JP3915461B2 - 熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルブチラール樹脂に他の材料をブレンドしてバインダーとして用いて物性を改良した有機銀塩を含有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、画像を形成するために現像、定着、水洗、乾燥というプロセスが必要であり、しかも処理工程が湿式であるため、作業が煩雑であるという欠点があった。その為、現像工程を熱処理で行う熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料が開発、実用化され、近年医用業界を中心に急速に普及してきている。
【0003】
かかる技術として、例えば、米国特許第3,152,904号、同3,487,075号、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料(熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料)では溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便なシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
このような熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、100℃から150℃にフィルムを加熱し現像処理を行うため、加熱時あるいは加熱直後のスリキズの付き易さが新たな課題となった。例えば、125℃で30秒フィルムを加熱することにより現像を行う熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料では、現像直後に砂埃のたまった机の上などにフィルムを置き、机とフィルムを擦るとフィルム表面上にキズがつくことがある。このようなキズの発生は、例えば医療用の場合、診断に影響しなくても、商品の品位として好ましくなく、改良が望まれた。このようなキズの発生防止方法として、マット剤を多量に用いる方法をあげることができるが、フィルムのヘーズ値が上がり、マット剤の使用量に限界がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、スリキズ特に熱現像処理直後のスリキズの付き易さをヘイズを劣化させることなく改良された熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料(熱現像感光材料ともいう)を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0007】
1.変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩を含有したポリビニルブチラール樹脂をバインダーに用いたことを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0010】
2.変性オルガノポリシロキサンが上記一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)のいずれかで表されるものであり、有機カルボン酸のマグネシウム塩が上記一般式(2)で表されるものであり、かつ、変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩とポリビニルブチラール樹脂の配合比が上記式(3)で表されることを特徴とする前記1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0013】
本発明を更に詳しく説明する。本発明において用いられる、変性オルガノポリシロキサンとは、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部が、メチル基以外の基で置換されているオルガノポリシロキサンを指し、例えば、エーテル変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、エステル変性オルガノポリシロキサン、アミン変性オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。これらの変性オルガノポリシロキサンの分子量は、1000〜1000000の範囲が適当である。変性オルガノポリシロキサンとして好ましくは、前記一般式(1−1)、(1−2)又は(1−3)で表される変性オルガノポリシロキサンである。
【0014】
上記一般式(1−1)、(1−2)又は(1−3)は、必ずしもブロック共重合体を意味するものではなく、ランダム共重合体も含んで表現をしている。
【0015】
次に本発明の変性オルガノポリシロキサンの具体例を示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
本発明において用いられる、有機カルボン酸のマグネシウム塩は、総炭素数が8〜18の化合物が好ましく、好ましくは、前記一般式(2)で表される、モノカルボン酸のマグネシウム塩である。
【0020】
一般式(2)において、k及びk′はそれぞれ2〜7の正の整数を表すが、好ましくは、k、k′がそれぞれ5〜7の場合である。
【0021】
本発明においては、変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩をそれぞれ単独で用いても良いが、併用しても良い。
【0022】
併用する場合は、変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩とポリビニルブチラール樹脂の配合比が、前記式(3)で表される範囲であるとより好ましい。
【0023】
本発明において用いられる、ポリビニルブチラール樹脂とは、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化したものであり、ビニルブチラール単位として50〜90質量%有するものが好ましい。重合度としては500〜5000が好ましい。
【0024】
以下に、熱現像感光材料の構成について説明する。
本発明の熱現像感光材料は、通常は支持体上に少なくとも1層の感光層及び該感光層に隣接する層を設けた少なくとも2層から構成されて、また感光層の反対側には必要に応じて適宜バックコート層(BC層)、保護層等が設けられている。上記熱現像感光材料の感光層中には、分光増感色素で増感されてもよい感光性ハロゲン化銀粒子が含まれ、さらに感光層またはその隣接層には銀源となる有機銀塩、銀塩を現像して銀画像を形成するための還元剤が含有される。熱現像感光材料の感光層やその隣接層には、熱現像の場を提供する高分子結合剤、親水性結合剤や疎水性結合剤、或いはラテックスが含有される。上記の熱現像感光材料において、必要によりイラジエーション防止またはハレーション防止のための染料を含有するAI層またはBC層が設けられる。また、上記の熱現像感光材料の感光層には、必要により銀画像の色調を整える色調剤を含有させることができる。
【0025】
本発明において、有機銀塩は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値をもつようなリサーチ・ディスクロージャー(以降、単にRDと略す)第17029及び第29963に記載された有機又は無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0026】
有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩、アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩乃至錯体、例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩乃至錯体、チオン類の銀塩又は錯体、例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩乃至錯体、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩、サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。これらの中、好ましい銀塩としてはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀があげられる。
【0027】
本発明において用いることのできる感光性ハロゲン化銀粒子について説明する。なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に、又は、人為的に物理化学的な方法により、可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ可視光ないし赤外光を吸収したときに当該ハロゲン化銀結晶内及び/又は結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0028】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(PaulMontel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0029】
本発明で用いることのできるハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.2μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.17μm、特に0.02μm〜0.14μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0030】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの中、特に、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0031】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは1.5以上100以下、より好ましくは2以上50以下である。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0032】
本発明の熱現像感光材料に内蔵させるに好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号、及びRD第17029及び第29963に記載されており、公知の還元剤の中から適宜選択して使用することが出来るが、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合には、2個以上のフェノール基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)又はアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたビスフェノール類が好ましい。
【0033】
還元剤としては、上述のように、主に、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンをもった還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
【0034】
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有しかつ熱現像感光材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造をもった化合物でもよい。
【0035】
又、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性をもたせるために炭素環式、又は複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0036】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、化学増感を施すことができる。例えば、特願2000−57004号明細書及び特願2000−61942号明細書に開示されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物で化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。本発明においては、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤はハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0037】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、特開平11−218874号等の明細書に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子又はリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることが出来、還元増感の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0039】
本発明で用いることのできる感光性ハロゲン化銀粒子には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばRD第17643 IV−A項(1978年12月p.23)、同第18431 X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましく、例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
【0040】
本発明の熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子、あるいは有機銀塩粒子を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はRD第17643(1978年12月発行)第23頁 IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、特公昭43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているものを用いることができる。本発明においては、上記の強色増感剤の他に、特願2000−70296号明細書に開示されている一般式(1)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
【0041】
本発明においては省銀化剤を用いる事が出来る。ここでいう省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。省銀化剤としては、ヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0042】
本発明においては、又、膜付きや、現像ムラのみならず、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果のために、架橋剤を用いることがある。本発明で用いられる架橋剤としては、従来写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、アルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、イソシアネート系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン系、酸無水物等の架橋剤を用いうるが、好ましいのはイソシアネート化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。
【0043】
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD第17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号および同第4,021,249号明細書に開示されており、例えば、次のものがある。イミド類(例えば、スクシンイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組み合わせ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組み合わせである。
【0044】
本発明においては、感光材料の表面層(感光層側、又支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)に、現像前の取り扱いや熱現像後の画像の傷つき防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対し、質量比で0.1〜30%含有することが好ましい。本発明において用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0045】
本発明においては帯電性を改良するために、金属酸化物および/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光性層と下引層の間の層などに含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0046】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも一層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、又支持体の反対の面には感光材料間の、或いは感光材料ロールにおいてくっつきを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。
【0047】
本発明の熱現像感光材料においては、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0048】
本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、ガラス、紙、アルミニウム板等の金属板などが用いられる。
【0049】
本発明においては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明に係る光熱写真材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2000−83655号明細書に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(チオピリリウムスクアリリウム染料)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(ピリリウムスクアリリウム染料)、又スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0050】
本発明の熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、乾燥処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い、乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0051】
本発明において、現像条件は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、像様に露光した熱現像感光材料を加熱現像することにより、情報定着せしめることが特徴である。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(例えば、約80〜200℃、好ましくは約100〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像感光材料を加熱することにより現像することができる。加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又200℃を超えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0052】
本発明の支持体を用いた熱現像感光材料の露光は、該感光材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、該感光材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーである事や、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0053】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0054】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。
【0055】
また、第2の方法として、本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0056】
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0057】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。なお、上述した各画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザイメージャやレーザイメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像感光材料を走査するときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
実施例
以下の例に従ってバインダーを調製した。
【0060】
(バインダー例1)
ブチラール化度65モル%、残存ビニルアルコールユニット24.5モル%、残存酢酸ビニルユニット0.5モル%のポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製、商品名エスレック)100質量部に、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブリレート5質量部と、本発明の変性オルガノポリシロキサンS−1及び酪酸マグネシウムを、表1に示される質量部数づつ混合してバインダー1とした。
【0061】
(バインダー例2〜32)
変性オルガノポリシロキサンの種類、量とモノカルボン酸のマグネシウム塩の量と種類を表1〜3に示したように変化させて、バインダー2〜32を作製した。
【0062】
〈熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の作製〉
厚さ175μmで青色濃度0.175に着色された、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に12W/m2・分の出力となるようにコロナ放電を施した後、下記下引塗布液1を乾燥膜厚が9μmとなるように塗布した後、140℃(露点温度:12℃)の乾燥風で10秒間かけて乾燥させ、下引層1を形成した。
【0063】
(下引塗布液1)
純水 911ml
化合物−1の30%水溶液 73.0ml
トラックスH−45 5.78ml
(日本油脂(株)製アニオン界面活性剤:固形分2%に調整)
アンモニア水(有効成分0.5%) 9.9ml
硬膜剤(C−6:有効成分20%) 2.02ml
次いで、上記下引層1に7W/m2・分の出力となるようにコロナ放電を施した後、その上に下記下引塗布液2を、乾燥膜厚が9μmとなるよう塗布した後、140℃(露点温度:12℃)の乾燥風で10秒間掛けて乾燥させて下引層2を形成し、次いで、123℃の乾燥ゾーンを2分間かけて搬送して、絶縁体粒子を含有する下引層2を設けた。
【0064】
【化7】
【0065】
(下引塗布液2)
純水 905ml
化合物−2の30%水溶液 59.29ml
トラックスH−45 5.78ml
(日本油脂(株)製アニオン界面活性剤:固形分2%に調整)
絶縁体粒子:サイリシア350(富士シリシア化学製)を超音波分散した溶液
(固形分濃度1%) 33.56ml
【0066】
【化8】
【0067】
上記下引塗布液2は、下記の条件にて超音波分散を行った後、塗布に使用した。
【0068】
分散条件:周波数=25kHz、出力=100W、振動子外形寸法=64φ×300mm、分散時間=20分
次いで、上記下引層2とは、プラスチックフィルムを挟んで反対側に、バック層面側の下引加工を、上記と同様の方法で行った。
【0069】
《熱現像感光材料の作製》
上記作製したプラスチックフィルムの試料を用いて、以下に示す方法で調製した各構成層を順次塗布した。
【0070】
(バック面側の塗布)
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。次に、溶解した液に0.30gの赤外染料−1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加し攪拌してバック面側の塗布液を調製した。
【0071】
【化9】
【0072】
このように調製したバック面塗布液を、前記作製した各プラスチックフィルムの下引層2上に、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0073】
(感光層面側の塗布)
〔感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製〕
〈溶液A1〉
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
〈溶液B1〉
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
〈溶液C1〉
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
〈溶液D1〉
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
〈溶液E1〉
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
〈溶液F1〉
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
〈溶液G1〉
56%酢酸水溶液 18.0ml
〈溶液H1〉
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)mH
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号に示される混合攪拌機を用いて溶液A1に溶液B1の1/4量及び溶液C1の全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。この間pAgの調整を溶液E1を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液B1の3/4量及び溶液D1の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0074】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0075】
〔粉末有機銀塩Aの調製〕
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0076】
次に1モル/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0077】
〔予備分散液Aの調製〕
表1〜3に記載したバインダー14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩Aの500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0078】
〔感光性乳剤分散液1の調製〕
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ(株)製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0079】
〔安定剤液の調製〕
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0080】
〔赤外増感色素液Aの調製〕
19.2mgの赤外増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0081】
【化10】
【0082】
〔添加液aの調製〕
現像剤としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料−1をMEK110gに溶解し添加液aとした。
【0083】
〔添加液bの調製〕
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0084】
【化11】
【0085】
〔感光層塗布液の調製〕
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)およびMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、化学増感剤Sen−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にカブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の化学増感剤Sen−5の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分攪拌した。続いて、安定剤液の167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、表1〜3記載の前記予備分散液Aの調製に用いたバインダー13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。さらに攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0086】
【化12】
【0087】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK(メチルエチルケトン)42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散しマット剤分散液を調製した。
【0088】
〔表面保護層塗布液の調製〕
MEK(メチルエチルケトン)865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物(VSC)(1,3−ジビニルスルホニル−2−ヒドロキシプロパン)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0089】
〔感光層面側塗布〕
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液をエクストルージョン型押し出しコーターを用いて、前記作製した各プラスチックフィルムの下引層2の上に、同時に重層塗布することにより感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、熱現像感光材料を作製した。表1〜3に示す様に各樹脂を変化させ熱現像感光材料試料1〜32とした。
【0090】
《熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料試料の評価》
以上のようにして作製した試料1〜32を、下記に示す評価を行った。
【0091】
(現像直後のスリキズ評価)
上記作製した各試料を、23℃、50%RHの環境下で3日間保存した後、感光性層面側から、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機によりレーザ走査により濃度1.0になるように露光を与えた。この際に、各試料の露光面と露光レーザ光の角度を75度とした。
【0092】
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料試料の保護層とドラム表面が接触するようにして、110℃で15秒熱現像処理した。この、露光及び現像も23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0093】
現像が終了後3分経過したフィルムの乳剤層側の面を23℃、55%RHの条件下で、先端の曲率が0.15mmのサファイヤ針を直角にあてがい、60cm/minで試料を移動しながら、サファイヤ針にかかる荷重を0〜200gまで徐々に増加させた。傷がポリエステル支持体にまで到達するときの荷重を耐スクラッチ性の指標とし、150g以上が良好なレベル、50g以下は実用上使用不可レベルである。
【0094】
(膜付きの評価)
上記の様に露光、現像した各試料を、23℃、50%RHの環境下で10分間放置した後、試料の感光層面側に、かみそりの刃で、支持体に対して45度の角度で支持体にまで到達するまでのキズを格子状に付け、その上に粘着テープ(セロハン粘着テープ)を圧着した後、該テープを支持体に対して45度の角度で急速に剥離した。この時、貼り付けたテープ面積に対し、テープと一緒に剥離せずに残った感光層の面積比率を測定し、下記に示す基準に則り膜付きの評価を行った。
【0095】
5:100%の部分が剥離せず残っている
4:90%以上〜100%未満の部分が剥離せず残っている
3:80%以上〜90%未満の部分が剥離せず残っている
2:50%以上〜80%未満の部分が剥離せず残っている
1:50%未満の部分しか残っていない。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
表1〜3から明らかなように、本発明の試料は熱現像処理直後のスリキズ耐性が強く、膜付きの優れた試料であることが判る。
【0100】
【発明の効果】
熱現像処理直後のスリキズ耐性が強い熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料が得られた。
Claims (2)
- 変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩を含有したポリビニルブチラール樹脂をバインダーに用いたことを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
- 変性オルガノポリシロキサンが下記一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)のいずれかで表されるものであり、有機カルボン酸のマグネシウム塩が下記一般式(2)で表されるものであり、かつ、変性オルガノポリシロキサンと有機カルボン酸のマグネシウム塩とポリビニルブチラール樹脂の配合比が下記式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2)
CH 3 −(CH 2 ) k −COO−Mg−OOC−(CH 2 ) k ′−CH 3
(式中、k及びk′はそれぞれ2〜7の正の整数を表す。)
式(3)
3.9≦Y/X+0.24C≦4.5であり、
かつ 0.05≦Y/X
(式中、Yはポリビニルブチラール樹脂100質量部に対する変性オルガノポリシロキサンの質量部、Xはポリビニルブチラール樹脂100質量部に対するモノカルボン酸のマグネシウム塩の質量部、Cは上記カルボン酸の総炭素数で6〜18の正の整数を表す。)
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