JP3914357B2 - 移載介助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、病院等で利用されてベッド上に横たわった患者等を別の場所へ移載することを介助する移載介助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばベッド上の患者を他のベッドへ移載するために用いられる移載介助装置がある。
【0003】
特公昭56−16659号公報には、所定の駆動装置により往復移動自在な下側移載板に連結されて往復移動自在な上側移載板を両端が一対のローラにそれぞれ巻き付けられた可撓ベルトによって覆い、上側移載板の往復移動に伴い各ローラを正逆回転させることで上側移載板の往復移動に対応させて可撓ベルトを変位自在にした移載介助装置が記載されている。同公報に記載された技術によれば、上側移載板上に患者等を乗せた場合には、両方のローラを所定方向へ回転させることで上側移載板に対する可撓ベルトの変位を相対速度ゼロになるようにして、上側移載板上の患者に恐怖感を与えることなく移動させることができる。一方、上側移載板上に患者等を乗せ、あるいは上側移載板上から患者等を降ろす場合には、いずれか一方のローラを所定方向へ回転させて上側移載板に対して可撓ベルトを引込みあるいは繰り出させるように変位させることで、患者等を乗せるあるいは患者等を降ろす際に患者にかかる負担を少なくすることができる。
【0004】
特開平8−168505号公報には、駆動装置により往復移動自在な複数の移載板と、移載板を操作する操作バーと、各移載板毎に前進あるいは後退の終点を検出する検出器とを設け、移載板を操作する際には検知器による検出結果に応じて各動作モードを設定するようにした移載介助装置が開示されている。同公報に開示された技術によれば、駆動装置により、例えば頭部・胴体部・脚部等の患者の部位毎に分割して患者の体の部位毎に適した力で移載板を挿入することで、患者にかかる負担や苦痛を無くすことができる。また、検出器によって検出した移載板の前進および後退の終点に基づいて各動作モードの設定を自動的に切り替えるので操作を簡易にすることができる。
【0005】
特開平10−216174号公報には、所定の駆動装置により往復移動自在な移載板と、移載板に設けられて移載板を駆動する駆動装置とは別の駆動装置によって往復運動自在な可撓性の移載プレートとを備え、移載板の前進終点よりさらに延出させた移載プレートを患者の体の下に挿入して患者を移載板の上に乗せるようにした移載介助装置が開示されている。同公報に開示された技術によれば、移載板の前進終点からさらに移載プレートが延出し、かつ、移載プレートが可撓性を有しているため、患者の体の下に十分に、かつ、患者に負担をかけずに無理なく移載プレートを挿入することができる。また、特開平10−216174号公報に開示の移載介助装置には、ベッド上の患者への近接状態を検出する検知センサが設けられており、これによって患者がベッド上のどの位置に横臥していても移載プレートが患者に衝突してしまうことがない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特公昭56−16659号公報に開示の移載介助装置では、駆動装置の駆動距離分しか移載板を移動させることができないという問題がある。このため、移載板を患者の体の下に十分に挿入することができず、介護者が人力によって患者を横方向へ移動しなければならないという不都合が生じる。移載板を患者の体の下に十分挿入するために移載板を拡幅化すると装置が大型化してしまうという不都合もある。このため、車椅子等の小型の移載介助装置に適用することが困難であるという不都合が生じる。
【0007】
また、特開平8−168505号公報に開示の移載介助装置では、特公昭56−16659号公報に開示の移載介助装置と同様に駆動装置の駆動距離分しか移載板を移動することができないという問題に加えて、検出器を設けることにより装置全体が高価になってしまうという問題もある。
【0008】
さらに、特開平10−216174号公報に開示の移載介助装置では、移載板より移載プレートをさらに繰り出すために移載板を駆動する駆動装置とは別の駆動装置を設けるため装置全体が大型化してしまうという問題もある。このために、車椅子等の小型の移載介助装置に適用することが困難になるという不都合が生じる。また、可撓性の移載プレートがベッド面上を摺接しながら往復運動するため、例えば布製のベッド面では、繰り返しの移載作業に伴ってベッド面を損傷してしまうという問題もある。さらに、センサ類を設けているため装置全体として高価になってしまうという問題もある。
【0009】
つまり、従来の移載介助装置では、ベッド面等の設備を損傷することなく、また、患者に負担をかけずに移載板を患者の体の下に十分に挿入でき、かつ、車椅子等の小型の装置にも適用できるものは存在しない。
【0010】
本発明は、介護者が容易に患者を移載することができる移載介助装置を得ることを目的とする。
【0011】
本発明は、装置を小型化することができる移載介助装置を得ることを目的とする。
【0012】
本発明は、ベッド等の設備を損傷することのない移載介助装置を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の移載介助装置は、ケースと、前記ケースに内蔵されて一側方である第1の側方と他側方である第2の側方とに配置された回転自在な一対の回転体に掛け渡された無端帯と、前記回転体を正逆回転させて前記無端帯を回転動作させる駆動機構と、前記無端帯の上方に配置され、前記無端帯に一端側が連結固定されることにより前記無端帯の回転動作に伴い前記第2の側方から飛び出すように往復移動する下部移載板と、前記下部移載板をその往復移動方向の側から包囲して前記第2の側方の側で両端が前記ケースの側に固定されたベルト状の下部移載ベルトと、前記下部移載ベルトの上方に配置され、前記下部移載板の往復移動動作に伴い前記下部移載板の一端側から他端側まで連結固定部分が移動して前記第2の側方から飛び出すように前記下部移載ベルトに一端側が連結固定された中部移載板と、前記中部移載板の上方に配置され、前記中部移載板に連動して前記第2の側方から飛び出すように当該中部移載板に連結固定された上部移載板と、前記無端帯の下方に配置され、前記無端帯の回転動作によって前記下部移載板とは逆方向に往復移動するように前記無端帯に連結部を介して連結固定された一対の回転自在な移動ローラと、前記第2の側方において前記中部移載板の下方部分から前記中部移載板と前記上部移載板との間を通り前記第1の側方を経て前記一対の移動ローラに掛け渡される経路に案内され、両端が前記ケースの側に固定された中部移載ベルトと、前記第1の側方を通るように屈曲されて当該屈曲形状の内側である内側経路と外側である外側経路とに案内されて前記上部移載板と前記一対の移動ローラとの間に掛け渡された無端ベルト状の上部移載ベルトと、前記一対の移動ローラの間で前記上部移載ベルトに選択的に制動力を付与する第1制動手段と、前記外側経路の位置で前記上部移載ベルトに選択的に制動力を付与する第2制動手段と、を具備する。
【0014】
したがって、駆動機構によって回転体を正逆回転させて無端帯を回転動作させることにより下部移載板を往復移動させ、下部移載板の往復移動に伴って下部移載ベルトを移動させることにより下部移載ベルトと中部移載板との連結固定部分を下部移載板の一端側から他端側まで移動させることで中部移載板を往復移動させ、中部移載板を往復移動させることに伴って上部移載板を往復移動させることで、上部移載板を無端帯の回転による下部移載板の移動距離と下部移載ベルトの転動による中部移載板の移動距離とを合わせた距離を移動させる。また、無端帯の回転動作に伴って一対の移動ローラを連結部材を介して下部移載板とは逆方向へ移動させ、第1制動手段により移動ローラの間で上部移載ベルトに選択的に制動力が付与されることで上部移載ベルトを上部移載板に対して相対速度ゼロで変位させ、第2制動手段により外側経路の位置で上部移載ベルトに選択的に制動力が付与されることで上部移載ベルトの下方側を上部移載板に対して送り出しあるいは引込み方向へ変位させる。さらに、一端が中部移載板の下方部分で固定されている中部移載ベルトを例えばベッド面等の被移載体を積載する部材に対して相対速度ゼロで移動させる。
【0015】
なお、上部移載ベルトの送り出し方向への変位とは、上部移載板が駆動ベルトから離反する方向へ移動する際に、上部移載ベルトの下方側が変位することにより上部移載ベルトが上部移載板の上方側から下方側へ向かって変位することを意味し、上部移載ベルトの引込み方向への変位とは、上部移載板が無端帯側へ接近する際に、上部移載ベルトの下方側のみが変位することにより上部移載ベルトが上部移載板の下方側から上方側へ向かって変位することを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図1ないし図6に基づいて説明する。本実施の形態は、移載介助装置として車椅子に適用したものである。
【0017】
図1は、本実施の形態の車椅子を示す斜視図である。本実施の形態の車椅子は、上面に患者等の被移載者が着座する着座部1を有する移載ユニット2を備えている。この移載ユニット2には、着座部1を昇降自在に固定する図示しない所定の昇降機構が設けられており、患者を移載する際にはこの昇降機構によりベッドBD上面に対する着座部1の高さを調整することが可能である(図2参照)。移載ユニット2の外側は、上下方向に伸縮する蛇腹状のカバー3によって側面が覆われている。
【0018】
移載ユニット2において、着座部1の一端側にはバックレスト4が取り付けられ、他端側にはステップ5が取り付けられている。バックレスト4の着座部1に取り付けられた辺と直交する辺には、ヒンジ6を介して水平方向に回動自在なアームレスト7が設けられている。また、移載ユニット2においてアームレスト7の下側方には、回転自在な一対の車輪8と車輪8より外径の小さく回転自在な一対の補助車輪9とが取り付けられている。これらの車輪8および補助車輪9は、バックレスト4の上部に後方へ延出するように設けられた介護者用操作ハンドル10に設けられたブレーキ11により制動力が付与される。また、介護者用操作ハンドル10には、「乗」「降」等の各種操作を行うための図示しない操作スイッチが取り付けられている。
【0019】
図2は、患者を移載する場合の車椅子を示す正面図である。車椅子上からベッドBD上へあるいはベッドBD上から車椅子上へ患者を移載する際には、操作者によってアームレスト7がヒンジ6を回動中心として外側に回動され、移載ユニット2の上部に設けられた下部移載板12、中部移載板13および上部移載板14等が往復移動することにより着座部1を車椅子上からベッドBD上へあるいはベッドBD上から車椅子上へ移動させることで患者を移載する。
【0020】
図3ないし図6は、移載ユニットの駆動機構および動作を段階的に示す説明図である。移載ユニット2のケース15内部には、正逆回転自在な一対の回転体としてのスプロケット16が設けられており、このスプロケット16には無端帯としての無端状の駆動チェーン17が巻回されている。このうち一方のスプロケット16は、図示しない駆動装置によって正逆回転自在に駆動される駆動スプロケット16aである。無端帯は、駆動チェーン17に限るものではなく、例えば駆動ベルトでもよい。駆動チェーン17に代えて駆動ベルトを用いた場合には、スプロケット16に代えてローラを使用する。また、ケース15内部には、駆動チェーン17の下方に連結部としての連結軸18aを介して連結固定されて駆動チェーン17の回転動作によって往復移動する回転自在な一対の移動ローラ18が配置されている。さらに、ケース15内の下部には、第1制動手段としての第1ブレーキ19とブレーキ軸受20けと固定ローラ21とが設けられている。第1ブレーキ19は、一対の移動ローラ18の間で後述する上部移載ベルト22に選択的に制動力を付与する。
【0021】
駆動チェーン17の上方には、連結部材29によって駆動チェーン17に一端側が連結固定された下部移載板12が配置されている。下部移載板12は、駆動チェーン17の回転動作によって一対の移動ローラ18とは逆方向に往復移動する。下部移載板12の周囲には、下部移載板12をその往復移動方向の側から包囲し、両端がケース15の駆動スプロケット16a側に固定されたベルト留め部材23で固定された下部移載ベルト24が設けられている。下部移載ベルト24の上方には、下部移載板12の往復移動動作に伴い下部移載板12の一端側から他端側まで移動する中部移載板13が連結部材25を介して下部移載ベルト24に連結固定されている。これによって、中部移載板13は下部移載ベルト24により往復移動自在となる。この中部移載板13の上方には、連結部材26を介して中部移載板13に連結固定された上部移載板14が配置されており、上部移載板14は下部移載ベルト24の転動により中部移載板13の往復移動に伴って往復移動する。
【0022】
移載ユニット2には、ベルト留め部材23から中部移載板13と上部移載板14との間を経て一対の移動ローラ18および固定ローラ21に掛け渡される経路に案内されて固定ローラ21の下方に至る中部移載ベルト27が設けられている。中部移載ベルト27の一端はベルト留め部材23に固定され、他端は固定ローラ21の下方で固定されている。また、移載ユニット2には、移載ユニット2の側方を経由するように案内されて上部移載板14と一対の移動ローラ18と固定ローラ21とに掛け渡された上部移載ベルト22が設けられている。
【0023】
移載ユニット2の下方には、上部移載ベルト22の上方側から下方側を通ることなく一対の移動ローラ18に至る経路中であって上部移載ベルト22と一対の移動ローラ18の間とを外れた位置で上部移載ベルト22に選択的に制動力を付与する第2制動手段としての第2ブレーキ28が設けられている。
【0024】
また、特に図示しないが、移載ユニット2はCPUを主体としてそのデータバスおよびアドレスバスに接続されたROMおよびRAMを含むマイクロコンピュータを制御部として持ち、このマイクロコンピュータが各部を駆動制御する。このマイクロコンピュータには、各種の制御回路を介して駆動装置や上部移載板14の往復移動の終点を検出するリミットスイッチ(図示せず)等が接続されている。リミットスイッチにより検出した上部移載板14の往復移動の終点はマイクロコンピュータに出力され、この出力に応じてマクロコンピュータが駆動装置や第1ブレーキ19および第2ブレーキ28等の各部を駆動制御する。
【0025】
このような構成において、例えばベッドBD上の患者を車椅子上に移載する際の動作について段階毎に説明する。ベッドBD上の患者を車椅子上に移載する動作は、患者の体の下に上部移載板14を挿入して上部移載板14上に患者を乗せる動作と、上部移載板14上に乗せた患者を車椅子上に移動する動作とからなる。
【0026】
まず、患者の体の下に上部移載板14を挿入して上部移載板14上に患者を乗せる動作について説明する。介護者等により操作スイッチにおける「乗」が連続的に押されることによってマイクロコンピュータによって駆動制御される第2ブレーキ28が選択的に作動し、上部移載ベルト22の上方側から下方側を通ることなく移動ローラ18に至る経路中であって上部移載ベルト22と移動ローラ18の間とを外れた位置で上部移載ベルト22に制動力を付与する(図4参照)。この状態で、駆動装置によって駆動スプロケット16aを駆動することで、駆動チェーン17が図4中矢印A方向へ回転して下部移載板12が図4中矢印A'方向へ移動する。下部移載板12の図4中矢印A'方向への移動に伴って、下部移載ベルト24が図4中矢印A方向へ転動する。そして、下部移載ベルト24の図4中矢印A方向への転動により中部移載板13および上部移載板14が、図4中矢印A'方向へ移動する。これによって、上部移載板14は、駆動チェーン17の回転による下部移載板12の移動距離と下部移載ベルト24の転動による中部移載板13の移動距離とを合わせた距離、すなわち駆動装置によって駆動した駆動チェーン17の回転に対する距離よりも長い距離を移動するので、上部移載板14を患者の体の下に十分に挿入することができる。
【0027】
一方、連結軸18aは駆動チェーン17の図4中矢印A方向への回転により図4中矢印B'方向へ移動し、これに伴って移動ローラ18が図4中矢印B'方向へ移動する。このとき、上部移載板14は駆動チェーン17の回転による下部移載板12の移動距離と中部移載板13の移動距離とを合わせた距離を移動し、移動ローラ18は駆動チェーン17の回転による下部移載板12の移動距離と同じ距離を移動することから、上部移載板14は移動ローラ18の約2倍の距離を移動する。本実施の形態では、上部移載ベルト22を移動ローラ18と固定ローラ21とを経由するように案内することにより、移動ローラ18の移動距離に対応して変位する上部移載ベルト22の長さが移動ローラ18の移動距離の4倍となる。移動ローラ18の移動距離に対応して変位する上部移載ベルト22の長さは、上部移載板14の移動距離の2倍の長さに等しい。上部移載ベルト22は上部移載板14の上方側と下方側とを覆っているため、上部移載板14の移動に伴って上部移載板14の移動距離の2倍の長さの上部移載ベルト22が変位する。これによって、上部移載板14の移動によって変位する上部移載ベルト22の長さと、移動ローラ18の移動によって変位する上部移載ベルト22の長さとが等しくなるので、上部移載ベルト22が途中でたるむことがない。
【0028】
また、移動ローラ18が図4中矢印B'方向へ移動することにより、中部移載ベルト27は中部移載板13の進行方向側で中部移載板13の上方側から下方側へ中部移載板13の移動距離に対応させて中部移載ベルト27を送り出しながら変位する。このため、ベッドBD上面に対する中部移載ベルト27の相対速度はゼロとなり、中部移載ベルト27とベッドBD上面との間に摩擦が生じないためベッドBD上面等を損傷することがない。
【0029】
さらに、第2ブレーキ28によって上部移載ベルト22の上方側から下方側を通ることなく移動ローラ18に至る経路中であって上部移載ベルト22と移動ローラ18の間とを外れた位置で上部移載ベルト22に制動力を付与しているために、固定されている第2ブレーキ28と移動する上部移載板14との間において、上部移載板14とは逆方向へ移動する移動ローラ18が設けられている上部移載ベルト22の下方側部分のみが変位する。つまり、上部移載ベルト22の上方側部分は変位しないため、上部移載ベルト22は上部移載板14の移動に伴い上部移載板14の進行方向側の上部移載ベルト22を上部移載板14の下方側から上方側へ送り出すようにしながら変位する。このため、上部移載板の進行方向側において上部移載板14に対して下面側から上面側へ付勢するように作用する上部移載ベルト22によって、ベッドBD上の患者の体をすくうようにしながら上部移載板14を患者の体の下に挿入することができ、介護者は容易に上部移載板14上に患者を乗せることができる。
【0030】
次に、上部移載板14上に乗せた患者を車椅子上に移動する動作について説明する。介護者等により操作スイッチの「乗」が押し続けられることで上部移載板14が最大まで進入することによりリミットスイッチが上部移載板14の移動の終点を検出すると、マイクロコンピュータによる駆動制御により上部移載板14は一時停止する。さらに操作スイッチの「乗」が押し続けられることで、第2ブレーキ28により上部移載ベルト22に付与している制動力を解除すると同時に第1ブレーキ19が選択的に作動し、一対の移動ローラ18の間で上部移載ベルト22に制動力を付与する(図6参照)。この状態で、下部移載板12が図6中矢印B'方向へ移動することにより、上部移載板14が図6中矢印B'方向へ移動する。これによって、駆動チェーン17の回転によって下部移載板12が所定距離を移動する間に、上部移載板14は駆動チェーン17の回転による下部移載板12の移動距離と下部移載ベルト24の転動による中部移載板13の移動距離とを合わせた距離を移動するので、上部移載板14上に乗せた患者を短時間で車椅子上に移動することができる。
【0031】
一方、連結軸18aは駆動チェーン17の図6中矢印B方向への回転により図6中矢印A'方向へ移動し、これに伴って移動ローラ18が図6中矢印A'方向へ移動する。このとき、上部移載板14の移動によって上部移載ベルト22が変位する長さは、移動ローラ18の移動によって上部移載ベルト22が変位する長さに等しく、上部移載板14および移動ローラ18が移動しても上部移載ベルト22が途中でたるむことがない。
【0032】
また、移動ローラ18が図6中矢印A'方向へ移動することにより、中部移載ベルト27は中部移載板13の進行方向側で中部移載板13の下面側から上面側へ中部移載板13の移動距離に対応させて中部移載ベルト27を引き込むようにしながら変位する。このため、ベッドBD上面に対する中部移載ベルト27の相対速度はゼロとなり、中部移載ベルト27とベッドBD上面との間に摩擦が生じないためベッドBD上面等を損傷することがない。
【0033】
さらに、第1ブレーキ19によって一対の移動ローラ18の間で上部移載ベルト22に制動力を付与することで、上部移載ベルト22は、第1ブレーキ19の両側すなわち上部移載ベルト22の上方側および下方側で等しく変位し、上部移載板14の移動に伴い上部移載ベルト22を上部移載板14の上方側と下方側とを同じ長さずつ引き込むようにようにしながら上部移載板14に対して相対速度ゼロで変位する。これによって、上部移載ベルト22は上部移載板14と一体的に変位し、上部移載板14上の患者に対して恐怖感等を与えることなく容易に患者を車椅子上に移動することができる。
【0034】
次に、車椅子上の患者をベッドBD上に移載する際の動作について各段階毎に説明する。車椅子上の患者をベッドBD上に移載する際の動作は、患者を車椅子上からベッドBD上へ移動する動作と、患者をベッドBD上に乗せて上部移載板14を引き抜く動作とからなる。
【0035】
まず、車椅子上の患者をベッドBD上へ移動する動作について説明する。介護者等により操作スイッチにおける「降」が連続的に押されることによってマイクロコンピュータによって駆動制御される第1ブレーキ19が選択的に作動し、一対の移動ローラ18の間で上部移載ベルト22に制動力を付与する(図6参照)。この状態で、上部移載板14は駆動装置によって駆動した駆動チェーン17の回転に対する移動距離よりも長く移動するので、上部移載板14はより深くベッドBD上に延出することができ、車椅子上の患者を確実にベッドBD上に移動することができる。
【0036】
一方、連結軸18aは駆動チェーン17の図6中矢印A方向への回転により図6中矢印B'方向へ移動し、これに伴って移動ローラ18が図6中矢印B'方向へ移動する。このとき、上部移載板14の移動によって上部移載ベルト22が変位する長さは、移動ローラ18の移動によって上部移載ベルト22が変位する長さに等しく、上部移載板14および移動ローラ18が移動しても上部移載ベルト22が途中でたるむことがない。
【0037】
また、移動ローラ18が図6中矢印B'方向へ移動することにより、中部移載ベルト27は中部移載板13の進行方向側で中部移載板13の上方側から下方側へ中部移載板13の移動距離に対応させて中部移載ベルト27を送り出すようにしながら変位する。このため、ベッドBD上面に対する中部移載ベルト27の相対速度はゼロとなり、中部移載ベルト27とベッドBD上面との間に摩擦が生じないのでベッドBD上面等を損傷することがない。
【0038】
さらに、第1ブレーキ19によって一対の移動ローラ18の間で上部移載ベルト22に制動力を付与しているために、上部移載ベルト22は上部移載板14の移動に伴い上部移載板14の上方側と下方側とを同じ長さずつ送り出すようにようにしながら、上部移載板14に対して相対速度ゼロで変位する。これによって、上部移載ベルト22は上部移載板14と一体的に変位し、上部移載板14上の患者に対して恐怖感等を与えることなく容易に患者をベッドBD上に移動することができる。
【0039】
次いで、患者をベッドBD上に乗せて上部移載板14を引き抜く動作について説明する。介護者等により操作スイッチの「降」が押し続けられることで上部移載板14が最大まで進入することによりリミットスイッチが上部移載板14の移動の終点を検出すると、マイクロコンピュータによる駆動制御により上部移載板14は一時停止する。さらに操作スイッチの「乗」が押し続けられることにより第1ブレーキ19により上部移載ベルト22に付与している制動力を解除すると同時に第2ブレーキ28が選択的に作動して、上部移載ベルト22の上方側から下方側を通ることなく一対の移動ローラ18に至る経路中であって、上部移載ベルト22の上方側と一対の移動ローラ18の間とを外れた位置で上部移載ベルト22に制動力を付与する(図4参照)。この状態で、下部移載板12が図4中矢印B'方向へ移動すると、下部移載ベルト24の図4中矢印B方向への転動に伴って上部移載板14が図4中矢印B'方向へ転動する。
【0040】
一方、移動ローラ18が図4中矢印A'方向へ移動することによって変位する上部移載ベルト22の長さは、上部移載板14が図4中矢印B'方向へ移動することによって変位する上部移載ベルト22の長さに等しく、上部移載板14および移動ローラ18が移動しても、上部移載ベルト22が途中でたるむことがない。
【0041】
また、移動ローラ18が図4中矢印A'方向へ移動することにより、中部移載ベルト27は中部移載板13の進行方向側で中部移載板13の下方側から上方側へ中部移載板13の移動距離に対応させて中部移載ベルト27を引き込むようにしながら変位する。このため、ベッドBD上面に対する中部移載ベルト27の相対速度はゼロとなり、中部移載ベルト27とベッドBD上面との間に摩擦が生じないためベッドBD上面等を損傷することがない。
【0042】
さらに、第2ブレーキ28によって上部移載ベルト22の上方側から下方側を通ることなく一対の移動ローラ18に至る経路中であって、上部移載ベルト22の上方側と一対の移動ローラ18の間とを外れた位置で上部移載ベルト22に選択的に制動力を付与しているために、上部移載ベルト22は上部移載板14の移動に伴い上部移載板14の進行方向側の上部移載ベルト22を上部移載板14の上方側から下方側へ引き込むようにしながら変位する。これによって、上部移載ベルト22が上部移載板14に対して上方側から下方側へ付勢するように作用するので、患者の体を上部移載板14上からベッドBD面上へ降ろすようにしながら上部移載板14を患者の体の下から引き抜くことができ、介護者は容易に上部移載板14上からベッドBD上に患者を降ろすことができる。
【0043】
また、駆動チェーン17を挟んで上部移載板14と移動ローラ18とが逆方向へ移動するようにしたので、少ないスペースでも上部移載板14の移動距離を十分に確保することができ、車椅子等の小型の装置に適用することが可能になる。
【0044】
本実施の形態では、車輪8をケース15の後方側に取り付けたため、車輪8に患者の手等が触れることがなく、安全性を高くした装置を提供することができる。
【0045】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の移載介助装置によれば、駆動機構によって回転体を正逆回転させて無端帯を回転動作させることにより下部移載板を往復移動させ、下部移載板の往復移動に伴って下部移載ベルトを移動させることにより下部移載ベルトと中部移載板との連結固定部分を下部移載板の一端側から他端側まで移動させることで中部移載板を往復移動させ、中部移載板を往復移動させることに伴って上部移載板を往復移動させることで、上部移載板を無端帯の回転による下部移載板の移動距離と下部移載ベルトの転動による中部移載板の移動距離とを合わせた距離を移動させるようにしたので、上部移載板を患者の体の下に十分に挿入することができ、介護者が容易に患者を移載することができる。また、無端帯の回転動作に伴って一対の移動ローラを連結部材を介して下部移載板とは逆方向へ移動させ、第1制動手段により移動ローラの間で上部移載ベルトに選択的に制動力が付与されることで上部移載ベルトを上部移載板に対して相対速度ゼロで変位させ、第2制動手段により外側経路の位置で上部移載ベルトに選択的に制動力が付与されることで上部移載ベルトの下方側を上部移載板に対して送り出しあるいは引込み方向へ変位させるようにしたので、少ないスペースでも上部移載板の移動距離を十分に確保して装置を小型化することができ、上部移載ベルトにより患者の乗降を補助することができる。さらに、一端が中部移載板の下方部分で固定されている中部移載ベルトを例えばベッド面等の被移載体を積載する部材に対して相対速度ゼロで移動させるようにしたので、ベッド面等の設備の損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の車椅子を示す斜視図である。
【図2】患者を移載する場合の車椅子を示す正面図である。
【図3】上部移載板を収納した状態の移載ユニットを示す説明図である。
【図4】第2ブレーキが作動している状態の移載ユニットを示す説明図である。
【図5】上部移載板が延出した状態の移載ユニットを示す説明図である。
【図6】第1ブレーキが作動している状態の移載ユニットを示す説明図である。
【符号の説明】
12 下部移載板
13 中部移載板
14 上部移載板
16 回転体
17 無端帯
18 移動ローラ
18a 連結部
19 第1制動手段、
22 上部移載ベルト
23 ベルト留め部
24 下部移載ベルト
27 中部移載ベルト
28 第2制動手段
Claims (1)
- ケースと、
前記ケースに内蔵されて一側方である第1の側方と他側方である第2の側方とに配置された回転自在な一対の回転体に掛け渡された無端帯と、
前記回転体を正逆回転させて前記無端帯を回転動作させる駆動機構と、
前記無端帯の上方に配置され、前記無端帯に一端側が連結固定されることにより前記無端帯の回転動作に伴い前記第2の側方から飛び出すように往復移動する下部移載板と、
前記下部移載板をその往復移動方向の側から包囲して前記第2の側方の側で両端が前記ケースの側に固定されたベルト状の下部移載ベルトと、
前記下部移載ベルトの上方に配置され、前記下部移載板の往復移動動作に伴い前記下部移載板の一端側から他端側まで連結固定部分が移動して前記第2の側方から飛び出すように前記下部移載ベルトに一端側が連結固定された中部移載板と、
前記中部移載板の上方に配置され、前記中部移載板に連動して前記第2の側方から飛び出すように当該中部移載板に連結固定された上部移載板と、
前記無端帯の下方に配置され、前記無端帯の回転動作によって前記下部移載板とは逆方向に往復移動するように前記無端帯に連結部を介して連結固定された一対の回転自在な移動ローラと、
前記第2の側方において前記中部移載板の下方部分から前記中部移載板と前記上部移載板との間を通り前記第1の側方を経て前記一対の移動ローラに掛け渡される経路に案内され、両端が前記ケースの側に固定された中部移載ベルトと、
前記第1の側方を通るように屈曲されて当該屈曲形状の内側である内側経路と外側である外側経路とに案内されて前記上部移載板と前記一対の移動ローラとの間に掛け渡された無端ベルト状の上部移載ベルトと、
前記一対の移動ローラの間で前記上部移載ベルトに選択的に制動力を付与する第1制動手段と、
前記外側経路の位置で前記上部移載ベルトに選択的に制動力を付与する第2制動手段と、
を具備する移載介助装置。
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JP21310899A JP3914357B2 (ja) | 1999-07-28 | 1999-07-28 | 移載介助装置 |
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ID=16633722
Family Applications (1)
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JP21310899A Expired - Fee Related JP3914357B2 (ja) | 1999-07-28 | 1999-07-28 | 移載介助装置 |
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- 1999-07-28 JP JP21310899A patent/JP3914357B2/ja not_active Expired - Fee Related
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