JP3913070B2 - X線光電変換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極間に配置されたX線光導電層にセレンを用いたX線光電変換器の技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線を電気信号に変換し、取り出した電荷をデジタル化し処理する技術は、産業用や医療用など幅広く活用されはじめている。
一方、X線に光感度を示す材料としてセレン及びセレン化合物が知られており、セレンの光導電性を利用するものとして電子写真感光体は古くから研究されている。
【0003】
そこで本発明者らは、上記電子写真感光体で用いられていたセレンを光導電材料としたX線光電変換器を作製したところ、X線照射による信号電流量(シグナル)が小さく、X線の未照射と照射の切り替え時の応答性が悪いものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、信号電流が大きく、かつ、応答性の高いX線光電変換器を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は信号電流や応答性を悪化させる原因を追求した結果、セレンに含まれるハロゲンが多い場合に、信号電流量の低下や応答性の悪化が生じることがわかった。
【0006】
即ちX線光電変換器のX線光導電層にセレンを主成分として用いる場合、該セレンのハロゲン濃度を規制することにより、電子の走行性の低下が無く、シグナルである信号電流が向上し、かつ、データ読み込みの高速化に伴うセンサ応答性の向上が実現できることになる。
更に本発明者等が検討を行った結果、X線光導電層と電荷収集電極との間に電荷輸送性の高い電荷輸送層を設けることで、ノイズ電流が低減し、信号電流とノイズ電流との比(S/N比)が向上することがわかった。
【0007】
かかる知見に基づいてなされた請求項1記載の発明は、基板と、前記基板上に配置された電荷収集電極と、前記電荷収集電極上に配置されたX線光導電層と、前記X線光導電層上に配置された上部電極とを有し、前記電荷収集電極と前記上部電極との間に電圧を印加した状態でX線を照射すると、前記X線光導電層内に潜像が形成されるX線光電変換器であって、前記X線光導電層はセレンを主成分とし、前記X線光導電層に含まれるハロゲンの濃度が1ppm以下であることを特徴とするX線光電変換器である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のX線光電変換器であって、前記電荷収集電極と前記X線光導電層との間に電荷輸送層が設けられたことを特徴とするX線光電変換器である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のX線光電変換器であって、前記電荷輸送層は三硫化二アンチモンを主成分とすることを特徴とするX線光電変換器である。
【0008】
尚、本発明でセレンとは、セレン単体とセレン化合物の両方を示す。従って、X線光導電層はセレン単体を主成分として含有する場合と、セレン化合物を主成分として含有する場合と、セレン単体とセレン化合物の両方を含有する場合とがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の電界印加型X線光電変換器の実施形態を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7の符号11はX線光電変換器の製造に用いられる真空加熱蒸着装置の一例を示している。真空加熱蒸着装置11は真空槽12を有しており、真空槽12内の底壁側にはるつぼ又はボート等の容器15が配置されている。
【0010】
真空槽12外部には真空排気系14が設置されており、真空排気系14を起動すると、真空槽12内が真空排気されるようになっている。
この真空加熱蒸着装置11を用いてX線光電変換器を製造するには、先ず、真空排気系14により真空槽12内を真空排気し、該真空槽12内に所定真空度の真空雰囲気を形成する。
【0011】
次に、真空雰囲気を維持したまま、ガラスからなる基板1を真空槽12内に搬入する。
この基板1の片面には、予めITO(インジウム・錫酸化物)薄膜からなる電荷収集電極2が形成されており、基板1の電荷収集電極2が形成された面を下に向けた状態で、基板1を容器15内の天井側に配置する。
【0012】
容器15内にはハロゲン濃度が1ppm以下のセレンからなる成膜材料が予め収容されており、容器15に設けられた不図示の加熱手段に通電して容器15を昇温させると、容器15内のセレンが加熱によって蒸発し、真空雰囲気中にセレン粒子が蒸気として放出される。
【0013】
真空雰囲気中に放出されたセレン粒子が電荷収集電極2の表面に到達すると、電荷収集電極2の表面にセレンの薄膜からなるX線光導電層が形成される(真空加熱蒸着法)。
X線光導電層が形成された状態の基板1を別の真空加熱蒸着装置へ搬入し、成膜材料として金を用いて真空加熱蒸着を行い、X線光導電層の表面に金薄膜からなる上部電極を形成する。
【0014】
図1の符号10は、X線光導電層3の表面に上部電極4が形成されてなるX線光電変換器を示している。
以上は、電荷収集電極2の表面にX線光導電層3を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図2に示すX線光電変換器20のように、電荷収集電極2とX線光導電層3との間に電荷輸送層5を設けると、ノイズ電流を低くすることができる。
【0015】
また、図3に示すX線光電変換器30のように、電荷収集電極2とX線光導電層3との間に下引き層6を設けることもできる。更に、図4に示すX線光電変換器40のように上部電極4の表面に上引き層7を設けたり、図5に示すX線光電変換器50のように上部電極4の表面に保護層8を設けることもできる。
【0016】
なお、特に図示はしないが、一つのX線光電変換器に上記電荷輸送層5と、下引き層6と、上引き層7と、保護層8とを設けることもできる。更に上記電荷輸送層5はX線光導電層3と上部電極4との間に設けることもでき、X線光導電層3をはさんで両側に電荷輸送層5を設けることもできる。
本発明に用いる基板1としては、板状のガラスなどが主に用いられる。
【0017】
本発明の電荷収集電極2としては、金、アルミニウム、ITO(インジウム・錫酸化物)などを用いることができる。この電極はX線照射領域を覆うように一様に形成してもよく、また、マトリクス状やストライプ状に形成してもよい。
また、基板1と電荷収集電極2の間にトンジスタを設けたTFT(薄膜トランジスタ)としてもよい。
【0018】
本発明のX線光導電層3はハロゲン濃度が1ppm以下のセレンを主成分として含有する。セレン化合物としては、セレンテルル化合物、セレンヒ素化合物などを用いることができる。
X線光導電層3中に含有されるハロゲン濃度としては1ppm以下であればよいが、応答性をより高める為には0.5ppm以下が好ましく、更には0.2ppm以下がより好ましい。
【0019】
X線光導電層の成膜方法は、用いる材料によって異なるが、真空蒸着、スパッタリング、CVDなどによって形成できる。形成されたX線光導電層の膜厚も、用いる材料によって異なるが、50μm以上2000μm以下程度に形成する。X線光導電層3に含有されるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが確認されており、1種類の元素が含有される場合もあるが複数種類の元素が含有される場合もある。
【0020】
ハロゲン濃度の分析法は以下の様に行う。
1)セレンを熱硝酸に溶解し、ハロゲンをガスとして取出す。
2)ハロゲンのガスを硝酸銀溶液と反応させ、ハロゲン化銀として析出させる。
3)得られたハロゲン化銀をろ過回収し、ハロゲン化銀を定量し、ハロゲン濃度とする。
【0021】
本発明の上部電極4としては、金、アルミニウム、ITO(酸化インジウム錫)などを用いることができる。
本発明に用いることができる電荷輸送層5は、X線光電変換器に電界を与えたときの電流値(ノイズ電流)を低減する効果がある。電荷輸送層5の材料としては、三硫化二アンチモン、テルル化亜鉛カドミニウムなどの無機材料を用いることができ、電荷移動性を示す有機材料を用いることもできる。
【0022】
それらの中でも、三硫化二アンチモンを主成分とする電荷輸送層5は、ノイズ電流の低減効果が著しく高い。
本発明に用いることができる下引き層6としては、シランカップリング剤を加水分解して生成される熱硬化性のケイ素化合物や酸化セリウム、セレン砒素化合物、有機高分子などを用いることができる。
【0023】
本発明に用いることができる上引き層7及び保護層8としては、シランカップリング剤を加水分解して生成される熱硬化性のケイ素化合物などを用いることができる。
本発明のX線光電変換器はX線を電気信号に変換するものであり、X線センサーやX線画像処理装置などに用いることができる。その中でも特に動画処理装置に用いると、本発明のX線光電変換器の特徴である優れた応答性及び高いS/N比により、リアルタイムな動画処理と鮮明な処理画像を得ることができる。
その場合には、例えば、画像処理の為に本発明のX線光電変換器を画素として2次元配置させ、各画素から得られた電気信号を処理する処理回路を設ける。
【0024】
【実施例】
以下に本発明のX線光電変換器を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
ガラス基板1上にITOからなる電荷収集電極2を形成したものを上述した真空加熱蒸着装置11の真空層12内に設置した。予め容器15内にはハロゲン濃度が0.1ppmのセレンを成膜材料として収容されており、該容器15の加熱手段に所定電流を流し、容器15と共にセレンを300分間加熱し、電荷収集電極2表面に膜厚500μmの無定形セレン膜からなるX線光導電層3を形成した。
【0025】
X線光導電層3が形成された状態の基板1を別の真空加熱蒸着装置へ搬入し、容器に収容された金を2分間加熱して、X線光導電層3の表面に膜厚0.1μmの金薄膜からなる上部電極4を形成し、実施例1のX線光電変換器10を作製した。
このX線光電変換器10よりX線光導電層3を取り出し、上述したハロゲン濃度の分析法により、X線光導電層3を構成する無定形セレンのハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は成膜材料と同じ0.1ppmであった。
【0026】
<実施例2>
成膜材料としてハロゲン濃度が1ppmのセレンを用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例2のX線光電変換器10を作製した。実施例1と同じ条件でX線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は1ppmであった。
【0027】
<実施例3>
実施例1で用いたガラス基板1を真空加熱蒸着装置へ搬入し、成膜材料として三硫化二アンチモンを用いて真空加熱蒸着を行い、電荷収集電極2の表面に膜厚3μmの三硫化二アンチモン薄膜からなる電荷輸送層5を成膜した。
【0028】
次いで、実施例1と同じ条件で電荷輸送層5の表面にX線光導電層3を形成し、更に実施例1と同じ条件でX線光導電層3の表面に上部電極4を形成して、実施例3のX線光電変換器10を得た。
実施例1と同じ条件でX線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は0.1ppmであった。
【0029】
<実施例4>
成膜材料としてハロゲン濃度が1ppmのセレンを用いた以外は実施例3と同じ条件で、電荷輸送層5を有する実施例4のX線光電変換器10を作製した。実施例1と同じ条件でX線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は1ppmであった。
【0030】
<比較例1>
成膜材料としてハロゲン濃度が2ppmのセレンを用いた以外は、実施例1と同じ条件で比較例1のX線光電変換器を作製した。実施例1と同じ条件でX線光導電層のハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は2ppmであった。
【0031】
<比較例2>
成膜材料としてハロゲン濃度が2ppmのセレンを用いた以外は、実施例3と同じ条件で電荷輸送層を有する比較例2のX線光電変換器を作製した。実施例1と同じ条件でX線光導電層のハロゲン濃度を測定したところ、そのハロゲン濃度は2ppmであった。
次に、これら実施例1〜4、比較例1、2のX線光電変換器10を用いて、下記に示す「X線応答試験」を行った。
【0032】
〔X線応答試験〕
図6に示すように、X線光電変換器10の上部電極4に電源回路67を接続し、電荷収集電極2に電流検出回路68を接続した。電流検出回路68は電流計69を有しており、電流検出回路68が電荷収集電極2に接続されることで、電荷収集電極2に流れる電流を2msec毎に測定可能になっている。
【0033】
その状態で電源回路67を起動し、X線光導電層3に15V/μmの電界を与え、該電界を維持した状態で、電源回路67の起動から20msec後にX線照射装置61を起動し、X線管電圧80kV、X線管電流30mAの条件で線量1.8R/分のX線65を上部電極4の表面に20msec間照射した後、X線65の照射を終了し、X線65を照射しない状態で更に60msec間電界を維持した。このときのX線照射の開始(ON)と終了(OFF)のタイミングを図8に示す。
【0034】
電流計69で測定される電流値からX線光導電層3の面積を除して単位電流値(単位:A/cm2)を求め、更に単位電流値と、電源回路67を起動してからの経過時間との関係を示す出力電流波形を求めた。
図9〜図12の符号L1〜L4はそれぞれ実施例1〜4について得られた出力電流波形を示しており、図13、図14の符号L5、L6はそれぞれ比較例1、2について得られた出力電流波形を示している。
【0035】
尚、図9〜14の縦軸は単位電流値を示しており、図9〜図14の横軸は電源回路67を起動してからの経過時間(msec)を示している。
図9〜12から明らかなように、実施例1〜4のX線光電変換器10では、単位電流値がX線のON、OFFの変化に遅れることなく変化し、40msecという短時間で単位電流値がゼロからピークへ、ピークからゼロへと切り替わっている。
【0036】
即ち、実施例1〜4のX線光電変換器10から表示装置へ信号電力を出力する場合に、40msec毎に表示画像を切り替えることが可能であり、残像も残らないことになる。
一般に、1秒間のコマ数が24以上、即ち、1コマの表示時間が0.041秒(41msec)以下であれば人間の目に動画として認識されると言われているので、実施例1〜4のようにX線光導電層3のハロゲン濃度が1ppm以下であれば、動画用として実用可能な程応答性が高いことがわかる。
【0037】
他方、図13、14から明らかなように、比較例1、2のX線光電変換器では、単位電流値のピークが現れるのが非常に遅く、ピークにおける単位電流値も低い。
また、比較例1、2では、X線照射終了から20msecを経過したときであっても、単位電流値が下がりきっておらず、応答性が極めて悪いことがわかる。即ち、X線光導電層3のハロゲン濃度が1ppmを超える場合には、40msecという短時間でX線のON、OFFを繰り返した場合に、画像が切り替わらずに残像として残ってしまい、動画表示に用いるには不適なことがわかる。
【0038】
これらのことから、電荷輸送層5の有無にかかわらず、X線光導電層3のハロゲン濃度が1ppm以下であれば、X線光電変換器10の応答性が動画表示が可能な程に高くなることがわかる。
更に、ハロゲン濃度の異なる成膜材料を用い、下記実施例5〜10のX線光電変換器10を作成した。
【0039】
<実施例5、6>
成膜材料としてハロゲン濃度がそれぞれ0.5ppm、0.2ppmのセレンを用いた以外は、実施例1と同じ条件でX線光導電層3を形成し、電荷輸送層5を有しない実施例5、6のX線光電変換器10を得た。実施例1と同じ条件で各X線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度はそれぞれ0.5ppm、0.2ppmであった。
【0040】
<実施例7>
成膜材料として、ハロゲン濃度が0.2ppmであり、かつ、ドーパントである砒素の濃度が0.5重量%のセレンを用いた以外は実施例1と同じ条件でX線光導電層3を形成し、電荷輸送層を有しない実施例7のX線光電変換器10を得た。実施例1と同じ条件でX線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度は0.2ppmであった。
【0041】
<実施例8、9>
成膜材料としてハロゲン濃度がそれぞれ0.5ppm、0.2ppmのセレンを用いた以外は実施例3と同じ条件でX線光導電層3を作製し、電荷輸送層5を有する実施例8、9のX線光電変換器10を得た。実施例1と同じ条件で各X線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度はそれぞれ0.5ppm、0.2ppmであった。
【0042】
<実施例10>
成膜材料として、ハロゲン濃度が0.2ppmであり、かつ、ドーパントである砒素の濃度が0.5重量%のセレンを用いた以外は実施例3と同じ条件でX線光導電層3を形成し、電荷輸送層を有する実施例10のX線光電変換器10を得た。実施例1と同じ条件で各X線光導電層3のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度は0.2ppmであった。
【0043】
これら実施例5〜10のX線光電変換器10と、上記実施例1〜4のX線光電変換器10を用いて下記に示す条件で「電荷量」と、「ノイズ電流」と、「シグナル電流」と、「S/N比」とを求めた。
【0044】
〔電荷量〕
各X線光電変換器10について、上記「X線応答試験」と同じ条件で出力電流波形を求め、20msecから40msecまでの間(X線照射開始から終了までの間)に得られる電荷量を下記数式(1)により求めた。
【0045】
【数1】
【0046】
上記数式(1)中のIはX線光導電層3の単位面積当たりの電流量(A/cm2)であり、tはデータの採取時間を示す。
尚、電荷量の値が大きい程、X線光電変換器10から表示装置へ信号電流を出力した場合に、該表示画像で表示される画像が鮮明になることを示している。
【0047】
〔ノイズ電流〕
X線光電変換器10を図6に示すように回路接続する。10V/μmの電界を与えたまま、その状態で暗所放置し10分後に検出される電流値をノイズ電流(pA/cm2)とする。尚、X線光電変換器10より得られる電気信号をデジタル化処理する為にはノイズ電流が50pA/cm2以下が有利である。
【0048】
〔シグナル電流〕
上記暗電流測定後、X線管電圧80kVで線量としては1.8R/minの一様なX線を照射させ照射1分後にX線光電変換器に流れる電流値をシグナル電流(nA/cm2)とする。尚、X線光電変換器より得られる電気信号をデジタル化処理する為には70nA/cm2以上が有利である。
【0049】
〔S/N比〕
上記シグナル電流とノイズ電流の比を表す値であり、S/N比が高いほどデジタル化処理が容易であり好ましい。
S/N比は、以下の数式によって求められる。
S/N比=シグナル電流×1000/ノイズ電流 (小数点以下は四捨五入)上記、「電荷量」、「ノイズ電流」、「シグナル電流」、「S/N比」の各試験で得られた値のうち、電荷輸送層5を有しない実施例1、2、5〜7について得られた値を下記表1に、電荷輸送層5を有する実施例3、4、8〜10について得られた値を下記表2に記載する。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
<比較例3、4>
成膜材料としてハロゲン濃度が5.0ppm、3.0ppmのセレンを用いた以外は実施例1と同じ条件でX線光導電層を形成し、電荷輸送層を有しない比較例3、4のX線光電変換器を得た。実施例1と同じ条件で各X線光導電層のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度はそれぞれ5.0ppm、3.0ppmであった。
【0053】
<比較例5、6>
成膜材料としてハロゲン濃度が5.0ppm、3.0ppmのセレンを用いた以外は実施例3と同じ条件でX線光導電層を形成し、電荷輸送層を有する比較例5、6のX線光電変換器を得た。実施例1と同じ条件で各X線光導電層のハロゲン濃度を測定したところ、ハロゲン濃度はそれぞれ5.0ppm、3.0ppmであった。
【0054】
これら比較例3〜6のX線光電変換器と、上記比較例1、2のX線光電変換器とを用いて上記実施例1〜5と同じ条件で「電荷量」と、「ノイズ電流」と、「シグナル電流」、「S/N比」とを求めた。電荷輸送層を有しない比較例1、3、4で得られた値を上記表1に、電荷輸送層を有する比較例2、5、6で得られた値を上記表2にそれぞれ記載した。
【0055】
上記表1から明らかなように実施例1〜10のX線光電変換器10では、比較例1〜6に比べて電荷量が大きく、X線光導電層3に添加するドーパントの有無や、電荷輸送層5の有無にかかわらず、X線光導電層3のハロゲン濃度が1ppm以下であれば、表示画像が鮮明になることがわかる。
【0056】
また、表1、表2を比較すれば明らかなように、ハロゲン濃度が同じであっても電荷輸送層5を有する実施例3、4、8、9は、電荷輸送層5を有しない実施例1、2、5、6に比べてノイズ電流が小さく、結果としてS/N比が高くなっている。これらのことから、電荷輸送層5を有する場合には、X線光電変換器10のS/N比が高く、ディジタル処理が容易なことがわかる。
【0057】
【発明の効果】
以上の通り、X線光導電層中のハロゲン濃度が1ppm以下である本発明は、シグナル電流が大きく、立上り及び立下りの時間が短い。特に、電荷収集電極とX線光導電層との間に電荷輸送層を設けると、ノイズ電流が低くなり、結果としてS/N比が高く、X線光電変換器からの信号電流のディジタル化が容易になる。
このように優れたX線光電変換器を動画処理装置に用いると、リアルタイムな動画処理と鮮明な処理画像画を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線光電変換器の第一例を示す断面図
【図2】本発明のX線光電変換器の第二例を示す断面図
【図3】本発明のX線光電変換器の第三例を示す断面図
【図4】本発明のX線光電変換器の第四例を示す断面図
【図5】本発明のX線光電変換器の第五例を示す断面図
【図6】本発明のX線光電変換器の回路接続の一例を示す図
【図7】本発明のX線光電変換器の製造に用いる真空加熱蒸着装置の一例を示す断面図
【図8】X線照射のON、OFFのタイミングを示す図
【図9】実施例1のX線光電変換器の出力波形
【図10】実施例2のX線光電変換器の出力波形
【図11】実施例3のX線光電変換器の出力波形
【図12】実施例4のX線光電変換器の出力波形
【図13】比較例1のX線光電変換器の出力波形
【図14】比較例2のX線光電変換器の出力波形
【符号の説明】
1……基板
2……電荷収集電極
3……X線光導電層
4……上部電極
5……電荷輸送層
10……X線光電変換器
Claims (3)
- 基板と、前記基板上に配置された電荷収集電極と、前記電荷収集電極上に配置されたX線光導電層と、前記X線光導電層上に配置された上部電極とを有し、
前記電荷収集電極と前記上部電極との間に電圧を印加した状態でX線を照射すると、前記X線光導電層内に潜像が形成されるX線光電変換器であって、
前記X線光導電層はセレンを主成分とし、
前記X線光導電層に含まれるハロゲンの濃度が1ppm以下であることを特徴とするX線光電変換器。 - 前記電荷収集電極と前記X線光導電層との間に電荷輸送層が設けられたことを特徴とする請求項1記載のX線光電変換器。
- 前記電荷輸送層は三硫化二アンチモンを主成分とすることを特徴とする請求項2記載のX線光電変換器。
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