてもよい。また、略多角形状における角の角度(内角の角度)は、特に制限されず、例えば、略四角形状の場合、角のそれぞれの角度は直角であってもよく、鋭角又は鈍角であってもよい。さらにまた、略多角形状(略四角形状など)における辺は、それぞれ、直線状であってもよく、波形状や鋸歯状などの凹凸状であってもよい。なお、孔の断面形状としては、常に一定である必要はなく、各部位で異なっていてもよい。
【0020】
なお、本発明では、孔の長手方向に対する垂直な面の断面における断面形状としては、略円形状であることが好ましい。
【0021】
本発明では、孔は連続的に形成されていれば、その大きさや形状は、各部位で異なっていてもよい。また、1つのプラスチック構造体において、孔の数は、特に制限されず、単数であってもよく、複数であってもよい。内部に複数の孔を有しているプラスチック構造体では、適度な間隔を隔てて孔を積層したような積層構造とすることも可能である。1つのプラスチック構造体の内部に複数の孔が設けられている場合、孔間の間隔は、任意に選択することができる。前記孔間の間隔は、5μm以上であることが好ましい。プラスチック構造体の内部に設けられた孔間の間隔が5μm未満であると、孔の作製時に孔同士が融合して、独立した複数の孔とすることができない場合がある。
【0022】
孔2内には、導電性物質3が含まれている。該導電性物質3としては、導電性を有する物質であれば特に制限されず、導電性有機物質であってもよく、導電性無機物質であってもよい。導電性有機物質には、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなどの各種導電性高分子などが含まれる。また、導電性無機物質としては、各種の金属類などが挙げられる。導電性物質3は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明では、導電性物質3としては、例えば、従来プリント配線基板の分野で実施されている無電解メッキ等において使用される金属類を好適に利用することができる。前記無電解メッキに使用される金属類としては、導電性を有している金属であれば特に制限されず、例えば、金、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、コバルトなどの金属や、銅−ニッケル合金、ニッケル−コバルト合金、錫−ニッケル合金などの合金などが挙げられる。無電解メッキに使用される金属類は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
なお、本発明において、無電解メッキは、例えば、次に示されるようにして行うことができる。まず、上記金属の金属塩溶液中に、上記超短パルスレーザーの照射により孔2が形成されているプラスチック構造体11を浸漬して、孔2(特に、小孔)内の周面を含めたプラスチック構造体11の全表面に金属塩溶液を接触させる。ついで、酸化剤を用いて、プラスチック構造体11の表面付近に金属酸化物を析出させる。そして、還元剤を用いて、この析出した金属酸化物を還元して、メッキ金属を形成する。このとき、孔2内の周面における表面や、この内周面から一定の深さにかけての樹脂組成物部において、メッキ金属が析出する。このようにして、プラスチック構造体11において、一方の面から他方の面にかけて形成されている孔2(小孔)内の表面に、メッキ金属による層を形成させて、孔2に導電性物質3を含有させることができる。すなわち、プラスチック構造体の一方の面から他方の面にかけて延びるメッキ金属の層を小孔内の表面に形成することができ、導電性を発現させることが可能となっている。無電解メッキでは、メッキ金属の層の厚みは特に制限されず、例えば、通常、0.1〜1000μm程度の範囲から選択することができ、好ましくは0.1〜100μmである。
【0025】
より具体的に、無電解メッキの一例として、銀メッキについて説明する。銀メッキは以下のようにして行うことができる。まず、プラスチック構造体を10〜15重量%の硝酸銀水溶液に浸漬する。その後、1〜5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、孔2内に浸透している硝酸銀を酸化させて、酸化銀として沈積する。ついで、1〜5重量%のホルムアルデヒドの水溶液中に浸漬して、酸化銀を還元させて、孔2内にメッキ銀を析出させて、孔2内に銀を導電性物質3として含有させる。
【0026】
なお、本発明では、無電解メッキにおいて、メッキ金属層の厚みを増加させるために、無電解メッキの後に、電解メッキを行ってもよい。
【0027】
このように、本発明のプラスチック三次元回路素子において、孔2は、導電性物質3を含有しており、回路としての機能が発現されている。
【0028】
[孔の作製方法]
本発明のプラスチック三次元回路素子では、パルス幅が10-12秒以下のレーザーをプラスチック構造体11の内部に焦点を合わせて、その焦点位置を移動させて照射することにより、孔(空洞部)2を形成することができる。この際、パルス幅が10-12秒以下のレーザーは、単数で用いてもよく、複数で用いてもよい。すなわち、パルス幅が10-12秒以下のレーザーを照射する際には、図2で示されるような1光束で照射する方法や、図3で示されるような多光束干渉で照射する方法を採用することができる。なお、多光束干渉で照射する方法とは、複数のレーザーを多方向から照射して、その交点又はその近傍に孔を形成するような光の干渉を利用して照射する方法を意味しており、一光束で照射する方法とは、前記のような光の干渉を利用せずに、単一のレーザー(単光源)で照射する方法を意味している。
【0029】
図2は本発明のプラスチック三次元回路素子を作製する一例を示す概略図である。図2において、1a、1b、11、2、2a、2b、2c、2d、2e、4は、それぞれ、図1と同様である。5はパルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー(単に「レーザー」と称する場合がある)、Dはレーザー5の照射方向であり、6はレンズである。プラスチック構造体11は、プラスチック三次元回路素子1を作製するための材料となるものである。そして、プラスチック構造体11の内部に孔2が形成され、さらに該孔2内に導電性物質3を含有させたものが、プラスチック三次元回路素子1となる。孔2は、レーザー5の照射による影響を受けて孔が形成された部位であり、また、孔未形成部4は、レーザー5の照射による影響を受けておらず孔が形成されていない部位である。従って、プラスチック三次元回路素子1は、孔未形成部4内に、導電性物質3が含有された孔2が形成されている形態を有している。
【0030】
図2では、レーザー5は1光束でプラスチック構造体11に向けて、照射方向Dの向きで、すなわちZ軸と平行な方向で、照射している。なお、レーザー5はレンズ6を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。従って、レーザー5の焦点を絞って合わせる必要がない場合などでは、レンズ6を用いる必要がない。
【0031】
また、プラスチック構造体11は略直方体であり、その上面はX−Y平面と平行な面となっている(Z軸と垂直となっている)。なお、プラスチック構造体11としては、直方体を用いているが、如何なる形状のものであってもよく、その大きさも特に制限されない。
【0032】
また、図2において、7aはレーザー5の照射をし始めたときの焦点を合わせた最初の位置又はその中心位置(「照射開始位置」と称する場合がある)である。7b、7cは、レーザー5の照射の焦点又はその中心位置が移動する移動方向が変化した焦点の位置又はその中心位置(「移動屈曲位置」と称する場合がある)である。7dはレーザー5の照射を終えたときの焦点を合わせた最終の位置又はその中心位置(「照射終了位置」と称する場合がある)である。なお、照射開始位置7aはプラスチック構造体11の下面1b上の位置である。このように、大気と接触する面(表面)から焦点を合わせて、レーザー5を照射し始めることにより、焦点が合わせられた部位が気化して除去されて、孔が形成されていると推察される。なお、照射終了位置7dはプラスチック構造体11の上面1a上の位置である。
【0033】
7はレーザー5の照射の焦点位置又は焦点の中心位置が移動した軌跡(「焦点位置軌跡」と称する場合がある)である。具体的には、照射開始位置7aから照射をし始めて、レーザー5の照射の焦点の位置又はその中心位置(単に「焦点位置」と称する場合がある)を移動屈曲位置7bに向かって(すなわち、Z軸と平行な方向で照射方向Dとは逆の方向に)、移動屈曲位置7bまで移動させる。移動屈曲位置7bに到達すると、焦点位置の移動方向を移動屈曲位置7cの方向に(すなわち、X軸と平行な方向に)変えて、移動屈曲位置7cまで焦点位置を移動させる。さらに、移動屈曲位置7cに到達すると、焦点位置の移動方向を照射終了位置7dの方向に(すなわち、Z軸と平行な方向で照射方向Dとは逆の方向に)変えて、照射終了位置7dまで焦点位置を移動させて、照射を終了する。この連続的に移動させた焦点位置の軌跡が焦点位置軌跡7となっている。
【0034】
さらに具体的には、まず、照射開始位置7aから移動屈曲位置7bにかけて、レーザー5の焦点位置を連続的に直線的に移動させて、レーザーの照射を行って、孔2の直線状部位2eを形成する。その後、レーザー5の焦点位置の移動方向を移動屈曲位置7cの方向に変えて、孔2の曲線状部位2dを形成し、さらに移動屈曲位置7bから移動屈曲位置7cにかけて連続的に直線的に移動させて、レーザーの照射を行って、孔2の直線状部位2cを形成する。さらにその後、レーザー5の焦点位置の移動方向を、照射終了位置7dの方向に変えて、孔2の曲線状部位2bを形成し、さらに移動屈曲位置7cから照射終了位置7dにかけて連続的に直線的に移動させて、レーザーの照射を行って、孔2の直線状部位2aを形成する。このようにして、直線状部位2a、曲線状部位2b、直線状部位2c、曲線状部位2dおよび直線状部位2eからなる孔2を形成することができる。なお、該孔2に導電性物質3を充填することにより、回路素子として利用するためのプラスチック三次元回路素子1を作製することができる。
【0035】
このように、本発明では、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスレーザーを、プラスチック構造体の内部に焦点を合わせて照射することにより、孔を形成することができ、この際、該超短パルスレーザーを、プラスチック構造体のいずれかの表面から焦点を合わせて、該焦点を内部に移動させることにより、プラスチック構造体の内部に焦点を合わせて照射することが好ましい。このような超短パルスレーザーの照射方法により、プラスチック構造体の何れかの表面から内部に孔を形成することが可能であり、好ましくは一方の表面から他方の表面に孔を形成することができる。そして、プラスチック構造体の内部に形成された孔(好ましくはプラスチック構造体の一方の表面から内部にかけて形成された孔、さらに好ましくはプラスチック構造体の一方の表面から他方の表面にかけて形成された孔)に、導電性物質を含有させることにより、回路が形成されたプラスチック三次元回路素子を作製することができる。
【0036】
図2では、レーザー5は、該レーザー5が照射している側である上面1aではなく、反対側の下面1b側から照射をし始めて孔2を形成している。このように、レーザーを照射している側の面とは反対側の面から焦点を合わせて照射をし始めると、大きさや形状等が制御された孔をより一層容易に形成することが可能である。
【0037】
本発明では、レーザー5の焦点の位置を、レーザー5の照射方向Dに対して、平行な方向や垂直な方向や斜め方向等に移動させることが出来る。また、本発明では、レーザー5の焦点位置は、連続的又は間欠的に移動させることもできる。この様に、レーザー5の焦点位置を移動させながら照射することにより、焦点位置の移動方向に連続的に形成された孔2を形成させることが出来る。
【0038】
レーザー5の焦点位置を移動させる速度(移動速度)は、特に制限されず、プラスチック構造体11の材質やレーザー5の照射エネルギーの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0039】
なお、孔2は、超短パルスレーザー5の焦点位置又は照射位置を起点にし、照射方向側に空洞部が連続して、焦点位置の移動方向(長手方向)に向かって形成されているような状態又は形態として作製することができる。例えば、焦点位置を照射方向に垂直な方向に移動させた場合、長手方向に対する垂直断面形状が、焦点位置を起点として(すなわち、上端として)、照射方向に延びた又は拡がるような略長方形状となり、該長手方向に対する垂直断面形状が焦点の移動方向(長手方向)に連続して形成されたような孔2が形成される。
【0040】
本発明では、孔2の大きさや形状は、レーザー5の照射時間、レーザー5の焦点位置の移動方向やその速度、プラスチック構造体11の材質の種類、レーザー5のパルス幅の大きさや照射エネルギーの大きさ、レーザー5の焦点を調整するためのレンズの開口数などにより適宜調整することができる。
【0041】
また、本発明では、多光束干渉(特に2光束干渉)により照射して、孔2を形成することもできる。図3は本発明の本発明のプラスチック三次元回路素子を作製する他の例を示す概略図である。図3において、1a、1b、11、2、2a、2b、2c、2d、2e、4、7a、7b、7c、7dは、それぞれ、図1又は2と同様である。51はレーザー、52はレーザー、D1はレーザー51の照射方向、D2はレーザー52の照射方向であり、61はレーザー51の焦点を調整するためのレンズ、62はレーザー52の焦点を調整するためのレンズである。なお、レーザー(51,52)をレーザー5aと総称する場合がある。
【0042】
図3では、2つのレーザー(51,52)が用いられており、2光束干渉により照射している。具体的には、レーザー51と、レーザー52とは、それぞれ、照射方向D1、照射方向D2の向きで、プラスチック構造体11に向けて、2光束干渉で照射している。従って、レーザー51とレーザー52とは異なる位置から同時に照射しており、X−Y面に対して平行および垂直でない方向(0°より大きく90°より小さな角度の方向)から照射している。また、レーザー51の焦点の位置と、レーザー52の焦点の位置とは、同一又は近い位置となっており、レーザー51とレーザー52との2つのレーザーからの照射光をその焦点位置又はその近傍で干渉させている。
【0043】
なお、該2光束干渉により照射を行うこと以外は、図2で示される1光束による照射方法と同様にして、照射して孔を形成することができる。すなわち、図3では、レーザー5aの焦点位置を照射開始位置7aから移動屈曲位置7bにかけて、連続的に直線的に移動させ、移動屈曲位置7bにおいて焦点位置の移動方向を移動屈曲位置7cの方向に変え、さらに移動屈曲位置7bから移動屈曲位置7cにかけて連続的に直線的に移動させ、移動屈曲位置7cにおいて焦点位置の移動方向を照射終了位置7dの方向に変え、さらに移動屈曲位置7cから照射終了位置7dにかけて連続的に直線的に移動させて、それぞれ、直線状部位2e、曲線状部位2d、直線状部位2c、曲線状部位2b、直線状部位2aを形成して、孔2を形成することができる。
【0044】
このように、2光束干渉でレーザーを照射する方法としては、例えば、図3で示されているように2台のレーザーを用いて照射する方法や、ビームスプリッター(例えば、ハーフミラー、プリズム、グレーティングなど)を用いて1台のレーザーによる光を分光して照射する方法などを採用することができる。
【0045】
[超短パルスレーザー]
図2及び3において、超短パルスレーザー(5,5a)におけるパルス幅は10-12秒以下である。本発明では、超短パルスレーザーとしては、パルス幅が10-12秒以下であれば特に制限されず、パルス幅が10-15秒のオーダーのパルスレーザーを好適に用いることができる。パルス幅が10-15秒のオーダーであるパルスレーザーには、パルス幅が1×10-15秒〜1×10-12秒であるパルスレーザーが含まれる。より具体的には、超短パルスレーザーとしては、パルス幅が10×10-15秒〜500×10-15秒(好ましくは50×10-15秒〜300×10-15秒)程度であるパルスレーザーが好適である。
【0046】
パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザーは、例えば、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得ることができる。
【0047】
超短パルスレーザーにおいて、その波長としては、例えば、可視光の波長領域(例えば、400〜800nm)であることが好ましい。また、超短パルスレーザーにおいて、その繰り返しとしては、例えば、1Hz〜80MHzの範囲から選択することができ、通常、10Hz〜500kHz程度である。
【0048】
なお、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする孔の大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば、500mW以下(例えば、1〜500mW)、好ましくは5〜300mW、さらに好ましくは10〜100mW程度の範囲から選択することができる。前述のように、プラスチック構造体11は、無機ガラス材料に比べて熱伝導性やガラス転移温度が低く、無機ガラス材料と同じような励起構造を形成するのに必要な照射エネルギーとしては、無機ガラス材料に必要な照射エネルギーの1/10〜1/100程度に低くすることができる。
【0049】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的とする孔の大きさ、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0050】
なお、プラスチック構造体に対して内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、超短パルスレーザーの焦点の移動速度、焦点の深さ、焦点の絞りなどを調整することによりコントロールすることができ、その結果として形成される孔の形状などをコントロールすることができる。
【0051】
[プラスチック構造体]
プラスチック構造体11としては、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスレーザー(5,5a)をプラスチック構造体11の外部から内部に照射することにより、プラスチック構造体11の内部に、孔2を形成させることが出来るプラスチック構造体であればよい。超短パルスレーザー(5,5a)によるレーザー加工を円滑に行うためには、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上の光透過性を有するものが好適である。
【0052】
また、プラスチック構造体11としては、2つ以上のガラス転移温度を有するプラスチック材料によるものも好適である。2つ以上のガラス転移温度を有するプラスチック材料には、熱的な運動性が異なったお互いに相溶性のない2つ以上の成分を含んで構成された材料系が含まれる。このような材料系としては、2つ以上の異種材料のブレンド物(例えば、2種以上のホモポリマー及び/又はランダム共重合体のブレンド物、2種以上のブロック共重合体のブレンド物など)、2つ以上の異種成分から構成されたブロック共重合体などが挙げられる。該材料系は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
これらの材料系の中で、異種材料のブレンド物はブレンドする各成分の成分比を変えることや分散加工条件を変えることにより、その構造形態として、ドメイン状、シリンダー状、層状、共連続状などの様々な非相溶な形態を作り出す事が出来る。一方、ブロック共重合体並びにそれらのブレンド物(2種以上のブロック共重合体のブレンド物)は、ブロック的に結合された高分子鎖の非相溶性が系全体の非相溶性を担っているので、その構造形態としては前記例示の非相溶な形態が挙げられ、該非相溶な形態としては、ブレンド物よりもより一層微細なものにすることが出来る。
【0054】
例えば、ガラス転移温度が常温(例えば、23℃)以下であるプラスチック材料は、常温近傍の温度において十分な柔軟性を有している。そのため、非相溶性成分として、常温(例えば、20〜25℃、特に23℃)以下のガラス転移温度を有するプラスチック材料を含むブレンド物の材料系では、各プラスチック材料の成分比を調整することにより、常温において任意に柔軟性を調整することができ、取り扱いを容易にすることが可能である。
【0055】
また、例えば、2つのガラス転移温度を有する材料系において、常温(例えば20〜25℃、特に23℃)以下のガラス転移温度(Tg1)を示す成分(Tg1成分)が低温側のガラス転移温度を示す成分である場合には、高温側のガラス転移温度を示す成分(Tg2成分)のガラス転移温度(Tg2)以上の温度(T3)から温度を降下させる(低下させる)と、まず、温度Tg2の近傍で、Tg2成分は運動性が低下して固化するが、Tg1成分はまだ十分な運動性を有した状態で常温(例えば20〜25℃、特に23℃)まで冷却されることになる。このとき、特に、温度Tg1とT3とが一定の場合、2つのガラス転移温度(Tg1、Tg2)の温度差(Tg2−Tg1)が大きい程、Tg2成分はより速く固化することになり、常温までの冷却過程では、高温側のガラス転移温度を示す成分(Tg2成分)が固化した状態での低温側のガラス転移温度を示す成分(Tg1成分)のみの運動期間が長くなる。しかも、特に、低温側のガラス転移温度Tg1が常温(例えば、20〜25℃、特に23℃)以下であると、常温まで冷却される過程で、すなわち、Tg2〜常温の温度領域で、Tg1成分による十分な運動性と緩和性とを保ちながら、相分離構造が形成されることになる。
【0056】
超短パルスレーザーの照射によりプラスチック構造体を加工する方法において、超短パルスレーザーが照射された照射部やその近辺部は、プラズマ発生など化学的・物理的作用を受けながら、局部的に高温状態となり、その後、レーザーの照射の終了や、照射されている部位の移動に伴い、温度が低下して、通常は常温に戻される。従って、例えば、2つのガラス転移温度を有し且つ低温側のガラス転移温度が常温付近又は常温以下であるプラスチック材料系に、超短パルスレーザーを照射した場合には、レーザーの照射開始から照射終了の過程において、上記のような相分離構造の形成が起こり、その結果として、孔が形成され、また制御された誘起構造が形成される。すなわち、形成された孔内や孔内の壁部には、誘起された構造部が形成されている場合がある。例えば、Tg2成分の単独材料系では、超短パルスレーザーの照射によって照射部に熱衝撃的なクラック等の劣化が発生するような照射条件においても、Tg2成分のガラス転移温度Tg2よりも低温側にガラス転移温度を示す成分(Tg1成分)をブレンドしたり、Tg2成分を含む分子内に、ブロック共重合によりTg1成分を組み込んだりすることにより、クラックを発生すること無く、孔を安定的に形成することが出来る。
【0057】
また、プラスチック材料が、外部からの超短パルスレーザーの照射によって、架橋(硬化)反応を起こすプラスチック材料系であると、上述の相分離構造の形成が、架橋(硬化)により固定化されるので、より一層、形成された孔や誘起された構造が安定化される可能性がある。
【0058】
さらにまた、2つ以上のブロックからなるブロック共重合体高分子鎖におけるミクロ相分離により、2つ以上のガラス転移温度が発現されている場合には、通常の異種成分のブレンド系に比べて形成されるミクロドメイン構造等を、サブミクロン以下の大きさにまで小さく出来るので、透明性に優れたフィルムを作製することが出来る。
【0059】
これらのプラスチック材料に超短パルスレーザーの照射を行うと、レーザーの照射部において、一旦ミクロドメイン熱溶融が起こり、照射の終了や照射部の移動により、再度相分離構造が形成されることになる。この相分離構造の再生時に架橋(硬化)反応などが並列的に起こると、相分離が一層促進され、出来上がった相分離構造は、元の相分離構造よりもドメイン構造などの寸法や形態が大きくなる場合がある。また、相分離形態のプラスチック構造体(前述のようにして形成されたドメインなどの相分離構造物)が、特定の成分を選択的に含んだり、架橋(硬化)や光異性化などを起こしたりすることにより、元の成分とは異なるように化学的変化を起こすことが可能な場合には、より一層効果的に孔を形成することが可能な場合がある。
【0060】
超短パルスレーザーの照射により少なくとも相分離を起こすことができ、且つ2つ以上のガラス転移温度を発現するプラスチック材料としては、各種の高分子材料を組み合わせて用いることができる。このような高分子材料の組み合わせは数多くあり、むしろ異種成分高分子材料の組み合わせで相分離を起こさずに相溶して単一のガラス転移温度を示す組み合わせの方が少ないといえる。従って、本発明では、このような数多くある組み合わせを利用することができ、極めて実用性が高い。なお、高分子材料の相溶性やガラス転移温度などの各種特性は、例えば、ポリマーハンドブックなどに記載されている。
【0061】
超短パルスレーザーの照射により相分離を起こすことができるとともに、2つ以上のガラス転移温度を発現するプラスチック材料の組み合わせの中で、例えば、低温側のガラス転移温度が常温(例えば、20〜25℃、特に23℃)以下で光学的に透明性を有するアモルファスな成分としては、例えば、ポリイソプレンやポリブタジエンなどのポリジエン類;ポリイソブチレンなどのポリアルケン類;ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸エステル類;ポリブトオキシメチレンなどのポリビニルエステル類;ポリウレタン類;ポリシロキサン類;ポリサルファイド類;ポリフォスファゼン類;ポリトリアジン類;ポリカーボラン類などが挙げられる。なお、これらのうちポリジエン類、ポリアルケン類、ポリアクリル酸エステル類、ポロシロキサン類などは、ガラス転移温度が低いことを利用して粘着剤の構成成分として幅広く使用されている。
【0062】
また、高温側にガラス転移温度を有し光学的に透明性の高い材料としては、ポリカーボネート(PC);ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン(PES);ポリノルボルネン;エポキシ系樹脂;ポリアリール;ポリイミド;ポリアミド;ポリアリーレンエーテル;ポリアリレートなどが挙げられる。
【0063】
2つ以上のブロックからなるブロック共重合体の高分子鎖のミクロ相分離により、2つ以上のガラス転移温度を有するブロック共重合体は、上記の低温側にガラス転移温度を発現する成分と、高温側にガラス転移温度を発現する成分とを適当に組み合わせて、ブロック共重合体となるように重合(共重合)して、共重合化すれば良い。重合方法(共重合方法)としては、特に制限されず、例えば、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの公知のリビング重合法を採用することができる。
【0064】
超短パルスレーザーを照射し、レーザー加工を行うプラスチック材料としては、上記の様なブレンドや共重合体などの2つ以上のガラス転移温度を有するプラスチック材料に限定されるものではなく、上述の低温側にガラス転移温度を有する材料並びに高温側にガラス転移温度を有する材料として例示した様なプラスチック材料単独でも目的とする構造物(孔)が、超短パルスレーザーの照射によって形成されるのであれば、使用できる。また、プラスチック材料単独だけでなく、無機化合物や金属化合物などの他の材料を分散状態で含んだ複合体や他の材料を層状の状態で含んだ積層体であってもよい。
【0065】
なお、超短パルスレーザーの照射により連通した孔内や孔内の壁部に誘起された構造部が残存している場合は、そのまま導電性物質を充填してもよく、また誘起された構造部を加圧等により物理的に除去したり、化学的に溶解させて除去したりした後に、導電性物質を充填することができる。
【0066】
【発明の効果】
本発明では、プラスチック三次元回路素子は、三次元的に屈曲・屈折した回路を形成する場合であっても、プラスチック構造体に対して、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスレーザーを焦点位置又は照射位置を移動させながら照射するという簡単な方法により、作製することができる。従って、作製時の工程数が少なく作業性が優れており、また、制作の容易性が高い。しかも、プラスチック構造体の内部における任意の部位に、回路素子として用いることができる孔を形成することが可能であり、回路素子の設計の自由度が優れている。
【0067】
さらに、本発明のプラスチック三次元回路素子は、プラスチック特有の軽量、柔軟性・屈曲性・強靱性を有している。さらにまた、目的に応じた材料選択の範囲が広く、作製が容易で、機械的特性や光学的特性などの特性範囲が広い。
【0068】
そのため、本発明のプラスチック三次元回路素子は、目的とする種々の特性を有するものを容易に得ることができ、実用性が極めて優れている。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
重合用容器に、モノマー成分としてアクリル酸ブチル(BA)と、アクリル酸エチル(EA)とを等モル比の割合で入れ、重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチル(前記モノマー成分全量に対して0.0012モル%)、重合触媒として臭化銅(前記モノマー成分全量に対して0.0012モル%)、助触媒として2、2´−ビピリジン系誘導体(前記モノマー成分全量に対して0.0036モル%)を用いた公知のリビングラジカル重合法により、先ず、重量平均分子量約25,000のアクリル酸ブチル・アクリル酸エチルランダム共重合体[ポリ(BA・EA)ランダム共重合体]を作製した。
引き続いて、前記ポリ(BA・EA)ランダム共重合体を含む反応混合物に、ブロック共重合体を作製するための共重合性モノマー成分としてメチルメタアクリレート(MMA)を追加して、さらにリビングラジカル重合を行うことにより、ポリ(BA・EA)ランダム共重合体に、ブロック的に、重量平均分子量が約58,000のポリメチルメタクリレート(PMMA)を結合させた、PMMA・(ポリ(BA・EA)ランダム共重合体)ブロック共重合体[ポリ(MMA/BA・EA)ブロック共重合体]を得た。該ポリ(MMA/BA・EA)ブロック共重合体(「ブロック共重合体A」と称する場合がある)において、ブロック共重合体全体の重量平均分子量は約83,000であり、PMMAの比率は70重量%(重量平均分子量比)である。
このブロック共重合体Aをフィルターやイオン交換樹脂を用いて精製した後、紫外線(UV)により架橋させることができ且つ約250nm及び約360nmに最大吸収波長(λmax)を有するトリアジン系架橋剤を、ブロック共重合体(ブロック共重合体A)100重量部に対して1重量部添加し、さらに酢酸エチルを加えて、濃度が約30重量%の溶液にして、キャスティング法により、膜厚:約0.5mmのフィルム状サンプル(「照射サンプルA」と称する場合がある)を作製した。
【0071】
なお、前記ブロック共重合体Aについて、示差走査熱量測定(DSC)装置(商品名「DSC6200」セイコー電子工業社製)を使用して、130℃から急冷したサンプル(ブロック共重合体)を用いて、試料重量:7〜20mg、昇温速度:7℃/分、窒素流速:60〜70mm/分の条件でガラス転移温度の測定を行ったところ、該ブロック共重合体Aのガラス転移温度は、約−30℃及び104℃であり、2つのガラス転移温度を有していた。
【0072】
前記照射サンプルAの上面から深さが約500μmの位置を焦点にして、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:20倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パルス幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)を、照射エネルギー(平均出力):50mW、照射スポット径:約4μmの条件で、1光束による照射で、照射サンプルAを照射方向に対して反対の方向(レーザーに接近する方向)に、移動速度:約50μm/秒で、照射開始位置からの距離が300μmのところまで直線移動させて、照射を行った。続けてその位置からレーザーの照射方向に対して垂直な方向に向きを変えて、移動速度:約50μm/秒で、距離が3500μmのところまで直線移動させて照射し、さらに、続けて、該照射方向と90°左の方向(すなわち、レーザーの照射方向且つ前回の照射方向と垂直な方向)に向きを変えて、移動速度:約50μm/秒で、距離が3500μmのところまで直線移動させて照射した。さらにまた、続けて、その位置からレーザーの照射方向に対して反対の方向(レーザーに接近する方向)に、移動速度:約50μm/秒で、距離が300μmのところまで直線移動させて、照射を行って、照射を終了した。
【0073】
次に、この照射を終了した照射サンプルAを、15重量%硝酸銀水溶液に浸漬し(30分間)、その後、3重量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し(30分間)、照射サンプルA内に形成されている孔(小孔)内に浸透している硝酸銀を酸化し、酸化銀として沈積させた。続いて、5重量%ホルムアルデヒド水溶液中に浸漬して、酸化銀を還元して、小孔内等にメッキ銀を析出形成させたところ、図4で示されるような、三次元的に屈曲又は屈折されて形成されている孔の内部にメッキが施されたプラスチック(プラスチック三次元回路素子)が得られた。
【0074】
なお、照射した照射サンプルAの断面を光学顕微鏡で観察して、孔の寸法などを測定したところ、孔の径(内径)は、4μmであった。
【0075】
(実施例2)
前記照射サンプルAを用いて、2光束干渉により照射すること以外は、実施例1と同様にして、超短パルスレーザーを照射し、メッキを施したところ、図4で示されるような、実施例1と同様の三次元的に屈曲又は屈折されて形成されている孔の内部にメッキが施されたプラスチック(プラスチック三次元回路素子)が得られた。
【0076】
(実施例3)
照射サンプルAの代わりにポリイミドフィルム(厚み:250μm)を用いるとともに、超短パルスレーザーの照射エネルギー(平均出力)を75mWとすること以外は、実施例1と同様にして、超短パルスレーザーを照射し、メッキを施したところ、三次元的に屈曲又は屈折して形成されている孔の内部にメッキが施された実施例1と同様のプラスチック(プラスチック三次元回路素子)が得られた。
【0077】
(実施例4)
照射サンプルAの代わりにポリカーボネートフィルム(厚み:0.5mm)を用いること以外は、実施例1と同様にして、超短パルスレーザーを照射し、メッキを施したところ、三次元的に屈曲又は屈折して形成されている孔の内部にメッキが施された実施例1と同様のプラスチック(プラスチック三次元回路素子)が得られた。
【0078】
なお、図4は、実施例1又は2で作製されたプラスチック三次元回路素子を示す概略鳥瞰図である。図4において、1、1a、1b、2、3は図1〜3と同様である。12は照射サンプルAである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック三次元回路素子の一例を示す概略鳥瞰図である。
【図2】本発明のプラスチック三次元回路素子を作製する一例を示す概略図である。
【図3】本発明の本発明のプラスチック三次元回路素子を作製する他の例を示す概略図である。
【図4】実施例1又は2で作製されたプラスチック三次元回路素子を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 プラスチック三次元回路素子
1a プラスチック三次元回路素子1の上面
1b プラスチック三次元回路素子1の下面
11 プラスチック構造体
2 孔
2a 孔2の直線状部位
2b 孔2の曲線状部位
2c 孔2の直線状部位
2d 孔2の曲線状部位
2e 孔2の直線状部位
3 導電性物質
4 孔未形成部
d 孔2の径又は幅
5 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー
D レーザー5の照射方向
6 レンズ
7a 照射開始位置
7b 移動屈曲位置
7c 移動屈曲位置
7d 照射終了位置
7 焦点位置軌跡
51 レーザー
52 レーザー
1 レーザー51の照射方向
2 レーザー52の照射方向
61 レーザー51の焦点を調整するためのレンズ
62 レーザー52の焦点を調整するためのレンズ

Claims (4)

  1. パルス幅が10-12秒以下のレーザーの照射により、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上の光透過性を有するプラスチック構造体の内部に形成された三次元的に屈曲又は屈折している孔に、導電性物質が含有されていることにより回路が形成されていることを特徴とするプラスチック三次元回路素子。
  2. 孔が、パルス幅が10-12秒以下のレーザーをプラスチック構造体に1光束又は多光束干渉で照射することにより形成されている請求項1記載のプラスチック三次元回路素子。
  3. パルス幅が10-12秒以下のレーザーを、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上の光透過性を有するプラスチック構造体の内部に焦点を合わせて照射して三次元的に屈曲又は屈折している孔を形成した後、該孔に導電性物質を含有させて回路を形成することを特徴とするプラスチック三次元回路素子の製造方法。
  4. パルス幅が10-12秒以下のレーザーをプラスチック構造体の内部に1光束又は多光束干渉で照射する請求項3記載のプラスチック三次元回路素子の製造方法。
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