JP3914773B2 - 燃料気化促進装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の内燃機関で良好な燃焼を実現するための燃料の供給技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の始動性向上、燃費向上および排気浄化、特に排気浄化ではHC低減のために、燃料噴射弁(インジェクタ)で噴射する燃料噴霧を微粒化および気化することにより、吸気管内壁面への付着を低減することが有効である。また燃料を微粒化および気化して供給することにより燃焼が安定する。
【0003】
内燃機関に微粒化および気化した燃料噴霧を供給するために、主として内燃機関の始動時などに補助的に使用される燃料噴射弁(インジェクタ)を設けることが知られている。USP5,894,832号公報には、コールドスタートフューエルインジェクタと、ヒーターと、アイドルスピードコントロールバルブ(以下ISCバルブという)とを備えたコールドスタートフューエルコントロールシステムが記載されている。
【0004】
このシステムでは、内燃機関のISCバルブ下流に配設した燃料噴射弁より噴射された噴霧とISCバルブを通過した吸入空気に旋回を加えることで混合促進を図るとともに、混合促進された混合気を燃料噴射弁下流に配設されたヒータに衝突させて加熱気化することにより、燃料の吸気管内壁面付着の低減が図られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来システムは、燃料噴霧を燃料噴射弁下流に配設されたヒータに衝突させ、ヒータの発熱により噴霧の気化促進を図っているが、燃料噴霧の気化効率向上に関しては、必ずしも十分とは言えない。
【0006】
本発明の目的はヒータによる燃料噴霧の気化効率向上を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧を、燃料噴射弁の下流に設けた伝熱部へ衝突させて燃料を気化する燃料気化促進装置において、
前記伝熱部の表面を円筒状に形成し、円筒状を成す前記表面に軸流方向にほぼ直交する溝を形成し、前記伝熱部の内径を燃料が表面張力によって前記溝を重力方向に上昇できる高さよりも小さくしたものである。
【0008】
これにより、円筒状の伝熱部の表面に付着した燃料を円周上に均一に供給することが可能となり、伝熱部表面に供給された燃料液膜の薄膜および均一分散が可能となるので、気化効率を向上することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について、図1乃至図8を用いて説明する。
【0010】
図1において、内燃機関1はガソリンを燃料とする周知の点火式内燃機関であるが、1つの気筒のみに着目し図示している。
【0011】
内燃機関1は、燃焼室2に点火プラグ3を配置し、空気と混合空気を取り入れる吸気弁4と燃焼後の排気を行なう排気弁5を備えている。内燃機関1は、燃焼室2の側部にエンジン冷却水6の温度を検知する水温センサ7とエンジンの回転数を検知する回転センサ(図示省略)を備え、運転状態を検知している。
【0012】
燃焼室2に吸気を行なう吸気系は、エアクリーナ(図示省略)を通過して吸入される吸入空気26の計測をするエアフローセンサ8と、運転者のアクセルペダル操作もしくは、内燃機関の運転状態に連動して回動する回転軸に取り付けられて開閉する吸気量を電気的に制御する電子制御スロットルバルブ10及びスロットルポジショニングセンサ130と、吸気集合管11と、吸気集合管11から内燃機関1の各気筒に分岐する吸気マニホールド39と、吸気弁4を備えた吸気ポート14等を備える。
【0013】
エアフローセンサ8およびスロットルポジショニングセンサ130で計測した吸入空気26の流量およびスロットルバルブ10のバルブ部131の開度情報は、コントローラ35に入力し、内燃機関1の運転状態の検出や種々の制御に使用する。
【0014】
燃料噴射装置は、第1の燃料噴射弁12と第2の燃料噴射弁13とで構成されている。第1の燃料噴射弁12は、集合吸気管11の下流で各気筒の吸気弁4に向けて噴射するように吸気ポート14に取り付けられている。
【0015】
第2の燃料噴射弁13は、燃料気化促進装置100に取り付けられ、電子制御スロットルバルブ10下流側に開口した分岐通路15より吸気集合管11に導入されるように構成されている。
【0016】
燃料系は、燃料24を貯える燃料タンク16と、燃料タンク16から燃料24を圧送する燃料ポンプ17と、燃料フィルタ18と、圧送された燃料24の圧力を所定の圧力に調整するプレッシャレギュレータ19と、各気筒(#1,#2・・・)の吸気ポート14に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁12と、スロットルバルブ部131下流に燃料を供給する第2の燃料噴射弁13を備え、これらは、燃料配管38で接続されている。
【0017】
排気系は、各気筒の排気弁5を備える排気ポート36と、排気マニホールド37と、排気中の酸素濃度を計測する酸素濃度センサ20と、排気を浄化するための三元触媒コンバータ21と、消音マフラー(図示省略)等を備える。酸素濃度センサ20で計測した酸素濃度情報は、コントローラ35に入力して内燃機関1の運転状態の検出や種々の制御に使用する。
【0018】
三元触媒コンバータ21は、理論空燃比付近で運転される内燃機関1から排気されるNOx、CO、HCを同時に高い浄化率で浄化するものである。
【0019】
燃料気化促進装置100は、電子制御スロットルバルブ10の下流に、開口した分岐通路15に接続され、エアフローセンサ8で計量された空気を、燃料気化促進装置100へ導入するために、電子制御スロットルバルブ10の上流から下流へバイパスするように、吸気管9から分岐されたバイパス通路22、23が形成されている。バイパス通路22は、第2の燃料噴射弁13から噴射された燃料24を搬送するための空気通路であり、バイパス通路22の途中に設けられた流量調整弁25により、バイパス通路22を流れる空気量を調整している。バイパス通路23は、第2の燃料噴射弁から噴霧される燃料24の微粒化のために使用するエアアシスト用の空気通路である。
【0020】
上記構成において、燃焼室2では、燃料噴射弁12、13により噴射された燃料24と吸入空気26の混合気が吸入される。吸入された混合気は、圧縮され、点火プラグ3で着火され、燃焼が行われる。内燃機関1から排出される排気42は排気系から大気中に放出される。
【0021】
燃料気化促進装置100の構成について図2乃至図5を用いて説明する。
図2(a)は燃料気化装置100の外観斜視図である。燃料気化装置100の構成は、ボディ102とヒータボディ101で構成され、ボディ102には、主に第2の燃料噴射弁13と、搬送空気導入パイプ30と、微粒化空気導入パイプ31が配設されている。搬送空気導入パイプ30には、バイパス通路22が連通しており、搬送空気22aが流入する。微粒化空気導入パイプ31には、バイパス通路23が連通しており、微粒化空気23aが流入する。そして、燃料噴射弁13には、燃料タンク16より燃料ポンプ17にて圧送され、燃料配管30内を介して燃料24が供給される。
【0022】
また、ヒータボディ101には、後述するヒータが内蔵されており、そのヒータへ通電するためのプラスおよびマイナス電極の電極端子28、29が配設されている。ヒータボディ101内にて気化された燃料24は、白矢印の気化燃料33として、燃料気化促進装置100外へと流れ出る。
【0023】
図2(a)のAおよびB方向矢視図を図2(b)、(c)に示す。
【0024】
図3に図2(b)図中C−C断面図を示す。図4に図2(C)図中D−D断面図を示す。
【0025】
電子制御スロットルバルブ10の下流に開口された分岐通路15に取り付ける偏向角α°を持つヒータボディ101の内部に構成される副通路75と、副通路75外周に配置する板状のヒータ10、本ヒータ(セラミックヒータ)は上下の平面部が電極となり、上下の電極に電流を印可することにより、発熱を行なうものである。更に、発熱体であるヒータは、温度が所定値以上になると、電気抵抗が急増して、電流が低下し、温度を一定に保持することのできるPTC(Positive Temperature Coefficient Thermistor)ヒータを用いている。
【0026】
PTCヒータ77は、マイナス電極となる副通路75と、プラス電極板79に接触するように固定されている。プラス電極板79は、弾性部材78に保持され、電極部80を介し、ヒータボディ101の外側に配設されたプラス電極端子28に接続されている。導電性のある副通路75は電極部82と圧入固定され、ヒータボディ101の外側のマイナス電極端子29に接続されている。電極部82と80は、絶縁部材81と弾性部材78により絶縁され、電極部82と80に通電することによりPTCヒータ77が発熱し副通路75を加熱する構造である。
【0027】
副通路75はOリング74とガスケット72により内部通路からシールされている。ガスケット72はヒータボディ101とボディ102で挟み込むように圧縮シールされている。
ボディ102には、ヒータボディ101と同軸上に配置された第2の燃料噴射弁13を有し、燃料噴射弁13は空気導入孔を持つケース70に圧入固定されたエアアトマイザ55とOリング84、Oリング72でボディ102に内部通路をシールするように位置決めされ、燃料パイプ34と燃料パイプオサエ83でボディ102に固定されている。燃料通路は燃料パイプ34と燃料噴射弁13の間にOリング73を配置しシールされている。
【0028】
本実施の形態では、電子制御スロットルバルブ10のバルブ部131の上流と下流では圧力差が生じており、このため、電子制御スロットルバルブ10のバルブ部131を閉じた時に、電子制御スロットルバルブ10をバイパスする空気通路22、23に空気が流れる。また燃料気化促進装置100は、このバイパス通路内に構成されており、燃料気化促進装置100の燃料噴射弁13から噴射された燃料噴霧85に、微粒化空気23aをエアアトマイザ55で旋回衝突させ、燃料24の微粒化及び噴霧角度を広げて混合室56に噴射し、噴射した燃料24と搬送空気導入パイプ30からバイパス通路22でバイパスされた搬送空気22aを、旋回ノズル51で旋回衝突させて、加熱された副通路75内面の伝熱面76に旋回付着させ、伝熱面76上を通過する際に、燃料噴霧85を気化するように設計されている。
【0029】
ここで、伝熱面76には、副通路75軸流方向にほぼ直行する構成で、微細な溝を形成している。燃料噴射弁13より噴射された燃料噴霧85は、微粒化空気23aにより微粒化が促進された後に旋回ノズル51を介して、搬送空気22aにより旋回を与えられる。これにより、噴霧85は、微粒化促進されるとともに広角な噴霧となる。そして、副通路75の内壁の伝熱面76に形成された溝201に供給される。溝201に供給された燃料噴霧85は、溝201形状と燃料の表面張力により、伝熱面76内に拡散する。この溝201により、燃料噴霧85は、より一層伝熱面上に均一分散できる。さらに、溝201を形成することにより伝熱面積も拡大される。よって、伝熱面上に形成される燃料液膜は薄膜化でき、効率よく気化促進が図られる。よって、ヒータの発熱による燃料の気化効率が向上でき、消費電力の低減も図れる。
【0030】
尚、この種の溝形状としては、副通路75軸流方向から傾斜した溝を、伝熱部を通過する空気流れ方向に沿うように連続して形成した螺旋溝としてもよい。溝を軸流方向に独立した複数の溝として形成した場合、燃料噴霧を各溝に滞留させて気化する効果が期待できる。また螺旋溝の場合、軸流方向に、より広い範囲に広げることができる。
【0031】
混合室の断面形状を、図4を用いて説明すると、バイパス通路22でバイパスされた搬送空気22aを調圧室50の片側から導入する構造で、翼断面形状で入口側断面積を広く、出口側断面積を狭く、軸中心からずらした位置に円周状に配置された複数の等間隔の旋回ノズル51を有し、旋回ノズル51はバイパス搬送空気22aの流れ方向に開口し、旋回ノズル51を通過する搬送空気流52の流速が一定となるように、調圧室50の断面積を下流に進むに従い、徐々に狭くするスワール形状とする。スワールの形状は、調圧室50の外径を一定とし、奥行きの高さを徐々に小さくしていく形状とすることで、限られたスペースでスワール構造が採用できる構造である。これにより、混合室56に流入する搬送空気52が均等になり、燃料噴射弁25から噴射される燃料19が副通路13の内面に付着する際、液膜が均一となり、効果的に気化を促進することが可能となる。
【0032】
また、副通路75から主通路への導入通路を偏向形状とすることで、直進方向の速度成分が減少することから、旋回ノズル51で生じる旋回力が増加するために伝熱面での燃料液膜の旋回数が増加するとともに、副通路75へ付着する燃料の滞留時間を増加することが可能となる。
【0033】
図5は、図3中E部拡大断面図である。ヒータボディ101内周面側に所定の空気層を介して内筒200が配設されている。内筒200の内周面には弾性材で形成された弾性部材78が面接触して配設されている。弾性部材78の内側の面にはブラス電極板79が面接触して配設されている。プラス電極板79の内側の面にはPTCヒータ77が面接触している。PTCヒータ77の内側の面には、伝熱面76を形成する部材の外周面と面接触している。これらの構造により、プラス電極板79とPTCヒータ77および伝熱面76と面接触する構成となっている。ここで、伝熱面76は、マイナス電極部でもある。したがって、先述の電極端子28、29に電流を通電することにより、プラス電極板79からPTCヒータ77を介して伝熱面76へと電流が通電する。これにより、PTCヒータ77が発熱され、伝熱面76を加熱することが可能となる。
【0034】
ここで、伝熱面76に形成された溝201により、副通路75内周の伝熱面積が拡大できるとともに、伝熱面上に噴射された燃料液膜の均一分散が可能となる。詳細は後述する。
【0035】
図6は、燃料気化促進装置100の伝熱面76に形成された溝形状を図示しており、図5中F部拡大図である。溝201の形状は、溝開口部長さb、溝底部c、溝角度θの台形形状である。また、伝熱面76に形成された各溝は、長さtを持つ溝頂部tにて連なっている。よって、溝ピッチは(b+t)である。また、伝熱面76に供給された燃料噴霧85は、溝201に液体燃料24として貯まる。
【0036】
ある一つの溝において、溝201の傾斜部と燃料と空気の気液界面との接する2点を気液界面幅dとする。また、燃料であるガソリンはぬれ性が良く、接触角θ0をゼロとすれば、溝201内の気液界面曲率半径aは、(数1)のように表わせるとする。
【0037】
a=b/(2・cos(θ/2)) (数1)
ここで、気液界面曲率半径aは、実際の気液界面曲率半径とは異なり仮想的な曲線である。また、接触角θ0がゼロということは、溝201の傾斜部接線方向と同値であり、傾斜部が曲面の場合は、曲面部の所定位置の接線方向と同値の接触角θ0となる。また、好ましくは、溝開口部長さbと気液界面幅dは等しいことが望ましく、溝開口部長さbと気液界面幅dが等しくなるような溝開口部長さbとすることが望ましい。
【0038】
これは、溝頂部t以外の伝熱面76が燃料液膜を介さずに直接空気層に露出しないために、燃料の気化促進が図られるためである。
【0039】
ここで、一つの溝201内に貯まった燃料24の断面積をSとし、溝201傾斜部と気液界面曲率半径aとの接する燃料24と溝201との接触長さをLsとすれば、溝201に貯まった燃料24は、燃料と溝壁面との接触長さLsの間に働く表面張力と、溝内を上昇した燃料の重量とつりあうことから、力の釣り合いの式から(数2)のように表わせ、表面張力による液上昇高さhが、接触長さLsと液断面積Sで決定される。ここで、σは燃料の表面張力、ρは密度、gは重力加速度を表わす。
【0040】
h=(σ/(ρ・g))・(Ls/S) (数2)
(数2)より、燃料上昇高さhは、所定高さまで上昇することが可能である。
【0041】
よって、伝熱面76上に付着した燃料24は、溝201の接触長さLsと液断面積Sの関係により、副通路75内周方向に▲1▼均一に液膜を分散することが可能となる。また、副通路75内を通過する搬送空気22a、微粒化空気23aは、副通路75軸流方向流れ成分を持っているために伝熱面76の下流側へも効率よく燃料液膜が供給され気化促進される。さらに、溝201内の傾斜部と燃料24液膜が気液界面曲率半径aをもって液断面を形成するために溝部で局所的に▲2▼燃料液膜の薄膜化が図れるとともに、溝201の形成により伝熱面76部が平滑の場合に比べ、▲3▼伝熱面積の拡大が図れ、燃料の一層の気化促進が図られる。また、内燃機関1の運転状況により、スロットルバルブ部131の上下流での差圧に変動が生じる場合がある。したがって、搬送空気22a、微粒化空気23aの吸入空気量も変動する。よって、常に伝熱面76に均一に燃料噴霧85を供給するためには、溝201を副通路75内径以上に達する液上昇高さhとする接触長さLsと液断面積Sをもつことが好ましい。
【0042】
ここで、図6に図示した溝201断面形状は、直線で結ばれた台形形状をした溝201断面形状としているが、図15に記載のごとく、曲線で結ばれた溝210断面形状でも良い。本実施例は、台形形状の溝201断面形状と同様に、伝熱面76内壁面に沿って燃料液膜を分散させる効果がある。
【0043】
図7に溝201と燃料24との接触長さLsと、液上昇高さhと液断面積Sの積であるh・Sとの関係を整理した結果を示す。Lsとh・Sは比例の関係にあり、接触長さLsの増加にともない、h・Sが増加することが分かる。たとえば、溝断面形状を所定の形状としたとき、溝内の気液界面曲率半径をaと仮定すれば、接触長さLsが0.56mmのときh・sは1.41mm3程度となる。この時の燃料上昇高さhは、先に仮定した液断面積Sより求められる。この上昇高さhより副通路75内径であるφdを小さくすることにより、伝熱面76に付着した燃料24を円周上に均一に供給することが可能となる。すなわち、φd<(σ/(ρ・g))・(Ls/S)の関係を満たせばよい。ここで、φdは円筒状伝熱部内径、σは燃料の表面張力、gは重力加速度、Lsは伝熱面と燃料との接する接触長さ、sは溝に貯えられた燃料の断面積である。
【0044】
図8に所定の溝幅bのときの燃料上昇高さhの関係を示す。たとえば、溝開口部長さbを0.3mm、溝底部長さcを0.034mm、溝角度を60°とする台形形状の溝の時、燃料上昇高さhは約71mm程度となる。ここで、溝開口部長さbと気液界面幅dは、同一とする。よって、副通路75の内径であるφdを71mm以下とすることが好ましい。これにより、副通路75内の伝熱面76の周方向に均一に液膜を分散できることが可能となり、燃料の気化促進が図られる。
【0045】
上記溝形状を考慮した伝熱面76とすることにより、燃料気化量が増化でき、結果としてPTCヒータ77の枚数が低減でき、省電力型の小型の燃料気化促進装置100が実現できる。
【0046】
図9に燃料気化促進装置100の伝熱面76に溝を設けた場合(溝あり)と設けない場合(溝なし)の気化燃料量の関係を示す。上記記載の効果により溝を最適化して形成することにより、20から30%程度の気化燃料量を増化することが可能となる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施例を図10を用いて説明する。第1の実施例との構成の違いは、伝熱面76に形成された溝202の形成の仕方に違いがある。その他の構成は、第1の実施例と同様構成であるために説明を省略する。本実施例では、伝熱面76に形成された溝202を吸入空気の旋回流れ86方向とほぼ同方向の溝形成方向87としたことにある。副通路75内を通過する燃料噴霧85は、搬送空気22aおよび微粒化空気23aの吸入空気流れにより、伝熱面76に旋回供給され付着する。付着した燃料24は、吸入空気旋回流れに沿って旋回流れ86として流れる。したがって、溝202の形成方向87と旋回流れ86方向が一致するために、溝202に貯えられる燃料24と溝202内の伝達面76とで形成される接触長さLsが最大となる。すなわち、図10(b)に図示のごとく、旋回流れ86方向と溝形成方向87がほぼ同方向であるために、燃料24と溝202との接触長さLsが十分に得られる。しかし、図10(c)に図示のごとく、旋回流れ86方向と溝形成方向87が異なる場合、燃料24と溝202との接触長さLsが短くなるとともに伝熱面が燃料と接しない場所が多くなるために、燃料の気化効率が低減する。したがって、旋回流れ86方向と溝形成方向87がほぼ同方向とすることが好ましく、伝熱面76からの熱を効率よく燃料24へ供給できるために、より一層の燃料気化効率が向上が図れる。その他の作用・効果は第1の実施例と同様のため説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第3の実施例を図11を用いて説明する。第1の実施例との構成の違いは、伝熱面76に形成された溝203の形成の仕方に違いがある。その他の構成は、第1の実施例と同様構成であるために説明を省略する。本実施例では、伝熱面76に形成された溝203を副通路75軸流方向と溝形成方向88を同方向に形成したことにある。副通路75内を通過する燃料噴霧85は、搬送空気22aおよび微粒化空気23aの吸入空気流れにより、伝熱面76に旋回供給され付着する。ここで、燃料噴霧85は、伝熱面76の比較的上流側の伝熱面76に付着する。その対策として、溝203を副通路75軸流方向と溝形成方向88を同方向に形成したことにより、伝熱面76に付着した燃料24の表面張力により、軸流方向下流に燃料が流入し、早期に均一な燃料液膜が伝熱面76に形成される。よって、燃料の気化効率向上が図れる。その他の作用・効果は第1の実施例と同様のため説明を省略する。
【0049】
次に、本発明の第4の実施例を図12を用いて説明する。第1の実施例との構成の違いは、伝熱面76に形成された溝204の形成の仕方に違いがある。その他の構成は、第1の実施例と同様構成であるために説明を省略する。本実施例では、伝熱面76に格子状の凹凸形状をした溝204を形成したことにある。これは、ローレット加工アヤ目のような形状を微細な凹凸とした形状である。これにより、伝熱面76上をへ流入する吸入空気流れ86にも比較的沿った溝形状部分も確保でき、さらに、溝204に貯まった燃料を伝熱面76の円周方向および軸流方向へ同時に表面張力にて分散することが出来るので、燃料の気化効率向上が図れる。その他の作用・効果は第1の実施例と同様のため説明を省略する。
【0050】
第1から第4の実施例において、伝熱面76に形成された溝形状につき述べてきたが、溝形状をこれに限定するものではなく、液膜を積極的に拡散し燃料気化を促進させる伝熱面76内に微細な凹凸形状である伝熱面であるならば、本実施例と同様の効果が得られる。また、伝熱面76に形成された凹凸形状について、本実施例では、伝熱面上で単位面積あたりの溝の伝熱面積が一様な凹凸形状として述べてきたが、燃料噴霧85は、伝熱面76上流側より噴射されるために伝熱面76の上流側に付着しやすい傾向にあり、燃料液膜も厚くなる傾向にある。また、下流側では伝熱面76上の燃料液膜は薄くなる傾向にある。したがって、ヒータより供給される熱量を効率よく伝熱面を介して燃料液膜に伝達し、気化効率を促進するためには、燃料液膜の厚い部分の伝熱面76の伝熱面積は大きくし、燃料液膜の薄い部分の伝熱面積は小さくすることが好ましい。したがって、副通路75内に配設される伝熱面76において、下流側と比べて上流側の伝熱面76の伝熱面積を連続的もしくは段階的に拡大するような凹凸形状を形成することが好ましい。これにより、伝熱面と伝熱面上に形成される燃料液膜の熱伝達が促進されるために、消費電力も低減できる効果が得られる。
【0051】
また、本発明の取付け状態の実施の形態を図13を用いて説明する。
図13は電子制御スロットルバルブ10への取付け例で、燃料気化促進装置100と電子制御スロットルバルブ10をガスケット133でシールし、複数のネジ132で締結する構造である。ヒータの−電極をネジ132で共締めすることにより、−電極のケーブルを廃止することが可能である。
【0052】
上記記述した燃料気化促進装置を備えた内燃機関を用いることにより、内燃機関より排出されるHCを低減することが可能となる。以下、図14を用いて説明する。
図14(a)は、燃料噴霧の粒径と燃焼の安定性を維持したまま遅くできる(リタードできる)点火時期の限界との関係を示す図である。本実施の形態で得られる燃料噴霧の粒径は完全に気化した状態で内燃機関1の燃焼室2に供給するために、膨張行程に入るまで点火時期を大きくリタードさせることが可能となる。膨張行程で点火を行うと燃焼室内の燃焼ガスが膨張する割合が減るため、燃焼ガスが膨張仕事によって消費する熱量が少なくなり、高温を保ったままの燃焼ガスを排気管に排出することができる。つまり、図14(b)に示すように、点火時期をリタードして高温の燃焼ガスを排出することによって触媒21を急速に暖機することが可能になり、内燃機関1の始動後、触媒21が活性化温度に達するまでの時間が短縮される。すなわち、図14(c)に示すように、触媒21の浄化作用が早期に開始されるので、内燃機関1の始動後に排出されるHCの量を大幅に低減することができる。なお、触媒(三元触媒コンバータ)24の早期暖機により、HCのみならず、NOx、COの低減も可能である。
【0053】
以上述べてきた燃料気化促進装置100において、副通路75内の伝熱面76上に燃料液膜を分散させ、薄い液膜を形成する手段について述べてきたが、燃料液膜を伸展する手段としては、吸入空気を用いた手段や、伝熱面76に微細な溝を形成することにより燃料と溝に働く表面張力を用いる手段のほかに、伝熱面に超親水性処理を施すことによっても本実施例と同様の効果が得られる。
【0054】
上記の本発明に係る実施例によれば、伝熱面に付着した燃料噴霧と接する面との表面張力により、燃料噴霧が拡散するような凹凸形状を伝熱面に形成したり、伝熱部表面に超親水性処理を施すことにより、伝熱部表面に供給された燃料液膜の薄膜および均一分散が可能となる。また、伝熱面の凹凸形状により、伝熱面積の拡大と、燃料の気化効率の向上が図れ、結果的にヒータ枚数を削減でき、消費電力の低減、ヒータ部の小型化が実現でき、スロットルボディおよびインテークマニホールドへのビルトイン化およびエンジンへの搭載性が容易になる。
【0055】
また、燃料噴射弁の出口部で、噴射された燃料に第1の空気流(アシストエア)を合流させることにより、燃料噴霧の微粒化を高めると共に、燃料噴霧を下流方向に搬送する。第1の空気流を合流させた位置からさらに下流側で、第1の空気流によって搬送された燃料噴霧の外周であり円周上に配置された開口部の流速が一定となるように構成されたスクロール状の空気通路から均一に旋回をかけた第2の空気流を合流させ、伝熱部表面に均一に噴霧を衝突させる。燃料噴霧に合流する2つの空気流によって、より一層、燃料液膜の薄膜および均一分散が可能となる。
【0056】
そして、ヒータによる燃料噴霧の気化効率向上を図ることにより、消費される電気的エネルギーを低減し、ヒータの信頼性および耐久性向上を図ることができる。また、低温始動時に噴霧の微粒化および気化促進を図り、燃料の吸気管内壁面付着を低減し、自動車用内燃機関の始動性向上、燃費向上および排気浄化低減を実現できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、円筒状の伝熱部の表面に付着した燃料を円周上に均一に供給することが可能となり、伝熱部表面に供給された燃料液膜の薄膜および均一分散が可能となるので、燃料噴霧の気化促進が図れ、燃料噴霧の壁面付着を低減できる。これにより、内燃機関の始動性及び燃費の向上はもとより、排気浄化が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料気化促進装置を搭載した内燃機関の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る図1中に示した燃料気化促進装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る図2(b)中に示した燃料気化促進装置C−C断面図である。
【図4】本発明に係る図2(c)中に示した燃料気化促進装置D−D断面図である。
【図5】本発明に係る図3中に示した燃料気化促進装置の伝熱面溝部拡大断面図である。
【図6】本発明に係る図5中に示した燃料気化促進装置の伝熱面溝部拡大断面図である。
【図7】燃料と溝部の接触長さと燃料液上昇および液断面積の関係を示す図である。
【図8】所定溝断面形状時の溝幅と燃料上昇高さの関係を示す図である。
【図9】伝熱面溝形状の効果を説明するための図である。
【図10】本発明に係る第2の実施例の燃料気化促進装置の断面図である。
【図11】本発明に係る第3の実施例の燃料気化促進装置の断面図である。
【図12】本発明に係る第4の実施例の燃料気化促進装置の断面図である。
【図13】燃料気化促進装置の取付け方法の実施例である。
【図14】燃料気化と触媒温度、HC排出量の関係を説明する図である。
【図15】図6に図示した溝断面形状を曲線で結ばれた溝断面形状とした実施例を示す図である。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…燃焼室、3…点火プラグ、4…吸気弁、5…排気弁、8…エアフローセンサ、9…吸気管、10…電子制御スロットルバルブ、11…吸気集合管、12…第1の燃料噴射弁、13…第2の燃料噴射弁、21…三元触媒コンバータ、22…バイパス通路、22a…搬送空気、23a…微粒化空気、25…流量調整弁、26…吸入空気、33…気化燃料、30…燃料気化促進装置、75…副通路、76…伝熱面、77…PTCヒータ、201…溝。
Claims (5)
- 燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧を、燃料噴射弁の下流に設けた伝熱部へ衝突させて燃料を気化する燃料気化促進装置において、
前記伝熱部の表面を円筒状に形成し、円筒状を成す前記表面に軸流方向にほぼ直交する溝を形成し、前記伝熱部の内径を燃料が表面張力によって前記溝を重力方向に上昇できる高さよりも小さくしたこと特徴とする燃料気化促進装置。 - 請求項1に記載の燃料気化促進装置において、dを前記伝熱部内径、σを燃料の表面張力、ρを密度、gを重力加速度、Lsを伝熱面と燃料の接触長さ、sを溝に貯えられた燃料断面積とするとき、d、σ、ρ、g、Ls及びSの間に、d<(σ/(ρ・g))・
(Ls/S)の関係が成立することを特徴とする燃料気化促進装置。 - 請求項1に記載の燃料気化促進装置において、前記伝熱部の表面に超親水性処理を施したことを特徴とする燃料気化促進装置。
- 請求項1に記載の燃料気化促進装置において、スロットルバルブが設けられた吸気管と、燃料噴射弁から噴射した燃料噴霧に旋回空気を作用させる旋回空気供給ノズルとを備え、前記伝熱部を前記旋回ノズルの下流側に設け、前記伝熱部の下流側通路を前記吸気管の下流側通路に接続したことを特徴とする燃料気化促進装置。
- 請求項4に記載の燃料気化促進装置において、前記旋回空気供給ノズルの上流側に前記スロットルバルブ下流側の吸気管に燃料噴射弁から噴射した燃料噴霧に空気を作用させて微粒化を促進するエアアトマイザを設けたことを特徴とする燃料気化促進装置。
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