JP3918711B2 - 金属材の半凝固化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄鋼材料等の高融点金属材を半凝固状態として板材や鋳造品を製造する金属材の半凝固化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半凝固状態の溶融金属を用いて板材や鋳造品を製造する半凝固加工は、凝固収縮量の減少による引けの減少,凝固潜熱の減少による金型の長寿命化,結晶の粒状化による機械的性質(特に靭性)の向上等の優れた特徴を有する。
【0003】
このような半凝固加工では、固相・液相共存状態で流動性を確保するために固相の形態が微細粒状である必要があり、そのような組織を得るために機械的撹拌や電磁撹拌を行って組織中のデンドライト形態を強制的に分断させることが行われる。
【0004】
機械的撹拌は、特許文献1に示されるように坩堝内の溶湯を撹拌指によって機械的に撹拌するものであり、電磁撹拌は特許文献2に示されるように溶湯を収容する容器の外側に多相誘導電動機ステータを配設してその多相誘導電動機ステータによる回転磁界で溶湯を電磁誘導的に撹拌するものである。
【特許文献1】
特公平7−100218号公報
【特許文献2】
特公平7−112596号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような半凝固化加工を高融点の鉄鋼材料等に適用しようとした場合、機械的撹拌では撹拌指が高温に曝されるために耐久性が悪く継続的な作業が困難であり、また、電磁撹拌では溶湯の比重が大きいために大きな撹拌作用を与えることができないという問題があった。つまり、上記のごとき従来の何れの撹拌方法でも固相形態を微細粒状化する十分な撹拌を行うことができず、このため、半凝固加工は融点の低いアルミニウム等が中心で融点の高い鉄鋼材料では行われていなかった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で高い耐久性を有し高融点金属材の溶湯を十分に撹拌することのできる金属材の半凝固化装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の金属材の半凝固化装置は、所定長さの流路部材と、
前記流路部材の供給側に供給された溶湯を排出側に向けて流動移動させる溶湯流動駆動手段と、前記流路部材をその供給側から排出側に至る流路方向と交差する方向に移動駆動する撹拌駆動手段と、を備え、上記流路部材は、円筒状に形成され、上記溶湯流動駆動手段は、前記円筒状の流路部材の内周面に送り凸条が螺旋状に形成されるとともに、上記流路部材の排出側に向けて高さが漸増するように構成され、前記撹拌駆動手段による前記流路部材の回転駆動によって前記送り凸状が溶湯を移動駆動するように構成され、前記流路部材の供給側に溶湯を供給して前記溶湯流動駆動手段によって排出側に向けて移動駆動しつつ前記流路部材を前記撹拌駆動手段によって移動駆動して半凝固化するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記構成に加え、上記円筒状の流路部材は、排出側に向けて径が漸増するテーパー状に構成されていることを特徴とする。
更に、上記構成に加え、上記流路部材を冷却する冷却手段を備えて構成されていることを特徴とする。
また、上記溶湯流動駆動手段は、上記流路部材が水平から、垂直とならない所定角度に傾斜されて構成されていることを特徴とする
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は本発明に係る金属材の半凝固化装置の一参考例の概念図、図2はそれによる半凝固化作用を概念的に示す図であって(A)は縦断面図,(B)はその横断面図である。
【0011】
図示半凝固化装置10は、流路部材としての所定径の円筒状の円筒状流路11が、その両端部でそれぞれ支持アーム12(12A,12B)によって軸受を介して回転自在に支持されると共に、中間部外周に設けられた外周ギア13が両支持アーム12の間に架設された回転ベース14に支持された回転駆動モーター15のスピンドルに固定されたピニオンギア15Aと噛合し、回転駆動モーター15によって円筒状流路11が所定の速度で回転するように構成されている。
【0012】
また、排出側端部の支持アーム12Aは円筒状流路11の中心軸と直交する水平な枢支軸16で支持架台17に支持されると共に、供給側の支持アーム12Bは支持架台17に伸縮する傾斜駆動油圧シリンダ18を介して支持されており、円筒状流路11は傾斜駆動油圧シリンダ18の伸縮駆動によって枢支軸16を支点としてその中心軸が水平から所定の角度まで揺動し得るようになっている。更に、両支持アーム12の上側に冷却給水管19が円筒状流路11に対して平行に架設配管されており、この冷却給水管19から円筒状流路11の外面に冷却水が噴射されるようになっている。
【0013】
円筒状流路11は、所定の直径及び長さの円筒状で、その内面は耐火煉瓦や銅系合金等の耐熱性の高い素材によって形成されている。
【0014】
そして、図2(A)に示すように円筒状流路11を所定角度に傾斜させた状態で所定速度で回転させると共に冷却給水管19から冷却水を噴射しつつ、円筒状流路11にその供給側:INから高融点金属材の溶湯1を流し込む。これにより、溶湯1は当該円筒状流路11の内部を自重で流下し、流下中に冷却されて排出側:OUTから流れ出る。この時、溶湯1は円筒状流路11の内面に対してその流下方向に相対的に移動すると共に図2(B)に示すように円筒状流路11の回転によって流下方向と直交する方向に相対的に移動し、この円筒状流路11に対する相対移動によって撹拌されて(即ち本構成では円筒状流路11を回転駆動する外周ギア13及び回転駆動モーター15が撹拌駆動手段を構成する)デンドライト形態が分断されて微細粒状の半凝固化状態となる。半凝固化した溶湯は、図1中に示すように双ロールキャスター2又は鋳型2に供給されて創形される。
【0015】
ここで、溶湯の凝固化率は円筒状流路11の温度と流下時間に依存すると共に、撹拌効率は円筒状流路11の内面との相対速度(即ち流下速度と円筒状流路の回転周速)によって決まるため、円筒状流路11の傾斜角度:θと回転速度を適宜設定することで、溶湯を任意の凝固化率の半凝固化状態とすることができる。
【0016】
これにより、回転する円筒状流路11中を溶湯1が流れるために同一部位が常時高温の溶湯1に接することがなく、極めて高い耐久性を得ることができる。
【0017】
尚、流路は必ずしも円筒状流路11のように円筒状でなければならないものではなく、例えば、半円筒状で周方向に反復移動させても良いものである。また、外面への冷却水の噴射も必ずしも必要なものではなく流路長は長くなるが自然冷却によっても良いが、冷却することによって冷却効率を向上させて装置全体を小さく構成できると共に冷却制御も容易に行えるものである。冷却構造は、流路の内部に冷却管を配管しても良い。また、図2(B)中符号11Aで示すように円筒状流路11の内周面になだらかな撹拌突起を突設することにより、溶湯により大きな撹拌作用を与えることができる。
【0018】
図3(A)は、流路の異なる参考例を示す。これは、円筒状流路11の内面に、溶湯流動駆動手段としての所定高さの送り凸条11Bが円筒状流路11の回転方向に対して排出側:OUTから供給側:INに漸進する螺旋状に形成されているものである。これにより、周方向一定位置で見ると送り凸条11Bの位置は円筒状流路11の回転によって供給側:INから排出側:OUTに移動し、内部の溶湯を供給側:INから排出側:OUTに移動駆動するため、円筒状流路11を傾斜させることなくその回転によって内部の溶湯を移動駆動することができるものである。このような円筒状流路11では、溶湯の移動速度はその回転速度と送り凸条11Bのピッチとによって決まる。
【0019】
また、本発明の金属材の半凝固化装置の一構成例は、図3(B)に示すように、送り凸条11Bの高さ:Hが供給側:INから排出側:OUTに至るに従って漸増するように形成されたものである。これにより、排出側:OUTに至るに従って冷却によって凝固化して粘度の高くなった溶湯を確実に移動駆動することができる。尚、このような送り凸条11Bを備えた円筒状流路11を傾斜させて溶湯の移動に自重による流下を併用しても良いことは言うまでもない。
【0020】
図4(A)は、円筒状流路11の内部に撹拌部材としての撹拌円筒20が配設されて、円筒状流路11の内面と撹拌円筒20の外面との間が溶湯の流れる流路空間11Cとなっている例である。
【0021】
撹拌円筒20は、外周が耐火煉瓦等の耐熱性の高い素材によって中空に形成され、内部に冷却手段としての冷却給水パイプ21が配設されて内部に散水して冷却し得るようになっている。
【0022】
これにより、円筒状流路11と撹拌円筒20の間の流路空間11Cを流れる溶湯1(図4(A)には示さず)は、撹拌円筒20の外周面に対しても相対移動し、これによって撹拌効率が向上するものである。撹拌円筒20は、固定(不回転)であっても撹拌作用を有するが、その中心軸回りに回転するように構成することによってより一層撹拌効率を向上させ得る。尚、その回転方向は図4(A)の横断面図である図4(B)中に矢印で示すように円筒状流路11の回転方向と逆方向とするのが撹拌効率が良いが、同方向としても良い。また、撹拌円筒20は図4(C)に示すように円筒状流路11に対して偏心して設けても良く、更に、撹拌部材は円筒状に限らず異なる形状であっても良いものである。
【0023】
図5は、円筒状流路11の異なる構成例を示し、供給側:INから排出側:OUTに向けて径が漸増するテーパー状に形成されたものである。これによれば、排出側:OUTに至るに従って円筒状流路11の周速が漸次速くなるため、粘度の高くなった溶湯に対して大きな撹拌作用を与えることができる。
【0024】
図6は、前述のテーパー状の円筒状流路11の内部に前述の図4の構成と同様に撹拌部材としての円筒状の撹拌円筒20が円筒状流路11の流路側の周面と平行に挿置されて両者の間が流路空間11Cとなっている例であり、これによってより大きな撹拌作用が得られる。
【0025】
図7は、図6の構成の撹拌円筒20がテーパー状とされ、テーパー状の円筒状流路11内にそのテーパー方向を一致させて挿置された例である。これにより、撹拌円筒20を円筒状流路11の回転方向と逆方向に回転することで排出側で粘度の高くなった溶湯に一層大きな剪断力で撹拌作用を与えることができる。テーパー状の撹拌円筒20は、図8に示すようにテーパー状の円筒状流路11の内部にテーパー方向を逆として挿置しても良く、このような構成により、流路空間の上下の曲率が流路延長方向で漸次変化するために溶湯に複雑な撹拌作用を与えることができるものである。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る金属材の半凝固化装置によれば、所定長さの流路部材と、前記流路部材の供給側に供給された溶湯を排出側に向けて流動移動させる溶湯流動駆動手段と、前記流路部材をその供給側から排出側に至る流路方向と交差する方向に移動駆動する撹拌駆動手段と、を備え、上記流路部材は、円筒状に形成され、上記溶湯流動駆動手段は、前記円筒状の流路部材の内周面に送り凸条が螺旋状に形成されるとともに、上記流路部材の排出側に向けて高さが漸増するように構成され、前記撹拌駆動手段による前記流路部材の回転駆動によって前記送り凸状が溶湯を移動駆動するように構成され、前記流路部材の供給側に溶湯を供給して前記溶湯流動駆動手段によって排出側に向けて移動駆動しつつ前記流路部材を前記撹拌駆動手段によって移動駆動して半凝固化するように構成されていることにより、流路部材を流れる溶湯を冷却しつつ流路部材との相対移動によって撹拌して高融点金属材の溶湯であっても十分に撹拌して固相形態が微細粒状化した半固相状態とすることができる。つまり、簡単な構成で高融点金属材を十分に撹拌して半固相状態と成し得ると共に、流路部材の同一部位が常時高温の溶湯に接することがないために高い耐久性を得ることができるものである。
【0027】
更に、流路部材を冷却する冷却手段を備えて構成されていることにより、短い流路長で効率良く冷却し得、装置全体を小型に構成できると共に冷却制御も可能となる。
【0028】
また、流路部材は円筒状であって下側の内周面が流路とされると共にその中心軸回りに回転可能に設けられ、撹拌駆動手段は流路部材を回転駆動するように構成されていることにより、簡単な構成で高融点金属材の溶湯であっても十分に撹拌して固相形態が微細粒状化した半固相状態とすることができるものである。
【0029】
また、溶湯流動駆動手段は、流路部材が水平から、垂直とならない所定角度で傾斜されて構成されていることにより、装置全体を簡単な構成とすることができるものである。
【0030】
また、溶湯流動駆動手段は、円筒状の流路部材の内周面に送り凸条が螺旋状に形成され、撹拌駆動手段による流路部材の回転駆動によって送り凸状が溶湯を移動駆動するように構成されていることにより、溶湯流動駆動手段と撹拌駆動手段とを兼用することができるために合理的に構成できるものである。
【0031】
更に、上記送り凸状は、上記流路部材の排出側に向けて高さが漸増するように構成されていることにより、流路部材の下流に行くに従って冷却凝固化して粘度の高くなった溶湯を確実に移動駆動することができる。
【0032】
また、上記円筒状の流路部材は、排出側に向けて径が漸増するテーパー状に構成されていることにより、流路部材の下流に行くに従って周速が漸次速くなるため、冷却凝固化して粘度の高くなった溶湯に対して大きな撹拌作用を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高融点金属材の半凝固化装置の一参考例の概念図である。
【図2】 半凝固化装置による半凝固化作用を概念的に示す図であって(A)は縦断面図,(B)はその横断面図である。
【図3】 流路が円筒状流路の構成」例の断面図である。
【図4】 円筒状流路の内部に撹拌円筒が配設された構成例の断面図である。
【図5】 円筒状流路がテーパー状の構成例の断面図である。
【図6】 テーパー状の円筒状流路の内部に撹拌円筒が挿置された構成例の断面図である。
【図7】 テーパー状の円筒状流路の内部にテーパー状の撹拌円筒が挿置された構成例の断面図である。
【図8】 テーパー状の円筒状流路の内部にテーパー状の撹拌円筒が挿置された構成例の断面図である。
【符号の説明】
1 溶湯
10 半凝固化装置
11 円筒状流路(流路部材)
11A 撹拌突起
11B 送り凸状(溶湯流動駆動手段)
11C 流路空間
13 外周ギア(撹拌駆動手段)
15 回転駆動モーター(撹拌駆動手段)
15A ピニオンギア(撹拌駆動手段)
19 冷却給水管(冷却手段)
20 撹拌円筒(撹拌部材)
21 冷却給水パイプ(冷却手段)
IN 供給側
OUT 排出側

Claims (4)

  1. 所定長さの流路部材と、
    前記流路部材の供給側に供給された溶湯を排出側に向けて流動移動させる溶湯流動駆動手段と、
    前記流路部材をその供給側から排出側に至る流路方向と交差する方向に移動駆動する撹拌駆動手段と、を備え、
    上記流路部材は、円筒状に形成され、
    上記溶湯流動駆動手段は、前記円筒状の流路部材の内周面に送り凸条が螺旋状に形成されるとともに、上記流路部材の排出側に向けて高さが漸増するように構成され、
    前記撹拌駆動手段による前記流路部材の回転駆動によって前記送り凸状が溶湯を移動駆動するように構成され、
    前記流路部材の供給側に溶湯を供給して前記溶湯流動駆動手段によって排出側に向けて移動駆動しつつ前記流路部材を前記撹拌駆動手段によって移動駆動して半凝固化するように構成されていることを特徴とする金属材の半凝固化装置。
  2. 上記円筒状の流路部材は、排出側に向けて径が漸増するテーパー状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属材の半凝固化装置。
  3. 上記流路部材を冷却する冷却手段を備えて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属材の半凝固化装置。
  4. 上記溶湯流動駆動手段は、上記流路部材が水平から、垂直とならない所定角度に傾斜されて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属材の半凝固化装置。
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