JP3916686B2 - グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤に関し、より詳しくは脂肪前駆細胞から脂肪細胞へと分化する時に活性が上昇するグリセロリン酸脱水素酵素を阻害することができるグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤に関する。さらにそのグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤を含む食品添加物、及びそれらを配合した食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、わが国は食生活の欧米化が進み、糖質の摂取量が減り、脂肪、タンパク質の摂取量が増えてきている。それに伴い、肥満という問題が取り上げられるようになってきた。肥満は、高血圧、心臓病、糖尿病などの成人病の原因となるので、健康を維持するためには努力して防止する必要がある。
肥満の成因を考えていく上で、脂肪細胞への分化や脱分化のメカニズムが重要である。。1974年GREEN らは、マウス胎児由来3T3線維芽細胞の中から脂肪細胞へと分化するものをクローニングし、細胞株を樹立することに成功し、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化の課程を生化学的に研究できるようになった(GREEN, H. 等、CELL, VOL.1, 113−116 頁(1974);CELL, VOL.3, 127−133 頁(1974))。また、Ne'grel らも遺伝性肥満マウス(C57BL/6J ob/ob)の副睾丸脂肪組織より脂肪細胞へと分化する細胞(ob 17)をクローン化した(Ne'grel, R.等、PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, VOL.75, 6054-6058 頁(1978)) 。
これらの細胞を用い生化学的研究が行われ、前駆細胞の時にはほとんど活性が検出されず、脂肪細胞に分化することにより増加する酵素が明らかになってきた。たとえば、グリセロリン酸脱水素酵素、リポプロテインリパーゼ、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼなどが報告されているが、特にグリセロリン酸脱水素酵素は、1,000倍も酵素活性が上昇するので、分化のマーカー酵素として利用されている。
従って、グリセロリン酸脱水素酵素を阻害することにより脂肪細胞への分化を抑制することが考えられる。また、そのような酵素阻害剤により肥満の治療や予防をすることが考えられる。
さらに、食品にあらかじめ酵素に対する阻害剤を配合しておく方法が考えられる。
グリセロリン酸脱水素酵素に対する阻害剤としては、5−アルキルレゾシノール(特開平6−100440号公報)が知られていて、動物細胞での脂肪蓄積防止効果が明かにされている。しかしながら、未だ十分な効果は得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、グリセロリン酸脱水素酵素に対して優れた阻害活性を示し、かつ安全性の高いグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤を提供することである。本発明の目的はまた、上記グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤を含む食品添加物を提供し、さらに、上記グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤あるいは食品添加物を配合した食品を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために、安全性及び天然志向を考慮して各種植物エキスを探索したところ、ビンロウジから抽出される物質NF−86I、NF−86II、NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBがグリセロリン酸脱水素酵素阻害効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。これらの物質には、α−アミラーゼを阻害する作用(特開昭63−185995号公報)、5'−ヌクレオチダーゼを阻害する作用(特開昭63−307892号公報)及びウレアーゼを阻害する作用(特開平7−47108号公報)があることが知られているが、グリセロリン酸脱水素酵素を阻害する作用を有することは知られていなかった。本発明者らはまた、ビンロウジの親水性溶媒による抽出物がグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性を有することを見出した。
従って本発明は、NF−86I、NF−86II、NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBからなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤である。本発明はまた、ビンロウジの親水性溶媒抽出物を有効成分とするグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤である。本発明はさらに、上記グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤を含有する食品添加物に関する。さらに本発明は、上記グリセロリン酸脱水素酵素阻害剤又は食品添加物を配合した食品に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
上記物質NF−86I、NF−86II、NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBは各々下記の理化学的性質を有する。
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
ビンロウジは東南アジア各地などに産するビンロウジュ〔アレカ・カテチュ・リンネ (Areca catechu L)〕(ヤシ科)の果皮を除いた種子であり、収れん、唾液分泌促進薬、条虫駆除薬などとして知られている。
ビンロウジは市場で入手でき、さらに粗砕物としても粉末としても入手できる。また、ビンロウジを適宜砕粉して、様々な粒度にすることもできる。本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の有効成分を抽出する原料として、ビンロウジの粗砕物や粉末は、上記のいずれのものでもよく、また、脱脂処理したものでもよい。
【0018】
以下、本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の有効成分であるNF−86I、NF−86II、NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBの抽出方法について詳細に説明する。
(1) 原料
原料としては前記のビンロウジを使用するが、加工・抽出しやすいように、乾燥・粗砕、粉砕などの処理をしたものを用いることが好ましい。また市販されている生薬の形態のものを用いることが簡便である。
【0019】
(2) 抽出
NF−86I、NF−86IIはフェノール性物質であって、5'−ヌクレオチダーゼ阻害活性、α−アミラーゼ阻害活性、ウレアーゼ阻害活性あるいはグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性によって特徴づけられるので、水、有機溶媒、遠心分離や濾過などによって、これらの阻害活性を指標として適当な精製手段を適用して単離・精製することができる。これらの方法は必要に応じて単独あるいは任意の順序に組合せ、または反復して適用できる。以下にNF−86I、NF−86IIの抽出方法の1例を説明する。
(イ) ヘキサン、エーテルなどの脱脂溶媒を用いて、室温で、または加熱して原料を脱脂する。
(ロ) 脱脂した原料を風乾または真空乾燥して、脱脂溶媒を除去する。
(ハ) 次いでメタノールを抽出原料に加えて常法に従い抽出処理する。抽出に使用する溶媒の量は、抽出原料100g当たり100〜1000ml程度が適当である。通常は沸騰下で抽出するが、4℃の低温室にて抽出を行っても活性成分が得られる。
(ニ) 得られた抽出液を濃縮乾固した後、水を加えて懸濁液とする。これを濾紙にて濾過する。不溶物は、さらに水を加え、よく攪拌した後濾過し、前の濾液とあわせる。
【0020】
(ホ) この水溶液に等量の酢酸エチルまたはクロロホルムなどの非親水性有機溶媒を加え、有機溶媒可溶部分を除去する。
(ヘ) 非親水性有機溶媒可溶部分を除去した水層を分画分子量1,000の透析チューブ(スペクトラ/ポア6;スペクトラムメディカルインダストリー社製)に入れ、水にて透析し、内液と外液に分画する。
(ト) 分画分子量1,000の透析チューブにて分画した透析内液をさらに、分画分子量10,000の透析チューブ(スペクトラ/ポア6;スペクトラムメディカルインダストリー社製)に入れ、水にて透析し、内液と外液に分画する。
(チ) このように分画すると、分子量1,000〜10,000、10,000以上の分画部分に目的とする阻害活性が認められ、凍結乾燥などの操作により、有効物質を2種類とも淡褐色の粉末として得ることができる。
この分子量1,000〜10,000及び10,000以上に分画された有効物質を各々NF−86I及びNF−86IIと命名している。
【0021】
(3) NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBの分離
このように、透析チューブにて分画してきたNF−86I及びNF−86IIは、さらにそれぞれ2つの画分に分類できる。すなわちNF−86Iは、分子量5,620の画分(NPF−86IA)と分子量5,000の画分(NPF−86IB)より、またNF−86IIは分子量29,400の画分(NPF−86IIA)と分子量8,610の画分(NPF−86IIB)より構成されている。これらの4種の物質(NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIB)の分離精製は、種々の公知の方法によって行うことができるが、以下の条件で高速液体クロマトグラフを用いて行うことが好ましい。
【0022】
(イ) 分離カラム
分離カラムとしては分配・吸着型樹脂、イオン交換樹脂、ゲル濾過型の分離剤などを詰めたものを用いることができる。また付属的に自動注入や自動分取を行う装置を導入することも好ましい。
(ロ) 溶離剤
溶離剤としては、水−メタノール系の他、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸、ブタノール、ヘキサンその他の各種緩衝溶液を単品で、または任意の比率で混合して用いることができる。
(ハ) 指標
本発明の有効物質を検出するために指標としては、280nmの波長の吸光度、5'−ヌクレオチダーゼ阻害活性、α−アミラーゼ阻害活性、ウレアーゼ阻害活性及びグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性を用いることができる。
(ニ) 処理方法
処理方法としては、オープンカラム、中圧または高圧方式を用いることができる。
NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBは、高速液体クロマトグラフでそれぞれ単一のピークを示し、グリセロリン酸脱水素酵素阻害活性が一致する。
【0023】
以上の抽出操作は、原料植物特有の香、色を除去し、目的とするグリセロリン酸脱水素酵素阻害物質を得る方法として最適である。尚、これらの有効物質は、メタノール、水に可溶であるため、前述の抽出方法は、原料のメタノール抽出物より出発しているが、高価な有機溶媒を節約するためにはまず大量の水または熱湯にて抽出した後、同様の操作を行ってもよい。
またこれらの有効物質の紫外線吸収スペクトルでも明らかなように、アルカリ性にすると有効物質は黄褐色から赤褐色に着色するので、抽出過程全体を鉱酸や有機酸を用いて弱酸性下で行うことも有効な抽出手段である。
ビンロウジの親水性溶媒による抽出物もまた、グリセロリン酸脱水素酵素阻害活性を示す。この親水性溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどが挙げられる。その抽出操作は溶媒を抽出原料に加えて常法に従って処理すればよい。通常は沸騰下で抽出するが、4℃程度の温度で抽出することもできる。メタノール抽出物などの粗抽出物でもグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性を示すので、実用的に必ずしも精製を必要としない。
これらの有効物質は極めて毒性の低いものである。
【0024】
【試験例】
上記有効成分のグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性の測定を、WISE等の方法に準じて、以下のように行った(WISE. L. S. 等、 J. BIOL. CHEM., VOL. 254, 273-275 頁(1979)) 。
1cmの角セルに2.5mMのEDTAを含んだ100 mMのトリエタノール/塩酸バッファー(pH7.5)1.97ml、6mMのジヒドロキシアセトンリン酸0.3ml、1mMのβ−メルカプトエタノール0.3ml、1.2mMのNADH 0.3ml及び各濃度の検体溶液0.03mlを入れよく混合した。
次に、1unit/mlのグリセロリン酸脱水素酵素(シグマ社)溶液0.15mlを加え、混合後、340nmの吸光度を測定し、10分後の吸光度から下記の計算式により阻害活性を求めた。なお対照は、角セルに検体溶液を無添加で同様に行い、340nmの吸光度を測定した。
阻害率(%) =(A/B)×100
A:各種検体の10分後の吸光度−対照の10分後の吸光度
B:対照の0分後の吸光度−対照の10分後の吸光度
その結果、ビンロウジの抽出物であるNFー86I及びNFー86IIの100μg/mlの時の阻害率は各々、96.1%又は、98.8%であり、強い阻害活性が認められた。
【0025】
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤は、その有効成分の他に、これらの有効成分を変質させるものや有毒なものでない限り、適宜選択しうる添加物を含んでもよい。またそれらの有効成分は、適当な助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口又は非経口投与が可能なグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤とすることができる。
以下に、本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の投与方法、投与量及び製剤化の方法を示す。
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤は、経口及び非経口投与のいずれも使用可能であり、経口投与する場合は、軟・硬カプセル剤又は錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤として投与される。非経口投与する場合は、注射剤、点滴剤及び固体状または懸濁粘稠液状として持続的な粘膜吸収が維持できるように坐薬のような剤型で投与され得るが、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内及び静脈内注射、局所への塗布、噴霧、坐剤、膀胱内注射などの外用的投与法等も用いることができる。
投与量は、投与方法と、患者の年齢、病状や一般状態等に依って変化し得るが、大人では通常、1日当たり有効成分として0.5〜5,000mgが適当であり、小人では0.5〜3,000mgが適当である。
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の有効成分の割合は、剤型によって変更され得るが、通常、経口投与されるとき、約0.3 〜15.0重量%が適当であり、非経口投与されるときは、ほぼ0.01〜10重量%が適当である。
また、本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の製剤化に当たっては、常法に従い、水溶液、油性製剤などにして、皮下あるいは静脈注射用製剤とすることができる他、皮膚などに局所適用する製剤としたり、またカプセル剤、錠剤、細粒剤等の剤型に製剤化して経口用に供することができる。
【0026】
また、有効成分に長時間の保存に耐える安定性及び耐酸性を付与して薬効を完全に持続させるために、更に医薬的に許容し得る被膜を施して製剤化すれば、すぐれた安定性を有するグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤とすることができる。
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の製剤化に用いられる界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、佐剤及び医薬的に許容し得る被膜形成物質等を挙げれば、次の通りである。
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤の崩壊、溶出を良好にするために、界面活性剤、例えばアルコール、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類等の1種又は2種以上を添加することができる。
また、賦形剤として、例えば、庶糖、乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0027】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油等を1種または2種以上添加することができ、また矯味剤及び矯臭剤として、食塩、サッカリン、糖、マンニット、オレンジ油、カンゾウエキス、クエン酸、ブドウ糖、メントール、ユーカリ油、リンゴ酸等の甘味剤、香料、着色剤、保存料等を含有させてもよい。
懸濁剤、湿潤剤のような佐剤としては、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、ベニバナ油、大豆リン脂質等を含有させることができる。
また、被膜形成物質としては、セルロース、糖類等の炭水化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またアクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類等のポリビニル誘導体としてアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体が挙げられる。
また、上記被膜形成物質をコーティングするに際し、通常使用されるコーティング剤、例えば可塑剤の他、コーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添加剤を添加することによって被膜形成剤の性質を改良したり、コーティング操作をより容易にすることができる。
【0028】
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤はまた、食品、健康食品に配合することができ、また食品添加物の成分とすることもできる。食品中に配合する場合は、食品に対して有効成分として0.001〜15重量%が適当であり、特に0.01〜10重量%配合することが好ましい。
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤あるいは食品添加物を配合させる食品の種類はいかなるものであってもよく、例えば、パン、麺、ビスケット、ホットケーキ、錠菓等の穀粉や澱粉を主体とする食品、ドレッシング、ドリンク等を挙げることができる。食品に配合させる方法としては、各種食品に応じてその製造過程で適宜配合すればよい。
【0029】
以下、調製例、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【調製例】
I.NF−86I及びNF−86IIの調製
イ)粗砕・乾燥したビンロウジ100gをヘキサン300ml中に浸漬し24時間室温で放置した後、濾過によりヘキサンを除去した。この操作を3回行い、脱脂した。
ロ)脱脂したビンロウジを30分間風乾した。
ハ)風乾したビンロウジをメタノール300ml中に浸漬し、沸騰下3時間抽出した。この操作を3回行い、抽出液を集めた。
ニ)得られた抽出液をエバポレーターにて25℃で濃縮し、真空下で乾燥した(収量6.86g)。これに水150mlを加えて攪拌後濾過した。不溶物はさらに水100mlを加えて攪拌後濾過し、濾液を集めた。
ホ) この水溶液に250mlの酢酸エチルを加えて抽出した。この操作を3回行い、酢酸エチル可溶部分を除去した。不溶物は1.85g残り、酢酸エチル抽出物0.61g、水抽出物4.01gを得た。
【0030】
ヘ)非親水性有機溶媒可溶部分を除去した水抽出物を分画分子量1,000の透析チューブ(スペクトラ/ポア6;スペクトラメディカルインダストリー社製)に入れ、水にて4℃で透析し、内液と外液に分画した。
ト)分画分子量1,000の透析チューブにて分画した透析内液をさらに、分画分子量10,000の透析チューブ(スペクトラ/ポア6;スペクトラメディカルインダストリー社製)に入れ、水にて4℃で透析し、内液と外液に分画した。
チ)分子量1,000〜10,000及び分子量10,000以上の分画部分から凍結乾燥によって、分子量1,000〜10,000の画分(NF−86I)及び分子量10,000以上の画分(NF−86II)をそれぞれ淡褐色の粉末として0.50g及び0.75g得た。
【0031】
II.NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBの調製
NF−86I及びNF−86IIより、NPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86IIA及びNPF−86IIBの分離・生成を高速液体クロマトグラフにて行った。条件は次のとおりである。
分離カラム:吸着・分配型樹脂をつめたもの(Shodex RS-pack、DE−613:昭和電工社製)
溶離液: 水:メタノール=1:9
検出器: 紫外分光検出器(日本分光工業(株)製)280nm
NF−86I、500mgよりNPF−86IA36.7mg、NPF−86IB244.2mgを得た。またNF−86II250mgより、NPF−86IIA68.8mg、NPF−86IIB68.0mgを得た。
【0032】
III.ビンロウジのメタノール抽出物の調製
イ)粗砕・乾燥したビンロウジ100gをヘキサン300ml中に浸漬し24時間室温で放置した後、濾過によりヘキサンを除去した。この操作を3回行い、脱脂した。
ロ)脱脂したビンロウジを30分間風乾した。
ハ)風乾したビンロウジをメタノール300ml中に浸漬し、沸騰下3時間抽出した。この操作を3回行い、抽出液を集めた。
ニ)得られた抽出液をエバポレーターにて25℃で濃縮し、真空下で乾燥した(収量6.86g)。
【0033】
【実施例】
実施例1(錠菓及び錠剤)
卵殻カルシウム 108g、ピロリン酸第二鉄2g、アスコルビン酸40g、微結晶セルロース40g、還元麦芽糖 285g、NF−86I 25gをミキサーによって常法により混和した後、打錠し、錠菓及び錠剤を製造した。
実施例2(ビスケット)
小麦粉120g、NF−86I 1.2g、NF−86II 1.2g、砂糖35g、ショートニング15g、全卵粉 1.5g、食塩1g、炭酸水素ナトリウム0.6g、炭酸アンモニア0.75g、水20gを用いて、常法によりドウを作成し、成形、焙焼してビスケットを製造した。
【0034】
実施例3(パン)
小麦粉3kg 、NF−86I 3g、イースト60g、イーストフード3g、砂糖150 g、食塩60g、ショートニング 150g、脱脂粉乳60g、水2070gを用いて、常法によりドウを作成し、成形、焙焼してパンを製造した。
実施例4(麺)
準強力小麦粉に対して、1重量%のNF−86I、34重量%の水、1重量%の食塩及び1重量%のかんぷんを加えたものを、12分間した混捏した後、麺機にて数回圧延、形成して、中華麺の生麺帯、生麺線を得た。
【0035】
【発明の効果】
本発明のグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤は、安全性が高く、かつ高いグリセロリン酸脱水素酵素阻害活性を有する。食品に容易に配合することができ、また肥満の予防や治療に有用である。
Claims (1)
- 下記の理化学的性質を有するNPF−86IA、NPF−86IB、NPF−86 II A及びNPF−86 II Bからなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するグリセロリン酸脱水素酵素阻害剤。
NPF−86IA
(1)形状:淡黄褐色粉末
(2)融点:明瞭な融点、分解点を示さない
(3)元素分析: 炭素 54.82%
水素 4.52%
酸素 37.93%
窒素 0.2%以下
灰分 0.2%以下
(4)分子量:5,620(ポリエチレングリコールを標準としたゲル浸透
クロマトグラフィーによる)
(5)赤外線吸収スペクトル:
νKBr max cm-1;3400、2940、1610、1520、
1440、1380、1280、1260、
1210、1160、1100、1060、
820、800
(6)紫外線吸収スペクトル:
水
λmax nm 279
(7)溶解性:水、メタノール、エタノールに可溶。
ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルムに不溶。
(8)呈色反応:
塩化第2鉄反応 陽性
ニンヒドリン反応 陰性
p−アニシジン−フタル酸反応 陰性
アニリン−ジフェニルアミン反応 陰性
ドラーゲンドルフ反応 陰性
(9)安定性:粉末状態では安定
NPF−86IB
(1)形状:淡黄褐色粉末
(2)融点:明瞭な融点、分解点を示さない
(3)元素分析: 炭素 57.09%
水素 4.45%
酸素 35.03%
窒素 0.2%以下
灰分 0.2%以下
(4)分子量:5,000(ポリエチレングリコールを標準としたゲル浸透
クロマトグラフィーによる)
(5)赤外線吸収スペクトル:
νKBr max cm-1;3400、2930、1610、1520、
1440、1360、1280、1250、
1200、1160、1100、1060、
800
(6)紫外線吸収スペクトル:
水
λmax nm 279
(7)溶解性:水、メタノール、エタノールに可溶。
ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルムに不溶。
(8)呈色反応:
塩化第2鉄反応 陽性
ニンヒドリン反応 陰性
p−アニシジン−フタル酸反応 陰性
アニリン−ジフェニルアミン反応 陰性
ドラーゲンドルフ反応 陰性
(9)安定性:粉末状態では安定
NPF−86IIA
(1)形状:淡黄褐色粉末
(2)融点:明瞭な融点、分解点を示さない
(3)元素分析: 炭素 51.44%
水素 4.44%
窒素 0.1%以下
灰分 0.2%以下
(4)分子量:29,400(ポリエチレングリコールを標準としたゲル浸透
クロマトグラフィーによる)
(5)赤外線吸収スペクトル:
νKBr max cm-1;3400、2950、1610、1520、
1440、1370、1280、1250、
1210、1160、1100、1060、
820、800
(6)紫外線吸収スペクトル:
水
λmax nm 279
(7)溶解性:水、メタノール、エタノールに可溶。
ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルムに不溶。
(8)呈色反応:
塩化第2鉄反応 陽性
ニンヒドリン反応 陰性
p−アニシジン−フタル酸反応 陰性
アニリン−ジフェニルアミン反応 陰性
ドラーゲンドルフ反応 陰性
(9)安定性:粉末状態では安定
NPF−86IIB
(1)形状:淡黄褐色粉末
(2)融点:明瞭な融点、分解点を示さない
(3)元素分析: 炭素 52.46%
水素 4.42%
窒素 0.1%以下
灰分 0.2%以下
(4)分子量:8,610(ポリエチレングリコールを標準としたゲル浸透
クロマトグラフィーによる)
(5)赤外線吸収スペクトル:
νKBr max cm-1;3400、2930、1610、1520、
1440、1370、1280、1250、
1200、1160、1100、1060、
800
(6)紫外線吸収スペクトル:
水
λmax nm 279
(7)溶解性:水、メタノール、エタノールに可溶。
ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルムに不溶。
(8)呈色反応:
塩化第2鉄反応 陽性
ニンヒドリン反応 陰性
p−アニシジン−フタル酸反応 陰性
アニリン−ジフェニルアミン反応 陰性
ドラーゲンドルフ反応 陰性
(9)安定性:粉末状態では安定
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