JP3919147B2 - ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化後の膜の色が淡く、また硬化後の熱処理プロセスにおいても変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜として耐熱性が優れ、卓越した電気特性、機械特性等を有するポリイミド樹脂が用いられているが、近年、半導体素子の高集積化、大型化、パッケージの薄型化、小型化、半田リフローによる表面実装への移行等により耐熱サイクル性、耐熱ショック性等の著しい向上の要求があり、更に高性能の樹脂が必要とされるようになってきた。
一方、ポリイミド樹脂自身に感光性を付与する技術が最近注目を集めてきており、例えば下記式(VI)に示される感光性ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0003】
【化9】
【0004】
これを用いるとパターン作成工程の一部が簡略化でき、工程短縮の効果はあるが、現像の際にN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤が必要となるため、安全性、取扱い性に問題がある。そこで最近、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂が開発されている。例えば、特公平1−46862号公報においてはポリベンゾオキサゾール前駆体とジアゾキノン化合物より構成されるポジ型感光性樹脂が開示されている。これは高い耐熱性、優れた電気特性、微細加工性を有し、ウェハーコート用のみならず層間絶縁用樹脂としての可能性も有している。このポジ型の感光性樹脂の現像メカニズムは、未露光部のジアゾキノン化合物はアルカリ水溶液に不溶であるが、露光することによりジアゾキノン化合物が化学変化を起こし、アルカリ水溶液に可溶となる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより、未露光部のみの塗膜パターンの作成が可能となるものである。
【0005】
この特公平1−46862号公報に示されているポジ型感光性樹脂は、現像後約300〜400℃の温度で熱処理を行い閉環し(硬化)、熱安定性に優れた膜に変換するのが一般的なプロセスである。しかし、この硬化を行うとポリベンゾオキサゾール樹脂及びジアゾキノン化合物が分解、酸化し、膜が黒く変色するという問題ある。また、半導体の製造プロセスにおいてはポリイミドのプロセス後にも、様々な熱処理が行われる。例えばLOC構造の場合はLOCテープ付きリードフレームを350〜450℃の高温でチップに圧着する。その際、チップにコートしたポリベンゾオキサゾール樹脂も、黒く変色する。変色するとその後に行われるワイヤーボンディング時に認識不良が発生する。そこで硬化後の膜の色が淡く、また硬化後の熱処理プロセスにおいても変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
硬化後の膜の色が淡く、また硬化後の熱処理プロセスにおいても変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一般式(I)で示されるポリアミド(A)100重量部と感光性ジアゾキノン化合物(B)1〜100重量部とヒンダード系フェノール酸化防止剤(C)1〜20重量部からなるポジ型感光性樹脂組成物である。また、このポジ型感光性樹脂組成物を用いて製作した半導体装置である。
【0008】
【化10】
【0009】
【発明の実施の形態】
式(I)のポリアミドは、Xの構造を有するジアミンとYの構造を有するジカルボン酸と更にEの構造を有するカルボン酸誘導体から合成され、このポリアミドを約300〜400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾールという耐熱性樹脂に変化する。
本発明のポリアミド(I)のXは、例えば、
【0010】
【化11】
【0011】
等であるがこれらに限定されるものではない。
この中で特に好ましいものは、
【0012】
【化12】
【0013】
より選ばれるものである。
又式(I)のYは、例えば、
【0014】
【化13】
【0015】
等であるがこれらに限定されるものではない。
これらの中で特に好ましいものは、
【0016】
【化14】
【0017】
より選ばれるものである。
又式(I)のEは、Yの構造を有するジカルボン酸誘導体とXの構造を有するジアミンを反応させてポリアミドを合成した後、末端アミノ基をアルケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個有するカルボン酸誘導体を反応させ、末端封止を行うもので、カルボン酸誘導体としては5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸等が挙げられるが、特に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましい。
更に、式(I)のZは、例えば
【0018】
【化15】
【0019】
等であるがこれらに限定されるものではない。
式(I)のZは、更により高い密着性が必要な場合に用いるが、その使用割合bは最大40モル%までである。40モル%を越えると樹脂の溶解性が極めて低下し、現像残り(スカム)が発生し、パターン加工ができない。なお、これらX、Y、E、Zの使用にあたっては、それぞれ1種類であっても2種類以上の混合物であっても構わない。
【0020】
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物は、1,2−ベンゾキノンジアジドあるいは1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物であり、米国特許明細書第2,772,972号、第2,797,213号、第3,669,658号により公知の物質である。 例えば、下記のものが挙げられる。
【0021】
【化16】
【0022】
【化17】
【0023】
これらの中で特に好ましいものとしては下記のものがある。
【0024】
【化18】
【0025】
感光性ジアゾキノン化合物(B)のポリアミド(A)への配合量は、ポリアミド100重量部に対し、1〜100重量部が好ましく、配合量が1重量部未満だと樹脂のパターニング性が不良であり、逆に100重量部を越えるとフィルムの引張り伸び率が著しく低下する。
【0026】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要により感光特性を高めるためにジヒドロピリジン誘導体を加えることができる。ジヒドロピリジン誘導体としては、例えば、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2′−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、4−(2′−ニトロフェニル)−2,6−ジメチル−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン、4−(2′,4′−ジニトロフェニル)−2,6−ジメチル−3,5−ジカルボメトキシ−1,4−ジヒドロピリジン等を挙げることができる。
【0027】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては更にヒンダード系フェノール酸化防止剤を用いることを必須としている。本発明に使用できるヒンダード系フェノール酸化防止剤としては分子内に一般式(II)〜(V)で表される構造を有する化合物である。
【0028】
【化19】
【0029】
【化20】
【0030】
【化21】
【0031】
【化22】
【0032】
本発明に使用できるヒンダード系フェノール酸化防止剤の具体例は、一般式(II)については例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が、また、一般式(III)については例えば、4、4’−メチレンビス(2、6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、 N,N’ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)等が、また、一般式(IV)については例えば、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が、また、一般式(V)については例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。また、これらの使用にあたっては単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用することができる。
【0033】
ヒンダード系フェノール酸化防止剤のポジ型感光性樹脂組成物への配合量はポリアミド(A)100重量部に対して1〜20重量部である。配合量が1重量部未満だと耐変色の効果が得られず、また20重量部を超えると感度が低下し実用性に問題があり、好ましくない。
【0034】
本発明におけるポジ型感光性樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加することができる。
【0035】
本発明においてはこれらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いてもよい。
【0036】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の使用方法は、まず該組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウェハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。次に照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、及びこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理を行い、オキサゾール環を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る。
【0037】
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、半導体用途のみならず、多層回路の層間絶縁やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等としても有用である。
特に半導体用途に用いると、変色が少なく特性の優れた半導体装置を得ることが出来る。半導体装置の製造方法は公知の方法を用いることができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
《実施例1》
*ポリアミドの合成
ジフェニルエーテル−4、4’−ジカルボン酸1モルと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール2モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体443.2重量部(0.9モル)とヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.3重量部(1モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3000重量部を加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン500重量部に溶解させた5−ノルボルネン−2、3−ジカルボン酸無水物32.8重量部(0.2モル)を加え、更に12時間攪拌し反応を終了した。反応混合物をろ過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のポリアミド(A−1)を得た。
【0039】
*ポジ型感光性樹脂組成物の作製
合成したポリアミド(A−1)100重量部、下記式の構造を有するジアゾキノン(B−1)25重量部、下記式の構造を有するヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)5重量部をγ―ブチロラクトン250重量部に溶解した後、0.2μmのテフロンフィルターで濾過し感光性樹脂組成物を得た。
【0040】
*現像性評価
このポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートで4分乾燥し、膜厚5μmの塗膜を得た。この塗膜にg線ステッパー露光機NSR−1503G3A(ニコン(株)製)によりレチクルを通して100mJ/cm2から10mJ/cm2づつ増やして、露光を行った後、2.38%のテトラヒドキシアンモニュウムヒドロキシド水溶液(東京応化工業(株)製:NMD−3)で40秒現像した後、純水で1分リンスし、スピンナーで風乾させた。その結果、5μmのライン&スペースが露光量250mJ/cm2で開口していることが確認できた。
【0041】
*着色性評価
このポジ型感光性樹脂組成物を石英板にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間、プリベークした。更にクリーンオーブンを用い、30分/150℃、30分/320℃の順で、窒素雰囲気で、加熱、硬化させ硬化後10μm膜厚のフィルムを得た。次ぎに分光光度計を用いて、500nmでの透過率を測定すると、50.1%と高い透明性であった。更に次ぎにホットプレートを用いて400℃/30秒熱処理を行った後、もう一度分光光度計で500nmでの透過率を測定すると、24.2%と高い透明性であった。
【0042】
《実施例2》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−2)に替えて評価を行った。
《実施例3》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−3)に替えて評価を行った。
《実施例4》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−4)に替えて評価を行った。
《実施例5》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−5)に替えて評価を行った。
《実施例6》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−6)に替えて評価を行った。
《実施例7》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)を(C−7)に替えて評価を行った。
《実施例8》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)の添加量を1重量部にして評価を行った。
《実施例9》
実施例1におけるヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)の添加量を15重量部にして評価を行った。
《実施例10》
実施例1におけるポリアミドの合成において、ジフェニルエーテル−4、4’−ジカルボン酸1モルの替わりに、テレフタル酸0.8モル、イソフタル酸0.2モルを反応させて得られたジカルボン酸誘導体を用いてポリアミド(A−2)を合成し、その他は実施例1と同様の評価を行った。
《実施例11》
実施例1におけるポリアミドの合成においてヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを329.6重量部(0.9モル)に減らし、替わりに1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン24.9重量部(0.1モル)を加え、ポリアミド(A−3)を合成し、その他は実施例1と同様の評価を行った。
《実施例12》
実施例1における感光性ジアゾキノン化合物(B−1)を(B−2)に替えて、評価を行った。
【0043】
《比較例1》
実施例1においてヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)の添加量を添加しないで評価を行った。その結果、表1に示すように硬化後透過率、熱処理後透過率は低かった。
《比較例2》
実施例1においてヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)の添加量を0.5重量部にして、評価を行った。その結果、硬化後透過率、熱処理後透過率は低かった。
《比較例3》
実施例1においてヒンダード系フェノール酸化防止剤(C−1)の添加量を30重量部にして、評価を行った。その結果、感度は400mJ/cm2と低くなった。
【0044】
【化23】
【0045】
【化24】
【0046】
【化25】
【0047】
【化26】
【0048】
実施例1〜11、比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、硬化後の膜の色が淡く、また硬化後の熱処理プロセスにおいても変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
Claims (6)
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて製作された半導体装置。
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