JP3912102B2 - 水晶フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信機器等に用いられ、厚み系振動を利用した水晶フィルタ(MCF:モノリシック クリスタル フィルタ)に係る。特に、本発明は、非調和(インハーモニック)オーバートーンモード等の不要振動であるスプリアス振動の影響を抑制し、保証減衰量特性を良好に得るための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧電フィルタの一種として、例えば特開平10−98351号公報に開示されているMCFが知られている。以下、従来のMCFについて説明する。この種のMCFは、水晶基板と、この水晶基板の一主面に形成された入力電極及び出力電極と、水晶基板の他主面に形成され且つ上記入出力の各電極に対向するアース電極とを備えている。
【0003】
図12は従来のMCFに備えられる水晶振動片の一例を示している。図12(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板101の下面(上記一主面)に形成された入力電極102及び出力電極103の配置状態を透過して示す(アース電極を省略している)図である。図12(b)は水晶振動片の平面視において水晶基板101の上面(上記他主面)に形成されたアース電極104の配置状態を示す図である。入力電極102及び出力電極103には水晶基板101の外縁に向かって延びる引出電極102a,103aが接続されている。同様に、アース電極104には水晶基板101の外縁に向かって延びる引出電極104a,104bが接続されている。尚、図示していないが、この水晶基板101がパッケージ内に収容され且つ各引出電極102a〜104bが入出力端子やアース端子に接続された状態でパッケージが気密封止されてMCFが構成されている。
【0004】
また、図13は従来の水晶振動片の他の一例を示している。上記図12の場合と同様に、図13(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板101の下面に形成された入力電極102及び出力電極103の配置状態を透過して示しており、図13(b)は水晶振動片の平面視において水晶基板101の上面に形成されたアース電極104の配置状態を示している。この図13に示すものは、アース電極104が、入力電極102に対向するように配置された第1アース電極104A及び出力電極103に対向するように配置された第2アース電極104Bにより構成されている。また、各電極102,103,104A,104Bには、水晶基板101の外縁に向かって延びる引出電極102a,103a,104a,104bがそれぞれ接続されている。
【0005】
上記水晶基板101としてはATカット水晶板が採用されている。また、上記各電極102,103,104(104A,104B)は、真空蒸着法等による薄膜形成手段によって形成されている。
【0006】
これらのMCFは、入力電極102及びアース電極104(または第1アース電極104A)からなる第1電極対と、出力電極103及びアース電極104(または第2アース電極104B)からなる第2電極対との間で音響結合が生じることを利用している。この音響結合を利用して、周波数の異なる複数の通信信号の中から所定の周波数の通信信号のみを取り出すようになっている。
【0007】
ところで、この種のMCFでは、フィルタ機能を発揮させるための主振動(公称周波数振動)以外に、高次の非調和オーバートーンモード、例えば第1スプリアスと呼ばれる(1,1,3)モードのスプリアス振動もこの電極部分に閉じ込められて、同時に励振される。この(1,1,3)の各記号は、それぞれ水晶基板101のY′軸(厚み)方向のオーバートーンの次数、X軸方向のオーバートーンの次数、Z′軸方向のオーバートーンの次数である。図14は、この第1スプリアス振動が主振動の近傍に存在する場合のMCFの周波数特性を示している。このスプリアス振動は、励振電極下にエネルギが閉じ込められることから定在波として比較的強く励振される。その結果、このスプリアス振動が、主振動に悪影響を与えたり、フィルタとしての通過帯域特性を乱したり、通過帯域外における保証減衰量特性が十分とれなくなる等の課題を生じさせてしまう可能性がある。
【0008】
この課題を解決する手段として、上記公報には、入出力の各電極の外縁部またはアース電極の外縁部に重み軽減部を設けることが開示されている。具体的には、例えば、図15(水晶振動片の平面視においてアース電極104の配置状態を示す図)のように、アース電極104の短辺の中央部分に、重み軽減部としての切り欠き部105,106を形成している。この場合、切り欠き部105,106に沿って振動にアンバランスが生じた状態になるため、非調和オーバートーンモードの振動エネルギが抑制される。これにより、第1スプリアス振動の影響をある程度まで抑制することができ、保証減衰量特性を向上することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、通信機器の高周波数化等に伴ってMCFの高性能化が要求されつつあり、上記スプリアス振動の影響を更に抑制できる、つまり、スプリアス振動の影響を殆ど受けず、高い保証減衰量特性を有するMCFが求められている。
【0010】
この要求に応えることが可能なMCFを実現するための手法としては以下のものが掲げられる。
【0011】
先ず、上記第1スプリアス振動の影響を更に抑制することである。例えば、第1スプリアス振動を抑制すると共にその周波数帯を主振動の周波数帯から大きくずらし、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響が殆ど生じないようにすることである。
【0012】
また、他の手法として、2次モードのスプリアス振動の発生を抑制することが掲げられる。以下、この2次モードのスプリアス振動について説明する。上記図12及び図13に示すように、アース電極104(104A,104B)に対する引出電極104a,104bの接続位置は、アース電極104(104A,104B)の隅角部となっている。この場合、アース電極104(104A,104B)から引出電極104a,104bへ向かう振動エネルギの漏れが発生しており、この振動エネルギの漏れが原因となって、図12(b)及び図13(b)に破線の矢印で示すような水晶基板101の主面に沿う捻れ方向の振動(以下、この振動をツイスト振動と呼ぶ)が発生する。このツイスト振動は、主振動の周波数帯近傍に2次モードのスプリアス振動を生じさせる原因となる。図16は、この2次モードのスプリアス振動が主振動の近傍に存在する場合のMCFの周波数特性を示している。
【0013】
特に、図13に示すようにアース電極104を分割した構成の場合、第1スプリアス振動を高周波数側に移行させることができて、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響を低減できることが知られているが、この構成の採用に伴って上記ツイスト振動の発生が助長されてしまう。
【0014】
また、入出力の各電極102,103の縦横比を2:1を越える大きな比(例えば3:1)とした場合にも上記ツイスト振動の発生が助長されてしまう。このため、従来では、この入出力の各電極102,103の縦横比が制約されてしまい、電極形状の設計自由度を大きく確保することができなかった。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述した2次モードのスプリアス振動を抑制することにより、主振動がスプリアス振動の影響を殆ど受けず、高い保証減衰量特性を有する水晶フィルタを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、2次モードのスプリアス振動を抑制する手段として、電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるための構成を水晶基板上に設けている。
【0017】
−解決手段−
具体的に本発明は、水晶基板の一方の主面に入力電極及び出力電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に上記入力電極及び出力電極に対応するアース電極が形成されて成る水晶振動片を備えた水晶フィルタを前提とする。この水晶フィルタに対し、水晶基板の一方の主面において、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、入力電極の引出電極と対称となる位置及び、上記対称線を挟んで、出力電極の引出電極と対称となる位置に、これら電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるためのバランサをそれぞれ形成している。
【0018】
同様の手段を水晶基板の他方の主面に設けた構成としては以下のものが掲げられる。つまり、水晶基板の他方の主面において、アース電極の一辺に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、アース電極の引出電極と対称となる位置に、このアース電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるためのバランサを形成している。
【0019】
更に、水晶基板の両主面において上記振動エネルギとの間でバランスをとることができる構成としては以下のものが掲げられる。つまり、水晶基板の一方の主面において、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、入力電極の引出電極と対称となる位置及び、上記対称線を挟んで、出力電極の引出電極と対称となる位置に、これら電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるための第1バランサをそれぞれ形成する。一方、水晶基板の他方の主面において、上記対称線を挟んで、アース電極の引出電極と対称となる位置に、このアース電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるための第2バランサを形成している。
【0020】
これらの特定事項により、各電極から引出電極へ向かって漏れる振動エネルギは、バランサの存在によって良好にバランスがとられ、これによってツイスト振動が抑制されて、2次モードのスプリアス振動の発生が回避できる。つまり、主振動が2次モードのスプリアス振動による悪影響を受けることを抑制でき、保証減衰量特性の向上を図ることができる。
【0021】
このようなバランサを設けた場合における電極及びバランサの最適な構成としては以下のものが掲げられる。つまり、上記対称線に直交する方向における、引出電極の幅寸法、バランサの幅寸法、これら引出電極とバランサとの間隔寸法を互いに一致させるものである。これによれば、ツイスト振動は殆ど発生せず、2次モードのスプリアス振動による主振動への悪影響も殆ど生じることがない。
【0022】
上述したバランサが形成された水晶フィルタにおいて、アース電極を、入力電極に対応する位置に形成された第1アース電極及び出力電極に対応する位置に形成された第2アース電極から成る分割型とする。そして、入力電極の引出電極と第1アース電極の引出電極とを、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線に略平行な方向に延設する。一方、出力電極の引出電極と第2アース電極の引出電極とを、上記対称線を挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線に略平行な方向に延設する。
【0023】
この特定事項により、ツイスト振動が抑制できて、2次モードのスプリアス振動の発生が回避できる。また、アース電極を分割型としたことによって第1スプリアス振動を高周波数側に移行させることができて、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響をも低減することができる。
【0024】
このような各引出電極の形状を採用した場合における最適な構成としては以下のものが掲げられる。つまり、上記対称線に直交する方向における、入力電極の引出電極の幅寸法、第1アース電極の引出電極の幅寸法、これら各引出電極同士の間隔寸法を互いに一致させる。また、対称線に直交する方向における、出力電極の引出電極の幅寸法、第2アース電極の引出電極の幅寸法、これら各引出電極同士の間隔寸法を互いに一致させる。これによれば、上記バランサを設けた構成において引出電極の幅寸法、バランサの幅寸法、引出電極とバランサとの間隔寸法を互いに一致させた場合と同様に、ツイスト振動は殆ど発生せず、2次モードのスプリアス振動による主振動への悪影響も殆ど生じることがない。
【0026】
次に、上述した各手段によって2次モードのスプリアス振動による主振動への悪影響を抑制できるようにした構成に加えて、電極の配置構造を改良することにより第1スプリアス振動を抑制する手段を付加したものについて説明する。つまり、上記各手段の構成に加えて、入力電極及び出力電極を、水晶基板の電気軸方向に対向して配置させたものである。
【0027】
この特定事項によれば、水晶振動片はTSモードでの振動が行われるものとして構成される。このようにTSモードで振動を行うように圧電フィルタを構成した場合、一般的な水晶フィルタとして構成されるTTモードで振動を行うものに比べて、同一電極構造の場合における通過帯域幅は広くなる。このため、入力電極と出力電極との間のギャップを比較的広く得ながらも、TTモードでの振動が行われる水晶フィルタと同等の振動特性を得ることができる。その結果、通過帯域幅を適切に得ながらもプレートバック量(電極の厚み)を大きく設定することが可能になる。このプレートバック量を大きくした場合、電極自体の重量の増加に伴う主振動の周波数の低下量よりも非調和振動(第1スプリアス振動)の周波数の低下量が小さくなり、見かけ上、第1スプリアス振動が主振動よりもかなり高い周波数となる。つまり、第1スプリアス振動を主振動からより遠ざけることができる。このため、主振動が第1スプリアス振動による悪影響を受けることが抑制でき、保証減衰量特性の向上を図ることができる。
【0028】
更に、各電極の配置構造として、上記のものに代えて、水晶基板の一方の主面に入力電極及び第2アース電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に入力電極に対応した第1アース電極と第2アース電極に対応した出力電極とが所定のギャップを存して形成された逆接続型構造で構成された水晶フィルタに対して上記の各手段を適用することも可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。図1は本形態に係るMCFに備えられた水晶振動片を示す図である。図1(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板1の下面に形成された入力電極2及び出力電極3の配置状態を透過して実線で示す(共通電極を省略している)図である。図1(b)は、水晶振動片の平面視において水晶基板1の上面に形成されたアース電極としての共通電極4の配置状態を実線で示し、上記入力電極2及び出力電極3の配置状態を破線で示す図である。
【0031】
この水晶振動片を構成する水晶基板1としては、ATカット水晶板が用いられており、矩形状に加工されている。この水晶基板1の一方の主面(下面)には、Z’軸方向(図中の左右方向)で所定のギャップを存した位置にそれぞれ矩形状の入力電極2及び出力電極3が近接して形成されている。入力電極2及び出力電極3には、その隅角部から水晶基板1の短辺側に向かって(図中左右方向の外側に向かって)延びた後、この水晶基板1の隅角部に向かって(図中上下方向の外側に向かって)延びる引出電極2a,3aがそれぞれ接続されている。また、他方の主面(上面)には、入力電極2及び出力電極3に対向する位置に矩形状の共通電極4が形成されている。この共通電極4には、その長辺側の中央位置から水晶基板1の長辺側に向かって(図中上下方向の外側に向かって)延びた後、この水晶基板1の短辺側(図中左右方向の外側に向かって)延びる引出電極4a,4bが接続されている。詳しくは、水晶基板1としては、5mm×2.5mmのATカット矩形水晶板であって、中心周波数を130MHzに設定したものを用いている。また、入出力の各電極2,3は、長辺が0.78mm、短辺が0.56mmの矩形電極であって、互いの間隔(ギャップ)が0.1mmに設定されている。
【0032】
尚、上記各電極2,3,4及び引出電極2a,3a,4a,4bは、真空蒸着法によって薄膜形成されており、その材料としてはアルミニウムや銀等が採用されている。また、このMCFは、図示していないが、例えば支持体に各々つながるリード端子を有するベースを用意し、上述した電極構成を有する水晶基板1をリード端子と接合された支持体で支持し、キャップにより気密封止されたものであってもよいし、または、外部導出電極パッドを有するパッケージに水晶基板1を搭載し、気密封止したものであってもよい。
【0033】
このような構成により、電極への信号入力を行った際、入力電極2及び共通電極4からなる第1電極対と、出力電極3及び共通電極4からなる第2電極対との間で音響結合が生じ、これによって周波数の異なる複数の通信信号の中から所定の周波数の通信信号のみを取り出すフィルタ機能が発揮されるようになっている。
【0034】
そして、本形態の特徴とするところは、水晶基板1の下面にバランサ5a,5bが形成されていることにある。以下、このバランサ5a,5bについて説明する。
【0035】
上述した如く、入出力の各電極2,3に対する引出電極2a,3aの接続位置は、各電極2,3の隅角部となっている。この場合、各電極2,3から引出電極2a,3aへ向かう振動エネルギの漏れに起因する上記ツイスト振動(図12(b)及び図13(b)に破線で示す矢印参照)が発生する。このツイスト振動は、主振動の周波数帯近傍に発生する2次モードのスプリアス振動の原因となる。上記バランサ5a,5bは、この2次モードのスプリアス振動の原因であるツイスト振動を抑制するために設けられている。
【0036】
このバランサ5a,5bは、各電極2,3や各引出電極2a,3aには接続されず、水晶基板1の特定位置に薄膜として形成されている。その形成位置としては、入力電極2と出力電極3との対向方向(水晶基板1の長辺に平行な方向)に平行で且つ水晶基板1の略中心を通る対称線Aを挟んで、各引出電極2a,3aと対称となる位置である。このバランサ5a,5bの存在により、各電極2,3から引出電極2a,3aへ向かって漏れる振動エネルギとの間でバランスをとることができ、ツイスト振動を抑制して、2次モードのスプリアス振動の発生を回避することができる。
【0037】
尚、このバランサ5a,5bの形状としては、引出電極2a,3aの形状(図1に示すものではL型)に合致している必要はない。つまり、上記ツイスト振動を抑制できる範囲であれば必要最小限の領域に形成すればよく、本形態のバランサ5a,5bは、引出電極2a,3aのうち入力出力電極2,3から水晶基板1の短辺側に向かって延びる部分(上記ツイスト振動の発生原因となっている領域)のみの形状に略合致した矩形状となっている。
【0038】
また、このバランサ5a,5bも、上記各電極2,3,4や引出電極2a,3a,4a,4bと同様に、真空蒸着法によって薄膜形成されており、その材料としてはアルミニウムや銀等が採用されている。これによれば、入出力の各電極2,3や引出電極2a,3aの成形工程と同時にバランサ5a,5bを成形することができる。つまり、バランサ5a,5bの成形工程を個別に行う必要がないため、作業工程の増加が回避できる。尚、バランサ5a,5bは、各電極2,3,4や引出電極2a,3aと同一材料で形成されている必要はなく、上記ツイスト振動の発生を十分に抑制することができる重量を有しておればよい。
【0039】
更に、ツイスト振動を最も効果的に抑制できる引出電極2a,3a及びバランサ5a,5bの形状としては以下のものが掲げられる。つまり、図1(a)に示すように、引出電極2a,3aのうち入出力の各電極2,3から水晶基板1の短辺側に向かって延びる部分の幅寸法(図1(a)における寸法α)と、バランサ5a,5bの幅寸法(図1(a)における寸法β)と、これら引出電極2a,3aとバランサ5a,5bとの間隔寸法(図1(a)における寸法γ)とが一致した構成である。
【0040】
以上の如く、本実施形態では、各電極2,3から引出電極2a,3aへ向かって漏れる振動エネルギとの間でバランスをとることが可能なバランサ5a,5bを設けたことにより、ツイスト振動を抑制して、2次モードのスプリアス振動の発生を回避することができる。特に、従来では、入出力の各電極2,3の縦横比を2:1を越える大きな比とした場合にツイスト振動の発生が助長されてしまうため、電極形状の設計自由度に大きな制約を受けていたが、本形態によれば、このツイスト振動の発生を抑制しながらも電極形状の設計自由度を大幅に拡大することができる。また、一般的には電極面積を大きくすることで駆動インピ−ダンスを低下させることができるが、従来のように、入出力の各電極2,3の縦横比として2:1を越える設計が行えない場合には、電極面積を大きくしたい際、水晶振動片の長手方向の寸法が大きくなってしまい実装型のMCFにあっては設置スペースに制約があった。これに対し、本形態では、入出力の各電極2,3の縦横比の設計自由度を拡大できるので、水晶振動片の長手方向の寸法を抑えながら駆動インピ−ダンスを低下させることができ、MCFの設置スペースに制約を受けることもなくなる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本形態は、水晶基板1の上面の構成のみが第1実施形態のものと異なっている。従って、ここでは第1実施形態との相違点である水晶基板1の上面の構成についてのみ説明する。
【0042】
図2は本形態に係る水晶振動片を示す図である。図2(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板1の下面に形成された入力電極2及び出力電極3の配置状態を透過して実線で示す図である。図2(b)は、水晶振動片の平面視において水晶基板1の上面に形成された共通電極4の配置状態を実線で示し、上記入力電極2及び出力電極3の配置状態を破線で示す図である。
【0043】
図2(b)に示すように、本形態に係る水晶振動片の共通電極4に接続されている引出電極4a,4bは、共通電極4の隅角部から水晶基板1の短辺側に向かって(図中左右方向の外側に向かって)延びた後、この水晶基板1の隅角部に向かって(図中上下方向の外側に向かって)延びる形状にそれぞれ形成されている。
【0044】
そして、本形態では、水晶基板1の上面にも第2バランサとしてのバランサ6a,6bが形成されている。以下、この水晶基板1の上面に形成されたバランサ6a,6bについて説明する。
【0045】
上述した如く、共通電極4に対する引出電極4a,4bの接続位置は、共通電極4の隅角部となっている。この場合、この水晶基板1の上面側においても上記と同様のツイスト振動が発生する。水晶基板1の上面に形成されたバランサ6a,6bは、このツイスト振動を抑制するために設けられている。
【0046】
このバランサ6a,6bは、水晶基板1の下面に形成されている第1バランサとしてのバランサ5a,5bと同様に、共通電極4や各引出電極4a,4bには接続されず、水晶基板1の特定位置に薄膜として形成されている。その形成位置としては、共通電極4の一辺(図中左右方向に延びる辺)に平行で且つ水晶基板1の略中心を通る対称線Aを挟んで、共通電極4の各引出電極4a,4bと対称となる位置である。このバランサ6a,6bの存在により、共通電極4から引出電極4a,4bへ向かって漏れる振動エネルギとの間でバランスをとることができ、ツイスト振動を抑制して、2次モードのスプリアス振動の発生を回避することができる。
【0047】
尚、この水晶基板1の上面に形成されるバランサ6a,6bの形状としても、引出電極4a,4bの形状に合致している必要はない。本形態のバランサ6a,6bは、引出電極4a,4bのうち共通電極4から水晶基板1の短辺側に向かって延びる部分(上記ツイスト振動の発生原因となっている領域)のみの形状に合致した矩形状となっている。
【0048】
また、この水晶基板1の上面に形成されるバランサ6a,6bも、上記各電極2,3,4や引出電極2a,3a,4a,4bと同様に、真空蒸着法によって薄膜形成されており、その材料としてはアルミニウムや銀等が採用されている。尚、このバランサ6a,6bも、各電極2,3,4や引出電極2a,3a,4a,4bと同一材料で形成されている必要はなく、上記ツイスト振動の発生が十分に抑制することができる重量を有しておればよい。
【0049】
更に、ツイスト振動を最も効果的に抑制できる引出電極4a,4b及びバランサ6a,6bの形状としては、引出電極4a,4bのうち共通電極4から水晶基板1の短辺側に向かって延びる部分の幅寸法(図2(b)における寸法α)と、バランサ6a,6bの幅寸法(図2(b)における寸法β)と、これら引出電極4a,4bとバランサ6a,6bとの間隔寸法(図2(b)における寸法γ)とを一致させた構成が掲げられる。
【0050】
また、この第2実施形態のものでは、上述した重み軽減部を設けたことによる第1スプリアス振動の抑制効果と同様の効果を、入出力電極2,3、共通電極4、それらの引出電極2a,3a,4a,4bの形状によって発揮させることができる。つまり、引出電極2a,4a(3a,4b)が水晶基板1の表裏で対称配置されていることにより、これら引出電極2a,4a(3a,4b)間の領域が上記重み軽減部と同様の機能を発揮することになる。
【0051】
(参考例)
次に、参考例について説明する。図3は本例に係る水晶振動片を示す図である。図3(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板1の下面に形成された入力電極2及び出力電極3の配置状態を透過して実線で示す図である。図3(b)は、水晶振動片の平面視において水晶基板1の上面に形成されたアース電極4の配置状態を実線で示し、上記入力電極2及び出力電極3の配置状態を破線で示す図である。
【0052】
図3(a)に示すように、入出力の各電極2,3及びそれらの引出電極2a,3aの形状は上記第2実施形態のものと同一である。
【0053】
一方、図3(b)に示すように、アース電極4は、入力電極2に対向するように配置された第1アース電極4A及び出力電極3に対向するように配置された第2アース電極4Bにより構成されている。また、この水晶基板1の上面に形成されている引出電極4a,4bは、各アース電極4A,4Bの隅角部から水晶基板1の短辺側に向かって(図中左右方向の外側に向かって)延びた後、この水晶基板1の隅角部に向かって(図中上下方向の外側に向かって)延びる形状にそれぞれ形成されている。
【0054】
より詳しくは、入力電極2の引出電極2aと第1アース電極4Aの引出電極4aとは、上記対称線Aを挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線Aに略平行な方向に延設された構成となっている。また、同様に、出力電極3の引出電極3aと第2アース電極4Bの引出電極4bとは、上記対称線Aを挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線Aに略平行な方向に延設された構成となっている。
【0055】
本例の電極2,3,4A,4B及び引出電極2a,3a,4a,4bの構成によれば、上記第2実施形態の場合と同じく、重み軽減部を設けたことによる第1スプリアス振動の抑制効果と同様の効果を奏することができるばかりでなく、以下に述べる効果も発揮される。つまり、上記バランサを設けた場合と同様に、各電極2,3,4A,4Bから引出電極2a,3a,4a,4bへ向かって漏れる振動エネルギのバランスをとることができ、ツイスト振動が抑制できて、2次モードのスプリアス振動の発生が回避できる。また、アース電極4を分割型としたことによって第1スプリアス振動を高周波数側に移行させることができて、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響をも低減することができる。つまり、本例の構成によれば、第1スプリアス振動及びツイスト振動の双方の主振動に対する悪影響を効果的に回避することが可能となる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本形態に係る水晶振動片は、上述した参考例の電極構造に対して、上記第2実施形態のものと同様のバランサを設けた構成となっている。
【0057】
図4は本形態に係る水晶振動片を示す図である。図4(a)は水晶振動片の平面視において水晶基板1の下面に形成された入力電極2及び出力電極3の配置状態を透過して実線で示す図である。図4(b)は、水晶振動片の平面視において水晶基板1の上面に形成されたアース電極4の配置状態を実線で示し、上記入力電極2及び出力電極3の配置状態を破線で示す図である。
【0058】
このように共通電極4を分割した構成の場合、上述した如く、第1スプリアス振動を高周波数側に移行させることができて、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響を低減できる。本形態では、このように共通電極4を分割させた構成に対して、水晶基板1の上面に上記第2実施形態のものと同様のバランサ6a,6bを形成することにより、このツイスト振動が抑制されるようにしている。つまり、本形態の構成によれば、上記参考例の効果に加えて、バランサ6a,6bを設けたことによるツイスト振動の抑制を更に効果的に行うことができ、第1スプリアス振動及びツイスト振動の双方の主振動に対する悪影響を確実に回避することが可能となる。
【0059】
−変形例−
次に、水晶基板1上にバランサを形成したものにおける変形例について説明する。
【0060】
(水晶基板1の下面の変形例)
上述した第2実施形態及び第3実施形態は、何れも水晶基板1の下面にバランサ5a,5bを備えたものであった。これに代えて、例えば従来例で示した図12の如く、入力電極102及び出力電極103の中央部から水晶基板1の外縁に向かって延びる引出電極102a,103aを備えた水晶振動片に対して、その上面の構成として第2実施形態及び第3実施形態のもの(図2(b)、図4(b)に示すもの)を適用することも可能である。本例の場合、水晶基板1の下面にバランサ5a,5bを設ける必要はない。
【0061】
本変形例を第2実施形態に適用した場合の水晶振動片の平面図を図5(a)に示し、本変形例を第3実施形態に適用した場合の水晶振動片の平面図を図5(b)に示している。これら各図において、入出力の各電極2,3及び引出電極2a,3aは破線で示している。
【0062】
このように、本変形例のものでは、水晶基板1の下面においてはツイスト振動は発生しないが、水晶基板1の上面においてはツイスト振動が発生するものに対して、上記バランサ6a,6bを備えさせてツイスト振動を抑制し、2次モードのスプリアス振動の発生を回避するようにしている。
【0063】
(バランサ配置状態の変形例)
上述した各実施形態及び変形例では、バランサ5a,5b,6a,6bの形状としては、引出電極2a,3a,4a,4bのうち各電極2,3,4から水晶基板1の短辺側に向かって延びる部分のみに合致させていた。本発明は、これに限らず、バランサ5a,5b,6a,6bの形状及び配設箇所としては、図6(a),(b)に示すものであってもよい。この図6(a),(b)に示すものは、本変形例を水晶基板1の下面(入出力電極2,3が形成されている側)に適用した場合である。
【0064】
つまり、図6(a)に示すように、一方の電極2、(3)に対して複数のバランサ5a,5a、(5b,5b)を適用したり、図6(b)に示すように、電極2、3と引出電極2a、3aとの間の領域にバランサ5a,5bを形成する構成を採用してもよい。このようなバランサ5a,5bの形状及び配設箇所は、水晶基板1の下面側だけでなく、上面側(アース電極4が形成されている側)にも同様に適用可能である。
【0065】
(電極の配置状態の変形例)
上述した重み軽減部を設けたことによる第1スプリアス振動の抑制原理を発揮させるものとしては、図3及び図4に示す電極配置形態に限らず、図7(a),(b)、図8(a),(b)に示す電極配置形態を採用することもできる。そして、このように配置された電極に接続される引出電極の形状に応じてバランサを形成することにより、第1スプリアス振動及びツイスト振動の双方の主振動に対する悪影響を回避することが可能となる。
【0066】
このような電極配置形態も、水晶基板1の上面(アース電極4が形成されている側)及び下面(入出力電極2,3が形成されている側)の一方、または両方に適用可能である。
【0067】
尚、図7(a),(b)に示すものは、水晶基板1の片面に形成された電極2,3のみで上記重み軽減部を構成して第1スプリアス振動の抑制を図ることができる。つまり、水晶基板1の片面のみにこれら図に示すような形状の電極を形成した場合でも第1スプリアス振動を抑制できるものである。これに対し、図8(a),(b)に示すものは、水晶基板1の両面に同様(対称形状)の電極を形成することにより(下面側の電極形状を破線で示している)、入出力電極2,3とアース電極4A,4Bとの間で第1スプリアス振動の抑制効果を発揮させることができるものである。
【0068】
(MCFの構成の変形例)
上述した各実施形態及び変形例では、水晶基板1の一方の主面に入出力の各電極2,3を、他方の主面にアース電極4(4A,4B)をそれぞれ形成した、所謂順接続型構造のMCFについて説明した。本発明は、これに限らず、水晶基板1の一方の主面に入力電極2と一方のアース電極4Aを、他方の主面に出力電極3と他方のアース電極4Bをそれぞれ形成した、所謂逆接続型構造のMCFに対しても適用可能である。つまり、図3、図4、図5(b)、図6,図7,図8の各電極配置形態において、逆接続型構造のMCFを構成したものとしてもよい。
【0069】
−実験例−
次に、上記バランサを設けたことによる効果を確認するために行った実験及びその結果について説明する。
【0070】
本実験例では、比較例(従来品)として図12に示す構成のMCFを採用した。また、本発明に係るMCFとして、図1に示す構成のものを採用した。更に、本発明に係るMCFとしては、バランサ5a,5bと電極2,3との間の間隔寸法(図1(a)における寸法T)及びバランサ5a,5bの長手方向の寸法(図1(a)における寸法L)がそれぞれ異なる2タイプのものを採用した。第1のタイプのものは「寸法T=0.02mm」「寸法L=0.2mm」であり、第2のタイプのものは「寸法T=0.05mm」「寸法L=0.5mm」である。
【0071】
比較例の周波数特性を図9に、本発明に係るMCFのタイプ1の周波数特性を図10(a)に、本発明に係るMCFのタイプ2の周波数特性を図10(b)にそれぞれ示す。これらの図からも判るように、比較例のものでは比較的大きな2次モードのスプリアス振動が発生している。これに対し、本発明に係るMCFにあっては2次モードのスプリアス振動は抑制されており、特に、タイプ2のものでは、2次モードのスプリアス振動は殆ど存在していない。以上の結果から、バランサを設けたことにより2次モードのスプリアス振動が抑制されることが確認されたことになる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、上述した各実施形態及び変形例の全てに適用可能である。具体的には、上記ATカット水晶片で成る水晶基板1に対し、X軸(電気軸)方向に上記入力電極2及び出力電極3を対向配置するものである。これにより、電極への信号入力により、水晶振動片には厚み滑り振動が発生し、所謂TSモードでの振動が行われるようになっている。
【0073】
従来の一般的なMCFに適用される水晶基板は、ATカット水晶片に対しZ軸(光軸)方向に入力電極及び出力電極が対向配置されている。これにより、電極への信号入力により、水晶振動片に厚みねじれ振動が発生し、所謂TT(Thickness Twist)モードでの振動が行われるようになっている。
【0074】
また、従来より、入力電極と出力電極との間のギャップを小さくすることにより通過帯域幅の拡大を図ることが知られているが、上記TTモードでの振動を行うMCFでは、加工精度上、このギャップを小さくするには限界があった。例えば、電極形成時に蒸着マスクを行う場合において、通過帯域幅の拡大を図るべく、マスクのギャップ寸法を0.1mm程度に小さく設定したとしても、加工精度のバラツキによりギャップ寸法に±10μm程度の誤差が生じる可能性がある。つまり、10%もの誤差を生じてしまう可能性がある。このような状況では、水晶振動片に所定の振動特性を得ることができなくなる可能性があるため、ギャップを必要以上に小さくすることは困難であり、その結果、通過帯域幅の拡大を図るにも限界があった。
【0075】
これに対し、本形態では、上述した如く、X軸(電気軸)方向に入力電極2及び出力電極3を対向配置し、TSモードでの振動が行われるように構成されている。
【0076】
本形態の如くTSモードでの振動が行われるMCFは、カップリング定数が大きく、TTモードでの振動が行われるMCFに比べて通過帯域幅を広く得ることができる。
【0077】
更に、TSモードでの振動が行われるMCFは、TTモードでの振動が行われるMCFに比べて、入力電極2と出力電極3との間のギャップGを約1.4倍に広げることができる。言い換えると、入力電極2と出力電極3との間のギャップを1.4倍に広く得ながらも、TTモードでの振動が行われるMCFと同等の振動特性を得ることができる。
【0078】
このため、電極形成時に蒸着マスクを行う場合において、加工精度のバラツキが多少あったとしても、ギャップ全体の寸法に対する誤差の割合は、TTモードでの振動が行われるMCFの場合に比べて大幅に小さくすることが可能となる。これにより、ギャップを必要以上に小さくする必要が無くなり、MCFに所定の振動特性を得るための電極形成が容易になる。
【0079】
そして、本形態の構成によれば、電極の厚さ(プレートバック量)を大きく設定しても通過帯域幅を広く得ることが可能であるため、例えば、従来では採用不可能であった厚さ1000Åの電極を形成したとしても所望の通過帯域幅を得ることが可能である。
【0080】
このようにプレートバック量を大きくした場合、電極自体の重量の増加に伴う主振動の周波数の低下量よりも非調和振動(第1スプリアス振動)の周波数の低下量が小さくなり、見かけ上、第1スプリアス振動が主振動よりもかなり高い周波数となる。つまり、第1スプリアス振動を主振動からより遠ざけることができる。このため、主振動が第1スプリアス振動による悪影響を受けることを抑制でき、保証減衰量特性の向上を図ることができる。
【0081】
また、この電極を形成する材料として、比較的比重の高い銀を採用すれば、スプリアス振動を主振動からよりいっそう遠ざけることができて、保証減衰量特性の更なる向上を図ることができる。
【0082】
図11は、従来のMCFと本形態に係るMCFとの減衰特性を測定した結果である。図11(a)は本形態に係るMCF(例えば、図1に示すものにおいてX軸方向に入力電極2及び出力電極3を対向配置したもの)の減衰特性を測定した結果である。図11(b)は従来のTTモードでの振動が行われるMCFの減衰特性を測定した結果である。これら図に示すように、従来のMCFにあっては第1スプリアスの発生周波数帯が基本周波数帯に比較的近い領域で発生していた(例えば基本周波数帯から数百kHzの領域)。これに対し、本形態に係るMCFでは、第1スプリアスの発生周波数帯を基本周波数帯から比較的遠い領域(例えば基本周波数帯から数MHzの領域)に設定することができる。このように、本形態に係るMCFによれば、これまでにない良好な波形特性を得ることが可能になる。
【0083】
また、電極材料として従来ではアルミニウムが多用されていたが、アルミニウムは酸化されやすく、歩留り及び生産性が悪いという課題があり、また、酸化されて酸化アルミニウムが形成されると、導電性接着剤との導通抵抗が大きくなって保証減衰量特性が悪くなるといった課題があった。本形態では、電極材料として酸化されにくい銀を使用しているため、歩留り及び生産性が向上すると共に、保証減衰量特性も良好に得ることができる。
【0084】
尚、本形態においても、電極配置形態としては、順接続型構成、逆接続型構成の何れも採用可能である。
【0085】
−その他の実施形態−
水晶基板1の各寸法及び各電極2,3,4の形状は上述のものに限らない。つまり、要求される基本周波数等に応じて各部の寸法は適宜設定されるものである。
【0086】
また、上述した各実施形態及び変形例では、引出電極2a,3a,4a,4bの外側端を水晶基板1の隅角部に設定しているが、この外側端の位置は水晶基板1の隅角部に限るものではない。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるためのバランサを設けることによって2次モードのスプリアス振動を抑制し、このスプリアス振動による主振動への悪影響を抑制でき、高い保証減衰量特性を有する水晶フィルタを提供することができる。
【0088】
特に、バランサを設けた構成において、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線に直交する方向における、引出電極の幅寸法、バランサの幅寸法、これら引出電極とバランサとの間隔寸法を互いに一致させた場合には、ツイスト振動は殆ど発生せず、2次モードのスプリアス振動による主振動への悪影響を殆ど生じさせないようにすることができる。
【0089】
上記構成においてアース電極を分割型とすれば、第1スプリアス振動を高周波数側に移行させることができて、主振動に対する第1スプリアス振動の悪影響をも低減することができる。
【0090】
更に、上記各構成において、入力電極及び出力電極を水晶基板の電気軸方向に対向して配置した場合には、電極自体の重量の増加に伴う主振動の周波数の低下量よりも第1スプリアス振動の周波数の低下量をかなり小さくすることができる。このため、第1スプリアス振動を主振動からより遠ざけることができて、主振動が第1スプリアス振動による悪影響を受けることを確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る水晶振動片を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る水晶振動片を示す図である。
【図3】参考例に係る水晶振動片を示す図である。
【図4】第3実施形態に係る水晶振動片を示す図である。
【図5】水晶基板の下面の変形例に係る水晶振動片を示す図である。
【図6】バランサ配置状態の変形例に係る水晶振動片を示す図である。
【図7】電極配置状態の変形例に係る水晶振動片を示す図である。
【図8】電極配置状態の他の変形例に係る水晶振動片を示す図である。
【図9】実験例に係る従来品の周波数特性を示す図である。
【図10】実験例に係る本発明のMCFの周波数特性を示す図である。
【図11】従来のMCFと第4実施形態に係るMCFとの減衰特性を測定した結果を示す図である。
【図12】従来例における水晶振動片の一例を示す図である。
【図13】従来例における水晶振動片の他の一例を示す図である。
【図14】第1スプリアス振動が主振動の近傍に存在する場合のMCFの周波数特性を示す図である。
【図15】共通電極に重み軽減部を設けた水晶振動片を示す図である。
【図16】2次モードのスプリアス振動が主振動の近傍に存在する場合のMCFの周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
1 水晶基板
2 入力電極
3 出力電極
4 共通電極(アース電極)
4A 第1アース電極
4B 第2アース電極
2a,3a,4a,4b 引出電極
5a,5b,6a,6b バランサ
Claims (8)
- 水晶基板の一方の主面に入力電極及び出力電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に上記入力電極及び出力電極に対応するアース電極が形成されて成る水晶振動片を備えた水晶フィルタであって、
上記水晶基板の一方の主面において、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、入力電極の引出電極と対称となる位置及び、上記対称線を挟んで、出力電極の引出電極と対称となる位置に、これら電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるためのバランサがそれぞれ形成されていることを特徴とする水晶フィルタ。 - 水晶基板の一方の主面に入力電極及び出力電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に上記入力電極及び出力電極に対応するアース電極が形成されて成る水晶振動片を備えた水晶フィルタであって、
上記水晶基板の他方の主面において、アース電極の一辺に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、アース電極の引出電極と対称となる位置に、このアース電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるためのバランサが形成されていることを特徴とする水晶フィルタ。 - 水晶基板の一方の主面に入力電極及び出力電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に上記入力電極及び出力電極に対応するアース電極が形成されて成る水晶振動片を備えた水晶フィルタであって、
上記水晶基板の一方の主面において、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで、入力電極の引出電極と対称となる位置及び、上記対称線を挟んで、出力電極の引出電極と対称となる位置に、これら電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるための第1バランサがそれぞれ形成されている一方、
上記水晶基板の他方の主面において、上記対称線を挟んで、アース電極の引出電極と対称となる位置に、このアース電極から引出電極に向かう振動エネルギとの間でバランスをとるための第2バランサが形成されていることを特徴とする水晶フィルタ。 - 請求項1、2または3記載の水晶フィルタにおいて、
対称線に直交する方向における、引出電極の幅寸法、バランサの幅寸法、これら引出電極とバランサとの間隔寸法は互いに一致していることを特徴とする水晶フィルタ。 - 上記請求項1〜3のうち何れか一つに記載の水晶フィルタにおいて、
上記アース電極は、入力電極に対応する位置に形成された第1アース電極及び出力電極に対応する位置に形成された第2アース電極から成る分割型で構成されており、
入力電極の引出電極と第1アース電極の引出電極とは、入力電極と出力電極との対向方向に平行で且つ水晶基板の略中心を通る対称線を挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線に略平行な方向に延設されている一方、
出力電極の引出電極と第2アース電極の引出電極とは、上記対称線を挟んで互いに対称となる位置で且つこの対称線に略平行な方向に延設されていることを特徴とする水晶フィルタ。 - 請求項5記載の水晶フィルタにおいて、
対称線に直交する方向における、入力電極の引出電極の幅寸法、第1アース電極の引出電極の幅寸法、これら各引出電極同士の間隔寸法は互いに一致している一方、対称線に直交する方向における、出力電極の引出電極の幅寸法、第2アース電極の引出電極の幅寸法、これら各引出電極同士の間隔寸法は互いに一致していることを特徴とする水晶フィルタ。 - 請求項1〜6のうち何れか一つに記載の水晶フィルタにおいて、
入力電極及び出力電極は、水晶基板の電気軸方向に対向して配置されていることを特徴とする水晶フィルタ。 - 請求項1〜7のうち何れか一つに記載の水晶フィルタにおいて、
各電極の配置構造として、上記のものに代えて、水晶基板の一方の主面に入力電極及び第2アース電極が所定のギャップを存して形成され、他方の主面に上記入力電極に対応した第1アース電極と第2アース電極に対応した出力電極とが所定のギャップを存して形成された逆接続型構造で構成されていることを特徴とする水晶フィルタ。
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