JP3916900B2 - 表示装置および表示基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置や有機EL表示装置などとして好適に実施され、アクティブ素子を画素毎に配置する表示基板、または前記アクティブ素子と電気光学素子とを画素毎に配置する表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記液晶表示装置では、現在、一部携帯電話等の用途を除き、TFT(Thin Film Transistor)を用いたアクティブ・マトリクス駆動が主流である。また、最近注目されている有機EL表示装置も、現在は単純マトリクス駆動が主流であるけれども、より低消費電力化・大画面化させるために、将来は低温ポリシリコンTFT駆動が主流になると予想されている。
【0003】
ところが、このようなTFT駆動の表示装置においては、TFTの欠陥発生率に比べ、表示基板に配置すべきTFTの数が多いとう問題がある。たとえば、XGA(eXtended Graphics Array)クラスでは、画素数が、
1024×RGB×768≒236万個
あるので、1画素当り1個のTFTを配置しても、必要なTFTの数は、上記236万個にも及ぶ。なお、本件明細書では、カラー表示の場合、RGBの各色毎がそれぞれ画素を構成し、それら3つが集まって1つの絵素とする。
【0004】
したがって、これだけの数のTFTを対角10”以上のパネル上に散らばらせ、なおかつ1つの欠陥もなく製造することは極めて困難である。そこで、TFT駆動の表示装置においては、幾つかのTFTに欠陥があっても、表示品位をそれほど落とさないような工夫が検討されている。
【0005】
図8に、そのような工夫が施された表示基板の一例を示す。この例は、特開平11−305260号公報に示されたものであり、欠陥画素を黒点化するものである。図8は、1つのTFT付近を示しており、1画素は、走査線gと、その走査線gを覆う図示しないゲート絶縁膜と、その上に形成されたTFT(図8のDGSの部分)と、そのTFTのソース端子Sとコンタクトホールhsを通して接続されるソース配線sと、そのTFTのドレイン端子Dとコンタクトホールhdを通して接続される画素電極aとを備えて構成される。そして、この表示基板においては、走査電極gから、ゲート端子Gの他にリペア端子Rが取り出され、そのリペア端子Rの上にレーザ照射によって溶解するコンタクトホールhrが設けられている。
【0006】
上述のような構成において、TFTに欠陥を持つ画素では、そのリペア領域にレーザを照射してコンタクトホールhrを融解させ、走査線gと画素電極aとを短絡させることで、欠陥画素を黒点に変えて、表示品位がそれほど落ちないように工夫されている。
【0007】
また、図9に示すように、画素に複数のTFTを配置するようにした表示基板も提案されている。この例は、特開平7−168204号公報に示されたものである。この例では、各画素電極p1〜p4毎に複数(図9の例では2つ)のアクティブ素子tr1,tr2が設けられており、たとえば画素電極p1の画素において、第1のアクティブ素子tr1のソース端子はソース電極s1に接続され、ドレイン端子は画素電極p1に接続され、ゲート端子はゲート電極g1に接続される。また、第2のアクティブ素子tr2のソース端子はソース電極s1に接続され、ドレイン端子は画素電極p1に接続され、ゲート端子はゲート電極g2に接続される。
【0008】
このように構成することで、第1のアクティブ素子tr1がオープン状態でも、第2のアクティブ素子tr2を通して画素電極p1へ電圧を印加できるので、表示品位が殆ど落ちないように工夫されている。
【0009】
なお、上記2つの例において、TFTのゲート端子と他の端子との間の短絡は考慮されていない。これは、TFTのゲート端子の上にはゲート絶縁膜が一様に形成されているので、TFTのゲート端子と他のドレイン・ソース端子との間の短絡は殆ど存在しないためである。したがって、TFTの欠陥を考える場合、問題となるのは、ソース端子、ゲート端子、ドレイン端子のそれぞれの電極への接触不良である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
先ず、図8の特開平11−305260号に示されたような欠陥画素を検出し、ゲート電極gへ短絡させる手法では、その欠陥画素を検出するための検査装置が必要となる。また、リペア作業を行うためには、レーザ照射装置が必要である。さらに、そのような検査やリペア作業を行うための時間も必要となる。このため、TFT基板のコストが上昇するという問題がある。また、画素に配置するTFTの数が多くなれば、それだけ画素欠陥が発生する確率が大きくなり、欠陥画素を黒点化しただけでは、表示品位が落ちすぎてしまうという問題もある。
【0011】
次に、図9の特開平7−168204号に示されたような2つのアクティブ素子tr1,tr2を用いる手法では、画素毎にスタティックメモリを配置するような複雑な回路構成を用いる場合には効果がないという問題がある。これは、スタティックメモリを構成する複数のTFTのうち、1個のTFTに接触不良があっても、他のTFTは正常動作しているので、欠陥のあるスタテックメモリと画素電極との間が完全なオープン状態とはならないからである。そこで、このような複雑な回路を用いる場合、2つの系統を用いても、一方の系統の回路動作を検査し、2つの系統から一方の系統を選ぶ必要がある。このため、このような手法でも、回路動作を検査する装置や、回路系統を切換える装置および作業のための人手が必要となるので、TFT基板のコストが上昇するという問題がある。
【0012】
さらにまた、何れの従来技術も、表示パネル(表示基板)の出荷・検査時の対応であるので、出荷後の輸送や経年劣化などで生じた画素欠陥には対応することができないという問題もある。
【0013】
本発明の目的は、低コストに、また複雑な回路構成においても、画素欠陥に常時対応することができる表示装置および表示基板を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の表示装置は、各画素のそれぞれの電気光学素子に個別的に対応してアクティブ素子が設けられ、該アクティブ素子の出力で前記電気光学素子を制御することで表示を実現するようにした表示装置において、各画素には、前記アクティブ素子の出力が入力され、該アクティブ素子を含む電気回路の動作を検証する動作検証手段と、前記動作検証手段の出力に応答し、前記電気光学素子の制御を対応するアクティブ素子の出力で行うか否かを切換える切換手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、液晶表示装置や有機EL表示装置などとして実現され、TFTなどから成るアクティブ素子で電気光学素子を制御することで表示を実現するようにした表示装置において、表示装置側に動作検証手段および切換手段を設け、アクティブ素子を含む電気回路の動作が正常である場合はその電気光学素子の制御を対応するアクティブ素子の出力で行い、異常である場合は隣接する電気光学素子の制御を代用するなど、対応するアクティブ素子の出力で行わないようにする。
【0016】
したがって、そのような動作検証手段および切換手段を表示装置に予め組込むことで、表示品位をそれほど落とさずに、検査やリペア作業を行うための装置や時間を無くすことができ、コストを低減することができるとともに、複雑な回路構成であっても、また出荷後に生じた欠陥にも対応することができる。
【0017】
また、本発明の表示装置では、前記電気光学素子はマトリクス状に配列され、前記アクティブ素子を第1のアクティブ素子とし、該第1のアクティブ素子と並列に、隣接する電気光学素子のための第1のアクティブ素子と共通に駆動される第2のアクティブ素子を設け、前記切換手段は、前記動作検証手段で第1のアクティブ素子を含む電気回路の異常が検出されると、電気光学素子の制御を、該第1のアクティブ素子から第2のアクティブ素子へ切換えることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、1つの電気光学素子に対して2つのアクティブ素子を設け、第1のアクティブ素子を含む電気回路の動作が異常と判断されたときには、第2のアクティブ素子によって隣接する電気光学素子と同様の制御が行われる。
【0019】
したがって、前記第1のアクティブ素子がメモリ回路等の複雑な電気回路と接続され、該第1のアクティブ素子に関連する電気回路と同様な回路を前記第2のアクティブ素子に関連して配置するスペースを確保できない場合にも、該第2のアクティブ素子を用いた制御を行うことができる。
【0020】
さらにまた、本発明の表示装置では、前記動作検証手段および切換手段の主要部分は、前記アクティブ素子とともにTFTから成ることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、動作検証手段および切換手段をアクティブ素子と同じプロセス行程で作成することができ、それらを設けることによる新たなコスト上昇を無くすことができる。
【0022】
また、本発明の手段は、前記電気光学素子を形成することで、上記の表示装置を実現する基板においても用いることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1および図2に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0024】
図1は、本発明の実施の一形態の液晶表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。画素Aijは、表示パネル上にマトリクス状に配列された多くの画素の任意のi行j列目の画素を表し、同様に、以下、参照符号に付して示す添字i,jは、その参照符号の構成要素がそのi行j列目の構成であることを表し、総称するときには添字を省略し、参照符号のみで示す。画素Aijは、相互に平行な走査線Gi,Gi+1および前記走査線Gに垂直な信号線Sj,Sj+1によって、前記マトリクス状に区画された領域に配置される。本実施の形態では、前記走査線Giと平行に、ハイレベルVAAの電源線L1iと、ローレベルVBBの電源線L2iと、セット信号SETのための制御線L3iと、リセット信号RESのための制御線L4iとが配設されている。
【0025】
各画素Aijは、電気光学素子としての液晶素子LCと、前記走査線Gi,Gi+1によってそれぞれ選択されてその液晶素子LCに表示データを取込むための一対のアクティブ素子TR1,TR2と、前記アクティブ素子TR1の出力を入力INとして、その動作を検証する動作検証回路1と、前記動作検証回路1からの出力OUTに応答して、前記液晶素子LCに表示データを取込むアクティブ素子を第1のアクティブ素子TR1から第2のアクティブ素子TR2へ切換える切換回路2とを備えて構成されている。
【0026】
前記液晶素子LCには、液晶容量、画素電極の容量および補助容量などを含み、後述するようにアクティブ素子TR1,TR2によって取込まれた表示データを、次の選択走査まで保持することができる。なお、本実施の形態で用いる液晶素子LCは、通常のTN(Twisted Nematic)液晶等で実現することができる。特に、A1等の反射電極の上に配向膜を形成し、対向電極をITO等の透明電極で形成し、その上に配向膜を形成し、その間にNematic液晶を注入した一般的な反射型液晶表示装置等の構成で実現できるので、ここではその詳しい説明は省略する。
【0027】
第1のアクティブ素子TR1では、そのソース端子が信号線Sjに接続され、ドレイン端子が前記切換回路2を構成する後述するn型TFTTR3のソース端子に接続され、ゲート端子が走査線Giに接続されている。第2のアクティブ素子TR2では、そのソース端子が同様に信号線Sjに接続され、ドレイン端子が前記切換回路2を構成するp型TFTTR4のソース端子に接続され、ゲート端子が次の走査線Gi+1に接続されている。そして、前記TFTTR3,TR4のドレイン端子は共通に液晶素子LCの一方の端子に接続されるとともに動作検証回路1の入力INに接続されており、ゲート端子には前記動作検証回路1の出力OUTが与えられる。液晶素子LCの他方の端子は対向電極となり、基準電圧Vrefが印加される。
【0028】
したがって、出力OUTがハイレベルVCC(=VAA電位)のときには、TFTTR3が選ばれ、走査線Giがハイレベルとなって第1のアクティブ素子TR1が選択されている間に、該第1のアクティブ素子TR1によって信号線Sjから取込まれた表示データが、このTFTTR3を介して液晶素子LCの一方の端子に印加される。これに対して、出力OUTがローレベルGND(=VBB電位)のときにはTFTTR4が選ばれ、次の行のための走査線Gi+1がハイレベルとなって第2のアクティブ素子TR2が選択されている間に、該第2のアクティブ素子TR2によって信号線Sjから取込まれた表示データが、このTFTTR4を介して液晶素子LCの一方の端子に印加される。
【0029】
前記動作検証回路1は、大略的に、前記第1のアクティブ素子TR1が正常であるかまたは異常であるかを判定する論理判定回路3と、前記論理判定回路3の判定結果を履歴を持たせながら保持するメモリ回路4とを備えて構成される。
【0030】
前記論理判定回路3は、p型TFTQ1,Q2と、n型TFTQ3と、コンデンサC1とを備えて構成される。前記切換回路2のTFTTR3,TR4のドレイン端子は共通にこの動作検証回路1の入力INに接続され、該入力INはTFTQ1のゲート端子と、TFTQ2のソース端子とに接続される。これらのTFTQ1,Q2のドレイン端子は、TFTQ3のゲート端子に接続される。そして、TFTQ1のソース端子はセット信号SETの制御線L3iに、TFTQ2のゲート端子はリセット信号RESの制御線L4iに接続される。これらのTFTQ1,Q2のドレイン端子はまた、その電位を安定化させるために、かつ初期化後の電位としてGND電位を得るために、該ドレイン端子と電源線L2との間には、コンデンサC1が挿入されている。このドレイン端子の電位を、以下では参照符VDで表す。
【0031】
前記メモリ回路4は、p型TFTQ4〜Q6と、n型TFTQ7,Q8と、コンデンサC2とを備えて構成される。TFTQ4,Q7およびTFTQ5,Q8は、それぞれインバータ回路となっており、該メモリ回路4は、大略的に、これらの2つのインバータ回路の出力端子と入力端子とを互いに接続したスタティックメモリ構造となっている。そして、TFTQ3からの先の論理判定回路3の出力をこれらのインバータ回路の何れが一方(図1ではTFTQ4,Q7)の入力端子に与えることで、1度でも判定結果がGND電位になれば、そのGND電位を保持できる構成となっている。
【0032】
また、初期化のために、他方(図1ではTFTQ5,Q8)のインバータ回路の入力端子とGND電位の電源線L2iとの間にコンデンサC2が挿入され、初期化動作時に電源線L1iの電位VAAをGND電位からVDD電位に変化させたとき、出力端子であるとともに前記判定結果の入力端子である出力OUTがVDD電位とされる。さらにまた、入力の電位VCCと出力の電位VDDとの電位差を埋めるために(VDD>VCCであるため)、TFTQ6が出力端子側のインバータ回路であるTFTQ5とTFTQ8との間に挿入され、そのゲート端子が前記TFTQ1,Q2のドレイン端子へ接続されている。
【0033】
表1に、上述のように構成される動作検証回路1の真理値表を示す。なお、VBB電位はGND電位に固定である。また、走査線Gi,Gi+1はローレベルの非選択状態とする。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1から明らかなように、電源線L1の電位VAA、セット信号SET、入力INおよびリセット信号RESが総てGND電位に保たれている初期状態▲1▼では、TFTQ1,Q2のドレイン端子の電位VDおよび出力OUTは、共にGND電位となっている。
【0036】
次に、セット信号SET、入力INおよびリセット信号RESをGND電位に保ったまま、電源を投入して電源線L1の電位VAAをVDD電位とした状態▲2▼の時点では、TFTQ5,Q8のゲート端子と電源線L2との間に配置したコンデンサC2の影響によって、TFTQ5のゲート電位はGND電位のままとなり、該TFTQ5がONして、出力OUTの電位は電源線L1の電位のVDDとなる。また、TFTQ1のソース端子へ繋がる電源線L3(セット信号SET)がGND電位のままなので、TFTQ1,Q2のドレイン端子の電位VDはGND電位のままとなる。また、この状態は、セット信号SET、入力INおよびリセット信号RESがGND電位の状態▲8▼でもあるので、TFTQ1,Q2のドレイン端子の電位VDはGND電位で安定し、出力OUTの電位は初期値であるVDD電位で保持される。
【0037】
続いて、セット信号SETをGND電位としたままリセット信号RESをVCC電位としても、前記TFTQ1〜Q3はOFFのままであり、状態▲5▼▲6▼に示されるように、入力INに依らず出力OUTの電位は保持される。そして、この間に入力INの電位を設定し、その電位がGND電位であることを期待するのなら、すなわち入力INに繋がる第1のアクティブ素子TR1およびTFTTR3等の電気回路の出力がGND電位であることがその電気回路の正常動作状態であれば、リセット信号RESをGND電位とする。これによって、TFTQ1はONし、入力INの電位が期待通りGND電位であれば、状態▲8▼に示すように、電位VDはGND電位のままであり、TFTQ3はOFFのままで、出力OUTの電位は保持される。一方、このとき入力INの電位が期待と異なりVCC電位であれば、状態▲7▼に示すように、電位VDもVCC電位となり、TFTQ3がONし、TFTQ6がOFFとなり、出力OUTの電位はGND電位となる。
【0038】
その後、リセット信号RESをVCC電位に戻すと、前記状態▲5▼▲6▼に示されるように、入力INに依らず出力OUTの電位は保持される。続いて、入力INの電位がVCC電位であることを期待するなら、セット信号SETをVCC電位とする。これによって、状態▲3▼に示すように、入力INの電位が期待通りVCC電位であれば、TFTQ1はOFFのままで、電位VDはGND電位のままであり、TFTQ3はOFFのままで、出力OUTの電位は保持される。一方、このとき、入力INの電位が期待と異なりGND電位であれば、TFTQ1はONし、状態▲4▼に示すように、電位VDは電位VCCとなり、TFTQ3がONし、TFTQ6がOFFとなり、出力OUTはGND電位となる。
【0039】
図2は、上記の検証動作を時系列的に示すタイミングチャートである。以上のように、動作検証回路1は、時刻t1で初期値となった後から、時刻t2以前で示すように、出力OUTの電位が一度もGND電位とならなければ、初期値のVDD電位のままとなるように構成されている。また、前記時刻t2以降で示すように、出力OUTの電位が一度でもGND電位になれば、表1の状態▲3▼〜▲8▼の動作を続けている限り、出力OUTはGND電位のままとなるように構成されている。
【0040】
すなわち、セット信号SETおよびリセット信号RESを制御することで、入力INに一度でも予定外の入力があれば、出力OUTはGND電位となる。また、入力INが総て予定通りであれば、出力OUTは電位VDDとなる。こうして、アクティブ素子TR1,TR2およびそれに関連するTFTTR3,TR4等の異常の有無を検出することができる。また、その検出動作が終われば、セット信号SETの制御線L3を電源線L2のGND電位とし、リセット信号RESの制御線L4を電源線L1のVCC電位とすることで、その検出結果を画素毎に保持することができるようになっている。
【0041】
ただし、電位VDは、一度GND電位からVCC電位へ変化すると、TFTQ1,Q2の閾値の関係で、その閾値分の電位はコンデンサC1から抜け難いので、初期化動作を行わない限り、GND電位には戻り難い。
【0042】
なお、或るi行目の画素に対して、走査線GiとGi+1とを適宜選択状態とすることで、アクティブ素子TR1とTFTTR3との構成およびアクティブ素子TR2とTFTTR4との構成の何れについても、動作検証回路1は、異常の有無を検出することができる。しかしながら、簡単のために、走査線Gi側のアクティブ素子TR1およびTFTTR3を主系として、該動作検証回路1はそれらのアクティブ素子TR1およびTFTTR3を介して信号線Sjの電位を入力INとして取込み、その入力が期待通りである場合、すなわちこの主系の回路が正常に動作している場合には、前述のように出力OUTをVDD電位として、前述の信号線Sjから与えられる表示データをこれらのアクティブ素子TR1およびTFTTR3を介して液晶素子LCに与えるようにし、前記入力が期待通りでない場合、すなわち前記主系の回路が正常に動作していない場合には、前述のように出力OUTをGND電位として、信号線Sjから与えられる表示データを予備系のアクティブ素子TR2およびTFTTR4を介して液晶素子LCに与えるようにようにする。
【0043】
この動作について詳述する。先ず、電源線L2iは常にGND電位とする。そして、総てのコンデンサC1,C2および液晶素子LCの電荷が0となった初期の状態から、走査線Gi,Gi+1を非選択状態とし、液晶素子LCの対向電極の電位VrefをGND電位のままとし、電源線L1iをGND電位からVDD電位へ変化させる。このとき、動作検証回路1の入力INは、液晶素子LCの電荷が0なので、GND電位のままである。したがって、上記初期化動作は表1の状態▲1▼から状態▲2▼への遷移となり、動作検証回路1の出力OUTはVDD電位となる。
【0044】
次に、制御線L4iをVCC電位とし、出力OUTの電位を保持状態とし、その後走査線Giを選択状態とし、信号線Sjから電位VCCを与える。その後、走査線Giを非選択状態とし、制御線L3iをVCC電位とする。このとき、もし主系のアクティブ素子TR1やTFTTR3に接触不良があれば、入力INはGND電位のままとなるので、表1の状態▲4▼となり、出力OUTはGND電位となる。また、これらのアクティブ素子TR1およびTFTTR3が正常であれば、図2で示すように入力INはVCC電位となり、表1の状態▲3▼となり、出力OUTの電位はVDDのまま維持される。
【0045】
続いて、制御線L3iをGND電位とし、出力OUTの電位を保持状態とし、その後、走査線Giを選択状態とし、信号線SjからGND電位を与える。その後、走査線Giを非選択状態とし、制御線L4iをGND電位とする。このとき、もしアクティブ素子TR1およびTFTTR3に動作不良があれば、入力INはVCC電位のままになるので、表1の状態▲7▼となり、出力OUTはGND電位となる。一方、アクティブ素子TR1およびTFTTR3が正常動作できれば、入力INはGND電位となり、表1の状態▲8▼となり、出力OUTの電位は先程の状態(VDDまたはGND)を維持する。
【0046】
その後、制御線L4iをVCC電位とし、電源線L2iの電位をGND電位から−VCC電位へ引き下げ、その状態を保持させる。その結果、アクティブ素子TR1およびTFTTR3が正常動作していれば、出力OUTはVDD電位となり、該アクティブ素子TR1およびTFTTR3の主系の出力電圧が液晶素子LCへ印加される。一方、前記アクティブ素子TR1およびTFTTR3に開放欠陥があれば、出力OUTは−VCC電位となり、アクティブ素子TR2およびTFTTR4の予備系の出力電圧が液晶素子LCへ印加される。
【0047】
以下に、1画素当りにTFTを1つだけしか使用しない従来の画素回路と、図1の本発明の画素回路との不良率を計算する。ここで、市販のXGAクラスのアクティブマトリックス駆動液晶表示装置では、画素欠陥が数個程度であることが知られており、一方、画素数は前記236万個である。そこで、欠陥発生確率を、かなり多く見積もって、1万個に1個とする。したがって、TFTを1つだけ使用する場合の不良率は1/104 であり、これに対して図1の動作検証回路1には8個のTFTが使用されているので、それら8個のTFTのうちの1個でも不良となる確率は8/104 と見積ることができる。しかしながら、動作検証回路1の8個のTFTのうち、何れか1個が不良であっても、出力OUTはVDD電位かGND(または−VCC)電位の何れかの状態をとる。
【0048】
したがって、図1の画素回路が完全な不良となる確率は、上記不良率に、その電位VDDまたはGND(−VCC)で選ばれた方のTFTの系統(2個のTFTから構成される)が不良である確率2/104 を掛けた16/108 と、主系のアクティブ素子TR1およびTFTTR3に不良があって、かつ予備系のアクティブ素子TR2およびTFTTR4も不良である確率2/104 ×2/104 =4/108 との和の2/107 と考えられる。
【0049】
したがって、前記の1画素当りにTFTを1つだけ使用した場合の不良率1/104 より格段に小さく、本発明の手法を用いれば、画素回路の不良率を大幅に改善可能であることが理解される。そして、不良率を上記の2/1000万個程度とすると、前記XGAクラスの表示パネルで考えると、その画素数が前記236万個であるので、画素欠陥はパネル当たりせいぜい1〜3個程度となり、実質的に画素欠陥の検査をしなくても良いレベルとなる。
【0050】
したがって、歩留まり100%を実現できるので、TFTの動作を検査する装置や、回路系統を切換える装置を用いなくても、TFTの開放欠陥に対応することができ、コストを低減することができる。特に、将来的には、現状のガラスやプラスチックなどの透明な基板に代えて、不透明な基板の上に反射型液晶を形成する場合が考えられ、このような構造ではレーザによるリペア作業を行うことは不可能であり、本発明は特に大きな効果を発揮することができる。
【0051】
また、電源投入時などで定期的に、TFTの異常を検出し、回路の切換えを行うので、出荷後の輸送や経年劣化などにも対応することができる。前記異常の検出に要する期間は、たとえば数十〜μsec程度であり、前記電源投入直後の機器の初期化期間内で、使用者に殆ど意識させずに終了することができる。
【0052】
さらにまた、動作検証回路1は、2つの制御線L3i,L4iと1つの入力INとを備え、これら3つの電圧を用いて、入力された信号がハイ状態であるのが正しいのが、ロー状態であるのが正しいのが、入力された信号を検証する必要がない期間なのかを設定するので、少ない入力で必要な検証動作を行うことができる。
【0053】
なお、前記動作検証回路1は前記アクティブ素子TR1と同様にTFTから成るので、同一のプロセスで作成し、該動作検証回路1を作成することによるコストの上昇はない。また、異常検出時には、走査線Giの走査タイミングではなく、次の走査線Gi+1の走査タイミングの表示データを取込むことになるけれども、表示品位はそれほど低下することはない。
【0054】
ところで、異常検出・回路切換えのために1画素当りのTFTや配線数を2a倍に増やし、それらの追加した構成が2系統の回路を構成し、上記のように両系統に共に画素欠陥が発生した場合にのみ画素が動作しない完全な画素欠陥となるように構成すると、1画素当りの不良率は、
(2a×(1つのTFTおよびその配線当りの不良率))2 となる。
【0055】
一方、従来の1画素当りに1つのTFTを用いる場合の不良率は、
(1つのTFTおよびその配線当りの不良率)
となり、これをbとおくと、
(2ab)2 <b
したがって、
b<1/4a2
であれば本発明を適用することによる意義があり、実際のTFTの不良率bは、前述のように上式よりも充分に小さいものである。また、予備の系統は、2以上であってもよい。
【0056】
さらにまた、本発明を適用することによってTFTや配線の面積が増加し、透過型の液晶表示装置では開口率が問題になるけれども、反射型の液晶表示装置では、これらの回路の上に絶縁膜を設け、反射板を設置するので、前記の面積の増加は問題にはならず、好適である。また、電気光学素子として有機EL素子を用いる場合には、30%程度の開口率があればよいので、前記のTFTや配線の追加は問題にはならず、これにもまた好適である。
【0057】
本発明の実施の他の形態について、図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0058】
図3は、本発明の実施の他の形態の有機EL表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。この表示装置では、電気光学素子として有機EL素子ELを用いている。電気光学素子として前述の液晶素子LCを用いる場合、その液晶素子LCへ電圧を与えるための駆動用TFTには、アモルファスシリコンプロセスを用いることもできる。この場合、表示部の外に配置するソースドライバは、別途に集積回路のプロセスで作成されたICを外付けすることになる。しかしながら、本実施の形態のように有機EL素子ELを用いる場合、該有機EL素子ELへ与える電流量を確保するためには、駆動用TFTの電荷移動度が大きい必要がある。このため、ポリシリコンプロセスを用いることが好ましい。そこで、本実施の形態は、ポリシリコンプロセスで前記駆動用TFTが作成され、そのポリシリコンプロセスとしては、たとえばCGS(Continuous Grain Silicon)TFT製作プロセスを用いることとする。なお、同プロセスの説明は、特開平8−204208号および特開平8−250749号等に詳しく記載されているので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0059】
また、前記有機EL素子ELも、通常の有機EL素子であり、特にガラス基板の上に陰極電極としてAl等を形成し、その上に電子輸送層としてAlq等を形成し、その上に発光層としてα−NPD等を形成し、その上に正孔入層(または陽極バッファ層)としてCuPc等を形成し、その上に陽極としてITO等の透明な電極を形成する逆積層構成で実現することができ、材料等も特別なものではなく、ここではその詳しい説明は省略する。
【0060】
この有機EL表示装置は、前記液晶表示装置に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。この有機EL表示装置は、大略的に、前記動作検証回路1と、切換回路11と、表示データを記憶するメモリ回路12およびコンデンサC3と、書込み/読出し制御回路13と、電圧変換回路14とを備えて構成される。また、さらに前記走査線Giに平行に、選択線Biと、GND電位に固定の電源線L5iとが配設されるとともに、前記信号線Sjに平行に、ハイレベルVCC電位に固定の電源線L6jと、ハイレベルVEE電位に固定の電源線L7jとが配設されている。注目すべきは、この有機EL表示装置は、画素Aijに隣接する図示していない画素Ai−1,Ai+1と接続される配線K1,K1+1を備えていることである。
【0061】
前記切換回路11は、n型TFTTR11,TR12から構成される第1の系統と、p型TFTTR13およびn型TFTTR14から構成される第2の系統とに別れている。そして、第1の系統のn型TFTTR11のゲート端子へこの画素Aijのアクティブ素子TR1からの出力が入力され、第2の系統のn型TFTTR14のゲート端子へ隣接する画素Ai+1jからの前記配線Ki+1が接続されている。また、n型TFTTR12およびp型TFTTR13のゲート端子には、動作検証回路1の出力OUTが共通に入力されている。そして、TFTTR11,TR13のソース端子電圧である有機EL素子ELの端子電圧が、前記動作検証回路1の入力INに与えられている。
【0062】
このように構成することで、動作検証回路1の出力OUTがVDD、すなわちこの画素Aijのアクティブ素子回路が正常であるときには、TFTTR12が導通状態となり、TFTTR11のゲート端子に接続されるこの画素Aljの第1のアクティブ素子TR1やメモリ回路12等からの入力信号によって有機EL素子ELが制御される。また、動作検証回路1の出力がGND、すなわちこの画素Aijのアクティブ素子回路が異常であるときには、TFTTR13が導通状態となり、前記配線Ki+1を介してTFTTR14のゲート端子に与えられる隣接する画素Ai+1jからの入力信号によって有機EL素子ELが制御される。
【0063】
また、前記切換回路11には、前記配線Kiを介して隣接する画素Ai−1jに、この画素Aijでの有機EL素子ELの制御出力を転送するために、ゲート端子に共通に前記動作検証回路1の出力OUTが入力されるn型TFTTR15およびp型TFTTR16が設けられている。
【0064】
なお、この画素Aljのアクティブ素子回路構成は、以下の通りである。TFTTR1は前述と同様に走査線Giの電位によって導通/非導通状態が制御され、このTFTTR1によって取込まれた表示データは、前述の書込み/読出し制御回路13によって電位保持手段であるコンデンサC3とメモリ回路12との何れかに記憶される。前記書込み制御回路13は、前記第1のアクティブ素子TR1のソース端子とコンデンサC3との間に介在され、前記選択線Biの電位によって導通/非導通状態が制御されるp型TFTTR21と、前記第1のアクティブ素子TR1のソース端子とメモリ回路12との間に介在され、前記選択線Biの電位によって導通/非導通状態が制御されるn型TFTTR22と、前記コンデンサC3およびメモリ回路12に前記電源線L6jのハイレベルVCCの電位を電源として与えるn型TFTTR23とを備えて構成されている。したがって、前記選択線Biの電位が、ハイレベルとなるとTFTTR22がメモリ回路12の出力電位を電圧変換回路14へ出力し、ローレベルとなるとTFTTR21がコンデンサC3の出力電位を電圧変換回路14へ出力することになる。
【0065】
前記メモリ回路12は、2つのインバータ回路と、データ書込み用のp型TFTTR31とを備えて構成され、第1のインバータ回路はp型TFTTR32とn型TFTTR33とから構成され、第2のインバータ回路はp型TFTTR34とn型TFTTR35とから構成されている。第1のインバータ回路の出力は直接第2のインバータ回路の入力端子へ接続されるのに対して、第2のインバータ回路の出力は前記書込み用のTFTTR31を通して第1のインバータ回路の入力端子へ帰還される。また、この第1のインバータ回路の入力端子には先のTFTTR22の出力端子が接続され、TFTTR31のゲート端子は走査線Giに接続されている。
【0066】
したがって、走査線Giがハイレベルの選択状態では、TFTTR1からTFTTR22を通して信号線Sjの表示データがメモリ回路12に記憶される。走査線Giがローレベルの非選択状態では、TFTTR31が導通し、該メモリ回路12に記憶されたデータは保持される。そして、TFTTR22が導通状態のとき、該メモリ回路12の出力データが電圧変換回路14へ出力される。このようにTFTTR22,TR31〜TR35は、スタテックメモリ回路を構成する。
【0067】
前記電圧変換回路14は、p型TFTTR41〜TR43と、n型TFTTR44とを備えて構成されている。TFTTR42,TR44のゲート端子へ前記メモリ回路12またはコンデンサC3から読出されたGNDまたはVCC電位のデータが与えられると、TFTTR43,TR44のドレイン端子から、それぞれVDDまたはGND電位が出力される回路構成である。すなわち、入力がGND電位のとき、TFTTR42のドレイン端子には電源用の前記TFTTR23を介して電源電圧VCCが印加されているので、該TFTTR42が導通状態となり、そのTFTTR42に接続されるTFTTR43のゲート電位がVCC電位となり、VCC<VEEであるので該TFTTR43も導通状態となり、そのドレイン端子から電源電圧VDD(=VEE)が出力される。これに対して、入力がVCC電位のとき、TFTTR44のドレイン端子にGND電位が印加されているので、該TFTTR44が導通状態となり、そのドレイン端子からGND電位が出力される。
【0068】
この電圧変換回路14の電源は、p型TFTTR50を通して、VEE電位の電源線L7jから供給され、またこのTFTTR50の出力は、前記電源用のTFTTR23を導通/非導通制御する。そして、動作検証回路1の出力OUTの逆極性の電圧が前記TFTTR50のゲート端子に与えられているので、該出力OUTの電圧がGND電位(画素Aljの第1のアクティブ回路が異常動作)のとき、前記TFTTR50は非導通状態となり、電圧変換回路14への電源供給は絶たれる。また、その結果、これらの電源電位はGND電位となるので、この電源配線にゲート端子が接続されたTFTTR23も非導通状態となり、メモリ回路12への電源供給も断たれる。これによって、異常動作をする画素Aljの第1のアクティブ素子回路への電源供給がほぼカットされるので、その分消費電力を下げる効果を得ることができる。
【0069】
また、この画素Aijから隣接する画素A1−1jへ出力される配線Kiは、前述のように制御出力の転送用であり、前述の1のアクティブ素子回路の動作が正常であるときにはその信号を出力し、異常であるときには次のラインの配線Ki+1からの入力を出力する。このような構成を取ることで、隣接した画素から供給される配線Kiの信号が、第1のアクティブ素子回路が正常動作している画素からの信号となる確率を高くすることができる。
【0070】
ところで、異常があるときに総ての画素Aijで画素Aij+1からの信号を表示するより、1画素または1絵素毎に、表示する信号を、画素Aij−1と画素Aij+1との間で切換える(ように配線する)方が、欠陥が目立ち難いので好ましい。
【0071】
上述のように構成される画素回路の動作は以下の通りである。まず、動作検証回路1を初期化し、出力OUTを電位VDDとした後、走査線Giを選択状態とし、電位保持手段であるコンデンサC3と、記憶手段であるメモリ回路12とに、書込み/読出し制御回路13によって電位VCCとGNDとを交互に入力する。そして、その後走査線Giを非選択状態とし、前記コンデンサC3とメモリ回路12とから、書込み/読出し制御回路13を介してデータを読出したとき、記憶させた電位VCCまたはGNDと一致しているか否かを動作検証回路1が検出することで、この画素の電気回路の動作を確認する。その後、制御線L3iをGND電位、制御線L4iをVCC電位として、その状態を保持する。この間、1回でも間違った電圧が出れば、動作検証回路1の出力OUTの電位がGND電位となるので、切換回路11がこの画素のアクティブ素子回路の信号を切離し、有機EL素子ELの制御には、隣接する画素からの配線Ki+1を介する信号を用いる。
【0072】
このように画素に複雑な電気回路を配置した構成においては、これら電気回路を構成するTFTの1つに開放欠陥があっても、他のTFTが動作しているので、出力OUTには電位VDDまたはGNDが出力されることがある。たとえば、TFTTR44が開放欠陥であるとき、この電気回路の出力は電位VDDに固定される。したがって、このような電気回路を2系統用意した場合でも、一方の系統が正常動作するか否かの検出回路と、その正常動作する系統を選択するための切換回路が必要になる。
【0073】
一方、画素に配置する電気回路に多くのTFTを用いる程、その電気回路に欠陥が発生する確率は高くなる。たとえば、この図3のアクティブ素子回路には、アクティブ素子TR1からTFTTR21〜23,TR31〜35,TR41〜44まで12個のTFTが使用されている。この場合、TFT1個当りの不良率を前述のように1/104 とすると、本発明の手法を用いなければ、不良率は単純に12/104 程度になる。これに対して、本発明の手法を用いれば、8個のTFTTR1〜8から作成される動作検証回路1の不良率8/104 と、その他のTFT回路の不良率20/104 とを掛けた16/107 と、隣接する2つの画素でその他のTFT回路の不良が起こる確率20/104 ×20/104 =40/107 との和56/107 程度と考えられる。
【0074】
したがって、前記本発明の手法を用いない場合の不良率12/104 よりは格段に小さく、本発明の手法を用いることで、画素回路の不良率を改善する効果のあることが理解される。特に、画素に配置するTFTの個数が多くなればなる程、前記画素欠陥の発生確率は大きくなるので、本発明の手法のような見掛け上でも画素欠陥を減らす技術が有効である。これによって、1画素当りに複数のTFTを形成する場合や、より多くの画素を表示基板に配置する場合、すなわち1表示基板当りにより多くのTFTを配置する場合に、より歩留まりを高くすることができる。
【0075】
また、1つの有機EL素子ELに対して2つのアクティブ素子TR11,TR14を設け、アクティブ素子TR11を含む電気回路の動作が異常と判断されたときには、アクティブ素子TR14によって隣接する画素Ai+1jの有機EL素子ELと同様の制御を行うので、メモリ回路12やコンデンサC3等の前記アクティブ素子TR11に関連する電気回路と同様な回路を前記アクティブ素子TR14に関連して配置するスペースを確保できない場合にも、該アクティブ素子TR14を用いた制御を行うことができる。
【0076】
本発明の実施のさらに他の形態について、図4および図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0077】
図4は、本発明の実施のさらに他の形態の有機EL表示装置の表示パネル21のブロック図である。この表示パネル21では、表示領域22には、前述の図3で示す回路構成の画素A11〜Amnが配置される。注目すべきは、この表示パネル21では、画素A内に配置された電気回路だけでなく、画素A外に配置された電気回路の動作検証も行うことである。すなわち、前記動作検証回路1は、メモリ領域23に配置され、それぞれの画素A11〜Amnに対応するメモリセルM11〜Mmn(総称するときには、以下参照符Mで示す)の動作検証も行う。
【0078】
前記表示パネル21の基板上には、シリアル/パラレル変換回路24およびコントローラ25が、前記表示領域22の外にさらに配置されており、外部から入力されたデジタル信号は、そのビットデータ信号がシリアル/パラレル変換回路24に入力され、同期信号がコントローラ25に入力される。前記シリアル/パラレル変換回路24内では、入力されたデータは図示しないシフトレジスタ内を転送され、コントローラ25からの制御信号に応答して、同じく図示しないラッチ回路に蓄えられる。こうして蓄えられたビットデータは、前記コントローラ25からの制御信号によって、1ビット毎にメモリセルMまたは画素Aに転送され、記憶される。
【0079】
図5は、前記画素Aと同様に、マトリクス状に配列されるメモリセルMの任意のi行j列目の構成を示す電気回路図である。メモリ領域23には、前記コントローラ25から選択出力が導出される選択線L1〜Lmと、前記シリアル/パラレル変換回路24内の各ラッチ回路に接続されるとともに、それぞれ前記信号線S1〜Snに接続される信号線D1〜Dnが相互に直交するように配設されており、これらの選択線L1〜Lmおよび信号線D1〜Dnで区画された領域に、各メモリセルMが形成される。前記選択線Liには、平行に、2本のビット選択線P1i,P2iが形成されている。
【0080】
前記各メモリセルMには4つのスタティックメモリF1〜F4が配置される。どのスタティックメモリF1〜F4を選択するのかが前記ビット選択線P1i,P2iによって制御される。すなわち、前述の各スタティックメモリF1〜F4はp型TFTq1,q2およびn型TFTq3,q4から成る2段インバータ構成であり、それぞれの入出力段には、TFTq11,q12;q21,q22;q31,q32;q41,q42が設けられている。TFTq11,q21,q31,q41のゲート端子は前記ビット選択線P1iに接続され、TFTq12,q22,q32,q42のゲート端子は前記ビット選択線P2iに接続され、また各TFTq11,q21,q31,q41とTFTq12,q22,q32,q42とは直列に接続され、TFTq11,q12,q22,q31はn型であり、TFTq21,q32,q41,q42はp型である。したがって、ビット選択線Pi1,Pi2のレベルによって、各スタティックメモリF1〜F4の内の何れか1つが選択されることになる。
【0081】
また、走査線Liによって、どの走査線Liに対応したメモリセルMiを選択するのかが制御される。すなわち、各走査線Liには、n型TFTq0のゲート端子が接続され、このTFTq0のソース端子は前記信号線Djに接続され、ドレイン端子は各スタティックメモリF1〜F4のTFTq12,q22,q32,q42に接続される。したがって、走査線Liおよびビット選択線P1i,P2iを選択し、前記ラッチ回路からデータを出力することで、任意のメモリセルMの任意のスタティックメモリF1〜F4にデータを蓄えることができる。そして、このメモリセルMに蓄えられたデータは、前記走査線Liおよびビット選択線P1i,P2iを選択することで、そのビットのデータが必要となるタイミングで画素Aへ出力される。画素回路構成は前述の図3の構成を用いるので、このメモリセルMから出力されたデータは、信号線Dから信号線Sを介してコンデンサC3に蓄えられる。
【0082】
そこで、本実施の形態では、このメモリセルMijの動作に不具合がないか否かも、対応する画素Aijの動作検証回路1を用いて確認する。すなわち、走査線Liを選択状態とし、メモリセルMijの各スタティックメモリF1〜F4へ、前記ラッチ回路に蓄えられたビットデータとして、電位VCCやGNDを記憶させる。その後、前記ラッチ回路の出力バッファをハイインピーダンス状態とするなどして該ラッチ回路からの出力をなくし、メモリセルMijから、蓄えられたデータを画素AijのコンデンサC3へ転送させる。このとき、画素Aijに配置した動作検証回路1が本来予想していた電位以外を検出すれば、その画素Aijの電気光学素子には、隣接する画素の電気回路の出力が入力されるので、結果的に動作に問題のあるメモリセルMijのデータは表示されないことになる。
【0083】
なお、画素当り複数ビットのデータを表示する場合、下位ビットのデータに誤りがっても気にならない場合もある。この場合、総てのビットの動作を確認する必要はない。
【0084】
このようにして、画素Aの外側に配置した電気回路の動作不具合を検出し、対応する画素Aの表示を切換えることも可能となる。
【0085】
本発明の実施の他の形態について、図6および図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0086】
図6は、本発明の実施の他の形態の有機EL表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。この表示装置は、前述の図3で示す表示装置に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、各画素Aの外側に配置した動作検証回路によって、各画素Aの動作不具合を検出することである。すなわち、動作検証回路が、前述の構成に限定されないことを示す。スイッチング素子TR1、メモリ回路12、コンデンサC3、書込み/読出し制御回路13および電圧変換回路14は、前述の図3の構成と同じである。また、切換回路11aは、前述の切換回路11から、TFTTR15,TR16を除いて簡略化された構成となっており、この画素のアクティブ素子回路が正常であるか否かに拘わらず、電圧変換回路14から有機EL素子ELへの制御信号が、隣接する画素への配線Kiに出力される。
【0087】
前述のように各画素Aの外側に配置した動作検証回路によって動作不具合を検出するために、前記切換回路11aから有機EL素子ELへの出力は、TFTTR61によって取出され、前記信号線Sjを介して画素Aの外側に配置される動作検証回路に与えられ、また判定結果である各画素Aのアクティブ素子で有機EL素子ELを制御するか否かを表す信号は、前記信号線SjからTFTTR62によって取込まれ、メモリ回路31に記憶される。メモリ回路31の出力で前記切換回路11aが制御されるとともに、電源用のTFTTR50が制御される。前記TFTTR61,TR62は、前記走査線Giと平行に配設される制御線L8i,L9iによって、選択/非選択がそれぞれ制御される。
【0088】
図7は、前記のように画素Aの外側に配置される動作検証回路の一構成例を示す図である。この動作検証回路は、排他的論理和回路41と、論理和回路42とDフリップフロップ43とを備えて構成されている。前記各画素Aから得られた信号INと、期待値EXの反転信号/EXとが排他的論理和回路41に入力され、その出力とDフリップフロップ43の出力Qとの論理和を論理和回路42で得て、クロックCLKのタイミングでDフリップフロップ43へ取込むことで、後述するように、前記図1や図3の動作検証回路1と同様に、入力された信号INの動作を検証することができる。図7の動作検証回路の真理値表は、以下の表2のようになる。
【0089】
【表2】
【0090】
すなわち、画素Aijの電気回路の動作を確認するにあたって、最初にリセット信号RESをVCC電位として状態▲1▼とし、その後リセット信号RESをGND電位とする。そして、入力信号INとしてVCC電位を期待するとき、反転信号/EXとしてGND電位を与え、入力信号INが安定するだけの遅延時間をおいてクロックCLKをハイ状態(↑)へ変化させることで、そのときの入力データINが期待通りVCC電位であれば、状態▲4▼に示すようにDフリップフロップ43の出力Qは保持(Q0)される。入力データINが期待と異なり、GND電位であれば、状態▲5▼に示すようにDフリップフロップ43の出力QはGND電位となる。
【0091】
また、入力信号INとしてGND電位を期待するとき、反転信号/EXとしてVCC電位を与え、入力信号INが安定するだけの遅延時間をおいてクロックCLKをハイ状態(↑)へ変化させることで、そのときの入力データINが期待通りGND電位であれば、状態▲3▼に示すようにDフリップフロップ43の出力Qは保持(Q0)される。入力データINが期待と異なり、VCC電位であれば、状態▲2▼に示すようにDフリップフロップ43の出力QはGND電位となる。
【0092】
そして、このDフリップフロップ43の出力Qが1度でもGND電位となると、論理和回路42によってリセット信号RESがVCC電位となるまで、GND電位のままとなる。
【0093】
なお、上記真理値表にはクロックCLKがハイ状態(↑)へ変化する場合以外のケースは、状態▲1▼を除いて記していないけれども、このケースではDフリップフロップ43の出力Qは保持(Q0)されるので、フリップフロップ回路の真理値表の書き方に則って省略している。上記の判定期間が終了すると、クロックCLKはロー状態またはハイ状態に保持され、Dフリップフロップ43の出力Qは保持される。
【0094】
そして、上記の判定期間では、画素Aijの制御線L8iおよび走査線Giを選択状態とすることによって、TFTTR61、スイッチング素子TR1および信号線Sjを介して、図7の動作検証回路の入力信号INとして、その画素Aijの有機EL素子ELに与えられる電位が入力される。また、判定期間期間後は、前記制御線L8iを非選択状態とし、制御線L9iを選択状態とすることで、前記Dフリップフロップ43の出力Qは、信号線Sj、スイッチング素子TR1およびTFTTR62を介して、画素Aijのメモリ回路31へ記憶される。
【0095】
なお、上記判定結果は、その記憶にあたって、途中に挿入される図示しない電圧変換回路によって、VCC電位からVDD電位へ変換される。その後、リセット信号RESがVCC電位とされて、次の画素Ai+1jの画素回路の動作判定に移る。
【0096】
このようにして、画素A外の動作検証回路で動作不具合が検出され、その結果を画素毎に保持することで、前記動作検証回路1を画素A毎に配置した場合と同様な効果を得ることができる。
【0097】
また、このように動作検証回路を表示領域の外側に持たせることで、その動作検証回路自体が正常に動作しているか否かを検出する回路等を持たせることも可能となる。このことにより、多くの画素で1つの動作検証回路を共用するので、信頼性の高い検出を行うことができるとともに、動作検証回路自体の設計も信頼性のあるものとすることができる。これによって、より歩留まりの高い表示パネルを作成することができる。
【0098】
なお、各画素Aの異常検出を順に行うので、その所要期間は、前記図1や図3の構成に比べて長くはなるけれども、たとえば数十msecから、走査線Gの線数が480本で200msec程度であり、この場合でも、前記電源投入直後の機器の初期化期間内で、使用者に殆ど意識させずに終了することができる。
【0099】
本発明の特徴は、完成された表示装置や表示パネルに限らず、表示基板の段階で備えられており、前記表示装置の電気光学素子を形成する前のTFT基板の段階で実施される。
【0100】
【発明の効果】
本発明の表示装置は、以上のように、電気光学素子を駆動するアクティブ素子を含む電気回路の動作を動作検証手段で検証し、その結果に基づいて切換手段が前記電気光学素子の制御を対応するアクティブ素子の出力で行うか否かを切換える。
【0101】
それゆえ、検査やリペア作業を行うための装置や検査時間を無くすことができ、コストを低減することができるとともに、複雑な回路構成であっても、また出荷後に生じた欠陥にも対応することができる。
【0102】
また、本発明の表示装置は、以上のように、アクティブマトリクスの表示装置であって、前記アクティブ素子を第1のアクティブ素子とし、該第1のアクティブ素子を含む電気回路の動作が異常と判断されたときには、第2のアクティブ素子によって隣接する電気光学素子と同様の制御を行う。
【0103】
それゆえ、前記第1のアクティブ素子に関連する電気回路と同様な回路を前記第2のアクティブ素子に関連して配置するスペースを確保できない場合にも、該第2のアクティブ素子を用いた制御を行うことができる。
【0104】
さらにまた、本発明の表示装置は、以上のように、前記動作検証手段および切換手段の主要部分を、前記アクティブ素子とともにTFTによって構成する。
【0105】
それゆえ、動作検証手段および切換手段をアクティブ素子と同じプロセス行程で作成することができ、それらを設けることによる新たなコスト上昇を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の液晶表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。
【図2】図1の表示パネルにおける動作検証回路の動作を時系列的に示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の他の形態の有機EL表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。
【図4】本発明の実施のさらに他の形態の有機EL表示装置の表示パネルのブロック図である。
【図5】前記図4で示す表示パネルにおけるメモリセルの任意の1つの構成を示す電気回路図である。
【図6】本発明の実施の他の形態の有機EL表示装置の表示パネルにおける任意の1画素領域の等価回路図である。
【図7】図6で示す表示パネルにおいて画素の外側に配置される動作検証回路の一構成例を示す図である。
【図8】典型的な従来技術の表示基板を説明するための図である。
【図9】他の従来技術の表示基板を説明するための図である。
【符号の説明】
1 動作検証回路(動作検証手段)
2 切換回路(切換手段)
3 論理判定回路
4,12,31 メモリ回路
11,11a 切換回路
13 書込み/読出し制御回路
14 電圧変換回路
21 表示パネル
22 表示領域
23 メモリ領域
24 シリアル/パラレル変換回路
25 コントローラ
41 排他的論理和回路
42 論理和回路
43 Dフリップフロップ
Aij,A11〜Amn 画素
Bi 選択線
C1〜C3 コンデンサ
D1〜Dn 信号線
EL 有機EL素子
F1〜F4 スタティックメモリ
Gi,Gi+1 走査線
Ki,Ki+1 配線
L1〜Lm 選択線
L1i,L2i,L5i,L6j,L7j 電源線
L3i,L4i,L8i,L9i 制御線
LC 液晶素子
M11〜Mmn メモリセル
P1i,P2i ビット選択線
Q1〜Q8 TFT
q1〜q4 TFT
q11,q12;q21,q22;q31,q32;q41,q42 TFT
Sj,Sj+1,S1〜Sn 信号線
TR1 アクティブ素子(第1のアクティブ素子)
TR2 アクティブ素子(第2のアクティブ素子)
TR3,TR4 TFT
TR11〜TR16,TR21〜TR23,TR31〜TR35 TFT
TR41〜TR44,TR50,TR61,TR62 TFT
Claims (4)
- 各画素のそれぞれの電気光学素子に個別的に対応してアクティブ素子が設けられ、該アクティブ素子の出力で前記電気光学素子を制御することで表示を実現するようにした表示装置において、
各画素には、前記アクティブ素子の出力が入力され、該アクティブ素子を含む電気回路の動作を検証する動作検証手段と、前記動作検証手段の出力に応答し、前記電気光学素子の制御を対応するアクティブ素子の出力で行うか否かを切換える切換手段とを含むことを特徴とする表示装置。 - 前記電気光学素子はマトリクス状に配列され、
前記アクティブ素子を第1のアクティブ素子とし、該第1のアクティブ素子と並列に、隣接する電気光学素子のための第1のアクティブ素子と共通に駆動される第2のアクティブ素子を設け、
前記切換手段は、前記動作検証手段で第1のアクティブ素子を含む電気回路の異常が検出されると、電気光学素子の制御を、該第1のアクティブ素子から第2のアクティブ素子へ切換えることを特徴とする請求項1記載の表示装置。 - 前記動作検証手段および切換手段の主要部分は、前記アクティブ素子とともにTFTから成ることを特徴とする請求項1または2記載の表示装置。
- 前記電気光学素子を形成することで、前記請求項1〜3の何れかに記載の表示装置を実現することができる表示基板。
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