JP3913126B2 - 超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置 - Google Patents

超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超臨界または亜臨界流体を用いて低強度あるいは超微細な構造を有する部材・部品を洗浄する装置に関するもので、特に、ガラス繊維で構成されたフィルタ洗浄用として好適な洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の空気調和設備に設置される空気清浄装置のエアフィルタは、粉塵の負荷により性能が劣化するため、定期的な交換が必要である。これまで多くは産業廃棄物として処理され新品と交換されてきたが、いわゆる中性能フィルタを中心として洗浄再生し再利用される機会が増えている。
【0003】
図6にエアフィルタの構造を示す。エアフィルタは、ガラス繊維やポリプロピレン等の不織布を織り込んだろ材1を、アルミまたは木製などのフレーム材2に接着固定したもので、空気等の流体を流通させることにより流体中の粒子等の不純物を捕集し取り除くことができる。微細な繊維で形成されたろ材は非常に強度が弱いため、空気流通時の圧力や振動で破損しないように、おり込まれた繊維と繊維のすき間がセパレータ3で補強されている。
【0004】
エアフィルタの洗浄再生技術として、従来、界面活性剤等の洗剤を含む液体溶媒を用いるもの(特開2001−17809)や、洗浄液体中に保持したフィルタ面上で超音波によるキャビテーション現象を発生させるもの(特開平11−188322号)が知られている。この洗浄方式に好適なエアフィルタは、ポリプロピレンなど耐水性の不織布で形成されたフィルタ繊維を有し、かつ、中性能フィルタ程度の繊維密度を持つものである。この方法では洗浄工程の後にすすぎ工程、脱水、乾燥工程など多数の工程を経由して再生されている。
【0005】
一方、液体以外の洗浄溶媒で、微細な構造物の洗浄に優れた方法として、超臨界状態や亜臨界状態の流体を利用する洗浄方法がある。
【0006】
この種の洗浄方法として、例えば、被洗浄物を超臨界流体に浸漬し汚染物質を流体中に溶解させて洗浄する方法、動力を使用せずに超臨界流体を循環流通(気化・液化状態での蒸気圧差による圧送、蒸気圧差を基にしたレベル差設定の重力落下搬送を利用)させて洗浄する方法(特開平10−94766号、特開平10−163152号、特開2000−153244)、超臨界流体循環経路の気体状態の場所に気体用フィルタを設けて汚染物が再付着するのを防ぐ方法(特開平7−284739号)、洗浄器内の超臨界流体を洗浄器外に急速に流出させること等により、汚染物質表面で強い攪乱や大量の気泡を発生させ、この流れやバブリング作用により汚染物質を迅速に強制剥離・強制溶解させて被洗浄物の洗浄を行う方法(特開平8−290128号)、ノズルから超臨界流体をジェット噴流で投射し、被洗浄物の汚れを剥離する方法(特開平10−163152号、特開平10−94766号)などが提案されている。
【0007】
図7に二酸化炭素を例とした状態線図を示す。臨界点を越えた温度・圧力の流体が超臨界流体であり、その臨界点近傍の状態が亜臨界流体である。
【0008】
超臨界状態とはどんなに加圧を行っても液体にならない状態である。超臨界流体は、粘度、拡散係数、密度、溶解力が気体と液体の中間の値を持ち、その密度は液体に近く、その粘度は気体のような挙動を示すことから、浸透力と高拡散性に優れるという特徴を持つ。さらに高拡散性から物質移動の面でも優れている。また超臨界流体は、わずかの圧力変化で大きな密度変化が得られるという特徴を有している。一般に物質の溶解度は密度と比例するので、超臨界流体は圧力変化のみにより大きな溶解度差を得ることができ、洗浄溶媒として優れた利点を持つ。
【0009】
また、超臨界流体を用いた洗浄は、従来からの湿式洗浄と比較し、微細な対象の洗浄効果に優れる、洗浄後の乾燥が不要、短時間の処理が可能、気化させることにより廃液が出ない、添加剤を加えることで溶解力を自由に制御できる、ランニングコストが安いなど、その利点は非常に大きい。
【0010】
なお、このような超臨界流体は、分離抽出操作において古くから工業的に利用されている。原料物質から目的の物質を超臨界流体中に溶解させてから取り出し、超臨界流体を減圧気化させることにより目的成分を抽出する。このプロセスは原料を洗浄していることに非常に類似するが、抽出された成分が対象となる抽出操作は、分離された後の元の素材が重要となる洗浄操作と基本的に目的が異なる。また、超臨界による洗浄は、抽出操作とは異なり、被洗浄物が損傷しないための配慮が必要であり、さらに、一度取り除いた汚れが、再び被洗浄物に付着しないようにしなければ、完全な洗浄が行えないことに留意する必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフィルタ洗浄再生技術は液体溶媒を用いて洗剤や超音波を利用するものであり、ポリプロピレンなどの耐水性の不織布フィルタ繊維しか洗浄することができない。またフィルタの繊維構造が高性能フィルタのように、数ミクロン〜サブミクロンオーダーの繊維の充填構造になると、フィルタ深層に洗浄溶媒が浸透しにくいためうまく洗浄することができない。
【0012】
特に繊維材質がガラス繊維で構成された高性能フィルタの場合、ガラス繊維は疎水性であるため繊維内部まで洗浄溶媒を浸透させることができず効果的に洗浄することができない。
【0013】
さらに液体溶媒により洗剤や超音波を利用するエアフィルタの洗浄方法では、洗浄後に液体溶媒に液浸したフィルタを乾燥する工程が必要であるため、乾燥のための熱や送風等の多大なエネルギーが要求される。
【0014】
一方、超臨界流体を用いた洗浄技術では、超臨界状態への加圧や、洗浄後の排出に時間がかかることや、密閉された槽内で処理を行うなどの制約があり、所要時間の短縮に注力されてきた。
【0015】
超臨界流体を排出するには、非常に高圧に圧縮された気体が大気圧に解放されるため、急速な断熱膨張が生じる。断熱膨張は洗浄槽の大きさに比例するため、洗浄槽の規模が大型で高圧を用いる洗浄ほど断熱膨張の影響が大きい。急激な断熱膨張は洗浄槽内や配管内で固体を生じる液封現象が起こる。液封は配管を破断する恐れがあるため、従来の洗浄技術は液封を生じさせずに、且つ、高速に超臨界流体を排出することが考えられてきた。
【0016】
しかし、非常に微細な数ミクロン〜サブミクロンオーダーのガラス繊維で構成されたフィルタは、液封を生じさせない減圧速度であっても、体積変化が大きければ、充填率や繊維分布等に乱れを生じ、フィルタの捕集効率に悪影響を及ぼすことがある。
【0017】
超臨界流体を循環流通させる方法(特開平10−94766号、特開平10−163152号、特開2000−153244)では、溶媒の搬送を溶媒の気化、液化状態での蒸気圧差による圧送、蒸気圧差を基にしたレベル差設定の重力落下搬送で全て達成できる利点を持つが、超臨界状態への昇圧や大気圧への減圧条件は配慮されておらず、被洗浄物によっては繊維の破損等を生じる。
【0018】
被洗浄物が数ミクロン〜サブミクロンオーダーのガラス繊維フィルタでは、高圧の超臨界流体をノズルなどから投与する場合、流体の圧力により繊維を破損する場合がある。また洗浄後に洗浄槽内の圧力を常圧に戻すために、洗浄槽から超臨界流体を急激に取り除くと、フィルタの周囲で圧力勾配が生じフィルタを破損することがある。
【0019】
洗浄器内の超臨界流体を洗浄器外に急速に流出させること等により、汚染物質表面で強い攪乱や大量の気泡を発生させ、この流れやバブリング作用により汚染物質を迅速に強制剥離・強制溶解させて被洗浄物の洗浄を行う方法(特開平8−290128号)では、十分な強度を持った被洗浄物の洗浄には効果を発揮するが、衝撃などに弱いガラス繊維フィルタでは破損してしまう恐れがある。
【0020】
ノズルから超臨界流体をジェット噴流で投射し、被洗浄物の汚れを剥離する方法(特開平10−163152号、特開平10−94766号)では、フィルタの表面繊維を破損するとともに、フィルタ繊維の深層部の洗浄効果が弱い。
【0021】
洗浄槽内でプロペラなどにより強制攪拌等の動作を伴うことも繊維の破損を引き起こす。
【0022】
また、被洗浄物を超臨界流体に浸漬させる方法では、汚染物質を流体中に溶解させることで洗浄を達成させるとしているが、剥離した汚染物が流体中に浮遊して残るため被洗浄物に再付着する問題を持つ。これを解決するためには清浄な流体に再度浸漬させるすすぎ工程が必要となるため不経済である。同様に超音波を併用する方法も、浮遊した汚染物の再付着はさけられないため、清浄な流体でのすすぎ工程が必要である。
【0023】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、数ミクロン〜サブミクロンオーダーのガラス繊維で構成された空調用高性能エアフィルタのような低強度の微細構造物の洗浄として、液体洗浄等に必要な乾燥などの余分な工程をなくし、超臨界流体を用いて微細ガラス繊維を破損することなく洗浄し、さらに脱離した汚れが再付着しないように効率よく洗浄する超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の洗浄装置は、フィルタを洗浄槽内に入れ、槽内に流体を導入し流通させ、流体を徐々に昇圧または昇温することで、流通流体を亜臨界さらには超臨界状態にし、超臨界流体の拡散係数が大きいことによる微細構造への浸透性と、動粘度が極めて小さいことによる界面流動と対流が発生しやすいことを利用して、汚染物質を迅速に強制剥離・強制溶解させて被洗浄物の洗浄を行う。そして洗浄後に流体を徐々に減圧または減温することで常温・常圧とし、洗浄槽から被洗浄物を取り出すことができ、乾燥工程等のない短工程で洗浄が完了することを特徴とする。
【0025】
また、制御装置は、流体充填、昇圧・昇温、洗浄、減圧・減温の4つの制御モードを有し、各制御モードは所定の制御開始条件に達したことを確認し制御動作に移ることを特徴とする。さらに、昇温・昇圧および/または減温・減圧操作を、フィルタに損傷を与えない制御された速度で行うことを特徴とする。
【0026】
また超臨界・亜臨界流体を流通させることにより脱離した汚染物がフィルタに再付着しないことを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態例を詳細に説明する。
【0028】
図1に本発明の実施形態例に係る超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置の基本構成例を示す。11は二酸化炭素を供給するボンベ(二酸化炭素供給手段)、12はシャットバルブ、13はコンプレッサー(二酸化炭素の加圧送液手段)、14は加熱器(加熱手段)、15は冷却器(冷却手段)、16は洗浄溶媒の導入手段と排出手段を持つ洗浄槽、17は圧力制御弁(圧力調節手段)、18は二酸化炭素中の汚染物を除去する分離フィルタ、19〜19は二酸化炭素を流通させる配管、20は二酸化炭素を循環供給させるための管、21は洗浄槽内の流体温度を検知する温度計、22は洗浄槽内の流体圧力を検知する圧力計、23は配管19内の流体温度を検知する温度計、24は配管19内の流体圧力を検知する圧力計、25は配管19内の流体流量を検知する流量計、26は制御装置、27はフィルタ表面の歪みを検知するセンサである。被洗浄物であるガラス繊維製高性能エアフィルタは、洗浄槽16内に収納・固定される。
【0029】
図2は本発明の実施形態例に係る洗浄装置におけるガラス繊維製高性能エアフィルタの洗浄プロセスを示すフローチャートである。また各プロセスにおける二酸化炭素の状態を図3に併せて示し、以下にそのプロセスを詳述する。
【0030】
(1)流体充填プロセス
予め洗浄槽16内に被洗浄フィルタを導入し(ステップS1)、フィルタを保持した洗浄槽16に対する二酸化炭素の供給方法について説明する。まずシャットバルブ12を開放し(ステップS2)、ボンベ11からの液化二酸化炭素を配管19に液体状態で導入する。加熱器14の加熱スイッチをオンし(ステップS3)、加熱器14で配管19に導入された液化二酸化炭素の温度を上昇させ、二酸化炭素を液体xから気体yの状態にする(図3のA)。加熱器14で気体の状態にされた二酸化炭素をコンプレッサー13を介して配管19から洗浄槽16に導入し、圧力制御弁17を開放し、洗浄槽16に保持されたフィルタの繊維の細部まで気体の二酸化炭素を充満させる(ステップS4)。洗浄槽16から圧力制御弁17を介して排出される気体の二酸化炭素は配管19から冷却器15に送られ、冷却器15は冷却スイッチがオンされる(ステップS5)。冷却操作により気体yの状態から液体xの状態の二酸化炭素に戻し(図3のa)、冷却器15で液体状態に戻された二酸化炭素は配管19、分離フィルタ18を介して配管19から排出、または管20から循環し再利用される。ここで、加熱器14の加熱操作と冷却器15の冷却操作は洗浄槽16の温度計の実測値を参照しながら行われる。なお、二酸化炭素は、冷却器15の冷却操作を行わずにそのまま排出してもよい。
【0031】
(2)昇圧・昇温プロセス
次に、洗浄槽16内の気体の超臨界状態への移行方法について説明する。洗浄槽16の流体の温度と圧力の実測値を確認しながら、圧力制御弁17を絞り洗浄槽16内の圧力を上昇させ、二酸化炭素を気体の状態から超臨界状態に徐々に移行させるか、またはコンプレッサー13で気体aの状態の二酸化炭素を加圧し超臨界zの状態に徐々に移行させて(ステップS6)、洗浄槽16の流体を超臨界状態にする(ステップS7)。具体的には洗浄槽16内の圧力を0.12MPa/minで徐々に臨界圧力以上、好ましくは15〜20MPaまで上昇させて洗浄槽16内部の二酸化炭素を超臨界zの状態にする(図3のB)。温度は臨界温度以上、好ましくは40〜60度の状態になるように加熱器14で随時調整する。洗浄槽16内の流体温度は、圧力が15〜20MPaに到達するまでに40〜60度になるように調整する。なお、超臨界zの状態への移行時も洗浄槽16からの排出流体は、冷却器15で冷却後、液体xの状態として排出してもよいし、または循環により再利用してもよい(図3のb,a)。また冷却器15で冷却せずにそのまま排出してもよい。
【0032】
(3)洗浄プロセス
次に洗浄時の動作について説明する。加熱器14の加熱スイッチのオンを維持し、且つ圧力制御弁17を絞り洗浄槽16内の圧力を上昇させるか、またはコンプレッサー13で気体の状態の二酸化炭素を加圧し超臨界状態に移行させる状態(ステップS8)を維持し、洗浄槽16内に超臨界状態の二酸化炭素を1〜2時間流通させる(ステップS9)。洗浄槽16に配管19から導入される超臨界二酸化炭素は、被洗浄物例えばエアフィルタの汚染物質を強制剥離、強制溶解し、汚染物を下流側に洗い流し、配管19から排出される。汚染物を含む超臨界zの二酸化炭素は冷却器15で減温されて液体xの状態に移行し(図3のC)、分離フィルタ18で汚染物を取り除かれた後、排出されるか、または流体を再び洗浄槽16に循環供給させるように流体の供給路を切り替えて循環再利用される。二酸化炭素を循環再利用する場合、洗浄時の液体xから超臨界zへの昇圧・昇温は、図3のAから図3のBを経由してもよいが、図3のcのように圧力の高い状態を維持して、加熱器14において液体xから超臨界zの状態に移行させてもよい。実際の洗浄では、洗浄槽16において圧力15〜20MPa、温度40〜60度の超臨界二酸化炭素を、1〜2時間程度流通させて洗浄する。なお、洗浄時間は、汚れの程度や要求する洗浄度により任意に設定すればよい。
【0033】
(4)減圧・減温プロセス
最後に洗浄後に洗浄槽16を減圧・減温し、常温・常圧に戻す方法について説明する。洗浄槽16の温度と圧力を参照しながら、圧力制御弁17の開度またはコンプレッサー13の回転数を調節し(ステップS10)、洗浄槽16内の圧力を0.12MPa/minで徐々に減圧し、二酸化炭素を超臨界zの流体状態から気体yの状態に移行させる(ステップS11)。同時に加熱器14の出力を落とし(ステップS10)、気体yの状態を維持しながら温度を常温まで低下させる(図3のb)。洗浄槽16内の流体温度は、圧力が常圧に到達するまでに常温になるように調整する。そして洗浄槽16内が常温・常圧に移行したのを確認し、冷却器15の冷却スイッチをオフし(ステップS12)、シャットバルブ12を閉じて(ステップS13)洗浄槽16から洗浄フィルタを取り出し(ステップS14)、洗浄を終了する。なお、図3のCを経由して常温・常圧に戻してもよい。
【0034】
前記の流体充填、昇圧・昇温、洗浄、減圧・減温の4つのプロセスは、所定の制御開始条件に達したら次のプロセスに自動的に移行するようにしてもよい。この場合、制御装置26には、流体充填、昇圧・昇温、洗浄、減圧・減温の4つの操作を実行するための制御モードが設けられ、制御装置26内のメモリに変更可能に設定・記憶される制御開始条件に基づいて、前述の各制御モードが順次実行される。
【0035】
なお、洗浄槽16内の昇圧や減圧の速度、および、液相・気相・超臨界相の移行の経路、あるいは、各制御モードの制御開始条件は、被洗浄物の材質や強度により適宜決定されるものであり、被洗浄物によってはこれ以外の速さ・経路・制御開始条件で行ってもかまわない。また汚染物の分離は超臨界流体、液体、気体のいずれの状態で行ってもよく、二酸化炭素を液体や気体に変換するために冷却手段や減圧手段を出口に設けてもよい。また洗浄時の二酸化炭素は臨界点より温度、圧力が低い亜臨界状態でもよく、洗浄効果を得ることができる。
【0036】
前記実施形態例では所定の速度で昇圧・昇温および減圧・減温を行ったが、この速度は昇圧・昇温および減圧・減温時に変動を持たせてもよい。
【0037】
図4は図1の洗浄装置で洗浄した結果である。中心粒径0.3μmの多分散のフタル酸ジオクチル粒子を用いて、圧力損失が新品の2倍に上昇するまで汚したフィルタを温度40℃、圧力20MPaの超臨界二酸化炭素で120分間洗浄を行った。なお、洗浄槽16内の昇圧・減圧は、±0.12MPa/minで行った。重量変化の結果から超臨界二酸化炭素で洗浄することにより、ほとんどの汚れが落ちているのがわかる。また圧力損失と捕集効率の測定結果から、フィルタの捕集性能は洗浄によりほぼ完全に回復していることがわかる。
【0038】
図5は塩化亜鉛(Zncl)粒子を用いてフィルタの粒子径ごとの透過率(=1−捕集効率)を測定した結果である。図中、横軸は塩化亜鉛粒子の粒子径、縦軸は透過率、501は新しいフィルタ、502は洗浄後のフィルタを表す。粒子径に対する透過率曲線は、透過率が最大となる粒子径および最大透過率からフィルタの繊維構造を間接的に評価する指標であり、洗浄前後の透過率曲線から、洗浄によるフィルタ繊維への影響を見ることができる。図5の結果から洗浄前後において、どの粒子径においてもほとんど透過率が影響を受けないのがわかる。このことから本実施形態例の洗浄方法がフィルタに損傷を与えることなく洗浄再生できることがわかる。
【0039】
なお、本実施形態例では、洗浄流体として二酸化炭素を用いているが、洗浄するフィルタの材質は、二酸化炭素に対する耐性の優れたフィルタほど洗浄しやすい。例えば、ろ材の繊維材質はフッ素樹脂よりもポリプロピレンやガラス繊維のほうが洗浄性に優れ、繊維を固定する接着剤はウレタン樹脂よりもエポキシ樹脂の方がよい。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態例を説明したが、超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置の実施態様は前述した例に限定されるものではない。
【0041】
例えば、洗浄流体は二酸化炭素に限定されず、本発明を実施するときはその他の超臨界状態の洗浄に適した流体が使用されてもよい。
【0042】
また、洗浄槽16には、流体の温度や圧力を検知する手段の他に、洗浄槽16内に固定されたフィルタの表面歪みを検知する手段(歪みセンサ27)を設けてもよい。この場合、フィルタの表面歪み検知手段(歪みセンサ27)として、例えばレーザセンサが設けられ、洗浄中のフィルタに過度の圧力がかかって変形・破損することがないよう、フィルタ面を常時監視する。レーザセンサによって検知されたフィルタ面の変位情報は、所定の周期で制御装置26に入力される。フィルタ面に、あらかじめ設定された変位量を超える変位が生じた場合、制御装置26は、洗浄槽16内の流体の圧力変動を抑制するよう、コンプレッサー13の出力または圧力制御弁17の開度を調節する。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、洗浄溶媒として超臨界または亜臨界状態の流体を利用し、微細構造をもつフィルタ繊維の繊維深層まで洗浄可能にするとともに、液体洗浄に必要な乾燥工程などを省き洗浄工程の短縮化が可能となる。また、超臨界または亜臨界状態への加圧・減圧速度を制御することにより、強度の弱いフィルタの洗浄時の損傷を防ぐことができる。さらに、洗浄槽内の流体の流れを制御することにより、脱離した汚れの再付着を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態例に係る洗浄装置におけるガラス繊維製高性能エアフィルタの洗浄プロセスを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態例に係る各プロセスにおける二酸化炭素の状態変化を示す特性図である。
【図4】図1の洗浄装置で洗浄した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態例に係る洗浄前後の粒径ごとの透過率分布の一例を示す特性図である。
【図6】エアフィルタの構造を示す一部切欠斜視図である。
【図7】二酸化炭素を例とした状態線図を示す特性図である。
【符号の説明】
11 二酸化炭素を供給するボンベ(二酸化炭素供給手段)
12 シャットバルブ
13 コンプレッサー(二酸化炭素の加圧送液手段)
14 加熱器(加熱手段)
15 冷却器(冷却手段)
16 洗浄溶媒の導入手段と排出手段を持つ洗浄槽
17 圧力制御弁(圧力調節手段)
18 分離フィルタ
26 制御装置

Claims (4)

  1. 超臨界または亜臨界流体を用いてフィルタを洗浄する洗浄槽と、
    前記洗浄槽へ流入する流体の温度や圧力を徐々に昇圧および昇温して流体を超臨界または亜臨界状態にし、超臨界または亜臨界状態にした流体を洗浄槽内に所定時間流通させ、前記洗浄槽内に流通させた流体の温度や圧力を徐々に減圧および減温しながら洗浄槽から流体を排出するように制御する制御装置と
    を具備し、前記制御装置は、洗浄槽内に固定されたフィルタの表面歪みを検知する手段で検知された変位情報に基づいて、洗浄槽内の圧力を制御することを特徴とする超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置。
  2. 超臨界または亜臨界流体を用いてフィルタを洗浄する洗浄槽と、
    前記洗浄槽に流入する流体を加熱する加熱手段と、
    前記洗浄槽に流入する流体の圧力を調整する圧力調整手段と、
    前記洗浄槽に設けられて洗浄槽内の流体の温度および圧力を検知する検知手段と、
    前記検知手段で検知された洗浄槽内の流体の温度および圧力に基づき洗浄槽内の流体が所定の速度で所定の温度および圧力になるように、前記加熱手段及び前記圧力調節手段を制御する制御装置と
    を具備し、前記制御装置は、洗浄槽内に固定されたフィルタの表面歪みを検知する手段で検知された変位情報に基づいて、洗浄槽内の圧力を制御することを特徴とする超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置。
  3. 請求項1または2に記載の超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置において、制御装置は、所定の制御開始条件に基づいて順次実行される流体充填、昇圧・昇温、洗浄、減圧・減温の4つの制御モードを有することを特徴とする超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置。
  4. 洗浄装置は、フィルタの洗浄中に洗浄槽から排出された流体に含まれる汚染物を取り除いた流体を再び洗浄槽に循環供給させるように流体の供給路を切り替える手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超臨界または亜臨界流体を用いた洗浄装置。
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