JP3913400B2 - 物品取出し用の吸着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被吸着面の凹凸の段差が大きく、しかもその凹凸の大きさや配列が一定でない物品の吸着取出しに好適な物品取出し用の吸着装置に係わり、例えばリンゴ、桃、梨、卵等の農産物の箱詰め包装に用いられる農産物収容用のトレイパックを、積み重ねられた状態から一枚づつ吸着して取出すことができる物品取出し用の吸着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、物品を吸着して取出す装置としては、例えば実開平3−115212号公報、特公昭55−43876号公報及び実開昭55−175089号公報に開示されている。先ず、実開平3−115212号公報に開示の物品の吸着保持体(吸着装置Aという)は、吸着パッドの下端開口部に、非通気性のゴムスポンジ等を所定幅で環状に設けたものである。
【0003】
また、特公昭55−43876号公報に開示の重量物搬送用吸盤(吸着装置Bという)は、逆じょうご状の真空室の周囲に中空の加圧室を設け、加圧室に空気圧または水等の流体源と連結した取入口を設けると共に真空室を真空源に連結し、加圧室を圧入することによりその内圧と真空室の吸引力と相俟って、平面を持つ重量物を吸着するようにしたものである。さらに、実開昭55−175089号公報に開示の吸着筺(吸着装置Cという)は、吸着筺本体の下面側に取り付けられた多孔板の下面に、通気性のスポンジ板を設けたもので、タイル等の平板状の物品の吸着に適するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実開平3−115212号公報に開示の吸着装置Aにあっては、一般的に使用されている蛇腹式吸着盤の改良型であり、被吸着面の凹凸の差が比較的少ない物品や緩やかな物品(例えば筋状、イボ状、あるいは網目状の凹凸等を有する物品)で、かつ球状型の青果物等の物品の吸着保持には好適であるものの、被吸着面の凹凸の差が急激で大きな物品の場合には吸着ミスが生じ易いという問題点があった。すなわち、凹凸の差が大きく急激な物品かあるいは凹凸がある部分に集中しているような物品の場合、当該凹凸部分の段差が、環状ゴムスポンジの弾性変形及び撓み変形範囲内で吸収できないことがあり、環状ゴムスポンジが物品の被吸着面に確実に接触せず、吸着ミスが生じ易くなる。
【0005】
また、特公昭55−43876号公報に開示の吸着装置Bにあっては、加圧室を形成するゴム等の弾性質の吸着壁を物品の被吸着面に吸着させる方式であるため、吸着壁の弾性変形及び撓み変形範囲内で、物品の被吸着面の凹凸を吸収することは難しい。また、実開昭55−175089号公報に開示の吸着装置Cにあっても、スポンジの圧縮変形によって物品を吸着する方式であるため、スポンジの圧縮変形範囲内で、物品の被吸着面の凹凸を吸収することが難しい。したがって、これらの吸着装置B、Cにあっても、被吸着面の凹凸の段差が急激で大きな物品の場合には、吸着装置Aと同様の問題点を有していることになる。
【0006】
ところで、被吸着面の凹凸の段差が急激で大きく変化する物品の一例として、各種農産物の包装箱詰め時に使用される農産物収容用のトレイパックが上げられる。このトレイパックは、段差の大きな多数の凹部が所定の配列で隣設して形成されているもので、凹部の配列及びその形状、大きさは多種多様に設定されている。そして、このようなトレイパックに農産物を箱詰めする場合、一般的に、選果場(農産物の選別包装施設)に設置されている箱詰めロボット等によって自動的に行われるが、この自動箱詰め時に多数枚積層されたトレイパック群から各トレイパックを一枚づつ取上げて箱詰め位置にセットする必要がある。
【0007】
このトレイパック群からの各トレイパックの取上げは、取上げ時に、特定の1種類のトレイパックを限定して、例えば前記吸着装置Aで、トレイパックの凹部の底部や平らな凸部に吸着パッドを接触させて吸着取上げることは可能である。しかし、多種多様の形態のトレイパックを取り扱う選果場においては、凹部の配列及び形状、大きさに応じた多くの形状の吸着パッドを用意しなければならず、吸着装置Aでは、コスト、運営操作性及び配置スペース等の点において実用的でない。
【0008】
また、トレイパックは、その隣設する凹部間の仕切壁(立上がり壁)についても、その形状が外周縁部(上端面)と同一のもの、あるいは仕切壁の上部に凹みを有するものがある等、多種多様である。そのため、仕切壁がトレイパックの外周縁部と全て同一で、上方から平らな板等を伏せた時に空気漏れが生じ難いトレイパックの場合は、平面を持つ物品を取上げることを目的とした、前記吸着装置Aや吸着装置B等で吸着できる可能性は高い。しかし、仕切壁の高さが低かったり前記凹みを有するようなトレイパックの場合は、平らな吸着面に接触させるだけでは隙間ができるため、空気漏れが生じ易く前述した吸着装置B、C等での吸着は困難である。そこで、トレイパックの仕切壁の形状等に応じて、吸着装置B、C等を選択的に使い分けることも考えられるが、これも実際上困難であり汎用的でない。
【0009】
つまり、前記吸着装置Aにあっては、トレイパックの凹部の配列、形状等が多種多様にある場合に、この吸着装置Aを用いて各種形態のトレイパックを確実に吸着取上げることは困難であり、吸着装置Aがトレイパックの形態毎に専用化されて吸着装置A自体のコストアップを招くことになる。また、吸着装置Bや吸着装置Cにあっては、吸着壁やスポンジの圧縮変形に限度があることから、隣設する凹部の間の仕切壁の高さが様々あるトレイパックを安定して吸着することが難しい。また、吸着装置A〜Cで同一形状のトレイパックを吸着取上げたとしても、トレイパックの厚さが比較的薄いことから、吸着時にトレイパック全体の反りや曲がりが発生し易く、吸着ミスを一層招き易いという問題点があるのも実情である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、従来の吸着装置のように、特定の形状と弾性力を有するものでは、凹凸段差の急激な被吸着面を有する物品の取出しに限度があり、むしろ柔軟なシート状部材に所定の弛ませを持たせて設け、この弛みを利用し吸引作用で吸引口方向に移動させれば、シート状部材を物品の被吸着面に馴染ませることができる点に着目してなされたものである。
【0011】
そして、請求項1記載の発明の目的は、物品の被吸着面が一定でなかったり凹凸の段差が急激なもの、あるいは被吸着面が平坦なものであっても、一つの機構で確実に吸着し得る物品取出し用の吸着装置を提供することにある。また、請求項2記載の発明の目的は、請求項1記載の発明の目的に加え、シート状部材の移動をスムーズに行い得る物品取出し用の吸着装置を提供することにあり、請求項3記載の発明の目的は、請求項1または2記載の発明の目的に加え、シート状部材を元の状態に容易に戻して、次の吸着動作を確実に行い得る物品取出し用の吸着装置を提供することにある。
【0012】
また、請求項4記載の発明の目的は、請求項1ないし3記載の発明の目的に加え、被吸着面の小さな凹凸を吸収して物品をより一層確実に吸着し得る物品取出し用の吸着装置を提供することにある。また、請求項5記載の発明の目的は、請求項1ないし4記載の発明の目的に加え、シート状部材の移動をよりスムーズに行い得る物品取出し用の吸着装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、物品を吸着して取出す物品取出し用の吸着装置であって、中央部分に上下に貫通する吸引口が設けられると共に、該吸引口の上面側に吸引装置が接続される平板状の基盤と、その内周縁部が前記吸引口の周囲全面に亘って固着され、その外周縁部が前記基盤の外周縁部に固着されると共に、基盤の下面側に弛みを持たせて張設されてその内側に内部空間を形成する柔軟なシート状部材と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、例えば基盤を下降させてその下面側に張設されてその内側に内部空間を形成するシート状部材を、物品の被吸着面に接触させて吸引装置を作動させると、基盤の下面側で吸引口の周囲全周に亘って設けられているシート状部材が、吸引作用で被吸着面の凹凸に沿いつつ吸引口方向に移動する。このシート状部材の移動で、シート状部材が被吸着面の凹凸に馴染んだ状態で密着し、この時、シート状部材が柔軟で弛みを持って張設されていることから、被吸着面の凹凸の段差が急激に変化する箇所があっても、その変化に容易に馴染むことができる。これにより、被吸着面の凹凸の形態に係わらず、シート状部材で物品が確実に吸着される。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、シート状部材には、内部空間内に外気を導入し得る通気孔が設けられていることを特徴とする。このように構成することにより、シート状部材に設けられた通気孔を介して、シート状部材の内側の内部空間内の換気を行うことができて、シート状部材の移動がスムーズとなる。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、基盤には、内部空間に対応する位置に、送風装置に接続するエアー送風口が設けられ、シート状部材による物品の吸着取出し後に、エアー送風口から内部空間内にエアーを送風することにより、シート状部材を膨らませて吸着前の状態に復帰させることを特徴とする。このように構成することにより、シート状部材による物品の吸着取出し終了後に、吸引作用で収縮して物品に吸着しているシート状部材の内側の内部空間内に、圧縮空気等が送り込まれる。この圧縮空気等でシート状部材が膨らんで元の状態に復帰することから、シート状部材による物品の繰り返し吸着取出しが容易かつ確実に行われる。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、基盤の下面でシート状部材との間に弾性部材が設けられていることを特徴とする。このように構成することにより、弾性部材自体の変形で物品の被吸着面の凹凸を吸収することもできて、被吸着面の凹凸の急激な段差の変化等により容易に対応し得る。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、シート状部材が非通気性を有することを特徴とする。このように構成することにより、吸引作用が効果的に得られて、シート状部材の移動がよりスムーズとなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図5は、本発明に係わる物品取出し用の吸着装置の一実施例を示し、図1が斜視図、図2がその底面図、図3が吸着装置の断面図、図4が農産物収容用のトレイパックの断面図、図5が吸引動作時の断面図である。
【0025】
図1〜図3において、吸着装置1は、鉄板等からなる平板状の基盤2を有し、この基盤2の下面2bには、スポンジ等からなる弾性体3を介して、柔軟なシート状部材4が取り付けられている。このシート状部材4は、各種の生地の繊維製品(例えばポリエスル繊維)や、合成樹脂シート(例えばポリエチレンシート)等の非通気性を有する薄いシートによって、比較的浅型の略袋状に形成されている。
【0026】
そして、シート状部材4は、その内周縁部4aが、基盤2と弾性体3の中心位置に設けた円形の吸引口5の開口全域に適宜の固着手段で固着されると共に、その外周縁部4bが、基盤2(及び弾性体3)の外周縁部に接着等の適宜の固着手段で固着されている。これにより、シート状部材4は、基盤2の下面2b側(弾性体3の下面側)に所定の弛みを有する状態で固着され、その内部に環状の内部空間6が形成されている。また、シート状部材4の基盤2との固着部で、基盤2の対角線位置には内部空間6内の空気を換気させる通気孔7がそれぞれ形成されている。
【0027】
前記基盤2の上面2a側で吸引口5部分には、取付板8を介して吸気管9の一端が接続され、この吸気管9の他端は、図示しない吸引装置に接続されている。この吸引装置の作動で吸引口5を介して、シート状部材4の下面4c(外面)と物品としてのトレイパック15の被吸着面15aとで形成される空間21(図5参照)が、後述する如く負圧になることによって、弛んだ状態のシート状部材4がトレイパック15の被吸着面15aの形状に馴染みながら移動することになる。
【0028】
また、基盤2の上面2aで前記内部空間6に対応する位置にはエアー送風口10(図1参照)が設けられ、このエアー送風口10には図示しない送風装置が接続されている。このエアー送風口10から内部空間6内にエアーが送風されることによって、収縮状態のシート状部材4が膨らむ、すなわちシート状部材4が元の状態に復帰する。なお、このエアー送風口10や前記通気孔7は必ずしも必要ではなく、例えば収縮した状態のシート状部材4の復帰を、シート状部材4自体の重みで下方に垂れるようにして行うこともできるし、内部空間6の換気をシート状部材4自体の材質(所定の通気性)によって行うこともできる。
【0029】
前記取付板8の下面で吸引口5内には、図3に示すように、吸込防止機構11が設けられている。この吸込防止機構11は、取付板8に固定された支持板12と、この支持板12の下端に固定された金網13とで形成され、金網13の下面位置(支持板12の高さ)は、弾性体3の下面より若干上方に位置するように設定されている。この吸込防止機構11によって、板厚が薄く変形し易いトレイパック15の吸引口5内への吸い込みが防止される。
【0030】
次に、この吸着装置1で物品としての農産物収容用のトレイパック15の吸着取出し動作について説明する。先ず、農産物収容用のトレイパック15は、図1及び図4に示すように、平面視直方体形状でその被吸着面15aには、多数の凹部16が所定の配列を有する如く発泡樹脂等で形成されている。このトレイパック15の隣設する凹部16間の仕切壁17(立上がり壁)には、凹部16内に収容された農産物の取出し等を容易にするための凹み17aがそれぞれ形成されると共に、凹部16間及び外周縁部には平坦部18が形成されている。このように形成されたトレイパック15は、上方のトレイパック15の凹部16に対応して下方に突出した突出部16aを、下方のトレイパック15の凹部16内に軽く嵌合することにより積層されて、図1に示すように、トレイパック群19を形成している。
【0031】
そして、このトレイパック群19から、最上位のトレイパック15を吸着装置1で吸着して取上げる(取出す)場合、吸着装置1のシート状部材4が膨らみ下方に弛んだ状態で、吸着装置1(吸気管9及び基盤2)を下降させてシート状部材4の下面4cをトレイパック15の被吸着面15aに押し付ける。この時、シート状部材4は下方に弛んだ状態となっているため、シート状部材4がトレイパック15の被吸着面15aの平坦部18に収縮した状態で接触すると共に、凹部16や仕切壁17部分に所定圧(下降量に応じた圧力)で接触した状態となる。しかし、例えば被吸着面15aの仕切壁17の凹み17a部分においては、被吸着面15aの凹凸の段差が急激に変化するため、シート状部材4を単に下方に押し付けただけでは、図4の二点鎖線で示すように、多少の隙間20を有する箇所も生じていることになる。
【0032】
このような状態で吸気管9に接続されている吸引装置を作動させると、図5に示すように、吸気管9及び吸引口5を介して、シート状部材4の下面4cとトレイパック15の被吸着面15aで形成される空間21内が負圧となり、この負圧によって柔軟なシート状部材4が吸引口5方向に引っ張られて移動する。シート状部材4が吸引口5方向に移動すると、シート状部材4が柔軟であることから、トレイパック15の被吸着面15aの凹凸の段差に沿って、すなわちシート状部材4が段差に馴染みつつ移動し、この移動によって仕切壁17の凹み17a部分に形成されている前記隙間20がシート状部材4で塞がれる。
【0033】
この隙間20が塞がれることによって空間21内が密閉された状態となり、所定の吸引圧でシート状部材4がトレイパック15の被吸着面15aの平坦部18、凹部16及び仕切壁17の凹み17a部分等に密着する。そして、この状態で吸着装置1が上昇することによって、最上位のトレイパック15が直下のトレイパック15から分離して取上げられる。
【0034】
なお、隙間20が塞がれると空間21内が密閉状態となり、板厚の薄いトレイパック15が吸引口5内に吸い込まれ易くなる。しかし、この吸い込みは、吸引口5に設けた吸込防止機構11の金網13によって防止され、吸着時のトレイパック15の反り等の変形がなくなり、上下のトレイパック15の分離がスムーズとなる。また、シート状部材4の移動時に、シート状部材4の4隅の外周縁部4bに設けた通気孔7から外気が導入されるため、この外気によってもシート状部材4の移動がよりスムーズに行われる。
【0035】
そして、この取上げられたトレイパック15は、後述する如く選別包装施設25の箱詰め位置S1(図6及び図7参照)まで移動された後に、吸引装置の作動を停止させることにより、シート状部材4がトレイパック15の被吸着面15aから離れ箱詰め位置S1にセットされる。この時、箱詰め位置S1まで移動した、すなわち吸引動作が完了した時点で、基盤2に設けられているエアー送風口10からシート状部材4の内部空間6内にエアーを送風する。このエアーの送風により、吸引で収縮状態のシート状部材4が膨らみ、吸着しているトレイパック15がシート状部材4から容易に離れると共に、シート状部材4自体の形状も吸着前の元の状態に戻り、次のトレイパック15の吸着動作が可能な状態となる。
【0036】
すなわち、前記吸着装置1は、柔軟なシート状部材4を下方に弛ませた状態で設け、このシート状部材4を吸引作用によって吸引口5方向に移動させることにより、シート状部材4をトレイパック15の被吸着面15aの凹凸形状に馴染ませつつ密着させる。そのため、被吸着面15aの凹凸の段差が大きくかつ急激な形状のトレイパック15であっても、シート状部材4をその被吸着面15aに確実に密着させて取上げることができて、トレイパック15の形状に係わらず、一つの吸着装置1で各種形状のトレイパック15の取上げが可能になる。
【0037】
次に、前記吸着装置1を使用した農産物の選別包装施設の一例を図6〜図11に基づいて説明する。図6において、選別包装施設25には、2列の農産物供給コンベア26と、この農産物供給コンベア26に対応した2列の搬送コンベア27と、1列の選別コンベア28とが連続した状態で配置されると共に、選別コンベア28にはその搬送方向と直交する方向に複数列の分岐搬送ライン29が接続されている。
【0038】
そして、前記農産物供給コンベア26から搬送されてくる農産物Wは、作業者Mによって対応する搬送コンベア27のトレイ30上(図7参照)に1個づつそれぞれ載置され、この農産物Wが、搬送コンベア27の下流側に配置された計測装置31で計測された後に合流部32で合流されて、1列の選別コンベア28の上流側に供給される。
【0039】
前記分岐搬送ライン29は、選別コンベア28に対して複数列設けられ、各列の分岐搬送ライン29には2列対になった貯留集積コンベア33がそれぞれ配置され、この各貯留集積コンベア33上に、仕分け分類された農産物Wが貯留集積される。また、分岐搬送ライン29(貯留集積コンベア33)の上流側には、排出装置34がそれぞれ配置されると共に、分岐搬送ラインの29下流側には機械箱詰め部35と手詰め部36(但し手詰め部36は最右端の分岐搬送ライン29)がそれぞれ配置されている。
【0040】
前記機械箱詰め部35は、図7〜図11に示すように、前記吸着装置1を有するトレイパック供給装置37と、箱詰め装置38及び空箱供給装置39等で構成されている。トレパック供給装置37は、複数列の貯留集積コンベア33の下流側上方に1列状態で配置された、例えば18玉、20玉及び24玉の3種類のトレイパック15用の載置台40と、緩衝シート42用の載置台41を有し、この各載置台40、41の上方に吸着装置1が位置し得るように構成されている。
【0041】
そして、吸着装置1は、トレイパック供給装置37に次のようにして取り付けられている。すなわち、図8〜図10に示すように、前記吸気管9の上端に支持杆44が連結され、この支持杆44の上部に軸受45が配置されると共に、支持杆44上部と軸受45には1対の平行アーム46a、46bの一端が連結されている。また、平行アーム46aの他端は、フレーム47に固定したモータ48の回転軸48aに連結され、平行アーム46bの他端が支軸49に連結されている。さらに、モータ48が固定されたフレーム47にはガイド50が設けられ、このガイド50がモータ52の作動で回転するガイド杆51に上下動し得るように係合すると共に、ガイド杆51自体がモータ53(図9参照)の回転で水平方向に移動し得るように構成されている。
【0042】
これにより、モータ48が回転することによって、一対の平行アーム46a、46bは、図6及び図10に示すように、載置台40、41の位置と箱詰め位置S1との間で矢印イの如く水平面内で回動する。また、モータ52が回転することによって、フレーム47(すなわち一対の平行アーム46a、46b)が、カイド杆51に沿って図10の矢印ロの如く(Z方向)に上下動し、モータ53が回転することによって、吸引装置1が図9の矢印ハ方向(Y方向)に移動する。なお、トレイパック供給装置37の構成は、以上の例に限定されることなく、他の適宜の構成を採用することができる。
【0043】
前記箱詰め装置38は、所定数の吸着パッド56を有する箱詰めヘッド55を有し、この箱詰めヘッド55は、図11に示すように、モータ57が回転することによってY方向に移動すると共に、モータ58の回転によってZ方向に移動し、さらに図7に示すように、モータ59の回転によってX方向に移動可能に設けられている。この箱詰めヘッド55は、その吸着パッド56によって、貯留集積コンベア33の下流側に接続された搬送コンベア60の、箱詰め待機位置S2に待機しているトレイ30上の農産物Wを吸着して取上げる。そして、この農産物Wが、X方向前方に移動することによって、前記トレイパック供給装置37で取上げられ、箱詰め位置S1にセットされているトレイパック15の凹部16内に収容(箱詰め)される。なお、箱詰め位置S1は、箱詰め作業の効率向上のために例えば2箇所設けられている。
【0044】
前記空箱供給装置39は、箱詰め装置38の反箱詰め位置S1側に設置された空箱降下装置61と、この空箱降下装置61の下端に連結され空箱65を箱詰め位置S1下方まで搬送する空箱搬送コンベア62と、この箱詰め位置S1下方まで搬送された空箱65を箱詰め位置S1まで上昇させる空箱上昇装置63とで構成されている。なお、空箱降下装置61には、例えば4種類の空箱65を供給する4列の配函コンベア64(図8参照)が接続されており、この配函コンベア64で搬送されてくる空箱65が、適宜に選択されて空箱降下装置61に供給される。
【0045】
ここで、この選別包装施設25における農産物Wと空箱65等の流れの概略について説明する。先ず、計測装置31によって計測されその等階級等が判定(仕分け分類)された農産物Wは、仕分け分類に応じて対応する排出装置34が作動することによって、所定の分岐搬送ライン29の貯留集積コンベア33上に供給され、貯留集積コンベア33で下流側に搬送されて貯留集積される。この貯留集積された農産物Wは、貯留集積コンベア33の下流側に接続された搬送コンベア60上に適宜に供給されて箱詰め待機位置S2で待機させられる。
【0046】
一方、4種類の空箱65は、造られた状態(上面が開けられた状態)で配函コンベア64で搬送されて、各空箱降下装置61の位置で停止させられて待機し、所定の空箱65が空箱降下装置61内に供給される。この空箱65は、空箱搬送コンベア62で搬送され、空箱上昇装置63によって2箇所の箱詰め位置S1にそれぞれセットされる。
【0047】
そして、所定の農産物Wが箱止め待機位置S2に所定数待機され、箱詰め位置S1に空箱65がセットされたら、トレイパック供給装置37が作動して、前述したように、シート状部材4の吸着によって、所定のトレイパック群19の最上位のトレイパック15を取上げる。この取上げられたトレイパック15は、平行アーム46a、46bが回転することにより、箱詰め位置S1にセットされている空箱65内に挿入されてセットされる。この状態で、箱詰め装置38が作動して、その箱詰めヘッド55の吸着パッド56で、箱詰め待機位置S2に待機しているトレイ30上の農産物Wが所定数一括吸着されて取上げられ、箱詰め位置S1まで移動させられる。
【0048】
箱詰め位置S1まで移動させられた農産物Wは、箱詰めヘッド55の下降により、トレイパック15の凹部16内に例えば一列状態で収容され、この作業を所定回数繰り返すことにより、所定玉数の農産物Wがトレイパック15の各凹部16内にそれぞれ収容(箱詰め)される。1枚目のトレイパック15の全ての凹部16に農産物Wが箱詰めされたら、トレイパック供給装置37を作動させて、載置台41上に積層載置されている緩衝シート42を、吸着装置1のシート状部材4で吸着して取上げる。この緩衝シート42の吸着取上げも、シート状部材4のトレイパック15に対する作用と同様の作用によって取上げられ、この時、緩衝シート42には凹凸がほとんどないことから、より良好な吸着取上げが可能になる。
【0049】
シート状部材4で取上げられた緩衝シート42は、トレイパック供給装置37の回動により、箱詰め位置S1の箱詰めされた空箱65内の農産物W上に載置される。そして、箱詰め形態が2段積みの場合は、この緩衝シート42上にさらに次のトレイパック15が積層されて農産物Wが箱詰めされ、所定段数箱詰めされた時点で箱詰め作業が終了する。なお、緩衝シート42を用いない箱詰め形態の場合には、農産物Wが箱詰めされた時点で箱詰め作業が終了することになる。このようにして農産物Wが箱詰めされた包装箱は、製品搬送コンベアで下流側に搬送され、農産物Wが箱詰めされた包装箱が排出された箱詰め位置S1には、空箱供給装置39により次の空箱65が供給される。
【0050】
このように上記実施例の吸着装置1によれば、基盤2の下面2b側に柔軟なシート状部材4を弛ませた状態で取り付け、このシート状部材4を吸引装置の作動で吸引口5方向に移動させることができるため、シート状部材4をトレイパック15の凹凸形状に馴染ませつつ密着させることができ、仕切壁17に凹み17aを有する凹凸の段差が大きく急激であるトレイパック15であっても、吸着ミスすることなく確実に吸着して取上げることができる。
【0051】
また、シート状部材4が基盤2に所定厚さの弾性体3を介して取り付けられているため、この弾性体3の弾性変形により、トレイパック15の被吸着面15aの多少の凹凸を吸収することができ、シート状部材4のトレイパック15への吸着をよりスムーズに行うことができる。さらに、吸引口5に金網13を有する吸込防止機構11が設けられているため、比較的薄いトレイパック15や緩衝シート42の吸引による吸引口5内への吸い込みが確実に防止され、吸着取上げ時のトレイパック15等の反りや変形が抑えられ、積層状態のトレイパック15の分離及び取上げをスムーズに行うことができる。
【0052】
これらのことから、この吸着装置1を選別包装施設25のトレイパック供給装置37に適用することにより、積層状態のトレイパック群19からトレイパック15を一枚づつ確実に分離して取上げて、箱詰め位置S1にセットすることができる。その結果、吸着取上げミスの発生頻度を従来の方式に比較して極めて小さくすることができて、農産物Wの箱詰め包装作業の作業効率を大幅に高めることが可能になる。
【0053】
また、吸着装置1のシート状部材4を、トレイパック15の被吸着面15aの凹凸形状に係わらず密着させることができるため、1台(1種類の)の吸着装置1で各種形態のトレイパック15や緩衝シート42を吸着して取上げることができ、各トレイパック15に応じて吸着装置1を一々用意する必要がなくなり、トレイパック供給装置37自体の構成を簡素化することができると共に、安価なトレイパック供給装置37を得ることができる。さらに、柔軟なシート状部材4で隙間20をできるだけ塞いだ状態で、吸引装置を作動させることができるため、吸引装置自体の吸引容量を過大なものとする必要がなくなり、必要最小限の容量で実現できて、より安価な吸着装置1(トレイパック供給装置37)が得られる。
【0056】
なお、本発明は、上記した各実施例に限定されるものでもなく、吸引作用によって吸引口5方向に移動してトレイパック15の被吸着面15aに密着し得る適宜のシート状部材を使用することができる。また、上記実施例においては、吸着して取上げる物品として、農産物収容用のトレイパック15を例にして説明したが、本発明に係わる吸着装置は、各種の物品の吸着取出しに適用することができる。
【0057】
さらに、上記実施例における基盤2の形状や吸引口5の大きさ及び形状、選別包装施設25のライン構成、トレイパック供給装置37、箱詰め装置38及び空箱供給装置39の構成等も一例であって、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の発明によれば、基盤の下面側に柔軟なシート状部材が弛みを持たせて張設されてその内側に内部空間を形成するため、このシート状部材を吸引作用で吸引口方向に移動させることができるので、物品の被吸着面に凹凸の段差が急激に変化する箇所があっても、その変化にシート状部材が容易に馴染むことができて、被吸着面の凹凸の形態に係わらず物品を確実に吸着して取出すことができる。
【0059】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、シート状部材には、その内側に形成される内部空間内に外気を導入し得る通気孔が設けられているため、通気孔を介して、シート状部材の内側の内部空間内の換気を行うことができて、シート状部材の移動がスムーズとなり、物品をより一層確実に吸着することができる。
【0060】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、シート状部材による物品の吸着取出し終了後に、吸引作用で収縮して物品に吸着しているシート状部材の内側の内部空間内にエアー送風口から圧縮空気等が送り込まれるため、圧縮空気等でシート状部材を元の状態に膨らませることができると共にシート状部材の物品からの剥離が確実となり、物品の繰り返し吸着取出し作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0063】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3記載の発明の効果に加え、基盤の下面でシート状部材との間に弾性部材が設けられているため、弾性部材自体の変形で物品の被吸着面の凹凸を吸収することができて、被吸着面の凹凸の急激な段差の変化等により容易に対応することができる。
【0064】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4記載の発明の効果に加え、シート状部材が非通気性を有するため、吸引作用が効果的に得られて、シート状部材の移動をよりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる物品取出し用の吸着装置の一実施例を示す斜視図
【図2】同その底面図
【図3】同吸着装置の断面図
【図4】同農産物収容用のトレイパックの断面図
【図5】同吸着装置の吸引動作時の断面図
【図6】同吸着装置を使用した農産物の選別包装施設の概略平面図
【図7】同その要部の拡大平面図
【図8】同図7のA−A線矢視図
【図9】同図7のB−B線矢視図
【図10】同トレイパック供給装置の動作説明図
【図11】同図7のC−C線矢視図
【符号の説明】
1・・・・・・・・吸着装置
2・・・・・・・・基盤
3・・・・・・・・弾性体
4・・・・・・・・シート状部材
4a・・・・・・・内周縁部
4b・・・・・・・外周縁部
4c・・・・・・・下面
5・・・・・・・・吸引口
6・・・・・・・・内部空間
7・・・・・・・・通気孔
10・・・・・・・エアー送風口
11・・・・・・・吸込防止機構
13・・・・・・・金網
15・・・・・・・トレイパック
15a・・・・・・被吸着面
16・・・・・・・凹部
17・・・・・・・仕切壁
17a・・・・・・凹み
19・・・・・・・トレイパック群
20・・・・・・・隙間
21・・・・・・・空間
25・・・・・・・選別包装施設
37・・・・・・・トレイパック供給装置
38・・・・・・・箱詰め装置
39・・・・・・・空箱供給装置
S1・・・・・・・箱詰め位置
S2・・・・・・・箱詰め待機位置
W・・・・・・・・農産物
Claims (5)
- 物品を吸着して取出す物品取出し用の吸着装置であって、中央部分に上下に貫通する吸引口が設けられると共に、該吸引口の上面側に吸引装置が接続される平板状の基盤と、その内周縁部が前記吸引口の周囲全面に亘って固着され、その外周縁部が前記基盤の外周縁部に固着されると共に、基盤の下面側に弛みを持たせて張設されてその内側に内部空間を形成する柔軟なシート状部材と、を備えたことを特徴とする物品取出し用の吸着装置。
- 前記シート状部材には、前記内部空間内に外気を導入し得る通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の物品取出し用の吸着装置。
- 前記基盤には、前記内部空間に対応する位置に、送風装置に接続するエアー送風口が設けられ、前記シート状部材による物品の吸着取出し後に、エアー送風口から内部空間内にエアーを送風することにより、シート状部材を膨らませて吸着前の状態に復帰させることを特徴とする請求項1または2記載の物品取出し用の吸着装置。
- 前記基盤の下面でシート状部材との間に弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の物品取出し用の吸着装置。
- 前記シート状部材が非通気性を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の物品取出し用の吸着装置。
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