JP3914765B2 - タイヤ製造用コア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、製品タイヤの内周面形状と対応する外周面形状を有する、分解・組立が可能な剛性材料製のタイヤ製造用コアに関するものであり、とくには自動車等におけるエンジン振動のピークと、コアを用いて製造したタイヤの転動振動のピークとの重畳に起因する共振の発生を有効に防止できる技術を提案するものである。
【0002】
【従来の技術】
生タイヤの成型用のコアとして機能するとともに、生タイヤの加硫に当って中子としても機能するこの種のタイヤ製造用コアとしては、たとえば図6に示すように、剛性材料からなり、分解および組立が可能な大小二種類のセグメントS1,S2をほぼ円環状、より具体的にはほぼドーナツ状に組み立ててなるものが知られており、トータルセグメント数、いいかえれば、分割数として、六分割、八分割、十分割等のものがある。
【0003】
ところで、このようなタイヤ製造用コアを用いて生タイヤを成型し、そして、それを加硫して製品タイヤとする場合には、軽量化を図るとともに、熱容量を小さくする目的の下に、中空構造とされているそれぞれのセグメントS1,S2の外周面が、加硫圧力によって半径方向内方への撓み変形を行い、このときの撓み変形量は、周長の長いセグメントほど大きくなるため、大セグメントS1と対応する部分では、製品タイヤのトレッド部のトータル厚みが、小セグメントS2と対応する部分のそれより厚くなり、また、大小いずれのセグメントにあっても、それらの周方向端部分は隔壁によって区画されていて、半径方向にはほとんど撓み変形しないことから、それらの端部分と対応するトレッド部分では、トータル厚みが相対的に薄くなること等により、さらには、加硫圧力の作用下では、コアの構造上の理由によって、小セグメントS2が大セグメントS1に対して半径方向内方へ相対変位する傾向にあること等により、タイヤの半径方向の振れ量として表わされるラジアルランナウト(以下「RR」という)ないしは、半径方向の荷重変動量として表わされるラジアルフォースバリエーション(以下「RFV」という)が大きくなることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これがため、図6に示すように、大小二種類のそれぞれのセグメントS1,S2をともに、同一の形状および寸法を有する大セグメントS1および小セグメントS2とした場合には、負荷転動中のタイヤに規則的な振動が発生することになり、その振動のピークが、これも規則的な振動となるエンジン振動のピークに重畳し易く、この重畳による共振が車両への乗心地を損ねるという問題があった。
【0005】
すなわち、自動車用エンジンを四サイクルエンジンとするとともに、それの気筒数をmとした場合には、気筒当り720°の回転(2回転)で一サイクルが終了し、点火および爆発のタイミングが等間隔にあると不等間隔にあるとの別なく、その回転は、単位時間当りでは気筒数(m)の2倍となっている。
【0006】
この一方で、タイヤのRRないしはRFVのn次成分がコアの分割数lの公約数であるとき、コアは大小二種類のセグメントS1,S2の組み合わせになるので、
l=2n
で、振動は単位時間当りでnのβ倍となっている。
従って、エンジンの発生振動は
V1 =m×α/単位時間
となり、また、タイヤの発生振動は
V2 =n×β/単位時間
となり、タイヤ振動数V2 がエンジン振動数V1 の約数である場合あるいはその逆である場合に共振が発生することになる。
【0007】
具体的には、六気筒エンジンで、クランクシャフトの720°回転(2回転)で六回の点火がある場合、60kmで走行時のエンジン回転数を2000rpmとすると、点火・爆発数は6000/分となる。
この一方で、大小それぞれのセグメントが四個ずつで、それぞれが同一形状および寸法を有する計八個のセグメントからなるコア上で製造した周長が2mのタイヤに、周上四個所の凸があるとすると、それが、60km/hで1000m/分で回ると、タイヤの回転数は500回/分となるので、このタイヤは、上記の走行条件で、2000凸/分の振れを生じることになり、
ここでは、
V1 =6×1000/分
V2 =4×500/分
となるので、V2 はV1 の約数となる。
この場合、エンジン振動とタイヤ振動とは、同一の時間軸上で、図7に示すような相対関係を有することになり、エンジン振動の振動ピークは、三回に一回の割合で、タイヤ振動のそれと重なることになる。
【0008】
そこで、この発明は、エンジン振動とタイヤ振動とのこのようなピークの重なり合いを有効に阻止して、共振、ひいては、車室内への騒音および振動の発生を効果的に防止できるタイヤ製造用コアを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るタイヤ製造用コアは、剛性材料からなる大小二種類のセグメントの組み合わせになって、全体としてほぼ円環状をなすものであり、加硫済み製品タイヤからのそれの分解取出しに当り、はじめに全ての小セグメントを、次いで大セグメントを、それぞれ、コアの中心穴内へ一旦抜き出して分解した後、そこから取り外すものにおいて、それぞれのセグメトの外周縁での、それぞれの周方向端縁とコア中心とを結ぶ両線分の挟角を、全てのセグメントで相互に相違させて構成したものである。
【0010】
これによれば、タイヤ製造用コア上で成型するとともに加硫してなる製品タイヤの、RRないしはRFVの大きい個所がその周方向に不規則に発生することになるので、タイヤの振動の、時間軸上でのピーク位置を、エンジン振動の、規則的に発生するピーク位置に対し、例えば図1に示すようオフセットさせることができる。
従って、それぞれの振動の重畳に起因する共振の発生を有利に防止して、車室内への騒音および振動の発生ないしは伝播を効果的に抑制することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図2はこの発明の実施の形態を示す平面図であり、四個の大セグメント1〜4と、四個の小セグメント5〜8との組立体になるコアを示す。
ここでは、大セグメント1〜4の相互間および、小セグメント5〜8の相互間のそれぞれにおいて、セグメント外周縁でのそれぞれの周方向端縁とコア中心Oとを結ぶ線分の挟角α1〜α4およびα5〜α8をともに相違させ、これにより、大小のそれぞれのセグメント間では上記挟角が必然的に相違することに基づき、全ての挟角α1〜α8を相互に相違させる。
【0012】
ところで、このようなセグメント1〜8からなるコアは、加硫済み製品タイヤからのそれの分解取出しに当っては、はじめに小セグメントを、次いで大セグントをともにコアの中心穴内へ一旦抜き出して分解した後、そこから取り外すことが必要になるので、それぞれのセグメントの形状、寸法等の選択に当っては、小セグメント5〜8のうち、少なくとも、最初に抜き出すものについては、それの両側面の間隔を図3(a)に示すように、半径方向外方に向けて漸次にまたはステップ状に減少させることが必要になり、また、大セグメントについては、図3(b)に示すように、それの周方向端縁を結ぶ弦長Lを、コア中心穴の穴径2Rより小さくすることが必要になる。
【0013】
以上のように構成してなるコアによれば、製品タイヤのRR、ひいては、負荷転動時の振動から規則性を有利に取り除くことができるので、その振動の、時間軸上でのピーク位置を、エンジン振動のそれに対して有効にオフセットさせることができ、両ピークの重畳に起因する共振の発生を効果的に防止することができる。
【0014】
図4は、大小十個のセグメントよりなるコアの平面図であり、ここでもまた、大小二種類のセグメント11〜15および16〜20のそれぞれの、先に述べたと同様の挟角β1〜β10を、全てのセグメントで相互に相違させたものであり、これによってもまた先の場合と同様の作用効果をもたらすことができる。
【0015】
【実施例】
外周縁周長が1904mmのコアを、図2に示すように大小八個のセグメントにより構成したところにおいて、大セグメント1の弧長Aを303mmとし、他の大セグメント2,3,4のそれぞれの弧長B,C,Dをそれぞれ298mm,293mm,288mmとするとともに、小セグメント5の弧長Eを188mmとし、また、他の小セグメント6,7および8のそれを、順次183mm,178mmおよび173mmとした場合、サイズが255/40R17、外周長が2000mmの製品タイヤの、60km/hの速度で負荷転動させたときの振動は、前述したと同様の、回転数が2000rpm、点火・爆発数が6000/分のエンジン振動に対し、図5にグラフで示すような相対関係を示すことになり、この場合には、タイヤ振動は、それの一回転の間に生じる四個の振動ピーク毎に一回の割合でエンジン振動の振動ピークに重畳することになる。
従って、これによれば、エンジン振動とタイヤ振動との振動ピークが重畳して発生する共振を従来技術に比して、有効に防止して、車室内騒音および振動の発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
【発明の効果】
上記実施例からも明らかのように、この発明によれば、とくに、それぞれのセグメントの外周縁での、それぞれの周方向端縁とコア中心とを結ぶ両線分の挟角を、全てのセグメントで相違させて、タイヤ振動の、時間軸に対するピーク位置の出現を不規則なものとすることで、それらのピーク位置と、エンジン振動のピーク位置との重畳を有効に阻止して、共振現象の発生を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 タイヤ振動とエンジン振動とのピーク位置のずれを例示する図である。
【図2】 この発明の実施形態を示す平面図である。
【図3】 それぞれのセグメントに対する制約条件を例示する図である。
【図4】 他の実施形態を示す平面図である。
【図5】 測定結果を示すグラフである。
【図6】 従来技術を示すグラフである。
【図7】 従来技術の下でのタイヤ振動をエンジン振動とのピーク位置の相対関係を例示する図である。
1〜4,11〜15 大セグメント
5〜8,16〜20 小セグメント
α1〜α8,β1〜β8 挟角
Claims (1)
- 剛性材料からなる大小二種類のセグメントの組み合わせになり、全体としてほぼ円環状をなすタイヤ製造用コアであり、加硫済み製品タイヤからのそれの分解取出しに当り、はじめに全ての小セグメントを、次いで大セグメントを、それぞれ、コアの中心穴内へ一旦抜き出して分解した後、そこから取り外すものにおいて、
それぞれのセグメントの外周縁での、それぞれの周方向端縁とコア中心とを結ぶ両線分の挟角を、全てのセグメントで相互に相違させて構成してなるタイヤ製造用コア。
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