JP3914883B2 - 昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウレタン断熱材と一体で形成し、断熱性とデザイン性に優れた冷蔵庫用ドア外装パネル等に使用される昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、個性の時代と言われるようになり、個人の価値観は多様化し、特に商品の自分の好みの色柄に対するニーズは非常に幅広く高いものとなった。
【0003】
しかし、冷蔵庫等の家電製品は、大量生産で安価に仕上げるために、後加工が可能な表面処理層と鋼板とが一体となった塗装鋼板やラミネート金属板が使用されており、この塗装鋼板やラミネート金属板は、いったん表面処理層の色柄が決まると、頻繁な仕様変更は困難であり、同じ色柄のものを大量ロットで生産するのが常識とされている。
【0004】
よって、多様化する個々の色柄への要望に応える事は、生産効率を低下させ、また、納期が遅くなる問題があり敬遠されていた。
【0005】
しかし、最近では昇華型着色剤による昇華転写技術が発達し、ラミネート金属板や塗装鋼板に直接印刷する方法が実用化されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、真空吸引を利用し、被印刷物と昇華型印刷シートとを密着させた状態で熱転写することにより、色むらのない鮮明な印刷模様を被印刷物に付与する方法が記載されている。
【0007】
すなわち、昇華型着色剤を含む着色組成物をインクジェット等で塗布した昇華型印刷シートを、被印刷物に重ね合わせて、ホットプレートとゴムシートとの間に入れ、ホットプレートとゴムシートとの間隙を真空ポンプで真空吸引することにより、被印刷物に昇華型印刷シートを密着させる。そしてホットプレートから加えられる熱エネルギーにより、昇華型印刷シートから被印刷物に昇華型着色剤を熱転写させる。
【0008】
この真空吸引する方法では、大きな塗装鋼板を被印刷物として使用した場合でも、被印刷物の全面を均一に加圧することができ、色むらのない印刷物が形成できるものである。
【0009】
なお、このような方法で鋼板等の金属板に印刷するには、予め染色性に優れた透明または半透明の樹脂層を表層に形成しておく必要がある。
【0010】
また、利用される鋼板としては、特許文献2に、金属板素地上に設けられている不透明樹脂層と、この不透明樹脂層上に積層され、それぞれ内部に昇華型着色剤が入り込んで色柄模様が形成されている複数層の透明樹脂層とを備えていることを特徴とする金属装飾板が記載されている。
【0011】
すなわち、特許文献1、特許文献2では、予め上層面がクリヤ塗装された塗装鋼鈑や、透明フィルムが貼られたラミネート金属板に直接昇華転写により模様を形成するので、少量での模様付き金属装飾板の製造時間を短縮することができるとともに、特に透明樹脂層を有するラミネート鋼鈑は仕上がりの模様面に質感や深みを持たせることができるとの特徴を有する。
【0012】
しかし、複数層に形成したラミネートフィルムとして一般的に使用されている塩化ビニルフィルムやポリエチレンフィルムやポリエステルフィルムを使用すると、複数層であるために昇華転写時に色柄模様の印刷ラインがぼやけるとともに、耐熱性や耐候性が非常に悪く、被印刷物と昇華型印刷シートとを密着させた状態で熱転写すると、被印刷物表面が昇華型印刷シートの跡や昇華型印刷シートのバックアップ部材の跡が残るために、表面状態が著しく悪くなる。
【0013】
また、50℃以上の熱が加わると昇華型着色剤が複層のラミネート層の中で再昇華現象を引き起こし、初期の仕上げた模様が時間とともに崩れ易い欠点を有し、特に冷蔵庫扉等のウレタン一体発泡からなる断熱パネルに使用した場合には、ウレタン発泡での熱を受け、工程中に色むらが発生し、さらに実使用時においても冷蔵庫扉にメモ用紙等を貼り付けておくと色移りを生じることもあった。
【0014】
耐候性に優れた昇華転写模様付き金属装飾板としては、特許文献3に、分子量、ガラス転移温度(Tg)及びメラミン含有量が特定された熱硬化型ポリエステル樹脂で、透明の上塗り塗膜を形成することにより、耐候性に優れた昇華転写模様付き金属装飾板を得ることが記載されている。
【0015】
すなわち、この昇華転写模様付き金属装飾板は、平均分子量1000〜10000、ガラス転移温度(Tg)20〜60℃、樹脂固形分100質量部に対するメラミンの割合が20〜150質量部である熱硬化型ポリエステル樹脂を主成分とするクリヤ塗料から形成され、昇華型着色剤の浸透により色柄模様が付与された上塗り塗膜が下地金属板に直接、又はベースコート層、プライマー層等を介して設けられているものである。
【0016】
このように、分子量とガラス転移温度とが特定された熱硬化型ポリエステル樹脂が主成分であるクリヤ塗料であれば、ラミネート金属板での欠点であった耐熱性と耐候性と再昇華性は改良される。
【0017】
すなわち、ラミネート金属板と塗装鋼板の何れの昇華転写模様印刷法も、外皮のクリヤ塗膜中に昇華型着色剤で描いた模様を浸透させることにより自由に模様を発現させることができる。よって、塗装鋼板やプレコ−ト鋼板に、後工程にて自由に色柄をつけることができ、多様化するニーズに対応が可能である。
【0018】
【特許文献1】
特開2001−329474号公報
【特許文献2】
特許第2957864号公報
【特許文献3】
特開2002−059078号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の昇華転写模様付き金属装飾板では、長期信頼性の面で、まだまだ問題があり、ラミネート金属板については、耐熱性が悪く、昇華転写時の熱と圧力により、被印刷物表面に、昇華型印刷シートの跡や昇華型印刷シートのバックアップとして使用している部材の跡が残るために、ラミネート鋼鈑の表面平滑性が低下し、光沢と鮮映性が悪くなる問題があった。
【0020】
また、50℃以上の熱が加わると、昇華型着色剤が複層のラミネート層の中で再昇華現象を引き起こし、初期の仕上げた模様が時間とともに崩れ易い欠点を有し、特に冷蔵庫扉等のウレタン一体発泡からなる断熱パネルに使用した場合には、ウレタン発泡での熱を受け、工程中に色むらが発生し、さらに実使用時においても、冷蔵庫扉にメモ用紙等を貼り付けておくと色移りを生じることも予測される。また、特許文献2の様に、複層にすると、よりいっそう印刷ラインが不明確となる。
【0021】
また、特許文献3の様に、熱硬化性のポリエステル樹脂を塗装した塗装鋼板で昇華転写した模様付き金属装飾板では、昇華転写時の熱と圧力により変形し表面平滑性が低下する問題は少ないが、再昇華現象の完全な解決とはならず、ラミネート鋼鈑に比べると厚みの均一性に欠け、外観的に光沢性と鮮映度に劣るために深み感が悪い。さらに、熱硬化性樹脂を使用するために後加工でのプレスや曲げにて塗膜の割れが生じ易い欠点を有する。
【0022】
特に、ラミネート金属板と同様に、ウレタン発泡断熱パネルを作成する場合において60℃以上の温度がかかるために、再昇華現象を生じ、時間とともに昇華転写模様が薄くなる。
【0023】
また、冷蔵庫扉に使用したとき、マグネット等でメモ用紙などを取り付けると再昇華による着色剤の移行が生じたりする欠点があった。
【0024】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、昇華転写時の加熱圧着による表面の平滑性の劣化がなく、ウレタン一体発泡熱での再昇華現象による色褪せもなく、生活環境範囲内での熱では再昇華しない、耐候性の良い昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法を提供するものである。
【0025】
また、本発明は、再昇華を防止し、耐熱性、耐候性に優れたフィルム材料及び製造方法を用いてラミネート金属板を形成することにより、表面外皮樹脂層に浸透させた昇華型着色剤の変色・褪色を大幅に抑制し、後加工が可能で、耐熱性、耐候性が改善され、表面平滑性を維持する昇華転写模様付き金属装飾板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを前記外皮樹脂層と前記色柄模様面との間に挟み重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するものであり、昇華転写時に昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを介在させることで、昇華転写時の熱と圧力の影響を少なくし、昇華型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残さず、表面平滑性を維持する昇華転写模様付き金属装飾板を製造できる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0027】
また、請求項2に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートし、前記外皮樹脂層の上層面に引き剥がし可能な保護層として昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを予め貼り合わせたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するものであり、昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムがラミネート金属板への昇華転写を邪魔することなく、昇華型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残すことなく、転写時の作業効率を下げることなく平滑性のある昇華転写模様付き金属装飾板を得ることができ、その後の工程においてもラミネート鋼鈑の表面傷つき要因から常に保護することができる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を 通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0028】
また、請求項3に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明における昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムとして、ポリプロピレン樹脂を使用したものであり、ポリプロピレン樹脂は、反応基を持たない直鎖型の分子構造がゆえに昇華型着色剤との親和性が低く、融点が190℃前後であり、昇華転写での加熱においても融解することなく形状を維持するので、昇華転写模様付き金属装飾板の平滑性を維持するのに最も都合がよい。
【0029】
また、請求項4に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着するもので、前記加熱圧着工程が一次圧着工程と二次圧着工程とからなり、二次圧着工程の圧力を一次圧着工程の圧力よりも小さくして加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するものであり、外皮接着剤層と着色樹脂層が加熱により軟化しない時点でしっかりと外皮樹脂層と色柄模様面とを密着させ、その後、熱の上昇とともに圧力を小さくすることで、昇華型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残らないようにできる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0030】
また、請求項5に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着し、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するもので、前記昇華型印刷シートに光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルムを使用するものであり、昇華型印刷シートの跡を残すことなく光沢のある昇華転写模様付き金属装飾板を得ることができる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0031】
また、請求項6に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、加熱圧着時に、ラミネート金属板の周囲に前記ラミネート金属板と略同じ板厚のスペーサーを敷き加熱圧着するものであり、加熱圧着時に最も影響を受ける端面部の着色樹脂層や外皮接着剤層が融解してはみ出さないようにできる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による昇華転写模様付き金属装飾板とその製造方法の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による昇華転写模様付き金属装飾板の断面図、図2は同実施の形態における昇華転写模様付き金属装飾板に使用したラミネート金属板の断面図、図3は同実施の形態における昇華転写工程でラミネート金属板と昇華型印刷シートとを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【0034】
図に示すように、本実施の形態の昇華転写模様付き金属装飾板1は、昇華型印刷シート2上の色柄模様をラミネート金属板3に昇華転写したものである。
【0035】
ラミネート金属板3は、鋼板からなる金属板素地4の両面に、複合電気亜鉛めっきでめっき層5,5’を形成し、さらにめっき層5,5’の上に燐酸により化学処理層6,6’を形成し、裏面の化学処理層6’の上にエポキシ系の樹脂で防錆塗料層7を形成してなる金属板8を有する。
【0036】
金属板8の表面側の化学処理層6上には、アクリル系の下地接着剤層9を介して塩化ビニル樹脂等のフィルム状で色の着いた不透明な熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層10がラミネートされている。
【0037】
この着色樹脂層10上には、融点114℃の飽和共重合ポリエステル樹脂のホットメルト系フィルム(東レ:KF−2000)からなる外皮接着剤層11を介して、ガラス転移温度が74℃で結晶化度が35%のポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートの透明フィルム(東洋紡透明PETフィルム;E5131)が外皮樹脂層12としてラミネートされている。
【0038】
ラミネート金属板3は、金属板8の表面側に、下地接着剤層9と着色樹脂層10と外皮接着剤層11と外皮樹脂層12を順に設けたものである。
【0039】
また、色柄模様をラミネート金属板3に昇華転写してなる昇華転写模様付き金属装飾板1は、外皮樹脂層12と外皮接着剤層11の内部に、ラミネート金属板3と昇華型印刷シート2との間に昇華型着色剤13との親和性が低いポリプロピレン樹脂製の光沢フィルム14を挟み密着させて加熱圧着する昇華転写工法により、昇華型印刷シート2上の色柄模様15を形成する昇華型着色剤13が入り込んでおり、これにより昇華転写模様16が形成されている。なお、昇華転写模様16の無い部分は、不透明の着色樹脂層10が色合いを呈している。
【0040】
次に、本実施の形態の昇華転写模様付き金属装飾板1の製造方法及びその金属装飾板1による金属装飾断熱パネル22の製造方法について説明する。
【0041】
図4は本実施の形態の金属装飾板1とそれを用いた断熱パネル22の製造方法を示す工程図、図5は同実施の形態の金属装飾板1の製造に用いる昇華転写装置18に昇華型印刷シート2とラミネート金属板3をセットした状態を示す断面図、図6は同昇華転写装置18の昇降機19を稼動させて上チャンバー26の下面に駆動チャンバー32を圧着させた状態を示す断面図、図7は同昇華転写装置18の真空ポンプ29を稼働させて減圧により昇華型印刷シート2とラミネート金属板3とを圧着させている状態を示す断面図、図8は同実施の形態の曲げ加工した昇華転写模様付き金属装飾板1と内面部材45とを組み合わせて断熱パネル22を構成している状態を示す組立斜視図、図9は同実施の形態のウレタン治具21を使った断熱パネル22のウレタン発泡工程を示す断面図である。
【0042】
まず、金属板素地4の鋼板の防錆処理工程(工程A)で複合電気亜鉛めっきを施してめっき層5,5’を、燐酸により化学処理層6,6’を両面に形成する。次に熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層10の接着工程(工程B)として、金属板8表面側にアクリル系の接着剤からなる下地接着剤層9が塗布された不透明な塩化ビニル樹脂の着色樹脂層10を貼り付ける。
【0043】
さらに、外皮樹脂層接着工程(工程C)として、融点114℃の飽和共重合ポリエステル樹脂のホットメルト系フィルム(東レ:KF−2000)からなる外皮接着剤層11で、ガラス転移温度が74℃で結晶化度が35%のポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートの透明フィルム(東洋紡透明PETフィルム;E5131)を外皮樹脂層12として貼り付け、図4に示すようなラミネート金属板3を製造する。
【0044】
一方、色柄模様印刷工程(工程D)では、インクジェットプリンタを用いて、昇華型着色剤13による原版色柄模様15を光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルム等の転写基材23に印刷することにより、昇華型印刷シート2を製造しておく。
【0045】
転写基材23としては、普通紙のように紙等の支持体そのものであるものや、コート紙のように吸収体を兼ねる紙等の支持体の上にインク吸収層を塗布したもの、あるいは樹脂被覆紙やポリエステルフィルムのような非吸収性の支持体の上にインク吸収層を塗布したもの等があるが、本実施の形態に使用した転写紙は、表面平滑性が高い非吸収性支持体の上にインク吸収層として、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の水溶性バインダーを塗布したものである。
【0046】
その他にも、インク吸収層として、顔料あるいは顔料とバインダーで微細な空隙構造を形成し、この空間にインクを吸収させる転写基材23があり、特に限定するものではないが、昇華型印刷シート2として、光沢加工したコート紙、または、光沢仕上げされた樹脂フィルムとすれば、昇華転写時において昇華型印刷シート2の跡を残すことなく光沢のある昇華転写模様15付き金属装飾板を得ることができる。
【0047】
図5から図7に示す実施の形態1の金属装飾板1を作るときの昇華転写装置18において、ベース盤24には昇降機19と4方にあるガイドピン25で上チャンバー26が固定されている。上チャンバー26には加熱源であるヒータ27を内蔵した減圧チャンバー28が設けられており、減圧チャンバー28内は真空ポンプ29により、減圧パイプ30と減圧調整弁31を通じて減圧できる構成となっている。
【0048】
昇降機19には、ガイドピン25に沿って昇降自在となる駆動チャンバー32が連結されてあり、駆動チャンバー32には、引き出し式の転写槽33がセットされている。引き出し式の転写槽33には、耐熱性のポリテトラフルオロエチレンまたはシリコンゴム製の圧着シート34が内部全面に引き詰められてあり、外周には、ポリテトラフルオロエチレンゴムまたはシリコンゴムのパッキング35が形成してある。
【0049】
引き出し式の転写槽33は、引き出しガイド36に沿ってベアリング37により軽く手前に引き出せるようになっており、転写槽33を引き出した状態で転写槽33内の圧着シート34上に通気性のある下面耐熱シート38と昇華型印刷シート2と昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14とラミネート金属板3と上面耐熱シート39を順次セットできるようにしている。
【0050】
また、ラミネート金属板3の周囲には、ラミネート金属板3と略同じ板厚のステンレス製のスペーサー40を敷き、圧着シート34が直接ラミネート金属板3の端面部41に当たることを防止している。
【0051】
なお、減圧チャンバー28には転写槽33に通じる減圧孔42と外気に通じるリーク弁43が設けてある。
【0052】
ここで、圧着シート34としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、ネオプレン(登録商標)ゴム等の軟質弾性体が使用できるが、150℃以上の温度で熱転写を断続的に繰り返す使用形態であり耐熱性に優れたシリコンゴムやフッ素ゴムが好ましい。
【0053】
また、この昇華転写装置18を用いてラミネート金属板3に昇華性染料で転写印刷する場合、通気性のないラミネート金属板3では、昇華型印刷シート2との間の空気が抜け難くなるため、また昇華型印刷シート2に含まれている水分に由来する水蒸気が昇華型印刷シート2とラミネート金属板2との間に残留しやすく、残留空気や残留水分は、ラミネート金属板3に付与される昇華転写模様16に濃度ムラを発生させる原因となる。
【0054】
その解決策として、昇華型印刷シート2を乾燥するのが基本であるが、通常は、バックアップ部材として、通気性のある下面耐熱シート38と上面耐熱シート39で、ラミネート金属板3と光沢フィルム13と昇華型印刷シート2とを挟むことにより、残留空気や残留水分は抜けきることができる。
【0055】
しかし、通気性のある下面耐熱シート38を使用すると、下面耐熱シート38の跡が金属装飾板1に出現しやすくなり、表面平滑性を損なう原因を作ることになる。
【0056】
通気性のある上下耐熱シート38,39としては、綿布、ポリエステル布、芳香族ポリアミド繊維製の耐熱フェルト、連通のシリコーンゴムスポンジマットやフッ素ゴムスポンジマット等、150℃以上の耐熱性をもち、熱圧着後に形状が容易に復元する材質が好ましい。
【0057】
実施の形態1では、被昇華転写品として、ラミネート鋼板を使用したが、鋼板に限らず、ステンレス鋼やアルミ板でも金属板素地4として使用可能である。
【0058】
透明又は半透明の外皮樹脂層12には、転写時の加熱温度150〜200℃で著しく軟化することがないことが好ましく、ポリエステル樹脂のポリエチレンテレフタレート単体であれば融点が250℃前後であり問題はない。
【0059】
昇華型印刷シート2としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等で昇華型着色剤13を印刷塗布したシートが使用される。小ロット印刷用に製版工程を必要としないコンピュータグラフィックスを用いた電子写真法、静電記録法、インクジェット法、感熱転写法等で昇華性染料を印刷塗布することもできる。
【0060】
昇華性染料は、加熱された際に昇華・揮発等によって転移し得る染料であり、たとえばキノフタロン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾ系色素等の分散染料が好適に使用される。従来から昇華熱転写、昇華転写捺染等に用いられている染料を特に制限なく使用できる。
【0061】
また、外皮樹脂層12を接着する外皮接着剤層11の材質としては、昇華転写工程で170℃の高温時に外皮樹脂層12を通過してくる昇華型着色剤13を確実に拘束するためには、耐候性に優れたアクリル樹脂系粘着剤も使用できるが、融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂が昇華型着色剤13の拘束性に優れ最適であり、融点114℃の飽和共重合ポリエステル樹脂のホットメルト系フィルム(東レ:KF−2000)だけでなく、融点140℃のもの(東レ:KF−4000)も使用できる。
【0062】
次に、昇華転写工程(E工程)について、図5から図7を用いて説明する。
【0063】
引き出し式の転写槽33を引き出し、圧着シート34上に、下面耐熱シート38、昇華型印刷シート2、光沢フィルム14、ラミネート金属板3、上面耐熱シート39を順次重ね合わせて置き、引出し式転写槽33を駆動チャンバー32上にセットする。
【0064】
次に、昇降機19を稼動させ、駆動チャンバー32を図6のように上チャンバー26下面にパッキング35が圧着されるまで上昇させる。
【0065】
次に、真空ポンプ29を稼動させ、減圧調整弁31を開放し減圧パイプ30と減圧孔42を通じて、上チャンバー26と圧着シート34で構成される密閉状態となった転写槽33内を減圧させる。
【0066】
約0.02MPaまで減圧することで、圧着シート34が上チャンバー26下面に引き寄せられ、図7に示すように、圧着シート34の力で重ねあわされた下面耐熱シート38、昇華型印刷シート2、光沢フィルム14、ラミネート金属板3、上面耐熱シート39を大気圧と転写槽33内圧力との差圧分だけ均等に圧着する。
【0067】
この約6分間の昇華転写工程(E工程)のうち初期の1分間はチャンバー内を0.02MPaで維持し、その後5分間は減圧調整弁31により0.08MPaに圧力を高めるように制御した。6分経過後、リーク弁43を開放して転写槽32内のエアー圧を大気圧に戻し、昇降機19を稼動させ駆動チャンバー32を降下させる。必要に応じて冷却時間を置き転写槽33からラミネート金属板3から変身した昇華転写模様16付き金属装飾板1を取り出す。
【0068】
ここで、昇華型印刷シート2とラミネート金属板3とが密着された状態で、ヒータ27により転写槽33内が170℃に加熱されると、昇華型印刷シート2に印刷された色柄模様15を形成する昇華型着色剤13が昇華現象を生じる。
【0069】
図7に示すように、昇華型印刷シート2と光沢フィルム14、ラミネート金属板3とが接触した状態で加熱すると、昇華型印刷シート2に塗布されている昇華型着色剤13が昇華し、昇華型着色剤13と親和性の低いポリプロピレンフィルムを通過し、ラミネート金属板3の外皮樹脂層12を厚み方向に浸透する。昇華型着色剤13の浸透により外皮樹脂層12のみならず、外皮接着剤層11に色柄模様15が昇華転写模様16として転写される。
【0070】
ここで、もし光沢フィルム14がない状態で昇華転写されると、熱可塑性樹脂である着色樹脂層10と外皮接着剤層11は熱により軟化しており、圧力が加わると昇華型印刷シート2及び下面耐熱シート38の生地跡に沿って外皮樹脂層12が追随するために平滑性が悪くなる。
【0071】
しかし、平滑で光沢のあるポリプロピレン樹脂製の光沢性フィルム14を介在させると、光沢フィルム14が干渉役となって働き、外皮樹脂層12に生地跡を残すことは少なくなる。
【0072】
また、ラミネート金属板3に予め光沢フィルム14を貼り付けておくことにより、昇華転写工程作業としてわざわざ光沢フィルム14をはさむ必要もなくなり、作業ミスにより光沢フィルム14にしわを生じさせることもなく、作業効率が飛躍的に高まる。
【0073】
本実施の形態では、光沢フィルム14として、ポリプロピレン樹脂フィルムを使用したが、素材自身が比較的柔らかく、融点が190℃付近であり生地跡付着防止用の干渉役として都合が良く、融解により昇華型印刷シート2やラミネート金属板3に溶着することも無く、また、ポリプロピレン樹脂の分子構造が昇華型着色剤13との親和性が低く染まりにくいため、昇華型着色剤を容易に通過させ、昇華転写模様16の形成を阻害しない特徴を有するものである。しかし、光沢フィルム14としてポリプロピレン樹脂フィルム限定するものではない。
【0074】
また、ラミネート金属板3の周囲には、ラミネート金属板3と略同じ板厚のステンレス製のスペーサー40を敷き、圧着シート34が直接ラミネート金属板3の端面部41に当たることを防止しているが、このスペーサー40が無いと、圧着シート34に端面部41が押さえつけられ、熱のために軟化した樹脂が端面部よりはみ出し外観を損ねることになる。
【0075】
また、初期圧力として約0.02MPaの力で減圧し、1分ほど経過後、転写槽33内圧力を0.08MPaに上昇させることは、外皮接着剤層11や着色樹脂層10が軟化点以上に達しない間に密着を完結させて、昇華転写する温度帯に上昇したときには必要以上の圧力をかけることなく昇華転写を推進するものであり、表面平滑性を維持することができる。なお、昇華転写現象、熱と時間と被転写物との距離で転写率や鮮明性が決定されるものであり、圧力にはさほど影響を受けない。
【0076】
また、昇華型印刷シート2として、光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルム等の転写基材23に印刷することにより、さらに、昇華転写模様16付金属装飾板1表面の平滑性が向上し光沢の良い鮮映性の良いものが得られる。
【0077】
また、本実施の形態においては、外皮樹脂層12はガラス転移温度が73℃の樹脂で形成されてあり、170℃の高温になると樹脂はゴム弾性領域になっており、高分子構造は非晶質で非常にすき間の多い状態となり、外皮樹脂層12は熱により分子状態となって通過してくる昇華型着色剤13を通過させやすい。
【0078】
しかし、外皮接着剤層11は融点が114℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を使用しているため、低分子であり溶融状態となった分子構造のものには昇華型着色剤13は通過せず、そこで拘束される。
【0079】
次に、転写槽33から金属装飾板1が出され冷却されると、外皮樹脂層12はガラス転移温度73℃以下に冷却されてガラス領域になり、結晶化が進み35%の結晶化度になる。
【0080】
このような状態になると、高分子の鎖が緻密な状態となるため、昇華型着色剤13は動くことが出来ず、また、融点が114℃の外皮接着剤層11も固化するため、昇華型着色剤13は完全に定着してしまう。
【0081】
なお、外皮樹脂層12として、70℃以上のガラス転移温度のものを使用することで、70℃以上のガラス転移温度にならない限り再昇華は起こり難くなる。
【0082】
このように、本実施の形態によると、必要な模様を必要なときに簡便に付与できるため、大量生産される家電製品においても、ラミネート金属板3に色柄を自由に付けることができ、昇華型印刷シート2やバックアップに使用する下耐熱シート38の生地跡も転移することもなく光沢や鮮映度の良い平滑性に優れた昇華転写模様16付き金属装飾板1を得ることができ、長期使用にも耐えうるものとなる。
【0083】
次に、F工程で、完成した金属装飾板1のコーナ部分を切断し、さらにG工程で曲げ加工を施す。
【0084】
次に、H工程で、図8で示すように、サイドキャップ43,44とドアバック(内面部材)45等の別ピース品20とを嵌合することにより、金属装飾板1の外皮樹脂層12面を外面とする空間46を形成し、I工程で、図9に示すように、ウレタン治具21内に、H工程で嵌合させたものを配置し、空間46にウレタン樹脂を注入することで、昇華転写模様16付き金属装飾板1と内面部材45等の別ピース部品20とが一体発泡体となった断熱パネル22を得る。
【0085】
ここで、ウレタン発泡を行う工程では、発泡熱により温度が60℃以上に高くなるため、外皮樹脂層12のガラス転移温度が70℃より低い樹脂フィルムを使用すると再昇華して、模様がぼやけることになる。
【0086】
本実施の形態の昇華転写模様16付き金属装飾板1の製造方法は、金属板8面に着色樹脂層10と外皮接着剤層11とを介し透明または半透明の外皮樹脂層12を形成したラミネート金属板3に、昇華型着色剤13により色柄模様15面が施された昇華型印刷シート2を、昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14を外皮樹脂層12と色柄模様15面との間に挟み重ね合わせ加熱圧着することで、昇華型着色剤13を昇華させて外皮樹脂層12及び/または外皮接着剤層11に色柄模様15を転写するものであり、昇華転写時に昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14を介在させることで、昇華転写時の熱と圧力の影響を少なくし、昇華型印刷シート2やバックアップ部材38の生地跡を残さず、表面平滑性を維持する昇華転写模様16付き金属装飾板1を製造方法できる。
【0087】
また、金属板8面に着色樹脂層10と外皮接着剤層11とを介し透明または半透明の外皮樹脂層12を形成し、外皮樹脂層12の上層面に引き剥がし可能な保護層として昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14を予め貼り合わせたラミネート金属板に、昇華型着色剤13により色柄模様15面が施された昇華型印刷シート2を、重ね合わせ加熱圧着することで、昇華型着色剤13を昇華させて外皮樹脂層12及び/または外皮接着剤層11に色柄模様15を転写する場合は、昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14がラミネート金属板への昇華転写を邪魔することなく、昇華型印刷シート2やバックアップ部材38の生地跡を残すことなく、転写時の作業効率を下げることなく平滑性のある昇華転写模様16付き金属装飾板1を得ることができ、その後の工程においてもラミネート金属鈑の表面傷つき要因から常に保護することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、昇華型着色剤13との親和性が低い光沢フィルム14として、ポリプロピレン樹脂を使用しているが、ポリプロピレン樹脂は、反応基を持たない直鎖型の分子構造がゆえに昇華型着色剤13との親和性が低く、融点が190℃前後であり、昇華転写での加熱においても融解することなく形状を維持するので、昇華転写模様16付き金属装飾板1の平滑性を維持するのに最も都合がよい。
【0089】
また、本実施の形態の昇華転写模様16付き金属装飾板1の製造方法は、金属板8面に着色樹脂層10と外皮接着剤層11とを介し透明または半透明の外皮樹脂層12を形成したラミネート金属板3に、昇華型着色剤13により色柄模様15面が施された昇華型印刷シート2を、外皮樹脂層12と色柄模様15面とを重ね合わせて加熱圧着するもので、加熱圧着工程が一次圧着工程と二次圧着工程とからなり、二次圧着工程の圧力を一次圧着工程の圧力よりも小さくして加熱圧着することで、昇華型着色剤13を昇華させて外皮樹脂層12及び/または外皮接着剤層11に色柄模様15を転写するものであり、外皮接着剤層11と着色樹脂層10が加熱により軟化しない時点でしっかりと外皮樹脂層12と色柄模様15面とを密着させ、その後、熱の上昇とともに圧力を小さくすることで、昇華型印刷シート2やバックアップ部材38の生地跡を残らないようにできる。
【0090】
また、本実施の形態の昇華転写模様16付き金属装飾板1の製造方法は、金属板8面に着色樹脂層10と外皮接着剤層11とを介し透明または半透明の外皮樹脂層12を形成したラミネート金属板3に、昇華型着色剤13により色柄模様15面が施された昇華型印刷シート2を、外皮樹脂層12と色柄模様15面とを重ね合わせて加熱圧着し、昇華型着色剤13を昇華させて外皮樹脂層12及び/または外皮接着剤層11に色柄模様15を転写するもので、昇華型印刷シート2に光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルムを使用するものであり、昇華型印刷シート2の跡を残すことなく光沢のある昇華転写模様16付き金属装飾板1を得ることができる。
【0091】
また、本実施の形態の昇華転写模様16付き金属装飾板1の製造方法は、金属板8面に着色樹脂層10と外皮接着剤層11とを介し透明または半透明の外皮樹脂層12を形成したラミネート金属板3に、昇華型着色剤13により色柄模様15が施された昇華型印刷シート2を、外皮樹脂層12と色柄模様15面とを接して重ね合わせ、ラミネート金属板3の周囲にラミネート金属板3と略同じ板厚のスペーサー40を敷き加熱圧着することで、昇華型着色剤13を昇華させて外皮樹脂層12及び/または外皮接着剤層11に色柄模様15を転写するものであり、加熱圧着時に最も影響を受ける端面部41の着色樹脂層10や外皮接着剤層11が融解してはみ出さないようにできる。
【0092】
また、本実施の形態では、外皮樹脂層12にガラス転移温度が70℃から120℃であるポリエステル樹脂フィルムを使用しているので、150℃から180℃での昇華転写工程(E工程)で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様16はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色材により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを前記外皮樹脂層と前記色柄模様面との間に挟み重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色材を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するので、昇華転写時に昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを介在させることで、昇華転写時の熱と圧力の影響を少なくし、転写型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残さず、表面平滑性を維持する昇華転写模様付き金属装飾板を製造できる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0094】
また、請求項2に記載の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートし、前記外皮樹脂層の上層面に引き剥がし可能な保護層として昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを予め貼り合わせたラミネート金属板に、昇華型着色材により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色材を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するので、昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムがラミネート金属板への昇華転写を邪魔することなく、転写型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残すことなく、転写時の作業効率を下げることなく平滑性のある昇華転写模様付き金属装飾板を得ることができ、その後の工程においてもラミネート鋼鈑の表面傷つき要因から常に保護することができる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0095】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明における昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムとして、ポリプロピレン樹脂を使用したものである。ここで、ポリプロピレン樹脂は、反応基を持たない直鎖型の分子構造がゆえに昇華型着色剤との親和性が低く、融点が190℃前後であり、昇華転写での加熱においても融解することなく形状を維持するので、昇華転写模様付き金属装飾板の平滑性を維持するのに最も都合がよい。
【0096】
また、請求項4に記載の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色材により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着するもので、前記加熱圧着工程が一次圧着工程と二次圧着工程とからなり、二次圧着工程の圧力を一次圧着工程の圧力よりも小さくして加熱圧着することで、前記昇華型着色材を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するので、外皮接着剤層と着色樹脂層が加熱により軟化しない時点でしっかりと外皮樹脂層と色柄模様面とを密着させ、その後、熱の上昇とともに圧力を小さくすることで、転写型印刷シートやバックアップ部材の生地跡を残らないようにできる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0097】
また、請求項5に記載の発明は、金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色材により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着し、前記昇華型着色材を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するもので、前記転写型印刷シートに光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルムを使用するので、転写型印刷シートの跡を残すことなく光沢のある昇華転写模様付き金属装飾板を得ることができる。また、外皮樹脂層のガラス転移温度が70℃から120℃であるので、150℃から180℃での昇華転写工程で容易に確実に昇華転写され、転写された昇華転写模様はウレタン発泡工程の熱や生活環境温度帯では再昇華せず、長期耐候性と耐熱性を維持することができる。また、外皮接着剤層に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂を用いたので、昇華転写工程で外皮樹脂層を通過してくる昇華型着 色剤を確実に外皮接着剤層に拘束できる。
【0098】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、加熱圧着時に、ラミネート金属板の周囲に前記ラミネート金属板と略同じ板厚のスペーサーを敷き加熱圧着するので、加熱圧着時に最も影響を受ける端面部の着色樹脂層や外皮接着剤層が融解してはみ出さないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による昇華転写模様付き金属装飾板の断面図
【図2】 同実施の形態における昇華転写模様付き金属装飾板に使用したラミネート金属板の断面図
【図3】 同実施の形態における昇華転写工程でラミネート金属板と昇華型印刷シートとを重ね合わせた状態を示す断面図
【図4】 同実施の形態の金属装飾板とそれを用いた断熱パネルの製造方法を示す工程図
【図5】 同実施の形態の金属装飾板の製造に用いる昇華転写装置に昇華型印刷シートとラミネート金属板をセットした状態を示す断面図
【図6】 同昇華転写装置の昇降機を稼動させて上チャンバーの下面に駆動チャンバーを圧着させた状態を示す断面図
【図7】 同昇華転写装置の真空ポンプを稼働させて減圧により昇華型印刷シートとラミネート金属板とを圧着させている状態を示す断面図
【図8】 同実施の形態の曲げ加工した昇華転写模様付き金属装飾板と内面部材とを組み合わせて断熱パネルを構成している状態を示す組立斜視図
【図9】 同実施の形態の断熱パネルのウレタン発泡工程を示す断面図
【符号の説明】
1 金属装飾板
2 昇華型印刷シート
3 ラミネート金属板
8 金属板
10 着色樹脂層
11 外皮接着剤層
12 外皮樹脂槽
13 昇華型着色剤
14 光沢フィルム
15 色柄模様
16 昇華転写模様
40 スペーサー
Claims (6)
- 金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを前記外皮樹脂層と前記色柄模様面との間に挟み重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写する昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
- 金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートし、前記外皮樹脂層の上層面に引き剥がし可能な保護層として昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムを予め貼り合わせたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、重ね合わせ加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写する昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
- 昇華型着色剤との親和性が低い光沢フィルムとして、ポリプロピレン樹脂を使用したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
- 金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着するもので、前記加熱圧着工程が一次圧着工程と二次圧着工程とからなり、二次圧着工程の圧力を一次圧着工程の圧力よりも小さくして加熱圧着することで、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写する昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
- 金属板面に着色樹脂層をラミネートし、前記着色樹脂層上に融点が100℃から180℃の飽和共重合ポリエステル樹脂からなる外皮接着剤層を介してガラス転移温度が70℃から120℃の透明または半透明の外皮樹脂層をラミネートしたラミネート金属板に、昇華型着色剤により色柄模様面が施された昇華型印刷シートを、前記外皮樹脂層と前記色柄模様面とを重ね合わせて加熱圧着し、前記昇華型着色剤を昇華させて前記外皮樹脂層及び前記外皮接着剤層に前記色柄模様を転写するもので、前記昇華型印刷シートに光沢加工したコート紙または光沢仕上げされた樹脂フィルムを使用することを特徴とする昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
- 加熱圧着時に、ラミネート金属板の周囲に前記ラミネート金属板と略同じ板厚のスペーサーを敷き加熱圧着することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の昇華転写模様付き金属装飾板の製造方法。
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