以下、本発明を詳細に説明する。
三次元構造体は、三次元的に連続した空孔を有する多孔質体を用いて、製造することができる。
多孔質体に存在する連続空孔は、規則的に均質に形成されていることが光を散乱しにくいので好ましい。用いられる多孔質体における連続空孔は、多孔質体外部に開放されていることが必要であり、外部に開放端のない独立気泡はできるだけ少ないことが望まれる。また、フォトニック結晶内の屈折率の違いを大きくするために、空孔率は、多孔質体の機械的強度が保たれる範囲において高い方が望まれる。具体的には、空孔率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
この方法においては、多孔質体の内部を露光するので、散乱を避けるためには、空孔径が露光波長に対して十分に小さいことが好ましい。またフォトニック結晶を作製する場合には、信号光を散乱しないように、空孔径は信号光の波長より充分小さく設定されることが必要である。しかしながら、空孔径が余り小さすぎる場合には感光性物質を充填しにくくなったり、露光部または未露光部の感光性物質を、エッチングなどの手法によって除去しにくくなるおそれがある。これらを考慮すると、用いられる多孔質体の空孔径は、1〜100nmの範囲内であることが好ましく、5〜50nmの範囲内であることがより好ましく、10〜30nmの範囲であることが最も好ましい。
上述したような三次元的に形成された連続空孔を有する共連続多孔質体は、様々な手法によって作製することができ、例えば、シリカやポリマーなどのビーズを積層して作製することができる。こうした積層体としては、シリカビーズの積層体である人造オパールなど、あるいはセラミック微粒子の凝集体であるグリーンシートなどが挙げられる。また、例えばY.A.Vlasovら(Adv.Mater.11, No.2,165,1999)やS.A.Johnsonら(Science Vol.283,963,1999)が報告しているような多孔質体を用いることもできる。こうした多孔質体は、ビーズの積層構造の空隙に樹脂や金属酸化物ゲルなどを充填して硬化させた後に、ビーズを除去して作製されるものである。さらに、例えばS.H.Parkら(Adv.Mater.10,No.13,1045,1998)やS.A.Jenekheら(Science Vol.283,372,1999)が報告しているような、ビーズの代わりに気泡や液泡の積層体を鋳型として形成されたポリマーなどの多孔質構造体などを用いてもよい。またシリカゾルを長臨界乾燥して得られる空孔率90%以上、空孔径100nm以下程度の連続空孔を有するシリカエアロゲルは、空孔率が高く、かつ透明性に優れており好ましい。
あるいは、ポリマーなどが示すミクロ相分離構造や、ポリマーやシリカ、セラミック等の混合物のスピノーダル分解によって形成される共連続相分離構造などの相分離構造から、適切な相を除去することによって形成された多孔質体でもよいし、エマルジョンテンプレーティング法などによって作製した金属酸化物やポリマーなどの多孔質体でもよい。さらには、例えばB.H.Cumpstonら(Nature,vol.398,51,1999)が報告しているような三次元光造形法を用いて作製した多孔質体を用いることもできる。
特に、規則的で空孔率の高い多孔質体を低コストで作製することが可能なことから、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成されたポリマーなどの多孔質構造体が好ましい。ポリマーなどが示す相分離構造から、適当な相を除去することによって形成された多孔質体もまた、同様の理由で好ましい。なお、空孔径の制御が容易な点から、ポリマーの相分離構造から多孔質体を作製するのが最も好ましい。ポリマーの相分離構造としては、特に限定されず、例えばポリマーブレンドが示すスピノーダル分解によって形成された相分離構造、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーが示すミクロ相分離構造などが挙げられる。ブロックコポリマーやグラフトコポリマーなどが示すミクロ相分離構造は、非常に規則的でかつドメインの大きさはコポリマーの分子量によって制御することができるため優れている。
ミクロ相分離現象の中でも特に共連続構造は、三次元的に連続な2つの相からなる相分離構造であり、1相を選択的に除去することによって三次元的に連続な空孔を有する多孔質体を形成することができる。こうした共連続構造の中でも、OBDD構造やGyroid構造などが好ましい。ミクロ相分離構造から選択的に1相を除去する方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、テレケリックポリマーを用いて二つの結合部位を化学的に切断してから、一方のポリマー鎖をエッチングする方法が挙げられる。また、一方の相を選択的にオゾン酸化して分解除去する方法、酸素プラズマや光分解により除去する方法を用いてもよい。さらに、エネルギー線を照射して一方の相を選択的に分解除去することもできる。得られる多孔質体の空孔径は、ミクロ相分離構造から除去する相を構成しているポリマー鎖の分子量によって制御することが可能である。また、こうしたポリマー鎖と相溶性のよいホモポリマーなどを混合することによって、空孔径を制御することもできる。
相分離構造から多孔質体を作製するためのポリマー材料は特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリアリルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
フォトニック結晶の製造方法においては、まず、上述したような連続した貫通孔を有する多孔質体の空孔内部に感光性物質を充填する。用い得る感光性物質としては、例えばアクリル系樹脂モノマーなどの硬化性樹脂と好ましくは二光子吸収性の光硬化触媒からなる組成物等が挙げられる。こうした感光性物質は、溶液あるいはそのまま含浸したり、CVD等の手法によって多孔質体の空孔内部に充填することができる。
感光性物質が空孔内に充填された多孔質体は、フォトニックバンドを形成する周期構造パターンで三次元的に露光する。この露光には、通常の可視光あるいは紫外光などの光源などの他、β線(電子線)、X線などを用いることができる。工程が簡便なことから可視光あるいは紫外光が最も好ましいが、膜厚方向への侵入性がよいβ線(電子線)も好適に用いられる。
三次元的な露光を行うに当たっては、例えばレーザーなどをレンズで集光した焦点を、多孔質内で三次元的に走査させるという手法を用いることができる。また、線状とシート状の二つのレーザービームを多孔質体内に入射させて、これら二つのビームの交点を三次元的に走査してもよいし、あるいは、多孔質体内で干渉縞を形成することもできる。すなわちコリメートした複数のビームを入射させ、多孔質内で干渉させて干渉パターンを生じさせれば良い。
露光後には、露光部または未露光部の感光性物質を選択的に除去して、多孔質化する。所定の領域の感光性物質を除去するに当たっては、溶媒洗浄などの湿式現像法や、酸素プラズマエッチングなどの気相エッチング、さらには不要部位を加熱により蒸散させる熱現像などの方法を採用することができる。このように所定の領域の感光性物質を除去することによって、感光性物質が残存した領域と、感光性物質が除去されて多孔質化された領域とで屈折率の異なる領域が形成される。空孔内に充填可能であれば、感光性物質として様々な物質を選択することが可能なため、屈折率差を自由にかつ大きくすることが可能となる。感光性物質が除去されて多孔質化した部分には、さらに別の第2の物質を充填してもよい。あるいは、空孔内に感光性物質を完全に充填せずに空隙を残しておき、めっきなどの手法によって金属などをこの空隙に充填してもよい。この場合には、屈折率差をさらに大きくすることができる。
物質を充填することによって多孔質体中に周期的に形成された領域はフォトニック・バンドを形成するように、平均0.1〜2μmの周期で配列されている部分を有する。フォトニック結晶は、可視光領域から近赤外領域で用いられるものであるので、こうした光の波長を考慮して、多孔質体内に物質が充填された領域は、平均0.1〜2μmの周期の部分を有することが必要である。
なお、多孔質体内の物質が充填された領域の周期は、用いようとする光の波長の半分程度であることが好ましい。例えば周期を0.3μmとすると、その2倍は0.6となるので、可視領域のフォトニック・バンドを形成することができる。バンド端は、エネルギーの最も低いものを用いる必要はなく、エネルギーの高いものでもよい。
なお、周期的に配置された領域に充填される物質は各種ポリマー、金属酸化物などのセラミック材料、金属など特に限定されず、液晶や非線型光学材料でもよい。周期的に配置された領域以外の部分は、空孔からなる多孔質のまま残しておいても、液晶などの光変調材料やレーザー発光性材料などの他の物質を充填してもよい。また周期構造を歪ませ、フォトニック・バンド特性を変調するために、三次元構造体に圧電素子やヒーター、ペルチェ素子などの温度調節装置、電界を印可するための電極、光照射のための発光素子などを付与することが可能である。
このように作製された三次元構造体においては、周期的な領域の配列を自由に設定できるうえ、領域あるいは領域以外の部位に充填される物質を自由に選択できるため、屈折率の変化を大きくすることができる。したがって、良好なフォトニック結晶を形成することが可能となる。さらにフォトニック結晶に信号光を入射あるいは出射させるための光導波路部位を同様の手法によって作り込むことも可能である。すなわち、光導波路のパターンを露光して、光導波路として機能するコア部とクラッド部を形成する。典型的には例えば多孔質内に線状にアクリル樹脂モノマーなどが充填された領域を形成することによって光導波路となる。この時2種以上のアクリル樹脂モノマーの混合物を用いてGI型の光導波路を形成してもよい。このようにフォトニック結晶に信号光の導波路を作り込むことによって効率の向上や小型化が可能となる。またフォトニック・バンドを形成する周期的に配置された領域群以外に、屈折率変化のある部位を付加的に形成することによって、フォトニック・バンドを変調させてもよい。こうした周期構造を乱す領域は半導体における不純物準位のごとく作用して、フォトニック・バンドギャップ中に特定の波長域の光が透過する領域を形成することができる。例えば三次元構造体中にレーザー色素をドープして、不純物準位をレーザー色素の発振波長域に合わせれば、発振損失の小さなフォトニック結晶レーザーを作製することができる。
次に、本発明の三次元配線構造およびその製造方法について説明する。
本発明の三次元配線構造は、一様に形成された三次元的に連続した貫通孔を有する多孔質体を用いて、本発明の方法により製造することができる。
多孔質体に存在する連続空孔は、規則的に均質に形成されていることが光を散乱しにくいので好ましい。本発明で用いられる多孔質体における連続空孔は、多孔質体外部に開放されていることが必要であり、外部に開放端のない独立気泡は、できるだけ少ないことが望まれる。また、配線の誘電率などを向上させるために、空孔率は、多孔質体の機械的強度が保たれる範囲において高い方が望まれる。具体的には、空孔率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
本発明の方法においては、多孔質体の内部を露光するので、散乱を避けるためには、空孔径が露光波長に対して十分に小さいことが好ましい。ただし、空孔径があまりに小さすぎる場合には、めっきなどによって金属を充填しにくくなるおそれがある。特に配線を形成する場合には、充填された金属は空孔内で良好に連続している必要がある。空孔径が小さいとめっきによって金属が導入できたところで、空孔内で互いに分離した微粒子状態になるおそれがある。こうした不都合を避けるため、本発明で用いられる多孔質体の空孔径は30〜2000nmであることが好ましく、50〜1000nmであることがより好ましく、100〜500nmの範囲に設定されることが最も好ましい。
空孔径が上述した範囲を逸脱し、露光波長より大きい場合でも、多孔質体と近いか同じ屈折率を有する液体などを散乱防止用として空孔内に充填すれば、露光時の散乱などを防止することは可能である。しかしながら、空孔径が余り大きくなると、やはりめっきなどによって空孔内に十分に金属を充填することが難しくなるうえ、配線幅を数十μm以下と十分に小さくすることが困難になる。また、多層配線基板を作製する際には、層間でのショートなどが起こりやすくなる。これらを考慮にいれると、露光時に散乱防止用の液体などを用いる場合にも、多孔質体の空孔径は5μm以下に設定されるのが望まれる。
三次元的に形成された連続空孔を有する共連続多孔質体は、三次元構造体の製造方法に関してすでに説明したような、種々の手法によって作製することができる。例えば、ビーズを積層したものや、グリーンシート、ビーズの積層構造を鋳型として作製した多孔質体、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成した多孔質体、ポリマーのミクロ相分離構造から形成した多孔質体、ポリマーやシリカなどの混合物のスピノーダル分解によって生じた共連続構造から作製した多孔質体、エマルジョンテンプレーティング法などによって作製した多孔質体、三次元光造形法を用いて作製した多孔質体などを用いることができる。
特に、規則的で空孔率の高い多孔質体を低コストで作製することが可能なことから、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成されたポリマーなどの多孔質構造体が好ましい。ポリマーなどが示す相分離構造から適当な相を除去することによって形成された多孔質体もまた、同様の理由で好ましい。なお、空孔径の制御が容易で低コストで製造が可能な点から、ポリマーの相分離構造から多孔質体を作製するのが最も好ましい。ポリマーの相分離構造としては特に限定されず、例えば、ポリマーブレンドが示すスピノーダル分解により形成された相分離構造、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーが示すミクロ相分離構造などが挙げられる。空孔径の制御が容易で規則的な多孔質構造を形成可能な点からブロックコポリマーやグラフトコポリマーが示すミクロ相分離構造が最も良い。ミクロ相分離構造としては共連続構造が好ましく、中でもOBDD構造やGyroid構造などが特に好ましい。共連続構造とするには、多孔質体を構成するポリマー鎖のコポリマー中における重量分率が30〜70%の範囲に設定されることが良い。
得られる多孔質体の空孔径は、相分離構造から除去する相を構成しているポリマー鎖の分子量によって制御することが可能である。また、こうしたポリマー鎖と相溶性のよいホモポリマーなどを混合することによっても、多孔質体の空孔径を制御することもできる。ホモポリマーを混合する手法を用いることによって、コポリマーのみでは形成しにくい100nm以上の空孔径を有する多孔質体を、比較的容易に作製することができる。
配線形成用の基板として多孔質体を用いる場合には、多孔質体は絶縁性の金属酸化物やポリマーなどで形成することが望まれる。特にポリイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、およびポリエーテルスルホンなどの耐熱性ポリマーであることが好ましい。また、1、2−結合型あるいは1、4−結合型のポリブタジエンなどの共役ジエンモノマーを重合した側鎖中あるいは主鎖中に二重結合を有するポリマーを架橋したものでもよい。
ポリイミドの多孔質体は、例えば次のような手法で作製することができる。まず、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸とポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタクリレートなどの熱分解性ポリマーとを混合する。この際、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーなどとして、相分離させてもよい。次いで、加熱処理を施してポリアミド酸をポリイミドに変換すると同時に、熱分解性ポリマーを揮発除去する。
構造の規則性の観点からは、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーを用いることが好ましい。ただし、100nm以上の空孔を形成する場合には、熱分解性ポリマー鎖の分子量は10万程度以上となるため、ブロックコポリマーを合成するのが比較的困難になる。そこで、例えば熱分解性ポリマー鎖の末端に結合基を導入し、その後グラフトコポリマーを合成することが好ましい。具体的には、例えばポリアミド酸とポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどの熱分解性ポリマーとのグラフトコポリマーを合成する際には、まずカルボキシル基などのポリアミド酸の側鎖基と化学結合する結合基として、アミノ基などを熱分解性ポリマー鎖の末端に導入する。次いで、結合基が導入された熱分解性ポリマーとポリアミド酸とを混合してグラフトコポリマーを合成する。また、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーにホモポリマーを添加して、多孔質体の空孔径を調節してもよい。またこの際、ビスマレイミド類などの架橋性の可塑剤を添加するとミクロ相分離構造の形成が促進されるとともに、多孔質体の耐熱性や機械的強度などが向上する。
また1、2−結合型ポリブタジエン、すなわちポリ(ビニルエチレン)はラジカル発生剤や架橋剤の添加によって三次元架橋して、耐熱性、電気特性、耐湿性、機械的特性にすぐれた硬化ポリマーとなる。しかもポリ(ビニルエチレン)はリビング重合が可能であるので、高分子量でしかも分子量分布の揃ったブロックコポリマーを作製することが可能である。そのためポリ(ビニルエチレン)と、β線で分解除去可能なポリメタクリル酸エステルや熱分解可能なポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどとのブロックコポリマーを用いると、ポリ(ビニルエチレン)架橋体からなる所望の空孔径の規則的な多孔質体を形成することができる。この場合もホモポリマーを添加して、多孔質体の空孔径を調節することができる。ラジカル発生剤としては一般的なジクミルパーオキサイドの様な有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ二トリル類などを用いることができる。なかでも2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの多官能ラジカル発生剤は架橋剤としても作用するため好ましい。ラジカル発生剤の添加量は、架橋させるポリマー鎖に対して0.1〜20重量%、さらに1〜5重量%であることがよい。ラジカル発生剤が少なすぎると架橋密度が小さく、多すぎると架橋体が多孔質になったりミクロ相分離構造が乱れる。架橋剤としては例えばビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのビスマレイミド類が良い。添加量は、架橋させるポリマー鎖に対して0.1〜20重量%、さらに1〜5重量%であることがよい。少なすぎると架橋密度が小さく、多すぎるとミクロ相分離構造が乱れる。
ミクロ相分離構造が形成される前に架橋反応が進行してしまうと、ミクロ相分離構造の形成が阻害される。そのためミクロ相分離構造が十分に形成されてから架橋反応が開始されることが好ましい。ミクロ相分離構造の形成はコポリマーを形成する各ポリマー鎖のガラス転移点温度以上で進行する。そのためポリマー鎖のガラス転移点温度がラジカル発生剤のラジカル発生温度よりも充分低いことが好ましい。
最も好ましい組成の例としては、ポリ(ビニルエチレン)鎖と、ポリエチレンオキシド鎖あるいはポリプロピレンオキシド鎖とのジブロックコポリマーあるいはトリブロックコポリマーに、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンあるいは3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをポリ(ビニルエチレン)鎖に対して重量%で1〜5%添加したものが挙げられる。特にラジカル発生剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを用いるのが最も良い。
ポリ(ビニルエチレン)のガラス転移点温度は約20℃である。またポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドのガラス転移点温度は0℃以下と十分に低い。対して2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンおよび3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンの毎分4℃で昇温した際の熱分解開始温度はそれぞれ139℃、125℃であり十分に高い。そこでまず室温から50℃程度で加熱してミクロ相分離構造を形成した後、徐々に昇温してラジカル発生剤の熱分解温度付近まで加熱して架橋硬化すればよい。ただしこの際、あまり温度を高くすると十分な架橋が行われる前に秩序−無秩序転移温度を通り越してしまい、溶融して均一になってしまうおそれがある。その点、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンにおいては、熱分解によらずとも紫外線照射によってラジカルを発生するので好都合である。
ポリ(ビニルエチレン)鎖とポリメチルメタクリレート鎖とのジブロックコポリマーあるいはトリブロックコポリマーに、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンあるいは3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをポリ(ビニルエチレン)鎖に対して重量%で1〜5%添加したものは、ポリメチルメタクリレートのガラス転移点温度が105℃と比較的高いために、充分ミクロ相分離構造が形成される前に架橋反応が起こりやすい。しかしながらポリメチルメタクリレートはβ線照射すると、熱分解によって揮発しやすくなるため、溶媒洗浄や比較的低温の加熱処理で多孔質化することができる。ポリメチルメタクリレートのガラス転移点温度と架橋開始温度が接近しているために、溶液からゆっくり溶媒を蒸発させてキャスト膜を製膜することによって、ミクロ相分離構造を形成するのがよい。この場合は、溶媒の蒸発をラジカル発生剤の熱分解温度よりも十分に低い温度で行えばミクロ相分離構造の形成が架橋によって阻害される恐れも無い。しかしながらこのようなキャスト膜の作製は比較的時間がかかり生産性が高くない。ポリメチルメタクリレートの代わりにポリα−メチルスチレンを用いた場合も同様のことが言える。
ポリメチルメタクリレートやポリα−メチルスチレンの代わりに、炭素数3〜6のアルキル基で置換されたポリメタクリル酸エステル類や、同様のアルキル基でフェニル基が置換された置換ポリα−メチルスチレン類などは、ガラス転移点温度が低下するために、上述した様な問題を回避することができる。すなわちコポリマーの膜(あるいは成形体)をガラス転移点温度以上の温度で加熱処理することによって迅速にミクロ相分離構造を形成することができる。例えばポリn−プロピルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレートなどはガラス転移点温度がそれぞれ35℃、25℃と低い。4位をブチル化したポリα−メチルスチレンも同様に低いガラス転移点温度を示す。アルキル基の炭素数が6個より多くなるとさらに低いガラス転移点温度を示すが、同時にβ線照射によって架橋反応を起しやすくなってしまう。低いガラス転移点温度とβ線照射による分解促進効果を両立するものとしてポリn−プロピルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートが良く、特にポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートが最も良い。
2−エチルヘキシル基の様にアルキル基が分岐している場合には、炭素数が増大してもβ線照射による分解促進効果が抑制されにくくよい。しかしながらモノマーの入手のし易さの点から、実用性の点で上記のポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートに劣る。
低いガラス転移点温度とβ線照射による分解促進効果を両立するポリマー鎖として他に、ポリイソブチレンやポリプロピレンなどを用いることができる。
β線の照射量としては特に制限はないが、100Gy〜10MGyの範囲に設定されることが良く、さらには1KGy〜1MGy、さらに望ましくは10KGy〜100KGyに設定されることが好ましい。あまり照射量が少ないと分解性ポリマー鎖の分解が十分でなく、反対に照射量が多すぎると分解性ポリマー鎖の分解物が三次元架橋などして硬化してしまったり、難分解性のポリマー鎖まで分解してしまう恐れがあるからである。加速電圧はコポリマーの成形体の厚さ、つまりβ線の成形体内への侵入長によって異なるが、数十μm以下程度の薄膜であれば、20kV〜2MV程度、100μm以上のフィルムやバルクの成形体などでは500kV〜10MV程度が良い。成形体中に金属成形体などが含まれている場合は、さらに加速電圧を高くしてもよい。
このようにβ線照射を行う場合には1、2−結合型ポリブタジエン鎖は架橋するため、ラジカル発生剤の量を減少してもよく、全く添加しないことも可能である。この場合には、ガラス転移点温度を必ずしも低減する必要は無い。ポリ(ビニルエチレン)の架橋体はその優れた特性から配線基板に用いることが試みられているが、配線の銅との接着性が良くないという問題があった。しかしながら本発明の三次元配線構造においては銅などの配線やビアは多孔質体と一体化されているためにこうした問題は回避される。
本発明の三次元配線構造の製造方法により、多層配線や3D配線などとして用いられる、金属や金属酸化物などの三次元構造体を形成することができる。また併せてカーボンやダイヤモンドなどの三次元構造も、本発明の三次元配線構造の製造方法を適用して形成することも可能である。こうした構造はフォトニック結晶としても用いることができる。ただし、フォトニック結晶を作製する場合には、用いられる多孔質体の空孔径は、10〜500nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましく、30〜50nmであることが最も好ましい。金属酸化物やカーボンなどの構造は三次元配線中のコンデンサーや抵抗体として用いることができる。
本発明の三次元配線構造の製造方法においては、まず、上述したような連続した貫通孔を有する多孔質体に対し露光を施して、三次元パターンの潜像を形成する。ここでの三次元パターンとは、光の入射方向に対して、異なる二次元パターンを少なくとも2つ有するパターンを意味する。露光光としては、通常の可視光あるいは紫外光などの光源などの他、β線(電子線)、X線などを用いることができる。工程が簡便なことから可視光または紫外光が最も好ましいが、膜厚方向への侵入性がよいβ線(電子線)も好適に用いられる。
三次元露光に当たっては、レンズなどで集光した焦点を三次元的に走査することによって行うことができる。あるいは、二つのビーム光(もちろん一方あるいは両方がシート状光であってもよい)の交点を選択的に露光してもよい。こうした三次元露光の場合、空孔内表面の感光性物質は、二光子吸収などして照射強度に対して非線型的な感光性を示すものであってもよいし、あるいは二種の波長光が同時に照射されることによって感光するものを用いるとよい。
このように三次元露光を施すことによって、露光領域内の空孔内表面を化学的に変性させる。この変性した部位を核として金属や金属酸化物などを析出、成長させて、空孔内部に充填させる。露光部位のみに選択的に金属や金属酸化物などが充填されるために、露光を三次元的に行うことによって多孔質体内部に金属や金属酸化物の三次元構造を形成することができる。この際、多孔質体の表面近くの部位から先に析出が始まってしまうと、析出した金属等が空孔を塞いでしまって多孔質体の奥内部の析出が阻害されることがある。そこで多孔質体奥内部の露光量を、多孔質体の表面近くの部位の露光量よりも多くするなどして、多孔質体奥内部から先に析出させることが望まれる。
露光によって変成させる空孔内表面は、多孔質体を形成している構成部材が露出した表面とすることができる。あるいは、適切なコーティング剤でコーティングされている表面でもよい。こうして表面部材が露光によって変性し、金属や金属酸化物が析出する際の触媒核の働きをすれば、特に限定されない。
例えば、硫酸銅水溶液などで濡れたポリイミド膜表面にArFレーザー光などを照射した場合には、ポリイミド膜表面に銅原子が取り込まれ、これを触媒核として作用して無電解めっきにより銅などを照射部位に選択的に析出させることができる。あるいは、ポリイミド多孔質体を予め硫酸銅水溶液に浸漬し、これに三次元的に露光を行った場合も、同様な原理によって銅などの三次元配線構造をポリイミド多孔質体内部に形成することができる。
また、次のような手法により三次元配線構造を多孔質体内に形成することも可能である。まず、無電解めっきなどの触媒となる物質を、多孔質体の空孔内表面に吸着などによってコーティングさせた後に、三次元露光を施す。その後、未露光部の触媒を選択的に除去し、無電解めっきすることによって三次元配線構造が形成される。多くの金属のアセチルアセトナート錯体は昇華性であるが、紫外線を照射すると分解して昇華性を失うという性質を有している。こうした金属錯体などの化合物を空孔内表面にコーティングした後、三次元露光を行い、好ましくは真空中で加熱処理する。これによって、未露光部の錯体を選択的に除去して、めっきの触媒核となる錯体の光分解物を露光部に残すことができる。
多孔質体表面が感光性であり、触媒核となる物質と結合可能な結合性基を生成すれば、触媒核となる物質を露光部に選択的に吸着させることが可能となる。例えば、PTFEなどのフッ素樹脂に対して、水などの存在下でArFレーザーなどのエキシマレーザーを照射することによって、照射部位の表面を親水化することができる。こうした光化学的な表面改質によって、選択的なめっきなどを行ってもよい。
空孔内表面がチタニアによって形成されている場合には、露光部を親水性化することによって、またチタニア上に有機物が付着してる場合には、その有機物を分解することによって、所定の領域に触媒物質を吸着させることが可能である。例えば、露光部を親水性化した場合、触媒物質が親水性であれば露光部に位置選択的に吸着させることができ、触媒物質が疎水性であれば未露光部に位置選択的に吸着させることができる。また、チタニア上に吸着した触媒が分解して昇華性や溶解性などが変化することによって、触媒を露光部または未露光部に位置選択的に配置することができる。露光を行ってから触媒を吸着する際には、チタニア上に吸着した物質が触媒を吸着させる物質であれば未露光部に選択的に吸着させることができ、触媒がチタニア表面にのみ吸着する物質であれば露光部に選択的に吸着させることが可能である。
また、例えばポリシランは、貴金属化合物などと接触すると貴金属物質を還元して、めっきの核となる貴金属微粒子を析出させるという特性を有している。しかしながら、紫外線などで露光して光酸化してしまうと、こうした反応を起さなくなる。そのため、多孔質体をポリシランで形成したり、空孔内表面をポリシランでコーティングしておくと、無電解めっきによって露光部のみに選択的に金属などを析出させることができる。
このようにして多孔質体の露光部または未露光部に位置選択的に触媒核を配置した触媒領域を形成した後、金属や金属酸化物、カーボン、ダイヤモンドなどを触媒領域に成長させて空孔内を充填する。こうした物質を空孔内に充填するに当たっては、例えば、無電解めっきなどのめっき法やCVD法などを採用することができる。多孔質体は外部に開放した三次元的に連続な空孔を有しているので、めっき液や反応ガスなどは、露光部または未露光部に形成された触媒領域に円滑に導入される。また、こうして連続空孔内に充填された金属や金属酸化物、カーボン、ダイヤモンドなどの物質は、すべて連続して形成されるので、充填された金属などの物質は配線などとして良好に機能する。
本発明の三次元配線構造の製造方法は、多孔質体の空孔内表面を露光によって化学的に変性し、めっきやCVDなどの触媒核を位置選択的に配置するものである。露光によって化学的に変性する感光性物質は、空孔内表面に露出していればよく、必ずしも多孔質体全体が感光性物質によって構成される必要はない。むしろ多孔質体が露光波長における強い吸収があると、多孔質体内部を露光するのが困難となる。よって多孔質体は、なるべく露光波長に吸収のない物質で構成され、空孔内表面のみに感光性物質が薄くコーティングなどされていることが好ましい。感光性物質は、空孔内表面に単分子層で吸着していることが最も好ましい。
多孔質媒体に三次元露光を施した後に、無電解めっき浴に浸漬して、露光部位または未露光部位に選択的に金属を析出させることによって、三次元配線を形成することができる。金属配線は、露光部位または未露光部にいずれに析出させてもよい。
以上述べたような三次元配線構造の製造方法を用いることによって、複数のシートを積層して作製する多層配線のような位置ずれや配線とビア間の接続不良などの問題がなく、微細で複雑な配線構造を容易に製造することができる。
本発明の三次元配線構造は、三次元的に連続な空孔を有する多孔質体中に多層配線構造が形成されたものである。図1に、本発明の三次元配線構造の断面図の一例を示す。
図1に示す三次元配線構造4においては、多孔質体1中に複数層の二次元配線2が形成されており、隣接する所定の2つ二次元配線2は、ビア3によって接続されている。多孔質体の連続空孔はエポキシ樹脂やポリイミド、BT樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、架橋ポリブタジエン樹脂などの硬化性樹脂からなる含浸樹脂で充填されることが好ましい。連続空孔のままであると、空孔内表面などが吸湿するなどして電気的絶縁性が損なわれる。充填するものは樹脂や、シルセスキオキサンやポリシラザンなどから生成されるシリカなどの無機物質など特に限定はされない。しかしながら充填性、接着性等を考慮すると、含浸樹脂を用いるのがもっともよい。この含浸樹脂には場合によってナノメートルオーダの無機フィラーなどを混ぜるとよい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナなどの金属酸化物や、窒化ケイ素や窒化アルミニウムなどの金属窒化物、白金やパラジウムなどの金属超微粒子などが用いられる。無機フィラーは、最初から無機フィラーを含浸樹脂に混ぜて含浸してもよいし、無機フィラー前駆体と含浸樹脂の混合物を含浸後、無機フィラーを空孔内で生成させてもよい。こうした無機フィラー前駆体としては、シルセスキオキサンやポリシラザンなどが良好に用いられる。
本発明の三次元配線構造は、上述したような三次元露光以外の方法により製造することも可能である。例えば、シート状の多孔質体に好ましくは平行光束を用いて二次元回路パターンを露光し、前述と同様に無電解めっき等して、多孔質体内に膜厚方向に厚みのある回路パターン通りの配線を形成して、図2(a)に示されるような配線シート6a、6bを得る。配線シート6a、6bは多孔質体8により構成され、その所定の領域には配線パターン7が形成されている。場合によっては、配線シート6bのように、ビア10を配線パターン7と同一のシートに形成してもよい。さらに、ビアパターンを露光する以外は同様の手法によって、ビアシート9を形成する。ビアシート9のビアは端面を好ましくは剣山状などの鋭角の構造とすることによってビアと配線との接続を良好にすることが可能となる。端面をはんだでコートすることも同様に良いがこの場合も鋭角構造とするのがより好ましい。ビア端面が偏平であると含浸樹脂によって端面が被覆されて電気的接続が阻害されやすい。剣山状の構造は例えばCu/Ni共晶系の針状めっきを施すことによって形成することができる。こうして形成された配線シート6a、6bと、ビアシート9とを、図2(b)に示すように交互に複数積層することによって、三次元配線12が形成された三次元配線構造11が得られる。
配線シート6a、6bとビアシート9とは、圧着して積層することもでき、圧着する際には、隣接するシート間に接着層を挿入することが好ましい。さらに圧着後、エポキシ樹脂やポリイミド、BT樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などの含浸樹脂を多孔質体に充填して硬化すれば、より強固な多層配線基板を形成することができる。この手法を用いることによって、インナービアを非常に簡便に作製することが可能となる。また、このように配線を多孔質体フィルム内に形成することによって、配線部と非配線部との段差を非常に小さくするか、なくすことができるため容易に積層することができる。さらに、層厚を薄くしたり積層数を多くすることも可能となる。特に、多孔質体フィルムの厚さが数μm程度と薄くする場合には、こうした効果が顕著に現れる。さらに基本的に配線シートとビアシートを同じ工程で作製することが可能となるため、製造工程が簡略化される。
図2に示した例では、配線シートとビアシートとは別個に作製したものであるが、1枚の多孔質シート中に配線とビアを同時に作り込むこともできる。例えば、多孔質体シートの露光波長に対する吸光度の調節などによって、露光の光(あるいはβ線などのエネルギー線)の多孔質体シート内への侵入長をシート厚の半分程度にして、一方の面から配線パターンを露光し、他方の面からビア部のパターンを露光する。その後、無電解めっき等を施すことによって、図3に示すような配線パターン15とビア16とを有する三次元配線構造13が得られる。
図3に示したように1枚のシート内に配線パターン15とビア16を作り込むことによって、積層数を低減して工程を簡略化することができる。
また、各層の回路パターンが形成された配線シートを作製するに当たっては、レジストなどの感光性樹脂組成物が空孔内に充填された多孔質体シートを用いることもできる。この場合には、まず、こうした多孔質体シートに対して回路パターンを露光し、配線を形成する部位のレジストを除去して選択的に多孔質化する。その後、無電解めっきなどを施すことによって、この多孔質部位に金属を充填して配線を形成する。なお、配線を形成するための金属の充填は、適切な電極を設置して電解めっきにより行うこともできる。同様の手法を用いてビアシートも形成した後、図2(b)に示したように、配線シートとビアシートとを交互に複数層積層することによって、三次元配線構造(多層配線基板)が得られる。
上述した方法を用いる場合、感光性樹脂組成物として感光性ポリイミドや感光性エポキシ樹脂などを用いれば、配線形成後、除去する必要もなく、圧着の際の接着材を兼ねることも可能であるので好ましい。
多層配線基板を作製するための複数の配線シートは、一括して積層することもできる。あるいは、配線シートの上に、まだ配線を形成していない多孔質シートを重ねて、露光、めっきを施して配線を形成し、これを順次繰り返すことによって多層配線を形成してもよい。
さらには、図4に示すような手順により、三次元配線構造を形成することも可能である。まず、図4(a)に示すように、各層を形成する多孔質体シート17を露光して、無電解めっきの触媒核等からなる潜像18を形成する。次いで、図4(b)に示すように、この多孔質体シート18を積層する。その後、一括して無電解めっきして、図4(c)に示すように配線パターン19を形成する。必要に応じて、エポキシ樹脂やポリイミド20などを含浸して加熱することによって、図4(d)に示すように硬化して一体化してもよい。樹脂を含浸することによって、積層されたシート間の電気的な接続が良好となるので好ましい。
以上説明したように、本発明の三次元配線構造は、微細なビアや配線が自由にかつ精度よく形成されており、機械的特性や電気絶縁性といった特性も優れている。
次に、本発明の選択的導電部材について説明する。
本発明の選択的導電部材は、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーの示すミクロ相分離構造のうち、少なくとも1種の相を選択的に除去することによって形成された連続空孔を有する多孔質構造体を用い、この多孔質構造体の所定の領域の空孔中に導電物質を充填することによって導電性カラムや配線などが形成されたものであり、異方性導電膜やプリント基板、多層配線基板などに応用することが可能である。本発明の選択的導電部材における多孔質構造体は、N種の相からなるミクロ相分離構造の1種以上(N−1)種以下の相から構成されているということができる。
ブロックコポリマーやグラフトコポリマーなどが示すミクロ相分離構造は、非常に規則的であり、ドメインの大きさはコポリマーの分子量によって制御することができる。ミクロ相分離現象の中でも特に共連続構造は、三次元的に連続な2つの相からなる相分離構造であり、1相を選択的に除去することによって三次元的に連続な空孔を有する多孔質体を形成することができる。こうした共連続構造の中でも、OBDD構造やGyroid構造などが特に好ましい。共連続構造から作製される三次元多孔質体は、三次元多孔質構造を構成するミクロドメインの断面の回転半径の2√3倍と4倍のいずれにも相関距離をもつ連続空孔を有する。これは、小角X線散乱法や光散乱法によって確認することができる。なお、相関距離をもつとは、所定のドメインの中心からの距離rに対して、周囲のドメインの存在確率(距離rの地点において、その地点が空孔ではなくドメインを形成しているところの充填領域である確率)を測定した際に、存在確率が極大を示す距離が存在することを意味する。ミクロ相分離構造から選択的に1相を除去する方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、テレケリックポリマーを用いて二つの結合部位を化学的に切断してから、一方のポリマー鎖をエッチングする方法が挙げられる。また、一方の相を選択的にオゾン酸化して分解除去する方法、酸素プラズマや光分解により除去する方法を用いてもよい。さらに、エネルギー線を照射して一方の相を選択的に分解除去することもできる。
得られる多孔質体の空孔径は、ミクロ相分離構造から除去する相を構成するポリマー鎖の分子量によって制御することが可能である。また、こうしたポリマー鎖と相溶性のよいホモポリマーなどを混合することによって、空孔径を制御することもできる。
相分離構造から多孔質体を作製するためのポリマー材料は特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリアリルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、およびポリエーテルスルホンなどが挙げられる。また特に前述したようなポリ(ビニルピリジン)などの共役ジエンポリマーを架橋したものが耐熱性、電気的特性、耐湿性、機械的強度などにすぐれ好ましい。
ミクロ相分離構造から作製した多孔質体は、空孔が均質かつ規則的に形成されており、空孔の連続性も良好である。このため、従来の延伸などによって作製された多孔質体を用いた場合と比較して、寸法安定性に優れる上、導電性カラムの導電率を向上させることができる。またサブミクロン以下の空孔を均質に作製することができるため、微細配線や微細なビアを形成可能となる。さらに、導電性カラムの幅や厚みを均一に作製することができるので、インピーダンス特性も向上する。
ミクロ相分離構造から作製した多孔質体中に導電性カラムを形成するに当たっては、上述したような三次元配線構造の製造をする場合と同様の手法を用いることができる。また、めっきの代わりにスクリーン印刷などの手法によって、導電ペーストや導電性ポリマーなどを充填してもよい。
ミクロ相分離構造から作製した多孔質体は、空孔の内表面の状態を制御することが容易である。すなわち、ミクロ相分離構造の1相を除去する際に、完全に除去せずに空孔内表面に一部残留するようにすれば、内表面の表面状態を変化させることができる。たとえば、A−B−C型のトリブロックコポリマーにおいてAおよびCの分子量がBと比較して充分に大きいものを用いて、C相を除去してA相からなる多孔質体を形成する場合には、B相が空孔内表面に配置される。そのため、多孔質体の全体としての性質は大きく変化させることなく、空孔内表面の性状を変化させることができる。したがって、位置選択的な無電解めっきなどを行う際には、めっき核の吸着特性を向上させることができる。さらに、含浸樹脂と多孔質体との接着性を向上させることが可能となる。この場合、B相はA相と化学結合によって完全に結合しているため、通常の表面吸着型の表面処理剤よりも優れている。
また、1相が紫外線やβ線などのエネルギー線を照射することにより分解する相からなる共連続相分離構造が形成されたシートを用いた場合には、パターニングを容易に行うことができる。分解性相としては、例えば、α−スチレン類やポリメチルメタクリレートなどのポリメタクリル酸エステル類のような、α位がメチル基で置換されたポリオレフィン類などが良好に用いられる。
選択的導電部材の形成に当たっては、まず、こうしたシートにビアのパターンなどの通りに紫外線やβ線などを照射して照射部位の分解性相を分解する。分解後、加熱して揮発させたり、溶媒でエッチングするなどして、分解性相を除去して多孔質化させる。この多孔質化した部分に、例えば電鋳や無電解めっきを施すことによって、金属などの導電性物質を充填してビアや配線を形成することができる。
本発明の選択的導電部材は、両面プリント基板に適用することもできる。図5には、本発明の選択的導電部材からなる両面プリント基板の製造方法の一例を表す断面図を示す。
まず、図5(a)に示すように、ミクロ相分離フィルム22の所定の領域を選択的に多孔質化して、多孔質部位23を形成する。多孔質化に当たっては、上述した手法を用いることができる。次に、図5(b)に示すように、多孔質部位23に導電物質を充填して導電性カラム24を形成する。さらに、図5(c)に示すようにミクロ相分離フィルムの両面に導電性層25を形成し、これをパターニングして図5(d)に示すような配線パターン26を両面に形成して、両面プリント基板27が得られる。
本発明の選択的導電部材を用いて、半導体の多層チップの層間の配線を形成することも可能である。具体的には、上下にパットが存在する半導体チップを積層する際の層間配線の形成である。例えば、半導体チップのパッドの配置に合わせた柱状配線などを多孔質体シートの膜厚方向に形成する。こうして柱状配線が形成された多孔質体シートを、2枚の半導体チップの間に挿入して積層することによって、隣接する2つの半導体チップ間の配線を形成することができる。またこの後、多孔質体シートを酸素アッシングや熱分解などの手法により除去してもよい。さらに多孔質体シートを除去した後、電解めっき、無電解めっき等によって多孔質化している配線を緻密化することもできる。
以上説明した例では、多孔質体シート中の配線あるいはビアを形成する際に、めっきなどによって金属を析出させるアディティブ的な手法を用いたが、これに限定されるものではない。サブストラクト的な手法により、多孔質体シート中に配線やビアを形成することもできる。この場合には、予め金属を多孔質シートに充填し、その後、レジストパターンなどを用いてエッチングすることにより不要な金属を除去する。
また、含浸樹脂の硬化物中にビアや配線が形成された配線基板を形成することも可能である。こうした配線基板を形成するには、熱分解性などの容易に除去可能な多孔質体を用い、まず、所定の領域に導電物質を充填してビアや配線を形成する。次いで、含浸樹脂を含浸させて硬化する際に、多孔質体を除去することによって、含浸樹脂の硬化物中にビアや配線が形成された配線基板を形成することができる。含浸樹脂の硬化の際に加圧して圧縮することによって、導電性カラム中の多孔質体が除去されて形成された空隙がつぶれて、導電性物質同士が密着する。このため、導電性カラムの導電率を向上させることができる。
さらに、多孔質体として、あらかじめ空孔内表面に熱硬化性樹脂などの接着剤がコーティングされたものを用いると、含浸樹脂によってビア端面などが隠蔽されて電気的な接続が阻害されるというおそれがない。
上述したようなビアや配線を形成するのと同様の手法によって、金属酸化物やカーボン、ダイヤモンドなどからなる構造を多孔質体中に形成することもできる。この場合には、コンデンサーや抵抗や半導体部位を回路中に同時に作り込むことが可能である。また、ビアや配線を形成するための導電物質としては、金属以外にも導電性ポリマーなど他の導電物質を用いてもよい。
本発明の三次元構造体の形成方法を用いることによって、さまざまな光機能装置へ応用可能なフォトニック結晶を実現できる。また、携帯機器やマイクロマシンなどの高密度実装や、フリップチップ、球状半導体の実装などに欠かせない多層配線基板やインターポーザー、立体配線等に好適に用いられ得る多層配線や三次元配線などを高性能にかつ簡便に製造することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(例1)
ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマー(Mw=75000、ポリスチレンユニット重量分率=66%、Mw/Mn=1.10)のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液を調製した。
この溶液から、キャスティング法により厚さ150μmのシートを作製した。得られたシートを70℃で風乾した後、窒素気流下において、135℃で10時間アニールした。その後、加速電圧2MV、10KGyの照射量でβ線を照射した。照射後、MIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄して多孔質体シートを得た。得られた多孔質体シートは、口径35nmのOBDD型の相分離構造が転写された多孔質構造であった。
一方、スチレンと下記化学式で表される四官能性アクリレートモノマー1の重量比で9:1の混合物に、下記化学式で示される光開始剤2を0.1重量%混合した感光性樹脂組成物を調製し、得られた感光性組成物を前述の多孔質体シートに含浸させた。
次いで、感光性樹脂組成物を含浸した多孔質体シートに対し、次のような手法により三次元露光を施した。すなわち、光源としてTi:Sapphireレーザー(パルス幅:150fs、繰り返し:76MHz、スポット径0.4μm)を用い、このレーザの焦点が多孔質体シート内を走査するように多孔質体シートを動かすことによって三次元露光した。露光後、多孔質体シートをイソプロピルアルコールに浸漬して未硬化のスチレンおよびアクリレートモノマー1を除去した。
その結果、多孔質体シート内に、露光部が直径0.6μmの球が一辺1.2μmの体心立方格子を形成した構造のフォトニック結晶となる三次元構造体が得られた。得られた三次元構造体における露光部および未露光部の屈折率は、それぞれ1.58および1.24であった。
(例2)
感光性樹脂組成物として、前述の例1で用いた四官能性アクリレートモノマー1と下記化学式で示されるメタクリレートモノマー3とスチレンの重量比0.5:0.5:9混合物に、0.1重量%の光開始剤2を添加した組成物を調製した。この感光性樹脂組成物を用いた以外は、前述の例1と同様の手法によりフォトニック結晶となる三次元構造体を形成した。
得られた三次元構造体における露光部および未露光部の屈折率は、それぞれ1.57および1.24であった。
(例3)
三次元的に連続な貫通孔を有する多孔質体として、シリカエアロゲル多孔質体を用いた。多孔質体は、平均空孔径約30nm、空孔率95%以上、屈折率1.03であり、そのサイズは1mm×1mm×1mmとした。
この多孔質体に、メチルメタクリレートおよび例1で用いたのと同様な四官能性アクリレートモノマー1を重量比で8:2で混合した樹脂に光開始剤2を0.1重量%添加した感光性樹脂組成物を含浸させた。こうして感光性樹脂組成物を含浸させた多孔質体を、XYZ軸方向に駆動可能なピエゾ素子駆動のステージ上に設置して、次のような手法により三次元露光を施した。すなわち、光源としてTi:Sapphireレーザー(パルス幅:150fs、繰り返し:76MHz、スポット径0.4μm)を用い、このレーザーの焦点が多孔質体内を走査するように多孔質体を動かすことによって、三次元露光した。
露光後、多孔質体をイソプロピルアルコールに含浸して未硬化のアクリレートモノマー1を除去した。
その結果、多孔質体内に、露光部が直径0.6μmの球が一辺1.2μmの体心立方格子を形成した構造のフォトニック結晶となる三次元構造体が得られた。
得られた三次元構造体における未露光部および露光部の屈折率は、それぞれ1.03および1.45であった。
またこれにメチルメタクリレート100重量部にアゾイソブチロニトリル2重量部、ローダミン6G 1重量部を混合して含浸樹脂を調製し、前述の三次元構造を形成した多孔質体に含浸した後、加熱して硬化させた。これにより、体心立方格子を形成する球の部分以外が、ローダミン6Gで満たされたフォトニック結晶を作製することができた。
さらにローダミン6G含有樹脂の代わりに液晶(メルク社製、商品名:E−7)を含浸させることもできた。
またフォトニック結晶を形成したのと同様の手法により、フォトニック結晶への入射部を形成する光導波路のコア(コア径5μm)を形成することができた。
(実施例4)
両面プリント配線基板
下記化学式で示されるポリアミド酸4と、末端ジメチルアミノエチルエーテル基ポリエチレンオキシド(分子量Mw=21万、Mw/Mn=1.2)との混合溶液を調製した。
この溶液から、キャスト法によりシートを作製した。得られたシートを窒素気流下、室温から30分かけて150℃に昇温し、この温度で1時間加熱した。次に30分かけて250℃に昇温して、この温度で1時間加熱し、さらに30分かけて350℃に昇温し、この温度で1時間加熱処理した。こうした加熱により、厚さ30μmのポリイミド多孔質体シートが得られた。
加熱後のフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、孔径約0.2μmの三次元的に連続な空孔が形成されていた。
得られた多孔質体シートに、感光性ポリイミド(東レ社製、商品名:フォトニースUR−3140)を含浸させた後、厚さ18μmの銅箔を多孔質体シートの下面に接着した。ビア部位のパターンを上面(多孔質体シート側)から露光後、現像してビア部位を多孔質化した。この多孔質化したビア部に、電解めっきにより銅を充填してビアを形成した。さらに、ビア上端にはんだめっきを施した後、ビア部を残して上面にエポキシ樹脂をインクジェット法で塗布し、厚さ18μmの銅箔を上面に配置して熱プレス器により加熱、加圧して積層した。
次いで、両面の銅箔を通常のPEP工程にてパターニングして、内部に層間導通用のIVHが形成された両面プリント配線基板を得た。この両面プリント配線基板におけるビアの径は50μmであり、配線幅は50μmであった。
(実施例5)
両面プリント配線基板前述の実施例4と同様の手法により、厚さ10μmのポリイミド多孔質体シートを作製した。このポリイミド多孔質体シートには、孔径約0.2μmの連続な空孔が三次元的に形成されていた。
得られた多孔質体シートに感光性ポリイミド(東レ社製、商品名:フォトニースUR−3140)を含浸させて乾燥した後、上面を保護フィルムで保護し、下面に無電解めっきおよび電解めっきを引き続いて行って厚さ1μmの銅層を形成した。ビア部位のパターンを上面(多孔質体シート側)から露光した後、現像してビア部位を多孔質化した。次いで、電解めっきを行って、多孔質化したビア部位に銅を充填してビアを形成した。
さらに、上面を下面の場合と同様にめっきして、厚さ1μmの銅層を形成した。最後に、両面の銅層を通常のPEP工程にてパターニングして、内部に層間導通用のIVHが形成された両面プリント配線基板を得た。
続いて、同様の多孔質体シートに感光性ポリイミド(東レ社製、商品名:フォトニースUR−3140)を含浸、乾燥し、ビア部位のパターンを上面(多孔質体シート側)から露光後、現像してビア部位を多孔質化した。多孔質化したビア部位に無電解めっきによって銅を充填しビアを形成し、ビア端面にははんだめっきを施した。さらに、両面にビア部を残してエポキシ樹脂をインクジェット法で塗布してビアシートを得た。
こうして形成されたビアシート2枚で、先に形成した両面プリント基板を挟み込み、位置合わせをして熱プレス機により加熱、加圧して積層した。積層後に両面を銅めっきして、厚さ1μmの銅層を形成した。
この銅層に通常のPEP工程によって配線パターンを形成して、4層の回路配線を有する多層配線基板を作製した。4層の多層配線基板2枚を同様の工程によって貼り合わせて、10層の多層配線基板を作製した。この多層配線基板におけるビアの径は10μmであり、配線幅は5μmであった。
(実施例6)一括無電解めっきによる多層配線の形成
厚さ20μm、平均孔径0.2μm、気孔率72%のPTFE多孔質体シートをメタノールおよび水に順次10分ずつ浸漬し、さらに4wt%ホウ酸水溶液を含浸させた。このPTFE多孔質体シートに対し、回路パターンのマスクを介してArFレーザー(エネルギー密度200mJ/cm2、繰り返し50パルス/秒)を照射することによって、多孔質体シートを回路パターン通りに親水性化した。照射後、多孔質体シートを純粋で洗浄した後、乾燥して、配線パターンが露光されたシートを得た。
ビアパターンを露光する以外は前述と同様の手法により、ビアパターンが露光された多孔質体シートを形成した。
配線パターンが露光されたシートと、ビアパターンが露光されたシートとを交互に位置合わせして積層した後、銅の無電解めっき浴に浸漬した。これにより、親水性化した部分に銅を析出させて、パターン配線幅20μm、ビア径20μmの回路配線を形成した。回路配線を形成後、酸素プラズマ処理を行って、全体を親水性化した。
最後に、エポキシ樹脂を含浸して熱プレス機により加熱、加圧して圧着し、エポキシ樹脂を硬化して一体化し、3層の配線層を有する多層配線基板が作製された。この多層配線基板におけるビアの径は20μmであり、配線幅は20μmであった。
(実施例7):三次元露光による三次元配線の形成
前述の実施例6で用いたのと同様の混合溶液から、キャスト法によりシートを作製した。得られたシートを窒素気流下、室温から1時間かけて70℃に昇温し、この温度で5時間加熱した。次に5時間かけて150℃に昇温し、この温度で5時間加熱し、1時間かけて250℃に昇温して2時間加熱し、さらに30分かけて350℃に昇温して1時間加熱処理した。こうした加熱処理により、厚さ500μmのポリイミド多孔質体シートが得られた。
加熱処理後のフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、孔径約0.2μmの三次元的に連続な空孔が形成されていた。
このポリイミド多孔質体シートを酸素プラズマ処理して親水性化した後、パラジウムのセチルピリジニウム錯体([C16H33C5H5N]2+[PdI4]2-)のメタノール溶液に浸漬した後、乾燥した。
乾燥後の多孔質体シートに対し、次のような手法により三次元露光を施した。すなわち、Nd3+:YAG第二高調波励起の色素レーザー(波長420nm、パルス幅:10nsec、繰り返し:10Hz、スポット径:10μm)を照射して、そのスポットを多孔質体内で走査することによって三次元露光した。次いで、多孔質体シートをメタノールで洗浄して未露光部のPd錯体を除去した後、銅の無電解めっき浴に浸漬した。その結果、露光部に銅が析出して配線幅20μmの銅配線を、レーザースポットの走査した通りに三次元的に形成することができた。
(実施例8)
ポリ−1,2−ブタジエン(ポリ(ビニルエチレン))とポリメチルメタクリレートとのジブロックコポリマー(Mw=225000、ポリブタジエンユニット重量分率=43%、Mw/Mn=1.05)に、2重量部の3,3’−4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを混合した溶液を調製し、この溶液からキャスティング法により厚さ500μmのシートを作製した。
得られたシートを窒素気流下、170℃で30分間加熱処理した後、加速電圧2MV、10KGyの照射量でβ線を照射した。照射後のシートを、MIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄することにより多孔質体シートを作製した。
得られた多孔質体シートは、孔径0.1μm程の共連続相分離構造が転写された多孔質構造であった。
この多孔質膜を用いる以外は実施例6と同様にして露光、めっきを行うことによって、三次元配線構造を形成することができた。
この三次元配線構造を形成したポリブタジエン多孔質体シートに、以下のような含浸樹脂を含浸させ、所定の温度で加熱処理して硬化させて多層配線基板を作製した。
(1)2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンとメタクリレートモノマー3とジクミルパーオキサイドとを重量比で100:10:3で混合して含浸樹脂を調製した。ここで用いたメタクリレートモノマー3は、前述の例2で用いたものと同様の化合物である。
得られた含浸樹脂を、前述の三次元構造を形成したポリブタジエン多孔質体シートに含浸させた後、170℃で30分間加熱して硬化させて多層配線基板を作製した。
(2)含浸樹脂として、ポリ−1,2−ブタジエン(Mw=120000、Mw/Mn=1.06)に5重量部のジクミルパーオキサイドを添加した混合物を用いた以外は、前述と同様にして多層配線基板を作製した。
(3)含浸樹脂としてベンゾシクロブテン樹脂溶液(ダウケミカル社製、商品名:XU13005)100重量部に50重量部のメチルイソブチルケトンを加えた樹脂溶液を用い、含浸後、熱風乾燥した後、窒素気流下240℃で1時間加熱して硬化させた他は前述と同様にして多層配線基板を作製した。
(4)含浸樹脂としては、ポリ(1,2−ジメチルシラザン)を用いた。さらに、この場合には、多孔質体シートも次のように変更した。すなわち、ポリ−1,2−ブタジエン−ポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーの代わりに、ポリ−1,2−ブタジエン−ポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマー(Mw=225000、ポリブタジエンユニット重量分率=43%、Mw/Mn=1.05)のビニル基をトリエトキシシリルエチル基に変換した変性ジブロックコポリマー(導入率約20%)を用いる以外は、前述と同様の手法により三次元配線が形成された多孔質体シートを得た。
この多孔質体シートに前述の含浸樹脂を含浸させ、前述と同様の条件で加熱して硬化させて多層配線基板を作製した。
いずれの多層配線基板においても、ビアの径は20μmであり、配線幅は20μmであった。こうした多層配線基板に300℃で300秒の加熱処理を行ったところ、いずれも何等異状が観測されず、十分なはんだ耐熱性を有していることが確認された。
(実施例9)
ポリ−1,2−ブタジエンとポリn−ブチルメタクリレートとのジブロックコポリマー(Mw=230000、ポリブタジエンユニット重量分率=41%、Mw/Mn=1.03)に、5重量部の3,3’−4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを混合した溶液を調製し、この溶液からカーテンコーティング法により厚さ50μmのシートを作製した。
得られたシートを窒素気流下、60℃で5時間加熱処理した後、低圧水銀ランプを光源として紫外線照射を行った。紫外線照射後、窒素気流下60℃で1時間加熱してから、30分間かけて170℃まで昇温して、170℃で30分加熱処理した。加熱処理後、加速電圧2MV、10KGyの照射量でβ線を照射した。照射後のシートを、MIBK−イソプロピルアルコール(体積比7:3)混合溶媒中で洗浄することにより多孔質体シートを作製した。
得られた多孔質体シートは、孔径0.1μm程の共連続相分離構造が転写された多孔質構造であった。またキャスト法によらず加熱処理によってミクロ相分離構造を形成できた。
この多孔質体シートにNd3+:YAG第二高調波励起の色素レーザー(波長420nm、パルス幅:10nsec、繰り返し:10Hz、スポット径:10μm)をドット状の二次元パターンを照射した。次いで、多孔質体シートをメタノールで洗浄して未露光部のPd錯体を除去した後、銅の無電解めっき浴に浸漬した。その結果、多孔質体フィルム中に露光部に銅が析出して、膜厚方向に貫通したドット径20μm、中心間距離40μmの二次元パターンで配列された銅カラムを形成することができた。
形成した銅カラムの端面にCu/Ni系共晶めっきをして高さ2〜3μmの剣山状の構造を形成した。この銅カラムが形成された多孔質体シートに含浸する樹脂組成物を次の通り調製した。
すなわち当量の3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と2、2’−ビス[4−(p−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンをジメチルアセトアミド中で反応させて調製したポリアミド酸ワニスに30重量%の2、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニルを加えて含浸溶液とした。
この含浸溶液を銅カラムが形成された多孔質体シートに含浸した後、熱風乾燥して溶媒を除去してから、200℃で30分間加熱して接着性の異方性導電フィルムを作製した。
(実施例10)
実施例9で形成したのと同様にして厚さ20μmの多孔質体シートを作製し、同様の方法でレーザー照射および無電解めっきして、配線幅20μm、ランド径50μmの二次元パターンからなる配線を形成した配線シートと、ビア径20μmのビアが形成されたビアシートを形成した。ビアシートのビア端面には実施例9と同様な剣山状の構造を形成した。配線シート4枚とビアシート3枚を交互に積層圧着した後、ベンゾシクロブテン樹脂溶液(ダウケミカル社製、商品名:XU13005)100重量部に50重量部のメチルイソブチルケトンを加えた樹脂溶液を含浸し、熱風乾燥して溶媒を除去した後、窒素気流下240℃で1時間加熱して硬化させて多層配線基板を作製した。
本発明は、各種光機能性装置や多層配線基板等、多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。