JP3913430B2 - 開閉体の開閉装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のグローブボックスやそのリッドの如き開閉体の開閉動をコントロールする開閉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のグローブボックスは、例えば、登録実用新案第2557064号公報に示す如く、紐式エアダンパーによって、その開閉動がコントロールされているので、当該グローブボックスを開方向へ移動させると、上記紐式エアダンパーの制動作用で、グローブボックスはゆっくりと開放状態に移動することが保障され、逆に、グローブボックスを閉方向へ移動すると、紐式エアダンパーの復帰作用で、グローブボックスの閉動作が助長されることとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、グローブボックス自体は、原則的には、その開閉動が円滑にコントロールされることとなるが、反面、グローブボックスが開方向に移動する場合には、特に、その全開位置に近づく程、加速が効いたり自重モーメントが増大して、移動速度が急に速くなるので、この時には、紐式エアダンパーの制動力が不足して、グローブボックスの全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれる恐れを十分に有していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、斯かる従来の課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、支持構造体側に開閉体を回動可能に支承して、当該開閉体の開閉動を紐式エアダンパーでコントロールする開閉体の開閉装置において、上記開閉体に開閉体の開閉動に伴って揺動するリンクアームの一端部を軸支すると共に、紐式エアダンパーのピストンに接続された紐の先端部を上記リンクアームの他端部に接続して、紐とリンクアームの交叉角度が、開閉体の開き始めにおいては大きく、開き終わりにおいては小さくなるように設定する一方、紐式エアダンパーのシリンダー内にピストンを紐を引き込む方向に付勢する付勢スプリングを設けると共に、開閉体の閉塞状態において、該付勢スプリングが縮んで、ピストンとシリンダーの一端部間にピストンの逆方向への移動を許容する空間を存在させて、開閉体が開き始めた直後においては、付勢スプリングの付勢力で、ピストンの逆移動を得て、紐をシリンダー内に引き込み、且つ、開閉体の閉塞状態から開き始めた直後の間では、リンクアームの他端部が紐式エアダンパーに最も接近する構成を採用した。
【0006】
依って、請求項1記載の発明にあっては、紐とリンクアームの交叉角度が、開閉体の開き始めにおいては大きく、開き終わりにおいては小さくなるように設定されている関係で、特に、開閉体の開き終わりでは、リンクアームの移動方向と紐の引き出し方向とが略一致して、開閉体の移動速度に応じて、紐も同一速度で引き出される結果、ピストンが速く大きく移動して大きな制動力を発揮するので、従来の如く、全開位置が近づくに従い、紐式エアダンパーの制動力が不足して、開閉体の全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれる心配がなくなる。又、これに加えて、開閉体の開き始めた直後では、逆に、付勢スプリングで紐がシリンダー内に引き込まれる関係で、開閉体の開き操作は軽い力で行なえる。
【0008】
尚、本発明の下で、紐式エアダンパーの付勢スプリング自体が、開閉体の全開付近で開き始めよりも大きなばね定数を発揮するように構成すれば、開閉体の全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれることをより一層確実に防止できる。又、リンクアームを支持構造体側のガイド孔に挿通すると共に、該リンクアームの他端部を折曲して、この折曲他端部を上記ガイド孔側の全開ストッパーに当接するように構成すれば、リンクアームの揺動が円滑に行なえる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する好適な実施の形態に基づいて詳述すれば、該実施の形態に係る開閉体の開閉装置も、基本的には、自動車のグローブボックスに応用したものであるが、具体的には、図1に示す如く、グローブボックスB自体は自動車のインストルメントパネル側に設けられて、該グローブボックスBにリッドLを回動可能に支承する構造のものを対象としたものであるから、ここでは、グローブボックスBが支持構造体となり、そのリッドLが開閉体となっている。又、リッドLはグローブボックスBの上部に固定された紐式エアダンパーDでその開閉動がコントロールされるものとする。
【0010】
そこで、まず、便宜上、紐式エアダンパーDの構造から説明すると、図3乃至図6に示す如く、両端部が開口した筒状のシリンダー1と、紐2の基端部が接続されてシリンダー1内を移動するピストン3と、シリンダー1の一端開口部側に取り付けられて空気の通過量を制御する弁装置4と、シリンダー1の他端開口部に取り付けられて紐2の移動を案内するガイドキャップ5と、シリンダー1内においてガイドキャップ5とピストン3間に介装されてピストン3をシリンダー1の一端部方向に付勢する付勢スプリングたる圧縮コイルばね6とを備える構成となっている。
【0011】
そして、本実施の形態にあっては、斯かる紐式エアダンパーDを用いてリッドLの開閉動をコントロールする訳であるが、図示する如く、リッドLの側部にリッドLの開閉動に伴って揺動するリンクアーム11の一端部11aを軸支すると共に、紐式エアダンパーDのピストン3に接続された紐2の先端部2aを上記リンクアーム11の他端部11bに接続して、紐2とリンクアーム11の交叉角度が、リッドLの開き始めにおいては大きく(90°に近く)、リッドLの開き終わりにおいては小さく(0°に近く)なるように設定したことを特徴とするものである。
【0012】
尚、上記したリンクアーム11は、グローブボックスB側に設けられたガイド孔12内に摺動可能に挿通されて、その他端部11bを折曲して、該折曲他端部11bに紐2の先端部2aを接続する共に、当該折曲他端部11bを上記ガイド孔12を画成する縁部に設けられたストッパー片13に当接させることにより、リッドLの全開位置を規制する構成となっている。
【0013】
更に、本実施の形態にあっては、これに加えて、紐式エアダンパーDのシリンダー1内でピストン3を付勢する圧縮コイルばね6のばね圧で、リッドLが開き始めた直後においては、ピストン3を逆方向に移動させて、紐2をシリンダー1内に引き込む構成を併せて採用している。この為、紐式エアダンパーDの非作動状態においては、図3のBに示す如く、ピストン3とシリンダー1の一端部間にピストン3の逆方向への移動を許容する空間7を存在させるものとする。
【0014】
依って、本実施の形態の下では、開閉体たるリッドLは支持構造体たるグローブボックスBに対して図2に示す回動軌跡に沿って開閉動することとなるが、図において、A区間は、リッドLの開きに応じて、紐式エアダンパーDの紐2がピストン3の逆移動を得てシリンダー1の内部に引き込まれる区間、B区間は、リッドLの開きに応じて、紐式エアダンパーDの紐2がピストン3の移動を得てシリンダー1から引き出される区間であるが、このA・B連続した区間は、紐2とリンクアーム11の交叉角度が徐々に小さくなる区間でもある。
【0015】
これを詳しく説明すると、図3に示す如く、リッドLがグローブボックスBの開口を完全に閉塞している状態では、紐式エアダンパーDも作動せずに待機中にあり、リンクアーム11の一端部11aの軸支点Pと紐2の先端部2aを結ぶ線を越えて延長する直線S上における紐2とリンクアーム11の交叉角度θ1は90°よりも大きくなっている。そして、図4に示す如く、リッドLが開き始めた直後では、圧縮コイルばね6のばね圧で、紐式エアダンパーDのピストン3をシリンダー1内で逆移動させて、紐2をシリンダー1内に引き込むので、軽い操作力で、リッドLを開くことができると共に、この時点では、紐2とリンクアーム11の交叉角度θ2は上記交叉角度θ1よりは多少小さくなっている。
【0016】
尚、この場合において、図3のリッドLの閉塞状態では、リッドLの重心は支承軸よりもやや後方に位置しているが、図4のリッドLの開き始めに伴って、リッドLの重心は支承軸の真上を乗り越えて支承軸の手前に移動するので、この区間では、リッドLを手等で開方向に付勢してやる必要があるが、重心が支承軸から遠ざかる従い、リッドLの自重モーメントよって、リッドLは自動的に開方向へ回動すると共に、全開状態に至る直前には、リッドLが更なる自重モーメントで急開しようとする。
【0017】
次いで、図5に示す如く、リッドLがA区間を通過して更に回動した状態では、当該リッドLの回動に応じて、紐2がシリンダー1内から徐々に引き出されて、ピストン3も圧縮コイルばね6のばね圧に抗して同方向へ移動するので、これにより、リッドLの自重モーメントによる回動に制動力が加わって、リッドLがゆっくりと回動すると共に、この時点では、紐2とリンクアーム11の交叉角度θ3は更に小さくなっていく。そして、最後に、図6に示す如く、リッドLが完全に開ききった状態では、紐2とリンクアーム11の交叉角度θ4は0°に近くなるくらい小さくなる。尚、この場合には、リンクアーム11の折曲した他端部11bがストッパー片13に当接することとなるが、当該ストッパー片13は、ガイド孔12を画成する縁部から若干離れて設けられているので、縁部自体はリンクアーム11で抉じられることがなくなって、リンクアーム11のガイド孔12に対する円滑な摺動が保障できる。
【0018】
このことから、本実施の形態にあっては、紐2とリンクアーム11の交叉角度が、リッドLの開き始めにおいては大きく、開き終わりにおいては小さくなるように設定した関係で、特に、リッドLの開き終わりでは、リンクアーム11の移動方向と紐2の引き出し方向とが略一致して、リッドLの移動速度に応じて、紐2も同一速度で引き出される結果、ピストン3が速く大きく移動して大きな制動力を発揮するので、従来の如く、全開位置が近づくに従い、紐式エアダンパーDの制動力が不足して、リッドLの全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれる心配がなくなる訳である。
【0019】
尚、このことは、図7に示す如く、リッドLのaからbへの時間毎の長さ変化をレーザー光線14で読み取って、それを各々の時間での速度に換算する測定方法の下で、本発明装置と従来装置とを比較してみると、従来装置では、図8に示す鎖線Xから明らかな如く、リッドLの開き終わりの速度が非常に速いのに比べて、本発明装置では、図8に示す実線Yから明らかな如く、開き始めは従来装置と比べるとリッドLの回動速度は速いが、開き終わりの速度は、従来装置と比べると遥かに遅いことが判明した。従って、この点からも、全開位置が近づくに従い、紐式エアダンパーDの制動力が不足して、リッドLの全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれる心配がなくなることが理解できる。
【0020】
又、本実施の形態に係る紐式エアダンパーDにあっては、1本の等ピッチ圧縮コイルばね6を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、具体的には図示しないが、例えば、紐式エアダンパーDのシリンダー1内に2本の圧縮コイルばね6を装着したり、或るいは、1本の圧縮コイルばね6でも2段ピッチのものを使用して、リッドLの全開付近で開き始めよりも大きなばね定数を発揮するように構成すれば、上記した作用効果と相俟って、リッドLの全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれることをより一層確実に防止できることとなる。
【0021】
更に、本実施の形態にあっては、グローブボックスBを支持構造体となし、そのリッドLを開閉体となしたものであるが、インストルメントパネルを支持構造体となし、リッドLと一体型のグローブボックスBを開閉体となすことも実施に応じ任意である。
【0022】
【発明の効果】
以上の如く、本発明は、上記構成の採用により、紐とリンクアームの交叉角度が、開閉体の開き始めにおいては大きく、開き終わりにおいては小さくなるように設定されている関係で、特に、開閉体の開き終わりでは、リンクアームの移動方向と紐の引き出し方向とが略一致して、開閉体の移動速度に応じて、紐も同一速度で引き出される結果、ピストンが速く大きく移動して大きな制動力を発揮するので、従来の如く、全開位置が近づくに従い、紐式エアダンパーの制動力が不足して、開閉体の全開時に衝撃音が発生したり、衝撃に伴い耐久性が損なわれる心配がなくなる。又、これに加えて、開閉体の開き始めた直後では、逆に、付勢スプリングで紐がシリンダー内に引き込まれる関係で、開閉体の開き操作は軽い力で行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る開閉装置の要部構造を示す側面図である。
【図2】リッドのグローブボックスに対する開閉動の軌跡を説明する説明図である。
【図3】(A)はリッドの閉塞状態を示す側面図、(B)はリッドの閉塞状態における紐式エアダンパーを示す断面図である。
【図4】(A)はリッドの開き始めの直後の状態を示す側面図、(B)はリッドの開き始め直後の状態における紐式エアダンパーを示す断面図である。
【図5】(A)はリッドの開き途中の状態を示す側面図、(B)はリッドの開き途中の状態における紐式エアダンパーを示す断面図である。
【図6】(A)はリッドの開放状態を示す側面図、(B)はリッドの開放状態における紐式エアダンパーを示す断面図である。
【図7】リッドの時間毎の回動速度を測定する測定方法の一例を示す説明図である。
【図8】本発明装置と従来装置とのリッドの開き時間と開き速度の関係を示す図表である。
【符号の説明】
B グローブボックス(支持構造体)
L リッド(開閉体)
D 紐式エアダンパー
1 シリンダー
2 紐
2a 紐の先端部
3 ピストン
4 弁装置
5 ガイドキャップ
6 圧縮コイルばね(付勢スプリング)
7 空間
11 リンクアーム
11a リンクアームの一端部
11b リンクアームの他端部
12 ガイド孔
13 ストッパー片

Claims (1)

  1. 支持構造体側に開閉体を回動可能に支承して、当該開閉体の開閉動を紐式エアダンパーでコントロールする開閉体の開閉装置において、上記開閉体に開閉体の開閉動に伴って揺動するリンクアームの一端部を軸支すると共に、紐式エアダンパーのピストンに接続された紐の先端部を上記リンクアームの他端部に接続して、紐とリンクアームの交叉角度が、開閉体の開き始めにおいては大きく、開き終わりにおいては小さくなるように設定する一方、紐式エアダンパーのシリンダー内にピストンを紐を引き込む方向に付勢する付勢スプリングを設けると共に、開閉体の閉塞状態において、該付勢スプリングが縮んで、ピストンとシリンダーの一端部間にピストンの逆方向への移動を許容する空間を存在させて、開閉体が開き始めた直後においては、付勢スプリングの付勢力で、ピストンの逆移動を得て、紐をシリンダー内に引き込み、且つ、開閉体の閉塞状態から開き始めた直後の間では、リンクアームの他端部が紐式エアダンパーに最も接近するように構成したことを特徴とする開閉体の開閉装置。
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