JP3912243B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気中あるいは燃焼機器や内燃機関の排ガス中に含まれる可燃性ガス、特に人体に有害な物質である一酸化炭素を検出するガスセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のガスセンサとしては、例えば、特開平10−31003号公報に記載されているようなものがあった。図3(a)および(b)は、それぞれ前記公報に記載された従来のガスセンサの上面図および断面図を示すものである。図3(a)および(b)において、1は酸素イオン導電性を有する平板状のイットリア安定化ジルコニアなどから成る固体電解質、2aおよび2bはそれぞれ互いに面積の等しい白金などから成る第一および第二電極、3は多孔質な酸化触媒、4は電気的絶縁性を有するアルミナなどから成る絶縁基板、5はその表面に形成されたヒーターである。
【0003】
上記構成のガスセンサからのセンサ出力を取り出すために、第一および第二電極2aおよび2b間にリード線を介し、電位差検出手段を接続し、被検出ガスの濃度に応じて変化する第一および第二電極2aおよび2b間に生じる電位差を検出していた。
【0004】
次に、ガスセンサの原理を簡単に説明する。
【0005】
まず、従来の構成のガスセンサを一酸化炭素などの可燃性ガスを含まない被検出ガス中に保持し、ヒーター5により固体電解質1を所定の動作温度まで加熱したとき、第一および第二電極2aおよび2bに到達する酸素の量はそれぞれ等しいので、第一および第二電極2a−2b間に電位差は発生しない。このとき第一および第二電極2aおよび2b上ではそれぞれ式(1)で示した電極反応が生じ、平衡を保っている。
【0006】
Oad+2e−←→O2− (1)
ここでOadは第一および第二電極2aおよび2bの表面に吸着した酸素原子を示す。
【0007】
次に、被検出ガス中に可燃性ガスである一酸化炭素を導入すると、多孔質な酸化触媒3の形成されていない第二電極2b上では式(1)で示した電極反応に加え、式(2)で示した電極反応が生じる。
【0008】
CO+Oad→CO2 (2)
一方、多孔質な酸化触媒3の形成された第一電極2a上では、多孔性触媒3で一酸化炭素が二酸化炭素に酸化され、一酸化炭素が第一電極2aの表面まで到達することができず、式(1)で示した電極反応のみが生じる。
【0009】
したがって第一および第二電極2aおよび2bの間で吸着する酸素量のバランスが崩れ、酸素濃度に濃淡差が生じ、吸着酸素が酸素イオンとなり酸素イオン導電体である固体電解質1中を酸素濃度の高い第一電極2aから酸素濃度の低い第二電極2bへ移動し、第一および第二電極2a−2b間に電位差が発生する。この電位差と一酸化炭素の濃度の関係はネルンストの式に従い、濃度が増加すれば電位差も増加するので、電位差検出手段でこの電位差を検出することにより、一酸化炭素などの可燃性ガスの濃度を求めていた。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−31003号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成では、ガスセンサが被検出ガスの濃度を正確に検出しているかどうか診断することができないため、ガスセンサが徐々に劣化するなどして、第一および第二電極2aおよび2b間の電位差が徐々に変化した場合、やがて被検出ガスの濃度を正確に検出することができなくなり、一酸化炭素などの有害な被検出ガスの濃度が閾値より低いにもかかわらず、危険であるなどの誤報を発したり、あるいは逆に被検出ガスの濃度が閾値以上に存在するにもかかわらず、検出しなかったり、あるいはガスセンサとしての寿命が短くなるなどの深刻な課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、長期間安定して被検出ガスの濃度を正確に検出することができ、劣化する時期を自己診断することのできる信頼性の高いガスセンサを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガスセンサは、固体電解質の上に形成した第一および第二電極と、参照電極と、第一電極と参照電極間の第一電位差を検出する第一電位差検出手段と、第二電極と参照電極間の第二電位差を検出する第二電位差検出手段と、第一および第二電位差から被検出ガスの濃度を算出する演算手段とを備えたものであり、ガスセンサが徐々に劣化し、第一および第二電極間の電位差が徐々に変化しても、第一および第二電極間の電位差より変化の小さい第一および第二電位差の比を用いるので、長期間安定して被検出ガスの濃度を正確に検出することができ、第一および第二電位差の比および差を比較することにより、ガスセンサの劣化する時期を自己診断することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明は、表面が電気的絶縁性を有する絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に形成したヒーターと、前記ヒーターの上に形成した前記ヒーターを電気的に絶縁する絶縁膜と、前記絶縁膜の上に形成した酸素イオン導電性を有する固体電解質と、前記固体電解質の上に形成した第一および第二電極と、参照電極と、前記第一電極の上に形成した多孔質な酸化触媒と、前記第一電極と前記参照電極間の第一電位差および前記第二電極と前記参照電極間の第二電位差をスイッチで切り替えて検出する電位差検出手段と、前記第一および第二電位差から被検出ガスの濃度を算出する演算手段とを備え、前記演算手段は、第一および第二電位差の比より被検出ガスの濃度を算出し、さらに前記第一および第二電位差の比および差からガスセンサの状態を診断する第一自己診断手段を備えることにより、ガスセンサが徐々に劣化し、第一および第二電極間の電位差が徐々に変化しても、第一および第二電極間の電位差より変化の小さい第一および第二電位差の比を用いるので、長期間安定して被検出ガスの濃度を正確に検出することができ、第一および第二電位差の比および差を比較することにより、ガスセンサの劣化する時期を自己診断することができる。
【0016】
また、第一および第二電位差を検出する検出手段を一つの電位差検出手段で兼用することにより、コストを下げることができるばかりでなく、ガスセンサの小型を図ることができ、さらに消費電力を下げることが可能となる。
【0017】
また、本願発明は、第一電極と参照電極間の第一交流インピーダンスおよび第二電極と前記参照電極間の第二交流インピーダンスをスイッチで切り替えて測定する交流インピーダンス測定手段と、前記第一および第二交流インピーダンスから固体電解質、前記第一および第二電極および酸化触媒の状態を診断する第二自己診断手段を備えることにより、第一交流インピーダンスから固体電解質と、第一電極および酸化触媒の状態を診断し、第二交流インピーダンスから固体電解質と、第二電極の状態を診断するので、第二自己診断手段によれば、ガスセンサの特定した個所の異常を知ることができ、より信頼性に優れたガスセンサを得ることができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施例におけるガスセンサの上面図および断面図を示すものである。
【0022】
図1において、4は結晶化ガラスから成る絶縁基板であり、この絶縁基板4の上に白金から成るヒーター5をメタルマスクを用いてスパッタリングにより形成した。そして、このヒーター5の上に電気的に絶縁性を有するアルミナから成る絶縁膜6を同様にして形成し、さらに、この絶縁膜6の上に約300℃以上で酸素イオン導電性を示し始めるイットリア安定化ジルコニアから成る固体電解質1を同様にして形成した。
【0023】
本実施例で用いた絶縁基板4の結晶化ガラスの熱伝導率は2〜3W/m・Kであり、ヒーター5の放熱を抑制するので、固体電解質1を効率よく加熱することができ、消費電力を抑えることができる。
【0024】
また、ヒーター5を電気的に絶縁する絶縁膜6は、熱伝導のよいアルミナ(〜20W/m・K)を材質として用いて形成しているので、ヒーター5の熱を効率よく固体電解質1へ伝えることができ、消費電力をさらに下げることができる。
【0025】
また、熱膨張係数が〜100×10-7/Kの結晶化ガラスから成る絶縁基板4の上には、白金(90×10-7/K)から成るヒーター5、アルミナ(70×10-7/K)などから成る絶縁膜6およびイットリア安定化ジルコニア(100×10-7/K)から成る固体電解質1などが形成されており、互いの熱膨張係数が近いので、絶縁膜6や固体電解質1などの形成した膜が、剥離したり、クラックを生じたりすることがない。
【0026】
次に、固体電解質1の上に白金から成る互いに面積の等しい第一および第二電極2aおよび2bと、第一および第二電極2aおよび2bの中間の位置に配置され、その面積が第一あるいは第二電極2aあるいは2bの5分の1である参照電極7をスパッタリングにより形成した。
【0027】
第一電極2aと参照電極7間の距離および第二電極2bと前記参照電極7間の距離をそれぞれ互いに等しく、また第一および第二電極2aおよび2bの面積をそれぞれ互いに等しくすることにより、第一電極2aと参照電極7間および第二電極2bと参照電極7間にある固体電解質のバルク抵抗や粒界抵抗などの条件がそれぞれ互いに等しくなり、ガスセンサを一酸化炭素などの可燃性ガスを含まない被検出ガス中に保持したとき、第一および第二電極2aおよび2b上に吸着する酸素量は等しくなり、第一および第二電極2aおよび2b間の電位差はゼロとなるので、ゼロ点補正などの処理が不要となる。
【0028】
また、参照電極7の面積を第一あるいは第二電極2aあるいは2bの面積より小さくすることにより、参照電極7上で起こる電極反応が第一および第二電極2aおよび2b上で起こる電極反応に与える影響は小さいので、参照電極7の面積を第一あるいは第二電極2aあるいは2bの5分の1以下にすれば、その影響はほとんど無視することができ、第一および第二電極2aおよび2b上で起こる電極反応に起因する電位差のみ検出することができ、より正確な被検出ガスの濃度を検出することができる。
【0029】
次に、第一電極2aの上に可燃性ガスを酸化する白金を触媒成分とする多孔質な酸化触媒3をスクリーン印刷により形成し、大気中で焼成した。
【0030】
このようにして得られたガスセンサからのセンサ出力を取り出すために、第一および第二電極2aおよび2bと、参照電極7に溶接によりリード線をそれぞれ接合し、第一および第二電位差検出手段を接続した。ここで、第一および第二電位差検出手段には共通の一つの電位差検出手段を用い、スイッチにより配線を切り替え、第一および第二電位差を検出できるようにした。このように、第一および第二電位差検出手段を一つの電位差検出手段で兼用することにより、コストを下げることができるばかりでなく、ガスセンサの小型を図ることができ、さらに消費電力を下げることが可能となる。
【0031】
さらに、第一電位差(V1r)と第二電位差(V2r)の比(V2r/V1r)から被検出ガスの濃度を算出する演算手段をガスセンサに組み込んだ。
【0032】
上記のようにして得られたガスセンサの一酸化炭素に対する濃度特性を調べた。測定結果を図2に示す。ヒーター5に電圧を印加して固体電解質1が約450℃になるように加熱したとき、一酸化炭素などの可燃性ガスを含まない被検出ガス中における第一電位差(V1r)および第二電位差(V2r)はおよそ10mVであった。
【0033】
次に、被検出ガス中に可燃性ガスである一酸化炭素を導入すると、第一および第二電位差(V1rおよびV2r)は徐々に増加し、450ppmでそれぞれ60mVおよび40mVであった。また、このときの第一電位差(V1r)と第二電位差(V2r)の比(V2r/V1r)は約0.68であり、図2に示すようにいずれも100ppm〜1,000ppmにおいてほぼ直線性を示していた。
【0034】
また、本実施例の構成のガスセンサが、経時的に劣化した場合、第一および第二電位差(V1rおよびV2r)はいずれも徐々に減少し、やがて被検出ガスの濃度を正確に検出することができなくなり、一酸化炭素などの有害な被検出ガスの濃度が閾値以上に存在するにもかかわらず、検出しない可能性があるが、第一電位差(V1r)と第二電位差(V2r)の比(V2r/V1r)の変化は、第一および第二電位差(V1rおよびV2r)の変化に比べて小さいので、長期間安定して被検出ガスの濃度を正確に検出することができる。
【0035】
また、第一および第二電位差(V1rおよびV2r)の差(V1r―V2r)は、従来の第一および第二電極2a―2b間の電位差にほぼ等しく、この第一および第二電位差の差(V1r―V2r)および比(V2r/V1r)を比較することにより、ガスセンサの劣化する時期を自己診断することができる。
【0036】
次に、第一電極2aと参照電極7間の第一交流インピーダンスを測定する第一交流インピーダンス測定手段と、第二電極2bと参照電極7間の第二交流インピーダンスを測定する第二交流インピーダンス測定手段と、第一および第二交流インピーダンスから固体電解質1、第一および第二電極2aおよび2b、および酸化触媒3の状態を診断する第二自己診断手段を本実施例のガスセンサに組み込んだ。
【0037】
各交流インピーダンスを測定することにより、第一交流インピーダンスから固体電解質1と、第一電極2aおよび酸化触媒3の状態を診断し、第二交流インピーダンスから固体電解質1と、第二電極2bの状態を診断するので、第二自己診断手段によれば、ガスセンサの特定した個所の異常を知ることができ、より信頼性に優れたガスセンサを得ることができる。
【0038】
ここで、第一および第二三交流インピーダンス測定手段を一つの交流インピーダンス測定手段で兼用することにより、コストを下げることができるばかりでなく、ガスセンサの小型を図ることができ、さらに消費電力を下げることが可能となる。
【0039】
ガスセンサの固体電解質1がヒーター5により加熱され、動作状態にあるとき、周波数を変化させながら各交流インピーダンスを測定し、実数部分を横軸に虚数部分を縦軸にプロットすると、コールコールプロットと呼ばれる曲線が得られる。コールコールプロットは三つの円弧の合成曲線であり、高周波側の円弧から順に固体電解質のバルク抵抗、同粒界抵抗、そして、最も低周波側に電極上で起こる電極反応に起因する抵抗が現れる。このうち、固体電解質のバルク抵抗および粒界抵抗は測定周波数の範囲が10Hz〜100kHzで観測され、この範囲で少なくとも一点以上の周波数で交流インピーダンスを測定し、その実数部分から求まる抵抗成分の変化から、固体電解質1の状態、さらに固体電解質/電極/ガスの三相界面の長さの変化を知ることができる。
【0040】
そして、限定された周波数範囲で固体電解質のバルク抵抗および粒界抵抗を測定するので、交流インピーダンス測定手段の構成が簡単となり、コストを抑えることができ、正確な交流インピーダンスからガスセンサの状態を診断することのできる信頼性の高いガスセンサを得ることができる。
【0041】
また、第一、第二および第三交流インピーダンス測定手段の印加交流電圧は1mV〜100mVであり、印加交流電圧が十分に小さいので、第一および第二電極2aおよび2b上で起こる電極反応が影響を受けたり、固体電解質1が分極されたりしない。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、ガスセンサが徐々に劣化し、第一および第二電極間の電位差が徐々に変化しても、第一および第二電極間の電位差より変化の小さい第一および第二電位差の比を用いるので、長期間安定して被検出ガスの濃度を正確に検出することができ、第一および第二電位差の比および差を比較することにより、ガスセンサの劣化する時期を自己診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施例におけるガスセンサの上面図
(b)同ガスセンサの断面図
【図2】同ガスセンサの一酸化炭素濃度特性図
【図3】(a)従来のガスセンサの上面図
(b)同ガスセンサの断面図
【符号の説明】
1 固体電解質
2a 第一電極
2b 第二電極
3 酸化触媒
4 絶縁基板
5 ヒーター
6 絶縁膜
7 参照電極
Claims (2)
- 表面が電気的絶縁性を有する絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に形成したヒーターと、前記ヒーターの上に形成した前記ヒーターを電気的に絶縁する絶縁膜と、前記絶縁膜の上に形成した酸素イオン導電性を有する固体電解質と、前記固体電解質の上に形成した第一および第二電極と、参照電極と、前記第一電極の上に形成した多孔質な酸化触媒と、前記第一電極と前記参照電極間の第一電位差および前記第二電極と前記参照電極間の第二電位差をスイッチで切り替えて検出する電位差検出手段と、前記第一および第二電位差から被検出ガスの濃度を算出する演算手段とを備えてなるガスセンサ。
- 第一電極と参照電極間の第一交流インピーダンスおよび第二電極と前記参照電極間の第二交流インピーダンスをスイッチで切り替えて測定する交流インピーダンス測定手段を備えてなる請求項1に記載のガスセンサ。
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