JP3917296B2 - 残留塩素計の洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、残留塩素計に関し、詳しくは残留塩素計の洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プールや浴槽内の水等の液体について殺菌処理を行う業務用あるいは家庭用の液体殺菌装置には、液体の殺菌状態、いわゆる液体の残留塩素濃度の状態を検知するために、残留塩素計が設けられている。
【0003】
従来、残留塩素計は、残留塩素濃度を測定する手段として一対の電極を有しており、測定対象である液体中にこの一対の電極を浸漬させた際の電極間の電位差に基づいて、残留塩素濃度を測定している。このとき、電極間には、残留塩素濃度に比例した還元電流が発生している。
【0004】
上記従来技術に係る残留塩素計を継続的に使用すると、液体中のカルシウム・鉄分等の汚れがそれぞれの電極に付着して、電極が汚染される場合がある。このように電極が汚染されると、残留塩素計を用いて残留塩素濃度を正確に測定することが困難となるので、正確な測定を実現するためには電極の洗浄が必要不可欠となる。
【0005】
電極の洗浄方法としては、液体殺菌装置を停止させた状態でユーザあるいはメンテナンス員が手作業で電極を直接洗浄する方法や、液体殺菌装置を特に停止させることなく、電極自身を回転させて電極を洗浄する方法等がある。また、他の洗浄方法としては、一対の電極のそれぞれの極性を定期的に反転させる方法がある。
【0006】
それぞれの電極においては、正極側にはマイナスイオンを有する汚れが付着し、負極側にはプラスイオンを有する汚れが付着している。したがって、一対の電極のそれぞれの極性を定期的に反転させることによって電極の洗浄を行う方法(以下「電気洗浄方法」ともいう。)によれば、正極が負極となったときに、正極側からマイナスイオンを有する汚れが解離し、負極が正極となったときに、負極側からプラスイオンを有する汚れが解離する。
【0007】
上記電気洗浄方法によって電極を洗浄する場合には、液体殺菌装置を停止させることなく、また、通常の残留塩素濃度の測定を行いながら、電極の洗浄を行うことが可能であるため、電極の洗浄が容易であり、効率のよい電極洗浄および残留塩素の測定を実現することができる。また、従来技術に係る電気洗浄手段においては、略1秒毎に各電極の極性の反転を行っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術に係る残留塩素計の洗浄方法(電気洗浄方法)においては、短い間隔(略1秒間隔)で各電極の極性の反転を行っていたので、残留塩素濃度の測定が不安定となり、特に低濃度の測定を正確に行うことができないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、低い濃度の測定を正確に行うことが可能であり、電極を効果的に洗浄することが可能である残留塩素計の洗浄方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極の極性を反転させる電極反転処理工程13を備えた残留塩素計の洗浄方法において、前記電極反転処理工程13の後に、残留塩素濃度の測定時に印可される電圧を前記電極に所定時間印可する後処理工程14が行われることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る残留塩素計の洗浄方法によれば、前記電極反転処理工程13を行った後に、前記電極の電流値が安定するまで、所定の前記後処理工程14を行う時間を設けており、従来のように短い間隔(略1秒間隔)での電極極性の反転は行わない。したがって、前記電極反転処理工程13により前記電極の洗浄を適当に行った後であって、前記後処理工程14後の前記電極の電流値が安定した後に、残留塩素濃度の測定を開始するので、前記電極を効果的に洗浄し、残留塩素濃度が低い液体の測定であっても正確に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る残留塩素計の洗浄方法においては、前記後処理工程14が、1分以上行われることが好ましい。これは、前記後処理工程14において、前記電極の電流値が安定するためには、少なくとも1分程度の時間が必要だからである。
【0013】
さらに、本発明に係る残留塩素計の洗浄方法においては、前記電極反転処理工程13の際に、残留塩素濃度の測定時に前記電極に印可される電圧よりも高い電圧が、前記電極に印可されることが好ましい。
【0014】
この好ましい例によれば、残留塩素濃度を測定するときに一対の電極に印可されていた電圧よりも高い電圧が、前記電極反転処理工程13を行う際の一対の電極に印可されるので、従来のように測定時と電極反転処理工程時とにおいて同電圧を印可していた場合と比較すると、電極に付着したカルシウム・鉄分等の汚れを効果的に解離させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法のフローチャートを示したものである。以下、残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極に対して、本実施形態に係る洗浄方法を適用する場合の各工程について、図1に基づいて説明する。
【0017】
まず、ステップ11においては、一対の電極を用いて、残留塩素濃度の測定が行われている。
残留塩素計は、例えばプールや浴槽等の水中の残留塩素濃度を測定するために用いられる。そして、通常、その残留塩素濃度の測定値に応じて、塩素成分を含有した水溶液が適当な分量だけプール等内に供給され、プール等内が適切な状態に殺菌される。
すなわち、このステップ11においては、プール等内の殺菌処理を行う際の一工程である残留塩素濃度測定工程が行われている。
【0018】
次に、ステップ12においては、電極の洗浄を行うか否かの判断が行われる。
ここで、電極の洗浄が必要であると判断された場合(ステップ12において「Yes」と判断された場合)には、次にステップ13の処理が行われ、電極の洗浄が必要ではないと判断された場合(ステップ12において「No」と判断された場合)には、次にステップ11の処理が行われる。
電極の洗浄を行うか否かの判断は、本実施形態においては、所定の時間に達しているか否かによって行われる。すなわち、本実施形態においては、あらかじめ、洗浄を行う時間あるいは洗浄を行う間隔が定められており、その時間あるいは洗浄間隔に従って、電極の洗浄を行うか否かの判断が行われる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、電極の汚染状態を何らかの手段を用いて検知し、その汚染状態に基づいて、電極の洗浄を実施するか否かの判断を行うように構成してもよい。
【0019】
次に、ステップ13においては、残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極の極性を反転させる(以下、この工程を「電極反転処理工程」という。)。
この電極反転処理工程においては、電極の極性を反転させるとともに、一対の電極間に、液体の残留塩素濃度を測定する際に印可されていた電圧よりも高い電圧が、定められた時間だけ印可される。
具体的には、残留塩素濃度を測定する場合には、一対の電極間に900mVの電圧が印可され、電極反転処理工程を行う場合には、一対の電極のそれぞれの極性を測定時とは異なる極性に反転させるとともに、一対の電極間に1200mVの電圧が印可される。また、この電極反転処理工程は略10秒間行われる。
【0020】
次に、ステップ14においては、測定を行う際の電圧(900mV)が一対の電極間に印可され、電極間の電流値が安定するまで(元の濃度を示す電流値に戻るまで)、残留塩素濃度の測定を行わない状態が維持される(以下、この工程を「後処理工程」という。)。
このステップ14の後処理工程において、電極間の電流値が安定するまでには、少なくとも1分程度の時間が必要である。
本実施形態においては、この後処理工程に要する時間をあらかじめ3分程度に設定し、その時間が経過した段階で後処理工程を終了する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、電極間の電流値を検知して、電流値が安定したことを確認した後に後処理工程を終了してもよい。
なお、ここでは「残留塩素濃度の測定を行わない状態」と記載しているが、実際には、この後処理工程においては(また、電極反転処理工程においても)、残留塩素計は最新の濃度を出力する。しかしながら、電極反転処理工程および後処理工程における濃度の測定値は、不安定であり、また正確ではない(特に低濃度の測定は正確ではない)ので、本実施形態においては、液体殺菌処理装置を制御するためには使用されない。したがって、敢えて「残留塩素濃度の測定を行わない状態」と表現した。そして、本実施形態に係る洗浄方法が実施される残留塩素計を備えた液体殺菌装置は、電極反転処理工程時および後処理工程時において、電極反転処理工程を開始する前の状態で制御される。
【0021】
次に、ステップ15においては、残留塩素濃度の測定を継続するか否かの判断が行われる。
ここで、残留塩素濃度の測定を継続して行う場合(ステップ15において「Yes」と判断された場合)には、次にステップ11の処理が行われ、残留塩素濃度の測定を行う必要がない場合(ステップ15において「No」と判断された場合)には、残留塩素計における残留塩素濃度の測定処理が終了される。
本実施形態においては、ステップ14の後処理工程が終了した後に、残留塩素計に何らかの指示が与えられない限り、残留塩素濃度の測定を継続して行うように構成されている。すなわち、このステップ15において、特に指示を与えない場合には、ステップ11の処理に進むように構成されている。
【0022】
図2は、残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極に対して、本実施形態に係る洗浄方法を行った場合の残留塩素濃度曲線図を示したものである。この図2において、横軸は時間を示し、縦軸は残留塩素濃度に比例した電流値を示している。
【0023】
この図2に示した残留塩素濃度曲線図は、図1の各工程を一対の電極に施した場合において、電極間に生ずる電流値の変化を経時的に示したものである。以下、図2に基づいて、本実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法を説明する。
【0024】
まず、電極の洗浄を開始する洗浄処理開始時(電極反転処理開始時)t1に達した時に、それぞれの電極の極性を反転させる。この際、先述したように、洗浄処理開始時t1前の残留塩素濃度の測定時には、電極間に900mVの電圧が印可され、洗浄処理開始時t1以降(で且つ電極反転処理終了時t2まで)は、電極間に1200mVの電圧が印可される。
【0025】
次に、電極反転処理終了時(後処理開始時)t2に達した時に、それぞれの電極の極性をさらに反転させて、各電極の極性を残留塩素濃度測定時の極性に戻す。この際、電極間に印可する電圧についても900mVに戻す。
【0026】
上記電極反転処理開始時t1から電極反転処理終了時t2までが、図1のステップ13において説明した電極反転処理工程に相当する。
【0027】
次に、後処理開始時t2から後処理終了時(洗浄処理終了時)t3までの略3分間、電極間の電流値が安定するまで、残留塩素濃度の測定を行わない状態(上記ステップ14の説明を参照)が維持される。この後処理開始時t2から後処理終了時t3までが、図1のステップ14で説明した後処理工程に相当する。
【0028】
そして、後処理終了時t3以降において、通常の残留塩素計の測定が開始され、次の電極の洗浄処理工程が開始されるまでの間、その測定値に基づいて液体殺菌処理装置等が制御される。
【0029】
本実施形態においては、電極反転処理工程と後処理工程とを合わせて洗浄処理工程と呼び、反転処理に要する時間(電極反転処理開始時t1から電極反転処理終了時t2まで)と、後処理工程に要する時間(後処理開始時t2から後処理終了時t3まで)とを合わせた時間が、洗浄処理工程に要する時間(洗浄処理開始時t1から洗浄処理終了時t3まで)となる。
【0030】
また、本実施形態においては、洗浄処理終了時から次の洗浄処理開始時までの時間を洗浄周期と呼ぶこととする。具体的には、図2において、前回の洗浄処理終了時t03から洗浄処理開始時t1までの時間が洗浄周期である。
【0031】
以上の図1および図2を用いて説明した本実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法においては、電極の洗浄を行う際の電極反転処理工程を行った後に、所定の後処理工程を行う時間を設けており、従来のように短い間隔(略1秒間隔)での電極極性の反転は行わない。したがって、本実施形態によれば、後処理工程後の電極の電流値が安定した後に、残留塩素濃度の測定を開始するので、残留塩素濃度が低い液体の測定であっても正確に行うことができる。
【0032】
また、本実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法においては、残留塩素濃度を測定するときに一対の電極に印可されていた電圧よりも高い電圧が、電極反転処理工程を行う際の一対の電極に印可される。したがって、従来のように測定時と電極反転処理工程時とにおいて同電圧を印可していた場合と比較すると、本実施形態における電極反転処理工程の場合の方が、電極に付着したカルシウム・鉄分等の汚れを効果的に解離させることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、残留塩素濃度の測定時には、一対の電極間に900mVの電圧を印可し、ステップ13の電極反転処理工程には、電極の極性反転時の一対の電極間に1200mVの電圧を印可する場合について説明したが、本発明はこれらの電圧値に限定されるものではなく、洗浄周期等の他の条件に応じて調整可能である。したがって、一対の電極間に印可される電圧値は上記値(900mV、1200mV)に限定されず、例えば、残留塩素濃度の測定時に電極間に印可される電圧値と、電極反転処理工程時に電極間に印可される電圧値とを略等しい値に設定してもよい。また、上記値(900mV、1200mV)と異なる値であって、残留塩素濃度の測定時に印可される電圧値よりも高い値に、電極反転処理工程時に印可される電圧値を設定してもよい。
また、本実施形態のステップ13の電極反転処理工程においては、電極反転時間を10秒間行った場合について説明したが、本発明はこの時間に限定されるものではなく、洗浄周期等の他の条件に応じて、時間の調整も可能である。
【0034】
また、本実施形態においては電極反転処理工程等を行う、いわゆる電気洗浄のみを用いて電極の洗浄を行う場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、何らかの機械的な洗浄方法と本実施形態に係る電気洗浄方法とを組み合わせて、電極の洗浄を行うような構成としてもよい。このような構成とすれば、電極をより効果的に洗浄することが可能となる。また、組み合わせる他の洗浄方法に応じて、電気洗浄の洗浄周期等の設定を適宜変更することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態においては、洗浄周期の間隔について特に示さなかったが、本発明は、洗浄周期を所定の間隔に限定するものではない。したがって、例えば、常に一定の間隔に洗浄周期を設定してもよく、また、電極に対してカルシウム・鉄分等の汚れが付着しやすい時間帯等を考慮した上で、洗浄周期を適宜設定してもよい。具体的には、2時間程度の間隔で洗浄周期を設定する場合があげられる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極の極性を反転させる電極反転処理工程を備えた残留塩素計の洗浄方法において、電極反転処理工程の後に、残留塩素濃度の測定時に印可される電圧を前記電極に所定時間印可する後処理工程が行われることを特徴としている。
【0037】
したがって、本発明によれば、電極反転処理工程により電極の洗浄を適当に行った後であって、後処理工程後の電極の電流値が安定した後に、残留塩素濃度の測定を開始するので、電極を効果的に洗浄し、残留塩素濃度が低い液体の測定であっても正確に行うことが可能である残留塩素計の洗浄方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法のフローチャート
【図2】本発明の実施形態に係る残留塩素計の洗浄方法における残留塩素濃度曲線図
【符号の説明】
13 電極反転処理工程
14 後処理工程
t1 電極反転処理開始時(洗浄処理開始時)
t2 電極反転処理終了時(後処理開始時)
t3 後処理終了時(洗浄処理終了時)
t03 前回の後処理終了時(洗浄処理終了時)
Claims (3)
- 残留塩素計の測定手段を構成している一対の電極の極性を反転させる電極反転処理工程(13)を備えた残留塩素計の洗浄方法において、
前記電極反転処理工程(13)の後に、残留塩素濃度の測定時に印可される電圧を前記電極に所定時間印可する後処理工程(14)が行われることを特徴とする残留塩素計の洗浄方法。 - 前記後処理工程(14)が、1分以上行われる請求項1に記載の残留塩素計の洗浄方法。
- 前記電極反転処理工程(13)の際に、残留塩素濃度の測定時に前記電極に印可される電圧よりも高い電圧が、前記電極に印可される請求項1または2に記載の残留塩素計の洗浄方法。
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