JP3915848B2 - 異方性導電フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対峙する回路間に介装し、回路間を加圧、加熱することにより回路間を導電性粒子を介して接続すると共に、これら回路間を接着固定する目的に使用される厚み方向にのみ導電性を与える異方性導電フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
異方性導電フィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)やTABと液晶パネルのガラス基板上に形成されたITO端子とを接続する場合をはじめとして、種々の端子間に異方性導電膜を形成し、それにより該端子間を接着すると共に電気的に接合する場合に使用されている。
【0003】
異方性導電フィルムは、一般にエポキシ系又はフェノール系樹脂と硬化剤を主成分とする接着剤に導電性粒子を分散させたもので、中でも使用上の便宜等の点から接着剤としては1液型の熱硬化型のものが主流になってきている。また、異方性導電フィルムとしては、高温高湿下でも安定した接続信頼性が得られるようにするため、種々の方法により接着強度の強化が図られている。
【0004】
しかし、従来のエポキシ系又はフェノール系樹脂を用いた異方性導電フィルムは、粘着力が低く、作業性が悪かった。
【0005】
本発明は、上記事情を改善したもので、粘着力が高く、特に金属との密着性が優れ、作業性がよく、かつ架橋密度が高く、耐久性に優れた異方性導電フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の異方性導電フィルムを提供する。
請求項1:
接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部アリル基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
請求項2:
前記共重合体の酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率が0.01〜10重量%である請求項1記載の異方性導電フィルム。
請求項3:
接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
請求項4:
前記共重合体の酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%である請求項3記載の異方性導電フィルム。
請求項5:
接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アリル基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
請求項6:
前記共重合体のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーの含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%である請求項5記載の異方性導電フィルム。
請求項7:
前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対してシランカップリング剤を0.01〜5重量部添加してなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
請求項8:
前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対してエポキシ基含有化合物を0.1〜20重量部添加してなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
請求項9:
前記エポキシ基含有化合物が、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、及びブチルグリシジルエーテルよりなる群から選択された1種又は2種以上である請求項8記載の異方性導電フィルム。
請求項10:
前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対して炭化水素樹脂を1〜200重量部添加してなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
請求項11:
前記含リン化合物が、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスヘート、及びジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスヘートよりなる群から選択された1種又は2種以上である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
請求項12:
前記導電性粒子が、前記共重合体に対して0.1〜15容量%含有される請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
請求項13:
前記導電性粒子の粒径が0.1〜100μmである請求項1乃至12のいずれか1項記載の異方性導電フィルム。
【0007】
本発明の異方性導電フィルムは、接着剤として上記ポリマーを主成分とし、含リン化合物を添加した熱又は光硬化性接着剤であるため、下記の特長を有する。
(1)高温下で長時間保持した後においても、異方性導電フィルムの特性を有効に発揮し、耐久性に優れている。
(2)リペア性が良好である。
(3)透明性が良好である。
(4)従来品に比べ、安定して高い接着性、特に金属との優れた密着性を発揮する。
(5)透明な前記ポリマーを原料としたフィルムを使用することにより、電極位置決めの際の光透過性がよく、作業性が良好である。
(6)エポキシ系等の従来品は、150℃以上の加熱が必要であったが、本発明によれば、130℃以下で硬化接着が可能であり、またUV硬化性とすることもできるため、更に低温での硬化接着も可能である。
(7)従来用いられているエポキシ系、フェノール系の異方性導電フィルムは、粘着性がなく、フィルムが電極に粘着力で仮止めしにくく、剥がれ易く、作業性が悪いが、本発明の異方性導電フィルムは、仮止め時の粘着力が高いため、作業性が良好である。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の異方性導電フィルムは、接着剤中に導電性粒子を分散させてなるものであり、この場合、接着剤としては、「エチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体」、「エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体」、又は「エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体」から選ばれるポリマーを主成分とし、更に含リン化合物を添加したものを使用する。
【0010】
また、前記ポリマーとしてエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体を用いる場合、この共重合体の酢酸ビニル含有率は10〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは14〜45重量%である。酢酸ビニル含有率が10重量%より低いと高温時に架橋硬化させる場合に充分な架橋度が得られず、一方、50重量%を超えると樹脂の軟化温度が低くなり、貯蔵が困難となり、実用上問題である。更に、この共重合体のアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%である。このモノマーの含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方、10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0011】
使用可能なアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとしては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル系モノマーの中から選ばれるモノマーであり、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20、特に1〜18の非置換又はエポキシ基等の置換基を有する置換脂肪族アルコールとのエステルが好ましく、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0012】
更に、前記ポリマーとしてエチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体を用いる場合、この共重合体の酢酸ビニル含有率は10〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは14〜45重量%である。酢酸ビニル含有率が10重量%より低いと高温時に架橋硬化させる場合に充分な架橋度が得られず、一方、50重量%を超えると接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。更に、この共重合体のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%である。この含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方、10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0013】
前記ポリマーとしてエチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体を用いる場合、この共重合体のアクリレート系モノマーの含有率は10〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは14〜45重量%である。アクリレート系モノマーの含有率が10重量%より低いと高温時に架橋硬化させる場合に充分な架橋度が得られず、一方、50重量%を超えると接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。更に、この共重合体のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%である。この含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方、10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0014】
なお、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとしては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0017】
本発明の異方性導電フィルムには、接着性、特に金属との優れた密着性のために含リン化合物が添加される。
【0018】
使用可能な含リン化合物としては例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスヘート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスヘートなどが挙げられる。これらの含リン化合物としては、これらのうちの少なくとも1種が単独又は混合して用いられ、通常前記ポリマー100重量部に対し0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部添加して用いられる。0.1重量部より少ないと十分な効果が得られず、30重量部より多いと接着反応を阻害し、特性が悪化する場合がある。
【0019】
本発明に用いる導電性粒子としては、電気的に良好な導体である限り、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属粉体、このような金属で被覆された樹脂あるいはセラミック粉体等を使用することができる。また、その形状についても特に制限はなく、りん片状、樹枝状、粒状、ペレット状等の任意の形状をとることができる。
【0020】
本発明において、導電性粒子の配合量は、前記ポリマーに対し0.1〜15容量%であることが好ましく、また、平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましい。このように、配合量及び粒径を規定することにより、隣接した回路間で導電性粒子が凝縮し、短絡しなくなる。
【0021】
本発明の異方性導電フィルムの硬化のためには、有機過酸化物又は光増感剤を用いることができるが、硬化性接着剤が熱硬化性接着剤である場合には、通常、有機過酸化物が用いられ、硬化性接着剤が光硬化性接着剤である場合には、通常、光増感剤が用いられる。
【0022】
本発明の異方性導電フィルムの硬化のために添加される有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、成膜温度、調製条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。
【0023】
使用可能な有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物としては、これらのうちの少なくとも1種が単独又は混合して用いられ、通常前記ポリマー100重量部に対し0.1〜10重量部を添加して用いる。
【0024】
本発明の異方性導電フィルムの硬化のために添加される光増感剤(光重合開始剤)としては、ラジカル光重合開始剤が好適に用いられる。ラジカル光重合開始剤のうち、水素引き抜き型開始剤としてベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4−(ジエチルアミノ)安息香酸エチル等が使用可能である。また、ラジカル光重合開始剤のうち、分子内開裂型開始剤として、ベンゾインエーテル、ベンゾイルプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンが、また、α−アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1が、またアシルフォスフィンオキサイド等が用いられる。光増感剤としては、これらのうちの少なくとも1種が単独又は混合して用いられ、通常前記ポリマー100重量部に対し0.1〜10重量部を添加して用いる。
【0025】
本発明の異方性導電フィルムには、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。これらのシランカップリング剤の添加量は、前記ポリマー100重量部に対し、通常0.01〜5重量部で充分である。
【0026】
本発明の異方性導電フィルムには、更に接着促進剤としてエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有するポリマーをアロイ化することによっても同様の効果を得ることができる。これらのエポキシ基含有化合物は、1種又は2種以上の混合物として用いられ、その添加量は前記ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜20重量部で充分である。
【0027】
本発明の異方性導電フィルムの物性(機械的強度、接着性、光学的特性、耐熱性、耐湿性、耐候性、架橋速度等)の改良や調節のために、本発明においては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基を有する化合物を添加することができる。
【0028】
この目的に供せられる化合物としては、アクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基のほかに、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、ダイアセトンアクリルアミドが代表的である。多官能架橋助剤としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル、アリル基を有する化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上の混合物として、前記ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部添加して用いられる。50重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や成膜性を低下させることがある。
【0029】
なおまた、本発明の異方性導電フィルムには、加工性や貼り合わせ等の向上の目的で炭化水素樹脂を接着剤中に添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでもよい。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネン等のテルペン系樹脂の他、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いてもよい。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0030】
前記炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、前記ポリマー100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、更に好ましくは5〜150重量部である。
【0031】
以上の添加剤のほか、本発明には、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、加工助剤等を本発明の目的に支障をきたさない範囲で用いてもよい。
【0032】
本発明の異方性導電フィルムを得るためには、前述した熱又は光によってラジカルを発生する架橋剤(有機過酸化物及び/又は光増感剤)、更に必要に応じて架橋助剤、シランカップリング剤、エポキシ基含有化合物を主成分である前記ポリマーに添加し、更に導電性粒子、含リン化合物を配合する。
【0033】
本発明の異方性導電フィルムは、前記ポリマーを前述の添加剤、導電性粒子、含リン化合物と均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダーロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状に成膜することができる。なお、成膜に際しては、ブロッキング防止、被着体との圧着を容易にするため等の目的で、エンボス加工が施されていてもよい。
【0034】
また、各構成成分を部材(セパレーター)に何ら影響を及ぼさない溶媒に均一に溶解させ、部材(セパレーター)の表面に均一に塗布し、他の被着体(ポリイミド・銅箔等)を仮圧着した後、熱又は光硬化させることができる。
【0035】
本発明の異方性導電フィルムにおける硬化条件としては、熱硬化の場合は、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、通常70〜170℃、好ましくは70〜150℃で、通常10秒〜120分、好ましくは20秒〜60分である。
【0036】
また、光増感剤を用いる光硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数十秒〜数十分程度である。
【0037】
また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0038】
この場合、上記接着時の加圧で、加圧方向(フィルム厚さ方向)に導電性が生じるが、この加圧力は適宜選定され、通常5〜50kg/cm2、特に10〜30kg/cm2の加圧力とすることが好ましい。
【0039】
なお、本発明の異方性導電フィルムは、フィルム厚さ方向に10Ω以下、特に5Ω以下の導電性を有し、面方向の抵抗は106Ω以上、特に109Ω以上であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の異方性導電フィルムは、例えばFPCやTABと液晶パネルのガラス基板上のITO端子との接続など、種々の端子間の接続に使用されるなど従来の異方性導電フィルムと同様の用途に用いられ、硬化時に架橋構造が形成されると共に、高い接着性、特に金属との優れた密着性と、優れた耐久性、耐熱性が得られる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例,参考例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
参考例1〕
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製ウルトラセン710、酢酸ビニル含有率28重量%)のトルエン15重量%溶液を調製し、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスヘートを1重量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを0.5重量部、グリシジルメタクリレートを2.0重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部添加し、充分に混合した。更に福田金属箔粉工業製真球状銅粒子(粒径3.8μm)をエチレン−酢酸ビニル共重合体に対して4容量%混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
【0043】
参考例2〕
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製ウルトラセン750、酢酸ビニル含有率32重量%)のトルエン15重量%溶液を調製し、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスヘートを1重量部、ベンゾイルパーオキサイドを4.0重量部、グリシジルメタクリレートを4.0重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部添加し、充分に混合した。更に福田金属箔粉工業製真球状銅粒子(粒径7.6μm)をエチレン−酢酸ビニル共重合体に対して4容量%混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
【0044】
〔比較例1〕
エポキシ系樹脂のトルエン15重量%溶液を調製し、福田金属箔粉工業製真球状銅粒子(粒径3.8μm)をエポキシ系樹脂に対して4容量%混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
【0045】
〔比較例2〕
フェノール系樹脂のトルエン15重量%溶液を調製し、福田金属箔粉工業製真球状ニッケル粒子(粒径7.6μm)をフェノール系樹脂に対して4容量%混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるポリテレフタル酸エチレン上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。
【0046】
前記のサンプルをフレキシブルプリント基板と透明電極ガラスとの接着用として、セパレーターを剥離してモニターで位置決めをし、160℃で30秒間加熱圧着し、フレキシブルプリント基板と透明電極ガラスとの導通抵抗、横方向の絶縁抵抗を測定した。結果を以下に示す。
参考例1
接着直後特性
導通抵抗:0.5Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:3.1kg/inch
経時変化測定(80℃/500時間後)
導通抵抗:1.0Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:3.1kg/inch
参考例2
接着直後特性
導通抵抗:0.5Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:2.8kg/inch
経時変化測定(80℃/500時間後)
導通抵抗:0.8Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:2.8kg/inch
比較例1
接着直後特性
導通抵抗:0.5Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:0.2kg/inch
経時変化測定(80℃/500時間後)
導通抵抗:250Ω以上
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:0.1kg/inch
比較例2
接着直後特性
導通抵抗:0.5Ω以下
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:0.3kg/inch
経時変化測定(80℃/500時間後)
導通抵抗:320Ω以上
絶縁抵抗:109Ω以上
接着力:0.1kg/inch
【0047】
参考例3〜6,実施例1〜6
参考例1に記載の方法に準じて、表1〜3に示す組成を表1〜3に示す割合で用いて幅5mm、厚さ15μmのフィルムを得た。上記と同様の測定を行って得た結果を表1〜3に示す。
【0048】
また、ガラスエポキシプリント基板(銅電極スズめっき200μmピッチ)にフレキシブルプリント基板を表に記載の圧着条件で圧着し、50mm/minの引張り条件で90度剥離試験を行った。結果を表1〜3に示す。
【0049】
なお、下記表において、各添加成分の添加量は、主成分100重量部に対する添加量である。
【0050】
【表1】
Figure 0003915848
*1:参考例1(ウルトラセン710)、参考例2(ウルトラセン750)、参考例3及び4(ウルトラセン760)
*2:1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
【0051】
【表2】
Figure 0003915848
*1:住友化学工業社製、ボンドファースト2A、酢酸ビニル含有率8重量%、グリシジルメタクリレート含有率3重量%
*2:三菱化学社製、MODIC E−100H、酢酸ビニル含有率約20重量%、無水マレイン酸含有率約0.5重量%
*3:住友化学工業社製、LX 4110、エチレン含有率91重量%、エチルアクリレート含有率8重量%、無水マレイン酸含有率1重量%
*4:エチレン−メタクリル酸−ナトリウムイオンタイプのアイオノマー樹脂、三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1856、メタクリル酸含有率5重量%、ナトリウムイオンによるイオン化度40%
*5:1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
【0052】
【表3】
Figure 0003915848
*1:住友化学工業社製、ボンドファースト2A、酢酸ビニル含有率8重量%、グリシジルメタクリレート含有率3重量%
*2:三菱化学社製、MODIC E−100H、酢酸ビニル含有率約20重量%、無水マレイン酸含有率約0.5重量%
*3:住友化学工業社製、LX 4110、エチレン含有率91重量%、エチルアクリレート含有率8重量%、無水マレイン酸含有率1重量%
*4:エチレン−メタクリル酸−ナトリウムイオンタイプのアイオノマー樹脂、三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1856、メタクリル酸含有率5重量%、ナトリウムイオンによるイオン化度40%
【0053】
表1〜3の結果より、参考例1〜6,実施例1〜6のサンプルは、いずれも加熱圧着後でもアセトン、トルエンにより極めて簡単に拭き取ることが可能であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の異方性導電フィルムは、粘着力が高く、特に金属との密着性に優れ、かつ作業性及び透明性が良好であり、高温下に長時間保持した後でも厚さ方向の導通性、面方向の絶縁性が保持され、接着力も高く、耐久性に優れたものである。

Claims (13)

  1. 接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アリル基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  2. 前記共重合体の酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率が0.01〜10重量%である請求項1記載の異方性導電フィルム。
  3. 接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アリル基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  4. 前記共重合体の酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%である請求項3記載の異方性導電フィルム。
  5. 接着剤に導電性粒子を分散してなり、厚さ方向に加圧することにより厚さ方向に導電性が付与される異方性導電フィルムおいて、前記接着剤がエチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体100重量部に対して有機過酸化物又は光増感剤を0.1〜10重量部、アリル基含有化合物を0.1〜50重量部、及び含リン化合物を0.1〜30重量部配合してなる熱又は光硬化性接着剤であることを特徴とする異方性導電フィルム。
  6. 前記共重合体のアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーの含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%である請求項5記載の異方性導電フィルム。
  7. 前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対してシランカップリング剤を0.01〜5重量部添加してなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
  8. 前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対してエポキシ基含有化合物を0.1〜20重量部添加してなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
  9. 前記エポキシ基含有化合物が、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、及びブチルグリシジルエーテルよりなる群から選択された1種又は2種以上である請求項8記載の異方性導電フィルム。
  10. 前記接着剤が、前記共重合体100重量部に対して炭化水素樹脂を1〜200重量部添加してなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
  11. 前記含リン化合物が、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスヘート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスヘート、及びジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスヘートよりなる群から選択された1種又は2種以上である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
  12. 前記導電性粒子が、前記共重合体に対して0.1〜15容量%含有される請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
  13. 前記導電性粒子の粒径が0.1〜100μmである請求項1乃至12のいずれか1項記載の異方性導電フィルム。
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