JP3911805B2 - 磁気継手および磁気継手の固定方法 - Google Patents

磁気継手および磁気継手の固定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ等の回転力を発生する駆動手段の回転力を、原動軸から従動軸に磁力により伝達する磁気継手(マグネットカップリング)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気継手の構造は、周知のごとく、原動軸と一体的に回転する原動側マグネット部材と、従動軸と一体的に回転する従動側マグネット部材とを所定の間隔を隔てて対向配設し、両マグネット部材の磁力により回転力を伝達するものである。
そして、マグネット部材は、マグネット(永久磁石)をインサート成形により樹脂製のプレートに一体化したもの(図12参照)、又は円板状のプレートにマグネットを接着したものである(図13参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、磁気継手は、前述のごとく、磁力により回転力を伝達するものであるので、マグネットの性能、大きさ、両マグネット部材の間隔(磁気ギャップ)に応じて伝達可能な回転力が決定される。
したがって、伝達可能な回転力を大きくするには、マグネットの性能を上げる、マグネットを大きくする、磁気ギャップを小さくする等の処置を施す必要があるので、マグネットのコスト高を招く、組み付け精度を高くする必要がある等、磁気継手のコスト高を招いてしまう。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、磁気継手において、コスト高を抑制しつつ伝達可能な回転力の向上や磁気継手の品質向上を図ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項に記載の発明では、駆動手段(5)によって回転する原動軸(51)と、
前記原動軸(51)とは独立に設けられる従動軸(15)と、
前記原動軸(51)に固定され、コの字状断面形状を有する磁性材料からなる円板状の原動側プレート(106b)と、
前記従動軸(15)に固定され、コの字状断面形状を有する磁性材料からなる円板状の従動側プレート(105b)と、
前記原動側プレート(106b)のコの字状断面形状による凹部側に接着された円板状の原動側マグネット(106a)と、
前記従動側プレート(105b)のコの字状断面形状による凹部側に接着された円板状の従動側マグネット(105a)とを有し、
前記原動側プレート(106b)のコの字状断面形状による内周壁と、前記原動側マグネット(106a)の外周壁との間に原動側隙間(δ3)が形成され、
前記従動側プレート(105b)のコの字状断面形状による内周壁と、前記従動側マグネット(105a)の外周壁との間に従動側隙間(δ2)が形成され、
前記原動側マグネット(106a)及び前記原動側プレート(106b)からなる原動側マグネット部材(106)と、前記従動側マグネット(105a)及び前記従動側プレート(105b)からなる従動側マグネット部材(105)とが所定間隔(δ1)を隔てて対向配設され、
前記原動側マグネット部材(106)及び前記従動側マグネット部材(105)の磁力により前記原動軸(51)の回転力を前記従動軸(15)に伝達するようになっており、
さらに、前記原動側隙間(δ3)には、前記原動側マグネット(106a)及び前記原動側プレート(106b)の回転バランスを調整する原動側バランス調整部材(300)が設けられ、
前記従動側隙間(δ2)には、前記従動側マグネット(105a)及び前記従動側プレート(105b)の回転バランスを調整する従動側バランス調整部材(300)が設けられていることを特徴とする。
【0006】
これにより、後述するように、磁気回路が構成されるため、磁気継手のコスト高を抑制しつつ伝達可能な回転力の向上させることができる。
また、隙間(δ2 、δ3 )を形成することで、マグネット(105a、106a)の外周面を研削加工することなく、プレート(105b、106b)に装着することができ、磁気継手のコスト高をさらに抑制することができる。
【0007】
また、請求項に記載の発明では、従動側隙間(δ2)及び原動側隙間(δ3)にそれぞれ従動側・原動側バランス調整部材(300)を設けているので、簡単に調芯をすることができ、かつ、遠心力でバランス調整部材(300)が離脱することを防止でき、磁気継手の品質を向上させることができる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る磁気継手10をバッテリ冷却用送風機に適用したものであって、このバッテリ冷却用送風機は、車両走行用電動モータを有する電気自動車(電動モータとエンジンとの両者を有する、いわゆるハイブリット車両も含む。)の車両後方側のトランクルーム内に配設される(図2参照)。
【0011】
図1中、2は充放電可能な二次電池(本実施形態では、ニッケル水素電池)であり、3は1本のファンシャフト4により回転駆動される遠心多翼ファン(以下、ファンと略す。)である。5はファン3を駆動する回転力を発生する電動モータ(駆動手段)であり、この電動モータ(以下、モータと略す。)5、ファン4および二次電池2は、ケーシング6内に収納されている。
【0012】
そして、ケーシング6には、ダクト(図2参照)を介して車室内に連通するとともに二次電池2に送風する空気が吸入される吸入口7、およびケーシング6外に空気を排出する排出口8が形成されている。さらに、ケーシング6内の空間を、二次電池2およびファン3が配設された空間と、モータ5が配設された空間とに離隔する、非磁性体からなる金属(本実施形態ではステンレス)製の隔壁部材9もケーシング6内に配設されている。
【0013】
なお、ケーシング6は、図2、3に示すように、二次電池2を収納するとともに排出口8が形成された第1ケーシング6aと、ファン3のスクロール型ケーシングを構成するとともに、吸入口7が形成された第2ケーシング6bと、モータ5を収納して隔壁部材9を構成する第3ケーシング6cとから構成されおり、これらケーシング6a〜6cはボルトにて締結されている。
【0014】
また、第3ケーシング6cには、図1に示すように、吸入口7に比べてその開口面積が十分に小さく設定された2つの呼吸穴11が形成されており、これら呼吸穴11は、ダクト(ホース)11aを介して車室内と連通している。
さらに、排出口8の空気流れ下流側には、図2に示すように、排出口8を車外に連通させる場合と、トランク内に連通させる場合とを選択的に切り換える切換ドア(切換手段)12が配設されており、この切換ドア12を駆動するサーボモータ(駆動手段)12aおよびモータ5の作動は、図4に示すように、電子制御装置(ECU)13により制御されている。
【0015】
なお、ECU13には、二次電池2の温度(以下、この温度を電池温度という。)を検出する温度センサ(温度検出手段)14からの信号が入力されており、ECU13は、電池温度が上昇するほどモータ5に印加する電圧を上昇させてファン3による送風量を増加させる。また、電池温度が所定温度以下では、排出口8とトランク内を連通させるように切換ドア12(サーボモータ12a)を作動させ、一方、電池温度が所定温度を越えたときには、排出口8と車外とを連通させる。
【0016】
ところで、モータ5とファン3とは、隔壁部材9にて離隔されているため、モータ5からファン3(ファンシャフト4)への駆動力の伝達は、図3に示すように、電磁継手10、およびシャフト間の偏心を吸収する撓み継手やフックの継手(以下、これら継手を撓み継手等と呼ぶ。)を介して行われる。
以下に、図5、6を用いて電磁継手10の構造について述べる。
【0017】
電磁継手10は、周知のごとく、モータ5のモータシャフト(回転軸)51を原動軸として、磁力により撓み継手等に連結される従動軸15に回転力を伝達するものである。
そして、101はモータ5側から従動軸15側に延びる円筒状の延出部材であり、この延出部材101は、モータ5のヨークハウジング52のうち従動軸15側に面する平面部52a(図6参照)に接触させた状態で、Pねじ等の締結手段102によりモータ5(ヨークハウジング52)に固定されている。なお、延出部材101は、ステンレス等の非磁性体製である。
【0018】
また、103は従動軸15を回転可能に支持する転がり軸受(以下、この転がり軸受を従動側軸受と呼ぶ。)104を保持する、ステンレス等の非磁性体製の軸受保持部材であり、この軸受保持部材103は、延出部材101のうち従動軸15側の端部101aを基準として、隔壁部材9と共に延出部材101に積層するようにして位置決めされている。
【0019】
なお、従動側軸受104は、内輪(インナーレース)104a、転動体(鋼球)104bおよび外輪(アウターレース)104cから構成されており、内輪104aは従動軸15にしまりばめ等により圧入固定され、外輪104cはすきまばめ等により軸受保持部材103の凹部103aに従動軸15側から挿入されている。
【0020】
また、105は、従動軸(回転軸)15に固定される従動側マグネット部材であり、この従動側マグネット部材105は、コの字状断面形状を有する磁性材料からなる円板状の従動側プレート105bと、この従動側プレート105bの凹部側に接着された第1永久磁石105aと、この第1永久磁石105aが接着固定された従動側プレート105bおよび従動側軸受104の内輪104aに接触する環状(円筒状)の従動側カラー105cとから構成されている。
【0021】
このため、従動側マグネット部材105は、従動側軸受104(内輪104a)を介して軸受保持部材103を基準として、軸受保持部材103に積層されるようにして位置決めされることとなる。
なお、第1永久磁石105aは、N極とS極とが交互に現れるように扇型の永久磁石を円周状に配設した円板(図8参照)であり、従動側マグネット部材105では、従動側プレート105bの内周壁と第1永久磁石105aの外周壁との間に、隙間δ2が形成されている。
【0022】
因みに、従動側プレート105bは冷間圧延鋼板等の磁性体製であり、カラー105cは黄銅等の金属製である。また、従動側マグネット部材105(従動側プレート105b)は、従動軸15に形成された二面幅(図示せず)によって回り止めされた状態で、ナット15dにより従動軸15に固定されている。
一方、隔壁部材9を挟んで従動側マグネット部材105と所定の間隔(以下、この間隔を磁気ギャップδ1と呼ぶ。)を隔て位置には、従動側マグネット部材105と同様な構造を有する原動側マグネット部材106がモータシャフト51に固定されており、この原動側マグネット部材106は、原動側プレート106bの内周壁と第2永久磁石106aの外周壁との間に、隙間δ3が形成されている
【0023】
なお、原動側マグネット部材106は、第2永久磁石106a、原動側プレート106bおよび原動側プレート106bに接触する環状(円筒状)の原動側カラー106cとを有して構成されているとともに、モータシャフト51に形成された二面幅(図示せず)により回り止めされた状態で、ナット(締結部材)51aによりモータシャフト51に固定されている。
【0024】
ところで、53はモータシャフト(回転軸)51を回転可能に支持する転がり軸受であり、この転がり軸受(以下、この転がり軸受を原動側軸受と呼ぶ。)53は、ヨークハウジング52に挿入固定されている。そして、原動側カラー106cは、原動側軸受53の内輪53aおよび原動側プレート106bに接触しているので、原動側マグネット部材106(原動側プレート106b)は、原動側軸受53(内輪53a)を介してヨークハウジング52を基準として位置決めされることとなる。
【0025】
なお、54はモータ5を冷却するためのファンであり、このファン54はリベット54aにて原動側プレート106bに固定されている。
次に、原動側マグネット部材106の組み付け方法について述べる。
原動側プレート106bには、図7に示すように、中央にモータシャフト51との回り止めを行う挿入穴106d、および挿入穴106dの近傍に固定溝106eが形成されている。そして、第2永久磁石106aを、挿入穴106dおよび固定溝106eを被覆しないように原動側プレート106bに接着する(接着工程)。
【0026】
次に、モータシャフト51に原動側カラー106cを装着した状態で(カラー装着工程)、モータシャフト51に原動側マグネット部材106(原動側プレート106b)を挿入する(マグネット挿入工程)。
そして、固定溝106eに回止治具200のピン部201を挿入して回止治具200を原動側マグネット部材106(原動側プレート106b)に装着固定する(治具装着工程)。
【0027】
最後に、回止治具200により原動側側マグネット部材106(原動側プレート106b)が回転しないようにした状態で、ナット(締結部材)51aをモータシャフト51にソケットレンチ203により固定(締結)する(締結工程)。
次に、本実施形態の特徴を述べる。
断面コの字状の磁性材料からなる両プレート105b、106bを用いるとともに、両プレート105b、106bの内周壁と第1、2永久磁石105a、106aの外周壁との間に隙間δ2 、δ3 が形成されているので、図9に示されるような磁気回路が両マグネット部材105、106間に構成され、磁気継手10のコスト高を抑制しつつ伝達可能な回転力を向上させることができる。
【0028】
また、隙間δ2 、δ3 を形成することで、第1、2永久磁石105a、106aの外周面を研削加工することなく、両プレート105b、106bに装着することができ、磁気継手10のコスト高をさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、回止治具200により原動側側マグネット部材106(原動側プレート106b)が回転しないようにした状態で、ナット51aを締結するので、例えば図10に示すように、原動側プレート106bの外周を挟みながらナット51aを締結する方法に比べて、ナット51aの締結時における、原動側プレート106bおよび第2永久磁石106aの歪みを小さくすることができる。したがって、原動側プレート106b、第2永久磁石106a間の接着はがれを防止することができるので、より品質の向上した磁気継手10を提供することができる。
【0029】
ところで、本発明に係る磁気継手の用途は、バッテリ冷却用送風機に限定されるものではなく、例えばウォータポンプのインペラーに電動モータの回転力を伝達する場合等その他に対しても適用することができる。
また、隙間δ2 、δ3 には、図11に示すように、両マグネット105b、106bおよび両プレート105a、106aの回転バランスを調整する、パテなどのバランス調整部材300を設けてもよい。
【0030】
これにより、簡単に調芯をすることができるので、遠心力でバランス調整部材300が離脱することを防止でき、磁気継手10の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るバッテリ冷却用送風機が配設されたバッテリ装置の模式図である。
【図2】バッテリ装置を車両に搭載した状態を示す模式図である。
【図3】バッテリ装置の詳細図である。
【図4】モータおよび切換ドアの制御系の模式図である。
【図5】磁気継手の断面図である。
【図6】磁気継手の分解断面図である。
【図7】磁気継手の分解断面図である。
【図8】第1、2永久磁石の正面図である。
【図9】磁気回路を示す模式図である。
【図10】マグネット部材を挟み込んだ状態を示す模式図である。
【図11】マグネット部材にバランス調整部材を配設した状態を示す
【図12】従来の技術に係るマグネット部材の断面図である。
【図13】従来の技術に係るマグネット部材の断面図である。
【符号の説明】
5…電動モータ、51…モータシャフト(回転軸、原動軸)、
52…ヨークハウジング、101…延出部材、103…軸受保持部材、
104…従動側軸受、105…従動側マグネット部材、
106…原動側マグネット部材。

Claims (1)

  1. 駆動手段(5)によって回転する原動軸(51)と、
    前記原動軸(51)とは独立に設けられる従動軸(15)と、
    前記原動軸(51)に固定され、コの字状断面形状を有する磁性材料からなる円板状の原動側プレート(106b)と、
    前記従動軸(15)に固定され、コの字状断面形状を有する磁性材料からなる円板状の従動側プレート(105b)と、
    前記原動側プレート(106b)のコの字状断面形状による凹部側に接着された円板状の原動側マグネット(106a)と、
    前記従動側プレート(105b)のコの字状断面形状による凹部側に接着された円板状の従動側マグネット(105a)とを有し、
    前記原動側プレート(106b)のコの字状断面形状による内周壁と、前記原動側マグネット(106a)の外周壁との間に原動側隙間(δ3)が形成され、
    前記従動側プレート(105b)のコの字状断面形状による内周壁と、前記従動側マグネット(105a)の外周壁との間に従動側隙間(δ2)が形成され、
    前記原動側マグネット(106a)及び前記原動側プレート(106b)からなる原動側マグネット部材(106)と、前記従動側マグネット(105a)及び前記従動側プレート(105b)からなる従動側マグネット部材(105)とが所定間隔(δ1)を隔てて対向配設され、
    前記原動側マグネット部材(106)及び前記従動側マグネット部材(105)の磁力により前記原動軸(51)の回転力を前記従動軸(15)に伝達するようになっており、
    さらに、前記原動側隙間(δ3)には、前記原動側マグネット(106a)及び前記原動側プレート(106b)の回転バランスを調整する原動側バランス調整部材(300)が設けられ、
    前記従動側隙間(δ2)には、前記従動側マグネット(105a)及び前記従動側プレート(105b)の回転バランスを調整する従動側バランス調整部材(300)が設けられていることを特徴とする磁気継手。
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