JP2003092220A - インダクタ - Google Patents

インダクタ

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JP2003092220A
JP2003092220A JP2001284075A JP2001284075A JP2003092220A JP 2003092220 A JP2003092220 A JP 2003092220A JP 2001284075 A JP2001284075 A JP 2001284075A JP 2001284075 A JP2001284075 A JP 2001284075A JP 2003092220 A JP2003092220 A JP 2003092220A
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sheet
inductor
porous
conductive
group
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JP2001284075A
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English (en)
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Yasuyuki Hotta
康之 堀田
Toshiro Hiraoka
俊郎 平岡
Kouji Asakawa
鋼児 浅川
Shigeru Matake
茂 真竹
Taiichi Kishimoto
泰一 岸本
Yoshikazu Irie
美和 入江
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Toshiba Corp
Kyocera Chemical Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Kyocera Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄膜型の形状を有し、導電部分の厚みを確保
するとともに応力歪を防ぎ、しかも低コストで製造可能
なインダクタを提供する。 【解決手段】 表面および裏面を有する多孔質絶縁体か
らなるシート(11)と、前記シートに選択的に導電性
物質を充填することにより連続して形成され、外部に接
続可能なパターン化された導電部分(13)と、前記シ
ート内の前記導電部分以外の領域に絶縁物質が充填され
た絶縁部分(12)とを具備することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気、電子、通信
などの分野で用いられるインダクタに係り、特に表面実
装用のチップインダクタに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器等の軽薄短小化に伴なっ
て、それらを構成する各種電気電子部品の高集積化や小
型化が進んでいる。また信号の高速化も進み、高周波対
応も求められている。そのような流れの中で、小型で表
面実装可能なチップインダクタの需要が急激に高まって
いる。
【0003】チップインダクタは、大きく分けて巻線型
チップインダクタ、積層型チップインダクタ、および平
面型チップインダクタの3種類に分類することができ、
それぞれ次のように製造されている。巻線型チップイン
ダクタは、アルミナやフェライト、または樹脂などのコ
アに0.1mm程度の導線をコイル状に巻きつけること
によって作製される。一方、上述したような電子部品の
小型化の流れから、積層型チップインダクタおよび平面
型チップインダクタが、現在主として使用されている。
積層型チップインダクタは、セラミックやフェライトな
どのグリーンシートを用い、配線形成シートと、各配線
形成シートを接続するためのスルーホールを設けたシー
トとを積層して作製される。また、平面型チップインダ
クタは、絶縁基板上に螺旋状導体パターンを導電ペース
トのスクリーン印刷や、スパッタリング等による蒸着で
形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、現在様々
な形状のチップインダクタが製造されているが、いずれ
のタイプも、近年の高密度実装や高周波要求に十分応え
られないという問題を有している。最も薄膜化が可能な
平面型チップインダクタにおいては、高精度、高密度に
導電部分の厚みを大きくすることが困難である。その結
果、導体抵抗値を低く抑えて、高周波特性の良好な薄膜
インダクタを得ることが難しい。しかも、導電部の形成
領域に制限が加わるため、巻数を増やせないという問題
もある。一方、高密度実装に最も適した積層型チップイ
ンダクタにおいては、配線形成シートと、各配線形成シ
ートを接続するためのスルーホールを設けたシートとを
積層し作製するため、工程が煩雑でありコストがかか
る。さらには、配線形成シートと導電パターンとの熱膨
張の違いから、作製中に応力歪が生じてクラックが発生
し、製品割れ等を引き起こしてしまう。
【0005】また、近年の高密度実装に対応した多層基
板は、有機系樹脂から構成される。このような場合、チ
ップインダクタのコアがセラミックスであると、実装基
板へのマウント後に次のような問題を生じる。すなわ
ち、セラミックスと樹脂とは熱膨張差が大きいので、熱
サイクルの掛かる環境下においては、インダクタ外部電
極部分と多層基板との間で剥離が生じてしまう。
【0006】本発明は、上記従来の課題を鑑みて、薄膜
型の形状を有し、導電部分の厚みを確保するとともに応
力歪を防ぎ、しかも低コストで製造可能なインダクタを
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、多孔質絶縁体と、前記多孔質絶縁体の空
孔に導電性物質が充填されてなり、外部に接続可能な導
電部分と、前記多孔質絶縁体の前記導電部分以外の空孔
に絶縁物質が充填された絶縁部分とを具備することを特
徴とするインダクタを提供する。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明にかかるインダクタは、従来の積層
型のような絶縁シートと導電パターンとの積層によら
ず、モノリシックな構造を有している。すなわち、多孔
質絶縁体からなるシートに、導電パターンが選択的に連
続して形成され、シート内の残りの領域には絶縁材料が
充填されている。
【0010】本発明の一実施例にかかるインダクタの断
面の一部を図1に示す。図示するように本発明のインダ
クタ10においては、多孔質絶縁体からなるシート11
には、導電性物質を充填してなる導電パターン13が選
択的に形成され、導電パターン13以外の領域12に
は、絶縁材料が充填されている。導電パターン13は、
多孔質絶縁体からなるシート11に導電性物質を充填す
ることによって得られるために、相互に入り組んだ構造
をとる。したがって、この導電パターン13部分の剥離
が生じることはない。また、モノリシックな構造である
ゆえに、応力歪を防ぐことも可能となる。
【0011】こうした断面構造を有する本発明の一実施
例のインダクタの斜視図を図2に示す。図2に示される
インダクタ10においては、多孔質絶縁体からなるシー
ト11に選択的に、導電パターン13が連続して形成さ
れている。この導電パターン13は、シートの面が広が
っている方向に中心線を有するスパイラル状であるとい
うことができる。また導電パターン13は、多孔質絶縁
体からなるシート11に、選択的に導電性物質を充填す
ることにより貫通および非貫通の導電部分を設けて、連
続して形成されたものである。すなわち、多孔質絶縁体
シートには、その厚み方向に貫通し、シートの表面およ
び裏面に露出して複数の貫通導電部が設けられ、その露
出面は2列に配置されている。シートの表面には、第1
の方向に延びて、貫通導電部の露出面の一方の列の1つ
と、これに最近接する他方の列の1つとを繋ぐ表面側非
貫通導電部が埋め込まれ、シートの裏面には、前述の第
1の方向とは異なる第2の方向に延び、貫通導電部の露
出面の一方の列の1つと、これに最近接する他方の列の
1つとを繋ぐ裏面側非貫通導電部が埋め込まれている。
このような貫通導電部、表面側非貫通導電部、および裏
面側非貫通導電部によって、導電パターン13が構成さ
れる。こうしたインダクタの貫通導電部における断面
が、図1に示されている。
【0012】このような構成の本発明の一実施例にかか
るインダクタは、薄膜型の形状を有しているので高密度
実装に対応し、導電部分の厚みを確保できることに起因
して導体抵抗が低い。したがって、良好な高周波特性を
有する。
【0013】ここで、本発明のインダクタを構成する多
孔質絶縁体シート、およびインダクタの製造方法を詳述
する。なお、以下に示すのは一例であって、本発明に使
用される導電パターンとしての条件を満たしていれば、
いかなる方法で製造されても何等差し支えない。
【0014】シートを構成する多孔質絶縁体としては、
任意の絶縁材料を用いることができるが、具体的には、
樹脂やセラミックスなどが挙げられる。
【0015】樹脂としては、例えばガラスエポキシ樹脂
や、ビスマレイミド−トリアジン樹脂およびPPE樹
脂、また、ベースフィルムに多用されるポリイミド樹脂
や、その他ポリフッ化エチレン系、フッ化エチレン−プ
ロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素含有ポ
リマー、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリア
リルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系
などのポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルスルホ
ン等の一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれて
いる樹脂が挙げられる。
【0016】またセラミックスとしては、ガラス、アル
ミナ、窒化アルミ等の不織布が挙げられる。
【0017】特に、ポリイミド、ポリアミド、ポリアリ
ルエーテル、ポリアリレート、およびポリエーテルスル
ホンなどの耐熱性ポリマーからなるシートは、本発明の
インダクタのみならず配線をともに形成した基板として
用いることができる。また、1、2−結合型あるいは
1、4−結合型のポリブタジエンなどの共役ジエンモノ
マーを重合して得られたポリマーであって、側鎖中ある
いは主鎖中に二重結合を有するポリマーを架橋したもの
でもよい。
【0018】前記多孔質絶縁体に可撓性のある樹脂を用
いれば、インダクタ自体に可撓性を付与することができ
る。また、前記多孔質絶縁体の誘電率εが4以下である
ものを用いることが望ましい。具体的には、シロキサン
系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有ポ
リマーなどが挙げられる。それにより、信号の損失を抑
え高周波特性に優れたインダクタを得ることができる。
また、前記多孔質絶縁体としてはインダクタを搭載する
基板の材質と熱膨張係数がほぼ同程度の材料を用いるこ
とも望ましい。
【0019】樹脂からなる多孔質体は、湿式法または乾
式法などの手法によって容易に作製することができる。
【0020】例えば、湿式法により多孔質樹脂シートを
作製する場合には、まず、孔形成剤である無機微粉末お
よび有機溶剤を樹脂に添加し、練り合わせて混合物を調
製する。次いで、これを成膜した後、溶剤で無機微粉末
および有機溶剤を抽出する。その後、必要に応じて延伸
する。
【0021】また、例えば乾式法により多孔質樹脂シー
トを作製する際には、湿式法の場合と同様に調製した混
合物を、シート状に押出し成形する。次いで、必要に応
じて熱処理を施した後、これを一軸もしくは二軸延伸す
る。
【0022】これら湿式法および乾式法のいずれの手法
により多孔質樹脂シートを作製する場合も、必要であれ
ば寸法安定性のために、延伸後の樹脂シートに対して熱
処理を行なってもよい。また、前述の添加物等を加えず
に、樹脂シート成形後、この樹脂シートを延伸多孔質化
することによっても、所望の多孔質樹脂シートを容易に
作製できる。
【0023】ここで、多孔質絶縁体における空孔は、三
次元的に連続して多孔質絶縁体の外部に開放されている
ことが必要であり、外部に開放端のない独立気泡はでき
るだけ少ないことが望まれる。また、導電パターンの高
周波特性などを向上させるために、空孔率は、多孔質絶
縁体シートの機械的強度が保たれる範囲において高い方
が望まれる。具体的には、空孔率は40%以上であるこ
とが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0024】また、多孔質絶縁体における空孔の平均空
孔径は、0.05〜5μmであることが好ましく、0.
1〜0.5μmであることがより好ましい。空孔径が大
きすぎる場合には、微細な導電パターンを形成すること
が困難となる。一方、空孔径が小さすぎると、導電パタ
ーンを形成するための導電性物質を多孔質絶縁体中に充
填しにくくなってしまう。多孔質絶縁体における空孔の
平均空孔径は、小角X線散乱測定、光散乱測定や、断面
の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、あるいは透過型電子
顕微鏡などの観察によって測定可能である。
【0025】上述したような三次元的に連続した空孔を
有する多孔質絶縁体は、種々の手法によって作製するこ
とができる。例えば、ビーズを積層したものや、グリー
ンシート、ビーズの積層構造を鋳型として作製した多孔
質体、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成した多孔質
体、シリカゾルを超臨界乾燥して得られるシリカエアロ
ゲル、ポリマーのミクロ相分離構造から形成した多孔質
体、ポリマーやシリカなどの混合物のスピノーダル分解
によって生じた共連続構造などの相分離構造から適切な
相を除去することによって作製した多孔質体、エマルジ
ョンテンプレーティング法などによって作製した多孔質
体、B.H.Cumpstonら(Nature,vo
l.398,51,1999)やM.Campbell
ら(Nature,vol.404,53,2000)
が報告しているような三次元光造形法を用いて作製した
多孔質体などを用いることができる。
【0026】多孔質絶縁体シートの厚みは、適宜決定す
ることができるが、導電性物質を充填してなる導電パタ
ーンの厚みを確保するために5μm以上であることが好
ましく、10μm以上であることがより好ましい。5μ
m未満では導電パターンの厚みを確保することができ
ず、望ましい高周波特性が得られなくなるおそれがあ
る。
【0027】こうした多孔質絶縁体シートに充填して導
電パターンを形成するための導電性物質としては、銅、
ニッケル、金、銀などの金属、あるいはこれらの合金な
どが挙げられる。さらに、インジウムチンオキサイドな
どの導電性セラミックス、グラファイトなどの炭素材
料、ハイドープされたシリコンなどの半導体、ポリアニ
リン誘導体、ポリチオフェン誘導体、およびポリピロー
ル誘導体などの導電性ポリマーなどを用いることもでき
る。
【0028】導電性物質を多孔質絶縁体シートの所望の
領域に含浸、充填して導電パターンを形成する方法は特
に限定されず、広く公知の技術を用いることができる。
導電性物質の微粒子や溶液をスクリーン印刷や凹版印刷
などの手法で多孔質体絶縁体シートに印刷してもよい。
また、エネルギー線を照射して照射領域の浸透性を変化
させることによって、導電性物質を特定の領域に浸透さ
せてもよい。この場合には、例えば、フッ素系表面処理
剤で撥水処理した多孔質絶縁体シートを用い、その所望
の領域にエネルギー線を照射してフッ素系表面処理剤を
選択的に除去する。この多孔質絶縁体シートを、例えば
スルホン化ポリアニリンなどの導電性ポリマーの水溶液
に浸漬などすれば、フッ素が除去された領域にのみ導電
性ポリマー溶液が浸み込む。その後、乾燥することによ
り、フッ素が除去された領域のみを導電性ポリマーによ
って選択的に導電化することができる。
【0029】あるいは、例えば、特開平6−29383
7号公報に開示されている手法を採用することもでき
る。この場合には、まず、親水性溶液を含浸したPTF
E多孔質シートの所定の領域に紫外線を照射して、露光
部を選択的に親水化する。その後、前述と同様に導電性
ポリマーの水溶液に浸漬することによって、露光部に選
択的に導電性ポリマーを含浸することが可能である。
【0030】さらに、CVDや無電解めっきなどの触媒
を、所望の領域に選択的に発生あるいは吸着させること
によって、導電パターンを作製することもできる。ま
た、エネルギー線照射によって多孔質絶縁体シートの空
孔内表面を改質するなどして、露光部または未露光部に
選択的に触媒を発生または吸着させてもよい。この場合
には、CVDあるいは無電解めっきなどの方法によっ
て、触媒発生部あるいは触媒吸着部に金属などの導電性
物質を充填することができる。
【0031】プロセスが容易であり、しかも微細で高精
度なビア形状や配線形状を一度に形成可能なことから、
特願2000−159163および特願2001−09
3668等において本発明者らが提案したようなパター
ンメッキ手法を用いることが最も好ましい。
【0032】以下に、本発明において使用されるパター
ンメッキ手法を、各工程毎に説明する。
【0033】<工程1> 工程(1):まず、露光によりイオン交換性基を生成す
る、あるいは消失する化合物を含有する感光性組成物
を、多孔質絶縁体シートに薄膜塗布する。
【0034】このパターンメッキ手法において用いられ
る感光性組成物は、光照射によりイオン交換性基を生成
する化合物、または光照射によりイオン交換性基を消失
する化合物を含有する。露光によりイオン交換性基を生
成する化合物は、露光による化学反応をきっかけにする
多段階反応によりイオン交換性基を生じるものであって
もよい。こうした化合物は、まず、露光により化学反応
を生じて何らかのイオン交換性基の前駆体を生じ、この
前駆体がさらに化学反応を生じることによってイオン交
換性基を生成する。
【0035】露光によりイオン交換性基を生成する化合
物としては、(i)露光によりイオン交換能を有する官
能基を発生する化合物が挙げられる。
【0036】また、露光によりイオン交換性基を消失す
る化合物としては、(ii)露光前には、イオン交換能
を有する官能基を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤
しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物
が挙げられる。
【0037】前述の(i)、(ii)においてイオン交
換性を有する官能基としては、親水性の官能基が挙げら
れ、−COOX基、−SO3X基、−PO32基(Xは
水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属および周期
律表1、2族に属する典型金属、およびアンモニウム基
から選択される)および−NH2OH等が挙げられる。
【0038】特に(i)、(ii)において、イオン交
換能を有する官能基としては、陽イオン交換性基である
ものが、金属イオンとイオン交換を行ないやすいため望
ましい。こうした陽イオン交換性基としては、−COO
X基、−SO3X基あるいは−PO32基等の酸性基
(ただし、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類
金属及び周期律表I、II族に属する典型金属、アンモニ
ウム基)が特に好ましい。これらが含まれていると、後
工程である金属イオン交換後、還元生成した金属あるい
は金属微粒子との安定した吸着が得られる。
【0039】また、前述の陽イオン交換性基のうちで
も、水中でのイオン解離特性から求めたpKa値が7.
2以下を呈するものがより好ましい。pKa値が7.2
を越えたイオン交換性基は、引き続いて行なわれる金属
イオンまたは金属を結合させる工程(工程(3))にお
いて、単位面積当たりの結合が少ない。したがって、そ
の後に形成させる導電部分に、所望される十分な導電性
が得られないおそれがある。
【0040】光照射によりイオン交換性基を生成あるい
は消失する化合物としては、280nm以上の波長の光
照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合
物を使用することが好ましい。これは、有機高分子材料
系を多孔質絶縁体として用いた場合、その構造によって
は、280nm以下の波長の光照射で、強度の劣化を招
くおそれが生ずるためである。
【0041】280nm以上の波長の光照射によりイオ
ン交換性基を生成する化合物の具体例としては、ナフト
キノンジアジド誘導体およびo−ニトロベンジルエステ
ル誘導体、p−ニトロベンジルエステルスルフォネート
誘導体およびナフチルもしくはフタルイミドトリフルオ
ロスルフォネート誘導体等が挙げられる。
【0042】特にナフトキノンジアジド誘導体を用いた
場合、エネルギーの低い280nm以上の波長の光で、
しかも短時間に十分に微細なパターニングが可能であ
る。また、ナフトキノンジアジド誘導体は露光時に光ブ
リーチングを起こし、およそ300nm以上の波長域で
透明化する。そのため、膜厚方向に深くまで露光するこ
とが可能であり、多孔質絶縁体シートの膜厚方向に貫通
して露光する際などに非常に適している。
【0043】なお、感光性組成物層は、後工程において
金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に
曝される。イオン交換反応によりイオン化した感光性組
成物は水溶液に溶解しやすいため、基材としての多孔質
絶縁体シートから剥離しやすくなる。そこで、基材から
の剥離を防ぐために、イオン交換性基生成反応を生じる
基がポリマーや高分子化合物等に担持、あるいは結合さ
れているものが好ましい。そのような観点から、280
nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成す
る化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジドスル
ホニル置換フェノール樹脂誘導体、1,2−ナフトキノ
ンジアジドスルホニル置換ポリスチレン誘導体等が好適
である。
【0044】また、280nm以上の波長の光照射によ
りイオン交換性基を生成する化合物の他の例としては、
ポリマーの構造中に含有されるカルボキシル基などのイ
オン交換性基に保護基を導入した化合物が挙げられる。
この化合物を用いる場合には、280nm以上の波長の
光を照射することによって酸を発生する光酸発生剤が感
光性組成物に添加される。後工程の露光によって光酸発
生剤から酸が発生し、その発生した酸で保護基が分解す
ることによりイオン交換性基が生成する。なお、前述の
ポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレ
ノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾ
ールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド
酸やポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のカルボキシ
ル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0045】フェノール系樹脂の保護基としては、te
rt−ブトキシカルボニルメチル基やtert−ブトキ
シカルボニルエチル基などのtert−ブチルエステル
誘導体置換基が挙げられる。
【0046】一方、ポリアミド酸やポリアクリル酸等に
おいては、構造中のカルボキシル基の保護基としてメチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n
−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、
ベンジルアルコキシ基、2−アセトキシエチル基、2−
メトキシエチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエ
チル基、3−メトキシ−1−プロピル基等のアルコキシ
基やトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフ
ェニルシリル基等のアルキルシリル基が挙げられる。
【0047】こうした保護基の脱保護のために好適な光
酸発生剤としては、CF3SO3 -、p−CH3PhS
3 -、p−NO2PhSO3 -等を対アニオンとするオニ
ウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウ
ム塩等の塩、有機ハロゲン化合物、およびオルトキノン
−ジアジドスルホン酸エステルなどを用いることができ
る。
【0048】また、光酸発生剤の作用によらずに光を照
射するのみでカルボン酸などのイオン交換性基を生成す
る保護基としては、o−ニトロベンジルエステル基が挙
げられる。
【0049】一方、280nm以上の波長の光照射によ
りイオン交換性基を消失する、すなわち露光前にはイオ
ン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにく
い疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物として
は、次のような化合物を用いることができる。すなわ
ち、イオン交換性基である−COOX基、−SO3X基
あるいは−PO32基などの酸性基(ただし、Xは水素
原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表
I、II族の属する典型金属、アンモニウム基)を、その
組成物骨格中に有し、光照射によりイオン交換能が消失
する化合物である。
【0050】露光前にはイオン交換能を有し、露光後に
水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官
能基を発生する化合物としては、塩基性物質の存在下で
の光照射により脱炭酸反応を起こして分解することので
きるカルボキシル基含有化合物が挙げられる。この場合
には、前述のカルボキシル基含有化合物に加えて、光酸
発生剤と塩基性化合物とが感光性組成物中に添加され
る。こうした組成物においては、露光により発生した酸
が、脱炭酸反応に関わる塩基性化合物を中和してしま
う。このため、露光部ではカルボキシル基がそのまま残
り、未露光部においては脱炭酸反応が進行するというメ
カニズムによって、露光部のイオン交換能が消滅する。
【0051】脱炭酸反応を起こして分解することのでき
るカルボキシル基含有化合物としては、任意の化合物を
選択できるが、塩基性化合物により脱炭酸反応が進行し
やすい化合物が好ましい。そのような化合物としては、
カルボキシル基のα位またはβ位に電子吸引性基または
不飽和結合を有するものが挙げられる。ここで、電子吸
引性基は、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリ
ール基、カルボニル基、またはハロゲンであることが好
ましい。
【0052】このようなカルボキシル基含有化合物の具
体例としては、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニト
ロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、
β,γ−オレフィンカルボン酸などが挙げられる。
【0053】添加する光酸発生剤としては、上述した光
酸発生剤が挙げられ、280nm以上の波長で酸を発生
するものが特に好ましい。
【0054】添加される塩基性化合物としては、光酸発
生剤から放出される酸によって中和され、カルボキシル
基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するもので
あれば任意のものを用いることができる。この塩基性化
合物は有機化合物、無機化合物いずれでも構わないが、
好ましいのは含窒素化合物である。具体的には、アンモ
ニア、1級アミン類、2級アミン類、および3級アミン
類等が挙げられる。これら塩基性化合物の含有量は、感
光性組成物中0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜
15重量%である。0.1重量%未満の場合には、脱炭
酸反応が充分に進まなくなり、30重量%を越えると、
未露光部に残存するカルボキシル基含有化合物の劣化を
引き起こすおそれがある。
【0055】<工程(2)>次に、工程(1)によって
多孔質絶縁体シートに形成された感光性組成物層に対し
て、所望の導電パターンにパターン露光を施して、感光
性組成物層の露光部にイオン交換性基を生成あるいは消
失させる。こうして、イオン交換性基のパターンを、感
光性組成物層に形成する。
【0056】パターン露光においては、導電パターンの
ネガ像を形成したマスクを用いて、導電パターン部以外
の部分のイオン交換性基を生成あるいは消失させること
もできる。
【0057】露光に用いられるマスクに形成されるパタ
ーンは、連続して曲がった形状を有していれば特に限定
されず、スパイラル状や連続したU字の繰り返しなどが
挙げられる。これらの形状は、角部を有していてもよ
い。用いる感光性組成物の感光特性に応じて、マスクに
設けられた光透過領域または光不透過領域が、多孔質絶
縁体シートに形成される導電部分に対応することにな
る。インダクタにおいては、単位面積当たりの導電部分
の面積が多いほど、すなわち、導電配線部分の厚みが厚
い程、Q値等の高周波特性が良好であり、さらには直流
抵抗も低く抑えることができる。したがって、多孔質絶
縁体シートに形成される導電部分の全面積が可能な限り
多くなるように、マスクにおけるパターンの幅やスペー
スを選択することが望まれる。例えば、多孔質絶縁体シ
ートにおける露光部に導電パターンを形成する場合、す
なわち、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物
を含有する感光性組成物が用いられる場合には、マスク
におけるパターンの幅およびスペースの実用的な範囲
は、それぞれ10〜1000μm程度および1〜100
0μm程度である。
【0058】露光に際しては、必ずしもマスクを用いる
必要はなく、例えば、レーザービームなどを用いて導電
パターンどおりに描画して露光してもよい。また、光の
干渉によって生じる干渉縞などの周期的な光強度パター
ンを用いて周期的なパターンを露光してもよい。
【0059】イオン交換性基を生成あるいは消失させる
ために照射される露光光としては、波長が280nm以
上のものが好ましく用いられる。なお、露光による多孔
質絶縁体の劣化を低く抑えるためには、露光光の波長は
300nm以上であることがより好ましく、350nm
以上であることが最も好ましい。
【0060】特に、芳香族化合物から構成される多孔質
絶縁体シートに対して、その厚み方向に内部に露光する
場合には、長波長の露光光を用いることが肝要である。
多孔質体絶縁体シートが芳香族ポリイミドなどで構成さ
れる場合には、ポリイミドの吸収の吸収端が450nm
以上になるものも少なくない。こうした場合には、さら
に長波長の500nm以上の波長を有する露光光でパタ
ーン露光を行なうことが好ましい。
【0061】工程(2)で用いる露光光源としては、紫
外光源、可視光源のほか、β線(電子線)、X線など光
源のなかから所定の波長の露光光を生じるものを選択し
て使用することができる。紫外光源、あるいは可視光源
は、具体的には水素放電管、希ガス放電管、タングステ
ンランプ、ハロゲンランプのような連続スペクトル光
源、各種レーザー、水銀灯のような不連続スペクトル光
源などのなかから選択して用いる。
【0062】工程(2)においては、感光性組成物層の
イオン交換性基に対して、後工程の工程(3)で金属イ
オンの結合量を増量するために、イオン交換性基の中
和、あるいはそのイオン交換性基を形成した部分の膨潤
を行なってもよい。そのためには、多孔質絶縁体シート
を酸またはアルカリ溶液に吹き付けや浸漬などの手法に
よって接触させる。特に、アルカリ溶液として水酸化リ
チウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化
物、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の
アルカリ金属塩、ナトリウムメトキサイドやカリウムエ
トキサイド等の金属アルコキサイドや水素化ホウ素ナト
リウム等の水溶液の少なくとも1種を用い、これらの溶
液に浸漬するのがよい。こうした溶液は、単独であるい
は混合して用いることができる。
【0063】<工程(3)>次に、露光により形成され
たイオン交換性基のパターンに、選択的に金属イオンま
たは金属微粒子を結合させて、導電部分を形成する。
【0064】イオン交換性基と金属イオンとの交換反応
を生じさせるには、例えば金属塩を含有する水溶液など
に、パターン露光後の多孔質絶縁体シートを浸漬させる
だけで容易に行なうことができる。
【0065】金属イオンとして用いられる金属元素とし
ては、銅、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、
チタン、鉛、白金、金、クロミウム、モリブデン、鉄、
イリジウム、タングステン、およびロジウム等が挙げら
れる。
【0066】これらの金属元素は、硫酸塩、酢酸塩、硝
酸塩、塩化物、および炭酸塩等のような金属塩として溶
液中に含有させる。特に、硫酸銅が好ましい。こうした
金属塩は、溶液における金属イオンの濃度が0.001
〜10M、好ましくは0.01〜1Mとなるよう配合す
るのが適切である。なお、金属塩を溶解させる溶媒は、
水あるいは有機溶媒系、例えばメタノールやイソプロパ
ノール等であってもよい。
【0067】また、金属微粒子が分散した溶液を用いる
こともできる。イオン交換性基とコロイド状態の金属微
粒子とは、静電的な相互作用などによって選択的に結合
を生じる。したがって、イオン交換性基と金属微粒子と
の結合は、金属微粒子が分散した溶液に多孔質絶縁体シ
ートを浸漬させるだけで容易に生じさせることができ
る。
【0068】例えば、塩酸酸性水溶液中に塩化パラジウ
ムと塩化スズとを混合して作製する無電解メッキの触媒
として使用されるパラジウム−スズコロイド、またパラ
ジウムのハロゲン化物、酸化物、アセチル化錯体の分散
溶液中に多孔質絶縁体シートを浸漬させる。それによっ
て、イオン交換性基上に位置選択的に金属微粒子が容易
に結合を生じる。
【0069】以上のようにして、多孔質絶縁体シートに
パターン化された導電部分を形成することができる。導
電パターンは、多孔質絶縁体シートを貫通して形成され
てもよい。なお、抵抗値低減の点から、非貫通に形成さ
れる場合には、導電パターンの厚みは5μm以上である
ことが好ましく、10μm以上であることがより好まし
い。
【0070】また、以下の工程(4)、工程(5)のい
ずれか一方、あるいはその両方を行なうことによって、
導電部分の導電性をさらに向上させることができる。
【0071】<工程(4)>イオン交換により多孔質絶
縁体シートに形成された導電部分の導電性を向上させる
ために、イオン交換性基に結合した金属イオンを還元剤
と接触させて金属化させる。
【0072】用いられる還元剤は特に限定されないが、
ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒド
ラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウムや、次亜
リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩等が挙げられる。こ
うした還元剤を含有する溶液に、前述の工程(3)まで
を経た多孔質絶縁体シートを浸漬することによって、導
電部分を金属化させることができる。
【0073】<工程(5)>導電部分に対し導電性を向
上させるために、無電解めっきを施す。これにより、導
電部の空孔内を金属である程度充填することができる。
【0074】金属としては、電気抵抗が少なく、比較的
腐食しにくい銅が最も好ましい。具体的には、前工程で
得られた導電部を触媒核として、無電解メッキ液と接触
させる。
【0075】無電解メッキ液としては、例えば、銅、
銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、白金、金、ロジ
ウム等の金属イオンを含有するものが挙げられる。
【0076】この無電解メッキ液には、前述の金属塩水
溶液の他にホルムアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸
ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン
酸、グリオキシル酸等の還元剤、酢酸ナトリウム、ED
TA、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン等の錯化
剤や析出制御剤等が含まれており、これらの多くは市販
されており簡単に入手することができる。そこで、前記
部材をこれらの無電解メッキ液の所望される導電膜厚、
若しくは多孔質内部への充填が完了するまで浸漬してお
けばよい。
【0077】上述したようなパターンメッキ手法で導電
パターンを形成する場合には、多孔質絶縁体シート内に
埋め込まれる導電部分の領域を、露光によって決定する
ことができる。このため、一度の露光によって、導電パ
ターン形成領域を多孔質絶縁体シートに形成することが
可能である。すなわち、シートの表面および裏面に埋め
込まれる導電部分は、このシートに対して非貫通となる
ように露光量を少なくする。一方、それら双方のパター
ンを接続するビアとなる部分には、多孔質絶縁体シート
を貫通するだけの露光量を与える。露光量の調整は、露
光に用いるマスクの工夫で容易に調整可能である。
【0078】具体的には、貫通したビア様の領域を多孔
質絶縁体シート内に形成するためのマスクの光全透過領
域としては、通常の白抜きマスクを用いる。一方、非貫
通の配線様の領域を多孔質絶縁体シートの表面および裏
面に埋め込んで形成するためのマスクの光透過抑制領域
は、ハーフトーンで構成して光の透過を抑制する。ある
いは、複数の微細なパターンを配置して光透過抑制領域
を構成することもできる。この場合、微細なパターンの
大きさは、0.1μm以上10μm以下であることが好
ましく、この微細パターンの大きさや配置によって光の
透過量を調整して、多孔質絶縁体シート内の金属充填深
さを決定することができる。なお、導電配線部分の抵抗
を低減し、Q特性を向上させるためには、多孔質絶縁体
シートに形成される非貫通の配線様の領域における金属
充填深さは、多孔質絶縁体シートの厚さにはよらず5μ
m以上であることが好ましく、10μm以上であること
がより好ましい。
【0079】光全透過領域と光透過抑制領域との2種類
の光透過領域を有するマスクを2枚組み合わせて用いる
ことによって、多孔質絶縁体シートの表面、裏面、およ
び表裏面に貫通した所定の導電部分形成領域を、一度の
露光により感光することができる。この場合には、表面
露光用のマスクには、多孔質絶縁体シートの表面側に形
成される非貫通部のパターンおよび貫通部のパターン
を、上述したような光透過抑制領域および光全透過領域
でそれぞれ形成しておく。表面露光用マスクにおける光
透過抑制領域は、光全透過領域を繋いで特定の第1の方
向に延びて形成される。一方の裏面露光用のマスクに
も、多孔質絶縁体シートの裏面側に形成される非貫通部
のパターンと貫通部のパターンとを、同様に形成してお
く。この裏面露光用マスクにおける光透過抑制領域も光
全透過領域を繋いでいるが、前述の第1の方向とは異な
る第2の方向に延びて形成される。このとき、各マスク
における貫通部のパターンは、実質的に重なり合うこと
が必要である。
【0080】こうした2枚のマスクを多孔質絶縁体シー
トの表面側および裏面側に配置して、両面から露光する
ことによって、所望のスパイラル状導電パターン形成領
域を多孔質絶縁体シートに一度に感光することができ
る。引き続いて、めっき処理等を施すことによって、多
孔質絶縁体シートにはスパイラル状の導電パターンが形
成される。こうした手法は、低コストに行なえる点でも
有利である。
【0081】また、マスクの光透過領域を制御すること
によって、多種多様な任意のパターンを、多孔質絶縁体
シートに描くことができる。したがって、インダクタ部
分に相当する光透過領域と、金属配線部分に相当する光
透過領域とを有するマスクを用いて上述したように露光
を行なうことによって、同一の多孔質絶縁体シート内
に、インダクタ部分と金属配線部分とを同時に一括して
感光することができる。引き続いてめっき処理等を施す
ことによって、導電パターンからなるインダクタおよび
金属配線が単一の多孔質絶縁体シートに形成される。こ
のようなシートを配線基板のうちの1層に用いることに
よって、インダクタ素子内蔵基板を作製することも可能
である。
【0082】導電パターンを形成した後の多孔質絶縁体
シートの空孔には、樹脂等の絶縁材料が充填される。何
も充填しない場合には、導電性物質がマイグレーション
するなどして信頼性が低下してしまう。充填される絶縁
材料としては、無機材料および有機材料のいずれでもよ
く、これらの複合材料を用いることもできる。充填され
る絶縁材料は、シートを構成している多孔質絶縁体と同
様の材料であってもよい。
【0083】例えば、シリカゾルなどのセラミック前駆
体溶液を含浸してセラミックスを充填することができ、
熱可塑性樹脂や硬化性樹脂などの樹脂を充填してもよ
い。硬化性樹脂としては、熱硬化性、光硬化性、電子線
硬化性など特に限定されない。具体的には、例えばエポ
キシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドートリ
アジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、およびポリ
カルボジイミド樹脂などが用いられる。
【0084】こうした樹脂には、セラミックスなどの微
粒子が分散されていてもよい。ただし、多孔質空孔内へ
の含浸性を考慮すると、分散されるセラミックス微粒子
の含有量は、樹脂成分に対して0.1〜70重量%程度
とすることが好ましい。充填に用いられる樹脂材料とし
ては、ベンゾシクロブテン樹脂や、ポリブタジエン樹
脂、シリコーン樹脂等の低誘電率なものが好ましく、ε
値にして4以下のものが望ましい。このような含浸樹脂
として一般的によく使用されるエポキシ樹脂において
も、分子中へのフッ素やナフタレン骨格等の導入や、硬
化剤からの改良で低誘電率にすることができる。
【0085】特に高周波特性の良好なQ値の高いインダ
クタを得るためには、透磁率の高い材料を充填すること
が望まれる。例えば、アルミナやMn−Zn系またはN
i−Zn系のフェライトなど微粒子を0.1〜70重量
%程度含有した樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0086】また、可撓性のある材料を充填すると、イ
ンダクタ自体に可撓性を付与することができる。さら
に、絶縁部分を樹脂とすることで、配線基板との熱膨張
差を低減し、チップインダクタ/配線基板間の剥離を抑
えることができる。絶縁部分の材料は、誘電率εが4以
下であるものを用いることが望ましい。具体的には、シ
ロキサン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ
素含有ポリマーなどが挙げられる。それにより高周波特
性に優れたインダクタを得ることができる。また、前記
多孔質絶縁体としては、インダクタを搭載する基板の材
質に熱膨張係数がほぼ等しい材料を用いることも望まし
い。
【0087】また、引き出し線を含む導電パターンを、
多孔質絶縁体シートに一度に複数単位形成した後、イン
ダクタ1単位ずつカッティングして作製してもよい。特
に、上述したようなパターンめっき手法を採用した場合
には、微細で高精度なビア形状や配線形状を多孔質絶縁
体シートに一度に形成することができる。したがって、
2010形状(縦2.0mm、横1.0mm)や100
5、0603形状等の小型化に対応したチップインダク
タアレイを、任意の大きさの多孔質シート内に多数個作
製することによって低コスト化を図ることが可能とな
る。
【0088】以上説明したように、本発明にかかるイン
ダクタは、薄膜型の形状を有しているので高密度実装に
対応し、導電部分の厚みを確保できることに起因して導
体抵抗が低くすることが可能である。こうした本発明の
インダクタは、高インダクタンス特性を有する積層型と
比較すると、モノリシックな構成であるために応力によ
る特性劣化の心配が無く、低コストで作製できる。しか
も、多孔質絶縁体シートにおける導電パターン以外の領
域に樹脂等を充填することによって、本発明のインダク
タにおいては配線基板との熱膨張差が低減されるので、
チップインダクタ/配線基板間の剥離を生じることはな
い。
【0089】このように本発明のインダクタは、高密度
実装が可能な優れたチップインダクタとして用いること
ができるのみならず、インダクタ素子内蔵基板として用
いることも可能である。
【0090】
【発明の実施の形態】以下、実施例に基づいて本発明を
具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限
定されるものではない。
【0091】(実施例1)多孔質絶縁体シートとして、
PTFE多孔質フィルム(空孔径500nm,膜厚20
μm、空孔率80%)を用意した。一方、ナフトキノン
ジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含
有率;33当量mol%)をアセトンに溶解して、1w
t%のアセトン溶液を調製した。得られた感光剤溶液
を、前述のシートにディップ法によりコーティングした
ところ、多孔質の穴の中も含めて、内部空孔表面が感光
性組成物で被覆された。
【0092】このシートに対して、CANON PLA
501を用い、スパイラル状のパターンが設けられたマ
スクを介して波長436nm、1200mJ/cm2の照
射量で露光し、露光部にイオン交換性基を生成させた。
これにより、感光性組成物層には、イオン交換性基から
なるパターン潜像が形成された。
【0093】こうした多孔質絶縁体シートを、0.5M
に調整した硫酸銅水溶液に5分間浸漬後、蒸留水による
洗浄を3回繰り返した。続いて、水素化ホウ素ナトリウ
ム0.01M水溶液に30分間浸漬後、蒸留水で洗浄し
て、多孔質絶縁シートにCuからなる導電パターンを形
成した。
【0094】導電パターンが形成された多孔質絶縁体シ
ートを、さらに無電解銅メッキ液PS−503に30分
間浸漬して導電部分に銅メッキを施すことによって、ス
パイラル状の導電パターンを形成した。このとき、配線
様の導電部分の厚さは、約20μmであった。
【0095】さらに、多孔質絶縁体シート内に残存する
空隙には、アルミナ微粒子を5重量%含有したエポキシ
樹脂を含浸して埋め込んだ。その後、所定の大きさにカ
ッティングし、外部電極接続用に引き出された面にNi
メッキを施して、本実施例のインダクタを作製した。
【0096】得られたインダクタのインダクタンスは1
5nHであった。
【0097】(実施例2)図3に示すようなハーフトー
ンマスクを用いて、多孔質絶縁体シートの両面に露光を
施した以外は、実施例1と同様の手法により本実施例の
インダクタを作製した。
【0098】ここで、用いたマスクについて詳細に説明
する。図3(a)に示すように、表面露光用マスク20
aには、多孔質絶縁体シートの表面に非貫通の導電パタ
ーンの領域を感光するための第1の方向に延びた光透過
抑制領域21および、シート表裏の導電パターンを繋ぐ
ビア様の領域を感光するための光全透過領域22が形成
されている。このマスク20aにおいては、ビア様の領
域を感光するための光全透過領域22は白抜きパターン
として、非貫通用の領域を感光するための光透過抑制領
域21はハーフトーンから形成した。この時、ハーフト
ーン部分の光透過率は30%に設定した。
【0099】一方で、図3(b)に示すように、ビア様
の領域を感光するための光全透過領域22が前述のマス
ク20aと重なって、かつ光透過抑制領域21が第2の
方向に延びて隣接のビア様領域に繋がった裏面露光用マ
スク20bも用意した。
【0100】なお、マスク20aおよび20bにおいて
は、ビア様の光全透過領域22の大きさおよび配線様の
領域の大きさを0.05mmとし、スペースを0.1m
mに設定した。また、スパイラル両端部においては、外
部電極との接続用の引き出し線もハーフトーンにより形
成している。
【0101】光全透過領域22を合わせてマスク20a
と20bとを多孔質絶縁体シートの両面に配置し、露光
を行なうことによって導電パターン形成領域を感光し
た。さらに、実施例1と同様にメッキ等の処理を施し
て、本実施例のインダクタを作製した。
【0102】得られたインダクタのインダクタンスは2
2nHであった。
【0103】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
薄膜型の形状を有し、導電部分の厚みを確保するととも
に応力歪を防ぎ、しかも低コストで製造可能なインダク
タが提供される。
【0104】本発明は、近年の電子機器等の軽薄短小化
に伴ない、それらを構成する各種電気電子部品の高集積
化や小型化、または、高周波にも対応した小型表面実装
チップインダクタとして特に好適に用いることができ
る。また場合によっては、インダクタ素子内蔵基板とし
て用いることも可能であり、その工業的価値は絶大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかるインダクタの一例の
概略を表わす断面図。
【図2】本発明の一実施例にかかるインダクタの一例の
概略を表わす斜視図。
【図3】実施例2で用いたマスクの構成を説明する概略
図。
【符号の説明】
10…インダクタ 11…多孔質絶縁体シート 12…導電部分 13…絶縁材料部分 20a…表面露光用マスク 20b…裏面露光用マスク 21…光全透過領域 22…光透過抑制領域
フロントページの続き (72)発明者 平岡 俊郎 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 浅川 鋼児 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 真竹 茂 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 岸本 泰一 埼玉県川口市領家5−14−25 東芝ケミカ ル株式会社技術開発センター内 (72)発明者 入江 美和 埼玉県川口市領家5−14−25 東芝ケミカ ル株式会社技術開発センター内 Fターム(参考) 5E044 AD02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質絶縁体と、前記多孔質絶縁体の空
    孔に導電性物質が充填されてなり、外部に接続可能な導
    電部分と、 前記多孔質絶縁体の前記導電部分以外の空孔に絶縁物質
    が充填された絶縁部分とを具備することを特徴とするイ
    ンダクタ。
  2. 【請求項2】 前記多孔質絶縁体は多孔質シートであり
    前記導電部分は、 前記シートの厚み方向に貫通し、前記シートの表面と裏
    面とに露出して複数設けられ、その露出面が2列に配置
    された貫通導電部、 前記シートの前記表面に埋め込まれて第1の方向に延
    び、前記貫通導電部の露出面の一方の列の1つと、これ
    に最近接する他方の列の1つとを繋ぐ表面側非貫通導電
    部、および前記シートの前記裏面に埋め込まれて、前記
    第1の方向とは異なる第2の方向に延び、前記貫通導電
    部の露出面の一方の列の1つと、これに最近接する他方
    の列の1つとを繋ぐ裏面側非貫通導電部を含むことを特
    徴とする請求項1に記載のインダクタ。
  3. 【請求項3】 前記多孔質絶縁体および絶縁材料の少な
    くとも一方は、ε値にして4以下の誘電率を有すること
    を特徴とする請求項1または2に記載のインダクタ。
  4. 【請求項4】 前記多孔質絶縁体の空孔率は、40%以
    上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか
    1項に記載のインダクタ。
  5. 【請求項5】 前記多孔質絶縁体の空孔の平均空孔径
    は、0.05μm以上5μm以下であることを特徴とす
    る請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインダク
    タ。
  6. 【請求項6】 前記多孔質絶縁体は多孔質シートであ
    り、前記導電部分は、前記シートの面内でかつ前記シー
    トの面方向に設定される直線に対し、その周囲にスパイ
    ラルを形成するように設けられていることを特徴とする
    請求項1に記載のインダクタ。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7560400B2 (en) 2003-07-16 2009-07-14 Raytheon Company Radome with polyester-polyarylate fibers and a method of making same
JP2011082346A (ja) * 2009-10-07 2011-04-21 Shinko Electric Ind Co Ltd インダクタ及びインダクタの製造方法

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JP2011082346A (ja) * 2009-10-07 2011-04-21 Shinko Electric Ind Co Ltd インダクタ及びインダクタの製造方法

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