JP3915773B2 - クランク軸の焼入れ方法及び焼入れ装置並びにクランク軸の製造方法 - Google Patents

クランク軸の焼入れ方法及び焼入れ装置並びにクランク軸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クランク軸を焼入れした際の焼割れや置割れの防止、焼入れ後の焼戻しの省略を可能としつつ、所望の高強度を得ることができる、クランク軸の焼入れ方法及び焼入れ装置、並びに、この方法で焼入れするクランク軸の製造方法に関するものである。
なお、置割れとは、放置しておくことにより残留応力等に起因して発生する割れを言う。
周知のように、クランク軸は、ピン及びジャーナルを有する容積型機関の動力伝達部材である。このクランク軸は、クランクケース内のメインベアリングに支持され、燃焼工程にあるピストンの昇降運動を、コネクティンロッドを介して回転運動に変換すると共に、他のピストンに吸入、圧縮又は排気工程のための上下運動を行わせる。このようにしてクランク軸は、エンジンの出力を連続した回転力として取り出す。
ところで、大荷重を受けながら高速回転をするクランク軸には、高い強度や耐摩耗性、剛性が要求されることから、高炭素鋼やCr−Mo鋼、Ni−Cr鋼等を型打鍛造したものが多用されてきた。また、一方で素材コストを安価に抑えるために、ミーハナイト鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄等も用いられている。
かかるクランク軸の耐摩耗性及び疲労強度を向上させるためには、クランク軸のピン及びジャーナルそれぞれの表面に高周波焼入れを行うことが有効である。高周波焼入れを行ったクランク軸中の焼入れ硬化部位は、マルテンサイト変態による硬化や、膨張によって生じる圧縮残留応力による疲労強度向上が見込まれる。
クランク軸のフィレットR部を含めて高周波焼入れする場合には、クランクアームのピン側とジャーナル側のそれぞれのフィレットR部においてもマルテンサイト変態による硬化や、膨張によって生じる圧縮残留応力による疲労強度向上を狙っている。
しかしながら、図5に示すような、クランク軸のアーム5におけるピン側頂上部付近(以下、「ピン頂上部P1」と称する。)や、クランク軸のアーム5部において、カウンタウェイト4がない場合のジャーナル側頂上部付近(以下、「ジャーナル頂上部P2」と称する。)の肉厚が小さい部分においては引張応力が発生する場合があり、これが焼入れ中の割れの原因となる。なお、図5中の3は高周波加熱コイル(以下、単に「コイル」という。)を示す。
即ち、ピン1及びジャーナル2それぞれのフィレットR部1a、2aを焼入れすると、図6に示すように、フィレットR部1a、2aからスラスト部1b、2bにかけて焼割れ、置割れAが発生する場合がある。なお、図6はピン1に発生した焼割れ、置割れAについて示した図である。焼割れ、置割れが生じたクランク軸は使用不可能で、不良コストの増大となる。このため、焼割れ、置割れを防止するために、ピンやジャーナルの円筒部のみに対して高周波焼入れを行うと共に、フィレットR部に対してはロール加工を行うことにより加工残留応力を発生させ、これによりクランク軸の耐摩耗性及び耐疲労特性を向上させることが行われてきた。
しかしながら、このような方法では、疲労き裂の発生が最も懸念されるフィレットR部に対しては、塑性加工によって残留応力を付与するだけであるため、導入する残留応力が母材降伏応力以下になってしまい、また、変態強化でないために表面硬さの増加を望むことができないという問題があった。
そこで、「補助冷却手段の使用により、各部の冷却速度を均一化することによって、クランク軸のピン及びジャーナルの円筒部(円柱部)、フィレットR部及びスラスト部に形成される焼入れ硬化層を均一にし、フィレットR部の焼割れを防止する」という技術が提案されている。
特開2002−173711号公報
この特許文献1で提案された技術では、補助冷却手段をコイルに固定し、クランク軸を回転させつつ補助冷却手段の噴射孔から直接フィレットR部及びフィレット部に冷却液を噴射して冷却することで、円筒部の熱容量と異なる熱容量を有する該フィレットR部及び該フィレット部に、該円筒部に形成される硬化層と均一な硬化層を形成するとしている。
しかしながら、上記の特許文献1に開示された方法では、ピンやジャーナルの肩部には冷却剤が十分にかからないという問題があった。また、補助冷却装置がコイルに固定されているため、一度に冷却可能な冷却範囲はコイルに対向するクランク軸の表面に限定され、冷却剤が直接噴射されるのは冷却時間全体の半分程度であった。このため、冷却は間欠的にしか行うことができず、ピンやジャーナルの肩部の冷却はさらに不十分になるという問題があった。
また、この技術は、表面硬化層を均一にする方法であるが、表面硬化層を均一にしただけでは、割れの発生原因となる引張応力発生の低減には効果が少ない。従って、クランク軸の焼割れ或いは置割れを防止するには限界がある上に、焼入れ後の焼戻しを省略したりすることも困難であった。
本発明が解決しようとする問題点は、クランク軸のピンやジャーナル表面の耐摩耗性、疲労強度を向上させるために、ピンやジャーナルのフィレットR部に高周波焼入れを行うと、ピンの頂上部のように肉厚の薄い部分における引張残留応力の影響により、焼入れ中の割れや遅れ破壊である置割れが発生するという点である。
発明者らは、従来、断片的にしか判っていなかったクランク軸における引張応力の発生メカニズムを明らかにし、この結果をもとに、引張残留応力を低減するためには、冷却方法と冷却範囲を変更することがポイントであること、すなわち、従来、一般的に実施されてきた冷却範囲(ピン又はジャーナル、或いは、ピン及びジャーナルの円筒部、フィレットR部、スラスト部)に加え、クランク軸のピン又はジャーナルの肩部、或いは、前記肩部とトップ部を冷却することが有効であることを知見した。そして、さらに検討を重ねた結果、このような冷却を実施すれば、高周波焼入れを行っても、焼割れや置割れの発生が抑制できることが判明した。これは、カウンタウェイトのない場合のジャーナルに関しても同様である。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、
本発明のクランク軸の焼入れ方法は、
(1)ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却に加え、前記のピン及び/又はジャーナルの肩部、及び、必要に応じて、ピン及び/又はジャーナルのトップ部も同時に冷却する、
或いは、
(2)ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却に加えて行う、前記のピン及び/又はジャーナルの肩部の冷却、及び、必要に応じて行う、ピン及び/又はジャーナルのトップ部の冷却を、前記の円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却よりも先に行う、
ことを最も主要な特徴とする。
また、本発明のクランク軸の焼入れ装置は、
(1)ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部に加え、前記のピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部を加熱後に冷却するための第1の冷却手段を備えた高周波加熱コイルと、
クランク軸の回転により前記第1の冷却手段にて前記のピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部が冷却できないときのための、前記高周波加熱コイルとは独立した第2の冷却手段とを備えた、
或いは、
(2)ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部を加熱後に冷却するための第3の冷却手段を備えた高周波加熱コイルと、
該高周波加熱コイルとは独立した冷却手段であって、前記ピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部を加熱後に冷却するための第4の冷却手段とを備えた、
ことで、肩部、又は肩部及びトップ部の冷却を、円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却と同時又はこれらの冷却よりも先に行えるようにしたことを最も主要な特徴とする。
また、本発明のクランク軸の製造方法は、上記何れかの本発明の焼入れ方法により、クランク軸の表面を焼入れ硬化することを特徴とする。
本発明は、クランク軸の高周波焼入れにおいて、冷却方法と冷却範囲を適正化することによって焼割れ、置割れの原因となる引張残留応力の低減を図ることができる。これにより、高周波焼入れ後の焼戻し省略による生産性向上が図れ、かつ、割れ発生による不良コスト低減を図ることができる。
本発明の上述の冷却方法と冷却範囲の適正化によって、焼割れ、置割れの原因となる残留引張応力が低減できることを以下に説明する。
図7は、従来のクランク軸の焼入れ状態を説明する図であり、通常のクランク軸の高周波焼入れの場合、加熱後の冷却時には、ピン1やジャーナル2の円筒部1c、2c、フィレットR部1a、2a、スラスト部1b、2bの範囲に冷却剤を噴射される。
これにより、上記各部の表面よりマルテンサイト変態が開始されるが、一般的に焼入れ性の高い低合金鋼では材料の表面部と内部のマルテンサイト変態時間にずれが生じる。そして、内部組織のマルテンサイト変態時の体積膨張が表面部に引張応力を発生させ、焼割れ或いは残留引張応力として残存し、置割れに至る場合がある。従って、特許文献1に記載の技術のように表面の硬化層を均一にするだけでは、表面の引張応力を低減することはできない。
そこで、本発明者らは、金属組織並びに力学的な観点からこの部分に3次元モデルを適用して、焼割れ、置割れの発生機構を鋭意検討した。その結果、焼割れや置割れの発生は、内部がマルテンサイト変態した時、フィレットR部からスラスト部にかけて焼割れ、置割れの要因となる大きな引張り応力が発生することが原因であることが判明した。なお、図8は冷却開始からの時間と、フィレットR部からスラスト部にかけての最大主応力と、マルテンサイト分率との関係を示した図、図9(a)は冷却開始時、(b)は図8の時間aの際、(c)は図8の時間bの際、(d)は最終状態のフィレットR部からスラスト部にかけての最大主応力を示した図である。
上記のフィレットR部からスラスト部にかけての最大主応力と、マルテンサイト分率との関係から、ピンやジャーナルの頂上部におけるフィレットR部の終端部に、引張残留応力が発生する原因として、以下の2点が考えられる。
先ず、第1点目は、クランク軸の表面と内部の冷却速度の差である。
クランク軸の表面には、冷却剤が直接かかるため、冷却速度が内部よりも速くなる。従って、加熱時にオーステナイト化した部分は、その表面が内部と比べて早くからマルテンサイト変態を起こす。このとき相変態によって表面は膨張し、内部のオーステナイト領域もこれにつられて伸びるが、降伏応力が低いため、塑性伸び歪みが発生する。冷却が進み、内部もマルテンサイト化する温度となったときは、マルテンサイト変態による膨張を開始するが、内部は前記塑性歪みを発生した状態からさらに伸びるため、これにより表面がさらに引っ張られることになる。これが表面引張応力の発生機構である。
次に、第2点目は、ピン、ジャーナルの頂上部におけるフィレットR部側と、このフィレットR側と反対側との冷却速度差である。
従来のように、フィレットR部、スラスト部付近と円筒部のみを冷却剤により冷却する場合は、ピン、ジャーナルの頂上部のフィレットR部側は速く冷却されることになるが、フィレットR側と反対側(ピンをピン肩部、ジャーナルでカウンタウェイトの無い部分をジャーナル肩部と称する)は遅れて冷却されるため、遅れて収縮することになる。このため、フィレットR側のスラスト部との接続部付近(図9(d)における矢印c付近)にはこの遅れた収縮により生じるモーメント(図9(d)における矢印m)の影響でさらに引張応力が発生する。
これらの2点を解決するためには、ピン、ジャーナルの円筒部やフィレットR部のみならず、ピン、ジャーナルのトップ部やピン、ジャーナルの肩部をも積極的に冷却することが必要となる。さらに、前記の第2点目を解決するためには、フィレットR部に対する肩部の冷却遅れを防止し、肩部の冷却遅れに起因して発生するモーメントを低減すれば良い。また、本発明においては、冷却の速度が非常に速いため、ピン、ジャーナルのトップ部や肩部は間欠的にではなく、可能な限り常時、より具体的には冷却時間全体の7割以上の時間冷却剤をかけて冷却を続けておくことが望ましい。
以上の発生メカニズムを基に、本発明者らは、当該の引張応力を低減するためには、冷却方法や冷却範囲を変更することがポイントであることを知見し、さらに検討を重ねた結果、高周波焼入れを行っても、焼割れや置割れの発生が抑制でき、高周波焼入れ後の焼戻し省略による生産性向上や、割れ発生による不良コスト低減を図ることができる上述の本発明を見出した。
本発明の効用の理由としては、ピンの円筒部、フィレットR部、スラスト部を冷却するだけでなく、ピンの肩部やトップ部をも冷却することによって、フィレットR部、スラスト部の表面だけでなく、肩部やトップ部側からもマルテンサイトに変態し、内部のみ変態が遅れるため、フィレットR部における終端部の引張応力が大幅に低下することによる。これは、カウンタウェイトのない場合のジャーナル部に関しても同様である。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
(1)実施方法
図10は、直列4気筒用クランク軸のピン1及びジャーナル2の焼入れ後における硬化層範囲B(ハッチングを入れた箇所)の例を示している。通常、クランク軸は、図7(b)に示すような半円筒型のコイル3を用いて焼入れされるが、クランク軸はジャーナル2の中心線上を軸に回転する際、コイル3は軸部外周上の半周を囲んだ状態で追随し、180°回転することで全周加熱される。加熱後の冷却は、コイル3のジャケットより冷却剤が噴霧され、加熱と同様に180°回転することで全周冷却される。加熱、冷却共に、実施条件で指定した時間だけクランク軸が回転する。
本発明との差異を明確にするため、図1に示した本発明の場合の冷却範囲(円筒部1c、フィレットR部1a、スラスト部1bに加えて、肩部1eと必要に応じてトップ部1d。図1(a)(b)では、肩部1eとトップ部1dにハッチングを入れて示している。)と、図7に示した従来技術での冷却範囲(円筒部1c、フィレットR部1a及びスラスト部1b)で焼入れ試験を実施した。
以下、本発明の実施の形態について説明する。ここでは、ピンを焼入れした場合について説明するが、ジャーナルの場合も、対象がジャーナルとなるだけで、概略同様である。
本発明による焼入れ方法を実施するための構成として、図2及び図3に請求項5に相当する構成を示す(以下、「冷却装置構成1」とする)。図3のように、コイル3にピン1の円筒部1c、フィレットR部1a、スラスト部1b付近を冷却する冷却装置11aに加え、ピン1のトップ部1dと肩部1eを冷却する冷却装置11bを備えた第1の冷却手段11を備える。
図3(a)のように、ピン1のトップ部1dがコイル3側にあり、ピン1のトップ部1dと肩部1eを冷却装置11bで冷却できる範囲は、この冷却装置11bにて冷却する。一方、図3(b)のように、ピン1のトップ部1dがコイル3と逆側にある場合は、コイル3とは独立に設置している第2の冷却手段12にてピン1のトップ部1dと肩部1eを冷却する。これら第1の冷却手段11及び第2の冷却手段12により冷却時にピン1の肩部1e、トップ部1dに冷却剤を噴射することが可能となる。
図3(b)からわかるように、冷却装置11bはクランク軸が回転しても干渉しない形状としている。冷却装置11bの形状はクランク軸との干渉が無く、第2の冷却手段12との組み合わせで、ピン1の肩部1eやトップ部1dを冷却できれば形状は任意で良い。この第2の冷却手段12は、隣のピン1側にもノズルが設けられており、隣のピン1の焼入れ時には隣のピン1もこの第2の冷却手段12で冷却することが可能なようになっている。また、この第2の冷却手段12の形状は、実施例では半円状としているが、周りとの干渉が無く、かつ、ピン1を冷却できるものであれば形状は任意で良い。
次に、請求項6に相当する構成を図4に示す(以下、「冷却装置構成2」とする)。図4のように、ピン1の円筒部1c、フィレットR部1a、スラスト部1b付近を冷却する第3の冷却手段13と、この第3の冷却手段13とは別に設置した、ピン1のトップ部1dと肩部1eを冷却する半円状となした第4の冷却手段14を備える。この第4の冷却手段14は、隣のピン1側にもノズルが設けられており、隣のピン1の焼入れ時には隣のピン1もこの第4の冷却手段14で冷却することが可能となっている。また、この第4の冷却手段14の形状は、図4に示した例では半円状の1組の冷却手段としているが、周りとの干渉が無く、かつ、ピン1を冷却できるものであれば形状は任意で良い。なお、図4中の14aは冷却剤の噴射口を示す。
また、ジャーナル2の焼入れ時のカウンタウェイトのない部分(図3、図4の円で囲んだa部)の冷却時においても同様の装置構成にて実施した。装置構成は類似のため、ここでは説明を省略するが、実施結果のみ下記に示す。
(2)実施条件
実施例に用いた焼入れ条件を以下に示す。
周波数:20kHz、出力:100〜150kW、加熱時間:5sec、冷却時間:15sec、ワーク回転数:50rpm、冷却剤:水溶性ポリマー10%、冷却剤流量密度:10000L/m2 ・min、フィレットR部の焼入れ深さ:1.0〜3.0mm、焼入れ後の硬さ:HV650〜700。
また、実施例におけるピン及び/又はジャーナル部の肩部、トップ部の冷却は、実施例3−2、7−2以外は、冷却時間全体の9割以上の時間において冷却剤が直接かかるように装置を構成した。また、実施例3−2、7−2では、冷却時間全体の7割の時間において冷却剤が直接かかるように装置を構成した。すなわち、実施例3−2、7−2では図4(b)における角度θ1とθ2の和が250°以上となるようにしている。また、実施例3−2、7−2以外ではクランク軸の冷却対象となるピンまたはジャーナルの全周を上下の冷却装置で覆うようにしており、冷却時間全体の9割以上の時間、ピンまたはジャーナルの肩部やトップ部に冷却剤が直接かかるように構成している。なお、図4(b)中の15は、クランク軸のジャーナル中心を示す。
(3)評価方法
焼入れ直後の焼割れ、および、pH1.0の塩酸浸漬1時間後、200時間放置した後の置割れ発生有無で評価した。評価位置は、図6に示すような、フィレットR部からスラスト部にかけての位置とした。
(4)結果
評価を下記表1及び表2に示す。下記表1はピンを焼入れした場合、表2はジャーナルを焼入れした場合の結果を示したもので、表中の割れ無は、焼割れ及び置割れ共に発生しなかったものを、割れ有は、置割れが発生したものを意味する。



























ピンの肩部やトップ部冷却の先行時間tにはマルテンサイト変態を起こす臨界冷却速度との関係で制約があり、以下のように決定する。
スラスト部、フィレットR部、円筒部をマルテンサイト変態可能な臨界冷却速度で冷却した場合に、これら部分の温度が、冷却時にAc3温度(加熱時のフェライト/パーライト→オーステナイト変態終了温度)まで冷却された時からマルテンサイト変態開始温度へ到達するまでの時間をtmaxとする。
また、現冷却条件で冷却した場合のAc3温度からマルテンサイト変態開始温度へ到達する時間をt0とする。マルテンサイト化するためには、tmaxまでにマルテンサイト変態開始温度まで冷却している必要があるため、tmax−t0がスラスト部、フィレットR部、円筒部に冷却剤をかけずに放置しておいても良い時間、つまり、肩部やトップ部の冷却先行時間としてとりうる最大値である。このように、先行時間はマルテンサイト変態開始温度への到達時間で規定されるため、加熱条件や冷却条件、クランク軸の形状等に依存し、これら条件ごとにこの先行時間は異なる。
本実施例の場合、上記思想により検討した結果、0≦t≦4(sec)が適切であることが判明した。実施例cにてスラスト部やフィレットR部、円筒部の焼入れ後の組織を観察したところ、組繊はマルテンサイト組織となっており、焼入れ品質も問題がないことを確認している。
また、ピンの肩部、トップ部の冷却は、可能な限り常時行うのが残留応力発生の観点から望ましいが、前記実施例にあるように、冷却時間全体の7割以上の時間において冷却剤が直接かかるようにすればよいことを確認している。
上記表2における冷却装置構成1’、2’はそれぞれ冷却装置構成1、2から冷却対象がジャーナルとなったための変更を施したものである。また、ジャーナルの肩部やトップ部冷却の先行時間tは、本条件の場合、0≦t≦4(sec)が適切であった。理由はピンの焼き入れ時と同様である。
また、ジャーナルの肩部、トップ部の冷却は、可能な限り常時行うのが残留応力発生の観点から望ましいが、前記実施例にあるように、冷却時間全体の7割以上の時間において冷却剤が直接かかるようにすればよいことを確認している。
上記の表1及び表2より明らかなように、本発明を実施することにより、クランク軸の高周波焼入れにおいて、冷却方法と冷却範囲を適正化でき、焼割れ、置割れの原因となる応力低減、及び、割れ防止を図れることが明らかとなった。すなわち、前記引張応力を低減するためには、冷却方法と冷却範囲を変更することがポイントであり、この冷却方法と冷却範囲を適正に行うことで、高周波焼入れを行っても、焼割れや置割れの発生が抑制でき、高周波焼入れ後の焼戻し省略による生産性向上、かつ、割れ発生による不良コスト低減を図ることができる。
本発明は、他のタイプのクランク軸(直列3気筒、直列6気筒、V型6気筒、V型8気筒等)にも適用できることは言うまでもない。
また、本発明は、ピンの円筒部、フィレットR部やスラスト部だけでなく、ピンの肩部やトップ部をも可能な限り常時冷却することによって、フィレットR部、スラスト部の表面だけでなく、ピンの肩部側からもマルテンサイトに変態し、内部のみ変態が遅れるため、フィレットR部の終端部の引張応力が大幅に低下する。これは、カウンタウェイトのない場合のジャーナル部に関しても同様である。
本発明は、前記の各例に示した実施形態に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範囲であれば、その実施形態の変更は任意である。
以上の本発明は、クランク軸の焼入れに限らず、同様の複雑な形状をした素材の焼入れにも適用できる。
本発明において実施する冷却範囲を説明する図であり、(a)(b)は見る方向を異ならせた斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)の要部拡大図である。 本発明の冷却態様の説明図である。 冷却装置構成1の説明図で、(a)はピンのトップ部がコイル側にある場合、(b)はピンのトップ部がコイルと逆側にある場合である。 冷却装置構成2の説明図で、(a)は図3の(a)と同様の図、(b)はクランク軸の軸方向から見た第4の冷却手段の図である。 ピン頂上部とジャーナル頂上部を説明する図である。 実態クランク軸でのピンに発生した焼割れ、置割れ現象を示す図である。 従来の焼入れ状態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面から見た図、(c)は(a)の要部拡大図である。 金属組織並びに力学的な観点から見た焼割れ、置割れの発生メカニズムを示した図で、冷却開始からの時間と、フィレットR部からスラスト部にかけての最大主応力及びマルテンサイト分率との関係を示した図である。 (a)〜(d)は冷却開始から最終状態までのフィレットR部からスラスト部にかけての最大主応力の変化を順を追って示した図である。 クランク軸のピン及びジャーナルの焼入れ後における硬化層範囲Bの例を示した図である。
符号の説明
1 ピン
1a フィレットR部
1b スラスト部
1c 円筒部
1d トップ部
1e 肩部
2 ジャーナル
2a フィレットR部
2b スラスト部
2c 円筒部
2d フィレットR部
3 コイル
4 カウンタウェイト
5 アーム部
11 第1の冷却手段
11a、11b 冷却装置
12 第2の冷却手段
13 第3の冷却手段
14 第4の冷却手段

Claims (7)

  1. クランク軸の表面を焼入れする方法であって、
    ピン及び/又はジャーナルの加熱後の冷却を行う際、
    前記ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却に加え、前記ピン及び/又はジャーナルの肩部も同時に冷却することを特徴とするクランク軸の焼入れ方法。
  2. 請求項1に記載のクランク軸の焼入れ方法において、
    前記ピン及び/又はジャーナルのトップ部も同時に冷却することを特徴とするクランク軸の焼入れ方法。
  3. クランク軸の表面を焼入れする方法であって、
    ピン及び/又はジャーナルの加熱後の冷却を行う際、
    前記ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却に加えて行う、前記ピン及び/又はジャーナルの肩部の冷却を、前記円筒部、フィレットR部及びスラスト部よりも先に行うことを特徴とするクランク軸の焼入れ方法。
  4. 請求項3に記載のクランク軸の焼入れ方法において、
    前記ピン及び/又はジャーナルの肩部と共に行うトップ部の冷却も、前記円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却よりも先に行うことを特徴とするクランク軸の焼入れ方法。
  5. クランク軸の表面を焼入れするための装置であって、
    ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部に加え、前記ピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部を加熱後に冷却するための第1の冷却手段を備えた高周波加熱コイルと、
    クランク軸の回転により前記第1の冷却手段にて前記ピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部が冷却できないときのための、前記高周波加熱コイルとは独立した第2の冷却手段とを備え
    前記肩部、又は肩部及びトップ部の冷却を、前記円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却と同時又はこれらの冷却よりも先に行えるようにしたことを特徴とするクランク軸の焼入れ装置。
  6. クランク軸の表面を焼入れするための装置であって、
    ピン及び/又はジャーナルの円筒部、フィレットR部及びスラスト部を加熱後に冷却するための第3の冷却手段を備えた高周波加熱コイルと、
    該高周波加熱コイルとは独立した冷却手段であって、前記ピン及び/又はジャーナルの肩部、又は肩部及びトップ部を加熱後に冷却するための第4の冷却手段とを備え
    前記肩部、又は肩部及びトップ部の冷却を、前記円筒部、フィレットR部及びスラスト部の冷却と同時又はこれらの冷却よりも先に行えるようにしたことを特徴とするクランク軸の焼入れ装置。
  7. 請求項1〜4の何れかに記載の焼入れ方法により、クランク軸の表面を焼入れ硬化することを特徴とするクランク軸の製造方法。
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