JP3912588B2 - 有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、土壌を汚染している有機ハロゲン化合物を、少ない量の酸化剤を用いて効果的に分解除去することができる有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機ハロゲン化合物は、優れた溶解力を有するので、金属の脱脂洗浄剤、ゴム、樹脂、塗料などの溶剤、羊毛の脱脂洗浄剤、ドライクリーニング用溶剤などとして広く使用されてきた。近年、有機ハロゲン化合物の発癌性が指摘され、その使用は控えられる傾向にあるが、工場跡地の土壌などに有機ハロゲン化合物による汚染が相次いで見つかり、負の遺産として大きな社会問題になり、土地の売買などに際して土壌の浄化が求められている。
有機ハロゲン化合物は、比較的揮発しやすく、水に溶解しにくい性質を有する。そこで、この性質を利用して、土壌からブロアなどにより真空吸引したり、あるいは、地下水をいったん揚水して曝気処理し、有機ハロゲン化合物を活性炭などで吸着し、廃棄物として処理する方法が行われている。しかし、活性炭吸着による方法は、単に汚染物質を移行させるのみで、汚染物質を回収、再利用しない限り、根本的な解決にはなっていない。また、有機ハロゲン化合物を吸着した活性炭を焼却処分するとき、十分な温度管理を行わないと、有毒なダイオキシンを発生するおそれがある。このために、有機ハロゲン化合物を焼却以外の方法で分解して無害化する方法が研究され、例えば、有機ハロゲン化合物を含む排ガスに紫外線を照射して、酸性の分解ガスとしたのちアルカリで洗浄して処理する方法などが提案されている。
しかし、これらの方法では、いずれも土壌中の汚染物質をいったん真空吸引法や揚水曝気法などにより、土壌や地下水中から除去してから処理を行うために、真空吸引や揚水曝気に多大な費用がかかる。さらに、これらの方法では浄化後期になると、浄化効率が低下して汚染物質を十分に除去しきれなくなる。したがって、このような方法では、汚染土壌あるいはその付近の地下水には低濃度の有機ハロゲン化合物による汚染が継続する。
有機ハロゲン化合物汚染土壌は、工場の敷地内における稼働中の設備の周辺や、建造物の直下である場合も多く、このような汚染土壌を浄化するためには、汚染土壌を現存する位置で処理し、残留する薬剤による悪影響がないことが必要である。そこで、有機ハロゲン化合物汚染土壌に過酸化水素水、過マンガン酸塩水溶液などの酸化剤を直接注入して、有機ハロゲン化合物を酸化分解する方法が提案されている。このような方法によれば、汚染土壌の原位置での浄化処理が可能である。しかし、酸化剤は、有機ハロゲン化合物だけでなく、土壌中の他の有機物などによっても消費されるので、多量に注入しなければならないという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、土壌を汚染している有機ハロゲン化合物を、少ない量の酸化剤を用いて効果的に分解除去することができる有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化剤と有機ハロゲン化合物との反応速度は酸化剤と他の有機物などとの反応速度より速く、汚染土壌に酸化剤を添加しつつ又は添加後に気体を注入して酸化剤を拡散させることにより、広い範囲で酸化剤と有機ハロゲン化合物を反応せしめ、酸化剤を有効に利用してその使用量を低減することができ、さらに、酸化剤にトレーサーを含有させて、土壌中のトレーサー濃度を測定することにより、酸化剤の拡散状態を的確に把握して、酸化剤の添加を制御し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)地下水を含む土壌に過マンガン酸塩若しくは過硫酸塩を溶解した酸化剤水溶液を添加して、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するに際して、トレーサーを含有する前記酸化剤水溶液を添加しつつ、該酸化剤水溶液を添加した後に土壌に気体を注入して酸化剤水溶液を拡散させ、添加位置と離れた位置の地下水のトレーサー濃度を測定して酸化剤水溶液の拡散状態を判定し、酸化剤水溶液の添加を制御することを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法、
(2)トレーサーとして臭化物を用いる第1項記載の有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法、及び、
(3)モニタリング井戸の地下水の酸化還元電位、酸化剤濃度又は有機ハロゲン化合物濃度を測定して酸化剤水溶液の添加量を制御する第2項記載の有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明方法の第一の態様においては、地下水を含む土壌に酸化剤を添加して、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するに際して、酸化剤を添加しつつ又は添加後に土壌に気体を注入して酸化剤を拡散させる。
本発明方法による浄化の対象となる有機ハロゲン化合物に特に制限はなく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。
本発明方法に用いる酸化剤に特に制限はなく、例えば、過マンガン酸塩、過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過酸化水素、オゾンなどを挙げることができる。これらの中で、過マンガン酸塩は土壌・地下水中で比較的安定であり、有機ハロゲン化合物を効率よく分解することができるので、好適に用いることができる。本発明の酸化剤の添加は、水溶液として添加することができる。水溶液は取り扱いが簡単であり、ポンプと注入井戸を用いて土壌に注入することができるので好適に用いることができる。酸化剤水溶液の濃度に特に制限はないが、0.1〜10重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることがより好ましい。酸化剤水溶液の濃度が0.1重量%未満であると、注入すべき酸化剤水溶液の量が過大になるおそれがある。酸化剤水溶液の濃度が10重量%を超えると、土壌中での均等な拡散が妨げられるおそれがある。酸化剤を固体又は気体の形態で土壌に添加すると、酸化剤は土壌に含まれる地下水に溶解し、水溶液となって土壌中を拡散する。
【0006】
本発明方法においては、汚染された土壌に酸化剤を添加しつつ又は添加後に、土壌に気体を注入して酸化剤を拡散させる。土壌に添加された酸化剤は、土壌を汚染している有機ハロゲン化合物と速やかに反応し、有機ハロゲン化合物を分解する。しかし、酸化剤は、土壌に含まれる他の有機物などとも徐々に反応して分解されるので、酸化剤が土壌中で同じ位置に滞留すると、有機ハロゲン化合物を分解し終えた場所に酸化剤が存在し、他の有機物などとの反応により酸化剤が無駄に失われる。土壌に気体を注入して酸化剤を拡散させることにより、酸化剤をより多くの有機ハロゲン化合物と接触させ、効率的に有機ハロゲン化合物を分解し、少ない量の酸化剤を用いて広い範囲の土壌を浄化することが可能となる。なお、有機ハロゲン化合物や他の有機物との反応により、酸化剤として過マンガン酸塩を用いた場合は、水に不溶の二酸化マンガンとなり、土壌中に固定される。本発明方法に用いる気体に特に制限はなく、例えば、空気、窒素ガス、オゾン含有ガス、ヘリウム含有ガス、アルゴン含有ガスなどを挙げることができる。これらの中で、空気は、気体の注入にポンプ以外の設備を必要とせず、経済的に気体を注入することができるので、好適に用いることができる。気体としてオゾン含有ガスを用いると、オゾンを酸化剤として利用することができる。気体としてヘリウム含有ガス、アルゴン含有ガスを用いると、ヘリウム、アルゴンなどをトレーサーとして利用し、土壌中の気体を分析することにより、注入した気体の拡散状態を把握することができる。
【0007】
本発明方法の第二の態様においては、地下水を含む土壌に酸化剤を添加して、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するに際して、トレーサーを含有する酸化剤を添加し、添加位置と離れた位置の地下水のトレーサー濃度を測定して酸化剤の拡散状態を判定し、酸化剤の添加を制御する。本発明方法においては、さらに、地下水の酸化還元電位、酸化剤濃度又は有機ハロゲン化合物濃度を測定して、酸化剤の添加を制御することができる。
土壌に酸化剤を添加して有機ハロゲン化合物を分解し、土壌を浄化する際に、浄化が不十分である領域が存在する。すなわち、土壌からの有機ハロゲン化合物の溶出量又は含有量や、地下水中の有機ハロゲン化合物濃度が、浄化開始前と比較してあまり低下していない領域が存在する。このように浄化が不十分な領域が存在する原因として、酸化剤の添加量が不十分であることと、添加した酸化剤が対象とする有機ハロゲン化合物で汚染された土壌に接触していないことの二つが考えられる。浄化が不十分である原因が、このどちらであるかを把握することにより、汚染された土壌を効率よく浄化することが可能となる。
本発明方法に用いるトレーサーに特に制限はなく、浄化の対象とする土壌中に含まれない又は微量しか存在せず、酸化剤によって分解されない水溶性化合物を適宜選択して用いることができる。このようなトレーサーとしては、例えば、塩化物、臭化物などを挙げることができ、臭化ナトリウム、臭化カリウムなどの臭化物を特に好適に用いることができる。酸化剤を水溶液として添加する場合、トレーサーの濃度に特に制限はないが、0.05〜5重量%であることが好ましく、0.5〜2重量%であることがより好ましい。トレーサーの濃度が0.05重量%未満であると、トレーサーの検出が困難になるおそれがある。トレーサーの濃度は5重量%で十分に検出に役立てることができるので、通常は5重量%を超えるトレーサーを添加する必要はない。
【0008】
本発明方法において、トレーサー濃度、酸化還元電位、酸化剤濃度又は有機ハロゲン化合物濃度を測定する地下水のサンプリング方法に特に制限はなく、例えば、浄化の対象とする土壌の範囲内で、酸化剤の添加位置から離れた位置にモニタリング井戸を設けて、地下水をサンプリングすることができる。臭化カリウムなどのトレーサーは、一部が土壌に吸着される場合もあるが、注入した酸化剤水溶液と同じ速度で地下水中に拡散する。一方、酸化剤は、有機ハロゲン化合物ばかりでなく、土壌や地下水中の他の成分と接触することによっても分解消費されるので、トレーサーよりも地下水下流地点又は注入点の周辺への到達が遅れる。したがって、土壌にトレーサーを含有する酸化剤水溶液を添加し、離れた位置で地下水を経時的にサンプリングし、分析すると、はじめにトレーサーが検出され、次いで酸化還元電位が上昇し、最後に酸化剤が検出される。トレーサーの検出は、酸化剤が検出されない状態であっても、添加した酸化剤水溶液がその位置まで到達したことを示している。
酸化剤が検出されない状態での酸化還元電位の上昇は、酸化剤が消費されてなくなったことを示している。このとき、有機ハロゲン化合物が環境基準値未満である場合と、環境基準値を超過している場合がある。環境基準値未満である場合は、土壌が浄化されていることを示している。一方、環境基準値を超過している場合は、酸化剤の添加量が不足していることを示している。
【0009】
酸化剤の検出は、酸化剤水溶液の流路には酸化剤が十分に行きわたっていることを示している。このときも、有機ハロゲン化合物が環境基準値未満である場合と、環境基準値を超過している場合がある。環境基準値未満である場合、土壌が浄化されていることを示している。環境基準値を超過している場合は、酸化剤水溶液の流路とは別に、有機ハロゲン化合物が溶出している地下水流路が存在することを示している。
このように、酸化剤とトレーサーを同時に添加し、トレーサー濃度、酸化還元電位、酸化剤濃度又は有機ハロゲン化合物濃度の経時的変化を測定し、解析することにより、対象とする土壌の浄化の状況を把握することができる。
本発明方法によれば、土壌の浄化が不十分である原因を把握し、次のような対策を講じて、土壌を効率的に浄化することができる。すなわち、酸化剤の添加量が不足している場合は、酸化剤を追加して添加する。特定の場所に酸化剤が到達していない場合は、別な地点に添加井戸を設置し、酸化剤を添加する。また、酸化剤を追加して添加し、又は、すでに添加した酸化剤を、気体を注入して拡散させる。あるいは、気体の代わりに清浄な水を注入して、酸化剤を拡散させることもできる。
本発明方法によれば、土壌中における酸化剤の拡散を促進し、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水を浄化するために必要な酸化剤の量を節減することができる。また、浄化が不十分な領域がある場合は、その原因を把握し、その後の対策をより確かなものとし、効率的な浄化を可能とすることができる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
トリクロロエチレンで汚染された土壌10gを採り、水100mLに懸濁させた。水中のトリクロロエチレン濃度は、1.1mg/Lであった。この懸濁液に、過マンガン酸カリウム水溶液を過マンガン酸カリウムの濃度が100mg/Lとなるように添加して撹拌し、所定時間経過後のトリクロロエチレン濃度を、ヘッドスペース法でガスクロマトグラフィーにより分析した。また、所定時間経過後の懸濁液を少量採取し、孔径0.45μmのろ紙でろ過した液の波長526nmにおける吸光度を測定し、残留する過マンガン酸カリウムの濃度を求めた。
トリクロロエチレン濃度は1時間後に0.13mg/Lになり、3時間後には検出限界の0.003mg/L以下になった。一方、過マンガン酸カリウム濃度は、3時間後92mg/Lであり、150時間後33mg/Lであった。
トリクロロエチレン濃度と過マンガン酸カリウム濃度の経時的変化を、第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
第1表に見られるように、トリクロロエチレンを含む土壌を懸濁させた液に過マンガン酸カリウムを添加すると、トリクロロエチレンは速やかに分解されるが、過剰の過マンガン酸カリウムの濃度は徐々に低下し、液中には過マンガン酸カリウムと遅い速度で反応する物質が存在すると推定される。したがって、汚染土壌に過マンガン酸カリウムを添加し、トリクロロエチレンを分解除去したのち、まだ余剰の過マンガン酸カリウムが残存している状態で過マンガン酸カリウムを拡散させることにより、より広範囲のトリクロロエチレンを分解することが可能になると考えられる。
比較例1
トリクロロエチレンで汚染された土壌の浄化を行った。この土壌は、地下水位−4.2m、地下水流速0.1m/日、第一帯水層は−4.2mから−10.4mまででその土質はシルト混じりの砂礫であり、粘土層は−10.4mから−12.7mまでであり、地下水のトリクロロエチレン濃度は平均0.5mg/Lであった。長さ10.0m、外径100mm、肉厚5mmの継目無管の下方5.0m部分に多数のスリットをあけてスクリーンを作製し、この管を土壌に打ち込んで注入井戸を設置した。この注入井戸に、4重量%過マンガン酸カリウム水溶液10m3、すなわち過マンガン酸カリウム400kgを、8時間で注入した。
過マンガン酸カリウム水溶液を注入して1か月後に、注入井戸周辺の地下水を調査した結果、地下水のトリクロロエチレン濃度が環境基準値である0.03mg/L以下を満足する領域は、地下水の流れ方向に上下平均約10m、左右平均約5mの範囲であった。
実施例2
比較例1を実施した注入井戸の近くで、土壌の浄化を行った。地下水の状態と土質は比較例1と同じであり、地下水のトリクロロエチレン濃度も平均0.5mg/Lで比較例1と同じであった。
比較例1と同様にして注入井戸を設置し、4重量%過マンガン酸カリウム水溶液10m3、すなわち過マンガン酸カリウム400kgを、6時間で注入し、次いで、空気100m3(Normal)を、8時間で注入した。
過マンガン酸カリウム水溶液と空気を注入して1か月後に、注入井戸周辺の地下水を調査した結果、地下水のトリクロロエチレン濃度がが環境基準値である0.03mg/L以下を満足する領域は、地下水の流れ方向に上下平均約20m、左右平均約12mの範囲であり、空気注入により同量の過マンガン酸カリウムの注入でより広範囲の土壌が浄化されることが確認された。
【0013】
実施例3
トリクロロエチレンで汚染された土壌の浄化を行った。この土壌は、地下水位−5.2m、地下水流速0.2m/日、第一帯水層は−5.2mから−12.6mまででその土質はシルト混じりの砂礫であり、粘土層は−12.6mから−17.3mまでであった。地下水のトリクロロエチレン濃度は平均1.3mg/Lであり、酸化還元電位は250mVであった。
長さ12.0m、外径100mm、肉厚5mmの継目無管の下方5.0m部分に多数のスリットをあけてスクリーンを作製し、この管を土壌に打ち込んで注入井戸を設置した。また、この注入井戸から、地下水流方向に7m離れた地点に、土壌環境分析車[栗田工業(株)]の車載型簡易ボーリング装置を深さ13.0mまで打ち込んでモニタリング井戸Aとし、モニタリング井戸Aから地下水流方向と直角方向に3m離れた地点に同じボーリング装置を深さ13.0mまで打ち込んでモニタリング井戸Bとした。モニタリング井戸からサンプリングした地下水中の臭化物イオン濃度はイオンクロマトグラフィーにより測定し、酸化還元電位は銀−塩化銀参照電極を用いて測定し、過マンガン酸カリウム濃度は吸光光度法により波長526nmで測定し、トリクロロエチレン濃度はヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定した。
過マンガン酸カリウム2.0重量%と臭化カリウム1.0重量%を溶解した水溶液を、注入井戸に500L/日で5日間、すなわち過マンガン酸カリウムとして50kgを注入した。
10日後、モニタリング井戸Aにおいて、臭化物イオン1mg/L未満、酸化還元電位260mV、過マンガン酸カリウム0.3mg/L未満、トリクロロエチレン1.2mg/Lであり、モニタリング井戸Bにおいて、臭化物イオン1mg/L未満、酸化還元電位260mV、過マンガン酸カリウム0.3mg/L未満、トリクロロエチレン1.3mg/Lであった。50日後、モニタリング井戸Aにおいて、臭化物イオン60mg/L、酸化還元電位650mV、過マンガン酸カリウム150mg/L、トリクロロエチレン0.01mg/L未満であり、モニタリング井戸Bにおいて、臭化物イオン70mg/L、酸化還元電位680mV、過マンガン酸カリウム70mg/L、トリクロロエチレン0.01mg/L未満であった。100日後、モニタリング井戸Aにおいて、臭化物イオン1mg/L未満、酸化還元電位280mV、過マンガン酸カリウム0.3mg/L未満、トリクロロエチレン0.01mg/L未満であり、モニタリング井戸Bにおいて、臭化物イオン1mg/L未満、酸化還元電位400mV、過マンガン酸カリウム0.3mg/L未満、トリクロロエチレン1.2mg/Lであった。
過マンガン酸カリウム水溶液注入開始後の経過日数と、モニタリング井戸A及びBにおける測定結果を、第2表に示す。
【0014】
【表2】
【0015】
モニタリング井戸Aでは、トレーサーである臭化物イオンがまず検出され、次いで酸化還元電位が上昇し、トリクロロエチレン濃度が減少し、最後に過マンガン酸カリウムが検出されている。過マンガン酸カリウムが検出されなくなり、酸化還元電位が注入前の値にほぼ戻った時点でも、トリクロロエチレン濃度は検出下限値未満である。
モニタリング井戸Bでは、トレーサーである臭化物イオンの検出と、酸化還元電位の上昇と、過マンガン酸カリウムの検出がほぼ同時に起こっている。トリクロロエチレン濃度は、過マンガン酸カリウムが検出される間は低濃度を示しているが、酸化還元電位が注入前の値にほぼ戻った時点で、注入前とほぼ同等の値を示している。
モニタリング井戸Aでは注入した過マンガン酸カリウム水溶液がほぼ均等に浄化対象領域に拡散し、効率的かつ確実な浄化ができている。モニタリング井戸Bの結果は、注入した過マンガン酸カリウム水溶液が均等に拡散せず、通りやすい部分を流れ、対象領域内のトリクロロエチレンを完全に分解できなかったことを示している。
モニタリング井戸AとBで検出された臭化物イオン濃度はほぼ同じである。したがって、添加液はどちらのエリアでも同じ精度に希釈・拡散していると判断される。しかし、井戸Bで過マンガン酸カリウムが消失した後、トリクロロエチレンが増加・検出されるのは、このエリアの土壌中有機物による過マンガン酸カリウムの消費量が多く、過マンガン酸カリウムの添加量が不足していると考えられた。そこで、井戸Bエリアを主対象として次のように浄化を行った。
すなわち、注入井戸とモニタリング井戸Bを結ぶ直線上に、注入井戸より地下水流下流方向15m離れた地点に揚水井戸を設置し、5m3/日で揚水しながら過マンガン酸カリウムと臭化カリウムの混合溶液を500L/日で2日間注入した。過マンガン酸カリウムとして10kg/日を添加した。その結果、注入を開始した5日後にモニタリング井戸Bで臭化物イオンと過マンガン酸カリウムが検出され、トリクロロエチレンも5日後に0.003mg/L未満となり、検出されなくなった。トリクロロエチレンは、モニタリング井戸Bで5日以降100日後まで0.003mg/L未満であった。モニタリング井戸Bエリアも浄化することができた。揚水井戸を設置することにより地下水流向を変えることができ、その結果少量の過マンガン酸カリウムで浄化できたと考えられる。
【0016】
【発明の効果】
本発明方法によれば、土壌中における酸化剤の拡散を促進し、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水を浄化するために必要な酸化剤の量を節減することができる。また、浄化が不十分な領域がある場合は、その原因を把握し、その後の対策をより確かなものとし、効率的な浄化を可能とすることができる。
Claims (3)
- 地下水を含む土壌に過マンガン酸塩若しくは過硫酸塩を溶解した酸化剤水溶液を添加して、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するに際して、トレーサーを含有する前記酸化剤水溶液を添加しつつ、該酸化剤水溶液を添加した後に土壌に気体を注入して酸化剤水溶液を拡散させ、添加位置と離れた位置の地下水のトレーサー濃度を測定して酸化剤水溶液の拡散状態を判定し、酸化剤水溶液の添加を制御することを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法。
- トレーサーとして臭化物を用いる請求項1記載の有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法。
- モニタリング井戸の地下水の酸化還元電位、酸化剤濃度又は有機ハロゲン化合物濃度を測定して酸化剤水溶液の添加量を制御する請求項2記載の有機ハロゲン化合物汚染土壌の浄化方法。
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